長波標準電波の伝搬実験と電界強度計算法の開発
野崎
憲朗
†a)土屋
茂
††b)今村
國康
††c)前野
英生
††d)長浜
則夫
††e)梅津
正道
††若井
登
Propagation Experiments and Prediction Method of LF Standard Frequency Waves
Kenro NOZAKI
†a), Shigeru TSUCHIYA
††b), Kuniyasu IMAMURA
††c),
Hideo MAENO
††d), Norio NAGAHAMA
††e), Masamichi UMETSU
††,
and Noboru WAKAI
あらまし 標準電波は十分な強度と周波数安定度をもつ電波を常時利用者に供給することが望まれている.情 報通信研究機構では1999 年以来,日本全土を二つの長波標準電波発射局でカバーする態勢を進めてきた.2004 年には電波の通達状況を調査するため,日本各地で受信電界強度と位相を調査し,併せてその結果を評価するた めの電界強度計算法を開発した.その成果は4000 km まで適用する国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)の 勧告として採択されている.一方,長波帯電波は国を越えて遠方まで伝わるので,同機構は長波遠距離伝搬波の 受信品質と長波帯特有の空電雑音の影響を調査するため2007 年から 2008 年にかけて,太平洋航路と,赤道を 横断して南極に至る航路の,8000 km を越える距離にわたって標準電波の電界強度と位相を測定した.その測定 値を,上記の勧告を拡張した遠距離計算法による予測値と比較したところ,非常によい一致を示し,新しい計算 法の妥当性を確認することができた. キーワード 長波,標準電波,電界強度,移動測定,ITU-R 長波電界強度計算法
1.
ま え が き
(独)情報通信研究機構では,標準周波数及び時刻 信号を日本全土に通報するため,福島県のおおたかど や山及び福岡/佐賀県境のはがね山の送信所からそれ ぞれ40 kHz及び60 kHzの長波標準電波を送信してい る[1].2004年には,両波の通達状況及び受信品質を 調査するため,北海道から沖縄に至る日本各地におい て,電界強度と位相を測定した[2], [3].測定データの 解析には,約4000 km以下の伝搬距離を対象として開 発した近距離長波電界強度予測法を用いた.この調査 の成果は国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)の †(財)テレコムエンジニアリングセンター松戸試験所,松戸市Matsudo Laboratory, Telecom Engineering Center, 580–2 Takatsuka-Shinden, Matsudo-shi, 270–2222 Japan
††(独)情報通信研究機構,小金井市
National Institute of Information and Communications Technology, 4–2–1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, 185–8795 Japan a) E-mail: [email protected] b) E-mail: [email protected] c) E-mail: [email protected] d) E-mail: [email protected] e) E-mail: [email protected] 勧告の改訂に反映されている[4], [5]. 長波帯電波は遠達性と安定性に優れているため,近 来標準電波業務への利用が高まっており,世界各地で 送信局の新設が増加する傾向にある.それに伴って, 共用または隣接周波数間の干渉が増加する可能性が出 てきた.外国旅行中に時計が日本時間になってしまっ たり,時間帯によっては日本時間と米国時間に交互に 変わる事例も報告されている.JJYの受信証は米国 西海岸,ヨーロッパ,ニュージーランドから寄せられ ている.このため,2007年から2008年にかけて長 波の遠距離伝搬特性に主眼を置いた測定を行った.一 連の実験では,まずアジア・北米航路に就航している Argus号に測定器を搭載し,2007年の5月から6月 にかけて,日本とシンガポール間及び,日本とロサン ゼルス間の往復途上において電界強度及び位相を測定 した[6]. 続いて,その年の11月に東京を出航した南極観測 船「しらせ」に同測定器を搭載して,オーストラリア と南極昭和基地を経由して2008年4月に東京に帰着 するまでの間,電界強度と位相を測定した. 本論文では,まず国内実験と近距離電界強度計算法
について述べる.次に,船舶移動実験のために新たに 開発した3軸直交ループアンテナを含む測定装置につ いて述べる.遠距離伝搬では信号強度が低下して背景 雑音に埋没するに伴って,受信波が信号か混信かの判 別が難しくなるので,標準電波特有のタイムコードを 利用した自己相関係数法による信号と混信の弁別法を 適用した.その測定データ解析用に,上述の近距離計 算法を発展させて遠距離長波電界強度計算法を開発し た.それによる予測値と測定値との比較と検討,更に 熱帯地方特有の空電雑音強度の測定値に及ぼす影響に ついても述べる.
2.
長波標準電波電界強度の全国調査と近
距離電界強度計算法
2. 1 冬季における電界強度の全国調査 2. 1. 1 測定対象局と使用測定器 調査の対象としたJJY 40 kHzとJJY 60 kHzの2 送信局及び後述するWWVB 60 kHzの諸元を表1に 示す. 全国調査は,北海道から九州に及ぶ地域は2004年 1月下旬から2月中旬にかけて,また沖縄は2月下旬 にかけて行った.測定は,ある地点に滞在して日周変 化を測定する固定点測定と,車両の走行中に連続的に 測定し,距離変化特性を測定する移動測定とに分けら れる.図1に測定点を示す. 使用測定器は3台のループアンテナ付き電界強度 測定器(Anritsu ML428B)であり,それを専用測定 車に搭載して調査地域を分担して測定した.調査に先 立って,国家標準で較正した標準磁界発生器のループ アンテナと電界強度測定器のループアンテナとを地上 1.4 mの高さで2 m隔てて対向させ,それぞれの電界 強度測定器の較正を行った.測定時には,電界強度測 定器を地上高3 mの測定車の屋根上に設置して使用し た.較正時と測定時のアンテナ地上高の違いについて は,調査の開始時と終了時に比較測定を行ったが,有 意な差は認められなかった. 2. 1. 2 固定点測定 固定地点の選択に当たっては,周辺で受信電界に じょう乱を与えるような大きな建造物や施設,送電線 などがないことに留意した.両送信局からそれぞれ約 100 kmごとの地点,空間波と地表波との干渉による 電界強度の大きな落込み(干渉ディップ)の予想され る地点,ビルの多い都市部,沖縄地域から合計31地 点を選び,24時間の連続測定を行った. 表 1 測定対象の長波標準電波送信局Table 1 LF standard wave transmitting stations.
