報告・指示の仕方・受け方
お茶の水ケアサービス学院
学院長 神 智淳(老年学修士)
講師プロフィール
• お茶の水ケアサービス学院学院長
コ・メディカルアカデミー学院長
老年学修士
日本健康医学会監事
福祉サービス第三者評価者
介護サービス情報公表調査員指導者
月間福祉介護テクノプラス 編集委員
専門的知識及び技術を有する福祉用具専門相談員養成研修 検討委員など
• 福祉サービス第三者評価者、介護サービス情報公表の調査員の指導・育成
に従事。公益団体との共同研究や外部評価に関する講演や執筆活動の他、
介護雑誌の編集委員を務めている。
• 介護施設や介護記録に関するソフトの開発・運営会社のコンサルテーション
を行う。
• 福祉用具専門相談員の適正配置に関わる養成モデル事業作業部会委員、
厚生労働省の福祉用具サービス計画のガイドライン作りにも携わる 。
こんなことありませんか?
上司編
言ったことが、正しく
伝わらない
指示したのに伝わっ
ていない
指示内容の変更を
理解してくれない
指示した事に対して
の報告が無い
いい報告はあるが、
悪い報告が無い
部下編
⇔指示された内容を把握し
たつもりが、違っていた
⇔単なる、世間話とおもって
いたら、指示だった
⇔以前の指示と全く逆のこ
とを言われた
⇔報告する程の重要事項
はないので、報告しな
かった
⇔以前、良くない報告をした
ら、怒られた
原因
⇒双方における指示内容の
確認不足
⇒上司の指示自体の不明確
さと双方の確認不足
⇒指示の目的、理由の説明
不足と部下の理解不足
⇒指示、報告のシステムの
不完全さ
⇒上司の報告に対する姿勢
と部下の報告の重要性
の認識
こんなやり取りはないですか?
• 今日は、忙しいですか?
→面談が沢山はいってます ×
→面談がたてこんでおり、結構忙しいですが、2~3時頃なら大丈夫です
→5時ごろ帰社できます ×
→忙しくはないですが、5時まで外出します
→とても忙しいです(回答としては、間違えは無い)
→忙しいですが、何か、用事がありますでしょうか?
※このやり取りは、指示や報告のミスを招く要因の一つです
質問を正確に聞き取ることが重要です
※質問の仕方にも問題があります
例)今日、30分ほど事業所で時間取れますか?
報告・連絡・相談とは何か?
•
報告とは
– 告げ知らせること。特に、ある任務を与えられた者が、その経過や結
果などを述べること。
•
連絡とは
– 気持ちや考えなどを知らせること。情報などを互いに知らせること。
•
相談とは
– 問題の解決のために話し合ったり、他人の意見を聞いたりすること。
また、その話し合い。
報告・連絡・相談の本質
•
報告
(経過報告、事故報告、研修報告、日報・・・)
–
任務に対する義務です。
•
連絡
(ケース記録、申し送り、連絡帳、職員間の会話・・・)
–
気配りといわれることがありますが、保健医療福祉の業
界においては、義務。情報共有と捉えましょう。
•
相談
–
問題解決(目標と現状のギャップを埋めること)のアプ
ローチの一つです。
1、指示の方法
用途
対象
メリット
デメリット
口頭(電
話含む)
通常の指示
急ぎの場合
簡単な内容の場合
比較的少人数 早い
容易
ニュアンスが伝わる
指示内容の伝達の漏れ
及び相違
指示の仕方の標準化と
受け方の訓練が必要
文書
(メール含む)
重要な事項
数字等を扱う場合
方針に係る場合
内容が多い場合
複雑な内容の場合
比較的多人数 指示内容の伝達の確
実性が高い
画一的に指示できる
手間がかかる(時間要)
ニュアンスが伝わりにくい
メールの場合は、受信後見
たかどうかの確認が必要
併用
特に重要な事項
の指示
少から多人数 確実な伝達が、細部ま
で可能
手間がかかる(時間要)
番外編-実際に実務を交えて指示する方法もあります。通常、上記との併用になります。
–記録やメモは必要です
※指示内容を正確に復元する。指示自体を忘れないようにする。
2、指示の内容
1
)目的と理由
– 指示に至った目的
– 理由(Why)
• 責務を高い精度において実行できます。
• 事業所の考え方や福祉の在り方を伝える機会になります。
2
)実施内容
①指示事項を伝えます。誰が(Who)、何を(What)、どこで(Where)、誰に
(Whom)、予算(How much)、
②プロセス(How)指示を受ける職員のレベルに合わせる必要があります。
③期日(When)
• いつから、いつまで
④報告(相談)の仕方
• たとえば、1カ月かかるものであれば、毎週●曜日に
• 1週間であれば、2日おきに、毎日、中間でなど。
②プロセスがとても重要
•
指示 → ヨット(H
ow)
で、アメリカに行ってきてください。
•
皆さんが、このような指示を受けたらどうしますか?
