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[ 30 p. 1-8 (2012)] / ** *** Numerical Analysis of Metal Transfer Phenomena - critical condition between globular and spray transfer mode - by KADOTA

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1. 緒     言 ガスメタルアーク溶接(以下,GMA 溶接と記す)は,細径 ワイヤを用いることから溶着速度が高く,自動化・ロボット 化も容易であるため,製造現場において広く利用されている 溶接法である.GMA 溶接では溶加材であるワイヤが電極の 役割を担うわけであるが,抵抗発熱により予熱された電極ワ イヤはアーク熱によって溶融し,溶滴となって溶融池へ移行 する.このため,アーク放電の電極として見たとき,ワイヤ 端の溶滴形状が電極形状であり,時間とともに電極形状が変 化するアーク放電となり,熱源が安定ではないといった問題 も抱えている.これは溶接品質に直結する問題であるため, 高品質・高能率な GMA 溶接を実現する上で,溶接アークの 電極挙動である溶滴移行を制御することが必要となる.しか し,溶滴には重力をはじめ,電磁力,表面張力,そして周囲 ガス流によるせん断力といった力が働いており,その移行現 象は非常に複雑である. 近年,コンピュータの性能が格段に進歩したことに伴い, 数値シミュレーション技術が発展し,流体現象や分子原子挙 動などの複雑な現象の解析においてその利用が盛んに行わ れている.溶滴移行現象の解析も同様であり,1985年には Cramにより棒端の液滴が重力で変形する過程を流動解析す る一次元モデルが提案され1) ,1989年には平田らによって,橋 絡液柱が電磁ピンチ力によって変形し,そして破断するまで の過程を解析する軸対称二次元モデルが発表された2,3).1995 年に発表された Haidar と Lowke らによるモデルでは,自由 移行現象を対象とし,軸対称二次元のアークと溶滴挙動を統 合化した4) .最近では,溶滴移行現象とアーク放電現象,溶融 池現象を統合的に解析することができるモデルも発表され, アークや溶融池との相互作用を含めた溶滴移行現象の理解 に貢献している5) .しかしながら,現在発表されている数値モ デルの解析条件はかなり限定されたものであり,実用的に必 要とされる溶接電流やアーク電圧,ワイヤの種類,シールド ガスなどの操作パラメータの変化に対して,溶滴やアークが どのような挙動を示すのかを定量的に解析できるモデルは 未だ開発されていない.もとより,数値モデルを用いて現象 を忠実に表現するためには,考慮すべきパラメータが増え, モデルそのものが複雑化することになり,個々のパラメータ の影響を抽出することが難しくなっていくといった問題が ある.そこで,本研究では GMA 溶滴移行現象を定量的に理 解することを目標とし,段階的に操作パラメータを増やして いくことにした.本報告ではその第一段階として,溶接ア

溶滴移行現象の数値解析

−グロビュラー移行/スプレー移行の臨界条件− 門田 圭二**,平田 好則***

Numerical Analysis of Metal Transfer Phenomena

critical condition between globular and spray transfer mode

-by KADOTA Keiji**and HIRATA Yoshinori***

Metal transfer modes in GMA welding process are different from welding variables: current, voltage, shielding gas, electrode wire and etc. Essentially they are influenced by physical properties of molten metal and electro-magnetic force. Then we numerically investigated the time-change of liquid transfer process using calculation model developed. The numerical result agreed very well with experimental result of water drop transfer from cylindrical nozzle. Numerical analysis shows that liquid transfer modes depend on the pressure balance at the tip of drop. When the dynamic pressure induced by liquid flow is lower than capillary pressure due to surface tension, globular transfer occurs. In contrast, when the dynamic pressure of liquid flow is higher, spray transfer occurs. In the case that the electrical current flows in the liquid, electro-magnetic force significantly influences on the transfer mode and the drop detachment. As for liquid flow-out from the nozzle of 1.2 mm in diameter, calculated results with use of physical properties of molten mild steel show that electro-magnetic force induced by higher current than 250 A changes the transfer mode from globular to spray. Whereas in real GMAW with pure argon gas shielding the transfer mode changes at around 230 A. The behavior of drop detachment is varied by both spatial distribution and time-change of the electro-magnetic force.