局名 JJY(40 kHz) JJY(60 kHz) WWVB 所在地 福島県 佐賀/福岡県 米 Colorado 州 おおたかどや山 はがね山 Fort Collins 緯度 37◦22’ N 33◦ 27’ N 40◦ 40’ N 経度 140◦ 50’ E 130◦10’ E 105◦03’ W 空中線型 支線式頂部傘型 支線式頂部傘型 Top-loaded monopole 空中線高 250 m 200 m 2× 4 本 122 m 実効 12.5 kW 25 kW 70 kW 放射電力 搬送波 40 kHz 60 kHz 60 kHz 周波数
電波型式 A1B A1B A1B
周波数
確度 ±10−12 ±10−12 ±10−12
図 1 全国調査の固定測定点(●),移動測定コース(太
線)と JJY 送信局(▲)
Fig. 1 Fixed (●) and mobile (thick line) measure-ment points around Japan and JJY stations (▲). 測定に先立って,あらかじめ計算した送信点方位に ループアンテナの最大指向方向が向くよう調節し,固 定した.測定値に誤差を与える地形地物や混信の有無 は,ループアンテナを回転させて,8の字特性を得る ことにより確認することができた.しかし測定を開始 してから混信が発生した場合には測定データを破棄 した. 2. 1. 3 移 動 測 定 干渉ディップの予想される,おおたかどや山局から 約640 kmの地点を含む2コースと,はがね山から約 700 kmの地点を含む1コースの合計3コースについ て測定車を走行させながら連続して測定した.走行中 の送信局方位の変化は逐次記録し,解析の際にループ
アンテナの利得の変化を補正した. 2. 1. 4 実効放射電力 測定値の解析に必要な各送信局の実効放射電力の算 定には,アンテナの接地抵抗を含む諸損失抵抗と放射 抵抗を知る必要がある.両局の建設時に測定したこれ らの抵抗値から算出された放射効率は,JJY 40 kHz 局とJJY 60 kHz局について,それぞれ約25%以上と 約50%以上という不確定な値であったが,今回の調査 に際して空間波の混入の少ない送信局から100 kmと 200 km地点で得られた電界強度実測値をもとに,JJY 40 kHzの実効放射電力を12.5 kW,またJJY 60 kHz のそれを25 kWと確定し,解析に使用した.放射効 率はこれから逆算して,それぞれ25%,50%となる. 2. 1. 5 受信電界測定データの処理 受信信号を約10 Hzでサンプリングし,10秒間の タイムスロット内に100個の受信強度を記録した.衝 撃性雑音の影響を最小限にするために,100個の上十 分位値をとって10秒間の代表値とした.解析にあたっ ては,この10秒値をはじめとして,それを1分間で 平均した1分値,10分間で平均した10分値,1時間 で平均した1時間値も使用した.更に地方時12時を 挟む5個の毎時間値の平均を日中強度の代表値,地方 時0時を挟む5個の毎時間値の平均を夜間強度の代表 値として使用した. 2. 1. 6 受信電界強度の距離変化特性 受信電界強度が距離に対してどのように減少するか は,標準電波のカバレージを知る上で端的な指標と なる.測定データの解析にあたっては,上記の五つの コースに沿って,両送信局から約100 kmおきに選ん だ31地点における受信電界強度の変動(図1中の黒 点)を,伝搬距離に対してプロットした.その中から 日中の40 kHzの強度変化と,夜間の60 kHzのそれと を例として示したのが図2と図3である.両図中の太 線は,後述の近距離長波電界強度計算法で計算される 地表波の電界強度であり,図2の細線は太陽活動中間 期の正午について計算された,電離層1回,2回反射 空間波と地表波の合成電界強度である.同様に図3の 細線は正子の計算された合成電界強度である. 伝搬距離に対する電界強度の変化特性は,その変化 の傾向から,距離区間を大きく二つのグループに分類 できる.その第1は地表波が空間波より強い,距離 約500 kmから600 kmまでの近距離地域である.第 2は空間波が地表波より強くなる地域であって,その 中間に両者がほぼ同じ強度になり,位相が互いに逆に 図 2 日中における JJY 40 kHz 電界強度の距離変化.(・) は実測値,太線は地表波の,細線は合成電界強度の 予測値.
Fig. 2 Field strengths of JJY 40 kHz in the daytime. (・) indicates received signal. Thick and thin lines are estimated variations for ground and synthesized field strength, respectively.
図 3 夜間における JJY 60 kHz 電界強度の距離変化.(・) は実測値,太線は地表波の,細線は合成電界強度の 予測値.
Fig. 3 Field strengths of JJY 60 kHz at night-time. (・) indicates received signal. Thick and thin lines are estimated variations for ground and synthesized field strength, respectively.
