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Summary 3D cinemas are becoming real thanks to digital image processing technology. The most feasible and stable technology based on the binocular dis

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論文

空間標本化法による立体映像の検討

妹尾孝憲

(正会員)

青木輝勝

(正会員)

安田

††(正会員)

小暮拓世

†† † 東京大学先端科学技術研究センター †† 東京大学国際・産学共同研究センター 〈あらまし〉 近年のディジタル画像処理技術の進化に伴い,映画の立体化が進行しつつある.現在最 も実現可能性の高い方法は,両眼視差を利用した偏光眼鏡方式と思われるが,眼鏡方式に起因する違 和感や疲労感があり,眼鏡の不要な立体映像の実用化が強く望まれている.本稿では,空間標本化法に よる裸眼立体映像の実現性について検討した結果を報告する.空間標本化法は,三次元の実空間をレ ンズにより小空間に写像し,これを三次元標本化することで,立体映像データを取得し,三次元ディ スプレイに表示することで映像空間を再生する.この再生映像を屈折スクリーンに投映することによ り,元のスケールの三次元映像空間を再現することもできる.多層化撮像・表示デバイス,奥行解像 度,ボケの透明化,オクルージョン問題について検討を行った. キーワード:立体映像,空間標本化,透明撮像・表示デバイス,屈折スクリーン,ボケ除去 〈Summary〉 3D cinemas are becoming real thanks to digital image processing technology.

The most feasible and stable technology based on the binocular disparity requires stereo-glasses. However, there is still a strong desire for glasses-free method in order to ease the stress to viewers. In this paper, Space-Sampling method is investigated for glasses-free 3D movies. With a layered image sensor device, Space-Sampling method captures 3D image projected through a lens. Layered display panels reproduce 3D images. They can be projected on a refractive screen to reconstruct the original 3D image space. Transparent image sensors, layered display panels, depth resolution, blur elimination and occlusion problems are discussed. Key words: 3D-image, space-sampling, transparent imaging-device, refractive screen, blur elimination,

1.

は じ め に 近年,映画製作におけるディジタル映像処理技術の貢献 は目覚しく,三次元コンピュータグラフィックス(3DCG) 技術を駆使した仮想現実世界の構築や,高解像度カメラ による高画質実写映像との融合による,超現実的映像世 界の創造のみならず,JPEG-2000 や MPEG-4 AVC な どの高画質圧縮符号化技術による,高能率伝送・蓄積の 実現や,高解像度大画面ディスプレイによる没入感の増

“A Study of Space-Sampling Method for 3D Movies” by Takanori SENOH (Member), Terumasa AOKI (Member) (Research Center for Advanced Science & Technology, The University of Tokyo), Hiroshi YASUDA (Member), Takuyo KOGURE (Center for Collaborative Research, The Univer-sity of Tokyo). 大など,ディジタル映像処理技術なしでは映画製作が困 難になりつつある.更に 3DCG データを利用した立体映 画の製作が,新たな臨場感の高揚を目指して意欲的に行 われている1).今後,このような高臨場感を提供する高 画質大画面立体映画の普及が予測されるが,現在最も実 現性の高い立体映画方式は,左右眼に異なる視点からの 映像を見せて,脳内で立体映像として融合させるステレ オ映像方式であろう.多人数の看視者すべてに立体映像 を安定に提供するには,偏光眼鏡による左右映像の分離 が最も確実で実績もあるが,眼鏡を掛けることのわずら わしさや,長時間の使用に伴う疲労感などが報告されて いる2).この問題を解決すべく,これまで各種の裸眼立体 映像方式が研究開発されているが課題も残っている.例 えば,多視差映像をレンチキュラレンズや視差バリヤー

(2)