Key Words: Metal transfer phenomena, Globular transfer, Spray transfer, Surface tension, Viscosity, Electro-magnetic force

*受付日 平成23年 9 月27日 受理日 平成24年 1 月10日 平成 20年度秋季全国大会で発表

**学生員 大 阪 大 学 大 学 院   工 学 研 究 科   Student Member, Graduate School of Engineering, Osaka University ***正 員 大阪大学大学院 工学研究科 Member, Graduate School

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ークによるワイヤ溶融・移行現象を細径ノズルからの液体流 出現象として捉え,その理論モデルを構築するとともに実験 との比較を行った.液滴移行現象を調べる上で,液体の表面 張力と粘性,そしてノズルからの液体の流出速度をパラメー タとして取り上げ,一定速度で成長する懸垂液滴の移行挙動 をモデル解析した. 2. 溶滴移行の数値解析モデル 2.1 解析モデルの仮定 GMA溶接中,十分に時間が経過しワイヤの送給速度と溶 融速度が等しく,ワイヤの溶融部と固体部との境界が動かな いときを考える.このとき,電極ワイヤの溶融現象は,あた かも溶融金属が固液界面から供給されて,溶滴がワイヤ端で 成長しているように見える.そこで,本研究ではこの溶滴挙 動をノズルから液体が流出する現象に置き換え,数値モデル により解析することにした.液滴移行現象モデルの模式図を Fig. 2.1に示す.また,溶滴移行において大きな駆動力である 電磁力の効果を解析する際には,液滴の下にアークに対応さ せた導電領域を設定し,計算領域下端からノズル出口までの 電流の流れを計算することによって,計算上に電磁力を導入 する.以下にモデル化における仮定を挙げる. (1)液体の挙動はノズルの中心に対して軸対称である. (2)液体は全て非圧縮性流体と仮定し,流れは全て層流であ る (3)ノズルからの液体の流出速度は一定で,半径方向に一様 である. (4)液滴に作用する力は,重力,表面張力,粘性,そして電 磁力に起因する力とする. (5)液体の表面張力,粘性,密度は一定である. (6)液滴とアーク領域からなる導電領域の電気伝導率,透磁 率は一定である. (7)アーク形状は時間によって変化しない. 以上の仮定より,導電性流体の移行挙動を二次元円筒座標で モデル化した.なお,計算格子は等間隔の矩形スタガード格 子を用いた. 2.2 基礎式と計算方法 液滴の移行現象は自由表面を有する流体現象であるため, 時々刻々と変化する界面の位置を捕捉しなければならない. このモデルでは,界面捕捉法として Kothe による VOF 法 (Volume-of-Fluid method)6,7)を採用している.VOF とは流体の 体積占有率を意味しており,本モデルでは液体の体積占有率 を F 関数とし,式 (1) に示すように計算格子は,F=1 のとき は全て液体,F=0 のときは全て気体で構成されていると考 え,その間の値をとる場合は二相の流体から成り,格子中に 境界が存在する境界セルと考える.この体積占有率 F 関数は 流れとともに変化することから,VOF 法では式 (2) を用いて 界面の移動を表現する.また,二相が混在する境界セルの物 性値は体積比率に応じた性質を持たせ,式 (3) を用いて二相 間で性質が連続的に変化するものとして扱うことで,数値計 算の上でネックとなる境界での不連続性を緩和させ,自由表 面を含んだ流体の挙動を安定に解析できることが VOF 法の 大きな利点である.