なる干渉域が存在する.そこでは図2に見られるよう な干渉による大きな強度の落込みができる.図3の 夜間の特性は,電離層吸収の減少による多重反射波の 増加により,合成波の変動のピッチは速く,最遠の距 離2000 kmでは地表波より約20 dB強く受信される. 図2,図3とも測定値と予測値とはよく一致している ことが分かる.例外的に図3の1100 km付近の2点に ついて計算値が実測値を反映せず,夜間の下部電離層 変動を考慮した計算法の改善の必要性を示唆している. 2. 1. 7 受信電界強度の日周変化特性 電離層伝搬を介して受信点に到達する電波の位相は, 反射高の変動に伴って変化するが,特に日出没時には D層の生成・消滅が短時間に起こるので,それに伴っ て受信強度と位相は大きく変化する.したがって一定 時間内の位相の変動量に比例する周波数安定度は,日 出没時間帯に最も低下する.しかし伝搬距離の増加と
図 4 距離約 900 km における JJY 40 kHz 電界強度と位 相の日周変化
Fig. 4 Diurnal variation of JJY 40 kHz field strength and phase at 900 km from transmitter.
ともに電離層入射角が大きくなり,見掛け反射高の変 化の影響は小さくなる.このように伝搬距離に伴って 周波数安定度も変わるから,各測定地点での電界強度 の日周変化特性は,周波数安定度を推し量る上で有効 なだけでなく,電界強度計算法の反射高モデルの妥当 性を評価するための良い指標となる.そこで固定点測 定による31日分(2周波合計62日分)すべての電界 強度の日周変化を解析し,予測電界強度と比較検討 した. その中から例として,送信点からの距離約900 km における地点での40 kHz電界強度の日周変化を図4 に示す.図中の18時から22時までの測定値が高いの は混信によるものであり,それ以外の時間では予測値 と測定値は非常によく一致している.図の右縦軸は, 空間波成分の地表波からの位相遅延角を示す. 2. 1. 8 移動測定により明らかになったMID (Max-imum Interference Dip)
長波帯の電波が送信点から数百km離れた距離にお いて,干渉による大きな電界の落込みを示すことは既 に知られており,例えば,Belrose(1968)[7]は1964 年の航空機による実験において約650 kmの距離での MIDを報告している.今回の調査においても,この MIDを連続的に観測するために,固定点測定とは別 に,JJY 60 kHz波を600 kmから800 kmにわたっ て,走行中の測定車上で測定する移動実験を実施した. MIDは地表波と空間波の強度がほぼ等しく,位相が 互いに正反対のときに,両者の干渉によって現れる現 象であるから,その条件を満たす距離はクリティカル であることが予想される.図5は伝搬距離に対する 受信電界強度の変化を示しているが,692 kmの距離 でMIDが起こっていることが分かる.図中には電離 図 5 移動測定により検出された電界強度の MID(最大 干渉ディップ)現象.実線は予測値,点は測定値. Fig. 5 Maximum Interference Dip (MID) observed with mobile measurement (・) and estimated (lines). 層反射高を変えながら,MID近傍の電界強度変化を 計算した結果も示した.図には反射高Rh = 69 km, 69.4 km,70 kmの場合の計算例を示したが,この中 でRh = 69.4 kmが実測のMID距離692 kmに最も 近い. 2. 1. 9 国内移動測定の考察 ITU-R勧告P.684-4 [5]にあるとおり,波線法は送 信された電波が電離層と大地の間を光線のように直 線的に反射を繰り返して受信点に達するという,直感 的に分かりやすい手法であるが,電離層の高さが波 長の数倍以下になると導波管法での計算が有利とな る.ITU-R勧告では波線法の適用可能下限周波数は 60 kHzとされているが,本調査により40 kHzに対し ても十分な精度で適用できることが分かった.送信点 から約100 kmごとの固定点で得られた電界強度の伝 搬距離に対する変化は,約1000 kmから1800 kmに 至る距離範囲において,地表波より約10 dB高い合成 電界強度で推移することを示している.また,市販の 電波時計が目安としている,自動較正のための電界強 度値50(dBμV/m)を国内全域で上回ることが確認 された. 調査から得られた電界強度の距離変化特性及び日周 変化特性は全体的に計算法によって予測されたものと 非常によい一致を示している.これは測定値の確かさ と,計算法の妥当性を併せて証明する証左となってい る.電界強度及び位相の日周変化の定常的な観測は, 長波標準電波の周波数安定度を評価する格好な手段で ある. 今回の調査は冬季に実施されたが,電界強度は季節 的にも大きく変化することは,計算法による予測に よっても明らかなので,今後早い時期に同規模の調査
図 6 地表距離 4000 km までの電離層伝搬モード.パラ メータは式 (4)∼(6) 参照.
Fig. 6 Schematic diagram of propagation path ge-ometory and factors up to 4000 km. See Eq. (4)∼Eq. (6) for parameters.
