2 事 例 (1) 事例1 (6年理科「土地のつくり-わくわく どきどき 大地の科学- )」 ア 単元について (ア) 掲載の意図 子どもたちは、観察や実験が好きで楽しく取り組んでくれる。ところが、いつのま にか問題意識や課題意識が継続していなかったり、実験の結果からの考察がなかなか できなかったりする。学習課題が自分のものとなっていないからだろう。子どもにと って、課題が身近なことや自分で活動しているという実感ができる追究活動が大切だ と考えられる。観察を通して、子ども一人一人が自分の課題追究の見通しがもてるよ う、土地の成因に対する自分の考えを基に追究活動ができるようにすることが大切で ある。第6学年で培いたい問題解決の能力 「自然の事物・現象の変化や働きを要因、 と関係付けながら調べ、問題を見いだし、多面的な視点から観察や実験を行い、結論 を導く力」が育つよう個人の見方、考えを大切にしたい。土地の成因について、地層 や構成物の観察などから一人一人が考えをもち、個人の学びを学級の中で交流し、自 分なりの考えをもってほしい。 また、観察やモデル実験を通して、地層の空間的な広がりや長い年月をかけてでき たという時間的な視点から自然の雄大さ、自分たちの地域のすばらしさにも目を向け てほしい。 斑鳩の地域を見ると地層が見られるところは少なく、地層を意識させる場は限られ てくる。また、花崗岩などが運動場や地域で多く見られるが、子どもたちの土地のつ くりへの関心は薄いように思われる。 しかし、近年のテレビなどの影響から、恐竜などの生き物や化石への関心は高い。 運動場の石を持ってきて「これは、大昔からのメッセ-ジをいっぱい伝えてくれてい るよ 」とか「砂場の砂の中に、貝殻やサメの歯が見つかる事があるよ 」と語りか。 。 けると、「アンモナイトの化石を家から持ってくる。」「この石は、何ていうの。」とさ っそくもの集めが始まる。このような子どもたちの興味を高め、身近な土地の観察や 推論から自然のすばらしさに気づく心を育てたい。 そこで 「土地のつくり」において、観察することが重要になってくる。課題をも、 つ場面や活動の見通しをもつ場面において、適切な切り通しや露頭を観察すること、 さわること、構成物を調べることは、地層の成因の推測や、地層の空間的な見方、時 間的な見方をもつのに重要な点である。しかし、校区に適切な観察場所のないことか ら、地層のサンプルを利用したり、構成物を持ち込んだり、インターネットなど情報 の活用等、題材の工夫を行い、学習を進めていきたい。 (イ) 単元の趣旨と内容の系統 「C地球と宇宙」の特性として活動を通して、「日常生活と関連付けて実感を伴っ た理解を図る。」「自然災害に関する内容の充実」が挙げられる。ここでは、身近な フィールドを学習の場に取り入れたり、土地の成因について、観察やそれに基づいた 推論をモデル実験の結果とをリンクさせたりしながら実感の伴った学びへとつないで いきたい。
また、土地の変化を推論する活動の中で、大和川とのかかわりや地域に見られる花 ( ) 。 崗岩から火山活動とのかかわりについても人と自然 自然災害 の視点をもたせたい 水の働きに気づかせていく際、第5学年の学習「C地球と宇宙」の内容(2)「流れる 水や川の観察」を想起させていきたい。あわせて、本単元では、子どもが自然の事物 ・現象の中から自ら問いを見いだし、解決方法を創出し、実行するという問題解決の 活動を大切にしていきたい 「大地のつくり」について、石や土といった具体物の観。 察からそれぞれがもつ課題を大切にし、追究活動の複線型、個別化を行い、交流の場 で情報交換をすすめ、個に応じた追究活動を高めていきたい。 (ウ) 改善の視点 、 、 個に応じた学習指導においては 子どもたちの学習活動の様子や学習記録を通して 学習目標の達成度を評価規準に照らして判断していくことが大切になる。一人一人の 評価を基に、1単位時間における学習内容の充実への支援を重ねていくことも大切で ある。また、小単元と小単元の間というような一定のところまでの学習活動を振り返 り、個に応じた指導や支援も考えられる。ここでは、小単元の終末に個人追究の報告 会を行い、それまでの学習の様子や記録、凝縮ポートフォリオから評価規準に照らし て指導者が一人一人の学習を見取り、補充的な指導と発展的な指導に進むよう指導し ていった。