産業部門の省エネルギー指標と省エネ投資
著者
木船 久雄
雑誌名
名古屋学院大学論集 社会科学篇
巻
36
号
1
ページ
77-89
発行年
1999-07-31
URL
http://doi.org/10.15012/00000798
名古屋学 院大学論集 社会科学篇 第36巻 第1号 (1999年 7月)
産業部門の省エネルギー指標 と省エネ投資
木
船
久
雄
目次 は じめ に 真実の省エネル ギー指標 とは 工不ル ギー消費原単位が持つ意味 省工不ル ギーの費用 と効果 エネル ギー消費原単位の国際比較の誤解 おわ りに は じ め に
COP 3(気
候 変動枠組み条約第二回締約国会 言説 1997年 12月)で
採択 された京都議定書で は,主
要国 に関す る2010年
前後の温室効果 ガ ス排出削減 目標が定め られた。わが国では,
日 標達成の方策 として,化
石燃料 に比べて温室効 果 ガスの排 出量が少 ない原子力や新エネルギー 導 入,お
よび省エネルギーの推進が重要な役割 を担 うべ きもの として位置づ け られている。政 府 は,省
エネルギー法の改正 (1998年)に
よっ てエネル ギー消費機器の省エネ判断基準 を強化 す ることや工場等事業場のエネル ギー管理の強 化 を進めている0。また,経団連 を中心 として主 要業界では,省
エネルギーを施策の中心 としたC02削
減 目標 の ための 自主行動計 画 を発表 し てい る。 地球温暖イb寸策が国際的 に議論 され るように なって以来,各
国の省エネル ギー進捗度の上麟交 を行お うとい う重力きが活発化 している。そ して, (1)わが国の場合,京都議定書の日標達成は現行施策 だけではかな り難 しい。拙著 (1999)参照。 省エネル ギー度合 いやエネル ギー効率 を国際比 較 で きる統一的な指標 を作成 し,政
策立 案 に役 立て ようという議論がある(2)。 しか し ,デ_夕
の 利用可能性や各国力斗包える経済的社会的背景の 差違 を考慮すれば,そ
の指標 は一義的に定め る ことはで きない。 とりわけ,製
造業 を中心 とし た産業部門では,事
実上 それが不可能である。 無理 にその指標 を作成 し利用す ることは,政
策 担 当者 を誤った方向に導 きかねない。 そこで本稿 では,産
業部門の省エネル ギーに 関す る指標 を作成,あ
るいは利用す る際の問題 点 を整理す る。本稿の構成 は,次
の通 りである。 まず,真
実の省エネル ギー指標 というものがあ るのか,
とい う問題提起 を行 う。次いで,一
般(2)イ列えば, Schipper, et al.(1992), ADEヽ 4E (1994),OECD/1EA (1997),APERC(1998)な ど。
ADEMEは
フランスのエネルギー管理庁であ り,EUの
資金援助を受けなが ら省エネ1計票の各国 比較 を行っている し,OECD/1EAは
国際エ ネル ギー機関 として,同様のプ ロジェク トを進めてい る。 さらにAPERCも
資金は日本の通産省である ものの,環大平洋諸国の省エネ指標比較 を研究プロ ジェク トとしている。77
-名古屋学 院大学論 集 に省エネルギー指標 として広 く利用されるエネ ルギー消費原単位について
,そ
の問題点を整理 する。 さらに,産
業部門における省エネルギー の費用対効果を分析する。そ して最後に,省
エ ネルギー指標の国際1麟交をする場合,陥
りやす い誤解について言及する。1.真
実の省 エネルギー指標 とは
省エネルギーの実態を正確 に表現することが 可能な指標 といううものが,果
た して存在する のであろうか。必要に迫 られなが ら,筆
者 自身 もそれ らしき指標 を幾つか作成 し,利
用するの だが,そ
こには性1尼たる思いがあることは否め ない。1.1
個別工場 と統計上の省 エネルギー指標 エ ネル ギー多消費の個 別企 業や工場 内部 で は,エ
ネルギー消費実態 は内部データとして把 握 されている。そのため,主
要 な生産プ ロセス あるいは工場単位では,個
々の省エネルギー 目 標 を設定す るこ とが可能であ る。 こうした例 で は,製
造プ ロセスでの純粋かつ技術的なエネル ギー消費の 目標 として,省
エネルギー指標 は採 用 され る。 これは言 うなれば,
ミクロ技術的な デー タを基礎 とした省エネルギー指標 というこ とがで きる。 しか し,この ような省エネル ギー指標 は,デ ー タ利用可能性 の問題,真
実 は個別企業内で しか 把握 で きない,
とい うことか ら外部の人間力滞1 用で きる ものではない。つ ま り,一
般化 はで き ない し,客
観的かつ広 く利用可能な指標 とはな りに くい。 それでは,外
部の 人間が利用 可能 な指標 とし ては, どの ような ものがあるのか?