が行われることが望まれる. 2. 2 近距離長波電界強度計算法 ITU-Rの従来の勧告P.684-3 [8]は,150 kHzから 500 kHzまでの空間波電界強度を,主として図表を用 いて計算するという時間と労力のいる方法である.そ の上夏,春秋,冬の三つの季節と日中と夜間の二つの 時間帯に限った条件でしか計算できないという不便さ もある.これらの難点を解決するため,筆者の一人に よって同勧告の改良[3], [4]が行われた.その結果が, 現勧告P.684-4 [5]中の2. 3節,合成電界強度と位相 の数値計算法である.本節では国内移動測定の評価に この計算法を用いている. 空間波の電界強度は,電波通路長損,集束/発散係 数,アンテナ係数,電離層及び大地反射係数の積とし て表される.数値計算法の特徴は新たに,パラボラ分 布のD/E層の反射高度モデルを導入することにより, それまで[8]では図表で昼と夜でしか表せなかった時 間的な変化を,24時間を通じて太陽天頂角の関数とし て表せるようになった.反射高度が計算により得られ るので,伝搬通路長,基本伝送損も計算で求められる. 更に図表で与えられていた各種パラメータを内挿法に より月変化をも表せるようになった.図6に計算に必 要な伝搬様式と諸因子を示す. 電離層での1回と2回の反射モードそれぞれが最大 2000 kmまで伝搬し,各反射点では垂直偏波が保持さ れると仮定して計算する. 2. 2. 1 反射高モデル 24時間を通して反射高を計算するためには,まずD 図 7 電離層反射高モデル
Fig. 7 Ionospheric reflection height model.
層からE層にかけての電子密度分布をパラボラ分布と 仮定し,その最高周波数をITU-R勧告P.1239 [9]を 用いて計算する.次に分布の下限周波数fbを10 kHz として,層の最小半層厚ymin,最大半層厚ymaxと E層の最高高度hmaxに対してそれぞれ10 km,30 km, 100 kmを与えると,夜間の最低反射高度は90 km (hmax− ymin)に,また昼間の最低反射高度は70 km (hmax− ymax)になる.例として,ある地点におけ る反射層の高度分布をh-f(周波数対反射高)曲線で 表すと図7のようになる.図において地方時0時から 3時の間は同じとする. 反射高Rhは次式のように計算される. Rh= hmax− ym
1−f − fb foE (1) ここでym = ymm −(ymm− yf min)(fmax− foE)
max− fmin (2)
であり,ymmは
ymm=ymax−(ymax− ymin)(fk0− fmax) (fk0− fmin) (3) から求められる. また,fk0(太陽天頂角が0のときのfoE),fmax (その地点でのfoE の最大値)とfoE(与えられた 地方時における)は[9]の第4章foEの予測から計算 できる. 2. 2. 2 集 束 効 果 球面電離層からの電波束の集束効果は,[8]では昼間 と夜間の二つの曲線により与えられていたが,24時間 を通じて計算できる集束効果を求めるため,数値計算 法では図8のように両者の平均を集束係数Fcとした.
図 8 集 束 係 数 Fig. 8 Focusing factor.
表 2 大 地 常 数
Table 2 Factors for ground conditions.
大地条件 比誘電率ε 導電率 σ(S/m) 海水 80 5 平均的な土 15 0.002 乾燥大地 15 0.0005 2. 2. 3 アンテナ係数 送信と受信アンテナ係数Ft,Frは[8]が与える表2 の三つの大地条件に対する曲線群から,仰角と周波数 に関する補間により求める.仰角が負になると回折波 となるが,回折損はこの曲線群に含まれる. 2. 2. 4 電離層反射係数 [8]は,電離層反射係数Rcを,夏,冬,春秋の季節 ごとの図として与えている.任意の月と時刻の反射係 数は曲線群の補間により求める. 2. 2. 5 空間波電界強度 [5]では地表に置いたループアンテナで受信したと きの電離層1回反射波の実効電界強度Es1(mV/m) は次式で計算される. Es1=600 √ P t cos(Ψ1)RcFcFtFr L1 (4) ここでP tは放射電力(kW),Ψ1 は仰角であり,L1 は電波通路長(km)である. 2回反射モードに対する空間波の実効電界強度Es2 (mV/m)は,次式で表される. Es2=600 √ P t cos(Ψ2)Rc1Rc2Fc2DgRgFtFr L2 (5) ここでRc1 とRc2はそれぞれ1回目と2回目の反射 に対する電離層反射係数であり,Dgは球面大地に起 因する発散係数で,1/Fcに等しい.Rgは導電性地球 の実効的反射係数であり,L2は2回反射モードの全 電波通路長である. 電離層反射係数はすべての反射点で同じ(Rc1 = Rc2 = Rc)であると近似して,Es2 は次式で表さ れる. Es2= 600√P t cos(Ψ2)Rc2F cRgF tF r L2 (6) 2. 2. 6 地表波と合成電界強度 地表波の伝搬曲線はITU-R勧告P.368-7 [10]で与 えられている多くの大地条件の中から,海水(ε:70, σ:5 S/m),土(ε:22,σ:0.003 S/m)及び乾燥大 地(ε:7,σ:0.0003 S/m)を選択し,周波数につい ては9つの周波数40,50,75,100,150,200,300, 400,500 kHzの図表の中から適宜選択して,目的の 伝搬距離に対応する地表波強度を計算する. 空間波と地表波は伝搬距離による位相項を含むが, [5]では1回,2回反射波と地表波のベクトル合成に より受信点での電界強度を計算する.
3.
