地方自治体における建築物のバリアフリー化関連条
例のあり方について : 行政指導と実効性の分析か
ら
著者
岩浦 厚信
雑誌名
東洋大学大学院紀要
巻
51
ページ
387-404
発行年
2014
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007315/
<論文要旨>
本稿の目的は、地方自治体において建築物のバリアフリー化を実現するために施行された 自主条例注1)と委任条例注2)の検証とあり方を検討することである。 調査の結果、多くの自治体は対象建築物を自主条例の整備基準に適合させるのに苦慮して いた。また、委任条例を定める地方自治体は少なかった。 建築物のバリアフリー化を実現するためには、地方自治体は自主条例と委任条例の役割を 認識し、それぞれを活用しながら行政指導を行うことである。そのための方法は、3つある。 1. 委任条例の役割は、対象建築物を確実にバリアフリーにすること。 2. 自主条例の役割は、対象建築物を理想的なバリアフリーにすること。 3. 地方自治体は、建築主に対するバリアフリーの啓発や設計者、施工者に対する技術指導 に努めることである。 キーワード 地方自治体、自主条例、委任条例、バリアフリー1. はじめに
1-1 研究の背景 日常生活において利用する建築物をバリアフリー化することは、全ての人たちの社会参加 を促進することにつながる。そこで、建築物のバリアフリー化を規定する全国の自治体の福 祉のまちづくり条例等の実施状況から、我が国における建築物のバリアフリー化のあり方に ついて研究を行う。 地方自治体が建築物について障害者に対するアクセス基準を設けたのは、1974年に町田市 が「町田市の建築物等に関する福祉環境整備要綱」を定めたのが最初である。その後に、こ の要綱は全国の自治体において策定されるとともに、1977年には神戸市において「神戸市民地方自治体における建築物のバリアフリー化関連条例の
あり方について
—行政指導と実効性の分析から—
福祉社会デザイン研究科人間環境デザイン専攻博士後期課程2年
岩浦 厚信
の福祉を守る条例」として制定されるに至った。 また、1990年にアメリカにおいて「障害をもつアメリカ人法」(ADA)注3)が制定されたこ とは、わが国の福祉のまちづくりの法制度に大きな影響を与えた。 1990年に神奈川県が建築基準法第40条に基づく建築条例を制定し、国際車いすシンボルマ ーク掲示最低基準注4)を用いたバリアフリー化の指導が開始された。 また、1993年には大阪府及び兵庫県が自主条例を施行し、すべての都道府県のみならず、 基礎自治体である特別区や市においても自主条例が施行されるに至った。 さらに、1994年には「ハートビル法」注5)が施行され、2,000㎡以上の特別特定建築物の建築 等に対して建築物移動等円滑化基準への適合が義務付けられるとともに、地方公共団体が委 任条例を施行することが可能となった。 1-2 研究目的 そこで、全国の自治体の自主条例と委任条例について、対象建築物の用途や規模、事務手 続、実績等と、自治体のバリアフリー化に対する考えを聞くことにより、我が国における建 築物のバリアフリー化のあり方を考える。 なお、本研究に関連する既往研究について、山崎他(2009)1)は、全国自治体の委任条例 や自主条例の制定や改正状況を調査し、「自主条例」、「自主・委任」、「自主・委任一体」タ イプがあることを把握した。花光他(2009)2)は、和歌山県福祉のまちづくり条例の届出件 数から用途別の整備状況を述べた。安間(2006)3)は、世田谷区において委任規定を福祉の まちづくり条例の改正の中で定めた内容の解説と課題を述べた。下郡山他(2010)4)は、練 馬区福祉のまちづくり推進条例の内容解説と今後のバリアフリー整備に関する課題を示し た。 このように、全国の自治体における自主条例や委任条例の制定状況、条例の内容等の比較 についての研究は少なくはないが、全国の自主条例や委任条例の実績調査をもとにバリアフ リー化の実効性を検討し、条例の方向性、課題の解決方策を論じる研究が必要と考えられ る。 1-3 研究方法 自治体に対して2回のアンケート調査を実施した。 1回目は、条例の実施状況を把握することを目的として、自主条例及び委任条例の制定状 況や事務手続き、届出実績等についての内容である。2013年8月2日から9月2日に、47都道府 県及び20政令指定都市、東京都23特別区、そして先駆的に福祉のまちづくりに取り組む3市 の83自治体に行い、63自治体から回答があった。なお、自主条例や委任条例を施行する59自 治体(47都道府県、7政令市、2特別区、3市)については、回答がない場合は電話による聞
き取りを行い、アンケート調査を行った。 2回目は、各自治体の条例に対する取り組み状況や考えを把握することを目的として、事 務手続きや整備基準の遵守状況、バリアフリー化を促進するための施策等についてアンケー ト調査を行った。調査は、2014年3月28日から4月21日に、自主条例や委任条例を施行してい る59自治体に対して行い、51自治体から回答があった。
2.自主条例による行政指導について
(1)自主条例の規定 47都道府県のうち自主条例を定めているのは46自治体である。残る1自治体は、1996年に 自主条例を定めたものの2008年に委任条例へ改正している。また、調査を行った7政令市及 び2特別区、3市の12自治体(以下、「政令市等」という。)のうち11自治体で自主条例を定め ている。 ①対象施設 自治体の自主条例においてバリアフリーの対象となる建築物の用途は、多数が利用する建 築物として、バリアフリー法に定める特定建築物(表1)と同様の用途である。そのほかに、 火葬場や映画スタジオ、神社、寺院、冠婚葬祭場、給油所等を対象施設として定める自治体 がある。 自 治 体 ( 4 7 都 道 府 県 、 7 政 令 市 、 2 特 別 区 、 3 市 ) に つ い て は 、 回 答 が な い 場 合 は 電 話 に よ る 聞 き 取 り を 行 い 、 ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。 