4.指導にあたって
本単元では、国民の食料を確保するという重要な役割を果たしている食料生産が、国内の 各地で生産されたものだけでなく外国からの輸入に依存している事実を理解し、1学期に学 習した農業・水産業についての学びも活用しながら、これからの食料生産について自分の考 えをもつことができるようにする。 本単元の学習活動の中には、「必要な情報を資料から読み取り、自分の考えをもち、話し合っ て考えを深め合い、学んだことを表現する」という、社会科で必要とされる言語活動がすべ て盛り込まれている。これらの言語活動を効果的に行うことによって、本単元の目標により 迫ることができる。 指導にあたっては、まず、表・グラフなどの統計資料から必要な情報を読み取る際に着目 すべきポイント(表題・出典・縦軸と横軸の項目と単位・最大値・最小値・数値の大きな変 化・数値の小さな変化など)を指導する。読み取ったことは書き出しておき、後で自分の考 えをもつための材料として活用できるようにする。 次に、調べたことを基に自分の考えをもつ際には、複数の視点を与え、社会的事象をより 深くとらえられるようにする。 自分の考えを根拠を示しながら説明する際には、話型を提示し、話す活動や聞く活動がス ムーズに進むようにする。学級全体で話し合う際には、指導者が児童の意見や話し合いの流 れを板書して提示することで、発言内容の重複を防いだり、発言すべき視点を明示したりす ることができ、話し合いを効果的に進めることができる。 最後に、これからの食料生産について自分の考えを表現する際には、書くべき主な事項を 提示し、学習目標により効果的に迫ることができるようにする。この単元での基本重要語彙 輸入 輸出 食料自給率
この単元で重視した言語活動
○ 地図や写真、統計資料などから、必要な情報を集めて読み 取り、わかったことを言葉で表現する。 ○ 調べてわかったことを比較・関連付け・総合しながら再構 成して、社会的事象の意味を考え、自分の言葉で表現する。 ○ 考えたことを、根拠や解釈を示しながら図や文章などで表 現し、説明する。 ○ 考えを伝え合うことにより、互いの考えを深める。 次 時 学習活動 指導上の留意点5年 社会科実践事例
1 .単 元
世界とつながる食料生産
(日本文教出版 5年上「食料生産をささえる」関連)
2 .指 導時 期
9月3 .目 標
○ 食料品の輸入やわが国の食料自給率の変化について調べ、日本の食料 生産の特色や現状について理解し、これからの食料生産のあり方につい いて考えることができるようにする。 ○ 地図や写真、統計など各種の資料を効果的に活用して日本の食料生産 について調べ、調べたことやその意味について考えたことを、根拠や 解釈を示しながら図や文章などで表現し、説明することができるよう にする。5.学習指導計画(全4時間)
Ⅰ 1 1.自分たちの食生活を振り返 り、発表する。 2.学習課題をつかむ。【課題】 3.食料品の輸入について、資 料を基に調べる。【調べる】 4.食料輸入が増えた理由を考 え、話し合う。 【考える】 5.食料輸入増加の影響を予想 し、次時への意欲をもつ。 【ひろめる】 ○普段の生活の中で見かける、外国から輸入され ている食料品を思い出して発表し、輸入食料品 について興味をもつことができるようにする。 ○「外国から輸入されている食料品について調べ よう」という学習課題をつかむことができるよ うにする。 ○「自給率」「輸入」「輸出」という言葉の意味を 補説する。 ・地図とグラフ「おもな食料の輸入先と輸入のわりあい」 教科書69ページ ・グラフ「おもな食料の輸入量の変化」社会科資料集 文 溪堂2010年版(以下「資料集」)44ページ ○教科書の資料から読み取れることに加え、これ までの学習内容も想起できるようにする。 ・グラフ「食生活のうつり変わり(1人1日あたり)」教 科書70ページ ・グラフ「国産と輸入農産物のねだん」資料集45ページ ○これまでの学習を生かし、日本の農業や水産業 に携わる人々の立場に立って考えるように助 言する。 2 1.身の回りの大豆製品につい て発表する。 2.学習課題をつかむ。【課題】 ○大豆が生活に身近な食料品であることをとら えた上で、大豆の自給率の変化を調べ、他の食 料品の自給率を調べようとする意欲を高める。 ○「食料自給率の変化を調べ、食料輸入の問題を 考える」という学習課題をつかむことができる ようにする。 ・どうしてこんなに食料の輸入が増えてきたの でしょう。1学期に学習したことや、資料か ら読み取れることを基に考えましょう。 【ワークシート①】 「輸入される食料」 食料品の輸入について調べ、日本の食料輸入について関心をもつ。 食料自給率の変化を調べ、自給率の低下について理解し、食料輸入の問題を考える。 ・このまま食料輸入が増え続けると、どのよう なことが起こるでしょう。 【ワークシート②】 「下がる食料自給率」
