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福島県のアスパラガス露地栽培における茎枯病の体系防除

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Academic year: 2021

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は じ め に アスパラガス茎枯病(Phomopsis asparagi)は,立茎 した養成茎に病斑を形成し,進展すると茎全体を黄化, 枯死させ,株の衰退を招く(図―1)。本病は,前作の罹 病残渣上で越冬した病原菌が第一次伝染源となり,降雨 時の水の跳ね上がりにより飛散し,感染が拡大する(酒 井ら,1992)。そのため,本病が発生した翌年には,春 の収量や秋における生育量が大幅に減少し(児玉ら, 1984),アスパラガスの栽培に大きな影響を与える。 多くのアスパラガス産地において,茎枯病の発生が問 題となってきたことから,これまでに様々な取り組みが なされてきた。特に本病は降雨により発生が拡大するこ とから,耕種的防除法として雨よけ栽培による対策は有 効で(小林・新須,1990;竹川・相野,1994),西南地 域の産地では施設化が進んでいる。福島県においても, 病害対策や作期拡大を目的に施設化を推進しているが, 県内の80%の圃場が露地栽培であり(平成 27 年度), 依然として茎枯病による被害が深刻な問題となっている。 本病の発生生態として,萌芽後の日数が少ないほど感 染しやすく,萌芽直後2 週間以内の茎では特に感染しや すいことが報告されている(芦沢ら,1983)。それに対し, 茎枯病の発生が問題となるような現地圃場では,立茎後 の防除開始時期の遅れや防除間隔が長い事例も見受けら れる。 本稿では,露地栽培のアスパラガスに有効な薬剤散布 体系を明らかにするため,各種薬剤の防除効果と,本病 の発生生態に応じて立茎後の防除を重視した体系防除に ついて調査したので,紹介したい。 I 茎枯病に対する各種薬剤の効果(ポット試験) 本病に農薬登録のあるTPN 水和剤,アゾキシストロ ビン水和剤,ベノミル水和剤,水酸化第二銅水和剤の4 種薬剤(表―1)の茎枯病に対する予防効果と残効につい て調査した。 供試苗は7.5 cm ポットに移植した 1 年生苗(品種 ハ ルキタル )の地上部を株元から刈り取り,14 日後に再 萌芽した茎葉(1 ポット 1 茎)を用いた。試験は,各種 薬剤を25 ml/株散布した後,薬剤散布直後接種区と薬 剤散布7 日後接種区を設け,分生子濃度 105/ml に調 整し,0.01%となるよう Tween20 を加えた胞子懸濁液20 ml/株噴霧接種した。なお,薬剤散布直後接種区 は茎葉に付着した薬液が乾燥した後,接種した。苗は温25℃,湿度 100%暗黒条件下で 48 時間管理した後, ガラス室へ移動し底面給水により管理した。 接種21 日後に,茎葉の症状を発病程度別に調査した ところ,薬剤散布の直後に接種した区では,TPN 水和

福島県のアスパラガス露地栽培における

茎枯病の体系防除

畑 有季・宍戸 邦明

福島県農業総合センター

Integrated Diseases Control of Stem Blight on Outdoor Grown Asparagus in Fukushima Prefecture.  By Yuki HATA and Kuniaki

SHISHIDO (キーワード:アスパラガス,茎枯病,体系防除) 図−1  アスパラガス茎枯病の病斑 表−1 ポット試験の供試薬剤 薬剤(商品名) 希釈倍数 展着剤 TPN 水和剤(ダコニール 1000) 1,000 倍 無 アゾキシストロビン水和剤 (アミスター20 フロアブル) 2,000 倍 無 水酸化第二銅水和剤(コサイドDF) 1,000 倍 有 ベノミル水和剤(ベンレート水和剤) 2,000 倍 有