答 えは, 様 々な統計 を利用 しなが ら,省
エネルギーの実 態 を表現 しているであろ うと思 われ る指標 を作 ることである。 一般 に省エネルギー指標 として用い られ るも のは,単
位 当た りのエネル ギー消費量である。 いわゆる,エ
ネル ギー消費量 を分子 とし,別
の ある数値を分母 として計算 される「エネルギー 消費原単位」である。分母 として用いられる値 は,時
には貨幣単位 (付加価値額や生産額)で
あった り,物
理的な生産量であった りもする。 産業分類に従いなが ら,付
加価値額や主要な製 品生産量 (あるいは生産指数)を
分母 とするの が一般的である。1.2
統計 による原単位の問題 エネルギー消費原単位 を計算す る際には,や
む を得ず公開 された統計書 に依存せ ざるを得な い。 しか し,そ
れゆえに統計その ものが抱 える 問題 が存在す る。利用可能なデー タは,い
ずれ もサ ンプル を集合 した値 である。例 えば,食
品 産業 に計上 され るデータは,
ビールエ場で消費 され るエネルギー量 も缶詰工場でのそれを も合 算 してい る。 また,分
母 に用 い られ る値のサ ン プル集合 と,エ
ネル ギー消費データの元 となる 工場サ ンプルの集合は必ず しも同一 とは限 らな い。 これは,個
々の統計が持つ 目的が異なって いるために,
自ず と生 じる問題 である。 さらに統計的な問題 として, どんな統計書 を 根拠 とす るか に よって,実
態 として把握 され る 値 が異 なって くるこ ともある。例 えば,エ
ネル ギーデータに限定す るだけで も次の ような問題 が ある。 一般 に,エ
ネル ギー需給のデー タ としては, エ ネル ギーバ ラ ンス表(3)が用 い られ る。しか (3)通 産省編『総合エネルギー統計』やOECD/1EA, Energy Balance Tables,な ど。産業部門の省エ ネル ギー指標 と省 エネ投 資 し
,エ
ネル ギーバ ランス表では 自家発電など特 殊 な扱 いを しているために,産
業界が把握 して いるエネルギー消費量 とは異なる(4)。 これには , 第一 にエネル ギー転換効率の問題,第
二 には統 計表現 として一次ベースか二次ベースか といっ た問題がある。 第一のエネル ギー転換効率の問題 は,次
の よ うな問題である。発生 した電力量 とそのために 投 入 され るエ ネル ギー量 との比 率 は,エ
ネル ギー転換効率 (あるいは熱効率)と
して把握 さ れ る。一般電気事業者では,発
生 と投入が明確 であるために,こ
の効率 は実態 を表現で きるも のの,
自家発電についてはそれが把握で きてい ない。 この理由は,数
が多いこと,発
電形式や 投 入燃料 も多様 であるこ と,か
らである。その ため,自
家発電 に関 しては,発
生電力量 (自家 発 自家消費)を
基 に,一
般電気事業者のエネル ギー転換効率 を用いて,投
入燃料 を推計 し,そ
れ を統計値 に用いる場合が多い。 また,第
二の一次ベースか二次ベースかの間 題 については,以
下である。エネル ギーバ ラン ス表上では,
自家発電への投 入エネル ギーは, 最終エネル ギー消費ではな く,転
換部門 に分類 されている自家発電部門への投入 とされ る。そ して,工
場 で 自家消費 された電力量だ けれ 最 終エネル ギー消費の産業部門に計上 され る。つ ま り,自
家発電の需要端の値が最終エネルギー 消費になる。 これはこれで,バ
ランス表 として は整合的である。 しか し,個
別工場や企業 あるいは産業団体 に とって問題 なのは,
自家発電用の購入燃料 を合 (4)産業界においては, 自家発電の投入燃料 も製品製 造に必要な燃料 として把握 している。しか し,エネ ルギーバランス表では,こ の投入燃料は転換部門に 計上 され,産業部門 とい う最終ユーザーに渡 るの は, 自家発自家消費分のみである。 めて,彼
らが消費 したグロスのエネルギー量で ある。それゆえ,省
エネル ギーの観点 か ら彼 ら に とって重要なのは,購
入エネルギー総量 をど れだ け低下す ることがで きるか,
とい うことな のである。1.3
