• 検索結果がありません。

英語アブストラクト・ライティングと論理的思考 : 立命館大学政策科学部の教育実践から

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "英語アブストラクト・ライティングと論理的思考 : 立命館大学政策科学部の教育実践から"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

立命館大学政策科学部の教育目標は、様々な社会問題 や政策課題の解決に有用な知識生産力を鍛えることに ある。そこで 2006 年度教育課程改訂において、英語教 育と専門教育との連携を促進させる改革を行った1)。こ の改革のなかでも、とりわけ本論文が焦点を当てるの は、自分の研究成果を英語で表現するアブストラクト・ ライティングである。英語学習を学士課程の中に根付か せるために、ゼミナール科目の単位修得要件として、年 度末研究成果報告書に外国語のタイトルおよびアブス トラクト(または研究計画の概要。2-4 年次生は 150 語 のアブストラクト、1 年次生は 50 語程度の研究計画概要) を添付することを義務づけ2)、同時に正課外で学生の執 筆活動を支援するライティング・チューター(WT)制 度を発足させた3) アブストラクト・ライティングの取り組みも三年の実 績を持つ。2008 年度は 2-4 年次生ゼミナール担当教員も、 アブストラクト執筆支援と評価にかかわり、いっそう連 携が進んできた4)。しかしながら、この間に学生が提出 したアブストラクトは研究内容を十分に伝え切れてい ないものが多く、類似の誤りも散見されている。今後の 指導を充実させるためには、アブストラクト・ライティ ングにおいて、学生が実際にどこで躓いているか分析 し、検討することが求められる。そこで私たちは、2008 年度に「英語アブストラクト・ライティング・プロジェ クト」を組織し、2007 年度の卒業論文を素材に分析を 進めた5)。本論考は、リサーチ・ペーパーの付属物とみ なされ、それ自体に関心が集まることの少ないアブスト ラクトに着目し、学士課程における指導について考察す るものである。そのために第一節ではアブストラクト・ ライティングの特性と高等教育機関におけるその教育 的実践を概観する。第二節ではアカデミック英語の論理 構造に焦点を当て、論理的思考とアブストラクト・ライ ティングの関係を探る。第三節では、本学部の卒業論文 をケースに質的・量的分析を行い、「良い」アブストラ クトの条件を検討する。最後に、アブストラクト・ライ ティングの指導にかかわる課題を述べて締めくくりと したい。

Ⅰ.アブストラクト・ライティングの教育的価値

よく知られているように、アブストラクトとは学術論 文およびリサーチ・ペーパーの内容を簡潔に示す「摘要」 である6)。アブストラクトは、タイトルやキーワードと 同様、読者の関心を引き寄せ、論文本体を読んでもらう ために重要な役割を担う。研究成果の効果的な公表とい うこの役割のために、アブストラクト・ライティングの 指導を行っている高等教育機関も存在する。しかしなが ら、アブストラクトの役割はそれだけではない。立命館 大学政策科学部では、アブストラクト・ライティングを 一つの教育資源と考え、教育プログラムに取り入れてき た。本節では、他の高等教育機関および本学部における 取り組みを概観し、教育資源としてのアブストラクトの はじめに  Ⅰ.アブストラクト・ライティングの教育的価値 Ⅱ.アブストラクト・ライティングの論理性  Ⅲ.学生アブストラクトの事例分析  むすびにかえて

英語アブストラクト・ライティングと論理的思考

─立命館大学政策科学部の教育実践から─

飯田 未希・田林 葉

キーワード:アブストラクト・ライティング、論理的思考、大学教育、英語教育

(2)