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剤およびアゾキシストロビン水和剤の発病度はそれぞれ 7.5,4.4(防除価:83.6,90.4)であり,水酸化第二銅水 和剤およびベノミル水和剤の発病度20.6,25.6(防除価: 54.8,43.8)よりも有意に低く,防除効果が高かった(図 ―2)。 薬剤散布の7 日後に接種した区では,TPN 水和剤お よびアゾキシストロビン水和剤の発病度はそれぞれ 45.0,46.3(防除価:32.1,30.2)と無処理区の発病度 66.3 に比べて有意に低かったが,薬剤散布直後接種区に 比べると発病度は高く防除効果は低下していた。水酸化 第二銅水和剤およびベノミル水和剤の発病度はそれぞれ 61.3,58.9(防除価:7.5,11.1)と無処理区との差は認 められなかった(図―2)。 II 立茎後の防除を重視した体系防除 1 茎枯病に有効な体系防除の検討(圃場試験) 本県の主要作型は,春期に収穫し,その後株養成のた め立茎期間を設け,立茎完了後に収穫を再開する二季ど り栽培である。立茎には,1 ∼ 2 週間の短期間で立茎さ せる一斉立茎や約1 か月かけて養成茎を確保する順次立 茎があり,一斉立茎では,立茎開始時に一度全刈し,そ の後の萌芽を立茎させる。茎枯病は,伸長中の若い茎で のみ感染が起こり,伸長の止まった成茎の主茎では感染 が起こらない(福富,1994)ことや萌芽直後の 2 週間以 内の茎は特に感染しやすい(芦沢ら,1983)ことから, 立茎開始直後の薬剤散布が収穫期間中の発病に大きく影 響を与えると考えられる。そのため,上述のポット試験 の結果をもとに体系防除の検討を行った。 試験は福島県農業総合センター内露地アスパラガス圃 場(品種 ハルキタル ,3年生株)で実施した。試験区は, 薬剤散布開始時期と散布間隔の違いによる防除効果を比 較するため,立茎2 日後から約 3 日間隔で薬剤散布した 立茎直後3 日間隔散布区,立茎 7 日後から約 3 日間隔で 薬剤散布した3 日間隔散布区,立茎 7 日後から 7 日間隔 で薬剤散布した7 日間隔散布区,無処理区の 4 区を設け た。5 月 13 日に全刈した後,一斉に立茎を開始し,14 日間で1 株当たり 3 本以上の立茎数を確保した。収穫は 立茎確立後に再開した。なお,立茎させる茎を確定した 後は罹病茎も維持した状態で試験を行った。供試薬剤 (表―2),散布順序については各区とも同様とし,各区に 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 TPN 水和剤 アゾキシストロビン 水和剤 水酸化第二銅水和剤 べノミル水和剤 防除価 予防効果(薬剤散布直後接種) 残効(薬剤散布7 日後接種) 図−2  アスパラガス苗に対する各種薬剤の効果 試験は1 区 20 茎,2 反復で行った. 茎葉を以下の基準により発病程度別に調査し,発病度を求め,無処理区の 発病度より防除価を算出した. 発病程度 0:発病を認めない,1:茎の一部に病斑が認められる,      2:茎の数箇所に病斑が散生する,3:全身に病斑が散生する,      4:多数の病斑が連生し萎凋枯死. 発病度=Σ(程度別発病茎数×指数)×100/(調査茎数× 4). 防除価=(無処理区の発病度−試験区の発病度)×100/(無処理区の発病 度). 無処理区の発病度は,薬剤散布直後接種区では45.6,薬剤散布 7 日後接種 区では66.3 であった.