真実 を反映 しに くい原単位 上 の ような問題 によって,統
計デー タを用い てエネル ギー消費原単位 を計測す る限 り,真
に 技術的な省エネル ギーの実態 を表す値 を得 るこ とは至難である。 また,実
際 に作成 された原単 位 に関す るイメージも評価主体 によって異なっ て しまう。つ まり,統
計書 をベースに解析 を進 め る研究者 と個別工場のデータを日常的に把握 しているエネルギー管理士の現場感覚 とは,大
きなズ レが生 じてい る。 しか し,現
実問題 としては,(それがベス トの 方策 とは思 えないが,公
開性や一貫性が保 たれ る唯一の次善策であるとい う認識の元 に),省 エ ネル ギー指標 として,公
表 された統計データを 用 いてエネル ギー消費原単位 を用いる。そ して, それが省エネル ギーを示す一つの指標であると せ ざるを得ないのである。 技術的な省エネル ギー可能性量 と実際の省エ ネル ギー実現性量 とは,あ
きらかに異なる。 し か も統計データによる利用可能な指標 は,純
粋 な技術的な省エネルギー指標ではない。統計か ら作成 されるエネルギー消費原単位 を省エネル ギー指標 として利用す る際には, こうした事情 があることを理解 してお くことが重要である。2.エ
ネルギー消費原単位 が持 つ意味
やむな く省エネルギー指標 として,統
計デー タによるエネルギー消費原単位 を用いる場合,79
-名古屋学院大学論集 前述 した統計上 の問題の他 には どの ような留意 すべ き事柄があるのだろうか。以下では
,そ
れ らを整理 してみ る。 まず問題 となるのは,こ
の計算 をす る場合に 用いる分母 としては何が適 当なのか,
とい うこ とで ある。 また,計
算 されたエネル ギー消費原 単位 には,
どの ような意味が包合 されているの か とい うことも明 らかに しておかな くてはな ら ない。2.1
マネタ リー原単位 と物量原単位 原単位計算の分母 として用いる値 には,付
加 価値額や生産額 といったマネタ リー・ベース と 物理的な生産量 とがある。 また,産
業部門全体 でエネルギー消費原単位 を計測 した場合,そ
の 原単位 には次の ような要素が包合 されている。 それ らは,付加価値額 を分母 に用いた場合 には,①個別製品製造に関わる技術的なエネルギー消
費効率
,②
製品の付加価値率
,③
産業構造
,④
産業内で抱える製品構成
,な
どである。分母と
して
,付
加価値額の代わりに物理的な生産量を
用いたとしても
,①
のほかに③産業構造
,④
産
業内の製品構成が言十測 した原単位の中に合まれ
ることは避 けられない。 産業分類 をで きるだけ細か くして原単位 を計 測す ることが,こ
う した要素 を排除す る方策で あ る。 しか しその場合 には,デ
ー タ利用可能性 とい う別の問題 に直面す ることになる。 付加価値額 を分母 に用いた値 と,物
理的な量 をそれに用いた場合 とでは,計
測 された原単位 の傾向に差違が生 じる (図1参
照)。 こうした差異は,何
を原因 としているのか。 両者 の関係 を次式の ように捉 え るこ とに よっ て,そ
の原因の一端 を知 ることがで きる。 びCυy
E
(1)E
び
(γIIP
びευ= E E IIP
/=7戸
7
(2) (3) ここで,Eは
エネル ギー消費量,7は
付加価 値額,IIPは
物理的な生産量(鉱工業生産指数) を示す。そ して,欲
"は
付加価値額 を分母 とするエネルギー消費原単位,秋γ は生産物量を分
母 としたエネルギー消費原単位を示 している。
(3)式によって
,び
Cυは①生産物量で測った
1973==100 1973 1978 1983 1988 1993 (資料),重産省 『総合エネルギー統計』,通
産省 『鉱工業指 数年報』,経
済企画庁 F国民経済計算』 図1
製造業のマ ネ タ リー原単位 と物量原 単位 =>― llPあた り原単位 ―←‐ 付加価値額 あた り原単位産業部門の省 エネル ギー指標 と省エ ネ投資
原単位
(E/1P)と
②生産物量 と付加価値額の
相対比 (IIP/7)と の積であることが示 され
る。後者を付加価値率と読み替えれば