録再生するホログラフィ方式は,空間に実像を形成する ので輻輳と焦点調節の不整合はなく,自然な立体映像を 表示可能であるが,干渉縞のデータ量が膨大であるため, 現在のハードウエア処理能力では実写動画の実現が困難 なことや,遠景の撮影や対象物の色の再現などに課題が ある4).多視差の微小映像を多眼レンズで再生するイン テグラルフォトグラフィー方式は,光線再生方式の一つ であり,見る位置によって映像の見え方が変わる運動視 差が得られると共に,各光線は十分細く絞られているの で,映像位置に焦点を合わせることが可能となり,自然 な立体映像を表示できるが,視差数は 100 のオーダーが 必要なため,大画面化と高解像度化に限界がある5).国 際標準化機構(ISO)傘下の MPEG グループで最近始 まった多視差映像符号化方式の標準化(MVC)は,看視 者が自由な視点を選べる自由視点テレビや,多視差立体 映像への応用を掲げているが,立体視の方法については 標準化対象ではない6).かつて提案されたバリフォーカル ミラーによる奥行標本化方式は7),動画のためには高速 に機械振動する反射鏡がボトルネックとなる点や,深い 奥行の再生が困難であるなどの課題があるが,真に奥行 のある立体映像を表示可能で,輻輳と調節の問題を解決 する.この方式において,機械振動をなくす手段の一つ として,可変焦点レンズがある8)∼10).文献8) は,液晶 レンズに二つの異なる周波数の電界を交互に掛けて,液 晶の配向を変えることによりレンズの屈折率を変えて多 層表示を行うものであるが,一つの表示パネルで多数の 奥行の異なる映像を表示する必要があるため,高速な表 示パネルを必要とすることと,屈折率は常に変化し固定 できないので 1 枚の映像の中でもその描画時間の違いに よって奥行位置が異なる課題がある.文献9), 10) は,水 と油の界面形状を電圧で制御して可変焦点レンズを形成 するが,重力の影響のため,大口径にすることが困難で, 立体シネマなどの大画面用途には不向きと思われる.本 稿では,一つの固定焦点レンズと複数の高速でない撮像 パネルもしくは表示パネルを用いることにより,輻輳と 焦点調節が整合した自然な実像型の裸眼立体映像の,撮 影と再生が可能な空間標本化法について検討する.以下, 第 2 章では本方式の原理を述べ,第 3 章では,これを実 現するために必要な撮像・表示デバイスの検討を行い,第 4章では本方式実現のための信号処理の実験結果を述べ, 第 5 章では高品質化の検討を行い,第 6 章で結論と今後 図 1 実空間から映像空間への写像 Fig. 1 Mapping from real space to image space

の課題を述べる.

2.

空間標本化法の原理 2.1 立体映像の標本化 一般に写真は,三次元の立体空間をレンズにより二次 元平面に写像したものであるが,すべての奥行位置にあ る対象物を 1 平面にボケなく写像するために,レンズの 絞りを絞って焦点深度を深くして奥行情報を捨てている. 逆に焦点深度の浅い明るいレンズを使えば,図 1 に示す ように,無限遠から最近距離 D までの立体空間は,レン ズの後方 f から d までの小映像空間に写像され,夫々の 被写体映像は,距離に応じて異なる位置に結像する.こ こで,映像の位置 d は次式を満たす. [∞, D] ⇒ [f, d] d = Df D − f (1) f はレンズの焦点距離であり,例えば f = 50 mm の 場合,レンズの前方 D = 50 cm から無限遠までの被写 体は,レンズの後方 f = 50 mm から d = 55.5 . . .mm の間の小空間に写像される.このとき,映像の倍率は, f /(D − f ) で与えられ,距離 D にほぼ反比例し,視覚 特性に合った自然なサイズ比の映像となる.この映像は 奥行を持った映像であるので,これを三次元標本化する ことにより立体映像を得ることができる.標本化は,位 置 f から d の間に複数の透明な撮像板を配置することに より実現できる.夫々の撮像板上には,その位置に応じ た距離にある被写体の映像のみが焦点を結び,その他の 距離にある被写体はボケるので,ボケた映像を除去する ことで,被写体の距離に応じた映像を分離取得すること ができる.個々の撮像板から得られる映像を重ね合わせ ると,通常の二次元平面映像とほぼ同じになるので,立 体映像のデータ量はほとんど増えず,従来と同じ手段で 伝送・蓄積が可能である. 2.2 立体映像の再生 三次元標本化映像を,図 2 に示すように,焦点距離 f の凸レンズの後方 dから f までの距離に配置すること により,レンズをとおして虚像が距離 D から無限遠に形 成される.このとき,映像の位置 dと虚像の位置 D は,