その際、どちらも子どもたちにとって価値のある教材を提示し学ぶ意欲を 高めていくことが大切であると思う。 (エ) 単元構成 「土地のつくり」 全13時間 第1次 身近な土地の観察をしよう 2時間 第2次 土地のつくりを調べよう 4時間 第3次 地層のでき方を調べよう 5時間 第4次 個に応じた学習活動 2時間 イ 単元の目標 土地やその中に含まれるものの観察を通し、土地のつくりと土地のでき方について 自然災害と関係付けながら調べ、得られた結果や情報を基に多面的に追究し、土地の つくりや変化についての見方や考え方をもつことができる。 ○ 身近な土地の様子やその中に含まれる物、土地のでき方、自然災害との関係など に興味・関心をもち、自ら土地のつくりと変化のきまりを調べようとする。 (自然事象への関心・意欲・態度) ○ 土地の様子やその中に含まれるものから、土地のつくりや変化を多面的に考える 、 。 ( ) ことができ 地層の広がりを推論することができる 科学的な思考 ○ 土地のつくりと変化を調べるのに、安全に気をつけて野外観察を行い、モデル実 。 ( ) 験や資料を活用し多面的に調べることができる 観察・実験の技能・表現 ○ 土地は、礫、砂、粘土、火山灰及び岩石からでき、層をつくって広がっているこ とや地層は、流水や火山の噴火によってでき、化石が含まれているものがあること 。 ( ) を理解している 自然事象についての知識・理解
ウ 指導と評価の計画 (ア) 基本的な考え方 個に応じた活動をより高めるためには、子どもの活動と評価の視点が大切になって くる。本単元では、学習指導要領の目標から、子どもがつくり、もつことが期待され る見方や考え方を単元の目標とし、国立教育政策研究所の「評価規準の作成、評価方 法の工夫改善のための参考資料(小学校)」に沿い、内容のまとまりごとの評価規準、 単元の評価規準、単元の学習活動における具体の評価規準を作成した。そして、子ど もたちの活動の様子やノートなどから子どもの学びを見取り、評価を行い、フィード バックを行い、個に応じた指導(補充的な指導、発展的な指導)へと進めた。 また、第6学年では、前学年で培った計画的な観察、実験を行う資質・能力に加え て、多面的に追究する視点が重要となってくる。そこで、学習活動の中で互いの考え 方や観察の結果の価値を認め合いながら、個の学びを学級集団としての学習の場へと 広げ、それぞれの考えを深めたい。児童一人一人に、科学的な見方や考え方を培いた い。 (イ) 単元の評価規準 a 第6学年「C地球と宇宙」の評価規準 自然事象への 観察・実験の 自然事象についての 科学的な思考 関心・意欲・態度 技能・表現 知識・理解 土地のつくりと変化の 土 地 の つ く り と 変 化 問 題 解 決 に 適 し た 方 土 地 の つ く り と 変 化 様子を自然災害などと と そ の 要 因 と の 関 係 法 を 工 夫 し 、 土 地 の に は き ま り が あ る こ 関係付けながら意欲的 に 問 題 を 見 い だ し 、 つくりと変化を観察、 と な ど を 理 解 し て い に追究し、自然の力の 多 面 的 に 追 究 し 、 相 実 験 し 、 そ の 過 程 や る。 大きさを感じるととも 互 関 係 や 規 則 性 を と 結果を的確に表す。 に、見いだしたきまり ら え 、 問 題 を 解 決 す を生活に当てはめてみ る。 ようとする。 b 単元「土地のつくり」の評価規準 自然事象への 観察・実験の 自然事象についての 科学的な思考 関心・意欲・態度 技能・表現 知識・理解 ①身の回りの土地やそ ① 土 地 の 様 子 や 構 成 ① 土 地 の つ く り と 変 ① 土 地 は 、 礫 、 砂 、 の中に含まれる物、 物 な ど か ら 、 土 地 化 を 調 べ る 工 夫 を 粘 土 、 火 山 灰 及 び 土地の変化、土地の の つ く り や 変 化 の し 、 ボ ー リ ン グ 資 岩 石 か ら で き て お 変化と自然災害との 様 子 を 多 面 的 に 考 料 や 映 像 資 料 な ど り 、 層 を つ く っ て 関係などに興味・関 えることができる。 を 活 用 し て 、 多 面 広 が っ て い る も の 心をもち、自ら土地 ② 数 地 点 の 土 地 の 構 的 に 調 べ る こ と が が あ る こ と を 理 解 のつくりと変化のき 成物を関係付けて、 できる。 している。 まりを調べようとす 地 層 の 広 が り を 推 ② 安 全 に 野 外 観 察 を ② 地 層 は 、 流 れ る 水 る。 論 す る こ と が で き 行 っ た り 、 映 像 や の 働 き や 火 山 の 噴 ②土地をつくったり変 る。 資 料 な ど を 活 用 し 火 に よ っ て で き 、