,び
Cυは
物量原単位 と付加価値率との積である。それゆ
え
,
欲γ と び
Cυとの差は
,「付加価値率」に
よって生 じていることが解る。
2.2
産業構造・ 製品構成変化の役割 また,産
業部門全体 で付加価値額 を分母 とし た原単位 秋"は
,さ
らに他の要素 を も内包 し ている。 F F」ひ
ο
υ
=予
=澪
ザ
旨
カ (4)式は, び
Cυが掴別の“
グ
"産業で示される
付加価値率
“
Pグ/力
)や (力/7)で
示される
「産業構造」を内包していることを示している。
ここで,個
別 “′"産
業について,生
産物量を 分母 としたエネルギー消費原単位 を(5)式とし よう。 rr″ __:⊇二
=,=E生
_=聾墨量
υツ°
IIPグ711Pク・
IIPZ・ (5) (5)式の中にある
(E″/11P″)は“
グ
'産業内に
存在する個別製品 “
ノ のエネルギー消費原単位
である。また
(〃P″・
/11Pグ)は“
グ
''産業内部の「製
品構成」を示す。 この (5)式 を (4)式 に代入すれ ば,次
の (6)式 が得 られ る。 びCυ E 一7 Σ z_Eグ
IIPz・ アグ苧
7万丁
・
‐ 7 ・7
_Eグ
グ IIPグ グ IIPz・ アグ苧可
爾乾戸
・
三
互所
・ フ戸・ア
(6) (6)式は次のことを意味 している。それは
,び
Cυとして得 られる値は
,①個別商品のエネル
ギー消費原単位
,②
産業内の製品構成
,③
付加
価値率
,④
産業構造
,という要素で構成される
,…
Eググ
^..IIPグ
′
αη
=フア
訪
弓μη
=IIP戸
'ということである。
2.3
原単位変化の要因分析 さらに,(6)式
における右辺の各々の項 を以 下の ように書 き換 える。 そ して,一
次同次 を前提 とすれば
,過去の ひ
Cυの変化
4E/7)は
,上の
4つの要素に分解 して
,実
際に計測するこ
とができる。
. IIPグ ν′Z=―‐ァ百.γZ δ
z=
カ7
′E_鳥 a_1
47
7
7耳
=Σ Σ
(∠α″
+αれ
_1)。(∠β″十βれ
_1)・
(∠γグ
+″
`_1)。(∠α+αι
_1)一ΣΣαれ
_1・βれ
_1・″
_1・δ
z・′
_1(7)
ゆえに,∠
―
ラ
ー
=77∠
α
ク
・
・
β
″
・
・
ガ
・膨
+不
平α
″
・
・
∠
励・
・プ°
α
+不
平α
″°
″・
∠
″
・
・
α
+不
平α
″
・
・
β
″
・
・プ°
∠
α
+
(8) (8)式 の右辺第一項 は,物
量 当た りのエネル ギー消費原単位の変化(技術的 な省エネ要 因), 第二項 は産業 内の製品構 成の変化 (プロダクツ ミックス要因),第
二項 は付加価値率の変化(高 付加価値化要 因),そ して第四項 は産業構造の変 化 (産業構造要因), とい うことになる。 上 の ような式 を用いて,1970年
代以降の製造 業全体 のエネル ギー消費原単位変化 を分析 した 結果が,図
2で
ある。ただ し,こ
こでは製品構 成の変化 は織 り込んでいない。付加価値額 あた りのエネル ギー消費原単位の変化 を大 き く左右 И 一ア IIPグ-81-たりの工不 2 0
-2
-4
-6
-8
-10 -12 -14 -16 -18 名古屋学 院大学論集 要因別寄与 減少量 Kca1/円 (1990年価格) Kca1/「](1990年価格) 産業別寄与 減少量Kca1/円 (1990年価格)原単位Kcalノ円(1990年価格) 16 -1214-14
12 -16 lo -18 1970 1975 1985 1990 1995 1970 1975 1980 1985 19901995 図2
エネル ギー消費原単位変化の要因分析 Kca1/円 (対前年との差) 一 一 一 一 1 一 30 28 26 24 22 20 ︲8 30 28 26 24 22 20 18 16 14 12 10 ⅢⅢl化学 嘴勿 鉄鋼 匡≡ヨ窯業土石 隧茫 紙パルプ 睡巫図食品 圏圏 繊維 歴蒻 非鉄金属 圏翻 金属機械 匡函日その他製造 に 残差 一 ― 実績 0.4 0.3 0.201
1984 1987 1990 1993 1996 (資料)通 産省[工不ルギー消費動態統計」,通 産省『総合エネルギー続計」他EE]産