2 回 目 は 、 各 自 治 体 の 条 例 に 対 す る 取 り 組 み 状 況 や 考 え を 把 握 す る こ と を 目 的 と し て 、 事 務 手 続 き や 整 備 基 準 の 遵 守 状 況 、 バ リ ア フ リ ー 化 を 促 進 す る た め の 施 策 等 に つ い て ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。 調 査 は 、 2 0 1 4 年 3 月 2 8 日 か ら 4 月 2 1 日 に 、自 主 条 例 や 委 任 条 例 を 施 行 し て い る 5 9 自 治 体 に 対 し て 行 い 、 5 1 自 治 体 か ら 回 答 が あ っ た 。 2 . 自 主 条 例 に よ る 行 政 指 導 に つ い て ( 1 ) 自 主 条 例 の 規 定 4 7 都 道 府 県 の う ち 自 主 条 例 を 定 め て い る の は 4 6 自 治 体 で あ る 。 残 る 1 自 治 体 は 、 1 9 9 6 年 に 自 主 条 例 を 定 め た も の の 2 0 0 8 年 に 委 任 条 例 へ 改 正 し て い る 。ま た 、調 査 を 行 っ た 7 政 令 市 及 び 2 特 別 区 、3 市 の 1 2 自 治 体( 以 下 、「 政 令 市 等 」 と い う 。) の う ち 1 1 自 治 体 で 自 主 条 例 を 定 め て い る 。 ① 対 象 施 設 自 治 体 の 自 主 条 例 に お い て バ リ ア フ リ ー の 対 象 と な る 建 築 物 の 用 途 は 、 不 特 定 多 数 が 利 用 す る 建 築 物 と し て 、 バ リ ア フ リ ー 法 に 定 め る 特 定 建 築 物 ( 表 1 )と 同 様 の 用 途 で あ る 。そ の ほ か に 、火 葬 場 や 映 画 ス タ ジ オ 、神 社 、寺 院 、 冠 婚 葬 祭 場 、 給 油 所 等 を 対 象 施 設 と し て 定 め る 自 治 体 が あ る 。 ※ バ リ ア フ リ ー 法 施 行 令 第 4 条 よ り 、 一 部 用 途 名 を 簡 略 し て 作 成 ② 対 象 規 模 自 主 条 例 の 対 象 建 築 物 の 用 途 の 中 か ら 、市 民 生 活 に 密 接 な 関 係 が あ る と 思 1 . 学 校 1 2 . 運 動 施 設 又 は 遊 技 場 2 . 病 院 又 は 診 療 所 1 3 . 博 物 館 、 美 術 館 又 は 図 書 館 3 . 劇 場 、観 覧 場 、映 画 館 又 は 演 芸 場 1 4 . 公 衆 浴 場 4 . 集 会 場 又 は 公 会 堂 1 5 . 飲 食 店 等 5 . 展 示 場 1 6 . 理 髪 店 、 ク リ ー ニ ン グ 取 次 店 、 銀 行 等 6 . 物 品 販 売 店 舗 1 7 . 自 動 車 教 習 所 、 学 習 塾 等 7 . ホ テ ル 又 は 旅 館 1 8 . 工 場 8 . 事 務 所 1 9 . 車 両 ・ 船 舶 ・ 航 空 機 の 発 着 場 を 構 成 す る 建 築 物 9 . 共 同 住 宅 、 寄 宿 舎 又 は 下 宿 2 0 . 自 動 車 駐 車 施 設 等 1 0 . 老 人 ホ ー ム 、 保 育 所 、 福 祉 ホ ー ム 等 2 1 . 公 衆 便 所 1 1 . 老 人 福 祉 セ ン タ ー 等 2 2 . 公 共 用 歩 廊 表 1 バ リ ア フ リ ー 法 特 定 建 築 物 ②対象規模 自主条例の対象建築物の用途の中から、市民生活に密接な関係があると思われる、「診療 所(収容施設なし)」「物販店」「飲食店」「銀行等」の4用途の対象規模を比較するために、 都道府県を「図1-1~4」、政令市等を「図1-5~8」に表した。なお、都道府県については4地域に分けて、最初のアルファベットを北日本(東北より以 北)はN、東日本(関東より以西)をE、西日本(近畿より以西)をW、南日本(九州より 以南)をSで、政令市等をCで表した。地域内の順は不同である。 北日本は、診療所について7自治体のすべてが0㎡以上としている。物販店及び飲食店、銀 行等の3用途については、500㎡以下を対象としている。 東日本は、診療所(収容施設なし)について、対象外としたところが1自治体ある。また、 すべての規模を対象としたのは11自治体ある。そのほか診療所を除く3用途を2000㎡以上と するところが1自治体ある。そのほかの自治体では、4用途について対象規模を500㎡以下に 規定している。 西日本は、診療所について対象外としたところが1自治体ある。この自治体は、委任条例 において0㎡以上を対象としているため、自主条例で規定していないと思われる。また、す べての規模を対象としたところが12自治体ある。そのほかの自治体では、4用途について対 象規模を300㎡以下に規定しており、より小規模なものを対象規模としているところが多い。 南日本は、物販店を2000㎡以上としたところが2自治体、飲食店及び銀行を1000㎡以上と したところが1自治体ある。そのほかの自治体では、4用途について300㎡以下を対象規模と しているところが多い。 政令市等は、診療所について11自治体のすべてが0㎡以上としている。そのほかの3用途に ついては、6自治体がすべての規模としており、そのほかの5自治体も300㎡以下であり、小 規模なものを対象規模としている。 対象規模について、診療所については、全体的に小規模としていること。そのほかの3用 途については、自治体ごとに同様の規模を規定しているところが多い。(Nb,Ne,Nf,Ea,Ec,Ef, Eg,Ei,En,Eo,Ep,Eg,We,Wf,Wi,Wk,Wl, Wn, Sd, Se,Sf,Sg,Cz,Cy,Cv,Cu,Ct,Cs,Cr,Cq,Cp) したがって、バリアフリーの必要な建築物の用途や規模の考えは、自治体によって大きく 違うことがわかった。 ③整備必要箇所 自主条例では、高齢者や障害者等が安全かつ円滑に利用できるようにするための整備を必 要とする箇所を定めている。この整備必要箇所について法と各自治体の自主条例を比較して 「図2」に示す。 法において定める整備必要箇所は10箇所だが、各自治体の自主条例で定める整備必要箇所 は、法で定める箇所より多く、また自治体ごとに大きな違いがある。したがって、バリアフ リー化された建築物の内容は自治体によって違ってくることが考えられる。 また、自主条例において小規模建築物に対する緩和基準を設けている自治体は都道府県に おいて10自治体、政令市等では9自治体がある。
