地域における計画的機能の効果 :ツーリズムに関する論点を基に
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(2) 8 0. 点については、開発に対する計画策定、意思決定といっ. 対象とする政策、計画への関与が増大することとなる。. た計画プロセスにおける効果について言及する。第四の. 他方、ツーリズムの側においては、開発と環境保全、あ. 論点については、ツーリズムによる開発、それに対する. るいは、環境管理とが関連をもち、理念・目標段階から. 地域の側での自律的で、主体性をもった変化といった側. 具体的な活動、行動段階にわたって、開発の推進が環境. 面に着目して検討を進める。. 保全、環境管理に対してプラスの効果を及ぼす関係を包 含する仕組みを構想、計画段階から構築する必要性が高. II.土地利用、環境との関連における機能. まる。 また、影響に対する評価については、開発、ツーリズ. ツーリズムを担う活動が、土地利用の変化を伴い、環. ム各々に関わる主体、地域を構成する主体、地域を取り. 境に影響を与える場合、それに対する計画的機能につい. 巻く社会経済的環境、地域特性がもつ多様性と時間的変. ては、ツーリズムとの関わりにおいて重要な局面をまず. 化に対し、立案、策定、実行といった計画的機能が発揮. 明確にする必要があり、その際、計画的機能の対象の特. される諸段階における意思決定に対して、評価対象、手. 性に即した視点を設定することが不可欠である。. 法、結果のフィードバックといった評価システムを適合 させていくことが重要である。. 1.環境に与える影響及びその評価. こうした評価については、高知県四万十川の場合、清. ツーリズムが環境に与える影響、それに対する評価に. 流及び生物資源の生態系の保全、復元を行い、清流四万. 関する視点2)については、地域における生活や経済活動. 十川と地域振興が調和し共存する地域づくりを進めるた. のための基礎として重要であり、資源としてとらえた環. め、流域の基本指針となる「清流四万十川総合プラン. 境の多面的な性格、多元的な価値といった環境自体の具. 21」を策定し、21 世紀初頭までの四万十川流域の総合. 体的内容と、ツーリズムがもつ意義、効果の多様性との. 対策を明らかにしており(高知県(1996) ) 、さらに、2001. 関係をふまえた議論が必要である。. 年には、このプランに対する中間評価3)が行われてい. 環境自体の性格については、秋山(2001)は、環境 資源の保全について、環境の質を高めるという視点か. る。 評価は、「水質」 、「水量」 、「景観」 、「生態系」 、「振興」. ら、対象を環境的属性によって、①自然生態系、②人工. に区分された施策に対し、施策効果側面(プランの本来. 化された生態系、③人工物の集積系、という 3 つの類. の目的に対して、個々の施策・事業が適切に効果を発. 型を示し、環境管理に経済的手法が導入されてくるに伴. 揮) 、環境影響側面(目的が、環境負荷が総合的に低減. い、経済政策との接触領域を考慮に入れるのは不可避と. されるなかで達成される) 、理念側面(社会のしくみそ. なったことをふまえつつ、環境資源がもつ機能を損なう. のものを変革し、持続可能なやり方に転換していく)が. ことなく、その潜在能力を発揮させることを基本とする. 対象となっている。また、評価の基準に関して、施策効. 資源の生産性に着目し、その実践において上記類型に応. 果側面については対象に応じて 3 つの基準を設けてお. じた異なった対応を図る必要があること、環境の価値を. り、例えば良い評価の例として、基準 1 では、「負荷を. 評価するための制度設計が重要となること、環境保全行. ゼロに近づける新たな社会・経済システムの構築につな. 為は積極的に自然に働きかける側面をもち、開発と環境. がった」 、「負荷排出源の改善(人間活動の抑制・人間活. の関係を二項対立的にとらえる枠組みを越えた広い射程. 動の転換等) 」 、「負荷排出を低減する目的での負荷発生. をもち、地域政策、都市・地域計画と重なる領域が拡大. 過程の見直しにつながった」等、基準 2 では、「自然の. する広義の環境政策へと転換していること、を指摘して. システムと社会・経済システムが統合された地域社会の. いる。. 構築につながった」 、「産業・経済及び社会の分野への、. 以上の点は、ツーリズムとの関係においては、ツーリ. 環境配慮の視点の内在化につながった」等、基準 3 で. ズムが成立し、実行され、それを構成する活動が行われ. は、「地域の特性を活かした、地域社会の自発的な自助. る場としての環境という性格と、ツーリズムの対象とし. 努力の助長につながった」等があり、環境影響側面につ. ての質、魅力を問われる環境という性格を併せもつ二面. いては、「プラン 21 に記載の「配慮指針」や「文化環. 性をふまえると、ツーリズムに関わる開発とそれが環境. 境配慮方針」 、もしくは協議会等で定めた指針や手引き. に与える影響に対する計画的機能については、開発と環. に基づき実施」 、「国等が定めた(指導した)施工・事業. 境保全とがより緊密な関係を要することとなり、環境を. 実施方針に基づき実施」等、理念側面については、「事.