船舶による移動実験と遠距離長波電界
強度予測法
3. 1 船舶による移動実験 3. 1. 1 測定対象標準電波局と受信装置 測定の対象波は,上述の国内調査における日本の標 準電波2局のほかに,米国のフォートコリンズ(40◦ 40’ N,105◦ 03’ W)から発射されている標準電波 WWVB 60 kHz(推定実効放射電力70 kW)も含ま れる(表1参照). 船舶に搭載した電界強度測定器は,40 kHzと60 kHz の周波数切換,基準発振器による周波数ごとの較正と 測定,更にアンテナ出力の合成などを3分以内に行う. したがって受信電界強度のデータとルビジューム基準 発振器に対する位相遅れのデータは,2周波数につい て3分ごとに得られた.今回の測定では,解析は受信 強度のみに限り,位相変動の解析は機会を改めて行う. また受信用ループアンテナの近くにGPS受信用アン テナを設置して時刻情報と位置情報を得た. 船舶から見た送信局の方向は,航行とともに変化す るので,船舶に搭載するアンテナは水平面内において 無指向性であることが望ましい.そこで3軸直交ルー プアンテナを新たに開発し,船の実験室に近い手すり に固定した.受信用ループアンテナの水平面内指向性 は全方向にわたって±0.3 dB以内に収まっていること を確認した. 3. 1. 2 測 定 方 法 JJYのタイムコードは継続時間0.8秒,0.5秒と0.2秒の秒信号パルスからなっているので,それらの受信 強度を測るため約0.1秒ごとにサンプリングを行い, 10秒間に100個のデータを取得した.一般に受信信 号はフェージングにより変動し,またパルス性の雑音 を含んでいるので,その100個のデータのうち,強 い方から10番目の強度(上十分位値,upper decile value)を電界強度値とした.この処理を,アンテナの X,Y,Z軸の受信出力について順次切り換えて測定 し,それらの合成を行う.この合成を40 kHzの出力 に対して行った後,60 kHzに切り換えても行い,その 結果を3分ごとにハードディスクに記録した.また同 時に,GPS時計から求めた船(受信点)の緯度経度と 測定時刻も併せて記録した. 3. 1. 3 データ処理 電界強度計算法が予測する強度は中央値である.一 方記録した受信波は,上述のように上十分位値である から,受信波はレイレー分布に従って変動すると仮定 して,記録した値から5.2 dBを差し引いて中央値に 換算して両者を比較した. 一方3分ごとの受信記録は,予測のもとになる電離 層諸量の変動速度に比べてはるかに細かいので,予測 値と比較するためには,時間的に平滑化した方が処理 しやすい.そこで15個の受信強度記録すなわち45分 間の移動平均をとり,その中央の値を最終的な受信強 度とした. 3. 1. 4 自己相関係数を利用した秒信号の確認 伝搬距離の増加とともに電界強度は低下する.送信 電力と周囲雑音などにもよるが,長波の場合,距離 4000 kmを超えるあたりから信号強度が背景雑音レベ ルと同程度になり,特に受信点が空電雑音の強い熱帯 地方または市街地域に近づくと,信号は雑音に埋もれ てしまう.受信信号音を録音して雑音混信の有無を確 認することはできるが,受信音だけから受信強度への 雑音の影響の程度を判断することは難しい. そこで今回の移動実験では,標準電波信号の秒信号 を利用して,自己相関係数を用いた混信判定法を導入 した.標準電波のタイムコードは発射局により,秒信 号パルスの幅,タイミング,減力レベルなどが異なる が,秒信号そのものの周期性は変わらない.その性質 を利用して,10秒間の受信信号から100個のサンプ リングパルス列を切り出し,その自己相関係数を計算 する.その結果,秒信号の周期性が検出されれば,受 信波は標準電波であると判定し,検出されない場合は 混信雑音と判定した. 3. 1. 5 移動測定コース 本項では,測定器を船舶に搭載して太平洋を横断し た日米間の東西コースと,赤道を越えて南極まで往復 した南北コースの電界強度移動測定について述べる. ここでは前者を東西コース,後者を南北コースと呼び, それぞれについて測定結果の解析を行う.東西コース 上の測定結果は,[6]において既に報告したが,その 後データの解析処理について相当の改善を行ったので, 南北コースと併せて報告する. 東西コースでは,測定器を搭載した日本郵船の Ar-gus号が2007年5月13日に東京大井埠頭を出港し, 6月24日に同埠頭に帰着した.しかし全航程の前半 にあたる東南アジア海域では,空電雑音レベルが非常 に高く,また台湾,香港,シンガポール近傍では人工 雑音と思われる混信妨害を受けて標準電波の良好な受 信ができなかった.そこで東西コースは,船が東南ア ジアから東京の南方海上に戻った5月31日から一路 大圏に沿って太平洋を横断し,再び日本に戻るまでの 区間に限って解析した.測定は,ロサンゼルス停泊期 間中には行わず,サンフランシスコに移動して,そこ を出港した6月15日から再開し,東京に帰着した6 月23日まで行った. また南北コースでは,東西コースで使用した測定 装置をそのまま南極観測船「しらせ」に積み替えて, オーストラリアを経由して日本と南極昭和基地を往復 する全航路にわたって,電界強度測定を実施した.「し らせ」は2007年11月14日東京を離れ,11月28日 フリーマントル着,12月3日同港を出航して南下し, 南極大陸沿いに昭和基地に向かった.また帰路は2008 年2月15日昭和基地を出発し,3月20日シドニー に入港した.更に3月26日シドニーを出港し,4月 12日東京に帰着した.オーストラリア以遠は伝搬距離 が9000 kmを超えて信号強度が弱くなるが,数日間は JJY波と確認した.船上観測の航路を図9に示す. 3. 1. 6 空電強度の予測 電波の受信に影響を及ぼす電波雑音は,長波帯から 超長波帯にかけては空電雑音が最も卓越する.今回の 測定においても,受信強度が低下する遠距離におい て,背景雑音がどの程度の強さになるか,特に雷活動 の活発な熱帯地域を通過する東南アジアコースで空電 雑音がどの程度影響するかは,計画の当初から懸案で あった. ITU-Rの勧告372 [11]は短波帯以下の空電強度を 24枚の世界分布図で与えている.利用者は計算しよう