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図 2 空間標本化映像のレンズによる看視 Fig. 2 Observation of space-sampled images

through a lens 次式の関係を満たす.  d, f⇒ [D, ∞] d= Df D + f (2) 今,簡単のためにレンズの焦点距離 f を標本化時と同 じとすると,映像を配置する位置 dを (3) 式のように選 べば,元の距離 D の位置に虚像ができる.このとき,再 生映像の倍率は,(D + f )/f 倍になるので,表示映像の サイズを (D − f )/(D + f ) = f /(2d − f ) 倍にすること により,元の位置に元の大きさの映像が形成される. d= df 2d − f (3) 例えば,レンズの後方 d= 45.45 . . .mm から 50 mm の間に標本化映像を 0.818. . . 倍∼1.0 倍にして置けば, 撮像時と同じ距離 50 cm から無限遠の位置に元のサイズ の再生像が形成される.標本化映像は,上下左右前後が 反転しているので,その順序を入れ替えて表示すること で,正しい位置関係になる.この方法は,再生像までの 距離 D を大きく取ると,像の拡大率 (D + f )/f が増大 し,レンズ収差による像のひずみが無視できなくなる課 題がある. レンズを取り払い,標本化映像を背面から直視すれば, 奥行が元の距離 D にほぼ反比例した立体映像が見られる が,映像サイズも同じ比率で縮小しているので,視覚特 性に合った自然な奥行感が得られる11). 別法として図 3 に示すように,図 1 と同じ構成で,凸 レンズの後方 f から d の間に再生映像を配置して投影す れば,被写体が元あった位置に元のサイズの実像が形成 される.光はレンズの前方に進むので,この映像は無限 遠から看視する必要があり実用的でないが,光路中に屈 折スクリーンを入れて光を折り返せば,スクリーンの前 後に立体映像が看視される. 屈折スクリーンは,図 4 に示すような,ガラス球を 敷き詰めたミラーで構成できる12).ガラス球の屈折率が n = 2.0 の場合,曲率半径 r のレンズと見なせば,その 焦点距離は, f = n n − 1× r 2 (4) 図 3 空間標本化映像の投影再生法

Fig. 3 Projection method of space-sampled images

図 4 屈折スクリーン Fig. 4 Refraction screen

(a)砲弾型レンズ (b)コーナーキューブ 図 5 屈折スクリーン用素材

Fig. 5 Refraction screen material

より,f = r となり,球の端面で結像する.この面を鏡 面とすることにより,入射光は球の端面で反射して入射 方向に出射するので,スクリーンの手前で結像した映像 は,再度同じ点で結像し,スクリーンの前方から看視で きる.スクリーン後方で結像する光も同じ方向に反射さ れるので,スクリーン後方の本来結像する位置に虚像が 看視される.球の直径を 1 画素以下にすることにより, 映像の解像度を保つことができる.屈折率 n = 2 のレン ズは既に実用化されているが13),屈折率 n = 1.5 の通常 ガラスを用いても,図 5 (a) のような砲弾型構造にする ことにより,反射範囲はやや狭くなるが,同じ効果を持 たせることができる.また,図 5 (b) のような立方体ガ ラスのコーナーを斜めに切り出したコーナーキューブを 敷き詰めたスクリーンでも同じ機能を実現できる.課題 は視域の拡大である.

3.

空間標本化法のデバイス 3.1 撮像素子 空間標本化法では,三次元撮像素子が必要になるが,通 常の電荷結合素子(CCD)や CMOS センサの電極を透 明にして重ね合わせることにより,実現可能であると思 われる.図 6 に従来の CMOS センサの構造を示す14).

(4)

にすることにより,ドレイン端子から取り出せる.この 構造で,フォトダイオードは透明であるので,基板下の 電極や,MOS トランジスタの電極を透明にすることによ り,透明な CMOS センサができる.透明な電極材料とし ては,酸化亜鉛 ZnO,酸化インジュウム錫 ITO,酸化錫 SnO2,窒化ガリウム GaN などが知られている.透明ト ランジスタの試作も行われており15),16),液晶ディスプレ イでは既に実用化されている.これを多層化するための 課題は,透明度の向上,デバイスの等方性確保,フォト センサの高感度化などであろう.映像のカラー化は,有 機光電変換膜の使用17)や,入射光線をハーフミラーやプ リズムで 3 本に分け,夫々RGB3 色のカラーフィルタを 通して単色光にしてから,撮像すればよい. 3.2 表示素子 表示素子は,液晶ディスプレイ(LCD)や,透明有機 ELパネルの多層配置で実現できる.図 7 に LCD の構 造を示す.LCD を構成する電極や駆動回路のトランジ スタには,CMOS センサと同じ透明デバイスが使われて いるので,これを重ね合わせて背後から一括照明するこ とで,立体映像を表示できる.カラー化は,夫々の LCD の画素を三つに分け,RGB3 色のフィルタを付けるのが 簡単であるが,背景色で前景が影響されるのを防ぐには, 映像を RGB3 色に分け,夫々別の表示デバイスで単色 立体映像を作り,ハーフミラーやプリズムで合成すれば よい.LCD は単に光の透過率を変えるシャッタであり, 図 6 CMOS センサの透明化 Fig. 6 Transparent CMOS sensor