F = 1 in the liquid phase

0 < F < 1 in the boundary region (1) F = 0 in the gaseous phase

●●●●● (2) φblF+φg(1−F) (3) ここで,F は液体の体積占有率,v は流速ベクトル [m/s],φb, φl,φgはそれぞれ境界セル,液相,気相の物性値を表してい る.流速ベクトルは,次の連続の式と運動方程式の連立によ って計算される. ∇・v = 0 (4) ●●●●●    (5) ここで,P は圧力 [Pa],τは粘性テンソル [Pa],g は重力加速 度 [m/s2 ],F は外力 [N/m3 ] を示す. 本研究では,二式を連立させて数値的に解く方法として SMAC法を用いた.式 (5) の外力項 F は本モデルでは表面張 力と電磁力が相当する.表面張力によって働く毛管圧力を計 算するためには,自由表面の形状を精度よく表現する必要が あり,本モデルでは VOF 法と相性のよい CSF モデル8) を用 いた.VOF 法のように気液境界を連続的に変化する境界層 として取り扱う場合,CSF モデルを用いることで,実際には 表面そのものに働く圧力を表面付近にある計算格子を用い て体積力として表現できる方法である.この手法を用いる と,正確な表面位置の情報がなくとも表面張力により働く力 を与えることができる.CSF モデルでは表面張力が作用する ときに働く体積力ベクトルFst[N/m 3 ] は次式で記述できる. ●●●●●    (6) ここで,γは表面張力 [N/m],κは曲率 [m-1 ] を示す. 次に,電磁力ベクトル Fem[N/m 3 ] は次式で導かれる. Fem= J×B (7) ここで J は電流密度ベクトル [A/m2 ],B は磁束密度ベクトル [T] であり,それぞれ次のオームの法則とアンペールの法則 より導くことができる. J = −σ∇V (8) ∇×B = μ0J (9) ここで,σは電気伝導率 [S/m],μ0は真空の透磁率(4π×10 -7 H/m)である.

(3)

3. ガラス管から流出する水滴の移行現象 3.1 数値解析 まず,本研究で構築した数値解析モデルの適用性を検証す るため,ガラス管から流出する水滴の移行現象を解析した. Table 1は数値計算に用いた水の物性値である.ガラス管の 内径は,GMA 溶接で広く使用されているワイヤ径と同じ 1.2 mmとし,数値計算の境界条件は Table 2 に示すように次 節で述べるモデル実験との整合性を考慮した.すなわち,水 はガラス管の中を流れてノズル出口から流出し,水滴が形成 されるので,Fig. 1 における流出面 ab では速度一様ではな く,ガラス管内壁との摩擦を考え,ハーゲン-ポアズイユ流と して扱い,中心で最大値を持つ放物線則で与えている. 本節では,パラメータとして流出速度を取り上げ,計算し た.Fig. 2 (a) は,流出速度が遅い場合(0.21 m/s)の計算結果 を示している.図から直径 3 mm 程度の大きな水滴がガラス 管出口付近で分離・離脱しており,いわゆるグロビュラー移 行と呼ばれる移行形態を示している.計算では水滴の大きさ の変化はほとんどなく,安定した水滴の移行サイクルを繰り 返した.次に,流出速度が速い条件(0.35 m/s)では,Fig. 2 (b) に示すようにスプレー移行のような移行形態となり,ガ ラス管出口から水柱となって伸びており,その先端から水滴 が分離している.なお,分離した水滴の大きさは時間ととも に変化し,一定のサイズにならないことが分かる.以上の数 値シミュレーションから,ガラス管から流出する水滴の移行 形態が,流速によってグロビュラー移行とスプレー移行に変 化することが明らかとなり,GMA 溶接における溶滴移行現 象にも適用できる可能性が示された. 3.2 モデル実験 前節で述べたシミュレーションの計算精度を確かめるた め,モデル実験を行った.Fig. 3 に示すように中空のガラス管 を鉛直方向に固定し,その上部からポンプにより純水を送給 する.このガラス管の内径は 1.2 mm である.なお,モーター 式ポンプでは送流にやや脈動が生じるため,ポンプとガラス 管の間で密閉フラスコを経由させることによりバッファ効 果を生じさせ,脈動を抑えている.Fig. 4 はモデル実験による 水滴移行現象の連続写真を示す.図中 (a) は流出速度を 0.21 m/sと設定した条件である.このとき,水滴サイズが 3mm程度となっており,ガラス管内径よりも大きく,グロビ ュラー移行となっている.移行周期を見ると,シミュレーシ ョンでは 79 ms であったのに対し,実験では 71 ms と若干短 く,それに伴い水滴の大きさもやや小さくなっているが,シ

