原 三
期略樽,第麟6納骨〕
直腸癌術後再発の診断におけるMRIの有用性
東京女子医科大学 放射線医学教室(主任:重田隠子教授) キ ムラ フミ コ木 村 文 子
(受付 昭和62年9,月2日)Value of MRI in the Detection of Recurrent Rectal Carcinoma
Fumiko K:1]MURA
Department of Radiology(Director:Prof, Akiko SHIGETA)
Tokyo Women’s Medical College
We analyzed magnetic resonance image(MRI)of 18 patients. They were suspected of local recurrence of rectal carcinoma after the resection.
Of the 18 patients, nine had local recurrent tumors, and six had post−operative丘brosis. For
the other three patients, reiocated seminal vesicles and enlarged edematous uterine cervix were regarded as tumors.
MRI provides valuable informations for the diagnosis of the local recurrent tumor. T2・
weighted image were most helpful in distinguishing recurrent tumors from post−operative 且brosis.
Postoperative fibrosis usually had lower signal intensity compared with muscle on both T1− and T2−weighted images. The signal intensity of most recurrent tumor is higher than that of muscle on the T2−weighted images. Therefore we may be able to separate recurrent tumors from post.operative丘brosis on MRI.
Relocated seminal vesicles and the enlarged edematous uterine cervix had higher signal
intensity compared with the muscle on the T2−weighted images. Then they were mistaken for recurrent tumors. So intrapelvic organs must be carefully discerned from recurrent tumors.
緒 言 大腸癌の治療成績は,早期診断技術の普及,手 術手技の進歩により著しく改善された.しかしな お手術される大腸癌の多くは進行癌であり,約 30%が癌再発により死亡している.このうち直腸 癌では約半数が局所再発であり,結腸癌でも肝転 移,腹膜転移に次いで局所再発が多い.したがっ て,局所再発を征服すれぽ大腸癌,特に直腸癌の 予後は飛躍的に向上すると考えられる.局所再発 に対しては,外科的手術療法以外に根本的な治療 法はなく1),手術成績の向上のため早期発見が必 要である. しかし,局所再発の早期診断は困難なことが多 い.臨床症状である会陰部痛の出現する時期には, 高度の浸潤のため再切除不能な症例が多い.また, CEA値による早期発見も上昇程度が低いため困 難なことが多い2).CT scanは有用ではあるが,画 像のみで局所再発を確認することはしぼしぽ困難 であり,CT下穿刺生検の併用が必要となる. 今回我々は,直腸癌の局所再発診断,特に再発 腫瘍と線維化した秘隠組織の鑑別におけるMRI の有用性について検討し,新しい知見を得たので 報告する. 対象および方法 1985年7月から1987年7月までに,直腸癌の術 後経過観察中に,臨床所見およびCT scanにより
