地域における耕畜連携の進め方
(独)農研機構
畜産草地研究所
家畜飼養技術研究領域
WCS用イネは耕種農家が栽培する飼料作物の一つ 水田を活用することで、水田の保全と管理に有効 畜産経営における飼料生産基盤の拡大が図られる。 米の生産調整と深い関わりがある。 特徴
自給飼料と耕畜連携によるWCS用イネの違い
自給飼料 WCS用イネ 畑作物 水田作物 栽培者・収穫者と利用者が同じ (畜産農家) 栽培者と利用者が異なる場合が多い 栽培者:耕種農家 収穫調製者:組織体(コントラクター) 利用者:畜産農家 品質は自己責任 品質は換金作物であるなら、生産者の責任 WCS用イネは自給飼料というより、 「国産の流通粗飼料」といえるWCS用イネは古くからの技術
耕畜連携は、私が就職した25年以上も前から考えられていたこと 当時も、耕種農家が水田で飼料向けに水稲を栽培し、 畜産農家へ流通することを検討した(現在の耕畜連携と同じ) ●水稲(米)を家畜のエサとして利用することに対する耕種農家の強い抵抗感があった! ●耕種農家に「餌」の重要性に対する意識が低かった! 餌と草(雑草)との違いが明確ではなかった(所詮、草でしょう?という意識)! ●畜産農家もイネWCSの飼料価値、利用方法が分からなかった! 当時、なぜ耕畜連携が進まなかったのか? WCS用イネは、生産現場で定着しなかった行政支援・関係機関の努力 WCS用イネは飼料自給率向上と米の生産調整の推進を目的に、 総合的研究と行政支援によって本格的に普及 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 23年 24年 総合的研究が開始 総合的な技術開発と行政支援によって飛躍的に面積拡大 手厚い支援策 飼料価格の高騰 助成体制の変化
耕畜連携で何を目指すのか!
耕種農家と畜産農家が連携することにより、 「お互いが利益を追求」し、両者が安定した経営の維持と発展を目指す! 農地の有効活用や保全を含めた「新たな地域作り」を目指したい 関係機関だけでなく、畜産農家、耕種農家、地域住民も一緒に 地域の将来のあるべき姿を考えよう! 飼料自給率の向上と米の生産調整が目的関係機関が耕畜連携によって、イネWCSを推進するにあたり、 先ず、やらなければならないこと 以前にはよく見られたこと 1.稲を家畜の餌にする抵抗 2.麦、大豆の推進とのすみ分け 3.畜産の振興 職場内で十分な検討を! 職場内での耕畜連携体制が整っていないのに、 生産現場で耕畜連携は推進できない! 研究・普及・行政ともに 畜産担当と作物担当(水田営農担当等)との連携を図る 1.職場内での耕畜連携を図る
耕畜連携は、 地域を如何に活性化させ、水田を有効に活用して、 食料・飼料の自給率向上を図ること 地域営農 ・畜産(酪農、肉牛、養豚、養鶏) ・稲作農家 ・野菜農家 ●全てを含めて地域営農(地域農業) 2.推進すべき意義と地域を明確にする 関係機関が耕畜連携によって、イネWCSを推進するにあたり、 先ず、やらなければならないこと
関係機関(地域の農家も含めて)が、統一意識を持つこと! 市町村の水田ビジョンが基本 一人で考えていても、耕畜連携を推進できるものではない! 3.生産者や利用者も含めて、明確な方向を示す 関係機関が耕畜連携によって、イネWCSを推進するにあたり、 先ず、やらなければならないこと
WCS用イネを推進する必要のない地帯 WCS用イネを推進する必要のない地帯
排水条件が良好な水田で、十分に露地野菜やトウモロコシ等が栽培できる地帯
各作物とも十分な生産量が確保できる地帯
どの地域でWCS用イネを推進するかを考える
湿潤な水田で、麦・大豆や飼料用トウモロコシ等が 安定して生産できない地帯 このような地帯だからこそ、 耕畜連携によって、イネWCSを推進する意義がある。 米の収量も多く、おいしい米がとれる地帯でもある WCS用イネを推進すべき地帯 WCS用イネを推進すべき地帯 稲しかできない地帯どの地域でWCS用イネを推進するかを考える
基本は地域内流通
地域、県域を超えた流通が今後の重要な課題
WCS用イネを推進すべき地帯 WCS用イネを推進すべき地帯 水田地帯で稲作農家と畜産農家が混在している地帯 いわゆる、水田畜産地帯何のための耕畜連携によるイネWCSの生産なのかを考える
● 一つは畜産農家のために!