(3) 大阪明浄大学紀要第 3 号(2003 年 3 月). 8 1. 業内容に地域ニーズが反映されるような場や機会を提供. もたらす、②ツーリズムと地域社会との関係は、地域の. している」 、「事業内容が住民や県民に公開されている」. 参画、利益、乗数効果に主として関わる、③国立公園と. 等がある4)。. 地域社会との関係は、保全におけるパートナーシップ、. これらは、個別施策に対する行政側からの評価である. 政策、意思決定、景観修復のための行動に関わる、④ツ. が、施策を含む広義の開発が与える影響は、生態系、社. ーリズム、国立公園、地域社会相互の関係は、様々なか. 会経済システムの経路を通じて、領域、分野横断的に発. たちの開発、利害、利益、便益に関わる、とし、他方、. 生し、それが拡大するにつれて、直接的、間接的に影響. Nelson, J. G.(1987)による事例研究では、対象とし. に関係する主体が著しく多様化することをふまえると、. た国々において、国立公園、保護地域の状態は不均衡で. 影響の評価システムの構築に際しては、個々の開発を軸. あり、最適な方向づけには及んでいないとみられ、さら. とするシステムに加えて、開発及びその影響に関係する. に、国立公園、保護地域の多様な役割と、社会経済的及. 主体の明確化、対象となる地域的単位の設定について、. びその他の特性との間の関係に乏しいこと(国立公園、. 影響がもつ特性(環境保全、自然環境保護、あるいは、. 保護地域の機能には、自然資源、そのモニタリングの他. 開発への指向性の程度、関係する主体の範囲等)に基づ. に、歴史的・文化的・考古学的資源、教育、レクリエー. き慎重に配慮すること、また、それを開発計画、実施の. ション及びツーリズム、先住民及び地域住民、地域計画. プロセスに整合したかたちで連結させること、その際の. 及びマネジメント等が含まれる) 、これを改善するため. 合意形成のための方法を明確にすること、といった点が. の基礎として、国家環境保全戦略(National Conserva-. 重要と考えられる。. tion Strategy(NCS) )と国立公園、保護地域の役割に 関する NCS 情報システムが求められること、また、地. 2.主体間の相互関係 環境保全、自然環境保護、開発を担う主体の相互関係 に関する視点については、特に開発に対して相対的に強. 域計画、地域開発、先住民及び地域住民との関連で、国 立公園、保護地域の役割に関する研究が特に必要である こと等を示している5)。. い規制が行われている地域(国立公園等)の場合、各主. 以上におけるツーリズム、国立公園、地域との間にお. 体の個々の活動、行動及びそれらの相互関係が、地域総. ける関係は、各々を構成する主体間の相互関係となり、. 体として環境保全、自然環境保護と開発との間におい. 相互関係全体の目標と個々の主体がもつ目標との間、ま. て、地域の主体性に基づく良好かつ安定的な関係を構築. た、個々の(または、複数の)主体がもつ目標の間にお. するための条件、方策が焦点となる。. いて、ツーリズム推進、それに伴う開発、環境保全、自. こうした点について、例えば、Nepal, S. K.(2000). 然環境保護、地域振興を担う活動といった動きが生じる. は、ツーリズム、国立公園、地域社会という 3 つのア. 場合に、相互にメリットがある相乗的な関係があり得る. クターによって形成される関係に関するプロセスと相互. 一方、調和しない、あるいは、相反する作用の結果、主. 作用において、①ツーリズムは、ツーリズムという部門. 体がもつ目標、行動の乖離が発生し、マイナスの効果が. における開発プロセスを主として担う。それは、ビジタ. もたらされる可能性がある。こうした点に対する計画的. ー、ツーリズムについてのサービス及び施設、投資家及. 機能は、相互関係(それが形成される地域)全体を対象. び企業家、制度、政策を含み、デスティネーションにお. とする包括的内容及びその効果をもつことに加えて、. けるツーリズムのための開発を推進する、②国立公園及. 個々の主体、特定の主体間の相互関係といった局面に応. びそれがもつ多様な資源は、ツーリズム及びレクリエー. じて効果をもつことが重要と考えられる。. ションに対する需要を喚起する。換言すれば、国立公園. そのためには、各主体が活動、行動における構想、計. に関わるツーリズムのための開発は、ツーリスト、事業. 画段階から計画的機能との関わりをもち、推進、規制、. 者に何を提供するかに大きく依存する、③地域社会及び. 誘導等の機能を組み入れた体制を構築する必要がある。. 組織は、ツーリズムのための開発、保全に関して重要な. 国立公園の場合、こうした相互関係において、開発との. 役割を担う。知識、スキル、プライオリティ、態度は、. 間で地域、環境に対する深刻な問題を発生させる可能性. デスティネーションにおけるツーリズム及び保全のため. が大きいため、ツーリズムに関しても、計画的機能の役. の戦略に大きな影響を与える、といった各アクターの役. 割を重視し、相互関係の効果をより高めるための方法、. 割を提示し、それらの相互作用の所産として、①ツーリ. 条件づくりが重要となる。. ズムと国立公園との関係は、景観における人為的変化を. わが国の国立公園の状況については、国立公園を含む.