Table 1 Physical properties of water.

Table 2 Boundary conditions for calculation of water drop transfer.

Fig. 1 Schematic of electrically conductive liquid transfer model.

Fig. 2 Numerical simulation of water drop transfer from glass nozzle of 1.2 mm in diameter.

(a) Average flow velocity = 0.21m/s

(4)

ミュレーションと同様の移行形態を示している.次に,流速 を約 1.5 倍の 0.35 m/s に速くすると,Fig. 4 (b) に示すように ガラス管出口から水柱が伸び,その先端から小さい水滴が分 離・移行するスプレー状の移行形態となることが分かる.ま た,二滴分の水滴が同時に移行することもあり,計算結果と 同様に,水滴の大きさが一様にならず安定しないことが分か る.ガラス管から流出した水柱の長さに注目すると,実験で は計算よりも 3 分の 1 程度に短くなっているが,これは数値 粘性によるものと考えられる.数値計算では計算の過程で誤 差が拡散していくため,これが計算上粘性のように働くこと がある.そのため,正味の粘性が入力した数値より大きくな って数値計算の結果では水滴が実験と比較して長くなった ものと考えている.水滴の長さには大きな差が出たものの, スプレー移行とグロビュラー移行のどちらに分類されるか という観点で評価すれば,数値シミュレーションによる予測 と実験結果とがよく一致しており,このモデルを用いて溶滴 移行におけるグロビュラー移行/スプレー移行の臨界条件を 予測することも可能であると考えられる. 4. 溶滴移行モデルによる解析結果 GMA溶接では溶融したワイヤが溶滴となって移行する が,その溶融金属の表面張力,粘性の大きさが移行形態にど のように影響するかをモデル解析により調べた.液体の物性 は,Table 3 に示す溶融軟鋼のものを基準としている.また, 計算領域の境界条件を Table 4 に示す.第 3 章で述べたよう なノズルから液体が流出するような現象では,ノズル出口と 流出液体の境界はフリースリップとして扱う.しかし,本研 究では固体のワイヤ電極端がアーク熱で溶融・流出する現 象を対象としているので,本モデルのノズル出口と空気中に 流出した液体とは固液境界となっており,境界条件はノンス リップで定義している. 4.1 表面張力と粘性が移行形態に及ぼす影響 本節では,まず電磁力は働かないものとし,パラメータと して液体の流出速度と表面張力を変化させて計算を行い,移 行形態を調べた.計算結果が Fig. 2 (a) のような移行形態を 示すものをグロビュラー移行,Fig. 2 (b) のような移行形態を スプレー移行として分類した.Fig. 5 は横軸に流出速度,縦軸 に表面張力をとり,計算による移行形態を分類したものであ る.流出速度を速くすると,移行形態はグロビュラー移行か らスプレー移行へと変化している.これに対して表面張力を 大きくした場合は,スプレー移行からグロビュラー移行へと 変化していることが分かる.このように移行形態が変化する 理由として,液体がノズルから気体中に流出することによっ て,自由表面が形成されることになり,下方に移動する液体 を表面張力が上方へと押し上げることが挙げられる.すなわ ち,表面張力が増加すると,その押し上げる力が大きくなり, ノズル出口からの液体の連続的な流出を妨げることになる. その結果,ノズル端に液滴が形成され,時間とともに大きく なり,グロビュラー移行になるものと考えられる.言い換え ると,流出速度を速くすると,スプレー移行化させる方向に

Fig. 4 High speed pictures showing water drop detachment and transfer from glass nozzle of 1.2 mm in diameter.