図 9 移動測定の東西及び南北コース航路図 Fig. 9 East-west and north-south mobile observation
paths. とする季節と地方時を含む図を使って目的の地点の雑 音指数F amを読み取る.更に次式により,受信機帯 域幅と周波数の補正を施して雑音電界強度を求めるこ とになる. En = F am − 155.5 + 20 log f + 10 log b (7) ここでEn(dBμV/m)はバンド幅b(Hz)の雑音 電界強度中央値であり,F amは中心周波数f(kHz) に対する,4時間のタイムブロック中の雑音指数中央 値である. 今回の東西コースの測定は,春から夏の季節にか かり,また広い地域に及んでいるので,コース上の4 時間ごとの位置におけるF amの,春と夏の平均値を とってその地点のF amとし,雑音電界強度を図10に 示した.また南北コースの測定は,往路は秋,復路は 春の測定なので,勧告372 [11]に与えられたそれぞれ の季節の雑音分布図から同様に雑音電界強度を図13 に示した.ただし赤道を挟んで季節は反転するので, 南半球では往路は春から夏の図を,復路は秋の図を用 いた. 3. 1. 7 東西コースにおける電界強度実測値と予測 値との比較 全解析期間にわたる受信電界強度の変動を40 kHz と60 kHzに分けて図10に示す.測定値を赤,後述 の遠距離電界強度計算法による予測値を青の実線で, 4時間ごとの空電雑音強度を緑の点で示した.また, JJY送信局からの大圏距離を黒線で示す. 日本からアメリカ西海岸に至る太平洋コースでは, 図 10 東西コース受信電界強度測定値(赤実線)と予測 値(青実線)及び空電雑音強度予測中央値(緑点). 黒線は送信局からの地表距離.(a) 40 kHz,(b) 60 kHz
Fig. 10 Measured (red line) and predicted field strength (bule line) of JJY 40 KHz and at-mospheric noise estimation (green dot) along east-west observation path. Black line indi-cates surface distance from transmitting sta-tion to the receiver. (a) 40 kHz, (b) 60 kHz.
40 kHzの予測値は,送信点から約4000 kmまではほ ぼ測定値と合っているが,それ以遠では多少低めに なっている.しかし受信強度が低くなると空電雑音レ ベルに近づき,受信強度が必ずしも信号強度であると はいえない.JJY信号の判定に自己相関係数法を適用 する.図11は40 kHz受信信号の自己相関係数で,横 軸は秒で表す遅延サンプル数である.図9 (A)点に示 す2007年6月5日の信号強度は雑音レベルより十分 高く予測値とよく一致し,自己相関は秒信号の周期性 を示している(図11 (a)).一方2日後の図9 (C)点 に示す6月7日は,背景にある空電雑音の影響を受け て,自己相関は図11 (b)に示すように,周期性のない 負の値を示している. 40 kHz波が距離とともに一様に減少したのと対照的 に,60 kHz波はアリューシャン列島の南方海上あたり から電界強度は上昇に転ずる.米国はJJYの60 kHz
図 11 40 kHz波受信強度の自己相関係数.6 月 5 日(コー ス上の A 点)では JJY 秒信号の周期性が明りょ うに現れている (a).これに対し 6 月 7 日(コー ス上の C 点)では雑音が卓越して周期性が見られ ない (b).
Fig. 11 Correlogram of 40 kHz signal. (a) Periodicity appeares clearly at point A on June 5. (b) No periodicity appears due to noise at point C on June 7.
図 12 東西コースに沿う 60 kHz 受信電界強度測定値と
WWVB波の電界強度変動の予測値.凡例は図 10
に同じ.
Fig. 12 Measured and predicted field strength of WWVB along east-west path. Same legend as Fig. 10. と同じ周波数で標準電波WWVBを発射しているか ら,WWVB局との共用周波数干渉は,測定を計画し た段階から予想された.60 kHz波測定値とWWVB 波の強度予測値とをコース全体にわたって示すと図12 のようになる.この図により,米国西海岸に近づくに つれ増加するのはWWVB波であることが明らかで ある.図10 (b)と図12とから,60 kHz波の受信強度 については,東西コース全体として測定値と予測値の 間に非常によい一致が見られる. 更にJJY波とWWVB波の混信を,自己相関係数 法を用いて検証する.60 kHzの場合,図9 (A)点の6 図 13 南北コース受信電界強度と予測値及び空電雑音強
度予測中央値の変化.(a) JJY 40 kHz,(b) JJY 60 kHz.凡例は図 10 に同じ.