再発腫瘍が疑われた18症例に対して,MRIを施行 した.年齢は39∼69歳(平均年齢55.7歳),男性16 例,女性2例である.原発腫瘍はいずれも腺癌で あった. 使用した機種は常電導0.15Tesla日立G10で ある.測定領域は32cmまたは36cmで,スライス 幅は1.Ocmまたは1.5cmである.画像構成のため の測定マトリックスは256×256であり,表示マト リックスは512×512である,積算回数は4ないし 6回である. 患者の体位は原則として背臥位とし,会陰部痛 の強い患者のみ腹臥位とした.検査の約1時間前 より排尿を禁止し膀胱内に尿を貯留させた状態に て,あらかじめCT scanで指摘された部位を中心 に横断像または矢状断像を撮像した. Spin echo法(以下SE法と略)にて,表に示す pulse sequδnceを使用した(表1). T1強調画像 として主にTR 500msec, TE 30msec, T2強調画 像として主にTR 2000msec, TE 60msec,100 msecを使用した.多くの症例でマルチスライス 法を用い,T2強調画像ではマルチエコー法を使用 した. MRIはretrospectiveに検討し, T1およびT2 強調画像における腫瘤の信号強度を,同一画像上 の筋肉,脂肪の信号強度と比較した.この比較を 客観的にするため,18例中17例で,同一画像上で
表1 Spin−echo imaging sequences
擢瀧e隈呈3
No, 垂≠狽奄?獅狽 of T1−weighted image 500/30 16 500/32 2 T2−weighted image 2000/60,100 13 2000/30,70,110 2 1500/80 1 1200/60 2 表2 ResultsRelative signal intensity
Case Operation Proof Final diagnosis 辮M/M ホ榊l/F #T1 #T2 T1 T2
1.56,M *AR ope. adeno ca, 1.00 2.25 0.39 0.72
2.50,M 糠APR ope. adeno ca, / / / /
3.49,M
APR
ope. adeno ca, 1.35 1.58 0.67 0.824.61,M
APR
ope. adeno ca, 1.46 1.76 0.57 0.805,52,M
APR
ope. adeno ca, 0.73 1.38 0.31 0.456,62,F
AR
biopsy adeno ca, 0.90 1.25 0.47 0.817.44,M
APR
biopsy adeno ca. !.01 1.64 0.53 0.758.49,M
APR
biopsy adeno ca, 1.53 1.95 0.63 1.139.65,M
APR
biopsy adeno ca, 0.99 1.22 0.35 0.4110.39,M
APR
biopsy 且brosis 0.64 0.90 0.29 0.3111.69,M
APR
follow s/o丘brosis 1.09 L99 0.43 0.6212.61,M
APR
follow s/o丘brosis 0.52 0.49 0.22 0.2713.69,M
APR
follow s/o丘brosis 0.46 0.57 0.18 0.2114.53,M
APR
follow s/o丘brosis 0.87 0.61 0.33 0.29!5.66,M
APR
fo玉low s/ofibrosis 0.39 0.39 0.14 0.1416.45,F
APR
ope・enlarged
tterine Cervix 0.98 2.14 0.34 0.59 17.68,M
APR
follow s/oselninal魔?唐奄モ撃 1.38 1.90 0.51 0.86 18.44,MAPR
follow S/oseminal魔?唐奄モ撃 1.23 3.20 0.49 1.10*AR :Anterior resection
