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目次 概要 1. はじめに 2. 先行研究レビュー 3. 方法 4. 結果 5. 考察 6. まとめ参考文献 概要 本稿では アパートメント型ホテル いわゆる民泊 ( 以下 民泊 ) とビジネスホテルの収益構造を検証することで その収益性やコスト面での競争優位性について明らかにした 具体的には 民泊

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2018年2月28日

アパートメント型ホテルの収益性とコスト面での競争優位性に

ついて(京都市中心部で)

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目次 概要 1. はじめに 2.先行研究レビュー 3.方法 4.結果 5.考察 6.まとめ 参考文献 概要 ​本稿では、アパートメント型ホテル、いわゆる民泊(以下、民泊)とビジネスホテルの収 益構造を検証することで、その収益性やコスト面での競争優位性について明らかにした。具 体的には、民泊の資産利益率は上場企業平均と比較して、やや高いものであった。さらに、 その事業リスクも低いと言え、ビジネスモデルとしては優れたものであった。一方で、ビジ ネスホテルの収益性も、現在のインバウンドの活況を反映してか、極めて高いものであっ た。しかし、ホテルを所有者から賃借して運営しているケースでは、その高い賃料負担のた めに、損益分岐点は高く、収益基盤は想定以上に脆弱であった。そして、そのコスト面での 競争優位性は相対的に高くなく、少なくとも会計上は、物件を所有している民泊に劣るもの であった。また、双方が物件を所有しているケース、つまり同条件で比較したケースでは、 民泊とビジネスホテルの競争優位性はほぼ互角と言ってよいものであった。 なお、本稿では会計上の利益と費用をベースに収益性や損益分岐点を算出しており、研 究として一定の限界はある。真の意味で、コスト面での競争優位性を検証するには、さらに 多角的な検証が必要である。しかしながら、民泊とビジネスホテルの損益分岐点を明らかに し、条件付きながらも、両者の競争優位性について検証を行ったことには、大きな意義が あったと言える。 1. はじめに 近年、外国人観光客数の急増を背景に、京都市内ではホテルの建設ラッシュが続いてい る。それは、従来型のシティホテルやビジネスホテルが中心であると思われるが、民家の一 室を無許可で宿泊者に貸し出す、いわゆる違法民泊も同時に急増している。京都市の調査​注1 によると、調査した民泊施設数2,702件のうち旅館業法の許可を得た施設数はわか189件( 7.0%)とのことであった。一方で、東京や大阪の一部のエリアでは特区制度を活用し、合 法的に民泊が営まれている。その他に、長期滞在に適したアパートメント型ホテルのような 新たなタイプの宿泊施設の開発も進みつつあり大手企業も参入している​注2​。このような宿泊 施設も広義の意味で民泊に含まれるであろう。 では、この民泊という新たなタイプの宿泊施設は、ビジネスとして今後も持続可能なも のなのだろうか?それとも、ホテル不足の期間だけに脚光を浴び、一時的なブームに終わっ てしまうのだろうか?もしくは、必要な安全対策も行わなくてよい違法民泊だからこそ、収 益が上げられるものなのだろうか。このような疑問を解明するため、民泊の収益構造と収益 性を明らかにしたいと考えた。同時に、競合相手と考えられるビジネスホテルについても同 様の検証を行いたいと考えた。さらには両者の損益分岐点についても明らかにすることで、 両者のコスト面での競争優位性について解明しようと考えた。これまで、既存の宿泊施設の 経営に関する研究は数多く行われてきたが、民泊の収益性や収益構造を解明した研究はな く、ましてや既存のホテルとの損益分岐点を比較したものはない。よって、本研究の意義は

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それらの点を解明し、両者のコスト面での競争優位性を明らかにすることにある。なお、本 稿での民泊の定義は、家具やキッチンが付いたアパートメントホテルのことを指し、旅館業 法上の許可を得たものとする。旅館業法上の分類は簡易宿泊所に当たり、スタッフが常駐せ ず、人件費が発生しないものを想定している。 【注】 1. URL: ​http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000197448.html​、2016年5月9日(最終閲 覧日:2018年1月24日) 2.コスモイニシアホームページより。 URL:​https://www.cigr.co.jp/newsrelease/news/2017/12/post_70.html​、2017年12月05日(最 終閲覧日:2018年2月24日) 2. 先行研究レビュー 現在、日本国内には、旅館、ビジネスホテルなど様々なタイプの宿泊施設が存在する。 その、各宿泊施設タイプ別の収益性について、これまで複数の調査、研究が行われてきた。 例えば、内藤[2013]では、ホテルタイプ別の売上高GOP比率を示しており、その内容は下記 表1の通りである。 表1 宿泊施設タイプ別の売上高GOP比率(単位:%) 宿泊施設タイプ 売上高GOP比率 旅館 10~15 シティホテル 20~25 リゾートホテル 30~33 宿泊特化型ホテル(8,000円未満) 31~36 宿泊特化型ホテル(平均) 28~42 宿泊特化型ホテル(8,000円以上) 26~50 レジャーホテル 50 上記表1のデータは2013年に発表されたものであり、現在のインバウンドで沸くホテル市 場を反映していないと思われるが、その他の調査、研究と比較しても概ね妥当な数字だと考 えられる。よって、長期的にはその数字に収斂していくであろうと考えられる。ただし、ビ ジネスホテルに関しては、実際の売上高GOP比率はもう少し高いと思われる。例えば、植 村[2008]では、ビジネスホテル(宿泊特化型)の場合、それは、 40~60%が目安としてお り、牧野[2012]でも、それが70%近くなるホテルも中にはあり、50%を超えていると優良と 指摘している。 シティホテル、リゾートホテルの収益性については、デロイトトーマツFAS[2009]に詳し い。それによると、表2の通り、日本のシティホテルの売上高GOP比率は、約26%で、海外 と比べて著しく低い。その理由について、利益率の低い料飲事業の売上高比率が高いことを 挙げ、これは冠婚葬祭をホテルで行う日本の習慣が影響しているのではないかと指摘してい る。一方、リゾートホテルの売上高GOP比率の水準については、他国と比較しても遜色の