Fig. 13 Measured and predicted field strength to-gether with atmospheric noise estimation along north-south observation path. (a) JJY 40 kHz and (b) JJY 60 kHz. Same legend as Fig. 10. 月5日はJJY波とWWVB波がほぼ同レベルに達し た日であった.このときの自己相関係数は二つの信号 が混信しているため,全体として周期性のない一様な 正の相関係数を示した.それから12時間後の図9 (B) 点ではWWVB波が強くなり,相関係数に再び秒信号 の周期性が明りょうに現れた.このように自己相関係 数を用いる方法は,単に混信ではなく,共用周波数信 号による混信か,雑音のような不規則信号による混信 かの弁別にも役立つ有効な方法であることが分かる. 3. 1. 8 南北コースにおける電界強度実測値と予測 値との比較 図13に南北コースの40 kHzと60 kHzの受信電界 強度,予測値,空電雑音強度予測値,送信局からの大 圏距離の推移を示す.両図とも,左半分が日本からフ リーマントルを経由する往路,右半分がシドニーを経 由して日本に戻る復路にあたる.往復路とも東西コー スほど大圏路に沿っていないが,時間経過がほぼ伝搬
距離に比例する表示になっている. 40 kHzについては,フィリピン東方を南下する2007 年11月18日頃から受信レベルが上昇し,雑音性の 速い変動を伴って高いレベルでフリーマントルまで 推移している.自己相関係数法によると,11月17日 (コース上D点)におけるJJY 40 kHz受信強度の自 己相関係数には秒信号の周期性が明りょうに現れた. これに対し,11月18日(コース上E点)は全く周期 性のない負の相関係数となり,明らかに雑音性のもの であることが分かる.その上,[11]で予測される空電 雑音が信号レベル近くまで上昇している.したがって 11月18日以降フリーマントルまでの受信データの大 部分は空電雑音の影響を受けている.ただし,11月 24日だけは,40 kHz波と60 kHz波ともに信号の周期 性が確認された.更にフリーマントル出港後,最後に 60 kHz波が確認されたのは12月6日であり,送受信 点間距離は約9300 kmであった. 復路については,南極からシドニーに向かう航路上 の,3月15日から3月17日までの間だけ受信波が 60 kHzと確認された.その最遠地点は南緯50度で, 送受信点間距離約9600 kmであった.それ以降はシド ニー近傍の都市雑音及びニューギニア近傍の空電雑音 の影響を受けて信号は確認できず,赤道を越えた4月 2日からはJJY波が受信された. 南北コース全体としては,熱帯性空電雑音の影響を 受けたため,特に40 kHz波は往路約2000 km,復路約 4000 kmまでしか連続した測定値は得られなかった. しかし60 kHz波は往復路とも約8000 kmにわたって 予測値強度とよく一致する信号を受信することがで きた. また受信点が都市部近傍を通過する際には,40 kHz, 60 kHzとも強い人工雑音による受信障害を受けた.長 波の受信においては,自然雑音はもちろん,最近の電 子機器利用の高まりとともに低周波帯で増加しつつあ る人工雑音に注意する必要がある. 3. 2 遠距離長波電界強度計算法 2. 2に述べた長波近距離法は,ITU-Rが現在推奨す る長波電界強度計算法[5]であり,基本的には Wave-hop法(波線法)であって,電離層と大地の間を,反 射を繰り返しながら受信点に達する,多くの電波通路 (波線)の合成から受信電界強度を求める方法である. しかしこの方法は,電離層での反射回数を2回までに 限定しており,最長約4000 kmまでの伝搬距離に対し ては適用できるが,今回の測定のように8000 kmを超 える距離に対しては適用できない. そこで受信データの解析にあたっては,[5]を基本 として最大10回反射までの空間波を合成する遠距離 電界強度計算法を開発した.ループアンテナで受信し た実効電界強度E(mV/m)は,10回反射までの空間 波EsKと2. 2. 6同様,地表波との合成電界強度で表 される. E = Eg + 10
K=1 EsK (8) ここでK 回反射の空間波は次式で表される. EsK= 600√P t cos ΨK K L=1 RcK,L K L=1 P lK,L F cK RgK−1 K F tKF rKexp −jk K L=1 P lK,L (9) ここで添字 K とL はホップ数と反射点番号を意味 する.また,電離層反射係数RcK,Lは反射点での太 陽天頂角χと周波数f(kHz),電離層入射角iの関 数となる.今回[5]の図表をf cos(i)の低い値まで延 長し,図14 (a)∼(c)に示すように太陽活動度の最小 (SSN:0∼25)と中間(SSN:25∼75),最大(SSN: 75∼150)に分けて表示した.任意の伝搬条件に対し ては,この3図から補間により求める.近距離法では 図6に示すように電離層反射点の経度差は2000 km以 内,たかだか18◦であり,場所による反射係数の違い は無視している.遠距離法では反射点が正午から夜中 まで広がる場合がある.例えば太陽活動極大期の太陽 直下点と日出没点では図14 (c)で読み取れるとおり, f cos(i) = 10 kHzでは反射率にして3.5倍,強度で 7 dBの違いが出る.多回反射の遠距離伝搬では反射点 ごとの反射係数の違いが無視できない F cKは集束係数であり,RgK は垂直偏波に対する 大地の実効反射係数.なお,仰角が負となる回折域で は[10]で示される地表波の伝搬モードの回折損を加 えた. なおこの遠距離電界強度計算法は,NICTのホーム ページ“http//jjy.nict.go.jp/”に公表されている.4.
考察と今後の課題
船舶を用いた移動測定は,電波の伝搬特性及びその図 14 太陽活動極小期(SSN: 0∼25),(b) 太陽活動中 間期(SSN: 25∼75),(c) 太陽活動極大期(SSN: 75∼150)の電離層反射係数.太陽天頂角χ をパ ラメータにした横軸のf(kHz)は周波数,i は電 離層入射角であり,曲線は上から cos(χ) = −0.5, −0.35, −0.21, 0.0, 0.2, 0.375, 0.55, 0.707, 0.85, 1.0についてプロットした.ただしχ は太陽天頂角.
Fig. 14 Ionospheric reflection coefficient for (a) min-imum (SSN: 0∼25), (b) medium (SSN: 25∼ 75), and (c) maximum (SSN: 75∼150) so-lar activity. Curves are for cos(χ) = −0.5,
−0.35, −0.21, 0.0, 0.2, 0.375, 0.55, 0.707,
0.85, and 1.0. χ is solar zenith angle.