特性を探りたい。 1 .高等教育機関における教育プログラム アブストラクトは通常学術論文やリサーチ・ペーパー が完成してから執筆される。高等教育機関においては、 各種の研究報告会が開催され、学生が報告書やリサーチ・ ペーパーにアブストラクトを添付する機会が増えてい る。上述したように研究成果の公表という観点から重要 な役割を担うアブストラクトであるが、実際の教育現場 ではどのように指導されているのだろうか。 アメリカの大学では、学期中通して開講される通常科 目(アカデミック・ライティング)の一部として取り入 れられることはまれで、単発のワークショップ形式が主 流 の よ う だ7)。 た と え ば ワ シ ン ト ン 大 学( Abstract Writing Workshops)やカリフォルニア州立大学デイヴィ ス校( How to Write an Abstract for the Undergraduate R e s e a r c h , S c h o l a r s h i p a n d C r e a t i v e A c t i v i t i e s Conference)では、1 時間程度のワークショップが学 期に 3 回開かれている。日本に目を移すと、通常英語で の論文投稿を期待される工学系の学士課程および工業高 等専門学校においては、正課の科目として開講されてい るものがある一方、人文社会系では見られなかった8) 大学院レベルでも、北海道大学大学院工学系教育・研究 センターなどにおいて単発のセミナーはいくらか見られ るものの9)、正課に取り入れているのは広島大学大学院 (工学系)や一橋大学大学院社会学研究科など非常に数 少ない。しかも後者は外部の専門業者との連携で開講し ている。これらの結果からアブストラクト・ライティン グを社会科学系学士課程で積極的に取り入れている大学 は少数であることが推察できる10) 2 . 立命館大学政策科学部におけるアブストラクト・ラ イティング指導 社会科学系学士課程においては例の少ないアブストラ クト・ライティングの指導を、本学部では、正課ゼミナー ルと正課外のヘルプデスクを二つの柱として行なってい る。まず正課としては、先述したようにゼミナールの年 度末報告書に外国語アブストラクトを添付することを義 務づけている。具体的には 1 年次生は翌年ゼミナールで 研究する 50 語程度の研究計画概要、2 年次生から 4 年 次生は 150 語程度のアブストラクトを提出する。このよ うな計画の下で、学生は 1 年次生から自分の研究内容を 外国語で端的に表現する訓練を行い、卒業論文(4 年次 生の報告書)において集大成する11)。このような正課 におけるアブストラクト・ライティングを支援するのが、 WTに よ る ヘ ル プ デ ス ク( お よ び 講 師 に よ る ワ ー ク ショップ)である。提出スケジュールに沿って不定期に 開催される正課外のこれらの機会において、学生の個々 の質問に具体的に答えながら、調査の方法、辞書の引き 方、用語のチェック、「良い」アブストラクトの例示な どを通して、学生自らが自分のアブストラクトを改善す る仕組みである。 以上のように、本学部ではゼミナール(および英語科 目)という正課とヘルプデスク(およびワークショップ) という正課外の活動を結びつけ、教育プログラムとして アブストラクト・ライティングを取り入れている。これ は四年間を通して自分の研究内容を英語で簡潔に表現す ることを学生に学ばせるためである。それでは、なぜこ のような取り組みを行っているのか。それは、アブスト ラクトの第一義的存在理由とされる、研究成果の効果的 な公表を行うためだけではない。それは、アブストラク ト・ライティング自体に、教育効果が認められるからで ある。その教育的効用について次項で述べたい。 3 .アブストラクト・ライティングの教育的価値 アブストラクトはリサーチ内部の本質を抽出したもの である。リサーチ・ペーパーの内容を読者に簡潔に示す ことが、アブストラクトの役割である。そのためには、 リサーチ・ペーパーの最も重要な部分を全体から引き出 して、端的に述べる必要がある。 アブストラクトとは「リサーチ・クエスチョンは何か、 そしてその問いがなぜ重要なのか」について端的に表現 した言明である(Madsen 1983)12)。これがリサーチ・ペー パーに不可欠な本質である。Oxford English Dictionary によると、 abstract の名詞の定義は「他のものから抽 象化され引き出されたもの」( Something abstracted or drawn from others)であり、この定義の特殊形として「あ る言明もしくは文書の要約(摘要)」( spec. A summary or epitome of a statement or document. Also attrib.)と されている。この名詞(abstract)が動詞から派生して いるように、アブストラクトの定義の背後には「抽出」 し「抽象化」する行為(abstraction)がある13)。アブス トラクトはより長く、より具体的なリサーチ・ペーパー を要約した「抽象」である。「抽象」とは、あれこれの

(3)