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図―3 の通り薬剤散布を行った。初期 5 回はアゾキシス トロビン水和剤,イミノクタジンアルベシル酸塩水和 剤,TPN 水和剤によるローテーション散布とし,その 後は7 月 1 日までベノミル水和剤と水酸化第二銅水和剤 を1 週間ごとに交互に散布した。なお,栽培期間が長期 にわたり,TPN 水和剤とアゾキシストロビン水和剤の 使用回数が限られるため,イミノクタジンアルベシル酸 塩水和剤を立茎時のローテーションに有効な薬剤として 組み込んだ。また,立茎後の感染を促すために,5 月 16, 21, 23, 26 日に,散水チューブ(商品名:スミサンス イR 露地ワイド)を用いて 9 および 16 時からそれぞれ 約1 時間散水した(図―4)。 立茎開始から30 日後(6 月 11 日)に初発が確認され, 50 日後(7 月 2 日)には無処理区の 37.8%の茎で発病が 確認された。立茎開始50 日後に茎葉の症状を発病程度 別に調査した結果,立茎直後3 日間隔散布区> 3 日間隔 散布区>7 日間隔散布区の順に高い防除効果が認められ た(図―5)。薬剤散布間隔で比較した場合,初期 5 回の 薬剤を約3 日間隔で散布した立茎直後 3 日間隔散布区と 3 日間隔散布区において 7 日間隔散布区よりも防除効果 は高い傾向となり,短い間隔で散布を行うことで発病を 低く抑えることができると考えられた。これは,露地ア スパラガスに対する3 日間隔の薬剤散布が 7 日間隔の薬 剤散布よりも防除効果が高い(小林・新須,1990)とす る報告と同様であった。また薬剤散布開始時期で比較し た場合,立茎2 日後から薬剤散布を開始した立茎直後 3 日間隔散布区において,立茎7 日後から薬剤散布を開始 した3 日間隔散布区よりも防除効果はやや高い傾向とな り,立茎後に早い時期から散布を開始することで発病を 遅らせることが期待できる。 本試験での立茎方法は一斉立茎としたが,順次立茎で1 か月間連続して萌芽がおこり,一斉立茎よりも感染 の機会が増加することから,薬剤散布の効果を高めるに は一斉立茎が望ましいと考えられる。 2 立茎後の効果的な体系防除 露地栽培では,萌芽後7 日間で草丈が 60 ∼ 70 cm ほ ど伸長する。ポット試験や圃場試験の7 日後薬剤散布で 防除効果が低下した原因として,新たに伸長し薬液の付 着していない部位から病原菌が侵入し,感染することが 考えられる。そのため,立茎開始後は萌芽が見られると 同時に薬剤散布を開始し,立茎開始から15 日間は約 3 日間隔で薬剤散布を行い,さらにその期間における薬剤 は予防効果の高いTPN 水和剤およびアゾキシストロビ ン水和剤を組合せたローテーション散布を行うことで, 本病に対してより高い防除効果が得られると考えられた (図―6)。 お わ り に 露地アスパラガスの栽培現場において,適切な薬剤散 布を行うことで,より被害を軽減できると考えられる。 茎枯病は,感染から発病までに27.5℃条件で 20 日ほど 要し(福永ら,2014),立茎開始の 3 ∼ 4 週間後から発 病が始まるため,発病後の薬剤散布では感染拡大を抑え 表−2 体系防除試験の供試薬剤 薬剤(商品名) 希釈倍数 展着剤 TPN 水和剤(ダコニール 1000) 1,000 倍 有 アゾキシストロビン水和剤 (アミスター20 フロアブル) 2,000 倍 無 イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤 (ベルクート水和剤) 1,000 倍 有 水酸化第二銅水和剤(コサイド3000) 2,000 倍 有 ベノミル水和剤(ベンレート水和剤) 2,000 倍 有 区 薬剤ローテーション 15 日内散布回数/ 総散布回数 立茎直後3 日 間隔散布 TPN ➝ AZ ➝ IA ➝ AZ ➝TPN ➝➝ Co ➝➝ Be➝➝Co➝➝Be➝➝Co 5/10 (5/15) (5/19) (5/22) (5/25) (5/28) (6/4) (6/10) (6/17) (6/24) (7/1) 3 日間隔散布 ➝➝ TPN ➝ AZ ➝ IA ➝ AZ ➝ TPN➝➝Co ➝➝Be➝➝Co➝➝Be 3/9 (5/20) (5/24) (5/27) (5/30) (6/2) (6/10) (6/17) (6/24) (7/1) 7 日間隔散布 ➝➝ TPN ➝➝ AZ ➝➝ IA ➝➝AZ➝➝TPN➝➝Co➝➝Be 2/7 (5/20) (5/27) (6/3) (6/10) (6/17) (6/24) (7/1) 図−3  体系防除試験における薬剤のローテーションと散布日 「→」は3 ∼ 4 日間隔,「→→」は 7 日間隔.立茎のための全刈は 5 月 13 日に実施した. TPN:TPN 水和剤,AZ:アゾキシストロビン水和剤,IA:イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤,Co:水酸化 第二銅水和剤,Be:べノミル水和剤. 薬剤散布量については,立茎後∼5 月 20 日までは 100 l/10 a,7 月 16 日までは 200 l/10 a,7 月 16 日以降は 300 l/10 a で行った.