予測法を調査研究する上で非常に有効であることが確 かめられた. 40 kHzと60 kHzの両波について,東南アジア航路 で観測された非常に高い混信強度は,主として低緯度 特有の空電雑音に起因するが,それに加えて人口密度 の高い都市近傍では各種の電気・電子機器による人工 雑音の増加が原因となっていると思われる.長波標準 電波の受信にあたってはそれらに対する考慮と対策が 必要である. 約8000 kmに及ぶ東西と南北のコース全般にわたっ て,60 kHz波の測定値と予測値は非常によく一致して いることが分かった.一方40 kHzについては,米国 西海岸に近づく東西コースの後半で測定値は予測値よ り高めである.しかしその原因は自己相関係数法によ り空電雑音レベルの上昇によることが確かめられた. また南北コースでも40 kHz波は空電雑音の影響を受 けて,遠距離まで一貫した測定データを得ることはで きなかったが,混信の弱い一部の地域で信号が受信さ れ,予測法は実測結果とよく一致していることが確か められた.全体として遠距離計算法は妥当であるとい うことができる. 長波電波の遠距離伝搬は,太陽活動,季節,時間, 送信諸元など多くの要因に依存するので,予測法の改 善のため,今後も種々の送受信条件及び大地条件で実 験と伝搬理論の改良を続ける必要がある. 謝辞 東南アジア及び太平洋航路に就航している Argus号上に測定器を搭載し,1か月以上に及ぶ測定 に格別の便宜を提供して頂いた日本郵船(株)に対し 深く感謝の意を表します.また装置の測定装置一式の 運搬設置に御協力を頂いた協立電子工業(株)に深謝 致します. 文 献 [1] 栗原則幸,“長波標準電波,”通信総合研究所季報,vol.49, pp.167–173, March/June 2003. [2] 栗原則幸,大塚 敦,今村国康,高橋幸雄,若井 登,“冬 季における長波標準電波強度の全国マップ,”信学技報, A·P2004-195, Dec. 2004.
[3] N. Wakai, N. Kurihara, A. Otsuka, K. Imamura, and Y. Takahashi, “Wintertime survey of LF field strengths in Japan,” Radio Sci., vol.41, no.5, RS5S13, pp.1–7, Sep./Oct. 2006.
[4] 若井 登,栗原則幸,大塚 敦,今村国康,“長中波電界
強度計算法,”信学技報,A·P2003-271, Feb. 2004.
[5] Recommendation ITU-R P. 684-4, Prediction of field strength at frequencies below 150 kHz, ITU, 2005.
[6] 土屋 茂,野崎憲朗,今村国康,前野英生,若井 登,“ア
ジア・北米航路における長波標準電波の電界強度移動測 定,”信学技報,A·P2007-138, Jan. 2008.
[7] Belrose, J.S., “Low and very low frequency radio wave propagation,” AGARD Lecture Ser., vol.29, pp.97–115, Advis. Group for Aerosp. Res. And Dev., NATO, Neuilly-sur-Seine, France, 1968.
[8] Recommendation ITU-R P. 684-3, Prediction of field strength at frequencies below 150 kHz, ITU, 2001. [9] Recommendation ITU-R P. 1239, ITU-R Reference
ionospheric characteristics, Annex I Ionospheric char-acteristics, 4 Prediction of foE, ITU, 2002.
[10] Recommendation ITU-R P. 368-7, Ground-wave propagation curves for frequencies between 10 kHz and 30 MHz, ITU, 1992.
[11] Recommendation ITU-R P. 372-9, Radio Noise, ITU, 2007.
野崎 憲朗 (正員) 昭 47 東京教育大・理・応用物理卒,昭 49同大大学院修士課程了,同年郵政省電波 研究所(現情報通信研究機構)入所,以来 電波予・警報,電離層の研究に従事,平 20 テレコムエンジニアリングセンター入社. 土屋 茂 (正員) 昭 55 長野県立岩村田高校卒,郵政省電 波研究所(現情報通信研究機構)入所,平 7∼10 宇宙開発事業団出向,通信衛星,電 離層観測衛星,技術衛星の開発を行い,現 在は日本標準時の運用に従事. 今村 國康 (正員) 昭 51 郵政省電波研究所(現情報通信研 究機構)入所,無線機器の検定・試験法開 発,国際間周波数・時刻比較の研究に従事. 現在,周波数標準・標準時の運用・開発に 従事. 前野 英生 昭 55 名古屋電気通信工学院電波通信学 卒,同年郵政省電波研究所(現情報通信研 究機構)入所,以後,電離圏伝搬,リモー トセンシング分野の研究を経て,現在時刻 周波数標準の比較分野に従事.工博. 長浜 則夫 平 13 広島大・総合科学卒,平 15 北大 修士課程了,(株)グローバル オーシャン ディベロップメント入社,観測船で海洋, 気象,地球物理観測機器の運用と保守に従 事,平 19(独)情報研究通信機構入所,南 極観測に従事. 梅津 正道 昭 57 福島県立福島工業高校卒,日本電 気(株)入社,衛星通信の地上設備の製造 検査に従事,日本スペースイメージング社 で衛星のタスキング業務などを経て,平 19 (独)情報通信研究機構入所,南極観測に 従事. 若井 登 (正員) 昭 25 東大・工・電気卒,同年郵政省入省, 以来電離圏伝搬の研究に従事,東海大学開 発技術研究所教授などを経て,電波技術協 会技術顧問在任中の平 21 他界.工博.著書 「電波ってなあに」,「てれこむノ夜明ケ」.