榊APR:Abdominoperineal resection
***l/M:Mass/muscle
榊*l/F:Mass/fat
#T1:TI weighted image ##T2:T2 weighted image
の筋肉,脂肪の信号強度(pixel brightness)を, TVモニター上,関心領域を設定して求めた.ただ し1例(表2,No,2)については, data欠如の ため信号強度の測定は施行できなかった.なお, 関心領域の設定にはなるべくartifactの少ない 部位を選んだ.同一画像上で腫瘤と筋肉,腫瘤と 脂肪の信号強度の比を計算した. 結 果 対象とした18症例の概要は表に示すごとくであ る(表2).18症例のうち局所再発は9例で,この うち5例は手術により,4例は生検(3例はCT下 穿刺生検,1例は会陰部腫瘤の吸引細胞診)によ り証明されている.一方,CT上で骨盤内に腫瘤を 認めながら局所再発が否定された症例が9例あ り,このうち1例はCT下穿刺生検により痕痕組 織が認められ,1品目手術により浮腫状に肥厚し た子宮頚部を腫瘍と誤認していたことが確認され ている.残りの7例は,臨床的およびCT scanに よる8ヵ月以上の経過観察にて,全く変化が認め られず,再発腫瘍ではないと判断した.このうち 2例は部位および形態より精嚢を腫瘍と誤認して いたと考えられ,残り5例は癩痕組織が強く疑わ れた. 上記の方法にて,MRIの同一画像上で関心領域 を設定し,腫瘤と筋肉,腫瘤と脂肪の信号強度の 比を計算し,グラフを作成した(図1,2). まず,腫瘤/筋肉比について検討した(図1). T1強調画像では,再発腫瘍は筋肉と同等または高 信号強度を示し,腫瘤/筋肉比は0.73∼1.53(平均 1.12±0.29)であった.T2強調画像では,全ての 再発腫瘍が筋肉より高信号強度を示し,腫瘤/筋肉 比は1.22∼2.25(平均1.63±0.35)であった.廠 痕組織はT1, T2強調画像ともに筋肉より低信号
強度を示すものが多く,6例中5例で1以下で
あった.腫瘤/筋肉比は,T1強調画像で
0.39∼1.09(平均0.66±0.27),T2強調画像で 0.39∼1.99(平均0.83±0.60)であった.1例の み腫瘤/筋肉比が/以上を示す症例が認められた が,腫瘤が非常に小さく,正確な信号強度を測定 でぎなかった可能性がある.再発腫瘍の腫瘤/筋肉 比は,癩痕組織より高値を示す傾向にあり,T2強 2.0 1.8 1.6 1.4 婁1ユ 景 §1.o 言 圭。.8 0.6 o.4 0.2 o τ1Weighted Images 3.0 2.5 参且。 曼 奮15 to 0.5 o τ2Weightod lmages 暑 1.2 1.o 主 誘0.8 遷 喜a6 圭 0.4 0.2 0Fibrosis Reoo了了en電 0電hers Fibrosis RBじurron電 0電h8了s
Iumo「 τ口mor
図1 Relative signal intensity(mass/muscle)
TI Weightod lmages = i ・ t2 1.0 運 肇“8r 喜鵬 圭 0.4 02 T2 Weighted lmagos 盲
OFibrosis Reじurren電 Othors Fibrosis “eo巳rrent Oth巳6
τU旧0了 下ロmo了
図2 Relative signal intensity(mass/fat)
調画像の方が二者の分離は容易であった.子宮頚 部,精嚢の信号強度はグラフのその他の項に示し た.両者の腫瘤/筋肉比は,T2強調画像で1より大 きく,MRI上は再発腫瘤と誤認する結果となっ た. 続いて,腫瘤/脂肪比について検討した(図2). T1強調画像における腫瘤/脂肪比は,再発腫瘍で 0.31∼0.67(平均0.49±0.13),癩痕組織で 0.14∼0.43(平均0.27±0.11)であった.T2強調
画像における腫瘤/脂肪比は,再発腫瘍で.