自治体により、小規模建築物の対象規模は、100㎡未満から1000㎡未満の範囲で様々であ る。また、対象用途は、物販店や飲食店、理容店などに限るものから、すべての対象用途の 小規模建築物を定めるところまで様々である。 19自治体で定めた小規模建築物に対する緩和基準の対象整備個所について、法と自主条例 の違いを「図3」に示す。 自主条例では、小規模であることを考慮し、設置者の整備負担軽減を図るために整備必要 箇所を少なくするか、整備負担の少ない箇所を指定しており、自治体として小規模建築物で あっても整備していく考えが伺える。 単位: ㎡ ㎡以上
&] &\ &[ &Z &Y &X &W &V &U &T &S 対象外 対象規模 図 2 自 主 条 例 整 備 必 要 箇 所 図 3 小 規 模 緩 和 基 準 の 整 備 必 要 箇 所 図 政 令 市 等 ・ 飲 食 店 対 象 規 模 図 政 令 市 等・銀 行 等 対 象 規 模 単 位 : ㎡ ㎡ 以 上
&] &\ &[ &Z &Y &X &W &V &U &T &S 対 象 外 対 象 規 模
④事務手続きの流れ 自主条例を定めた都道府県46自治体及び政令市等11自治体の事務手続きの内容と届出時の 指導状況について「表2」に表す。 自主条例を定めた都道府県及び政令市等のすべての自治体で事前協議等の届出制度を定 め、その審査結果を届出者に通知している。事務手続きについて地域ごとの特徴は見られな い。 また都道府県において、完了届提出及び完了検査を規定しているのは、都道府県の半分で ある23自治体である。適合証交付申出は41自治体、適合証交付を行うのは42自治体である。 都道府県において、完了検査を実施していないところは、適合証交付申出という自主的な 申出により、完了した建築物の適合を判定している。また、適合証交付を行わないところは 都道府県に4自治体(Ea,Wd,Wi.Sd)ある。 政令市等においてはすべての11自治体で、事前協議等の届出、審査結果の通知、完了検 査、適合証交付までの一連の行政指導を行っている。 自主条例の事務手続きは、事前協議等の届出時期を建築確認申請前や工事着手の前に、ま た完了届提出は建築工事完了後に規定しているものの、条例の不適合を理由に建築工事等に 制限等を加えるものとはなっていない。
表 2 自 主 条 例 の 事 務 手 続 き ⑤ 届 出 時 の 指 導 自 主 条 例 の 事 前 協 議 等 の 届 出 の 際 に 、整 備 基 準 に 適 合 し な い 場 合 の 行 政 指 導 に つ い て 、「 表 2 」 か ら 「 届 出 以 降 も 適 合 す る よ う 粘 り 強 く 指 導 を 行 う 」 と 回 答 し た の は 、 都 道 府 県 全 体 に お い て 8 自 治 体 、 政 令 市 等 は 4 自 治 体 で あ る 。「 提 出 時 の み 指 導 」 は 、 都 道 府 県 全 体 で 2 5 自 治 体 、 政 令 市 等 で 5 自 治 体 で あ り 、回 答 の 中 で い ち ば ん 多 か っ た 。「 提 出 の ま ま 処 理 」と 回 答 し た の は 、 都 道 府 県 で 4 自 治 体 あ り 、 と く に 北 日 本 に 3 自 治 体 あ っ た 。 事 前 協 議 等 の 届 出 は 、申 請 建 物 が 整 備 基 準 に 適 合 し て い る か を 審 査 す る 目 的 に 行 わ れ る こ と を 考 え る と 、適 合 す る よ う 粘 り 強 い 指 導 が 必 要 と 思 わ れ る 。 「 そ の 他 」 の 都 道 府 県 6 自 治 体 と 政 令 市 等 の 1 自 治 体 の 内 容 は 、「 不 適 合 説 明 書 等 の 提 出 を 求 め る 」「 用 途 に よ り 指 導 方 法 を 定 め て い る 」 等 の 行 政 指 導 を 行 う も の で あ っ た 。 ( 2 ) 事 務 手 続 き の 遵 守 に つ い て 事 務 手 続 き の 遵 守 の 割 合 を 5 段 階 の 「 自 己 評 価 指 標 」 と し た 「 表 3 」 に よ り 、近 年 、1 年 程 度 に お け る 事 務 手 続 き の 遵 守 状 況 を 聞 き「 表 4 」に 表 し た 。 な お 、 自 主 条 例 に 規 定 さ れ て い な い 項 目 に つ い て の 回 答 は 不 要 と し て い る 。 事 前 相 談 や 届 出 に つ い て は 、 地 域 ご と の 大 き な 差 は み ら れ ず 、 全 体 と し て 3 点 や 2 点 の 評 価 が 少 な く 、 多 く が 4 点 以 上 の 評 価 で あ る 。 し か し 、 完 全 に 遵 守 さ れ て い る と は い え な い こ と か ら 、す べ て の 対 象 建 築 物 が 必 ず し も 行 政 指 導 の 対 象 に は な っ て い な い と 考 え ら れ る 。 ま た 、 完 了 届 と 適 合 証 交 付 申 出 に つ い て も 、 地 域 ご と の 大 き な 差 は み ら れ ⑤届出時の指導 自主条例の事前協議等の届出の際に、整備基準に適合しない場合の行政指導について、 「表2」から「届出以降も適合するよう粘り強く指導を行う」と回答したのは、都道府県全体 において8自治体、政令市等は4自治体である。「提出時のみ指導」は、都道府県全体で25自 治体、政令市等で5自治体であり、回答の中でいちばん多かった。「提出のまま処理」と回答 したのは、都道府県で4自治体あり、とくに北日本に3自治体あった。 事前協議等の届出は、申請建物が整備基準に適合しているかを審査する目的に行われるこ とを考えると、適合するよう粘り強い指導が必要と思われる。 「その他」の都道府県6自治体と政令市等の1自治体の内容は、「不適合説明書等の提出を求 める」「用途により指導方法を定めている」等の行政指導を行うものであった。 (2)事務手続きの遵守について 事務手続きの遵守の割合を5段階の「自己評価指標」とした「表3」により、近年、1年程 度における事務手続きの遵守状況を聞き「表4」に表した。なお、自主条例に規定されてい ない項目についての回答は不要としている。 事前相談や届出については、地域ごとの大きな差はみられず、全体として3点や2点の評価 が少なく、多くが4点以上の評価である。しかし、完全に遵守されているとはいえないこと から、すべての対象建築物が必ずしも行政指導の対象にはなっていないと考えられる。 また、完了届と適合証交付申出についても、地域ごとの大きな差はみられないが、全体と して3点や2点の評価としたものがみられ、4点としたものも多いことから、これも遵守され ているはといえない。 これらの手続きが守られないと完成した建築物の整備基準の適合を確認できないことから、