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ない数字である。バリやハワイなどの海外平均が35.6%なのに対して、日本国内のそれは 33.9%である。このことから、日本のシティホテルの収益が低い要因は、日本のマクロ経済 環境(例えば、解雇規制の問題や低い労働生産性)にあるのではなく、トーマツFASが指摘 するように、日本の社会的要因によって、利益率が低い料飲事業の割合が高いことにあるの ではないかと考えられる。この事から、シティホテルが、より利益率の高い事業に注力する などの事業転換を図れば、海外並の収益をあげることは不可能ではないと思われる。また、 牧野[2012]もデロイトトーマツFAS[2009]でも、ホテルの賃料の目安はGOPの60~80%が目 安としているから、ビジネスホテルの売上高営業利益率は15%、シティホテルの場合は、 7.5%程度になると予想される。 表2 各都市のホテル売上高GOP比率(単価:%) 各都市平均 売上高GOP比率 宿泊売上比率 料飲売上比率 ニューヨーク 37.6 69.7 24.3 ロンドン 46.2 58.4 36.2 日本 26.6 34.3 60.5 上海 45.5 50.8 42.1 ムンバイ 58.9 65.4 29.4 次に、旅館の利益率については、一般社団法人日本旅館協会が同協会の会員に対して 行った調査結果が参考になる。その主な調査結果は下記表3、表4、表5、表6の通りであ る。なお、大旅館、中旅館、小旅館の定義は次の通りである。 ・大旅館:100室以上 ・中旅館:31室以上99室以下 ・小旅館:30室以下 表3 黒字旅館の割合(単価:%) 年度 (大旅館) (中旅館) (小旅館) 旅館全体 平成22年 48.4 42.9 35.6 42.9 23年 45.5 47.2 27.3 43.3 24年 79.2 56.6 51.2 59.3 25年 72.0 69.7 58.2 66.5 26年 80.0 57.7 56.6 61.9 27年 80.0 76.4 66.7 73.6

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表4 旅館、売上高GOP比率(単位:%) 年度 (大旅館) (中旅館) (小旅館) 旅館全体 平成22年 9.3 6.5 4.3 7.9 23年 9.2 6.5 0.2 7.7 24年 10.7 7.3 4.9 8.9 25年 9.8 8.3 8.1 9.1 26年 10.4 8.7 7.7 9.5 27年 11.6 9.2 8.6 10.2 表5 旅館、営業利益率(単価:%) 年度 (大旅館) (中旅館) (小旅館) 旅館全体 平成22年 1.6 ▲0.5 ▲2.7 0.5 23年 1.5 0.2 ▲6.8 0.6 24年 3.5 0.9 ▲0.9 2.1 25年 3.8 2.6 1.3 3.1 26年 3.4 2.0 0.7 2.7 27年 6.0 3.9 2.6 4.7 表6 旅館、自己資本比率(単価:%) 年度 (大旅館) (中旅館) (小旅館) 旅館全体 平成26年 10.4 4.9 17.4 9.0 27年 19.9 25.7 17.1 22.4 上記の表から、旅館も近年のインバウンドの活況や景気回復の恩恵を受けているのはわ かるが、それでも他の宿泊施設と比較して収益性は著しく低い。それは、売上高GOP比率 や営業利益を見れば一目瞭然である。この営業利益率の低さでは不況期に赤字になる可能性 が高く、平成22年度、23年度で半数以上の旅館が赤字に陥ったのも理解できる。しかも、 自己資本比率も極めて低く、旅館の経営環境は極めて厳しいと言わざるを得ない。 3. 方法 民泊、及びそれの最大の競合相手と考えられるビジネスホテルの収益性について多角的 に検証を行った。また、それぞれの損益分岐点を分析することで、両者のコスト面での競争 優位性について考察を行った。具体的には以下のような定量的な分析を行い、その結果を踏 まえて、筆者が宿泊者の観点から、定性的な分析を加えた。