業構造変化 皿皿]高付加価値化 [三ニコ プロダクトミックス変化 彫%Z物
量 あた り原単位 ―……実績 となるが,通
産省『石油等消費動態統計』を用 いることによって,産
業の一部に限られるもの の,「プロダクッミックス要因」の抽出 も可能 と なる。その計測結果は,図
3に 示 している。図 に示 されるように「プロダクツミックス要因」 がエネルギー消費原単位変化に及ぼ してきた影 響は,さ
して大 きくない。この理由は,個
々の 製造業においてエネルギー消費の大半が,原
材-01
-0.2-03
-0.4 図3
プ ロダクツ ミックスの変化 を織 り込んだ要因分析してきたのは
,①
物理的な生産量で測ったエネ
ルギー消費原単位
(技術的な省エネ要因
),②
付
加価値率の変化であることが解る。また
,こ
う
した変化をもたらした産業別の寄与を見れば
,①化学,②鉄鋼,③窯業土石,④紙パルプといっ
たエネルギー多消費産業であることも読みとれ
る。
また,利
用で きるデー タ期 間 は1983年以降 付加価値あたリエネルギー消費原単位‐ビ 圏ミ毯物量原単位 匡=]産
業構造変化 [[[皿 高付加価値化 ■■│その他 あた り産業部門の省エ ネル ギー指標 と省 エネ投資 料の粉砕 。溶解 。加熱 といった中間製品までを 作るいわば製造工程の上流部門において生 じて いるためであろう。しか し
,そ
うだ として も, プロダクツミックス変化がエネルギー消費原単 位に及ぼす影響はゼロではない。3.省
エネルギーの費用 と効果
3.1
省エネルギー投資 とエネルギー価格 付加価値額 を分母 として用 いて計算 され るエ ネル ギー消費原単位の変化は,上
で述べ た。そ して,原
単位低下の大半は,物
理的な生産量 当 た りで計算 され るエネル ギー消費原単位 の低 下,お
よび付加価値率の変化 に依存 していた。 では,物
理的な生産量で計算 され るエネルギー 消費原単位の低下は,何
によって もた らされた のであろ うか。 短期的には,生
産工程管理の強化 を行いエネ ル ギーを節約す るということもあろう。しか し, 長期的には,省
エネルギーを目的 とした生産 ラ イ ンの変更や,技
術革新 を具現化 させ る省エネ ル ギー投資 とその資本ス トックに依存す る。 ま 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 1980 図 4 た,省
エネル ギー投資が実行 され るか否かは, 投下資本 に対す るエネル ギー削減量 とい う便益 との相対関係 に依存す る。つ まり,省 エネルギー 投資の費用対効果が鍵である。 そこで,製
造業 に関す る省エネル ギー投資 と その効果 を検討 してみ よう。省エネルギー投資 額 お よびその資本 ス トックに関す る整合的な利 用可能なデータは存在 しない。そのため,
日本 開発銀行 お よび通産省・ 産業構 造審議会の設備 投資動向調査 を元 に,筆
者が1佳計 した(5)。 得 られ た値 を概観 す る と,1990年
代 に入っ て,説
明 に窮す るような動 きが見 られ る (図 4 参照)。 例 えば,フロー としての省エネルギー投 資 は,エ
ネル ギーの価格水準 に依存す る筈であ る。製造業の1キロ リッ トルあた り平均エネル ギー価格0は
,原
油価 格 が最 も高位 にあった 1982年に66,000円であった。その後急落 した 後1990年代 に入 ってか らは,ほ ぼ50,000円前 後で推移 している。C重
油価格の変動幅 に比べ て,平 均エネルギー価格のそれが相対に小 さ く, 高止 ま り傾向にあるのは,単
価が高 い電力等の エ ネルギー源のウェイ トが増加 しているためで 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 エネルギー価格(円/KL,1990年 価格)
省エネ投資額(10億円,1990年 価格) 1985 1990 1995 製 造業 の エ ネル ギー価 格 と省 エ ネル ギー投 資83
-」]― 加重平均 エネル ギー価格―△―C重
