• 検索結果がありません。

【書評】Markov Chains(Gibbs fields, Monte Carlo simulation and Queues)(P. Bremaud著)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "【書評】Markov Chains(Gibbs fields, Monte Carlo simulation and Queues)(P. Bremaud著)"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

【書評】 P.Bremaud著

Markov Chains

(Gibbsfie】ds,MonteCar[osimulatjonandQueues)

Springer−Verlag1999年 本書もすべてにわたり完全な証明をつけているわけ ではないが,論理的な枠組みが明快で基本的な結果は きちんと証明されているし,少なくとも何を勉強すれ ばよいかを知ることができる.確率論の一番の基礎で ある確率空間については測度論的な解説はほとんどな く,初等的な確率論の範囲で確率や測度を知らなくと も十分に読める.状態空間が離散的なマルコフ過程を 扱っているのでこれで十分なのである。ただし,条件 付き期待値(確率変数の意味で定義される)などの重 要な概念についてはRadonrNikodymの定理による 一般的な定義こそないが,確率変数を離散に限った場 合の厳密な定義を与えている. 2.どこが面白いのか 本書の一貫した思想は,解析的な手法をできるだけ 使わず,ということは複雑な計算はできるだけ避けて, 確率的な意味を持った概念や方法論によってマルコフ 連鎖の理論的な結果を導くことにある.また,同時に, 例題によって,得られた結果が実際の問題の解決に役 立つことを示す.一言でいうと,実証的な本で,こん なに役立つことがこんなに簡単に得られるのだから, 勉強しないと損ですよと読者を説得しているようであ る.私はまだこの本をゼミで使ってはいないが,初学 者が読むのに大変よい本である(学部レベルでは少し きついかもしれない).同時に,確率モデルの研究者 にも是非読んでもらいたい. 本書は取り立てて新しい方法論を論じているわけで はないが,入門的な本で,マルコフ連鎖の極限定理な どを厳密に,しかも,複雑な議論なしに証明している ところは注目される.これまでの伝統的な方法は,ま ず,Blackwe11の再生定理を証明し,その結果を使っ て極限の存在を示す.しかし,再生定理の解析的な証 明は複雑で,初等的な本では省略されることが多い. 本書の行き方は逆である.初めに,再帰的な(元の状 態へ確率1で戻る)マルコフ連鎖の定常測度を構成し, 正再帰的な場合(元の状態に戻るまでの時間の期待値 (37)85 1.本書との出会い 本書については著者が関係者に流したメールで知っ たが,当初は,またマルコフ連鎖の本が1冊出たのか という程度の感想しか持っていなかった.たまたま, 秋のOR学会で展示即売があり,ざっと目を通したと ころやさしそうな本なので,学生が読むのに手頃かな と思い購入した.実際,本書は大学の教養の数学程度 を知っていれば十分に読むことができる.ところが読 んでみるとこれがなかなかなのである.本書のサブタ

イトル(Gibbs負elds,Monte Carlo simulation and Queues)には惑わされない方がよい.これらの題目 に興味のない読者は,何かマルコフ連鎖の応用をまと まりなく論じているだけではないのかと思うかもしれ ないし,興味のある読者は読んでみて,ちょっとがっ かりするだろう.実際に論じられている応用は,サブ タイトル以外にも,ランダムウォーク,信頼性,在庫 管理,熱力学,遺伝過程,分岐過程,ニューラルネッ トなど,幅広い.ただし,この本で,確率モデルの応 用分野について勉強をしようなどとは思わない方がよ い.扱う分野は広いが内容は簡単なものが多い. 著者のねらいは,マルコフ連鎖による応用モデルの 解析において役立つ各種の理論的な方法論やモデル化 の枠組みを紹介することにある.従来のマルコフ連鎖 の本は,一つの方法論を使って統一的に論じるものが 多かった.例えば,Seneta[5]は行列理論を使い, Chung[2]は実解析を主に使っている.もともと古く は確率論や確率過程論の研究者は解析学者であった場 合が多く,複素関数論や関数解析を始めとした解析手 法が広く使われてきた.初めて読んだときは確率論の 応用の広さに感心したFeller[3]の本なども今から見 るとかなり解析的な本である.一方,Ross[4]や Cinlar[1]に代表される入門書は解析的手法の簡易版 といった感があり,マルコフ連鎖の極限確率の存在や Brackwellの再生定理など基本的な結果の証明が省 略されていて,いまいち満足できない. 2000年2月号 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

(2)