(a) Average flow velocity = 0.21 m/s

(b) Average flow velocity = 0.35 m/s

Table 3 Physical properties of molten mild steel.

Table 4 Boundary conditions for calculation of metal transfer.

Fig. 3 Schematic diagram of experimental apparatus of water drop transfer.

(5)

働き,表面張力を大きくすると,グロビュラー移行化させる 方向に働いていると言える.そこで,流出速度が支配する液 滴の運動エネルギー(動圧)と表面張力による圧力に注目し, 液滴先端部において,これら二つの力のバランスを検討する ことにした. ここで,液滴の形状を Fig. 6 に示すようにノズル径(ワイ ヤ径)と同じ直径の半球とし,ノズル出口と液滴先端部に対 して,ベルヌイの定理を適用する.このとき,図中の Pstと P'st はそれぞれノズル出口と液滴先端における表面張力による 圧力を示している.流体がノズル出口で有するエネルギー は,液滴先端に移動するまで保存されるので,次式が成り立 つ. ●●●●● (10) ここで,vf:ノズル出口での流出速度 [m/s],ρ:液体の密度 [kg/m3] ,γ:表面張力 [N/m],D:ノズル内径 [m],μ:粘性 率 [Pa・s],v':滴滴先端での流速 [m/s] である.式 (10) におい て左辺はノズル出口における流体エネルギーの総和を表し, 第 1 項はノズル出口における動圧,第 2 項は表面張力による 圧力である.一方,右辺第 1 項は液滴先端における動圧,右 辺第 2 項は液滴先端における表面張力による圧力,そして第 3項はノズル出口から液滴先端に至るまでの粘性による減 速エネルギーを意味している.グロビュラー移行では,液滴 先端の速度が小さくなることから,とおくことができる.し たがって,式 (10) からグロビュラー移行とスプレー移行の 臨界条件を求めることができる.ここで,臨界条件を与える 表面張力をγG-Sとおくと,次式が得られる. ●●●●●  (11) Fig. 5の曲線は式 (11) より求めたグロビュラー/スプレー 移行境界を示している.図から,式 (11) は数値解析の結果に よく対応していることが分かる.しかし,詳細に見ると,数 値解析結果は同じ表面張力の場合,より遅い流出速度でスプ レー移行へと変化している.ベルヌイの定理に基づく (11) 式では液滴の形状を半球であると仮定しているが,実際は液 滴の成長に伴って先端に働く表面張力による圧力は時々 刻々変化しており,グロビュラー移行のように液滴がノズル 径よりも大きくなる場合は,曲率がさらに小さくなるため, 表面張力による圧力は小さくなっていく.また,液滴先端に 働く動圧に関しても粘性による減速のみ考慮しているが,実 際は出口よりも先端付近の方が,速度が速くなっている可能 性もある.ミグ・マグ溶接に見られるストリーミング移行の ようにワイヤ端の溶融金属が細くなって伸びる場合には,流 路が狭くなっているため速度が上昇することもありうる.一 方,グロビュラー移行のように溶滴の径が大きい場合であっ ても,溶滴内部には上向きの対流が存在する可能性もあり, 下向きの対流の経路が広いとは限らないこともある.このこ とから,精度よく移行形態の遷移を解析するには二次元以上 のモデルが重要であると言える. 次に,溶融ワイヤの表面張力と粘性を別々に変化させ,そ の変化がワイヤから分離した時の溶滴サイズと分離位置に およぼす影響を,数値モデルを用いて解析した.ここでは,パ ラメータの影響を定量的に整理するため,数値解析における 分離時の液滴形状から体積を算出し,これを球体に置き換え たときの等価直径を液滴の大きさとした.また,スプレー状 の移行形態のように液滴の大きさや分離位置の値がばらつ く場合は,液滴分離の 5 回分をサンプルし,その平均値を計 算結果とした.Fig. 7 (a) は表面張力を変化させた時の結果

Fig. 6 Schematic of simplified model for prediction of the critical condition of globular to spray transition.