0.41∼1.13(平均0.74±0.23),癩痕組織で 0,14∼G.62(平均0.31±0.17)であった.グラフ に示すごとく,T1およびT2強調画像ともに腫瘤/ 筋肉比と同じ傾向を示した.再発腫瘍の腫瘤/脂肪 比は,癩痕組織より高値を示す傾向にあり,やは り,T2強調画像の方が二者の分離は容易であっ た. T1およびT2強調画像で,再発腫瘍と癩痕組織 の両者の腫瘤/脂肪心は,腫瘤/筋肉比より低い値 を示したが,これは,脂肪の信号強度が,筋肉よ り高いためである. 症例呈示 症例1(表2−No.4). 61歳,男性.昭和58年6月,直腸癌にて腹会陰 式直腸切断術施行.昭和62年忌面部痛出現.昭和 62年6月,手術にて局所再発が確認された. CT scanにて仙骨前方から右側にかけて,帯状 の軟部組織腫瘤が認められる(写真1−a).MRIの T1強調画像(SE 500/30msec)では腫瘤は筋肉よ りやや高い信号強度を示し(写真1−b),T2強調画 像(SE 2000/60,100msec)では更に高い信号強度 として描出されている(写真1−c).再発腫瘍とし て典型的な症例である.画像上,SE 2000/60msec とSE 2000/100msecに明らかな差は認められな い.腫瘤後方にT1およびT2強調画像にて線状の 低信号強度域が認められ,再発腫瘍周囲の療痕組 織と考えられた. 症例2(表2−No.6). 62歳,女性.昭和59年2月,直腸癌(Rs)にて 前方切除術施行.昭和60年10月直腸癌再発に対し て,Hartmann手術を施行.昭和61年7月,会陰 部痛強く,再入院.CT下吸引細胞診にて腺癌が証 明された. CT scanにて,仙骨前方から尾骨前方,右側に 軟部組織腫瘤が認められ,尾骨の骨破壊を伴って いる(写真2−a).MRIのT1強調画像(SE 500/ 30msec)では腫瘤は筋肉とほぼ同じ信号強度を示 し(写真2−b),T2強調画像(SE 2000/60,100 msec)では筋肉より非常に高い信号強度を示して いる(写真2−c)。MRI上,直腸癌再発腫瘍と考え られた.T1およびT2強調画像にて腫瘤前方に認 められる線状の低信号強度域は,再発腫瘍周囲の 田島組織と考えられた. 症例3(表2−No.9). 65歳,男性.昭和60年6月,直腸癌(Rb, P) にて,腹会陰式直腸切断術施行.昭和62年1月よ り,会陰部痛およびCEA値の上昇(8.9ng/ml) が出現した.さらに会陰部に硬結を触知し,吸引 細胞診を施行し腺癌が証明された. CT scanにて,会陰部より尾骨前方にのびる軟 部組織腫瘤が認められる(写真3−a).MRIのT1
強調画像(SE 500/30msec), T2強調画像(SE 2000/60,100msec)では,会陰部の腫瘤の大部分 は筋肉とほぼ同等の信号強度を示している(写真 3−b).ただし,T2強調画像では腫瘤内に点状の 散在する高信号強度および,限局性の高信号強度 域が認められる(写真3−c,d, e).非典型的では あるが,直腸癌の再発腫瘍と診断した.今回検討 した再発腫瘍のうち,低信号強度域が目立つ症例 である. 症例4(表2−No.12). 61歳,男性.昭和58年10月,直腸癌(Rb)にて 腹会陰式直腸切断術施行. CT scanにて,仙骨前方に軟部組織腫瘤が認め られるが(写真脂a),約1年間の経過観察にても 腫瘤の大きさ,形態に変化は見られず,二二組織 と考えられている.MRIでは, T1強調画像(SE 500/30msec), T2強調画像(SE 2000/60,100 msec)ともに,腫瘤は筋肉より著明に低い信号強 度を示し(写真4−b,c), MRI上は,山雲組織と して典型的な症例である. 症例5(表2−No.15). 66歳,男性.昭和59年8月,直腸癌(Rb)にて 腹会陰式直腸切断術施行. CT scanにて,仙骨および尾骨前方に軟部組織 腫瘤が認められるが(写真5−a),約2年5ヵ月の 経過観察にても変化なく,疲痕組織と考えられて
いる.MRIでは, T1強調画像(SE 500/30msec),
T2強調画像(SE 2000/60,100msec)ともに,腫
瘤は筋肉より著明に低い信号強度を示し,症例4
と同様に嶽痕組織として典型的な症例である(写