具体的な事例から共通するものを抽出し、一般的に理解 可能なものへと抽象化したものと考えられる。すなわち アブストラクトは、「抽象化」という行為の結果生まれ るものであることが、これらの定義から確認される。 アブストラクトにおいて「抽象化」されるものはリサー チ・ペーパー(コンテンツ)である。完成したリサーチ・ ペーパーにおいては、研究・調査過程で収集した具体的 な事例や情報が整理され、何が問題(論点)でなぜそれ が重要か(論拠)が論理的に整然と配置され、展開され ていなければならない。しかし、当然ながら、語数を制 限されたアブストラクトはリサーチ・ペーパーで述べた 内容すべてを扱えるわけではない。アブストラクトにお いて研究内容を端的に提示するためには、コンテンツの 情報を精選し、より抽象化された一般的な表現を用いて 記述しなければならない。この際肝要なのは、リサーチ・ ペーパーに盛り込まれていた多くの具体的な情報を捨象 し、リサーチの本質のみを選別し、読者に理解しやすい ように論理的に提示することである。このようにアブス トラクト・ライティングにおいては、論理に沿って具体 から抽象化する能力、すなわち論理的な思考プロセスが 求められるのである。 上で見たように、アブストラクト・ライティングには 論理的思考プロセスの本質が内在している。それゆえア ブストラクト・ライティングは学生にとっては非常に難 易度の高い営みとなる。しかし、逆に言えば、アブスト ラクト・ライティングは学生の思考を鍛える教育プログ ラムとしても活用できる。視点を少し教員側に移すと、 私たちは経験上研究内容の充実度がアブストラクトの出 来を大きく左右することを知っている。たとえば、理解 しがたいアブストラクトを持ってくる学生のリサーチ・ ペーパー(コンテンツ)は、まだ完成していないともい える。一般にアブストラクトを執筆する際にはコンテン ツは完成していると想定されるが、アブストラクトを書 く段になって初めてコンテンツ自体が練りきれていない ことを発見することがある。これはアブストラクト・ラ イティングを通して、自分の主張の不明快さや、論の展 開の不十分さに気づくからである。他方、リサーチ・ペー パーの執筆途中でアブストラクトを書いてみる場合を考 えてみよう。アブストラクトという筋を書いてみて、そ れにしたがって本文を展開すると、ほとんどの場合どこ かで詰まる。それは、コンテンツ自体が、論理的整合性 を持つほどに十分整理しきれていないからである。そこ でさらにコンテンツの論理を検討し、書き直し、論理性 の精度を上げていく。このように考えてみると、アブス トラクトはリサーチ・ペーパーの骨子を示すためのプロ ダクトであると同時に、コンテンツの抽象化の精度、す なわち論理的整合性をチェックするためのツールとして も利用できる。これがアブストラクトの教育的活用可能 性である。リサーチ・ペーパーを書き、その途中でアブ ストラクトを書き、またリサーチ・ペーパーを書き直す という行為は、論理的な思考プロセスそのものであり、 良いコンテンツ(リサーチ・ペーパー)と良いアブスト ラクトの創造につながる。 本学部では学士課程全体を通してこのような教育プロ グラムを実践しているが14)、この営みは大学院でも続く。 政策科学研究科においては、正課科目として「アブスト ラクト・ライティング」を開講し、アカデミックな英語 の論理構成を学ぶだけでなく、実際のアブストラクトを 作成する訓練も行っている。さらに、一部の大学院ゼミ ナールではリサーチ・ペーパーが未完の段階で学生にア ブストラクトを書かせ、アブストラクトの論理的整合性 をクラスでチェックすることにより、ペーパー自体の内 容を検討する試みを始めた。ペーパーの結論がはっきり しない段階で、英語のアブストラクトを書くことは、大 学院学生にとっても大変な苦労が伴う。しかしこの検討 により、ペーパー自体の論旨に軌道修正を加えることが でき、提出されたアブストラクトならびにペーパーの完 成度から、この試みの効果を一定確認することができた。 これが抽象化の精度および論理的整合性をチェックする ツール、すなわち教育資源としてのアブストラクトの役 割であろう。アブストラクト執筆における抽象化の精度 チェックは、論点(issue)と論拠(reason)を過不足な く提示するための論理の訓練そのものである。これが、 アブストラクト・ライティングの教育的価値である。そ こで次節においては、英語アブストラクト・ライティン グの背後にある論理的思考(論理性)について、さらに 議論を展開したい。

Ⅱ.アブストラクト・ライティングの論理性

これまでアブストラクト・ライティングの役割をリ サーチの過程との関係から考察してきた。本節では、視 点を英語教育の側にやや引き寄せて、論理的な思考力の 訓練をなぜ英語で行うことが重要であるのかを議論して

(4)