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(1)民泊ビジネスの収益性の考察について (a)ビジネスモデルと収益性について 民泊の運営方法については、①自身で運営する②一定の委託費(京都市のホームページ によると売上の20~30%程度)を支払って専門の業者に業務委託する、の2パターンあり、 物件についても①所有者から賃借する②自ら所有する、の2パターンがある。いずれのケー スでも裁定が働き理論上は利益率は同じであるはずだと考えたが、まずは自身で運営し、物 件を賃借するケースで考察した。 売上高の計算に必要な、宿泊単価と稼働率のデータであるが、前者は、airbnbのアプリを 使い想定単価を算出した。アプリの設定は、1LDKの部屋を想定し下記の表7の通りにして検 索した。宿泊日は表8の通り、任意の日を複数選択し、その平均値を取得した。その設定で の平均単価は約22,400円であった。念のため、それ以外の複数の日程でも確認したが、概ね その程度の価格であった。ただし、その価格帯の分布を目視すると、一部の宿泊施設が単価 を上げていて中央値はもう少し低いように思われた。そこで、この単価は専門の業者が運営 した場合の平均単価と考え、本稿では宿泊単価を清掃費用込みで24,000円、そこに25%の委 託費を運営会社に支払うと仮定する。稼働率は、MINPAKU.Bizのwebページ​注3​から京都市中 京区での民泊の稼働率を取得した。取得可能なデータの期間は2016年10月から2017年3月 までで、その平均は表9の通り62%であった。これらの数字を参考に、京都市中心部の1LDK の物件で民泊事業を行ったと仮定して分析を行った。 表7 airbnb検索設定 どちらまで? 京都市 開始日/終了日 任意の日程で複数選択 人数 3人 部屋タイプ まるまる貸切り ベッド数 4 寝室数 2 バスルーム数 1 アメニティ・設備 wifi、テレビ 表8 宿泊日別の宿泊価格(検索日:2018年2月13日) 宿泊日 2/19(月) 2/25(日) 3/8(木) 5/20(火) 平均 価格(円) 20,400 21,400 22,100 25,800 22,425 表9 月別の稼働率 年/月 2016/10 2016/11 2016/12 2017/1 2017/2 2017/3 平均 稼働率 72% 78% 55% 50% 53% 62% 62% (出所)http://min-paku.biz

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しかしながら、現在の京都市の法規制の基では、マンションの一室を賃借して民泊を行 うのは旅館業法の関係で極めて難しい。そこで、民泊を経営するには、現実的には一棟所有 する、もしくは旅館業法の認可を得た物件をオーナーから一棟ごと賃借するという方法にな る。本稿においては、前者の物件を所有するケースを選択し、下記(b)で検証を行った。 (b)所有物件での民泊収益について 京都市内中心部に架空の物件を購入し、民泊を運営した場合の収益性について分析し た。 (c)民泊の損益分岐点について 上記モデルを利用し、民泊の損益分岐点でのRevPARについて考察した。 (d)不動産賃貸業との収益比較 不動産賃貸業を行ったときと民泊を行った時の収益性について検証を行った。 (2)ビジネスホテルの収益性の考察 (a)ビジネスホテル事例研究 ビジネスホテルの収益について、個別の事例を採り上げて検証を行った。本稿では、京 都市下京区にあるスマイルホテル京都四条について分析を行った。いちごホテルリート投資 法人の有価証券報告書によると、同法人によって、スマイルホテル京都四条は所有されてお り、ここでの必要なデータは同有価証券報告書から取得した。 【注】 注3.MINPAKU.Biz ホームページよりデータを取得した。 URL:​http://min-paku.biz/data-analysis/201704_kyoto.html​、2017年4月8日(最終閲覧日: 2018年2月24日) 4. 結果 (1)民泊ビジネスの収益性の考察について (a)ビジネスモデルと収益性について 民泊のビジネスモデルは、一般の居住用の部屋を仲介サイト(例えばairbnb)を通して宿 泊者に貸し出し、収入を得るビジネスモデルである。その宿泊者から得た料金が売上に当た る。経費は①仲介サイトに支払う仲介料(airbnbの場合は売上の3%)、②リネン費用、③ 備品、④水道光熱費、⑤清掃費用、⑥運営委託費、⑦賃料(もしくは減価償却費)、⑧wifi 費用であり、別途、家具などの初期投資が必要となる。宿泊単価を24,000円、稼働率を60% で計算すると、RevPAR及び一月当りの売上は次のようになる。 RevPAR:24,000 × 0.6 =14,400 一月当りの売上:RevPAR × 30日 =432,000円 経費については、上記①②③④⑤⑥は変動費で、⑦⑧が固定費である。仮に①②③④⑤ の変動費を売上高の30%、⑥の運営委託費を同25%と仮定すると、一月当りの限界利益は次 のようになる。 432,000 × (1-0.3-0.25) =194,400円

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次に、京都市内中心部の40m2(1LDK)の部屋の賃料は10万円程度なので、⑥⑦の合計の固 定費を100,000円と仮定する。そうすると、一月当りの税引き前利益は94,400円となる。こ のことから、売上高営業利益率は約22%となり、それなりの高収益ビジネスと言える。ま た、部屋の敷金礼金、家具等の初期投資を70万円程度とすると、半年強で回収可能で、こ の観点からも収益性は高いと言えるだろう。 (b)所有物件での民泊収益について 表10 民泊物件の概要 ① 土地坪単価 300万円 ② 敷地面積 70坪 ③ 容積率 400% ④ 延床面積(②×③) 280坪(924m​2​) ⑤ 客室総面積 ÷ 延床面積 63% ⑥ 客室総面積(④×⑤) 176坪(582m​2​) ⑦ 一室あたりの面積 40m​2​(1LDK) ⑧ 総客室数(⑤/⑥) 14 ⑨ 建築コスト/坪(家具等諸費用含む) 100万円 ⑩ 土地価格(①×②) 2.1億円 ⑪ 総建築コスト(④×⑧) 2.8億円 ⑫ 総資産額(⑩+⑪) 4.9億円 ⑬ 公租公課 200万円 ⑭ その他建物維持管理費等 200万円 京都市内中心部に上記表10のような架空の物件を購入し民泊を運営した場合の収益性に ついて検討した。この物件と上記(a)のモデルを組み合わせて計算すると、売上高、限界利 益等は下記の通りになる。 売上高:14,400 × 14 × 365 = 73,584,000円 限界利益率:1- 0.3 - 0.25 = 45% 限界利益:売上高×限界利益率=33,112,800円(約3300万円) 固定費は減価償却費、公租公課、建物維持管理費等である。ホテル用鉄筋コンクリート 造の法定耐用年数は39年、付属設備は15年なので、前者と後者の割合を8:2とすると、当 初15年間の減価償却費は次のように計算できる。