が腹会陰式直腸切断術の際の剥離面に一致してい ることが明瞭にわかる(写真5−d). さらに頭側のT2強調画像にて,症例1のごと く,搬痕組織と考えられる線状の低信号強度域の 前方に,筋肉より高信号強度の領域が認められた (写真6−a).同時期に行われたCT scanにて,こ の部位は経口投与されたガストログラフィンによ り満たされ,小腸であることが確かめられた(写 真6−b). 症例6(表2−No.18). 44歳,男性。昭和59年7月,家族性ポリポーシ スに合併する直腸癌(Rs)のため,腹会陰式直腸 切断術および左結腸切断術を施行. CT scanにて,仙骨前方にガストログラフィン を含んだ小腸係蹄が認められ,その両側に左右ほ ぼ対称の軟部組織腫瘤が見られる(写真7−a). CT scanによる約2年3ヵ月の経過観察にても, 腫瘤の大きさ,形態に変化なく,再発腫瘍ではな いと診断された.CT scanで指摘された腫瘤は, T1強調画像(SE 500/30msec)では筋肉とほぼ同 じ信号強度を示し(写真7−b),T2強調画像(SE 2000/60,100msec)では脂肪と同程度に非常に高 い信号強度を示している(写真7−c).CT scanに よる経過観察により変化がないこと,腫瘤の部位,
形態およびMRIのT2強調画像にて高信号強度
を示すことより,精嚢を見ていたと考えられた. 考 察 近年,MRIの臨床応用は急速な進歩を遂げ,各 領域の疾患の診断において重要な役割を果たして いる.骨盤領域のMRIは部位的に呼吸性移動が 少ないので,比較的良好な画像が得られる.この ため,膀胱癌3)4>,前立腺癌4)∼6)および婦人科腫 瘍4)7)8)におけるMRIの有用性は多数報告されて いる.周知のごとく,T1, T2値のみからは良,悪 性腫瘍の鑑別は困難とされているが9)∼11),放射線 照射によって起った線維症と再発腫瘍との鑑別に はMRIが有用であると報告されている12)13).本論 文では,MRIを用いて,その信号強度の違いによ る,直腸癌の局所再発の診断,特に再発踵瘍と線 維化した療痕組織との鑑別を試みた. なお,直腸癌根治手術後の局所再発とは,骨盤 内再発という意味での広義の局所再発である.し たがって,このなかには,骨盤側壁での再発,す なわち,内腸骨血管周囲でのリンパ節再発,骨盤 内隣接臓器での再発および肉芽組織,軟部組織内 での再発も含んでいる14). 今回の検討では,療痕組織はT1, T2強調画像共 に筋肉より二信号強度を示すものが多く,6例中 5例で腫瘤/筋肉比は1以下であった(図1).こ の比が1以上を示した1例では,腫瘤が非常に小 さく正確な信号強度を測定できなかった可能性が 高いものであった.本論文では,二二組織のT1 値,T2値は測定していないが,線維組織は特徴的 にT1値が長く,T2値は短いと報告され七いる15). このことは,療痕組織がT1およびT2強調画像共 に二信号強度を示したことと,よく合致する. 再発腫瘍は,T1強調画像で筋肉とほぼ同等また は,やや高い信号強度として描出された.再発腫 瘍の腫瘤/筋肉比は二二組織より僅かに高値を示 す傾向にあったが,両者には重なりも認められた (図1).このことから,再発腫瘍のT1値は,測定 していないが,筋肉に近い値と推察される.なお,SE法によるT1強調画像はT2値の影響も受け
る.したがって,T1強調画像において再発腫瘍が 筋肉よりやや高い信号強度を示した原因として, 再発腫瘍の長いT2値の影響の可能性が考えられ る. T2強調画像では,再発腫瘍の全てが筋肉より高 信号強度の領域を含み,腫瘤/筋肉比は全例でT1 強調画像より高値を示した.T2強調画像では,搬 痕組織は筋肉より低信号強度であるため,再発腫 瘍の腫瘤/筋肉比は,二二組織の比より高値を示す 傾向にある(図1).以上より,再発腫瘍と搬痕組 織の分離には,T2強調画像がT1強調画像より有 効であった(図1).これは,再発腫瘍のT2値が 四丁組織に比べて長いことによると考えられる. T2強調画像にて,再発腫瘍の信号強度には噛が あり,症例2のごとく筋肉より著明に高信号強度 を示すものから(写真2−c),症例3のごとく筋肉 とほぼ同じ信号強度域内に点状の高信号強度域を 含むものなど(写真3−c,d, e),必ずしも一定し ない.今回の検討では,比較的信号強度の低い腫瘍は9例中2例であった.