(4) 8 2. 自然公園は、自然の保護と利用という 2 つの異なる方. れ、1991 年の計画改定の後、2000 年の計画改定に至っ. 向性をもつ目的と内容を内蔵し、観光レクリエーショ. ている6)。. ン、野外教育のための利用、公園内で行われる開発につ. 吉野熊野国立公園熊野地域は、尾鷲・熊野、勝浦・太. いて、保護と利用との関係をめぐる問題が指摘されてい. 地、串本、那智山、熊野川の 5 つの管理計画区からな. る(俵(1998) ) 。. り、管理計画では各管理計画区について第 1 表に示す. 吉野熊野国立公園熊野地域の場合、1936 年の吉野熊. 保全、利用に関する方針を示している。保全対象の保全. 野国立公園指定以降、1940 年特別地域指定、1950 年潮. 方針においては、管理計画区ごとに保全すべき特徴的な. 岬地区の拡張、1967 年潮岬地区の特別地域指定、1970. 資源に関する方針が示されており、利用に関する方針に. 年地先海面及び錆浦地区の拡張、錆浦地区の特別地域及. おいては、いずれも自然探勝、自然体験に基づく方針が. び海中公園地区指定、1975 年尾鷲、熊野地区の拡張及. 重視されている。他方、吉野熊野国立公園熊野地域にお. び特別地域、特別保護地区、海中公園地区指定等を経. ける公園事業執行状況については(第 2 表) 、1977 年以. て、1984 年に熊野地域管理計画が策定されたが、1988. 降園地を対象とする各県による事業執行が進められた. 年に吉野熊野国立公園全域について公園計画が再検討さ. が、1989 年から 1992 年にかけて民間宿泊施設の事業. 第1表. 吉野熊野国立公園熊野地域管理計画における保全、利用に関する方針. 1.尾鷲・熊野管理計画区(海岸部のうち三重県に係る区域) (1)保全対象の保全方針 〔七里御浜〕紀伊半島では珍しい直線的な磯浜海岸が連なり、アカウミガメが産卵に上陸する。車両の乗入れを規制 する等、アカウミガメの産卵等を阻害しないよう極力配慮する。磯浜と背後の防風林を一体として、海岸景観の保全 に努める。海岸保全工事等にあっては、海岸景観を損なわないように工法を指導する。 〔二木島海中公園地区及び周辺部 楯ケ崎〕海中、海岸景観の自然性の高い地区であり、優れた海岸・海中景観を保 全するため、極力人為による影響を排除し、風致景観及び自然環境の保全に努める。 (2)利用に関する方針 特異な海岸景観の探勝や自然歩道の利用を促進し、自然とのふれあいの推進に努める。 2.勝浦・太地管理計画区(海岸部のうち和歌山県新宮市、那智勝浦町、太地町及び古座町の一部に係る区域) (1)保全対象の保全方針 〔ゆかし潟〕塩沼地植生、ハマボウ群落等がみられ、良好な自然環境が保持されている。周辺の土地利用や河川管理 等との総合的な調整を図り、特異な自然環境に影響を与えないように努める。 〔大浜〕七里御浜と同じ。 (2)利用に関する方針 利用施設を拠点に、変化に富んだ海岸景観の探勝や水辺の動植物の観察等を促進し、自然とのふれあいの推進に努 める。 3.串本管理計画区(海岸部のうち和歌山県串本町及び古座町の一部に係る区域) (1)保全対象の保全方針 〔串本海中公園地区〕海中公園地区の利用は、海中の景観や生物への影響が懸念されるものであるので、必要に応じ て調査等を行い、その結果を踏まえて海中公園の保護を図る。また、周辺陸域部を含めて、その特性に留意した保全 を図り、海岸保全施設工事等にあっては、海中公園地区の景観に影響を及ぼさない工法を指導する。 (2)利用に関する方針 地区の景観の基幹をなしている海岸景観の探勝利用を促進する。また、海中公園地区については、海中の生物等に 影響を与えないよう留意しつつ、海中景観の探勝等の適正な利用を推進する。 4.那智山管理計画区(那智山を中心とする地域) (1)保全対象の保全方針 〔那智の滝及び那智原始林〕那智の滝を中心とする雄大な景観の維持並びに、学術的にも貴重な森林植生及び水源涵 養をはじめとする公益的機能を有する森林の保護のため、極力人為による影響を排除し、風致景観及び自然環境の保 全に努める。 (2)利用に関する方針 文化財と一体となった歴史的景観や自然景観の探勝や自然歩道の利用等を促進し、自然とのふれあいの促進に努め る。 5.熊野川管理計画区(熊野川及び北山川の中、下流域で和歌山県新宮市、熊野川町、本宮町、北山村、奈良県十津 川村及び三重県熊野市、紀和町、紀宝町に係る区域) (1)保全対象の保全方針 〔北山川峡谷及び瀞峡〕自然性の高い地区であり、極力人為的行為による影響を排除し、風致景観及び自然環境の保 全に努める。河川工事等にあたっては、景観を損なわない工法等を指導する。 (2)利用に関する方針 河川景観や歴史的景観の探勝や自然歩道の利用等を促進し、自然とのふれあいの推進に努めるものとする。 出典:環境省近畿地区自然保護事務所資料(2000 年)を基に作成。.
(5) 大阪明浄大学紀要第 3 号(2003 年 3 月) 第2表. 吉野熊野国立公園熊野地域における公園事業執行状況(2000 年 3 月現在). 事業決定年 管理計画区. 事業の種類. 事業執行者. 内. 1977. 尾鷲・熊野 三木崎園地. 三重県. 園地 4,169 m2. 1977. 尾鷲・熊野 楯ケ崎園地. 三重県. 園地 2,619 m2. 容. 1978. 熊野川. 和歌山県. 延長 4,158 m. 1981. 勝浦・太地 梶取崎園地. 和歌山県. 園路 286 m. 1981. 勝浦・太地 平見台園地. 和歌山県. 園地 622 m2. 1981. 串本. 和歌山県. 園地 1,212 m2. 1982. 勝浦・太地 孔島・鈴島園地. 和歌山県. 園地 2,000 m2. 1986. 熊野川. 和歌山県. 敷地面積 9,330 m、 テントサイト等. 1988. 尾鷲・熊野 阿田和園地. 三重県. 敷地面積 16,200 m2. 1989. 尾鷲・熊野 鬼ケ城周回線道路(歩道). 三重県. 延長 1,103 m. 1989. 尾鷲・熊野 網代園地. 三重県. 敷地面積 44,600 m2. 1989. 尾鷲・熊野 鬼ケ城園地. 三重県. 園路 521 m、展望台等. 千穂ケ峰線道路(歩道). タカノ巣園地 川湯野営場. 1989. 勝浦・太地 宇久井園地. 和歌山県. 園路 490 m. 1989. 勝浦・太地 太地園地. 和歌山県. 敷地面積 8,692 m2. 1989. 勝浦・太地 下田原園地. 和歌山県. 敷地面積 4,510 m2. !国民休暇村協会. 1989. 勝浦・太地 宇久井宿舎. 1989. 勝浦・太地 湯川宿舎. ㈱コーポランド観光 ㈱湯川温泉ホテル. 