化させたりする自然 た り し て 日 常 生 活 化 石 が 含 ま れ て い の力の大きさを感じ、 に関連付けて調べ、 る も の が あ る こ と 生活している地域の 記 録 す る こ と が で を理解している。 特性を見直そうとす きる。 ③ 土 地 は 、 火 山 の 噴 る。 火 に よ っ て 変 化 す ③土地の変化について、 る こ と を 理 解 し て 火山の噴火か地震に いる。 よる土地に変化を、 ④ 土 地 は 、 地 震 に よ 地域の特性を考えな っ て 変 化 す る こ と がら自ら選択しよう を理解している。 とする。 c 学習活動における具体の評価規準 ア 自然事象への ウ 観察・実験の エ 自然事象について イ 科学的な思考 関心・意欲・態度 技能・表現 の知識・理解 ①土地の様子やその中 ① 土 地 の 様 子 や そ の ① 土 地 の つ く り と そ ① 土 地 は 、 礫 、 砂 、 に含まれる物に興味 中 に 含 ま れ る 物 か の 成 因 を 調 べ る 工 粘 土 、 火 山 灰 及 び をもち土地のつくり ら 、 土 地 の つ く り 夫 を し 、 い ろ い ろ 岩 石 か ら で き て お とその成因を調べよ や 水 や 火 山 の 噴 火 な 資 料 を 活 用 し 、 り 、 層 を つ く っ て うとする。 に よ る 成 因 に つ い 多 面 的 に 調 べ る こ 広 が っ て い る も の ②長い年月をかけ土地 て 多 面 的 に 考 え る とができる。 が あ る こ と を 理 解 をつくったり変化さ ことができる。 ② 安 全 に 留 意 し 野 外 している。 せたりする自然の大 ② 数 地 点 の 土 地 の 様 で の 観 察 を 行 っ た ② 地 層 は 、 流 れ る 水 きさを感じ、地域の 子 や 構 成 物 か ら 地 り 、 資 料 と の 比 較 の 働 き や 火 山 の 噴 すばらしさを見直そ 層 の 広 が り を 推 論 を 行 っ た り し な が 火 に よ っ て で き 、 うとする。 することができる。 ら 調 べ 記 録 が で き 化 石 が 含 ま れ て い ③土地の変化について、 る。 る も の が あ る こ と 地域の特性から火山 を理解している。 や地震とのかかわり ③ 土 地 は 、 火 山 の 噴 について選択をし、 火 に よ っ て 変 化 す 調べようとする。 る こ と を 理 解 し て い る 。 ま た 、 土 地 は 、 地 震 に よ っ て 変 化 す る こ と を 理 解している。
(ウ) 指導と評価計画の概要 (全13時間) 学 習 活 動 評価の工夫 第1次 身近な土地の観察をしよう (2時間)。 発言・記録分析 斑鳩の土地は、どうやってできたのだろうか。 ア①② 火山の噴火でで 地震で盛り上が 海でできて、盛 きた。 ってできた。 上がった。 第2次 土地のつくりを 調べよう (4時間)。 ・ボーリング資料を調べる。(斑鳩小学校の資料) 行動観察・発言 ・ねん土があるよ。 ・砂が見える。 記録分析 ・石もあるよ。 ・火山灰がある。 ウ①② エ①② 地層について、いろいろ調べよう。 火山灰を調べてみ 化石を調べる。 地 層 の 中 の 石 や イ ン タ ー ネ ッ ト る。 土を調べる。 で調べる。 第3次 地層のでき方を調べ よう (2時間)。 火山の噴火や水による地層のでき方を調べる。 行動観察・観察 ・ビデオで見てみよう。 ・ペットボトルで実験しよう。 記録分析 イ① エ② 斑鳩の地層のでき方を まとめよう (3時間)。 大地の科学を発表する。(屋台村) 発言・記録分析 評 価 イ①② 第4次 個に応じた学習活動 (2時間) 発展的な学習 補充的な学習 化 石 につ い て調 べ 、昔 の 地 層 の モ デ ル づ く り を し 地 域 の様 子 や自 然 につ い て、地層のでき方について 行動・記録分析 て考える。 調べる。 イ②