油価格 一 省エネ投資額 1978名古屋学 院大学論 集 ある(7)。 こうしたエネルギー価格の動き に対 して
,省
エネルギー投資額は,湾
岸戦争前後の 1991年 に山を迎えてお り,1980年
代初頭 を大 きく上 回っている。この時期,省
エネルギー投資を急 激に拡大 させている産業は,鉄
鋼業である。こ の産業での主要エネルギー源は石油ではな く, 石炭系エネルギーであることを考慮すると,上
のような行動が何に由来 しているのかは説明が つかない。 (5)省エネルギー資本ス トックなるデータは存在 しな い。そのため,ここでは設備投資に関するデータを 元に筆者が推計 した。推計の根拠 となる省工不ル ギー投資データは,①
日本開発銀行『調査 (設備投 資動向調査)』 および通産省産業政策局『主要産業の 設備投資計画―その現状 と課題―』などである。両 者は省エネルギーを目的 とした設備投資計画・実績 を報告 している。 しか し,前者では当該項 目につい てのデータは 1989年 まで しか利用で きず,両者 と もにデータは名目値であ り,全数調査ではない,と いった問題がある。それゆえ,ここでは両者のデー タを統合 しなが ら,設
備投資額合計は『国民経済計 算』の民間企業設備投資額 をコン トロール トータル スとして用い,個別産業への配分 を,上記のデータ に従った。さらに,省エネルギー投資額は,個別産 業の投資額合計にしめる省エネルギー投資比率 (開 銀,通産省データか ら計算)を 乗 じて求めた。こう して求めた各年の省工不ルギー投資金額に対 して, 残存簿価10%,減耗率5%という前提 をおいて,そ れを累積 して省工不ルギー資本ス トックとした。 (6)平均エネルギー価格は,エネルギー源別消費量 を 加重 として産業向け二次エネルギー価格 を平均 し た。 (7)製造業のエネルギー消費計 に しめるC重油の割 合 は,1973年度 に35%であった が,1980年度 20%,1990年度7%,そ
して 1997年 度では4%台
にまで低下 している。3.2
産業別省エネルギー資本ス トックの効果 省エネルギー投資の毎年の累積である省エネ 資本 ス トックは,減
耗分 を除いて も徐々に高 まって来た。そのため,ス
トックとしての省エ ネ設備が残存する限 り,一
定量の省エネルギー は,確
実に効果 をもたらしているはずである。 ここでは,以
下のような式を用いて,個
別産 業における物量ベースのエネルギー消費原単位 変化に及ぼす①省エネルギー資本ス トック,②
製品構成,③
技術革新の影響 を計測 してみる。 Eん 〃Pz・ ` /tα・
EC機
,β
oPR(フИ
あ
,γ
・
赫若リ
(9) 左辺 (E4/11Pら)は,生産物量で測 ったエネル ギー消費原単位,ECκ
z・ `は“グ ''産業の省エネル ギー資本ス トック,PRO″
あは,“ ′"産
業内の 製品構成 を示す。省エネルギー資本ス トックの データは,先
の省エネル ギー投資額 を元 に推計 した ものである。 製品構成 を表現す るデータとして,具
体的 に は次の ような指標 を用いた。“グ'産
業 におけ るPRO″
グは,同
産業内における,上辟交的エネル ギーを多 く消費する商品の生産物量 “′'と “グ' 産業の活動平均 を示す生産指数 との相対関係で 捉えた。また,最
終項の (E4_1/1Pん_1)は技術 革新 を示す もの とする。また,α,β ,γ は各変 数が持 つパ ラメータである。ここでは,①
化学, ②鉄鋼,③窯業,④紙パルプ といったエネルギー 多消費産業4業
種について,(9)式 に従い,最
小 二乗法 を用いて各々のパ ラメータを推計 した。 その結果は,表
1に 示 される。 図6は
,得
られた推計式をもとに,生
産物量 当た りのエネルギー消費原単位変化をもたらす産業部門の省 エネル ギー指標 と省 エネ投資 表
1
省エネル ギー投資が もた らす効果推計 定数項 β γAR2 DW
推計期 間 紙パルプ 25.05 (1.03)-0.00
(-0.29) 11.36 (0.41) 0.65 (3.57) 0.905 1.721 (1980-1996) 化 学 0.61 (8.61) -116.32 (-2.04)-0.02 295
(-1.76) (3.