収容人員 367 人 収容人員 131 人. 収容人員 192 人. 1989. 勝浦・太地 夏山宿舎. 松田喜弘(もみじや). 収容人員 45 人. 1989. 勝浦・太地 太地宿舎. ㈱勝浦御苑ホテル太地リゾート 収容人員 239 人 太地町 収容人員 89 人. 1989. 勝浦・太地 太地博物展示施設. 太地町. 敷地面積 20,336 m2、博物館、 プール、水族館等. 1989. 串本. 潮岬周回線道路(車道). 和歌山県. 延長 8.6 km. 1989. 串本. 橋杭園地. 和歌山県. 敷地面積 24,600 m2. 1989. 串本. 錆浦園地. 和歌山県. 園路 220 m. 1989. 串本. 潮岬宿舎. 潮岬臨海ハウス㈱ 西田建比古(岬ロッジ). 収容人員 50 人 収容人員 43 人. 1989. 串本. 錆浦水族館. ㈱串本海中公園センター. 敷地面積 20,500 m2、水族館、 VC、休憩所、駐車場、研究棟. 1989. 那智山. 那智妙法線一般自動車道. 熊野交通㈱. 延長 6.172 km. 1989. 那智山. 那智山園地. 那智勝浦町. 駐車場 2,553 m2 等. 1989. 那智山. 妙法山園地. 熊交商事㈱. 敷地面積 356 m2. 1989. 熊野川. 新宮本宮線道路(車道). 和歌山県. 延長 3.5 km. 1989. 熊野川. 田戸園地. 奈良県. 敷地面積 835 m2. 1989. 熊野川. 湯の峰宿舎. ㈱あずまや. 収容人員 134 人. 1989. 熊野川. 川湯宿舎. 末吉観光㈱ ㈱川湯観光冨士屋 ㈱山水館. 収容人員 118 人 収容人員 172 人 収容人員 613 人. 1989. 熊野川. 湯の峰駐車場. 和歌山県. 駐車場 600 m2. 1990. 勝浦・太地 勝浦湯川線道路(車道). 和歌山県. 延長 1.9 km. 1990. 熊野川. 熊野交通㈱ 瀞峡観光㈱ 北山村. 区間距離 49.2 km 区間距離 49.2 km 区間距離 13 km. 1992. 尾鷲・熊野 新鹿浦園地. 熊野市. 園地 3,000 m2. 1992. 勝浦・太地 燈明崎園地. 太地町. 敷地面積 340 m2、 古式捕鯨山見台等. 鮒田瀞峡線船舶運送施設. 8 3.
(6) 8 4. (第 2 表つづき) 事業決定年 管理計画区. 事業の種類. 事業執行者. 内. 容. 1992. 勝浦・太地 勝浦宿舎. ㈱浦島温泉ホテル 浦島観光ホテル㈱ ㈱中の島 勝浦温泉土地㈱. 収容人員 570 人 収容人員 2,752 人 収容人員 904 人 収容人員 404 人. 1993. 熊野川. 七色宮井線道路(車道). 和歌山県. 延長 28.087 km. 1993. 熊野川. 小松口園地. 和歌山県. 敷地面積 4,395 m2. 1994. 那智山. 大戸平園地. 和歌山県 那智勝浦町. 敷地面積 7,137 m2 敷地面積 29,327 m2. 1996. 串本. 潮岬園地. 和歌山県 串本町 潮岬観光㈱ 熊交商事㈱ ㈱暖流. 敷地面積 4,431 m2 敷地面積 1,662 m2 駐車場、食堂 観光タワー等 敷地面積 991 m2、 敷地面積 3,085 m2、展望施設等. 1996. 熊野川. 飛雪ノ滝園地. 三重県. 敷地面積 48,100 m2. 1996. 熊野川. 下尾井宿舎. 北山村. 収容人員 51 人. 1997. 尾鷲・熊野 行野浦楯ケ崎線道路(車道). 三重県. 延長 13,650 m. 1997. 勝浦・太地 燈明崎山見鼻線道路(歩道). 和歌山県. 延長 1,630 m. 1997. 串本. 大島周回線道路(歩道). 和歌山県. 延長 695 m. 1997. 那智山. 那智妙法山周回線道路(歩道). 和歌山県 那智勝浦町. 延長 5,312 m 延長 713 m. 1997. 熊野川. 飛雪ノ滝野営場. 三重県. 敷地面積 10,000 m2. 1999. 熊野川. 下尾井園地. 北山村. 園路 400 m、ステージ等. 注)上記の他に、1998 年近畿自然歩道線道路(歩道)事業(三重県、和歌山県)がある。 出典:環境省近畿地区自然保護事務所資料(2000 年)を基に作成。. 執行が顕著となり、さらにそれ以降は、園地、歩道を対. 体、あるいは、それを取り巻く環境下での開発指向に対. 象とする事業執行が行われている。. し、国立公園という条件における環境保全への方向づけ. 特に 1989 年から 1992 年にかけての状況は、当時の. の中で、地域を構成する主体の側における開発指向、ま. 社会経済環境下における強い開発指向を背景とすると見. た、その後の環境変化に対応したかたちでの、自然環境. られ、国立公園における条件下にあってもそれが顕著に. と調和したツーリズムへのシフトといった点でとらえる. 認識できる実態があったと考えられる。ただし、域外資. ことができると考えられる。. 本等による大規模開発という面では、全国的な開発対象. これをふまえると、こうしたプロセスにおける意思決. の中で国立公園がもつ開発への規制は、この地域がもつ. 定について、各主体にとっての外因的作用に基づく行動. アクセス等固有の地理的条件をも勘案すると、開発対象. の一方では、外因的作用に対し、地域的条件、地域特性. としての制約条件が開発メリットを上回り、事業機会と. に基づき、地域が主体性をもちつつ、地域がもつ目的、. しての魅力に劣った可能性に留意する必要がある。. 行動に正当性を付与し得る計画的機能の役割を重視する. これに対し、地元資本、地域における事業者の側で. 必要がある。. は、開発指向の状況に応じたかたちで事業に取り組むこ. この場合、計画的機能を担う主体は、直接開発対象と. ととなり、その結果、個別宿泊施設を対象とする事業執. なる地域を越える地理的範囲、あるいは、多様な利害関. 行といった面でとらえられるに至ったと考えられる。さ. 係をもつ異質な主体を包含し得る領域を対象とすること. らに、その後の社会経済環境変化の中において、歩道整. により、その効果がより増大すると考えられ、開発に伴. 備等の事業執行は、管理計画における利用に関する方針. う広域的効果、計画実現のための主体の目標、目的、行. に即した、外的条件への適応、あるいは、外的条件の事. 動の内容等については、可変的な地理的範囲と多様な主. 業面での具体的な表れとしてとらえることが可能であ. 体を対象とした機能が有効に発揮できる計画主体の構築. る。. が重要な課題になると考えられる。. 以上の状況は、主体間の相互関係において、地域全.