いきたいと思う。 1 .アカデミックな英語の構造と論理性 大学における英語教育が問題視され議論されるように なって久しいが、この問題の本質に迫るためには大学教 育において「英語力」がどのように定義されているかを 考える必要があるだろう。現在、大学の英語教育におい ては、「英語力」とは「四技能」、すなわちスピーキング、 リスニング、リーディング、ライティングの四つの数値 化可能な「スキル」を総合したものだとみなされること が多い。このような技術の集積としての「英語力」とい う概念の根本的な問題は、そのような細分化、数値化に よって、より統合的な「考える」というプロセスから「英 語力」を切り離すことになってしまったことにある。言 い換えるならば、このような英語教育観のもとでは、英 語の技能(スピーキング、リスニング、リーディング、 ライティング)を高めることと、考え分析するという能 力を高めることとは別個のものとみなされているという ことである15) 近年の大学英語教育に関する議論において、これまで このように英語教育の「外部」とみなされてきた「思考 力」を、英語教育の中心的な課題として位置づけようと いう試みがある16)。これはアカデミックな英語の構造 を理解することが学生の思考力を高めるという考え方に 基づいており、本論もこの立場に立っている17)。では、 まず思考力とは何だろうか。本論では紙幅の都合上この 問題自体を議論することはできないが、近年注目されて いる「クリティカル・シンキング」(critical thinking) の議論を参考に、簡単に説明しておきたい。クリティカ ル・シンキングとは生徒および学生が「自分自身で考え 判断する能力」を養うことを目的とした教育実践であり、 英語圏では専門領域の垣根を越えて、多くの教育分野で 議論されている18)。「クリティカル・シンキング」の中 にもさまざまな考え方があるが、単純化すると「論理的 な思考力」であるといえるだろう(Brown and Keeley 2007; Fisher 2001; Paul and Elder 2000; 伊勢田 2005)。「論 理的な思考力」とは、「論理構造19)」を理解し運用する 能力である。論理構造は「論点」(issue)とそれをサポー トする「論拠」(reason)によって成り立つ。コミュニケー ションの中で、自分もしくは相手が「言いたいこと」(論 点)は何か、そしてその「言いたいこと」は「どのよう な理由」(論拠)によって支えられているかを精査する 思考の技術が「論理的な思考力」である。「論点と論拠」 という論理構造を理解することで、学生はその両者に整 合性があるのかを判断できるようになる。さらにその思 考法を応用して、さまざまな情報や自分自身の考え方を 検証できるようになるだろう。このような論理構造の理 解をベースにした思考力を、本論では英語教育において 養うべきであると考えている。アカデミックな英語、特 に本節後半で述べる英語アブストラクトの構造は、この 「論理的な思考力」を学ぶのに適している、というのが 本論の主張である。 では、アカデミックな英語の構造とはどのようなもの であろうか。ここで言う「アカデミックな英語」とは、 英語圏の高等教育で重視され、リーディングやライティ ングのみならず、ディスカッションやプレゼンテーショ ンにおいても基礎となる英語のことであり、日常的な英 語と比較すると非常に強い論理構造を持つものを指す。 アカデミックなレベルでの「良い」英文とは、まず「パ ラ グ ラ フ 」(paragraph) に お い て「 主 題 文 」(topic sentence)と「補強部20)」(supporting sentences)とい う区分があり21)、それぞれが明確に表現されている文 章22)のことである。主題文とは、一つのパラグラフの 中に一つ存在し、パラグラフの「主題」(topic)を明確 に提示するものである。そして主題文には主題を説明す る「言明」(statement; controlling idea)が含まれてい る必要がある23) 。以下の例文を見てみよう。

 The professor gave a boring lecture.

この主題文においては、主題は「教授」( the professor ) であり、言明となるのが「退屈な講義をした」( gave a boring lecture)ということである。この文を主題文と するパラグラフにおいては、パラグラフ全体で「退屈な 講義」とはどのようなものであるのかを、一貫して説明 しなければならない。これが「補強部」の役割である。 主題文の言明は、それ自体では具体性を欠いた抽象的な ものである。補強部において具体的に展開することに よって、抽象的な主題文は具体的な輪郭を持つことにな る。「良い」英文は、まず、パラグラフレベルで主題文 と補強部の役割分担が明確である。そして、この「主題 文と補強部」という構造を複数のパラグラフに拡大展開 したものが「エッセイ」(essay)である24)。主題を明確 にし、それを具体的に展開するというパラグラフの基本

(5)