図 7 液晶ディスプレイの構造 Fig. 7 Structure of LCD 素子に有機 LE パネルを用いれば,各パネルが自己発光 するので,バックライトが不要であり,カラー化も容易 である.有機 EL パネルは,CMOS センサとほぼ同じ構 造であり,フォトダイオードを発光ダイオードで置き換 えれば,透明な表示パネルを実現できる.カラー化は各 画素を RGB3 色に分けてやればよく,背景色に影響され ることもない.

4.

空間標本化法の信号処理 4.1 標本化 空間標本化法による映像の奥行分解能は,レンズの直 径 L と焦点距離 f で与えられる F 値 = f /L で決まり, 必要な撮像パネル数は,被写体までの最近距離で決まる. 図 8 のようにレンズの前方 D の距離にある被写体 a は, レンズの後方 d の位置に像 b を結ぶが,撮像パネルが更 に ∆ ずれた位置 y にあると,像点はサイズ δ にぼける. δ = L∆ d = |(y − f)D − yf| F D (5) 今,f = 50 mm,L = 14.3 mm のレンズを用いた場合 のボケ量を画素サイズで正規化し,パネルの位置 y をパラ メータにプロットすると,図 9 のようになる.ここで,撮 像パネルサイズは 36× 24 mm,画素数は 1000 × 667pel とした.このグラフより,撮像パネルを等間隔に配置す れば,各パネルの最大ボケ量を一定に抑えられることと, 許容ボケ量と最近撮影距離を決めれば,必要なパネル枚数 が決まることがわかる.例えば,最大ボケ量を約 1.5 pel, 最近撮影距離を 1 m とすれば,パネル枚数は 7 枚となる. 文献20) によれば,視距離 2 m での焦点調節の奥行感度 は 0.33 m ほどであり,輻輳や両眼視差では更に高感度 (高分解能)となるため,パネル枚数 7 枚では,奥行分 解能が不足するが,4.3 節に述べるように,撮像パネル の間にできる像は,その像の前後のパネルにボケ量が内 分された映像として撮影され,このボケ量の比を輝度比 に変えて,2 枚の表示パネルによる融像効果18),19)で補 図 8 映像のボケ量 Fig. 8 Blur of images

(5)

図 9 ボケ曲線 Fig. 9 Blur curve

(a)y = 50.0 mm (b)y = 50.425mm

(c)y = 50.85 mm (d)y = 52.125mm 図 10 空間標本化映像

Fig. 10 Space-sampled images

間を行うことで,奥行感度の視覚条件は改善される.ま た,遠距離になる程低下する奥行分解能は,人の視覚特 性に適合している.明るいレンズを使えば,分解能を更 に上げることが可能である.このカメラで撮影した映像 の例を図 10 に示す.撮像パネル位置は,レンズの後方 50,50.425,50.85,52.125 mm である.各映像で,焦 点の合っている距離は,∞,6,3,1.2 m となる.この ままでは,各レーヤにボケた映像があり,多層表示した 場合に暗くなったり 2 重像になるので,ボケ部分の透明 化が必要である. 4.2 ボケ部の透明化 各レーヤのボケ量は,映像の高周波成分から検出でき る.高周波成分の抽出には,映像の一次微分を行うハイ パスフィルタが一般的であるが,検出感度を高くするた めには,二次微分を行う Laplacian フィルタが好ましい. タップ数が多い程感度は高くなるが,大きなエッジ部分 のみが強調された不均一な検出になるので,感度は低く ても細かなエッジを検出する少タップフィルタが良いが, 図 11 7× 7 タップラプラシアンフィルタ Fig. 11 7 × 7 Laplacian filter