● 一つは耕種農家のために!
●新たなサービス事業体の創設のために!
(コントラクター)
◇但し、
「利害関係」は、
最初から必ずしも一致するものではない!
WCS用イネ(イネWCS)の生産組織を考える
●畜産農家が集まった生産組織 ●耕種農家と畜産農家の共同作業・分担作業を行う生産組織 ●地域の耕種農家が組織化した生産組織 1)集落営農組合 2)米麦を中心とした土地利用型農業法人 ●労働力と機械装備を駆使して作業を受託する組織 コントラクター組織 【それぞれの、メリット・デメリットや課題がある】 地域にあった生産組織 を育成することが必要!様々な生産組織(体制)がある
畜産農家は「地耐力がある水田」で「飼料生産を行う労力」があれば、 ●牧草やトウモロコシの生産に努めて欲しい・・・! 但し、 ●軟弱な水田では、畜産農家が自己完結的にイネWCSの生産を行うのも、 有効な飼料増産の手段
イネWCSの生産体制を考える 1
「畜産農家」が「耕種農家」の水田を借りて、イネWCSの栽培から収穫までの全ての作業を行う これも、耕畜連携の一つではあるが・・・・?イネWCSの生産体制を考える 3
法人格を持ったコントラクターへ 社会的信用のあるサービス事業体
コスト意識や経営センスを備えたサービス事業体 任意機械組合のコントラクター
栽培管理や収穫調製、給与技術のような 「技術的な課題」 は比較的支援しやすい (技術的な情報量は豊富) 耕種農家と畜産農家の良好な関係の組織体制をつくること
どのような生産組織(体制)でも必要なこと
重要なのは、「人と人との連携」、「つながり」をつくること (失敗を許し、成功につなげる人間関係の構築が必要)耕種農家: 換金作物として成立するか 畜産農家: 輸入飼料と比較して割安感 どこで、 折り合いを付けるかが重要 イネWCSは販売をともなう国産飼料、価格を決めることが必要
販売価格に大きく影響するのが、助成金ではあるが・・!
助成金の変動で販売価格が大きく変動しては、国産飼料の意味がない。関係機関はコーディネータとして、 中立的な立場で冷静に、明確な情報を提供する
価格設定は、あくまで耕種農家と畜産農家の間で決めるべきもの!
関係機関が価格設定に深く関わるべきではない(私見)。
最終的に判断するのは経営主 でも畜産農家、耕種農家、関係機関で将来像を描いて夢を語りたい!! 「耕種農家」と「畜産農家」の合意で、価格は決める 機械の更新のための原価償却費を考えておくことを忘れてはならない価格について考える 忘れがちな重要なこと(その1)! (特に多くのロールを購入する場合) 一括支払いが困難な場合もある (米を出荷する場合) 出荷後に早々に入金される 最初に決めておかないといけないこと !! 販売代金の支払いをいつ、どのように行うか?
●開封しないと品質が分からないのが、「ロールベールサイレージ」 ●収穫調製して保管場所(圃場やスットクヤード)から、給与までの期間において、 品質を維持し、その品質管理の責任を誰が負うか? 価格について考える 忘れがちな重要なこと(その2)! ・圃場やストックヤードで収穫調製・保管された時点で、売買契約を締結 ・農家の庭先に運ばれた時点で、売買契約を締結 開封して劣質なサイレージだった時に、責任の所在を明確にすることが必要 先ずは、劣質なサイレージを作らない、流通させないこと! 売買契約を どの時点で締結するか? (圃場やストックヤードで集積してから、流通・販売する場合)
価格について考える
忘れがちな重要なこと(その3)!