また,症例3に示すご とく,同一腫瘍でも部位により信号強度に違いが あった(写真3−c,d, e).直腸癌の再発腫瘍は山 開組織内に癌病巣が散在していることが多いとい われている16).また,T2値の短い腫瘍の特徴とし て腫瘍細胞数が少ないこと,および膠原線維が豊 富であることが挙げられている17).今回の検討で 見られた信号強度の違いは,組織学的立証はない が,同一腫瘤内の癩痕組織と腫瘍細胞の量の違い に原因する可能性があり,今後の検討が必要と思 われた.再発腫瘍がT2強調画像で筋肉とほぼ同 じ信号強度を示した症例でも,腫瘍の内部および 周囲には必ず高信号強度域が存在し,このことは 療痕組織との鑑別点になると考えられた. T1およびT2強調画像ともに,再発腫瘍と癩痕 組織の腫瘤/脂肪比は腫瘤/筋肉比と同じ傾向を示 した.しかし,T1およびT2強調画像ともに,脂肪 の信号強度は高く,ほとんどの症例で癩痕組織お よび再発腫瘍は脂肪より低信号強度として描出さ れた(図2).このため,画像上における,再発腫 瘍と疲痕組織の鑑別には,腫瘤と脂肪の信号強度 の比較より,腫瘤と筋肉の比較の方が有用と考え られた. 精嚢を再発腫瘍と誤認したと思われる症例が2 例ある.両症例共に,精嚢はT1強調画像で筋肉と 同程度またはやや高い信号強度を示し,T2強調画 像では脂肪と同程度の高信号強度を示した(写真 7−a,b, c).1年以上のCT scanによる経過観 察によっても変化が認められなかったこと,そし て腫瘤の形態および部位から,精嚢を再発腫瘍と 誤認していたと思われる.精嚢のT2値は長く,T2 強調画像では,非常に高い信号強度を示すといわ れている18).また,精嚢は腹会陰式直腸切断術後に 仙骨前方に移動することがあり,CT scanによる 診断においても再発腫瘍の鑑別診断の1つに挙げ られている19).CT scanと同様にMRIでも仙骨 前方の腫瘤として描出され,その信号強度も再発 腫瘍と似た傾向を示す.MRI上は,精嚢はその左 右対称性の形態以外には,再発腫瘍との鑑別点は ないと考えられる.経過観察,または,症例によっ ては,CT下穿刺生検も必要と思われた. 腫大した子宮頚部を再発腫瘍と誤認した症例が 1例ある.この症例では,MRI上,子宮頚部は, 再発腫瘍と同様に,T1強調画像にて筋肉と同等の 信号強度を示し,T2強調画像では筋肉より高信号 強度を示した.直腸癌に対する初回の手術の際, 原発巣と子宮が癒着し,子宮の部分切除を施行さ れていたため,MRI上は再発腫瘍と診断した.手 術により,子宮平野は全周性に浮腫状に腫大して いるが,癌組織は認められな:いことが確認された. また,再発腫瘍と鑑別を要するものには小腸も 含まれるであろう.腸液を含んだ小腸は,T1強調 画像では二信号強度,T2強調画像では高信号強度 として描出され,再発腫瘍との鑑別は困難である (写真6−a,b). MRIにおける経口造影剤使用の 報告はあるが20)21),まだ一般的ではない.現時点で は,ガストログラフィンにより小腸を造影した CT scanの画像を参考にすることが必要と考え られた. 結 語 直腸癌再発腫瘍の診断,とくに再発腫瘍と痘痕 組織の鑑別におけるMRIの有用性について検討 し,以下のような結論を得た. 1.再発腫瘍と癩痕組織の鑑別に,MRIは有用 であり,特にT2強調画像が有用であった. 2.T2強調画像で,腫瘤が筋肉より高信号強度 を示し,腫瘤/筋肉比が1以上のときには,再発腫 瘍が最も疑われる. 3.T1およびT2強調画像で腫瘤が筋肉より低 信号強度を示し,腫瘤/筋肉比が1以下のときに は,三二組織と考えられる. 稿を終えるにあたり,御指導御校閲を賜りました 重田帝子教授に深謝致します.また,貴重な症例を提 供して下さった本学第2外科浜野恭一教授,消化器病 センター外科,第二病院外科の諸子生方に厚くお礼を 申し上げます.さらに,御指導頂いた河野敦助教授, 磯部義憲講師,本研究に御協力頂いた診断部同僚諸 氏,および荒井一技師をはじめとする放射線科技師の 方々に深く感謝致します. 本論文の要旨は昭和62年7月2日,第30回日本消化 器外科学会総会において発表した.