が有限)には,この測度がマルコフ連鎖の定常な確率 分布となることを使って,定常マルコフ過程を構成す る。次に,任意に与えた状態から出発したマルコフ連 鎖の標本関数を,有限な時刻(ランダムである)以降, 党に梼成した定常マルコフ連鎖の標本関数と一致する よううまく作り,極限確率の存在とそれが定常確率に 一致することを同時に証明する。この方法は,Cou− pユimg法と呼ばれており,田本でも都立大の中塚先登 が研究されている。この極限定理が証明されると,再 生定理はその系として簡単に導かれる。 特に興味深かった茸は,安定性を論じるためにリヤ プノブ関数とマルチンゲールについて解説した5章で ある。著者は特に示唆はしていないが,行間からなぜ 定常分布の存在を論じるためにリヤプノブ関数が必要 であるかが読みとれる① 簡単にいうと,一般にマルコ フ連鎖の状態間には順序関係がないので仁状態空間を 安定性が論じやすい空間(半直線上の可算偶の点)へ 写像する。この関数がリヤプノフ関数である¢ 3。重な内容 つい興味を待ったところを中心に述べてしまったが, 全体的な内容を知りたい方のために章立てを紹介して おこう。 且確率論の簡単な解説(とはいっても,大数の強法 則を厳密に証明している) 2離散時間マルヨフ連鎖(標準的な紹介だが,強マ ルコフ性を正確に論じている) 3再帰憺とエルゴ畑ド性(再帰蔦を使った定常測度 の構成は一読の価値あり) 4長時間の特性(Coupユing法,再生定軌 再生型 確率過程など) 5 ヨ』ヤプノブ関数と∇ルチンゲ姐ル(ポテンシャル と再起性についても論じられている) 6固有値と斉時でないマルコフ連鎖(有限状態マル コフ連鎖の理論をPerron−Frobeniusの定理とそ の応用を中心に解説)

7ギプス体とモンテカル8シミュレーション(マル

コフランダム体とギプス分布,Simuiated Anq nealingの理論的基礎など) 8連続時間マルコフ連鎖(標準的内容) 9ポアソン解析と待ち行列(著者の得意とする分野 だが,この本では遠慮したのか内容は軽い) なお,Prefaceではマルコフ過程の歴史と発展の過 程が興味深く解説されている。また,Useful,Simple and‡∋eautifulTheoryという表題の節もあり,著者 が目指しているものを端的に表現している。 、/ ・.′∴ い・.. 最後に,著者が授業をもとにこの本を書いたことを 示す次の文を引用して締めくくりたい。 Zermelo,Whoobviouslywasnotsleeping inthebackoftheclassroom,arguedthatin Viewofthetimereversibilityofthelawsof physics,the Boltzmann theory atleastbe

discussed.…itwouldimplythatthechunk

Of sugar that one patiently dissolvesin

One’s cup of coffee could escapeingestion byreformingitselfatthebottom・Ofthecup. おそらく寝ていた学生も耳をそばだてたであろうと 思うと,Bremaud先生も授業に苦労されている様子 がうかがえて苦笑してしまった。 (束京理科大学 宮沢政清) 参考文献 [1]E.Ginlar(1975)拗れd祝C如乃わ5加ゐα5オブcP和Ce5SeS, Prentice−Hall。 [2]K.L.Chung(1975)ル勉祓0〃C如薇s狛鮎1地紋傲叩 7うⅥnSition Probabilities,2ndedリSpringer−Verlag. [3]W.Feller(1971)Int7Vduction to Probabili&7協eo7y

andIts A」坤Iications VolumeI,3rded.,Wiley. 1二4]S.M.Ross(1997)劫わⅥd〟Cまわ現わ戸川∂α∂Z才物朋仇加点 6thed.,Academic Press. [5]E.Seneta(1981)Non−n曙atiL)eMatricesandMa7im Chains,2nd ed.,SpringerLVerlag. オペレーションズ①リサーチ 爵亀(38) © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

参照

関連したドキュメント

テューリングは、数学者が紙と鉛筆を用いて計算を行う過程を極限まで抽象化することに よりテューリング機械の定義に到達した。

通常は、中型免許(中型免許( 8t 限定)を除く)、大型免許及び第 二種免許の適性はないとの見解を有しているので、これに該当す

出来形の測定が,必要な測 定項目について所定の測 定基準に基づき行われて おり,測定値が規格値を満 足し,そのばらつきが規格 値の概ね

意思決定支援とは、自 ら意思を 決定 すること に困難を抱える障害者が、日常生活や 社会生活に関して自

2018 年、ジョイセフはこれまで以上に SDGs への意識を強く持って活動していく。定款に 定められた 7 つの公益事業すべてが SDGs

不正な投機を助長する等、特定の者(具体的に個人又は法人等が確定していることま

を負担すべきものとされている。 しかしこの態度は,ストラスプール協定が 採用しなかったところである。

指針に定める測定下限濃度   :2×10 -2 Bq/cm 3 ,指針上、この数値を目標に検出することとしている値 測定器の検出限界濃度     :約1×10