(7) 大阪明浄大学紀要第 3 号(2003 年 3 月). 3.自然環境との相互関係におけるツーリズム. 8 5. ったことにより、各々の魅力を相乗的に向上させること. ツーリズムが自然環境と直接関係をもつ視点について. が重要となる。その背景には、Reynolds, P. C. and. は、両者の相互関係を方向づける、あるいは、相互に規. Braithwaite, D.(2001)が示す環境保全、ビジターの. 定し合うといった作用に対する計画的機能が重要とな. 満足、利潤可能性等の対立する価値のトレードオフを基. り、保全、保護、利用、開発に関連して、ツーリズムを. に、その多様な相互関係の中で最も密接な関係をもつ環. 構成する活動、行動の具体的内容、推進及び参画主体、. 境と経験の質に対するインパクトを重視するフレームワ. 推進体制・方法等ツーリズム自体の特性に視野が及ぶこ. ークに見られるような、ツーリズムと自然環境との相互. ととなる。. 関係に対する価値認識、それに基づく計画的機能の考え. そうした相互関係に対する機能について、Orams, M.. 方を基礎として位置づけておく必要がある。. B.(1996)は、人間と野生生物との相互作用には広範. 他方、マネジメントがもつ機能については、それを担. な多様性があり、そうした機会に対する需要が急速に増. う主体、実行するための方法に関して、地域の側の主体. 大していること、この機会の多様性は、ツーリストと野. の目標との間、また、機能を構成する個々の側面間にお. 生生物との相互作用をもたらすスペクトル(Spectrum. ける整合性、それに対する合意形成が、機能がもたらす. of Tourist−Wildlife Interaction Opportunities(SoT-. 効果を増大させるための条件として明確にされることが. WIO) )としてとらえられる一方、ツーリストと野生生. 重要である。この場合、地域におけるツーリズムとそれ. 物との相互作用を制御するために用いられるマネジメン. に関連する政策や計画との広範な関係を含むこととな. トの多様な体制、構造があり、その体制は、フィジカ. り、その結果、それらの立案、実行に即して具体的な方. ル、規制、経済、教育といった側面に区分されること、. 法を構築することが不可欠である。. 近年においては、相互関係に対するマネジメントでは、. さらに、効果自体の内容については、地域においてそ. フィジカル、規制が卓越しているが、教育に基礎を置く. れを評価、判断するための前提となる目標、あるいは、. マネジメント戦略を増大させることに相当のポテンシャ. 指標設定が直接関わるため、ツーリズムを担う主体の意. ルがあることを指摘している。. 識や行動と自然環境に対する影響の質、程度との間にお. そこで示されるツーリストと野生生物との相互作用に ついての概念的モデルにおいては、上記 4 つの側面を. ける関係に対して、より個別的で具体的な追求が重要と なる。. もつマネジメントのための戦略は、その組み合わせを基 に、環 境、な い し は、資 源 に 関 す る SoTWIO を 規 定. III.計画プロセス及び地域的変化に関する機能. し、他方、4 つの側面は、ツーリストについては、満足 ・楽しみ、教育・学習、態度・考え方の変化、行動・ラ. 1.計画策定、意思決定との関連. イフスタイルの変化、野生生物については、ネガティブ. ツーリズムに関する計画策定については、ツーリズム. なインパクトの最小化、独立・自給への寄与、生息・生. が環境、あるいは、地域に及ぼす影響に対し、計画の立. 育環境の改善、長期的な健康・生存能力といった指標に. 案、合意形成、実行に至るプロセスにおいて、マイナス. おいてより望ましい方向へ向ける役割を担うが. の影響を排除し、ツーリズムの効果を地域にとって最大. (Orams, M. B.(1996) ) 、ツーリストと自然環境との. 化するためのシステムを構築する必要がある。この場. 相互関係において、マネジメントがもつ機能を軸とする. 合、計画内容自体の有効性、妥当性に加えて、策定プロ. 人間の関わり方は、ツーリズムにとっての資源、自然環. セスにおける意思決定、合意形成のあり方が重要とな. 境自体が本質的にもつ価値といった点について、ツーリ. り、プロセスにおいて重視すべき局面、あるいは、意思. スト、ツーリズムが依拠する空間、それに関わる広範な. 決定、合意形成のための方法において重視すべきポイン. 社会文化的文脈との関連で慎重な議論が必要である。. トが、計画、参画主体がもつ目的、計画への取り組み方. また、自然環境との相互関係でとらえられるツーリズ. に応じて異なってくる可能性がある。. ムの具体的内容は、対象となる資源、ツーリズムに伴う. Newsome, D., Moore, S. A. and Dowling, R. K.. 活動を規定する施設、サービスのタイプといったツーリ. (2002)は、ツーリズムを対象とする計画フレームワー. ズムの側の諸要素間の関係に対する考慮を要することと. クが、人為的変化に着目し、管理すること、自然科学、. なり、その際には、それらの役割分担、あるいは、融. 社会科学に依存すること、明確なマネジメントの対象に. 合、さらには、新たな資源、施設、サービスの創出とい. 基づくこと、経験、社会、マネジメントに関する条件の.