0.975 1.608 (1978-1996) 窯業土石 18.97 (0.47) -0.02 (-1.71) 74.77 (2.10) 0.38 (2.29) 0.915 1.466 (1978-1996) 鉄鋼(*) (-1.23)-0.03
0.58 (1.95) -0.004 (-0.01) 1 り 6 . 10 0.844 0.334 (1978-1994) (注) 鉄鋼(*)の
推計 には,両
対数 を用い,それ以外の産業 は線型 とした。 また,鉄
鋼の製品構成 には粗鋼/鉄鋼比率 (上段),電炉鋼/粗鋼比率 (下段)の 2項目を採 用 した。 基本式 は,Eグ/′′π =/(α・ECκz・,β・PRO″
グ,γ。(Eグ(-1)/11Pι(-1))ここで,Eグ/1π “″'産業のIIPあた リエネル ギー消費原単位 Eα
Oは
,“グ"産
業の省エネルギー資本 ス トックPRO″
グは`7'産業の製品構成 を示す。 石油換算千 トン/1P 石油換算千 トン/1lP 400 3,100 匡コ 紙パルプの寄与 隆笏 窯業上石の寄 与´ ロコ 化学の寄与 囲囲 鉄鋼業の寄 与 匡 =]その他産業の寄与 一 製造業計の1lP原 単位 (右軸) 0 2,700 2.300 1.900 1、500 1,100 1980 1985 1990 1995 製造業 エネル ギー消費原単位低下 の産業別寄与 -400 -800 -1200 -1600 1970 1975 図 53要
素 (省エネルギー資本ス トック,製
品構成 変化,技
術革新)の
寄与を示 している。この図 は,エ
ネルギー多消費の4産
業 (鉄鋼,化
学, 窯業土石,紙
パルプ)についての考察であるが, 省エネルギー資本ス トックの効果が,時
間 とと もに徐々に希薄になってきていることが解 る。3.3
省エネルギーの限界費用 推計 した省エネルギー資本ス トックと省エネ ルギー量から,省
エネルギーに関わる平均費用(4CC),限
界費用(″Cc)を
計算 してみる。そ れぞれは順 に (10),(11)式 に よって計算 され る。85
-ィ、 分ま
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C%・IIP`)一(びευι・IIPι)=(びC%―
びCυ `)・ IIPι(12)
ここで,ECι
は基準年か らみた “′"年の省エ ネル ギー量である。この値 は,(12)式
で示す よ うに,基
準年のエネルギー消費原単位 と “ノ 年 のそれ との上辟交か ら計算 している。 計測結果 を見 ると,省
エネル ギー資本ス トッ クの増大 につれて,省
エネルギーの平均費用お よび限界費用の増加傾向が明 らかに伺 える (図7参
照)。両者 は,1980年
代半ば までは逓減傾向 を辿 った ものの,後
半か らは逓増傾向を見せ て いる。1990年代 に入 ると,明
らかにおか しな動 きを示 して くる。つ まり,省
エネル ギー資本ス トックは増大 してゆ くにも関わ らず,省
エネル ギー量 は減少す る方向を示すのである。 省エネル ギー限界費用でみれば,80年
代初頭 は平均 エネル ギー価格の2∼3倍
で あったが,80年
代半ばには6倍
を越 えるようになった。こ 名古屋学院大学論集 石油換算千 トン/1lP 3.1 2,700 2.300 1,900 1,500 1,1 (10) の倍率は,投 資回収年 と読むことがで きるため, 既 に80年
代半ばか ら,省
エ ネル ギー投資の費 用効果 は大 きく減退 したことになる。 また,先
の倍率 を平均費用で見れば,80年
代 は5∼6倍
であった ものが,90年
代 には10倍
を越 え,1995 年 に15倍
になっている。 この ような傾向は,省
エネルギー投資の限界 効用が,明
らかに低下 していることを示す もの である。 また,石
油価格 に比べ て,平
均 エネル ギー価格 は相対的に高い とはいえ,現
在 は省エ ネル ギー を目的 とした投資が短期間で回収で き るような状況でないこ とも解 る。4.エ
ネル ギー消費原 単位 の 国際比較 の
誤解
産 業部 門の省エ ネル ギー指標 と してエ ネル ギー消費原単位 を用い,そ
れ を各国データで比 較 しようとい う場合 には,重 大 な注意 を要す る。 研究者 に よっては,他
国の原単位 を引用 しなが ら, 自国の省エネルギーの可能性 を議論す る者 もい る。 しか し,こ
の ような議論 は,明
らかに 石油換算千 トン/1P 400 0 -400 -800 -1200 -1600 1970 1975 1980 1985 1990 1995 注)4業
種 は表1に示 した鉄鋼,化
学,窯
業上石,紙
パルプである。 図6 4業
種 にお け る省 エ ネ資本 ス トック等の効果 省エネ資本ス トックの寄与 製品構成変化の 寄与 技術革新の寄与 製造業計の1lP 原単位(右軸)1996年 に _│
\
\
― 平均費用 ―{卜