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きれない。萌芽後の若い茎ほど感染のリスクが高いだけ でなく,潜伏期間が長いことからも,本病に対しては立 茎直後からの予防的な薬剤散布が重要となる。 今回紹介した体系防除は,立茎後の防除を重視した薬 剤散布についてであったが,特にアスパラガスのような 永年作物では前作の発病程度が次作の発病程度に大きく 影響するため,収穫期間中や収穫終了後においても,被 害程度を低く抑えられるよう考慮しなければならない。 本病の発生は,降雨と密接に相関する(酒井ら,1992) ことから,定期的な薬剤散布に加え,降雨の前後には本 病に効果の高い薬剤を散布するなど,天候に応じた薬剤 散布も必要である。 また,収穫期間中の罹病茎の抜き取りや茎葉刈り取り 後の残渣の除去により圃場内の菌密度を低下させ,立茎 0 10 20 30 40 50 60 立茎直後3日間隔散布 3日間隔散布 7日間隔散布 防除価 図−5  体系防除試験における立茎 50 日後(7 月 2 日)の防除効果 試験は1 区 15 茎(5 株)3 反復で行った. 以下の基準により発病程度別に調査し,発病度を求め,発病度より防除価 を算出した. 発病程度 0:発病を認めない 1:病斑面積が茎の表面積の 1/3 以下,      2:病斑面積が茎の表面積の 1/3 ∼ 2/3,      3:病斑面積が茎の表面積の 2/3 以上,4:茎全体が枯死. 発病度=Σ(程度別発病茎数×指数)×100/(調査茎数× 4). 防除価=(無処理区の発病度−試験区の発病度)×100/(無処理区の発病 度). 立茎50 日後における無処理区の発病度は 16.1 であった. 0 5 10 15 20 25 5月13 日 5月20 日 5月27 日 6月3日 6月10 日 6月17 日 6月24 日 7月1日 降水量︵ mm︶ 図−4  体系防除試験における試験期間中の降水量および散水日 図中の矢印は散水チューブによる灌水日を示す.

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前の畦面への盛り土処理により伝染源の跳ね上げを防止 するなど管理作業における基本技術を徹底し,総合的な 防除を実施することが重要である。 引 用 文 献 1) 芦沢俊行ら(1983): 山梨農試研報 23 : 99 ∼ 115. 2) 福永真史ら(2014): 植物防疫 68 : 683 ∼ 688. 3) 福富雅夫(1994): 日植病報 60 : 356(講要). 4) 小林雅昭・新須利則(1990): 長野農総試報 農業部門 18 : 117145. 5) 児玉不二雄ら(1984): 日植病報 50 : 95 ∼ 96(講要). 6) 酒井泰文ら(1992): 広島農技セ研報 55 : 97 ∼ 107. 7) 竹川昌宏・相野公孝(1994): 兵庫農技術研報(農業) 42 : 2528. 立茎開始後日数 薬剤 感染リスク 2∼3 日後 TPN 水和剤 高 6 日後 アゾキシストロビン水和剤 9 日後 イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤 12 日後 アゾキシストロビン水和剤 15 日後 TPN 水和剤 立茎期間︵一斉立茎の場合︶ 図−6  立茎期間における効果的な体系防除 イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤については,使用時期が「収穫7日前」 の登録のため,注意して使用する.

発生予察情報・特殊報

(27.9.1 ∼ 9.30)

各都道府県から発表された病害虫発生予察情報のうち,特殊報のみ紹介。発生作物:発生病害虫(発表都道府県)発表月 日。都道府県名の後の「初」は当該都道府県で初発生の病害虫。 ※詳しくは各県病害虫防除所のホームページまたはJPP―NET(http://www.jppn.ne.jp/)でご確認下さい。 トマト:葉かび病(レース4.9)(高知県:初)9/14 トルコギキョウ:えそ輪紋病(熊本県:初)9/15

参照

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