(8) 8 6. 組み合わせである機会の設定を認識し、用いること、計. 程度が高い性格をもっているため、関連計画との整合、. 画の基礎をレクリエーション機会に置くこと、モニタリ. それへの適合に関してはより高い効果が得られると考え. ング、評価を必要とすることをふまえ、従来提示されて. られる。. つのフレームワーク7)について比較検討を行って. 他方、局面の設定においては、参画主体との関係、意. いる。そこでは、比較のための指標として、①地域計画. 思決定の方法、具体的な参画主体の行動については明示. への適合性(複数の自然地域を対象とする) 、②マネジ. されないため、環境、地域と直接関係をもつツーリズム. メントにとって必要な、ビジターの利用に伴うインパク. を対象とする計画策定に際しては、局面ごとの対応、あ. トに関する情報提供、③計画におけるステークホルダー. るいは、個々の意思決定ごとに重視すべき課題を明確に. 参画の明示的な実施、④マネージャーの行動についての. し、適切なプロセスの構築とそれに基づく高い効果を実. 責任、あるいは、方向づけ、⑤他の形態の計画との容易. 現していくための条件、関係する主体の関わり方、行動. な統合、⑥公開可能で独自の文書という成果、を設定. の内容を具体化していく必要がある。. きた 6. し、検討を行った結果、ツーリズム最適化のためのマネ ジメント・モデル(TOMM)が、⑤を除くすべての指 標について良く適合するとしている。. 2.地域形成、地域変容との関連 地域形成、地域変容に関する計画的機能は、域外的作. TOMM におけるフレームワークは、①コンテクスト. 用に基づく地域的変化に関する領域と域内的作用に基づ. 記述、②モニタリング・プログラム、③実行、の 3 つ. く地域的変化に関する領域にわたって効果をもたらす。. の局面に大別され、①には、プロセスの計画及びステー. 域外的作用については、ツーリズムとの関わりにおい. クホルダー参画の開始、コンテクスト記述の完成及びス. て、開発推進の状況下においては、域外資本による開. テークホルダー参画の継続、②には、モニタリング・プ. 発、開発推進による産業立地、ツーリスト誘引のための. ログラムの開発、コンテクスト記述及びモニタリング・. 方策、ツーリストの増大に対する施設、サービス、イン. プログラムの改善、ステークホルダーへの計画のドラフ. フラストラクチャー整備等、また、域内的作用について. ト及び最終版の準備、③には、実行及びモデルの改善、. は、域内資本による開発、域内企業を軸とする産業振. といった内容が含まれており、③の結果は、レビュー、. 興、地域におけるツーリズム推進体制の構築等により、. モニタリングを通じて①に繋がる関係をもつ(New-. 観光地化、都市化、土地利用の高度化といったかたちで. some, D., Moore, S. A. and Dowling, R. K.(2002) ) 。. 変化が生じることになるが、そのための(または、それ. これらは、環境、社会経済的状況及びその変化、既存の. に対する)規制、誘導、インセンティブ付与といった計. 政策、計画との関係等を検討しつつ、初期段階からステ. 画的機能が地域政策、地域計画において実践されてい. ークホルダーの参画を促していくこと、また、モニタリ. る。. ングに対して中心的位置づけを与え、慎重な意思決定、. 域内外において経済成長、開発指向局面にあり、地域. 合意形成に繋がることといった点で有効性をもち、計画. 開発への方向性がポジティブである場合には、地域開発. 手法の技術的側面については柔軟性かつ幅のある利用可. に伴うインパクトに対する計画的機能が焦点となり、環. 能性を含むことになると考えられる。. 境破壊、土地利用の混乱、不十分な施設、サービスの整. 他方、先のフレームワークの比較において、他の形態. 備、ツーリスト受け入れ体制の充実等の環境、地域に与. の計画との容易な統合という指標に関して TOMM より. える影響への対応、悪影響の排除、開発に伴う問題の解. も適合度が高いとされている、受容可能な変化の限界に. 決が重要な課題となり、環境への影響を最小化し、地域. ついては、例えば、McCOOL, S.(1994)は、①イン. が主体性をもちつつ、持続可能な開発を追求、実現する. パクトに関する課題、関心の明確化、②ツーリズムのた. 上での地域的変化の問題点が問われることとなる。. めの開発の定義、③資源及び社会的状況を示す指標の選. これに対し、域内外における開発指向性が相対的に弱. 択、④既存資源及び社会的状況の総体的把握、⑤各ゾー. く、地域における主体性に依存する程度が高まる局面に. ンにおける資源及び社会的状況の水準の特定、⑥ツーリ. おいては、地域がもつ自律性の意義が重要となり、開発. ズムのための開発ゾーンへの展開、⑦実行及びより良い. に対する態度、考え方、開発に対する価値基準の内容、. オルタナティブの検討、といった局面を示している8)。. 価値の実現について、地域自らの意思決定に基づく地域. この場合のプロセスには、ツーリズムを含む地域計画、. 的変化、それを実行するための意思決定が重要な焦点と. 地域開発全般に関わる共通性が含まれており、定式化の. なる。.