(a)y = 50.0 mm (b)y = 50.425 mm

(c)y = 50.85mm (d)y = 52.125mm 図 12 ラプラシアン出力

Fig. 12 Laplacian output

少な過ぎると滑らかなテキスチャが検出され難くなる. 図 11 に示す 7x7 タップの Laplacian フィルタを用いて, 高周波成分を検出した結果を図 12 に示す.合焦部ほど 明るく表示されているが,テキスチャによる依存性が高 いので,各レーヤ単独での合焦領域決定はしきい値の設 定が困難である.そこで高周波成分量のテキスチャ依存 性をキャンセルして,合焦部を安定に抽出するために, レーヤ間でフィルタ出力を比較し,奥行方向でレベルが ピークとなる点を合焦点とした.その結果を図 13 に示 す.大局的には,合焦部とボケ部がほぼ正確に抽出され ているが,局所的には合焦点とボケ点が混在するので, ボケ部の透明化のためには,平滑化が必要である.小さ な孤立するボケ点や合焦点の除去には,Median フィル タや Morphology フィルタが良いが,合焦部とボケ部の エッジが急峻に出るので多層表示には適さず,中タップ 数のローパスフィルタ(LPF)の繰り返し適用が,エッ ジを保存しつつ局所的な変動を平滑し,最も良い結果を 与えた.図 14 に示す 21× 21 タップ LPF で 2 回平滑 処理し,8 ビットに正規化した結果を図 15 に示す.

(6)

(a)y = 50.0 mm (b)y = 50.425mm

(c)y = 50.85 mm (d)y = 52.125mm 図 13 ピーク検出結果

Fig. 13 Peak detection results

図 14 21× 21 タップローパスフィルタ Fig. 14 21 × 21 tap LPF 図では,ボケ量の大きい部分ほど暗く表示されている. これを反転した値を原画像に加えれば,ボケ部の透明化 が行えるが,残存するむらを平滑化し,隣接したレーヤ の間に結像する映像の位置を,輝度分配による融像効果 で補間するため18),映像に加える透明化係数(輝度値) は次式で整形した. z = 255 1 + exp (x/α–−β) (6) ここで,x はローパスフィルタ出力を 8 ビットに正規 化したボケ量であり,α は合焦部からボケ部に遷移する 部分の傾きを与え,β は遷移中心のしきい値を与える.α を大きく取る程,ボケ部や合焦部のむらを除去できるが, 合焦領域からボケ領域への遷移が急峻になるため,奥行 分解能が上がらなくなる. 4.3 奥行データのアンチエイリアス処理 式 (5) を変形し,撮像パネルの位置 y をパラメータに, ボケ量 δ を像の位置 d で表すと式 (7) となり,これをプ ロットすると,図 16 のように等間隔にならぶ. δ =L∆ d = L |y − d| d (7) (a)y = 50.0 mm (b)y = 50.425 mm (c)y = 50.85mm (d)y = 52.125 mm 図 15 ローパスフィルタによる平滑化

Fig. 15 Smoothing with LPF

図 16 像位置とボケ量 Fig. 16 Blur vs. image location

これより,パネル間に焦点を結ぶ像のボケ量は,パネル からの距離にほぼ比例することがわかる.従って隣接す るパネル間のボケ量の比で透明化係数を内分すれば,融 像効果により隣接パネル間距離を内分した位置に,合成 映像を定位させることができ,奥行分解能が補間される. 式 (6) でボケ量は整形されるが,α と β をパネル間で共 通にすることにより,パネル間の透明化係数の分配がボ ケ量に応じて対称的に行われ,中間位置に結像する象位 置がほぼ正しく補間できる.両パネルの中間に結像する 像位置では,両パネルのボケ量はほぼ等しく,その関係 は整形後も保存されるので,式 (6) の値が透明化係数の 中点を介して隣接パネル間で対称になるように係数 α と β を選べば,中間映像はパネル中間に看視される.図 17 に α = 16,β = 8.0 の場合の透明化係数 z を示す.ま たこの値を各映像に加えた結果を図 18 に示す.各レー ヤで焦点の合った映像のみが透明化されずに残る.これ を立体映像として表示するには,各映像の標本化時のサ イズと奥行比を保って,多層ディスプレイで表示すれば よい.この実写立体映像は奥行を持つことから,3D CG

(7)

(a)y = 50.0 mm (b)y = 50.425mm

(c)y = 50.85 mm (d)y = 52.125mm 図 17 透明化係数

Fig. 17 Brightness offset

(a)y = 50.0 mm (b)y = 50.425mm

(c)y = 50.85 mm (d)y = 52.125mm 図 18 ボケ透明化映像

Fig. 18 Blur-eliminated images

映像と合成したハイブリッド映像の作成も,容易に行う ことができる21).