限界費用 ―‐O―.平均エネルギー単価 ― ――・ 省工不資本ス トック 1990年 1981 1990年 1981年 …0…
…………()………――O―C)… ――OO O・―◎Ⅲ…―O
産業部門の省エネル ギー指標 と省 エ ネ投資 価格・費用(円/KL,1990年価格)
省エネ資本ストック(1990年価格,10億円) 800,000 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 0 5 lo 15 20 25 30 35 40 省工不ル ギー量 (原油換算百万KL) (注)省エネル ギー量 は,1980年を基準 として消費原単位固定 に よって求 めた。 図7
省エネル ギーの限界費用・ 平均 費用 資 本 生産等量 曲線 労働等 Kl A K2 B 0El
図 8 政策担 当者 に誤解 を生 じさせ るものであろう。 エネルギー消費原単位 を用いて国際間の比較 が有効であるのは,そ
の前提 として,上 辟交す る 国同士の個別産業において,①
付加価値率,②
製品構成,が
同一でな くてはならない。さらに, 仮にそれ らが同一条件であったとしても,③
生 産要素の相対価格が同一であるかどうかが大 き な問題である。 経済的に問題にされるべ きことは,特
定の生 産要素価格の下で,最
適な生産要素の投入が行E2
エネルギー 生産等量 曲線 とエ ネル ギー消費原単位 われているか否か,で
ある。つ ま り,χ
非効率 な生産 を していないか どうか,で
あ る。それゆ え,エ
ネル ギーが豊富でエネル ギー価格が他の 生産要素に比べて相対的に安価な国において, 生産量 当た りのエネル ギー消費原単位が大 きい のは当然である。それは,
自国が図8上
のA点
にいるのか,B点
にいるのかで 自ず と異なるの である。A点
であればエネルギー消費原単位 はElで
ある し,B点
であればE2で
ある(8)。技術 的 に可能 な省エネル ギー程度 とエ コノ ミカルな87
-名古屋学 院大学論集 省エネル ギー程度 とは明 らかに違 うのである。 それゆえ
,エ
ネル ギー消費原単位の国際上辟交 か ら,省
エネルギーの可能性の有無 を声高に論 ず るの は,極
めて短絡的で政策立案者 に誤解 を 誘導す るような ものである。国際的な省エネル ギー指標 を開発 し,利
用す る場合 には,以
上 の ような問題点が存在 していることを,忘
れては な らない。 お わ り に 本稿では,産
業部門の省エネル ギーに関す る 指標づ くり,お
よびそれが内包 している意味ぅ さ らには省エ ネル ギー実績 の要 因分析 な どを 行 って きた。得 られた主要 な結論 は,次
の通 り である。 第一 に,統
計 に依存せ ざるを得ない以上,真
実のエ ネル ギー効率 を表現す る指標 は存在 しな い。第二 に,次
善の策 として,一
般 に統計デー タを基 にエネルギー消費原単位 をその指標 とし て用いるが,そ
の際 には付加価値比率,技
術的 原単位,産
業構造,製
品構成な どの要素が内包 されていることに留意すべ きである。第二 に, 長期的な省エネル ギーの実現 は省エネ投資に依 存す る。 しか し現段階では,省
エネルギー投資 の限界効用 は小 さ く,エ
ネル ギー価格 も相対的 に安価であることか ら,省
エネ投資は費用効果 的な状況 にない。第四に,先
の省エネル ギー指 標 の国際上辟交か ら,単
純 に政策論 に結びつける のは極めて危険である。 今回紹介 した省エネル ギー投資に関す るマク ロ的な経済分析 は,オ
リジナルデータの信頼性 を合めて,そ
れ を利用 した推計・整合1生な ど幾 (8)このような観点か ら国際比較 をしようという試み に, :IIinchy, ■et al.(1998)がある。 つかの問題 を抱えている。 しか し,現
状我々が 利用できるデータ範囲 としては,
これが限界で あることも事実である。この問題に関するデー タや分析手法の改良を今後の課題 としたい。参考文献
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年版 10.通産省,『鉱工業指数年事瑚,各年版 11.通産省,『総合エネルギー統言│』,各年版 12.日本開発銀行,『調査―設備投資調査特集 号―』,各 年2月号産業部門の省エ ネル ギー指標 と省エ ネ投資
江
′ヽ不高は,``Energy Efficiency lndicators for lndus‐
try in Japan'' と題 して, APERC(Asia Pacific Energy Research Centre)liイ桂σ)Workshop on
Energy Efficiency lndicators in lndustry,(Sep―
tember 21-22,1998,Tokyo)に て幸貫告 した内容を加 筆修正 した ものである。また,本稿 は,1997年度名古 屋学院大学研究奨励金 を受けた研究成果の一部であ る。