エ 展開例 「わくわく どきどき 大地の科学」 (ア) 題材 (イ) 目標 a 第3次の目標 地層のでき方のビデオを見たり、地層のでき方を調べる実験(地層モデル実験)を したりすることを通して、斑鳩の土地のつくりやその成因、地層の広がりを考え、調 べたことを凝縮ポートフォリオで発表することができる。 b 発展的な学習の目標 、図書で調べたりするこ 貝化石や石灰石、珪藻土などの化石標本について、観察したり とを通して、斑鳩の昔の大地の様子を想像する。 c 補充的な学習の目標 地層の構成物やボーリング資料を観察をして、それをまとめることを通して、地層 が水の働きや火山の噴火などによってできたことを理解する。 (3) 展開 学 習 活 動 指導上の留意点と評価方法 地層のでき方を調べよう。 ○火山で大地ができる様子をビデオで見る。 ・火山については、ビデオに ・火山灰が何度もふりつもってしまになるんだ。 よって観察をさせる。 ・よう岩が流れていくよ。 ・水との関係については、自 第 由な発想で検証させる。 三 ○水の働きでできる様子を考えた方法で調べる。 ・水そうに水を入れて、土や砂を上から落とす。 次 ・水と石や砂、土を入れてまぜてみよう。 ○大地の科学をまとめよう。 ・発表をした後、各々のこれ 地 ・火山や水の働きで大地ができたのだ。 まで集めた資料や観察を基 層 ・小石や土、ねんどは、水の中で順番にふりつもり、地 に凝縮ポートフォリオにま の 層になった。 とめ、考えを整理させる。 で ・小さな地層しか実験ではできなかったけれど、実際 き はあんなに大きいからすごいと思った。 方 を ・交流する事で、新たな見方 調 大地の科学展をしよう。(屋台村) や考えに気づかせる。 べ ○資料をまとめる。 よ ○ポートフォリオで展示会をする。 う ・うまくまとめられているね。 ・どうやって地層になったかわかりやすいね。
評価を基に発展的な学習と補充的な学習に分れる。 発展的な学習 補充的な学習 ・グループの課題を確認し提 地層に含まれるものについて詳しく調べよう 示する。 ・いろいろな素材を提供、自 由にこれまでの学習から資 化石について更に調べ、 地層の中の石やねん土を 料やモデルづくりを行うよ むかしの斑鳩の様子を考 調べ、地層のモデルを作 う支援する。 えてみよう。 成しよう。 ・地層の広がりや地層ができ ○貝化石や石灰石、珪藻土な ○構成物やボーリング資料の た要因と関連付けながら観 どの標本などをくわしく観 観察から地層ができた要因 察やモデルづくりが行える 察したり、その頃の様子を について水の働きや火山と よう支援する。 調べたり推測したりする。 関係させながら考える。 第 ○資料を基に昔の地域の様子 ○これまでの資料や地層の構 ・作品や記録を発表し、互い 四 などを想像しながら観察を 成物の観察を基に、スケッ の成果を認め合う。 次 行う。化石の生きていた環 チをしたり、材料を選択し 境を推理するための図書資 たりして、標本づくりを行 個 料を活用する。 う。 に ○観察を基に昔の斑鳩の様子 ○観察やモデルづくりについ じ をまとめる。 てまとめる。 た 指 評価方法 導 【評価規準】 【評価規準】 発展的な学習 「関心・意欲・態度」 「科学的な思考」 興味をもつて観察や推理が 地層は、いろいろなも いろいろな構成物を調 できたかワークシートから ので構成され、化石を調 べ、地層は、水の働きや 評価する。 べることで昔の様子につ 火山の噴火などでででき 補充的な学習 いて興味・関心をもつて たことを理解する。 第3次でおこなった科学的 意欲的に推理しようとす な思考の評価規準を基に、 る。 作品やワークシートから評 努力を要すると判断された 努力を要すると判断された 価する。 児童への具体的な対応・手 児童への具体的な対応・手 段 段 ・友だちと、化石の生き ・教科書やノートを振り ていた環境について話 返らせ、地層のでき方 し合わせる。 について確認させる。