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2.8 × 0.8 ÷ 39 + 2.8 × 0.2 ÷ 15 (億円) = 0.056 + 0.037 (億円) =930万円 次に、公租公課や建物維持管理費等が400万円なので、年間の固定費は1330万円となる。 よって、営業利益は、3,300万円-1,330万円となり、約2000万円となる。これらのことか ら売上高営業利益率は、2,000 ÷ 7,358=27%となる。また、投下資本営業利益率は、2,000 ÷ 49,000 = 4.1%となる。 (c)民泊の損益分岐点について 上記(b)のモデルを利用し、民泊の損益分岐点でのRevPARについて考察する。その時の 条件は上記(b)モデルと同様とする。損益分岐点は売上高と総費用が等価となるポイントだ から、その時のRevPARをRPとすると、次の式が成り立つ。 RP × 14 × 365 = RP × 14 × 365 × 0.55 + 13,300,000 RP × 0.45 × 14 × 365 = 13,300,000 RP × 2300 =13,300,000 RP=5,784 つまり、損益分岐点を超えるために必要なRevPARは5,784円となる。仮に、その時の稼 働率が60%だとすると、損益分岐点を超えるために必要な宿泊単価は9,640円、70%であれ ば8,260円となる。この事から、民泊の損益分岐点でのADRは9,000円程度と考えられる。 (d)不動産賃貸業との収益比較 不動産賃貸業と民泊の収支の差の要因は主に次の四点である。第一に居住用不動産の場 合、土地部分の固定資産税が6分の1となる。ここでは、年間50万円減額されると仮定し、 公租公課が150万円とする。第二に、建物の減価償却期間が変わるため、減価償却費用が変 わる。ただし、その違いに実質的な意味があるとは考えられないので、ここではキャッシュ フローベースでの比較を行う。第三に、初期投資費用が異なる。民泊の場合は、当初に家具 類の購入が求められ、それを一室100万円、総客室数を14とすると、1400万円となる。一 方、民泊の場合は、事業用不動産であることから、建物にかかる消費税の還付が受けられ る。仮に建物本体価格を2.5億円とすると、消費税分は2,000万円である。よって、新築の場 合、初期投資は、よほどの多額投資を行わない限り民泊の方が低く抑えられる。第四に収入 の違いである。民泊の売上高は上で求めた通りであるが、居住用賃貸不動産での年間の売上 高は次の計算の通りとなる。前提条件は居住者から支払われる礼金、管理費も含めた家賃が 11万円、空室率を5%、管理委託費を売上高の5%とし、計10%の経費とする。 11万円 × 14室 × 12ヶ月 × 0.9 = 1,663万円 そして、公租公課が、固定資産税の減額を反映し、200 - 50 = 150万円、建物維持管理 費等が200万円なので、フリーキャッシュフローは1313万円となる。一方、民泊の場合は上 記(b)で見た通り、フリーキャッシュフローは、3,300-400=2,900万円となり、不動産賃貸 の場合を大きく上回る。また、民泊の強みは、いつでも居住用の賃貸マンションに転用で き、損失を限定できるところにある。よって、民泊と不動産賃貸業では、下ぶれのリスクは 同じであり、それぞれの資本コストは等価であると言える。この事から、民泊の業績が悪化 した場合は、いつでも賃貸事業に転用できると仮定すると、リスク調整済みのキャッシュフ

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ロー、つまり正味現在価値で見ても、民泊事業が不動産賃貸業の収益を下回ることはない。 よって、民泊は不動産賃貸業よりも優れたビジネスと言える。なお、次の式が成り立つと き、民泊の収支が居住用不動産賃貸業のそれを上回る。 RP × 365 × 14 × 0.45- 50 > 1,663万円 RP > 7,450円 RevPARが約7,450円ということは、稼働率60%の時の宿泊単価が12,415円となり、この 水準を維持できれば、不動産賃貸業の収益を上回る。これは、現時点の市場環境から考えれ ばそれほど難しい水準ではないと考えられるが、あり得ない数字でもない。 (2)ビジネスホテルの収益性の考察 (a)ビジネスホテル事例研究 いちごホテルリート投資法人の有価証券報告書によると、スマイルホテル京都四条の平成 28年8月から平成29年7月までの運営実績は下記表11の通りである。また、同ホテルの部屋 の内訳は下記の表12の通りで、一室辺りの部屋面積は平均で16m​2​程度と推定した。 表11 スマイルホテル京都四条の運営成績

客室稼働率 ADR RevPAR 売上高 GOP 99.7% 10,831円 10,799円 578(百万円) 372(百万円) 表12 スマイルホテル京都四条の部屋の内訳 部屋タイプ シングル ダブル ツイン 部屋数 92室 8室 40室 広さ(m​2​) 13~14 16 16~40 じゃらんホームページ​注6​のデータを基に筆者加筆 年間での売上高GOP比率は、372 ÷ 578=64.4%となり、かなりの高収益である。また、 有価証券報告書によると、同ホテルの総客室数は140室なので、客室から上がる売上高は、 下記の式の通りとなる。この事から、同ホテルでは、売上の95%程度を宿泊部門から上げて いることがわかる。これは、言い換えると宿泊客は宿泊代金の5%程度を別の用途(例えば コインランドリーや飲み物など)に使ってるということである。 10,799 × 140 × 365 = 552(百万円) 次に、牧野[2012]を参考に、固定費率、変動費率を推計した。牧野[2012]によると、売上 高GOP比率が50~60%のホテルの場合、人件費は売上高の15~20%程度、清掃費は同10% 程度に収まるとのことであった。それを基にGOP比率が65%のスマイルホテルの経費率を 推計した。その内容は下記の表13の通りで、売上高を100とした場合の固定費を15、限界利 益率を20%とした。