構造は、リサーチ・ペーパーなどパラグラフより長い文 章においても共有されている。これがアカデミックな英 文の基本構造なのである。 「主題文と補強部」という英文の構造は、先に述べた「論 理的な思考力」を養う上で次の二点において適している。 まず第一に、アカデミックな英文の構造を学ぶことで、 学生は抽象と具体という次元の区別を学ぶ。抽象と具体 という次元の区別は、論理構造の論点を明確化するため に重要である。論点とは、論者が「一番言いたいこと」 であり、具体的な説明を捨象した、「もっとも重要なポ イント」である。この論点に対応するのが、アカデミッ クな英文でいう「主題文」である。主題文は、主題文を 説明し展開する「補強部」とは抽象度において区別され る。補強部は、主題文の抽象的な説明を具体的に展開す る。言い換えると、補強部の具体的な説明に共通する 「もっとも重要なポイント」を抽出したものが、主題文 なのである。このように、抽象的な文が主題を述べ、そ れより具体的な文が説明をするという区別は、アカデ ミックな英語の構造においてはもっとも根本的なもので ある。したがって、アカデミックな英語の構造を学ぶこ とによって、学生は抽象的な論点とその具体的な説明と いう区別を学ぶことができるだろう。 第二に、アカデミックな英語の構造(「主題文と補強 部」)から、学生は「論理構造」を理解するようになる。 先に述べたように、論理構造とは「論点」と「論拠」を 合わせたものである。論者が論点を主張するためは、そ れが正当であることを示す論拠を述べることが必要であ る。この論拠が読み手に納得できるものである場合、論 者の主張は客観的であるとみなされる。このような論理 構造は、「主題文と補強部」という英文の構造でも重要 である。上の主題文の例( The professor gave a boring lecture.)を考えてみると、この主題文は、「教授の授業」 が「退屈」であるという抽象的な言明であり、明確な理 由によってサポートされていない。このため、書き手は 「なぜ、どのように」教授の授業が「退屈」であったか について、具体的に説明し、論拠を提出する必要がある。 これが「補強部」の役割である25)。このように、主題 文と補強部の関係は、「論点と論拠」という論理的な構 造を持つ。したがって、アカデミックな英文の構造を理 解することは、論理構造を理解することにつながる。ア カデミックな英文の構造(「主題文と補強部」)への理解 を通じて、学生は「論理的な思考力」を学ぶことができ るだろう。 2 .日本の中等高等教育における論理性の訓練 これまでの議論で、アカデミックな英語の論理構造を 学ぶことによって、学生が論理的な思考法を身に付ける 可能性について述べてきた。しかし、実際にはこの議論 は二つの論点を含んでいる。すなわち、英語の論理構造 を学ぶことと、論理的な思考法を身につけることである。 そして、後者は日本語のみでも可能のようにも思える。 実際、日本語でのライティングスキルを高めるための科 目を開講する大学もあらわれてきている26)。しかしな がら、アカデミックな英語の厳密な構造を練習として使 うことは、日本語での日常的な思考パターンから距離を 置くためにはより実効性のある方法であると思われる。 なぜなら、日本の中等教育において一般的なタイプの「作 文」は、書き手の主観的な意見を述べるものであり、書 き手の意見を客観的かつ論理的に提示するタイプの文章 モデルに生徒が接する機会は少ないからである。 大井恭子(2006)によると、日本での作文教育は形式 も内容も「自由に思いつくままに」書かせ、主観的な傾 向が強いのに対し、アメリカでは基本的なスタイルの 「型」を学ばせ、客観的に自分の意見を述べる訓練を行 うことから始めるという。このような作文教育における 学習者側の持つ「作文」に対するイメージの違いは、大 学生でも大きな変化はない。大学生が英語で書いた「意 見文」(「結婚について」)の日米比較によると、日本の 大学生が書いた英作文は身近なエピソードの羅列に終始 し、ほとんどの文が I から始まっている27)。これに対 し、アメリカの学生の作文は客観的であり、抽象的な内 容を具体的に説明するという形をとっている28)。日本 の作文教育では具体/抽象という概念のレベルの区別を 訓練しないため、日本で中等教育を受けた学生は自分の 意見を一般化した形で述べることが難しい傾向にあると いう(大井 2006, 108-109)。 アカデミックな英文の構造を学ぶことは、抽象的な論 理を「英語」という具体を通して学ぶ道筋である。抽象 的な論理構造が、実は学生自身が読んでいる英文の中に 存在することを意識できるようになると、論理は彼らに とってより身近で具体的なものになるだろう。逆に、ア カデミックな英文という具体性なしに論理構造のみを学 ぶと、学生は過度に抽象的であると感じる可能性もある。 論理的思考を学ぶためには、具体的な素材を通した訓練