• この指示では、アメリカに無事にたどり着ける職員は少ないでしょう。
–(間寛平さんがいれば別ですけどね!)
• プロセス(アメリカにたどりつくため)に必要な事項は、ヨットの扱い方、経
路、食糧補給、出国(入国)審査、英語によるコミュニケーション等々さまざ
まです。
• 人によって(間寛平さんと皆様では)必要なプロセスのレベルが違うわけで
す。
• その人のレベルに合った、プロセスを伝えることが必要です。
• 指示の内容に、教育的視点を含めることが重要です。
–細かくしすぎては、考える過程を経験させることはできません。
3、指示の内容の確認
•
指示した内容が、確実に伝わっているかの確認
1
)メモされた指示内容をありのまま復唱してもらいましょう。
(必要に応じて)
• 聞いてないということがないように
2
)指示の内容を整理した後、復唱してもらいましょう。
• 聞いてはいるが、間違えて理解することがないように
3
)どう取り組むのか話してもらいましょう。
• 指示に対して、取り組む方向性を間違わないように
※言ったかどうかがではなく、正しく理解したかどうかが重要!
(指示の内容は具体的でなければなりません)
ポ イ ン ト
1、指示を受けた内容をメモする
1
)上司の指示を、言葉通りにメモに書き写す。
※話を聞くこととメモすることだけに集中してください。疑問等をもた
ずありのまま聞くことを心がけましょう。
①ここでは要約をしないように注意する。→早とちりになります
②自分の考え方は挟み込まない。→情報をゆがめます
③表情の変化に気をつける。→仕事の姿勢が評価されます
2
)慣れないうちは、ここでメモの内容を復唱し、不明点を確認する
やり方もあります。
※ここの部分が指示を受けるうえでの最初の大切なステップとなり
ます。ここを、慎重に行わなければ、指示に沿った業務ができま
せん。
※ここができていないケースがとても多いのではないでしょうか?
2、メモした内容を自分なりに整理する
1
)メモした内容を確認し、どういう指示であるのかを、
ニュートラルな姿勢(極力自分の思いを排除しなが
ら)で捉えます。
2
)次に、捉えた指示の内容を自分が行うことを前提と
して、整理し組み立て直します。
※高度で複雑な指示だと、ここに時間が割かれます。
特に、このような場合は、
1
の逐語的にメモされた情
報が大変役に立ちます。
こんなことが、ありませんか?
指示をした側
指示を受けた側
①
加藤さん、お願いしたいことがあるの
だけど、ちょっと、いいですか?
②
はい、今行きます。
③
この書類に利用者から署名をもらっ
てきてください。
④
はい、わかりました。
⑤
居宅を訪問し、家族に捺印してもらい、
書類を提出した。
⑥
お疲れ様、ありがとう。
⑦
アッ!この書類では適切でないので、
もう一度お願いします。
⑧
えっ!言われた通りやりましたけど・・・・
(プンプン!!)