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表13 売上高に対する各経費の割合(単位:%) 経費率 (牧野推定) スマイルホテル 固定費比率(推 定) スマイルホテル 変動費比率(推 定) 人件費 15~20 10 4 清掃費 10 3 6 水道光熱費 7~10 2 4 客室アメニティ 7~10 0 6 経費合計 40~50 15 20 売上高GOP比率 50~60 牧野[2012]のデータを基に筆者加筆 スマイルホテルのいちごリート投資法人同投資法人への支払い賃料は、有価証券報告書 によると、第3期は169(百万円)、第4期は155(百万円)、よって通年では323(百万 円)となる。しかし、両者の賃貸契約は、固定賃料と変動賃料の併用制であり、投資法人側 が一定の経営リスクを負っている形になっている。よって、実際の支払い賃料が不動産の純 粋な資本コストには当たらないと考えた。そこで、同有価証券報告書に記載されている、 「不動産鑑定評価書の概要」を参照すると、DCF法の割引率は4.8%としている。これが、 この不動産への投資に対する資本コストであると考え、同ホテルの第3期末の積算価格であ る4,640(百万円)と掛け合わせたものを適正固定賃料と考えた。それは、次の式で表せ、 この金額が今後ホテルの所有者が変わっても求められる賃料水準、またはその目安になると 考えられる。 4,640(百万円)× 0.048 = 222(百万円) ここでは、売上高が100の時の固定費を15と仮定していたので、売上高が5.78億円の時の それは8,670万円となる。よって、売上高をRとすると、損益分岐点では次の式が成り立 つ。 R = 0.2R + 86.7 + 222 (百万円) R = 386(百万円) また、宿泊客が宿泊代金の5%程度を別の用途で使っていることを考慮すると次の式が成 り立ち、損益分岐点でのRevPARは約7,200円となる。なお、この時のGOPは218(百万 円)で、売上高GOP比率は、57%となった。 R = RevPAR × 365日 × 140室 × 1.05 RevPAR = 7,192円 次に、これまでの例に倣って、ホテルの所有と運営が分離していないケースを考えてみ る。同投資法人の有価証券報告書によると、第3期と第4期の減価償却費は、それぞれ1,585 万円、1,695万円で、合計3,280万円となる。そこに、公租公課、建物維持管理費等が、上記

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(1)の(b)の民泊の事例を参考にして、共に2,000万円(両者の積算価格の差から推定した) だったとすると、損益分岐点では、次の式が成り立つ。なお、同ホテルは築年数は30年弱 で、償却が進んでいるという事実はあるが、ここでは無視する。 R = 0.2R + 86.7 + 32.8 + 40(百万円) R = 200(百万円) R = RevPAR × 365日 × 140室 × 1.05 RevPAR = 3,728円 上記の通り、損益分岐点でのRevPARは3,728円となり、その時の稼働率を80%とすると ADRは約4,660円となる。上記の運営と所有を分離したケースと比べて、不動産所有時の損 益分岐点が低いのは不動産所有のリスクの対価と言えるだろう。よって、どちらのビジネス モデルが優れているという問題ではない。 続いて、主要な経営指標についても計算を行った。まず、前者のホテルを所有しない ケースであるが、その場合の営業利益は、GOP - 支払い賃料で表せるので、372-222= 150(百万円)となる。売上高営業利益率は、150 ÷ 578 = 26%となり、極めて高い。これ は、業界最大手の一つであり、同じくホテルを所有せず運営に特化している東横イン​注​の利 益率を上回ってるように思える。東横インの営業報告書に掲載されているのは売上高経常利 益率で、単純に営業利益と比較できないが、それはここ数年一貫して20%程度であった。ま た、上で見た通り、ホテルを所有した場合のGOPは372(百万円)、減価償却費は32.8(百 万円)であった。そこに、公租公課、建物維持管理費等が、共に2,000万円だったので、営 業利益は約3億円となる。よって、売上高営業利益率は、300 ÷ 578 = 52%、投下資本営業 利益率は、300 ÷ 4640 =6.5%となる。ただし、同ホテルの築年数は30年弱で減価償却がだ いぶ進んだ状態であり、一般的には利回りが高くなる傾向があるという点には留意が必要で ある。最後に、同ホテルと投資法人の実際の契約は上述した通り、固定賃料と変動賃料の併 用で、その賃料は年間で323(百万円)であった。その数値を当てはめてみると、実際のホ テルの営業利益は、372-323 = 50(百万円)となった。その場合の営業利益率は、50 ÷ 578 = 8.7%であった。 【注】 6. じゃらんホームページよりデータを取得した。最終閲覧日:2018年 2月23日、 URL:​https://www.jalan.net/yad321219/ 7. 東横インのホームページに、「東横INNの基本スタイルは、土地のオーナーにホテルを建 てていただき、当社が一棟を借り上げ運営させていただく方式で、そのオーナーの力を借り ながら徐々に地元に根付いていきます。」とある。最終閲覧日:2018年 2月23日、 URL:​http://www.toyoko-inn.co.jp/greet.html 5. 考察 (1)民泊ビジネスの収益性について ここまで見てきた通り、マンションの一室を借りて行う民泊の収益性は非常に高いもの であった。その売上高営業利益率は20%強と高収益でありながら、初期投資費用は限定的 で、しかも規模を拡大していくのも比較的容易である。つまり、ビジネスとして非常に魅力

