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グランドチャレンジの追求

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Academic year: 2021

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(1)IPSJ Magazine. [巻頭コラム] グランドチャレンジの追求 ▪北野 宏明 ここ数年,人工知能による科学的発見というテーマに大きな可能性を見出している.それ は,人工知能が,新しい知識を生み出し,その知識を使ってさらに加速的に新たな知識を生 み出すサイクルに入れるかというチャレンジである.現在の人工知能研究は,知的な機械を 作るという方向であるが,さらにその先には,知識を生み出す機械を作るというチャレンジ が待っている. 人工知能の歴史は,グランドチャレンジの歴史でもある.1990 年代中頃から始まった. RoboCup も,ロボットと人工知能分野でのグランドチャレンジとして設定され,いまでは 巨大なプロジェクトとなった.RoboCup からは,物流ロボットのキバ・システム社(現在 のアマゾン・ロボティクス社)や小型二足歩行ロボットのアルデバラン社(現在のソフトバ ンクロボティクス社)が生み出されるなど産業にもインパクトを与えている.21 年目となる. RoboCup は,今年は,名古屋で開催される. 私自身は,ロボットや人工知能と同時に,過去 20 年ぐらいは生命科学の研究を行い,シ ステム・バイオロジーの提唱を始めとして,いろいろな仕事をしてきた.しかし,生物学の 分野は,大きな進歩がある反面,個別の研究は,きわめて属人的かつ労働集約型であると同 時に,対象となる生命現象は,超高次非線形動力学の塊である.さらに,膨大なデータが生 み出され,年間 150 万件の論文が出版されるという分野である.その中に,どっぷりつかっ て研究をした経験から,人間が言語を用いて知的活動を行うということの限界を強く感じて. 270. 情報処理 Vol.58 No.4 Apr. 2017.

(2) ■ 北野 宏明 ソニーコンピュータサイエンス研 究所 代表取締役社長 特定非営利活動法人システム・バ イオロジー研究機構 会長.沖縄科 学技術大学院大学 教授.ロボカッ プ国際委員会ファウンディング・ プレジデント.ソニー株式会社 執 行役員コーポレートエグゼクティ ブ. 工 学 博 士.World Economic Forum(世界経済フォーラム)AI & Robotics Council 委員.. いる.その中から出てきた新たなグランドチャレンジが,「2050 年までに,ノーベル賞級ま たはそれ以上の科学的発見を行う人工知能システムを開発する」というチャレンジである. 米国人工知能学会の会誌 AI Magazine や人工知能学会誌などでも構想を発表した.特に,生 命科学の分野を対象に考えている. このチャレンジの本質は,科学的発見という知的プロセスの深い理解と再定義であり,人 間の最もクリエイティブな活動の 1 つでありサイエンスをいかに人工知能上に再定義できる かにある.また,作業仮説として, 「大規模仮説空間の生成と検証」が再定義された科学的 発見の本質であると考える.また,言語を利用した世界認識の限界を,いかに打ち破るかと いうきわめて重要な問題が内包されている. また,知識が自律的に拡大再生産を行う状態になれば,その人工知能システムが生み出し た知識をどう理解するのかが,我々の日課となるであろう.それは,人工知能システムの自 律進化と新たな文明の誕生を意味するであろう.人類文明の進化は,道具の進化であり,経 済成長は,フロンティアの発見に依存する.知識を生み出す道具は,我々の文明のありかた を根本的に変え,大量の知識という新たなフロンティアを生み出していく.新たなグランド チャレンジは,究極のチャレンジの 1 つとなるであろう.. 情報処理 Vol.58 No.4 Apr. 2017. 271.

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