(エ) 指導のポイント a 補充的な学習の指導について 補充的な学習では、フロッピーディスクのケ ースを活用し、地層のモデルづくりを行った。 モデルをつくる過程で、地層がいろいろな大き さの石や粘土、砂などで構成されていること。 また、小石など粒の観察から地層の成因を水の 働きとのかかわりからとらえられるよう、地層 、 、 の構成物を教室に置き 観察ができるようにし 写真1 地層モデルづくり ルーペや双眼顕微鏡なども自由に使えるように 教室に置いた。また、自分たちの住んでいる所の地層を意識するために小学校のボー リング資料も観察できるようにした。ボーリング資料 の中に火山灰が見られることやこの学習を通して興味 をもった子どもが保護者と屯鶴峯へ観察に行って持ち どんづるぼう 帰った火山灰の観察より、火山と土地のつくりのかか わりについても気づけたように思う。これらの観察を 基に、フロッピーディスクのケースを活用したモデル づくりで、構成物のモデル材料を選びながらこれまで 写真2 地層モデル の学習をふり返ることができたと思われる。また、作 、 。 品を大切そうに自慢する姿も見られ 反復的な補充学習の意識にならなかったと思う b 発展的な学習の指導について 発展的な学習では、子どもたちの中で高まっ た化石への興味を大切にし、化石の観察から昔 の斑鳩の様子を想像させていった。 地層の構成物の観察や資料による学習を進め ていった結果、活動は多岐にわたっていった。 個々に追究していった課題をポートフォリオに 整理していくと、それぞれが、断層に気づいた り化石や岩石に着目したりするなどしていく。 写真3 化石を調べる 学習活動が進んでいく中でそれぞれが新しい疑 問や興味をもつようになる。理科教育では、そういった一人一人の疑問を大切に指導 していく工夫が必要になってくる。そこで、発展的な学習では、こうした一人一人の 疑問を大切にし、広く学ばせたり深く学ばせていきたい。 今回は、多くの児童が化石に興味を示したので化石を中心に進めていったが、少人 数学習などを活用し、他のいろいろな課題に取り組ませることが必要であろう。 化石については、石灰岩の中のフズリナや珪藻土などの微化石、貝の化石などを観 察することで昔の斑鳩について想像させていった。あわせて、化石や生き物の図鑑を 多く用意をし、何の仲間なのかも想像させていった。結果、子どもたちに詳しくスケ ッチをし、楽しく想像をめぐらせる姿が多く見られた。 (オ) 評価の工夫
a 単元全体を通して評価の工夫 本単元では、子どもの自由な追 究活動、個の学びを大切にしてき た。したがって、子どもの学びに おける気づきやつまずきをできる だけていねいに見ていかなければ ならない。そこで、指導と評価の 計画にあるように、評価規準に照 らして、子どもの行動や記録を評 価し、指導や支援に活用していか なければならない 「観察・実験の。 技能、表現」などは、活動中の子 どもの行動や観察記録を中心に見 取りながら支援をしなければなら ない。それらを評価しながら授業 を行うことは、難しいことではあ る。ディジタルカメラを活用する のも一考かもしれない。また、科 学的な思考や興味・関心・態度に ついては、ノートや授業中のつぶ 図1 発展的な学習のワークシート やきをていねいに見取ることが必 要となる。メモや授業後ノートを見ることで次の授業での指導に生かしていった。 b 補充的な学習や発展的な学習へ進めるための評価の工夫 ここでは、子どもの学習の様子によって補充的な学習と発展的な学習指導に分かれ ていくための評価についてまとめておきたい。発展的な学習や補充的な学習へ進める ための評価は、子どもの活動や記録を評価規準に照らして見取り、その達成に応じて 次の学習活動を決めていくもので ある。 c 評価のねらい これまでの観察や情報を整理す ることで、地層がしま模様のように 見えるのは、砂や粘土、礫が層を 形成していることや、構成物に見 られる化石や火山灰から、地層は 水や火山の働きによってできたこ とに気づくか。また、いろいろな 視点から考えることができている 写真4 凝縮ポートフォリオ かを子どもの記録(ポートフォリ オ)から見取り 「科学的な思考」の観点で評価する。また、子ども一人一人の評価、 を基に、補充的な活動内容と発展的な活動内容を決めていきたい。