一36一
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contrast agents for MR imaging:Preliminary
studies in rats and humans, AJR 148:
1259−1263, 1987 写真説明 写真1 再発腫瘍 a.CT scanにて,仙骨前方から右側にかけて,軟部組 織腫瘤(矢印)が認められる.手術により再発腫瘍で あることが確認されている. b.MRIのT1強調画像(SE 500/30msec)にて,腫瘤 (矢印)は,筋肉よりやや高い信号強度を示している. c,MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)にて,腫 瘤(矢印)は更に高い信号強度を示している. 写真2 再発腫瘍 a.CT scanにて,尾骨前方に軟部組織腫瘤(矢印)が 認められ,尾骨の骨破壊を伴っている二CT下穿刺生検 にて腺癌が証明されている. b.MRIのT1強調画像(SE 500/30msec)にて,腫瘤 (矢印)は筋肉とほぼ同じ信号強度を示している. c.MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)にて,腫 瘤(矢印)は筋肉より非常に高い信号強度を示してい る. 写真3 再発腫瘍 a.CT scanにて,会陰部に軟部組織腫瘤(矢印)が認 められる.会陰部腫瘤の吸引細胞診にて腺癌が証明さ れている. b,MRIのT1強調画像(SE 500/30msec)にて,腫瘤 (矢印)は筋肉とほぼ同じ信号強度を示している. c.MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)にて,腫 瘤(矢印)の大部分は筋肉と同じ信号強度を示すが, 腫瘤内に点状に散在する高信号強度域を含んでいる. d,e. MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)で,写
真3−cより頭側の画像(写真3−d)および尾側の画像 (写真3−e)において,腫瘤内には限局性の高信号強度 域(矢印)が認められる. 写真4 線維性療痕組織 a.CT scanにて,仙骨前方に軟部組織腫瘤(矢印)が 認められる.約1年間の経過観察により腫瘤の大きさ, 形態に変化なく,搬痕組織と考えられている. b.MRIのT1強調画像(SE 500/30msec)にて,腫瘤 (矢印)は筋肉より低い信号強度を示している, c.MRIのT2強調画像(SE 2000/6Qmsec)において も,腫瘤(矢印)は筋肉より低い信号強度を示してい る。 写真5 線維性癩痕組織 a、CT scanにて,尾骨前方に軟部組織腫瘤(矢印)が 認められる.約2年5ヵ月の経過観察により腫瘤の大 きさ,形態に変化なく,搬痕組織と考えられている. b。MRIのTI強調画像(SE 500/30msec)にて,腫瘤 (矢印)は筋肉より低い信号強度を示している. c.MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)において も,腫瘤(矢印)は筋肉より低い信号強度を示してい る. d。MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)の矢状断 像にて,低信号強度域で示される搬痕組織(矢印)の 範囲が腹会陰式直腸切断術の剥離面に一致しているこ とが明瞭にわかる。 写真6 a,MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)にて,搬 痕組織と考えられる線状の低信号強度域の前方に筋肉 より高信号強度を示す領域が認められた. b.CT scanにて,この部位は,経口投与されたガスト ログラフィンにより満たされ,小腸であることが確認 された. 写真7 a.CT scanにて,仙骨前方の小腸の両側に,左右ほぼ 対称の軟部組織腫瘤(矢印)が認められる.約2年3 ヵ月の経過観察により腫瘤の大きさ,形態に変化なく, 再発腫瘍ではないと判断した. b.MRIのT1強調画像(SE 500/30msec)にて,腫瘤 (矢印)は筋肉とほぼ同じ信号強度を示している. c.MRIのT2強調画像(SE 2000/60msec)にて,腫 瘤(矢印)は筋肉より非常に高い信号強度を示してい る. 腫瘤の部位,形態およびMRIのT2強調画像にて高信 号強度を示すことより,精嚢を見ていたと考えられる.