(9) 大阪明浄大学紀要第 3 号(2003 年 3 月). この点については、環境・生態系の保全及び社会の持. 8 7. 続可能なツーリズムと関係をもったかたちでのコミュニ. 続可能な発展を政策の枠組みとする総合的な地域発展を. ティがもつ資源の流動化(Gannon, A.(1994) ) 、ある. 目標とすること、地域にあるハードとソフトの資源を活. いは、ツーリズム開発においてコミュニティを視点とす. 用し、地域経済振興においては、複合経済と多種の職業. るアプローチの重要性、農村地域でのツーリズム開発に. 構成を重視し、域内産業連関を拡充する発展方式をとる. おける事業者の参画、コラボレーションの重要性(Wil-. こと、地域の自律的な意思に基づく政策形成を行うこ. son, S., Fesenmaier, D. R., Fesenmaier, J. and van. と、といった内発的発展の内容(保母(1996) )に直接. Es, J. C.(2001) )といった視点の設定が可能であり、. 関わりをもつこととなり、地域の将来方向、地域振興へ. 産業振興、地域振興のための要因、条件、方策の明確化. の主体の関わり方、地域振興策にとって重要な問題点を. が重視されることとなる。. 提示する9)。. 以上のことから、地域を取り巻く環境変化への地域の. こうした自律的な地域的変化とツーリズムとの関係に. 自律性、主体性に基づく対応、あるいは、能動的な活. 関して、Timothy, D. J.(2002)は、エンパワメント. 動、行動については、地域全体、各主体の方向づけが、. に関する経済的側面について、ツーリズムがデスティネ. 域内外の条件下において妥当性をもつことを前提に、計. ーションであるコミュニティもたらす長期的金銭的利. 画的機能の対象として、ツーリズム推進の効果を高める. 益、コミュニティ全体へのその波及、地域におけるサー. 方向への方策が必要となり、他方、そうした妥当性に乏. ビスやインフラストラクチャーの顕著な改善、心理的側. しい、あるいは、地域全体、各主体における意思決定が. 面については、文化、自然資源、伝統的知識に対する域. 不安定な場合には、目的指向性に基づく方向づけの一方. 外からの認識に基づく自尊心の高まり、コミュニティに. では、合意形成の効果に着目した方策に焦点を置き、地. おける信頼の増大による教育、訓練の機会への指向性の. 域的変化への対応、それをふまえた地域振興、地域づく. 高まり、雇用、所得の得やすさによる地位向上、社会的. りを行うための計画的機能が重要な役割を担うこととな. 側面については、ツーリズムによるコミュニティの安定. る。. の維持、強化、個人や家族が協力して産業を成功に導く. IV.お わ り に. ことによるコミュニティの結合の改善、教育や道路のよ うなコミュニティ開発のイニシアティブのための資金利 用、政治的側面については、人々がツーリズムのイニシ. 本稿においては、ツーリズムを中心とする計画的機能. アティブに対する疑問や関心を増大し得る、代表制のフ. について、「I.はじめに」で述べた 4 つの論点に対し、. ォーラムを提供するコミュニティの政治構造、ツーリズ. 土地利用、環境との関連における機能については、環境. ムのための事業を先導する、あるいは、実行するエージ. に与える影響及びその評価、主体間の相互関係、自然環. ェントが、コミュニティにおける集団、個人の意見を求. 境との相互関係におけるツーリズムという 3 つの視. め、代表して意思決定に加わる機会の付与、といった特. 点、次いで、計画プロセス及び地域的変化に関する機能. 徴を提示している。. については、計画策定、意思決定との関連、地域形成、. これらは、地域におけるツーリズム推進が、地域を構 成する諸側面において自律性をもつことによるプラスの. 地域変容との関連という 2 つの視点を設定し検討を行 った。. 効果を促す点で重要である。ただし、地域におけるツー. 以上をふまえ、今後は、各視点に関して、計画的機能. リズムの役割が、地域全体の方向性との間で乖離があ. が地域、ツーリズムに対してもつ効果を高めるための要. る、各主体間でツーリズム推進の効果に不均等が生じ. 因、それを実現するための条件を明確にし、ツーリズム. る、地域全体、各主体における意思決定プロセスが不連. が関わる計画に結びつけるための方策を具体化していく. 続で、合意形成に時間的、あるいは、主体間の乖離が発. ことが課題となる。. 生する等の制約がある場合には、自律的意思決定、行 動、それに対応する計画的機能の一方では、そうした問 題点を解決するための方策が重要となる。 また、開発への目的指向性が強い状況については、よ. 注 1)前稿においては、地域振興との関わりにおけるツーリ ズム計画(tourism planning) (森(2002 a) ) 、地域 計画におけるツーリズムの特性、プロセス、推進への. り具体的に、例えば、農村コミュニティに関して、農業. 展開(森(2002 b)について検討を行ったが、本稿に. から多角化し、持続可能な経済へ移行させるために、持. おいては、一定の地域的単位における環境、各主体の.