e 評価の場面 (第3次 第3時) 個に応じた指導の在り方においては、一人一人の学習における達成の状況に応じて 補充的な学習と発展的な指導を指導計画の中に位置付けている。そこで、第3次の終 末で子どもの達成の様子を前時までの学習の記録や報告会の発表の内容や資料、凝縮 ポートフォリオを基に評価を行った。 f 評価の視点 「おおむね満足できる」状 「 十分満足で きる」と判断 努 力を要する と判断され 況( )と判断される状況B される視点(質的な高まりや た 児童への具 体的な対応 深まりを見る視点) ・手段 地層の成因 と水や火山 数地点の 土地の様子 やそ 地層モデル実験と関連付け の 噴火の働き について、 の中に含ま れる物から 、土 て考えることができるか。 科 地のつくり や水・火山 の噴 構 成物をくわ しく観察す 学 火による地 層の成因や 地層 る ことで気づ けるよう助 的 の広がりに ついて多面 的に 言する。 考えることができる。 な 思 考 発展的な学習 補充的な学習 g 評価結果と発展的な学習や補充的な学習の指導 ポートフォリオの中に見られる地層の観察記録やノートに見られる記録などから評 価規準に照らして評価を行った。凝縮ポートフォリオには、学習で得た内容が工夫さ れてちりばめられている。 。「 」 、 子どもの記録を評価の視点に照らしてみた おおむね満足できる 状況としては これまでの観察の結果から地層の構成物の特徴を細かくとらえ、小石の角が丸いこと から水による堆積を考えることができている。ボーリング資料から、火山灰の観察を 通して火山の噴火による地層の形成に気づいているなどの記録が見られるかを評価し た。さらに 「十分に満足できる」状況については、こういった記録を基にいろいろ、 な資料を活用し、モデル実験の結果と関係づけ考えようとしているかなどを視点に評 価を行った。 右の子どもの記録には、地層の構成物として小石、砂、土などに着目し、さらに小 石の観察から水の働きを推論していることが見て取れる。また、他の記述に観察した ことを基に、インターネットやビデオ、図書資料などいろいろな情報を整理しながら 地層の広がりなどにも気づきが見られる。そこで、発展的な指導を行い、子どもの興 味を高め、大地が長い年月を経てできてきたことに関心をもたせ自然の雄大さととも に郷土を愛する心を育てていきたい。化石の観察を通して、昔の斑鳩の様子を思い巡 らせ大地への想いを高めたい。 一方 「努力を要する」状況としては、地層の構成物を細かく観察できていないた、
めに、大地をしま模様としてしか認識し ていない。土地の成因として、水とのか かわりでとらえた記述が見られない。そ こ で 、 再 度 、 構 成 物 や ボ ー リ ン グ 資 料 を観察し、石の角が取れ丸いところや火 山灰から地層の成因を話し合ったりする 補充的な学習指導を位置付けたい。材料 となる小石や砂を選びながら行うモデル づくりを通して地層の成因等に気づかせ たい。 オ 今後の展望 、 個に応じた指導の在り方の研究にあたり 学習指導要領を何度か読み返してみた。育 てたい資質や能力、学習の場など大切な視 点を再認識させられ、個に応じた学習にお ける、子どもの学習の習得状況を評価する 子どもの学習前 大切さと難しさを感じた。 の姿を生かした支援、学習後の変容を明 確に見取ることが大切である。 一人 一人の課題 今回の研究授業では、 図2 凝縮ポートフォリオの内容 意識、追究方法に応じた複線型の授業を行 った。化石や地層のサンプルなど、子どもの追究過程を想定しながらの準備は楽しかっ たが、苦労もまた多かった。発展的な指導では、化石を通して、斑鳩の昔の様子を追究 することにしたが、追究の中で断層に興味をもつ子どもがいた。子どもの興味・関心に 基づいた課題意識の広がりに驚くとともに、広がりに対応することが課題だと思った。 また、子どもたちを課題に応じて分けることの難しさがある。一人の指導者で複数の課 題に対応していかなければならない学習指導には忙しさがあった。 しかし、個に応じた指導を通して、子どもたちは学習意欲が高まったように感じた。 小さな科学者たちが石や化石を観察をする目がキラキラと輝き、授業後に石を持ってき て、様々な話をしてくれた。休みの日に家の人と岩石探しに行った子もいる。凝縮ポー トフォリオ作りを楽しめた子もいる。自由研究に化石や恐竜を選んでくれた子もいる。 個に応じた指導が、基礎・基本の確実な定着を果たすとともに、子どもたちの理科の楽 しさへの扉を開く一歩であるように実感した。