(6)

が重要であり、アカデミックな英語は格好の素材といえ るだろう。 3 .アブストラクト・ライティングと論理的思考の訓練 アブストラクトはアカデミックな英語構造の特殊形式 である。しかし、アブストラクト・ライティングとアカ デミック・ライティングには重要な違いがある。学生が アカデミックな英作文を学ぶ際は、書く「内容」よりも 英文の「構造」を学ぶことが重視されている。これに対 し、学生がアブストラクトを書くためには、まず現実に 研究調査を行い、それを素材として目的や結論、調査法 について簡潔かつ論理的に要約する必要がある。した がって、アブストラクトを書く際には、「主題」(リサー チの「対象」)について、学生は深く理解し、また理論 的な知識をあわせ持っている場合が多い。これは通常の 英作文では要求されないことである。また、学生はアブ ストラクトを書く際に、リサーチの結果得た膨大な情報 の中から、重要なポイントを抽出する。このような情報 量も、通常の英作文では要求されていない。主題につい て深く理論的な知識があることや、膨大な情報量を持つ ことは、必ずしも英文の「構造」を理解することに結び つかないと考えられているからである。むしろ、英文の 構造を意識するためには、内容は理解しやすい単純なも のがよい。これが、通常の英作文の授業での前提となっ ている。しかしながら、英文の構造が持つ論理性を思考 の訓練に活かすためには、学生がより深く理解するもの を「素材」とした方がよいはずである。リサーチを通じ て得た複雑かつ膨大なデータを、英語アブストラクトの 単純な論理構造に落とし込むことは、学生にとっては容 易ではない。しかし、対象について深く広く学んでいる からこそ、その中からポイントを抽出し論理的に整理す る作業は、学生にとって格別に有意義な訓練となりえる。 「論理」が単に抽象的な構造ではなく、自分の知識と経 験によって血肉化され、具体性をもつようになるからで ある。この意味で、アブストラクト・ライティングは、 一般的な英作文より複雑かつ高度な思考作業を伴うが、 より実践的な知のあり方を志向するものだといえるだろ う。 アブストラクト・ライティングは非常に抽象的で論理 的な作業なので、少なくとも英文の構造という観点から は、単純でわかりやすい目標を学生に示す必要がある。 アブストラクトの目的はリサーチ・ペーパーの内容を簡 潔に示すことなので、アブストラクトはリサーチを要約 するうえで必要不可欠なポイントを、論理的に記述する ものである。この「必要不可欠なポイント」のことを、 これ以降本論では「要素」と呼ぶ。アブストラクト・ラ イティングで重要な目標は、この要素を理解すること、 そして要素の論理的な提示のしかた学ぶこと、の二点で あろう。アブストラクトの要素とは、「研究背景」(①)、 「研究目的」(②)、「研究素材と方法」(③)、「研究結果」 (④)、「結論」(⑤)、の五点である29)。これら五つの要 素を、本学部の学生が卒業論文のために作成したアブス トラクトから見てみよう。 [サンプル 130)

The Development of Carriage Transportation: Modernization and the Movement against Animal Abuse

in Early Modern Japan

(A)In the Meiji period, as carriages were imported from the West, Japanese people were faced with the problem of animal abuse. In the early stage of animal abuse in Japan, horses were transformed from the personal property of farmers into animals of labor, used for transportation.(B)This paper focuses on Japanese legal regulations against animal abuse in order to examine the process by which public opinion about animal abuse in Japan evolved and developed.(C)For this purpose, I analyzed Japanese laws, newspaper articles and specialist journals of the time. By analyzing changing regulations with regard to the carriage transportation,(D)I found that the process of industrial development coincides with the emergence of public opinion against animal abuse. I also found that the activities of the S.P.C.A.(Society for the Prevention of Cruelty to Animals)were related to the Plan for Enriching the Nation and Building up the Defenses , proposed by the Meiji government. Moreover, the study showed that public opinion against animal abuse may have affected the legal regulations of the time. (E)These findings prove that the movement against

animal abuse was not imposed on Japan entirely by international pressure, but that this movement had its origins in the development of public opinion against