(10) 8 8. 活動、行動、あるいは、それら相互の関係を対象と. 第 2 種特別地域 0.5 万 ha(8.8%) 、第 3 種 特 別 地 域. し、ツーリズムを中心に効果を及ぼす計画的機能に着. 0.7 万 ha(11.3%) 、普 通 地 域 4.0 万 ha(66.4%) 、. 目する。. 海中公園地区 53.6 ha であり、土地所有別では、国有 地 1.2 万 ha(20.3%) 、公 有 地 0.8 万 ha(13.5%) 、. 2)環境に与える影響に対する評価には、影響を測定し、 評価するための手法についての問題を含むが、本稿で. 民有地 4.0 万 ha(66.2%)となっている(吉野熊野. は、ツーリズムとの関連で、地域における活動、行動. 国立公園に関する資料は環境省近畿地区自然保護事務 所による) 。. に対する計画的機能によって影響を制御し、マイナス の影響を排除しつつ地域に及ぼす効果を高めていく側. 7)レクリエーション機会のスペクトル(Recration Opportunity Spectrum) 、受容可能な変化の限界(Lim-. 面を重視する。 3) 「清流四万十川総合プラン 21」の中間評価について. its of Acceptable Change) 、ビジターによるインパク. は、高知県文化環境政策課四万十川流域振興室資料に. トに対するマネジメント(Visitor Impact Manage-. よる。. ment) 、ツーリズム最適化のためのマネジメント・モ. 4)ツーリズムに関わる分野について、施策効果側面、環. デ ル(Tourism Optimisation Management Model. 境影響側面で良い評価を得ている施策では、例えば、. (TOMM) ) 、ビジターの行動に対するマネジメント・. 「国際大会の開催」 (施策効果:中村市、十和村、環境. プロセス(Visitor Activity Management Process) 、. 影響:十和村) 、 「都市といなかのガキ大将交流」 (施. ビジターの経験のための資源保護(Visitor Experience Resource Protection)である。. 策効果:中村市、東津野村、環境影響:東津野村) 、 「木の香る道づくり」 (施策効果:高知県、環境影響:. 8)Farrell, T. A. and Marion, J. L.(2002)は、保護地. 高知県) 、 「黒潮四万十自転車道の整備」 (環境影響:. 域における、ビジターによるインパクトに対するマネ. 高知県) 、 「国道・県道の整備」 (施策効果:高知県、. ジメントの特性について、簡単で柔軟な手法であり、. 環 境 影 響:高 知 県) 、 「流 域 内 道 路 の 整 備」 (施 策 効. 費用、時間、ステークホルダーや地域住民からのイン. 果:高知県、環境影響:高知県) 、 「オートキャンプ場. プットを組み込むというプラス面がある一方、客観性. の整備」 (施策効果:大正町)等がある。. の低下、文化的な影響の受けやすさというマイナス面. 5)持続可能な観光開発とコミュニティとの関連につい. があると す る。ま た、橋 本・真 板(2001)は、ガ ラ. て、観光開発計画策定プロセスと観光開発における役. パゴス国立公園の訪問者管理システムについて、立ち. 割分担(田原(2000) ) 、また、企業・観光地の 開 発. 入り可能区域の限定、ガイドの資格制度、利用形態の. 戦略においては、観光に対する訪問者と地域住民の期. 限定、入園料の徴収を示す。. 待と認識に基づく事業と環境上の対象の組み合わせに. 9)これは、参加型持続的地域開発について、民衆を中心. よって、相対的な競争的優位を引き出すといった観点 (田原(1997) )についての示唆がある。. とする開発援助政策とするとらえ方(高橋(1999) ) 、 また、地域産業政策について、観光における施策、地. 6)吉野熊野国立公園は、吉野地域、熊野地域に区分され. 域振興の方 向(田 口(2001) )等 で 示 さ れ る 地 域 開. るが、本稿では熊野地域を対象とする。なお、全域面. 発、地域政策に関する視点と同時に、持続可能な農山. 積は 6.0 万 ha、地域地区別では、特別 保 護 地 区 0.4. 村開発に関す る 学 際 的 研 究 の 視 点 の 必 要 性(Mur-. 万 ha(7.2%) 、第 1 種 特 別 地 域 0.4 万 ha(6.3%) 、. doch, J.(1993) )に繋がる。. 参考文献 秋山道雄「開発理念の進化と環境管理」経済地理学年報 47−4、2001、1−14 頁。 高知県『清流四万十川総合プラン 21』 、1996。 高橋真美「参加型持続的地域開発についての事例研究」社会科学研究科紀要別冊 3、1999、131−148 頁。 田口芳明「観光を軸とした地域振興の方向について−奈良県の地域産業政策に関する研究−」奈良産業大学産業研究所報 4、 2001、1−14 頁。 田原榮一「持続可能な観光開発とインパクト管理」商経論叢 38−3、1997、109−134 頁。 田原榮一「持続可能な観光開発とコミュニティ」商経論叢 41−3、2000、29−58 頁。 俵 浩三「自然公園、特別地域、特別保護地区」 (所収 沼田眞編『自然保護ハンドブック』朝倉書店、1998)33−52 頁。 橋本俊哉・真板昭夫「ガラパゴス国立公園における訪問者の管理システム」立教大学観光学部紀要 3、2001、15−22 頁。 保母武彦『内発的発展論と日本の農山村』岩波書店、1996、1−4 頁。 森 信之「地域振興におけるツーリズム−ツーリズム計画に関わる視点−」大阪明浄大学紀要 2、2002 a、69−82 頁。 森 信之「ツーリズムに関する計画論的研究−地域計画との関連を視点として−」観光研究論集 1、2002 b、49−66 頁。 Farrell, T. A. and Marion, J. L.“The protected area visitor impact management(PAVIM)framework : a simplified process for making management decisions” ,Journal of Sustainable Tourism 10−1, 2002, pp. 31−51..
(11) 大阪明浄大学紀要第 3 号(2003 年 3 月). 8 9. Gannon, A.“Rural tourism as a factor in rural community economic development for economies in transition” ,Journal of Sustainable Tourism 2−1・2, 1994, pp. 51−60. McCOOL, S.“Planning for sustainable nature dependent tourism development : the limits of acceptable change system” Tourism Recreation Research 19−2, 1994, pp. 51−55. Murdoch, J.“Sustainable rural development : towards a research agenda” ,Geoforum 24−3, 1993, pp. 225−241. Nelson, J. G.“National parks and protected areas, national conservation strategies and sustainable development” , Geoforum 18−3, 1987, pp. 291−319. Nepal, S. K.“Tourism, national parks and local communities”in Butler, R. W. and Boyd, S. W.(eds.)Tourism and national parks : issues and implications, John Wiley & Sons, 2000, pp. 73−94. Newsome, D., Moore, S. A. and Dowling, R. K. Natural area tourism : ecology, impacts and management, Channel View Publication, 2002, pp. 147−184. Orams, M. B.“A conceptual model of tourist−wildlife interaction : the case for education as a management strategy” , Australian Geographer 27−1, 1996, pp. 39−51. Reynolds, P. C. and Braithwaite, D.“Towards a conceptual framework for wildlife tourism” ,Tourism management 22, 2001, pp. 31−42. Timothy, D. J.“Tourism and community development issues”in Sharpley, R. and Telfer, D. J.(eds.)Tourism and development : concepts and issues, Channel View Publication, 2002, pp. 149−164. Wilson, S., Fesenmaier, D. R., Fesenmaier, J. and van Es, J. C.“Factors for success in rural tourism development” , Journal of Travel Research 40, 2001, pp. 132−138..
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