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的なものであった。ただし、このビジネスモデルを、現在の京都市で営むのは法律上、ほぼ 不可能である。 一方で、旅館業の認可を受けたアパートメントホテルを所有して経営を行った場合、投 下資本利益率は営業利益ベースで4.1%であった。みずほ総合研究所[2017]によると、日本の 上場企業の2012年から2016年までのROA(総資産純利益率)平均は2%前後であった。これ が税引き後の利益であることを考慮しても、民泊の方が幾分高いと考えられる。さらに、民 泊経営は、不動産投資でもあるから、財務レバレッジがかけやすく、一定のリスクを負えば より高い自己資本利益率も可能である。その他、収益構造の特徴として、次の点が挙げられ る。第一に、資本的支出が少なくフリーキャッシュフローが高い。上記の例では、資本的支 出は建物維持管理費に相当する約200万円のみであった。営業活動によるキャッシュフロー が約3,000万円であったから、それと比較して十分低いと言える。さらに、その額も十分予 測可能なものであり、想定外の支出も少ないと思われる。第二に、従業員を雇用する必要も なく、労務リスクとも無縁である。よって、経営のリスク要因は、RevPARのみといってよ い。第三に、そのリスクも将来賃貸マンションに転用可能とすることで、ある程度抑えるこ とが可能である。これらのことから、このビジネスはローリスクミドルリターンと言え、非 常に魅力的である。一方で、民泊には、参入障壁がほとんどなく、長期的にはその資産利益 率も、分母の総資産額の上昇(つまり、地価の上昇)と、収益の悪化の双方の要因で下落し ていくことが予想される。実際に、いちごリート投資法人の第4期有価証券報告書に、「本 投資法人が保有するホテルにおいては、京都エリアにおいてホテルの新規供給や民泊の増加 による影響がみられました」とあり、それが現実化しつつある。よって、今後、他の民泊施 設のみならず、ビジネスホテルも含めた熾烈な競争に巻き込まれていくのは不可避であろ う。ただし、民泊経営が成り立つエリアは限られており、昨今空室が問題になってる地方の アパートのようなことにはならないと思われる。 (2)ビジネスホテルの収益性について 本稿では、京都市中心部にあるスマイルホテル京都四条を例にとり、ビジネスホテルの 収益分析を行った。同ホテルの稼働率はほぼ100%で、インバウドで沸いた2016年から2017 年のデータであるとは言え、驚異的な数字であった。さらに、上場投資ファンドによって所 有されているという点から考えても、平均的なホテルよりも高収益なのであろうと推測され る。ただし、その立地は四条烏丸から徒歩6分であり、必ずしも超一等地にあるわけではな い。 本稿においては、次の三つのケースで検証を行った。第一にホテルが所有者の投資ファ ンドに業績に連動した賃料を払う現状のケース、第二に不動産の資本コストに見合う固定賃 料を支払うと仮定したケース、第三にホテルの所有者が運営も行うと仮定したケースであ る。その結果は三者三様であったが、本稿では、②と③のケースを中心に検証を行った。そ の両ケースではGOP売上高比率や売上高営業利益率は、共に極めて高いものであった。例 えば、売上高GOP比率は、植村[2008]によれば40~60%程度が目安とのことであったが、 同ホテルのそれは約65%で、非常に高かった。しかしながら、同ホテルの収益構造について 詳しく見ていくと、その収益基盤は意外と脆いものであった。例えば、②の固定賃料を支払 うケースでの損益分岐点について検証してみると、その時のRevPARは7,200円であった。 これは、現在のRevPARである、約10,880円から約35%下落した数字である。35%と言え ば、十分な余裕があるように見えるが、そのRevPARは、インバウドで沸いた時期のデータ であり、今後その数字を維持していくのは容易ではないのは明らかである。実際に、上述し た通り、いちごリート投資法人の第4期の有価証券報告書では、前期に比べて京都では収益 が悪化しつつあることに言及している。また、RevPARが7,200円ということは、稼働率が 80%の時のADRが9,000円であり、決して非現実的な数字てはないと考えられる。これらの