Fig. 7 Influence of surface tension and viscosity on the drop volume. (Flow speed = 0.177 m/s)

(a) Surface tension (ν= 1.0×10-6

m2 /s)

(b) Kinematic viscosity (γ= 0.5 N/m)

Fig. 5 Influence of surface tension and flow speed on metal transfer mode without electric current.

(6)

を,(b) には動粘性係数を変化させた時の結果を示す.図から 分かるように,表面張力を大きくすると,液滴の大きさは単 調に増加する.動粘性係数を大きくした場合も,等価液滴径 は同じく増加していくが,表面張力に比べてその変化率は小 さい.一方,分離点に関しては,表面張力が大きくなる場合 は境界(ノズル出口)に近づくのに対し,動粘性係数が大き くなる場合は境界から遠ざかる結果となった.これらの結果 から,表面張力は液滴の大きさに対して,粘性は分離位置に 強く影響することが分かる. 4.2 電磁力が移行現象におよぼす影響 電磁力が液滴移行に及ぼす影響について,溶滴移行モデル を用いて数値解析を行った.Fig. 8 は横軸に流出速度,縦軸に 電流値をとって,各条件における移行形態を示したものであ る.ここでは,電磁力の大きさに注目するため,アーク形状 は簡単にノズルと同径の円柱形状としている.この計算で も,Table 3 の物性値を用いている.Fig. 8 から電流値が 200 A ∼250 A の間で移行形態が大きく変化していることが分か る.電流値を大きくしても 200 A までは,スプレー移行を得 るには 0.6 m/s を超える流出速度が必要であるにもかかわら ず,250 A 相当の電磁力を負荷することによって,わずか 0.01 m/sの流出速度であってもスプレー移行となった. このような現象をもたらす電磁力の効果について考える. ここでは電流経路をノズル径の円柱形状としており,電磁ピ ンチ力は液滴を絞る方向に働く.前節と同様に液滴の形状を ノズル径(ワイヤ径)と同じ直径の半球とし,Fig. 9 に示すよ うに円柱内を電流が流れるものとすると,(10) 式は次式のよ うになる. ●●●●●  (12) ここで,I:電流 [A] である.また,図中の Pemと P'emはそれ ぞれノズル出口と液滴先端における電磁力による圧力を示 している.左辺のノズル出口での流体エネルギーとして第 3 項の電磁力が加わることになる.円柱状の導電性流体に流れ る電流によって働く電磁圧力は半径方向に分布があり,中心 部が最も高い放物型となるが9) ,式 (12) では平均圧力で与え ている.右辺の液滴先端では,液滴内を流れる電流はゼロに なるので,液滴自身に直接働く電磁力はゼロである.したが って,v'→0 とすると,グロビュラー移行とスプレー移行の臨 界電流条件として,次式が得られる. ●●●●●  (13) Fig. 8の曲線は式 (13) より求めたグロビュラー/スプレー移 行境界を示している.図から,式 (13) は数値計算結果とよく 対応しており,ノズルからの流出速度が 0.6 m/s よりも遅い 範囲では,220 Aを超えると,スプレー移行に遷移することが 分かる.すなわち,電磁ピンチ力は液滴先端に働く動圧を大 きくする効果があり,グロビュラー移行をスプレー移行へ変 化させることができる.実際の純アルゴンシールドのミグ溶 接においても,1.2 mm 径の軟鋼ワイヤではおよそ 230 A でグ ロビュラー移行からスプレー移行へと変化することが知ら れている10) .したがって,純アルゴンシールドのガスメタル アークは,200∼250 A の領域ではワイヤ端部での電流経路が ほぼ円柱状になっているものと推察される. さて,電磁力を考慮した計算では,スプレー移行を示した 結果は全て液滴が分離することなく計算領域下端まで到達 する形態の移行であった.この理由として,アーク形状を円 柱形状としているので,電流が一様に流れることで電磁力の 空間分布が軸方向に一定となっていることが挙げられる.ま た,電磁力が半径方向にしかかからないため,スプレー移行 になると液柱の側面方向にかかる力がほぼ一定となり,均衡 を保ったまま流れていくからであると考えられる. そこで,アーク形状を円錐形として,電磁力の働く方向を 変化させ,大きさに分布を持たせた時の電磁力の効果を解析 した.Fig. 10 に示すように,アークが円柱形状である場合と, ノズル端からの広がり角を15度とした円錐形状の場合とで 比較した.図から分かるように,アークが円柱形状の場合は 液滴の分離が見られないのに対し,円錐形状にすると液滴が 分離する.これは,アーク形状を円錐状にすることにより,ワ イヤ付近と溶滴先端付近とで働く電磁力に差が生じたため と考えられる.このように,液滴の分離に関してアークの形 状が影響していることが分かる. 次に,電磁力の時間的変化の影響を調べた.パルスアーク