5.

高品質化検討 5.1 ボケ境界決定 ボケ領域の境界は式 (6) で決まるが,遷移中心 β を大 きくし過ぎると,合焦部の一部が透明化され,合成映像に 穴が空く.図 19 (a) に y = 50.0 mm と y = 52.125 mm のレーヤの高周波成分の LPF 出力を,上端から 42 画 素(図 19 (b),(c) の矢印)の位置でスライスした値を プロットしたものを示す.また式 (6) による透明化処理 を,α = 16,β = 8(整形のしきい値 128)で行ったレー ヤーを重ねたものを図 19 (b) に,α = 16,β = 6.5(し きい値 104)で行った結果を図 19 (c) に示す.整形のし きい値を下げることにより,ギャップがほぼ解消される ことがわかる.しきい値を低下させる必要がある理由は, (a)フォーカス検出の LPF 出力 (b)β = 8.0 (c)β = 6.5 図 19 透明化処理のしきい値 Fig. 19 Whitening threshold

(a)重なり (b)ギャップ 図 20 オクルージョン Fig. 20 Occlusion 前景のボケた映像が背景映像にかぶり,合焦映像の一部 がボケとして検出され,合焦検出のピーク値が低下した ことが原因と思われる. 5.2 オクルージョン 撮像パネルの位置が異なることにより,図 20 (a) に示 すように同じ見込み角の被写体 A,B の像サイズ a,b が,その距離 D1,D2 によって異なる.このサイズ比 a/b は,レンズから像までの距離 d1,d2の比に等しく, 次式で表される. a b = d1 d2 =D1(D2− f) D2(D1− f) (8)

(8)

合,図 20 (a) から,前景が背景に約 1%オーバーラップ するので,オクルージョンが形成され,看視位置をずらす ことが可能となり運動視差が獲得される.逆に図 20 (b) に示すように,画像周辺に前景があり,中心部に背景が 見える構図では,前景に遮られて背景の写らない領域の 内,前景の像 b でカバーされない領域(gap)ができる. その大きさは,前景と背景の距離差 (D1− D2)が大き い程大きくなるが,レンズ径 L の周辺から回り込んで写 る背景により軽減され,次式となる. gap = f (D1− D2) D2(D1− f)  Bf D2− f L 2  (9) 例えば f = 50 m,L = 14.3 mm,D1 =∞,D2 = 1 m,B = 350 mm(画面サイズの約 1/2)の場合,gap = 0.56 mm(画面サイズの約 1.6%)となる.gap を埋める 手段としては,映像の透明化しきい値を下げてボケ画像 で埋めることも可能であるが,口径 L の大きなレンズを 使うことや,前景と背景のサイズ比 a/b が 1.0 となるよ うに映像サイズを補正することで解決される.また,動 画では前後のフレームからオクルージョン部を補間する ことも有効と思われる. レンズ口径を大きくすることにより,両眼視差分程度 のオクルージョンはカバー可能と思われるが,看視位置 が動くことにより生じる運動視差をカバーするためには, マルチカメラ構成とし,周りのカメラ映像からオクルー ジョン部を取り出して,主カメラで取得できなかった背 景部分を埋めることにより改善が可能と思われる.この 場合,補助カメラは単板カメラでよい.

6.

ま と め 本報告では,空間標本化法による立体映像生成システ ムの原理,撮像・表示デバイス,ボケ部分の透明化処理, オクルージョンの検討を行い,実現性を確認した.コス トパフォーマンスの良い裸眼立体映像は,立体映画や立 体 TV の本格普及に向けて強く期待されており,本報告 がその一助になれば幸いである.今後の課題には,撮像・ 表示デバイスの開発や,それらを用いた立体映像の撮影・ 再生実験,屈折スクリーンの視拡域大,更なる高品質化 検討などがある. 参 考 文 献 1) 大口孝之:“新たなる立体映画ブームの到来”,3D映像,Vol.19, No.4, pp.29-35, Dec. (2005). 5) 高木康博:“変形2次元配置した多重テレセントリック光学系を 用いた3次元ディスプレイ”,映情メディア学誌,Vo.57, No.2, pp.293–300, Feb. (2003).