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事実から、京都市中心部では、旺盛な宿泊需要で高いRevPARを設定でき、売上高に対する 運営コストを相対的に低く抑えられることから、高い売上高GOP比率を実現できる。しか しながら、地価が高く、しかも景観条例の影響で高い建物を建てられない京都市では、賃料 が相対的に高くなるのだろうと思われる。このことにより、固定費が嵩み、損益分岐点が上 がるのだと思われる。これは、ホテルを所有するケースでは、賃借の場合と比較して、損益 分岐点は低く、会計上は相対的に競争優位性があると言える。しかしながら、多額の負債を 抱えてホテルを購入した場合は、キャッシュフローが行き詰まることはあり得る。 (3)民泊のビジネスホテルに対するコスト面での競争優位性について 既に見た通り、40m​2​で4名定員民泊の損益分岐点でのRevPARは5,780円程度で、その時 のADRは9000円前後と想定されるものであった。一方で、ホテル運営側がホテル所有者に 賃料を支払っているケースでは、その損益分岐点は高く、スマイルホテルの場合は、16m​2 の部屋で、約7200円であった。それはダブルルームの大きさであったから、定員は2名と考 えられる。仮に稼働率を80%とすると、その時のADRは約9000円である。40m​2​の部屋で二 人で民泊すると、その損益分岐点での宿泊単価はビジネスホテルと等価であり、定員の四人 で泊まったときは半額になる。つまり、民泊の方がより広い部屋でより安くで泊まれる上 に、キッチンや洗濯機等が部屋に設置されているという強みもある。一方で、ビジネスホテ ルの強みはスタッフが原則常駐しており、安心感が得られる点や、一定のクオリティが保証 されている点が考えられる。これらの点を総合して、筆者が宿泊者の観点で主観を述べる と、ビジネス利用の場合は、両者の競争優位性は互角であると思われる。しかし、観光目的 で家族や友人と旅行した場合は、安心安全が確保されるならという条件付きで、民泊の方が 上だと考える。この理由は上述した通りであり、誰しも折角の観光旅行であれば、ゆったり とした気分で過ごしたいものであろう。これは、長期滞在の場合は尚更である。よって、観 光客を対象にした場合は、民泊の方がコスト面で競争優位性があると言える。これは、言い 換えると、ビジネスホテルがその資本力を背景に、民泊に対して価格競争を挑んだとしても 勝てないということである。 次に、ビジネスホテル所有時の損益分岐点であるが、そのRevPARは、上で見た通り、約 3,720円であった。仮に稼働率が80%とすると、その時のADRは約4,660円となり、宿泊者 一人当たりで見た場合、民泊とほぼ等価である。そこに、上述したそれぞれのメリットを考 慮すると、宿泊者がどちらを選ぶかはケースバイケースで、観光客を対象にした場合は、そ の競争優位性は互角だと考えた。 では、ホテルが所有か賃借かによって損益分岐点が変わる点をどう理解すればよいのだ ろうか?まず言えることは、ホテル所有時の損益分岐点が下がるのは、不動産を所有するリ スクへの対価だということである。よって、これは経営戦略としてどちらが正しいかという 問題ではない。同時に、これは会計上の利益と費用をベースに損益分岐点を算出した本研究 の限界の問題でもある。会計上の利益は、ホテルを賃借して賃料を支払うよりも、所有して いる方が高く出るのは当然である。よって、真の意味で、コスト面での競争優位性を検証す るには、さらに多角的な検証が必要である。しかしながら、民泊とビジネスホテルの損益分 岐点を明らかにし、条件付きながらも、両者のコスト面での競争優位性について検証を行っ たことには、大きな意義があったと言える。実際に、京都市中心部に所有者からホテルを賃 借して経営を行っているホテルは多数あり、それらのホテルとのコスト面での競争優位性 を、自らが物件を所有する民泊施設が検討するには、意義のある研究であった。一方で、不 動産を双方が所有するケース、つまり同条件で比較したケースでは両者のコスト面での競争 優位性は互角であった。この事から、両者のビジネスモデルは、甲乙つけ難いものだという ことが明らかになった。

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(4)コスト面以外での民泊の優位性と課題について 筆者は、民泊の今後の課題は安心安全の確保であり、それを利用者に信じてもらうこと だと考えている。そのためには、ネットの口コミ評価を上げることも一つであるが、もっと 有効なのは施設のブランド化だと考えている。例えば、ヒルトンや帝国ホテルと言えば、そ の価格とサービスを誰でもイメージできるし、アパホテルや東横インも同様である。今後は 大手資本も参画して、そういう方向に向かっていくのではないだろうか。そうすれば、シ ティホテルやビジネスホテル等の他の宿泊施設に対して、今以上の競争力を持てるようにな ると考えている。さらに、民泊の他の強みは部屋が相対的に広く、個性を打ち出しやすいと ころにある。これは、効率性を重視し、画一的で狭い部屋を提供するビジネスホテルには出 来ないことである。このような強みを発揮していけば、民泊のポテンシャルはまだまだある はずだと考えている。 6.まとめ (1)賃貸マンションの一室を賃借して、民泊を行った場合、その収益性は、極めて高いもの であった。その売上高営業利益率は20%強で、そのような施設を数件運営すると、一般会社 員並みの収入を手に入れられることがわかった。しかも、その初期投資額は限定的で極めて 低いリスクで大きなリターンを得られ、ビジネスとしては非常に魅力的なものであった。た だし、これは現在の京都市の法規制の下では、合法的に営むことはほぼ不可能である。 (2)民泊とビジネスホテルの利益率の計算を行うと、結果は下記の表14の通りとなった。売 上高営業利益率は、いずれの施設でも高い結果を示した。投下資本営業利益率についても、 上場企業の総資産利益率が2%程度であったから、税引き後の純利益ベースでの利益率に換 算しても、それよりやや高い数字を示した。しかし、著しく高いと言える数字でもなかっ た。これは、京都市中心部の地価がこの宿泊施設の収益性の高さを既に織り込んだと考えら れる。また、本稿では、民泊は新築物件で、ビジネスホテルは築古物件で検証を行った点を 留意する必要がある。一般的に、減価償却が進んだ築古物件の方が、利回りは高くなる。 表14 各宿泊施設の利益率 売上高営業利益率 投下資本営業利益率 民泊 (物件所有) 27% 4.1% ビジネスホテル (物件賃借) 26% - ビジネスホテル (物件所有) 52% 6.5% (3)民泊のビジネスモデルについて見ていくと、その魅力の一つが資本的支出が少なく、会 計上の利益に対するフリーキャッシュフローの比率が高いことであった。さらに、リスク要 因がRevPARの変動以外にほとんどない点も、大きなメリットであった。また、将来 RevPARが落ち込み売上が下がった場合も、居住用マンションに転用でき、リスクをコント ロールできる点も大きい。これらの点から、民泊は優れたビジネスモデルであると言える。 一方、最大の弱点は参入障壁が低い点である。よって、今後は熾烈な競争に巻き込まれるの は不可避であり、利益率も徐々に低下していくと考えられる。