Fig. 8 Dependence of current and flow speed on transfer mode with cylindrical current path.

Fig. 9 Schematic of simplified model for prediction of the critical current of globular to spray transition.

(7)

溶接法は,幅広い電流域で安定した溶接アークを維持でき, スパッタの少ない溶接法として,製造各分野で利用されてい る.パルスアーク溶接では,ピーク電流期間でワイヤが溶融 して溶滴を成長させ,強い電磁力により液滴の分離を誘起さ せる.そして,ベース電流期間では,次のピーク電流までア ーク放電を維持している.Fig. 11 はパルス幅を 1 ms とした 時の,ピーク電流 400 A,600 A,800 A における液滴の挙動 を示している.ここでアーク形状は,電磁力の空間的な分布 が影響しないようにするため円柱形状としている.ピーク電 流 400 A では,液滴が電磁力により時間とともに軸方向に引 き伸ばされている様子が見られるが,1 ms の通電時間のあ と,液滴は分離せず,表面張力により押し戻され,ノズル出 口(ワイヤ端)で振動している.しかし,ピーク電流を 600 A まで上げると,通電開始から 2.5 ms で液滴が分離した.さら にピーク電流を 800 A まで高めた場合は,2 ms で液滴が分離 し,その後 2.5 ms の時に分離した液滴が,さらに二つに分か れる現象が見られた.このように円柱状の電流経路にして も,電流波形をパルス波形にすることで,電流値の切り替わ るによって,前述した液柱側面に働く電磁力と表面張力の均 衡がくずれ,液滴はくびれを形成し分離するのだと考えられ る.また,ピーク電流値が高いほど液滴は分離しやすい結果 を示した.そこで,ピーク電流値とともにパルス幅も変えて 数値計算を行い,液滴が分離するか否かを調べた.Fig. 12 に 示すようにピーク電流値を増加すると,液滴分離に必要とな るパルス幅が短くなることが分かる. 5. 結     言 GMA溶滴移行現象の定量的理解を目的として,ノズルか ら流出する液体の移行現象をモデル化した.本研究では移行 形態に注目し,グロビュラー移行とスプレー移行の遷移現象 に及ぼす液体の表面張力・粘性,流速,電磁力の影響につい て検討した.以下にその結果をまとめる. (1)本研究で構築した数値解析モデルの適用性を検証する ため,ガラス管から流出する水滴の移行現象を解析し た.水滴の移行形態はノズルからの流出速度に依存して 変化することが分かった.すなわち,流出速度が低い場 合は大きな水滴となってノズルから離脱・移行するの に対して,流出速度を高くすると,いわゆるストリーミ ング移行のような連続的な水流となったり,小さな水滴 に分離したりして移行する形態を示した.それぞれ GMA溶接における溶滴移行のグロビュラー移行とスプ レー移行に対応した移行形態であり,実験結果ともよく 一致した. (2)液滴の移行形態は,表面張力,粘性,ノズルからの流出 速度によって変化する.すなわち,流出速度を速くする と,液滴先端において働く動圧が高くなるため,移行形 態はスプレー移行となる.一方,表面張力を大きくする と,液滴先端に働く毛管圧力が高くなり,軸方向への流 れを抑制するため,移行形態はグロビュラー移行とな