地方自治体における建築物のバリアフリー化関連条例のあり方について 適合率の低下を招く要因になると考えられる。 以上のことから、自治体において事務手続きを遵守させるのに苦慮する実態がうかがえる。 な い が 、全 体 と し て 3 点 や 2 点 の 評 価 と し た も の が み ら れ 、4 点 と し た も の も 多 い こ と か ら 、 こ れ も 遵 守 さ れ て い る は と い え な い 。 こ れ ら の 手 続 き が 守 ら れ な い と 完 成 し た 建 築 物 の 整 備 基 準 の 適 合 を 確 認 で き な い こ と か ら 、 適 合 率 の 低 下 を 招 く 要 因 に な る と 考 え ら れ る 。 以 上 の こ と か ら 、自 治 体 に お い て 事 務 手 続 き を 遵 守 さ せ る の に 苦 慮 す る 実 態 が う か が え る 。 表 3 5 段 階 評 価 の 内 容 評 価 点 数 評 価 内 容 5 点 守 ら れ て い る ( 8 0 % 以 上 ) 4 点 概 ね 守 ら れ て い る ( 6 0 ~ 8 0 % 未 満 ) 3 点 や や 守 ら れ て い な い ( 4 0 ~ 6 0 % 未 満 ) 2 点 守 ら れ て い な い ( 4 0 % 未 満 ) 1 点 分 か ら な い 表 4 事 務 手 続 き の 遵 守 状 況 自 治 体 評 価 ② 審 査 不 適 合 要 因 「 建 築 物 移 動 等 円 滑 化 基 準 」 の 審 査 項 目 に に つ い て 、 届 出 や 完 了 検 査 等 に お い て 、 不 適 合 と な る 要 因 を 3 つ 聞 き 、 そ れ を 「 表 5 」 に 集 約 し た 。 全 体 的 に 不 適 合 要 因 で い ち ば ん 多 い の は 、「 視 覚 障 害 者 関 係 」 に 関 す る も ②審査不適合要因 「建築物移動等円滑化基準」の審査項目にについて、届出や完了検査等において、不適合 となる要因を3つ聞き、それを「表5」に集約した。 不適合要因でいちばん多いのは、「視覚障害者関係」に関するものである。内容は、視覚 障害者誘導用床材や注意喚起用床材、音声誘導装置の未設置といったものである。誘導用床 材等の未設置は高齢者のつまづき等が原因に上げられている。しかし西日本では視覚障害者 に関するものは上がっていない。 次に、「トイレ」に関するものであり、車いす使用者用便房の広さ不足や手すり、洗面器 等の未設置などといったトイレの機能不足、車いす使用者用便房の未設置、オストメイト設
備や小便器の未設置などが上げられている。 3番目の移動円滑化経路については、スロープの勾配超過や手すり未設置、段差あり、廊 下幅不足などの整備不適の問題が上げられている。 4番目に「出入口」の有効幅不足、「その他」には、エレベーターや車いす使用者用駐車施 設、案内板、点滅型誘導音付誘導灯などの未設置、階段の規格の不適合などが上がってい る。 以上から、不適合要因には出入口幅不足やスロープ勾配超過、トイレ設備の未設置といっ た施工者の認識不足などの問題があることが分かった。建築主等のバリアフリー化への理解 とともに施工者にもバリアフリーの理解や技術の習得が必要であると思われる。 そしてこれらの内容は、バリアフリー法の「建築物移動等円滑化基準」にも規定する基本 的なバリアフリーができないという問題があると考える。 の で あ る 。 内 容 は 、 視 覚 障 害 者 誘 導 用 床 材 や 注 意 喚 起 用 床 材 、 音 声 誘 導 装 置 の 未 設 置 と い っ た も の で あ る 。誘 導 用 床 材 等 の 未 設 置 は 高 齢 者 の つ ま づ き 等 が 原 因 に 上 げ ら れ て い る 。し か し 西 日 本 で は 視 覚 障 害 者 に 関 す る も の は 上 が っ て い な い 。 次 に 、「 ト イ レ 」 に 関 す る も の で あ り 、 車 い す 使 用 者 用 便 房 の 広 さ 不 足 や 手 す り 、 洗 面 器 等 の 未 設 置 な ど と い っ た ト イ レ の 機 能 不 足 、 車 い す 使 用 者 用 便 房 の 未 設 置 、 オ ス ト メ イ ト 設 備 や 小 便 器 の 未 設 置 な ど が 上 げ ら れ て い る 。 3 番 目 の 移 動 円 滑 化 経 路 に つ い て は 、ス ロ ー プ の 勾 配 超 過 や 手 す り 未 設 置 、 段 差 あ り 、 廊 下 幅 不 足 な ど の 整 備 不 適 の 問 題 が 上 げ ら れ て い る 。 4 番 目 に 「 出 入 口 」 の 有 効 幅 不 足 、「 そ の 他 」 に は 、 エ レ ベ ー タ ー や 車 い す 使 用 者 用 駐 車 施 設 、 案 内 板 、 点 滅 型 誘 導 音 付 誘 導 灯 な ど の 未 設 置 、 階 段 の 規 格 の 不 適 合 な ど が 上 が っ て い る 。 以 上 か ら 、 不 適 合 要 因 に は 出 入 口 幅 不 足 や ス ロ ー プ 勾 配 超 過 、 ト イ レ 設 備 の 未 設 置 と い っ た 施 工 者 の 認 識 不 足 な ど の 問 題 が あ る こ と が 分 か っ た 。