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(4)民泊と居住用不動産賃貸業を行った場合の収益性の違いについても検証を行った。フ リーキャッシュフローで見ると、前者が2,900万円、後者が1,313円で、2倍以上の差をつけ て民泊が上回った。また、民泊はいつでも不動産賃貸業に転用できるので、本稿では両者の 事業リスクは等価と考えた。さらに、初期投資費用は民泊が下回るので、事業リスクを考慮 したプロジェクトの正味現在価値で見ても民泊が大きく上回ることになった。 (5)本稿では、京都市中心部にある実在のホテルを例にとり、収益分析を行った。その結果 は上記(2)でも見た通り、売上高GOP比率や営業利益率は極めて高いものであった。しか し、賃料負担などを見ていくと、その収益基盤は意外と脆弱なものであった。今後、競争が 激化しRevPARが低下した場合は、利益率が大きく落ち込む可能性がある。 (6)各宿泊施設の損益分岐点でのRevPARは、下記の表15の通りとなった。部屋の広さや一 人当たりの宿泊単価を考えれば、物件を賃借しているビジネスホテルに対して、民泊のコス ト面での競争優位性は高いと言える。つまり、ビジネスホテルがその資本力にものを言わ せ、価格競争に持ち込むことは出来ない。一方、物件を所有している民泊とビジネスホテル との比較では、ほぼ互角と言える結果であった。つまり、民泊とビジネスホテルを同条件の 下で比較した場合、その宿泊施設としての競争力は互角ということであった。あとは、宿泊 者の好みの問題と言えるが、ターゲットを観光客と考えると、民泊には大手のビジネスホテ ルに十分対抗できるポテンシャルがあると思われる。 表15 損益分岐点でのRevPAR、及びADR等 RevPAR 損益分岐点での 想定稼働率/ADR 部屋面積(上段) 定員(下段) 民泊 (物件所有) 5,782円 60%台半ば /9,000円 40m​2 4名 ビジネスホテル (物件賃借) 7,200円 80%/9,000円 16m​2 2名 ビジネスホテル (物件所有) 3,728円 80%/4,660円 16m​2 2名 (7)本稿では、会計上の損益分岐点に焦点を当ててコスト面での競争優位性の検証を行っ た。その事には大きな価値があったと考えているが、仮にキャッシュフローベースでの検証 を行った場合は、また違う結果になっていただろうと考えられる。例えば、多額の負債を抱 えて土地を購入していた場合、会計上の利益には即座に悪影響を与えないが、キャッシュフ ローには多大な影響を与え、資金繰りが行き詰まる可能性もある。よって、真の競争優位性 について検証を行うには、さらに多角的な検証が必要になってくると考えられ、この点が本 研究の限界であることを認識する必要がある。 (8)本稿では、シティホテルや旅館の分析は行わなかった。それらは今後の課題となるだろ う。当初は民泊の競合はビジネスホテルであろうと想定していたが、研究を進めるに従っ て、シティホテルも競合に成り得ると考えるようになった。例えば、内装を高級外資系ホテ

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ル並みの豪華さにして、その他のサービスを簡素化すれば、高級ホテルに対しても相応の競 争力を持てるはずである。よって、このような研究は意義深いものとなると考えている。 【参考文献】 いちごホテルリート投資法人、「いちごホテルリート投資法人有価証券報告書(第3 期)」、いちごホテルリート投資法人、2017年4月27日、 https://www.ichigo-hotel.co.jp/module/_newsPdfHotel/5472388/IchigoHotel_Yuho_20170427 .pdf いちごホテルリート投資法人、「いちごホテルリート投資法人有価証券報告書(第4 期)」、いちごホテルリート投資法人、2017年10月27日、 https://www.ichigo-hotel.co.jp/module/_newsPdfHotel/18188113/IchigoHotel_20171027_Yuh o.pdf 一般社団法人 日本旅館協会、「営業状況等統計調査(平成27年度財務諸表等より)」、 一般社団法人 日本旅館協会、2017年1月(最終閲覧日2018年2月24日)、 http://www.ryokan.or.jp/top/news/download/57?file=1 植村加津也、「特集 ホテルの賃料動向を探る」、週刊ホテルレストラン、2008年4月11日 号 デロイトトーマツFAS、「ホテルマネジメント15のポイント―金融・不動産の視点から見 る」、銀行研修社 、2009年10月 東横イン、「営業報告書」、東横インホームページ、2017年3月31日(最終閲覧日2018年2 月24日)、​http://www.toyoko-inn.co.jp/report_c.html 内藤信也、「宿泊特化・主体型ホテルの新規開発及び売買トレンド」、週刊ホテルレストラ ン、2013年5月10日 牧野 知弘、「なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか」、祥伝社、2012年 10月1日 みずほ総合研究所、「日本企業の稼ぐ力は高まったのか」、みずほ総合研究所、2017年10 月2日(最終閲覧日2018年2月4日)、 https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp171002.pdf

参照

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