6) Video & Test group: “Call for Proposal on Multiview Video Coding”, ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, N7327, Jul. (2005).

7) Alan C. Traub: “Three-Dimensional Display”, US Pat. 3493290, Feb. (1970).

8) 陶山史郎:“高速な二周波液晶レンズによる新たな可変焦点型三 次元表示方式の提案”,3次元画像コンファレンス’98講演論文 集,pp.10–15 (1998).

9) B. Hendriks and S. Kuiper: “Through A Lens Sharply”, IEEE Spectrum, pp.20–24, Dec. (2004).

10) B. Berge: “機構部品ゼロ量産近付く液体レンズの実力”,日経 エレ,2005.10.24, pp.129–135 (2005). 11) 妹尾孝憲,青木輝勝,安田 浩,小暮拓世:“空間標本化法によ る立体映像の検討”,第224回画電研資05-07,pp.113–118, Mar. (2006). 12) 井上 弘:“立体視の不思議を探る”,オプトロニクス,Feb. (1999).

13) “Quality”, http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/l/2 ixyl. html Japan (2005).

14) 藤枝一郎:“画像入出力デバイスの基礎”,森北出版Jun. (2005). 15) 細野秀雄,古賀明嗣:“室温プロセスで作製したアモルファス酸 化物半導体を用いたフレキシブル薄膜トランジスタ”,Nature 2004.11.25 (2004).

16) T. Minami: “Transparent conducting oxide semiconduc-tors for transparent electrodes”, 2005 Semicond. Sci. Tech. 20, S35-S44 (2005).

17) 大槻智洋:“有機撮像素子で撮影成功富士写が感度向上に道開く”, 日経エレ2006.1.30号,pp.36–37, Jan. (2006).

18) H. Takada S. Suyama, and K. Nakazawa: “A new 3D display method using visual illusion produced by over-lapping two luminance division displays”, IEICE Trans on Electron E88-C (3), p.445 (2005).

19) A. Sullivan: “3 Deep”, IEEE Spectrum, pp.22–27, Apr. (2005).

20) 長田昌次郎:“視覚の奥行き距離情報とその奥行感度”,テレビ 誌,Vol.31, No.8, pp.649–655 (1977).

21) T. Senoh, T. Aoki, H. Yasuda, and T. Kogure: “A Study of Space-Sampling Method for 3D Movies”, IEEE WS on 3DCINE’06, June (2006). (2006 年 1 月 10 日受付) (2006 年 5 月 12 日再受付) 妹 尾 孝 憲 (正会員) 1973年,大阪大・工・通信卒.1975 年同大大学院修士課程修了.同年松 下電器産業(株)入社.1988∼1990 年,米国 MIT メディアラボ客員研 究員.2005 年,東京大学国際・産学 共同研究センター特任研究員.現在, 同大先端科学技術研究センター特任 教員.ディジタル AV 機器,画像圧 縮,著作権保護,立体映像の研究に 従事.

(9)

青 木 輝 勝 (正会員) 1993年,東京大・工・電子卒.1998 年同大大学院博士課程修了.同年同 大先端科学技術研究センター助手, 2002年同講師.インターネット高 速高機能化技術,コンテンツ著作権 管理保護技術,立体映像の創生・編 集・検索・配信技術等の研究に従事. 工学博士. 安 田 浩 (正会員) 1967年,東京大・工・電子卒.1972 年同大大学院博士課程修了.同年日 本電信電話公社入社.1978∼1979 年米国ジェット推進研究所客員研究 員.1997 年,東京大学先端科学技術 研究センター教授,2003∼2004 年 同大国際・産学共同研究センター所 長.現在,同センター教授.画像圧 縮,著作権保護,ネットワークセキュ リティの研究に従事.工学博士. 小 暮 拓 世 1962年,静岡大・工・電子卒.同 年松下電器産業(株)入社.1990∼ 1995年同社シンガポール研究所所 長.1999 年東京大学先端科学技術 研究センター協力研究員,2005 年 同大国際・産学共同研究センター特 任研究員.音響映像信号処理,著作 権保護の研究に従事.

図 2 空間標本化映像のレンズによる看視 Fig. 2 Observation of space-sampled images
Fig. 12 Laplacian output
Fig. 13 Peak detection results
Fig. 18 Blur-eliminated images

参照

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