建 築 主 等 の バ リ ア フ リ ー 化 へ の 理 解 と と も に 施 工 者 に も バ リ ア フ リ ー の 理 解 や 技 術 の 習 得 が 必 要 で あ る と 思 わ れ る 。 そ し て こ れ ら の 内 容 は 、 バ リ ア フ リ ー 法 の 「 建 築 物 移 動 等 円 滑 化 基 準 」 に も 規 定 す る 基 本 的 な バ リ ア フ リ ー が で き な い と い う 問 題 が あ る と 考 え る 。 表 5 自 主 条 例 不 適 合 要 因 ( 複 数 回 答 可 ) ③ 適 合 率 向 上 の た め に 行 う 施 策 自 治 体 に お い て 、 委 任 条 例 化 以 外 で 適 合 率 が 向 上 す る た め に 行 っ て い る こ と を 聞 き 「 表 6 」 に 表 し た 。 北 日 本 に つ い て 、 上 げ ら れ た 事 業 等 は 少 な い が 、 こ の 項 目 に 関 し て 回 答 が 少 な か っ た こ と に よ る 。 そ の 他 の 地 域 か ら は 多 く の 事 業 等 が 上 げ ら れ た 。 「 啓 発 」 に つ い て は 、 講 習 会 や 広 報 誌 、 ホ ー ム ペ ー ジ 、 パ ン フ レ ッ ト 等 に よ る も の が 上 が っ て い る 。 ③適合率向上のために行う施策 自治体において、委任条例化以外で適合率が向上するために行っていることを聞き「表6」 に表した。北日本について、上げられた事業等は少ないが、この項目に関して回答が少なか ったことによる。その他の地域からは多くの事業等が上げられた。 「啓発」については、講習会や広報誌、ホームページ、パンフレット等によるものが上が っている。 「指導強化」については、不適合指導の徹底や適合を促すスタンプ押印、文書送付などが 上げられるが、とくに「自治体の融資や助成に適合証交付を要件とする。」「優先施設の直接 訪問指導」など実効性の上がる指導も含まれている。 「優遇措置等」については、顕彰制度や低利融資制度、補助金制度、バリアフリーアドバ イザー制度が上がっている。 「整備基準の見直し」については、整備基準の見直しや小規模建築物に対する整備基準緩 和が上がる。 以上のように適合率向上のために様々な施策が講じられているが、どの自治体も自主条例 )
地方自治体における建築物のバリアフリー化関連条例のあり方について を施行して10年以上が経過しており、不適合要因を考えると、それが自主条例の適合率の向 上につながっていないのではないかと思われる。 書 送 付 な ど が 上 げ ら れ る が 、 と く に 「 自 治 体 の 融 資 や 助 成 に 適 合 証 交 付 を 要 件 と す る 。」「 優 先 施 設 の 直 接 訪 問 指 導 」な ど 実 効 性 の 上 が る 指 導 も 含 ま れ て い る 。 「 優 遇 措 置 等 」 に つ い て は 、 顕 彰 制 度 や 低 利 融 資 制 度 、 補 助 金 制 度 、 バ リ ア フ リ ー ア ド バ イ ザ ー 制 度 が 上 が っ て い る 。 「 整 備 基 準 の 見 直 し 」 に つ い て は 、 整 備 基 準 の 見 直 し や 小 規 模 建 築 物 に 対 す る 整 備 基 準 緩 和 が 上 が る 。 以 上 よ う に 適 合 率 向 上 の た め に 様 々 な 施 策 が 講 じ ら れ て い る が 、 ど の 自 治 体 も 自 主 条 例 を 施 行 し て 10 年 以 上 が 経 過 し て お り 、不 適 合 要 因 を 考 え る と 、そ れ が 自 主 条 例 の 適 合 率 の 向 上 に つ な が っ て い な い の で は な い か と 考 え る 。 3 . 委 任 条 例 に よ る 行 政 指 導 に つ い て ( 1 ) 委 任 条 例 の 規 定 ① 事 務 手 続 き の 内 容 委 任 条 例 を 定 め た の は 、都 道 府 県 1 3 自 治 体 と 政 令 市 等 6 自 治 体 の 1 9 自 治 体 で あ る 。 そ の 事 務 手 続 き の 内 容 を 「 表 7 」 に 示 す 。 な お 、 委 任 条 例 に は 、 委 任 条 例 の み を 定 め た 2 自 治 体 ( 1 県 及 び 1 市 ) と 既 存 の 自 主 条 例 と は 別 に 新 た に 委 任 条 例 を 設 け た 2 自 治 体 ( 2 県 )、 自 主 条 例 を 改 正 し て 自 主 条 例 の 中 に 委 任 規 定 を 設 け た 1 5 自 治 体 ( 1 0 県 及 び 5 市 ) が あ る 。 こ の 自 主 条 例 を 改 正 し た 1 5 自 治 体 の 多 く は 、 従 前 の 自 主 条 例 に お い て 適 用 し た 整 備 基 準 等 を 委 任 条 例 に 移 行 す る 形 で 改 正 し て い る 。 都 道 府 県 に お い て 、事 前 協 議 等 の 届 出 を 規 定 し た 5 自 治 体 と 建 築 確 認 申 請 に お い て 審 査 を 行 う 8 自 治 体 が あ る 。 政 令 市 等 に お い て は 、 事 前 協 議 等 の 届 出 を 規 定 す る 4 自 治 体 と 建 築 確 認 申 請 に お い て 審 査 を 行 う 2 市 が あ る 。 委 任 条 例 の 事 務 手 続 き に つ い て 、建 築 確 認 申 請 の 関 係 法 令 と し て い る こ と か ら 、 建 築 確 認 審 査 や 完 了 検 査 に お い て 遺 憾 な く 審 査 さ れ る 。 表 6 バ リ ア フ リ ー 化 促 進 の 実 施 事 業 等 ( 複 数 回 答 可 )
3. 委任条例による行政指導について