Ⅲ、報告の仕方
報告の基本
•
報告の種類
–
現場職員→上司(上長)→責任者→社長・理事長
• 指示に対する報告
• 情報提供や判断を仰ぐ・指示を受けるための報告
–
社内・社外関係者に対する報告
•
報告をされる方にとって
①必要な人に、②必要な事を③必要な時に
④必要な内容で⑤正しく伝える事
が基本です。
※自分の言いたいことを伝える事ではありません
‐報告される側が、どのような情報を必要としているか
‐報告される側が、何を最も知りたいのか
上記を押さえることが重要です
報告の仕方
1、報告の方法 口頭、文書、メール、併用
2、報告のタイミング
3、報告の内容
4、今後の方針について確認
1、報告方法
用途
対象
メリット
デメリット
口頭
(電話含む)
通常の報告
急ぎの場合
簡単な内容の場合
比較的少人数 早い
容易
ニュアンスが伝わる
報告内容の伝達の漏れ
及び相違が起きやすい
報告の仕方の標準化と
受け方の姿勢が重要
文書
(メール含む)
重要な報告
数字等を扱う報告
内容が多い報告
複雑な内容の報告
記録を残す必要がある場合
比較的多人数 報告内容の伝達の確
実性が高い
画一的に報告できる
手間がかかる(時間要)
ニュアンスが伝わりにくい
メールの場合は、受信後見
たかどうかの確認が必要
併用
重要な事項の報告 少から多人数 確実な伝達が、細部ま
で報告できる
手間がかかる(時間要)
2、報告のタイミング
•
指示された任務が終了した時
•
長期の仕事の進捗状況等の中間報告
•
状況の変化や指示内容の方向性を変更する必要が生じた時
•
指示の目標に到達できない可能性がでてきた時、事故やミスが起き
た時
– 悪い報告は直ぐに報告することがマナーです。
– 事故が大きくなるなど、傷口を広げます。
– 仕舞い込んだり、先延ばしにすると、今迄築き上げた信用を失います。
(自分で何とかしようとしても、先延ばしにした事実は消えません。)
※タイミングが重要です。上司の都合も配慮(電話の報告は更に気をつけましょう。)
※上司が尋ねる前に、報告するのが基本です。
※緊急の時を除いて、伝言は不可。伝言の場合は、後ほど直接報告しましょう。
※誰に報告するのか間違わない事、基本的には指示した方に報告です。指示した方
と直属の上司が違う場合は、どちらにも報告しましょう。
3、報告の内容
1
)報告の挨拶
–
先日、指示いただいた、●●の件で報告をしたいのですが、5分
ほどですが、今よろしいでしょうか?
–
緊急の報告です。3分くらいですがいいですか?
–
●●の件ですが、長くなる(●時間)ので時間を取って頂くことは
可能ですか?
–
電話で失礼します。●●の件ですが、よろしいでしょうか?
結論だけ申し上げ、詳細は後ほどで構いませんか?
※先方の状況を考えて報告するのは、エチケットです。
※誰かと会話しているときや計算中など業務に集中している時に、声をかけるの
はもってのほかです。基本の「き」ですね
3、報告の内容
2
)結論を伝える
–
事実のみを、客観的な視点で正確に伝えることが重要
です。
–
個人の考え(推測、憶測)は厳禁です。
–
重要なものから、優先順位をつけてはなします。
•
報告で重要なのは、報告される側にとっての重要度の高いも
のです。指示の方針を把握していれば、優先順位は付けれる
はずです。
–
悪い報告が先になります。いい報告は後回しでかまい
ません。(いい報告もすることには変わりありません。
–
口頭であっても要点をメモにまとめておくことは必須で
す。
4、報告への対応
1
)再指示や今後の取り組みを伝える
①報告を基に判断する
• 状況把握→課題抽出→原因分析→対策の検討
②決断内容を伝える(決断を求められたら)
• 状況に応じて今後の展開の可否をする。決断ができないときは、いつま
でに結論を出すことを伝える。
2
)報告に対するアドバイス(教育的視点)
①うまくいかなかったときは、報告者に考えさせる
• 課題は何か、原因は何か、どう対応すればよいか等を考えさせる
②報告の仕方は適切であったかの振り返り
• 報告の順番は適切か、解りやすい報告か等
3
)私見やねぎらいの声かけをする
①感謝の一言が、今後の報告に影響します
②成果と共に、プロセス等内容に言及するとよい