Fig. 10 Influence of conductive region shape on liquid transfer mode. (Current = 300A, Flow speed = 0.177 m/s)

(a) Cylindrical shape

(b) Conical shape (Spread angle = 15°)

Fig. 11 Time-change of liquid transfer with pulsed current. (Current path with cylindrical shape)

Fig. 12 Peak current and pulse width required for detachment of liquid drop. (Current path with cylindrical shape)

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る.また,グロビュラー移行では表面張力を増加するほ ど,液滴は大きくなり,粘性を高くするほど,ノズル端 と液滴が分離する距離が長くなる. (3)液滴の移行形態は,電磁力の大きさとその方向によって 変化する.すなわち,ノズル内径(ワイヤ径)と同じ直 径の円柱形状のアークを想定したとき,電磁ピンチ力に よる圧力が毛管圧力よりも大きくなると,移行形態はス プレー移行となる.アーク形状を円柱形状から円錐形状 にすることで,電流経路を変えると,移行形態に影響す ることが分かった.アーク形状が円柱形状では,ストリ ーミング移行のように液滴は分離することがなかった のに対し,円錐形状とすると液滴が分離した.次に,パ ルス電流波形を用いると,溶滴に働くピンチ力が時間的 に変化するため,溶滴はくびれを形成し分離することが 分かった.そして,ピーク電流値を大きくすると,液滴 の分離に必要となるパルス幅は小さくなる. 参 考 文 献

1) Cram L.E.: A numerical model of droplet formation, Computational Tech. & Appl. (CTAC-83), Elsevier Science Publishers B.V., 1984, pp. 182-188.

2) 丸尾 大,平田好則,吉田欣吾: 橋絡液柱の破断に要する電流 値と通電時間:橋絡移行におけるピンチ力の効果(第 2 報),溶 接学会論文集,1989,第 7 巻 4 号,pp.57-62.

3) Maruo H. and Hirata Y.: Current and Time Required to Breakup a Conducting Liquid Bridge, 1989, IIW Doc.212-720-89.

4) Haidar J. and Lowke J.J.: Prediction of metal droplet formation in arc welding, Journal of Physics D: Applied Physics, 1996, vol. 29, no. 12, pp. 2951-2960.

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6) Hirt C.W. and Nichols B.D.: Volume of Fluid (VOF) Method of the dynamics of free boundaries, Journal of Computational Physics, 1981, vol. 39, no.1, pp. 201-225.

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9) Lancaster J.F.: The Physics of Welding - 2nd Edition, 1986, Chapter 3, Pergamon Press.

10) Maruo H. and Hirata Y.: Study on pulsed MIG Welding, 1984, IIW Doc.212-585-84.

Table 2 Boundary conditions for calculation of water drop transfer.
Fig. 3 Schematic diagram of experimental apparatus of water drop transfer.
Fig. 7 Influence of surface tension and viscosity on the drop volume.
Fig. 9 Schematic of simplified model for prediction of the critical current of globular to spray transition.
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参照

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