(1)委任条例の規定 ①事務手続きの内容 委任条例を定めたのは、都道府県13自治体と政令市等6自治体の19自治体である。その事 務手続きの内容を「表7」に示す。 なお、委任条例には、委任条例のみを定めた2自治体(1県及び1市)と既存の自主条例と は別に新たに委任条例を設けた2自治体(2県)、自主条例を改正して自主条例の中に委任規 定を設けた15自治体(10県及び5市)がある。 この自主条例を改正した15自治体の多くは、従前の自主条例において適用した整備基準等 を委任条例に移行する形で改正している。 都道府県において、事前協議等の届出を規定した5自治体と建築確認申請において審査を 行う8自治体がある。政令市等においては、事前協議等の届出を規定する4自治体と建築確認 申請において審査を行う2自治体がある。 委任条例の事務手続きについて、建築確認申請の関係法令としていることから、建築確認 審査や完了検査において遺憾なく審査される。 そのほか、委任条例のみを持つ2自治体は、適合証交付申出及び適合証交付を規定してい る。 )そ の ほ か 、 委 任 条 例 の み を 持 つ 2 自 治 体 は 、 適 合 証 交 付 申 出 及 び 適 合 証 交 付 を 規 定 し て い る 。 表 7 委 任 条 例 の 事 務 手 続 き ② 対 象 用 途 規 模 委 任 条 例 の 対 象 用 途 の う ち 「 診 療 所 ( 収 容 施 設 な し )」 を 図 4 - 1 に 、「 物 販 店 」 を 図 4 - 2 に 、「 銀 行 等 」 を 図 4 - 3 に 、「 飲 食 店 」 を 図 4 - 4 に 、 委 任 条 例 と 自 主 条 例 と の 対 象 規 模 を 比 較 し て 示 す 。 な お 、 都 道 府 県 は N e ~ S e 、 政 令 市 等 は C w ~ C o で 示 す 。 4 つ の 対 象 用 途 に つ い て 、 委 任 条 例 の み を 定 め た W p 県 と C o 市 を 除 い て 、 委 任 条 例 と 自 主 条 例 と の 対 象 規 模 を 比 較 す る と 、都 道 府 県 と 政 令 市 等 と も に 、 委 任 条 例 に お い て 対 象 と な る 規 模 以 外 は 、自 主 条 例 に お い て 対 象 と し て い る と こ ろ が 多 い 。 診 療 所 に お い て は 、 都 道 府 県 の 2 自 治 体 ( W d , W e ) は 、 委 任 条 例 の 対 象 規 模 を 0 ㎡ 以 上 と し て い る た め 自 主 条 例 の 対 象 と は し て い な い 。 ま た 物 販 店 に つ い て 、N c 、N f の 2 県 は 、委 任 条 例 化 を 行 っ て い て も 物 販 店 を 委 任 条 例 の 対 象 外 と し て い る た め 、 自 主 条 例 で の 指 導 と な る 。 そ の ほ か 、 飲 食 店 に お け る N c , N f , E k , W l . S d , S e の 6 県 、銀 行 等 に お け る N c , N f , W l , S d , S e の 5 県 も 同 様 で あ る 。 政 令 市 等 に お い て は 、 6 自 治 体 ( C w ~ C o ) の す べ て が 4 用 途 を 委 任 条 例 の 対 象 と し て い る 。 ま た 、 4 用 途 に つ い て 委 任 条 例 の 対 象 規 模 は 、 都 道 府 県 に お い て は 0 ㎡ 以 上 ~ 1 0 0 0 ㎡ 以 上 で あ り 、 政 令 市 等 は 1 0 0 ㎡ 以 上 ~ 1 0 0 0 ㎡ 以 上 と 自 治 体 ご と に 様 々 で あ る 。 と く に 、 W d , W e , W p , C o , C r , C w の 6 自 治 体 は 、 4 用 途 の 対 象 規 ②対象用途規模 委任条例の対象用途のうち「診療所(収容施設なし)」を図4-1に、「物販店」を図4-2 に、「銀行等」を図4-3に、「飲食店」を図4-4に、委任条例と自主条例との対象規模を比較 して示す。なお、都道府県はNe~Se、政令市等はCw~Coで示す。 4つの対象用途について、委任条例のみを定めたWp県とCo市を除いて、委任条例と自主 条例との対象規模を比較すると、都道府県と政令市等ともに、委任条例において対象となる 規模以外は、自主条例において対象としているところが多い。 診療所においては、都道府県の2自治体(Wd,We)は、委任条例の対象規模を0㎡以上と しているため自主条例の対象とはしていない。 また物販店について、Nc、Nfの2県は、委任条例化を行っていても物販店を委任条例の対 象外としているため、自主条例での指導となる。そのほか、飲食店におけるNc,Nf,Ek,Wl. Sd,Seの6県、銀行等におけるNc,Nf,Wl,Sd,Seの5県も同様である。政令市等においては、6自 治体のすべてが4用途を委任条例の対象としている。 また、4用途について委任条例の対象規模は、都道府県においては0㎡以上~1000㎡以上で あ り、 政 令 市 等 は100㎡ 以 上 ~1000㎡ 以 上 と 自 治 体 ご と に 様 々 で あ る。 と く に、 Wd,We,Wp,Co,Cr,Cwの6自治体は、4用途の対象規模を0~300㎡以上とし、小規模な建築物 を対象としている。 これらのことから、自治体が委任条例においてバリアフリーを強制すべき規模と自主条例 において行政指導を行う対象規模は、自治体により大きく考えが異なることがわかる。 また、委任条例を施行した自治体については、委任条例と自主条例のそれぞれの役割を考 えて建築物のバリアフリー化を推進していると考えられる。 表 7 委 任 条 例 の 事 務 手 続 き
㎡以上 単位:㎡ 自:自主条例 委:委任条例 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 1F 1I (G (J (K (N :F :G :H :S :O 6G 6H &Z &Y &X &V &U &R
対象外 対象規模 図 4 - 1 診 療 所 ㎡ 以 上 自:自主条例 委:委任条例 単位:㎡ 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委
1F 1I (G (J (K (N :F :G :H :S :O 6G 6H &Z &Y &X &V &U &R
対象外 対象規模 図 4 - 2 物 販 店 ㎡以上 単位:㎡ 自:自主条例 委:委任条例 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 1F 1I (G (J (K (N :F :G :H :S :O 6G 6H &Z &Y &X &J &U &R