耕畜連携を進めて上手くいった事例
伊勢湾岸の水田地帯は、地下水位が高く湿潤な水田 大規模稲作農家・土地利用型農業法人と兼業農家が顕在 大規模稲作農家は、主食用米の他に新た収入源を模索 松阪牛の肥育地帯 伊勢湾岸地帯は県下でも有数の水田地帯 稲ワラの収集・販売から始めた耕畜連携稲ワラの収集・販売から始めた耕畜連携の取り組み事例 【初めての取組での問題点】 土砂の混入、生乾きのワラでカビが発生 (流通先の畜産農家からクレーム) どのような稲ワラが良いかが分からない? 初年目の機械は肉牛農家の機械を借用 稲ワラの収集・販売がビジネスとして成立! 【良質な稲ワラの収集販売が可能に】 ●技術研修会の開催 ●畜産農家との懇談会 保管庫も確保 自前の育苗ハウスを利用 JAの育苗センターのハウスを借用
稲ワラの収集・販売からイネWCSの生産・販売へ イネWCSに対する認識も低く、手厚い支援体制もない時代 経営主は、イネWCSの生産販売がビジネスとして成立するか不安 耕種農家の素朴な疑問? 稲ワラは乳牛飼料 として利用できないの? 試験栽培・デモ機の活用 経営試算の提示 畜産農家への営業活動 事業を活用して専用収穫機を導入! イネWCSを本格的に導入するかを決めるのは、経営主の判断 ○私たちができることは、WCS用イネの導入に対する的確な情報提供 (意義と将来展望について、経営主と論議を重ねることが重要) 中山間地帯のメガファームへ供給 市内の酪農家に提供
イネWCSを推進して、上手く定着しなかった事例と要因
極端な早刈り、極端な遅い刈り、雑草が多く混入、カビの発生、土砂が付着 (輸入牧乾草が安価な時代では、電話1本でクレーム、交換されていたが・・・) 解決の余地は十分にある! ・良質で安定したイネWCSを生産・販売すること ・畜産農家の要望に応じた熟期に収穫調製すること 1.畜産農家が求める品質を、よく理解できなかった事例 注)クレーム対応として、原物補填して対応(近年、このような組織も多い) 迅速なクレーム対応が信頼につながる●現在の生産調整の助成金を中心に、販売価格を設定してしまう 注)値上げ交渉は、非常に難しい 価格設定の問題は難しい ??? 2.販売価格の設定が生産者と利用者の間で折り合いがつかなかった事例 助成金に大きく依存しない 可能な限り適正で一定価格を維持する 助成金の切れ目が、縁の切れ目にしない! 肥料等の資材価格の変動で、生産単価も変動する
イネWCSを推進して、上手く定着しなかった事例と要因
イネWCSを推進して、上手く定着しなかった事例と要因
各稲作農家の日程調整、段取り等で意見が合わない (各農家が親方であり、主たる指導的立場の人材がいなかった) リーダが不在 大規模稲作農家の集団の中で、リーダを育成するのは難しい 3.大規模稲作経営体を集めて組織した生産体制の事例強い意志と展望を持ったリーダが、組織を動かす
●耕種農家と畜産農家の意識に差が生じてしまうことがある(共同作業の場合)。 ●耕種農家が、畜産農家のためのボランティアというような感覚を持ってしまう 誰のためにイネWCSを 生産しているのかな? 4.耕種農家と畜産農家で構成した生産組織による事例
労働単価や分担金など、作業に対する平等性を高める
イネWCSを推進して、上手く定着しなかった事例と要因
イネWCSを推進して、上手く定着しなかった事例と要因
関係機関の果たすべき役割は非常に重要自分達の組織や地域を考え、ビジネスモデルを描いて欲しい!
関係 機関 5.関係機関に非常に強く依存した生産体制の事例 でも、関係機関に頼り過ぎてしまわないこと!私個人の能力の問題
今回、上手くいかなかった組織体制を紹介しましたが、
同じような体制で、しっかりと耕畜連携を進めている事例は、
全国にたくさんあります!
推進しようとして、上手くいかなかった事例は、
組織体制などが悪い訳ではありません!
最後に、現在でも付き合いが続いている土地利用型農業法人
14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 23年 24年 0.3 1.0 1.5 5.4 13.1 22.3 30.4 30.0 29.5 28.8 31.5 耕畜連携による飼料生産を続けている農業生産法人のWCS用イネの作付面積の推移 ha 伊勢湾岸水田地帯:「イネWCS」+「ムギWCS」の二毛作の導入 中山間部の畑作地帯:「トウモロコシサイレージ」の生産・販売を検討新たな事業展開を目指して
・より良い商品をより多く ・トレサビリティーの取組みも開始 中山間の畑作地帯「商品」であればこそ、「高品質なイネWCS」 を生産・販売しなければならない! 不良品・低品質飼料は「作らない」、「運ばない」、つまり 「販売しない」ことが鉄則 ○耕種農家:増収のための栽培管理を行う ○コントラクター:良質なイネWCSを収穫調製する ○畜産農家:国産飼料として、イネWCSを継続的に利用する ◆国産飼料を利用した高付加価値化畜産物の生産に対して、消費者への理解醸成 を図る ◆イネWCSの増収、高品質生産に対するインセンティブが働くシステム を構築する 関連する全ての業界(運送業界を含む)が、 【適正な利益】を得て、その【利益を適正に分配】し、しかも 【経費も適正に負担】 耕種農家+畜産農家+運送業界+消費者=「耕畜運消連携体制」 「耕畜連携」 生産・販売するのは、イネWCSという名の