3.主な食料の自給率の移り変 わりについて、資料を基に 調べる。 【調べる】 4.食料を輸入することの問題 点について考え、話し合う。 【考える】 5.これからの食料生産につい て自分の意見をもち、次時 の学習の見通しをもつ。 【ひろめる】 ○グラフの自給率の年々の変化に着目できるよ うにする。 ・グラフ「おもな食料の自給率の変化」資料集44ページ ○各国の自給率と比べることで、日本の食料自給 率の低さをとらえるようにする。 ・グラフ「おもな国の穀物の自給率」資料集45ページ ○「食料輸入を続ける」と「食料自給率を上げる」 のどちらに賛成かを考えておくように伝え、次 時の学習への見通しと意欲をもつことができ るようにする。 3 4 ) 本 時 ( 1.「食料問題会議」に向けて、 これからの食料生産につい て自分の意見をもつ。 2.自分の意見を文章にまとめ る。 【調べる】 3.「食料問題会議」を開き、話 し合う。 【考える】 4.「食料問題会議」を通して深 まった自分の考えをまとめ て感想文に書く。【ひろめる】 ○「食料問題会議」を行うという学習への見通し と意欲をもつことができるようにする。 ○ワークシートの話型に従って、自分の意見を書 き込むよう指導する。 ○児童の意見を整理して板書し、それを見ながら 互いに意見を言えるようにする。 ○まとめた作文は提示したり発表し合ったりし て、学級全体に広めるようにする。 ・このまま食料を輸入し続けていくと、どんな 問題が起こるでしょう。「日本にとって」「生 産国にとって」「両国にとって」の3つの立場 から考えましょう。 ・日本にとっては、国内の食料生産がだめにな り、生産国にとっては、環境が破壊されます。 そうなると、両国の関係が悪くなります。 「食料問題会議」を開き、日本の食料生産の特色やこれからの食料生産のあり方につ いて考える。 【ワークシート③】 「食料問題会議」 【ワークシート④】 「これからの食料生産」 ・これからの日本は、食料輸入を今まで通り続 けた方がいいと思いますか。それとも、食料 自給率を上げた方がいいと思いますか。どち らに賛成かを考えておきましょう。
6.本時の展開(3/4~4/4)
使用するワークシート【ワークシート③④】 学習活動 指導上の留意点 1.これからの食料生産 について意見をもつ。 ○「食料問題会議」を行うために、自分は「食料輸 入を続ける」と「食料自給率を上げる」のどちら の意見に賛成かを決め、学習への見通しと意欲を もつことができるようにする。 ○どちらか片方の意見に児童がかたよった場合は、 人数が尐ない方の意見の側を指導者が支援する など、その後の会議が活発になるように工夫す る。 2.本時の学習活動を知 り、課題をつかむ。 3.自分の意見の根拠を 考える。 4.教科書や資料集など の資料の中から、自 分の主張の根拠とな る事実を探し、それ を基に自分の意見を 文章にまとめる。 ○ワークシートの話型に従って、自分の意見を書き 込むように指導する。 ○事前に、必要な提示資料を準備するように児童に 伝えておくとともに、自分たちが調べた資料を提 示しながら話し合えるように、OHCなどの用意 をする。 食料問題会議を開き、食料生産について考えるという学習課題をつかむ。 【課題】 自分の意見の根拠となる事実を資料から調べ、それを基に自分の意見をまとめる。 【調べる】 ワークシートの話 型は、考えをまと めるための枠組み であると同時に、 発 表 原 稿 で も あ る。発表の際は、 このワークシート を 活 用 す る こ と で、話す・聞く活 動が効果的に行わ れる。 意見の根拠となる 資料を探す活動を 通して、自分の考 えを整理すること ができる。 ・「食料問題会議」で発表する自分の意見 をまとめましょう。 まず、なぜ「輸入を続ける方がいい」のか、なぜ 「自給率を上げる方がいい」のか、その根拠を考 えましょう。次に、「確かにそのとおり!」とだれ もが納得できる根拠を、教科書や資料集などから 見付けましょう。最後に、自分の意見を、聞く人 にわかりやすいように文章にまとめましょう。 【日本にとって】 ・輸入品は安全性が心配なので、日本で生 産する方がよい。 ・輸入が増えると日本の農業や水産業がだ めになると思います。 【生産国にとって】 ・日本の自給率を上げると、生産国は輸出 による収入が尐なくなるので困るだろ うと思います。 【ワークシート③】5.「食料問題会議」を開 き、これからの食料 生 産の あり 方を 考 え、話し合う。 ○児童の意見を、「日本にとって」「生産国にとって」 という2つの視点から整理して板書し、それを見 ながら互いに意見が言えるようにする。 ○友達の意見でなるほどと思うものをワークシー トに書きながら聞くようにする。 ○農水産業の新しい動きに気付くように、指導者が 資料を提示する。 ・写真「工場のようなしせつでの野菜作り」教科書 72ページ ・写真「安全性を考えてつくられた食品を売る店」教 科書73ページ 6.「食料問題会議」を通 して深まった自分の 考えを文章にまとめ る。 ○まとめた作文は提示したり発表し合ったりして、 学級全体に広めるようにする。