対象外 対象規模 図 4 - 3 飲 食 店 ㎡以上 単位:㎡ 自:自主条例 委:委任条例 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 自 委 1F 1I (G (J (K (N :F :G :H :S :O 6G 6H &Z &Y &X &J &U &R
対象外 対象規模
図 4 - 4 銀 行 等
(2)委任条例化がすすまない理由 委任条例を定めたのは19自治体であり、2003年にこの制度が設けられてから進んでいない と考えられる。その理由を聞き、「表8」に表わした。 「自主条例を優先すべき」「現状で十分である」など『委任条例化の必要がない。』と考え ているところが、19件といちばん多かった。 次に、「人的配置や財源の負担が生じる」「委任条例と自主条例の2つがあると手間が増え る」など『自治体としての考え』があると答えたのが10件あった。 その次に「建築主に負担を強いる」「所有者からの反発が予想される」など『建築主の負 担を考慮』するとしたのは6件であった。 そのほかに、委任条例化に向けて調整中や今後検討としたのが3件、無回答は17件であっ た。 これらの自治体の意見から委任条例化にあたっては、建築主に対する負担や委任条例化の メリット、行政組織としての体制づくりを検討することが必要であり、これらの条件を自治 体としてクリアしないと委任条例化には至らないと考えられる。 また、「①委任条例化が必要ない」の中に、「自主条例と委任条例の役割分担を整理する必 要がある。」という意見や「②自治体の方針」の中に「自治体としての委任条例化の意識が 必要」という意見があったが、自治体として委任条例化についてどう考えるか、検討してい ないところもあると思われ、このことも委任条例化が進まない原因と考えられた。
4.考察
以上の結果を踏まえて、地方自治体における委任条例と自主条例の課題について以下に整 理する。 ①自主条例の役割について 自主条例は、事務手続きにおいて、事前協議等の届出時期を建築確認申請前や工事着手前 としており、また完了届提出は建築工事完了後に規定しているものの、建築確認申請の関係 法令とはなっていないため、条例の不適合を理由に建築工事等に制限等を加えることはできない。したがって、自治体がバリアフリー化の指導に苦慮する実態がうかがえた。 そこで、自治体においては、適合率向上のために「啓発」活動や「指導強化」「優遇措置」 「整備基準見直し」を行うなど、バリアフリー化推進のために様々な対策を講じているが、 どの自治体も自主条例を施行して10年以上が経過しており、それが自主条例の適合率の向上 につながっていないのではないかと考えられた。 しかしながら、自主条例の役割について、建築物のバリアフリー化を実現させるために、 届出前の「事前相談」を行い、理想的なバリアフリーに向けての助言を行う自治体も多かっ た。(表4) また、自主条例では、小規模建築物の適用基準を緩和して小規模建築物のバリアフリー化 を進めたり、移動等利用円滑化基準にはない観客席などの整備基準を設けるなど、バリアフ リー化が望まれるものを追加するなどの自由度が高かった。 このことから、自主条例には、バリアフリー化への強制力はないが、理想的なバリアフリ ーをめざす役割があると思われる。 ②審査不適合要因 自主条例の届出や完了検査等において、不適合となる要因(表5)について、上がった内 容は、視覚障害者対応や経路、トイレ、出入口の整備など法の「建築物移動等円滑化基準」 にも規定する内容であった。 とくに、不適合要因には建築主等のバリアフリー化への無理解だけでなく、出入口幅不足 やスロープ勾配超過、トイレ設備の未設置などといった施工者の認識不足や技術不足などと いった問題も多くあることが分かった。 建築主に対するバリアフリー化の啓発とともに、設計者や施工者に対してもバリアフリー の審査内容を伝えるだけでなく、バリアフリーの理解や技術の習得が必要であると思われる。 そのためにも自治体の役割は重要であり、条例審査の担当者にはバリアフリー技術につい ての習熟が必要と思われる。 ③委任条例の役割について 建築確認申請の関係法令として、確実に対象建築物のバリアフリー化を実現するのは委任 条例である。しかしながら、委任条例を施行したのは19自治体であり、委任条例化が進んで いないことが問題である。 委任条例化を行った自治体は、建築物の用途や規模は異なるが、バリアフリー化しなけれ ばならない建築物を対象建築物として定めて、委任条例において確実なバリアフリー化を行 っている。 「表8」において、「委任条例は必要ない。」とした自治体も多かったが、これらの自治体は
委任条例の役割や必要性について検討していない自治体も多いと思われた。 対象建築物のバリアフリー化を実現するためには、バリアフリーの強制力のある委任条例 化は必要あり、自治体において、地域の実情を考慮し、対象建築物のバリアフリー化をどう 図るか、委任条例化について十分な検討が必要と考える。 また、委任条例を施行した自治体の対象建築物の用途や規模は、自治体ごとに大きく異な っていた。条例化を行った自治体の中には、小規模な建築物を対象とするところもあり、委 任条例における対象建築物の小規模化は今後にむけての課題と思われる。
4.まとめ
今回の調査で、地方自治体が自主条例で定めたバリアフリー化すべき対象建築物がバリア フリー化されていない実態があった。建築物のバリアフリー化を実現するためには、自治体 において自主条例と委任条例の役割を認識し、それぞれを活用する必要があると思われた。 本研究で得られた自主条例と委任条例の役割は以下のようであった。 自主条例は、バリアフリー化への強制力はないものの、バリアフリー化が望まれる建築物 に対する整備基準の設定など柔軟な対応が可能であり、理想的なバリアフリーをめざすこと が可能である。委任条例を制定した自治体については、その多くが自主条例を「バリアフリ ーが望まれる建築物」の指導のために活用していると思われた。 次に、委任条例は、法に基づいて自治体が定めた対象建築物を自治体が定めた基準に基づ いて確実にバリアフリー化することが可能である。 そのため委任条例を施行した自治体の中には、改正前の自主条例の対象建築物の用途や規 模、整備基準などをほぼ同様にして、委任条例へ移行させた自治体がある。(We,Wd,Wp) バリアフリー法第14条第3項では、「地方公共団体は、その地方の自然的社会的条件の特殊 性により委任条例委任条例を定めることができる。」としており、自治体の責務においてバ リアフリーが必要な対象建築物を特定し、委任条例によりバリアフリー化を図る必要がある と考える。 さらに自治体の役割として、建築主に対するバリアフリー普及のための啓発だけでなく、 設計者や施工者に対するバリアフリー技術の啓発や指導など、バリアフリー環境整備のため には重要な役割があると考える。 なお、今後において、住む地域でバリアフリーの状況が異なる状況を改善するために、委 任条例の対象建築物の用途や規模等の全国統一、委任条例の対象建築物の小規模化につい て、先進的な自治体のヒアリング調査等を行い研究することが今後の課題である。謝辞
本調査を実施するにあたり、協力いただいた各自治体の条例担当者に心より感謝申し上げます。
注
1) すべての人が自らの意思で自由に移動できるよう生活環境等についてハード・ソフト両面か ら整備するために、地方自治法第14条に基づいて、「福祉のまちづくり条例」の名称で全国の 自治体で施行されている。これを本稿では「自主条例」という。 2) ハートビル法の2003年4月の改正において、地方公共団体が条例により特定建築物(学校等) を特別特定建築物に追加することや対象規模を2,000㎡未満に設定すること、整備基準を付加 することが可能となり、自治体において建築物のバリアフリー化の実効性が確保できるよう になった。この委任規定は、2006年に施行された「高齢者、障害者等の移動の円滑化の促進 に関する法律」(通称「バリアフリー法」)に移行した。これを本稿では「委任条例」という。 3) 「障害を持つアメリカ人法」(ADA) 1990年制定された連邦法で、障害による差別を禁止する 適用範囲の広い公民権法の一つ。 4) 国際障害者リハビリテーション協会がすべての障害者が利用可能な建築物の条件として定め た基準で1974年に採択された。 5) 「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(通称 「ハートビル法」)は1994年に施行された日本初のアクセス法。参考文献
1) 山崎 晋・高橋 儀平・寺島 薫:バリアフリー新法制定以降の福祉のまちづくり条例・建築物バ リアフリー条例の全国改正動向~自治体におけるバリアフリー関係条例に関する研究~、 日 本建築学会大会学術講演梗概集(東北)、pp1045-1046、2009 2) 花光美香・北畑佐希子・石井博也・北野幹夫・足立啓:和歌山県福祉のまちづくり条例に基 づく届出件数の現状と評価、 日本建築学会大会学術講演梗概集(東北)、pp1241-1242、2009 3) 安間正伸:地方自治体によるハートビル法への取組-世田谷区の既存条例にハートビル条例 を組み込む-、日本福祉のまちづくり学会第9回全国大会概要集、pp213-216、2006 4) 下郡山琢・岸和生・三谷千瀬・杉崎和久・高橋儀平:練馬区福祉のまちづくり推進条例の特 徴と課題、日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会研究発表概要集、1D-2,2010 5) 高橋儀平:高齢者、障害者に配慮の建築設計マニュアル、彰国社、1996 6) 日本福祉のまちづくり学会編:福祉のまちづくりの検証、彰国社、2013 7) 岩浦厚信・高橋儀平:宮崎市における民間小規模建築物のバリアフリーの現状と評価につい て、日本建築学会計画系論文集Vol.79 No701、pp1531-1539、2014.7,ABSTRACT
The object of this article is verifying whether it realizes a barrier free at the building about “ The entrusting Ordinance” and “ The independent Ordinance “ which the local government enforces.
From the result of the examination, To make the object building of “ The independent Ordinance” fit in with Standard of adjustment, a lot of local governments were being troubled.
Also, There were few local governments which specify “ The entrusting Ordinance”. To realize a barrier free at the building, The local government think of the role of The independent Ordinance and The entrusting Ordinance and do administrative guidance using each. There are Three methods for its purpose.
1. The role of The entrusting Ordinance make an object building certainly barrier free. 2. The role of The independent Ordinance make an object building an ideal barrier free. 3. The local government do barrier free edification to the client and do technical guidance
to the designer and the builder.
Key Words
The local government, The independent Ordinance, The entrusting Ordinance, Barrier Free