(7)

animal abuse during the Meiji period. 上のサンプル 1 は学生が書いたアブストラクトとしては 例外的に良いものである。五つの要素をすべて記述し、 また英文としても洗練されている。次節で見るように、 多くの学生のアブストラクトはこれほど良くはない。し たがって、このサンプル 1 は学生の書いたアブストラク ト全体の傾向を示すものではなく、アブストラクトの「理 念型」(ideal type)としてここで提示している。このサ ンプルにおいては、「研究背景」(①)はアブストラクト の最初の二文(下線(A))である。ここで書き手は「動 物虐待」が問題となった歴史的背景として「西洋からの 馬車の到来」ということを挙げている。そして「研究の 目的」(②)を三番目の文(下線(B))で導入し、「動 物虐待」に対する「世論の変化」を日本の動物に対する 法的な規制に焦点を当てることで分析したいとしてい る。次に、下線(C)で「研究素材と方法」(③)を導 入し、当時の「日本の法律や、新聞など公的な出版物」 を分析すると説明している。そして下線(D)において、 「研究の結果」(④)を述べ、当時の出版物などの分析か ら得られた「世論の変化」を三点説明している。このよ うなデータの分析を経た後の最後の文(下線(E))で、 書き手はこの研究のより大きな「結論」(⑤)を提示し ている。すなわち、「日本での動物虐待に対する反対運 動が単なる外圧ではなく、内的な発展に基づいていた」 ことを、③、④で得られたデータの結果から敷衍した「結 論」として述べているのである。 サンプル 1 のような「良い」アブストラクトは、Ⅱ.1 で述べたアカデミックな英文の特徴とパラレルな二段階 の思考プロセスを経て作成される。この二段階とは、「要 素の抽出」と「論理的な構造化31)」である。第一段階 の要素の抽出というのは、自分の研究の中から、より抽 象的な論点と、より具体的な説明や例を区別する作業で ある。アブストラクトを書くためには上の五つの要素を 自分の研究全体から抽出する必要がある。この作業によ り、より抽象的な表現(①∼⑤)と、それ以外のより具 体的な説明(論文のうち「五要素」として言及されなかっ た部分)を、書き手は区別する。具体的なリサーチのプ ロセスから五要素(「背景」、「目的」、「素材と方法」、「結 果」、「結論」)を抽出し言語化していくことが、アブス トラクト・ライティングの第一段階として重要である。 アブストラクト・ライティングの第二段階は、論理的 な構造化である。論理的な構造化とは、書き手が五要素 を論点と論拠に区別し、両者を整合性のある形で結び付 けることである。この構造化において特に重要なのは、 この五要素の中からより中心的なポイントと、より従属 的もしくは周縁的なポイントを区分し、それらの関係を 理解することである。アブストラクトで最も中心的なポ イントは「研究目的」(②)と「結論」(⑤)である。研 究の「目的」(②)は、書き手の問題意識を、一般化可 能な問題設定として抽象的かつ学問的に述べるものであ る。そして、「結論」(⑤)は、リサーチから得た「結果」 (④)を「目的」との関係から抽象化したものである。 アブストラクトは研究の概略を簡潔に説明するものであ り、「目的」と「結論」なしには成立しない。したがっ てこの「目的」と「結論」が結び付いて、リサーチ全体 のもっとも中心的な論点を構成する。 これに対し、「研究素材と方法」(③)および「研究結 果」(④)は、「目的」(②)や「結論」(⑤)に比較して より従属的なものとして位置づけられる。すなわち、研 究の「素材と方法」の選択は「目的」との整合性なしに は選択不可能であり、したがって「目的」によって決定 されるものである。これに対し「研究結果」は、「素材 と方法」によって得られた研究の直接的な「結果」であ る。この「結果」はそれ自体では意味をなさない。「研 究目的」に結び付けられることによって初めて、リサー チ全体の「結論」を導き出すための「論拠」となるので ある。このような意味で、「研究素材と方法」および「研 究結果」は、研究の「目的」と「結論」の両者に対して より従属的な立場にある。 最後に「研究背景」(①)は、アブストラクト全体の 中で最も周縁的なものである。研究の「背景」とは、研 究の「目的」(②)を説明するために必要なコンテクス トの説明である。この「背景」は、「素材と方法」、「結果」 などと比較すると、研究のプロセスの「外部」に位置し、 それ自体はリサーチによって証明できるものではない。 したがって、リサーチの論点の構成という観点からする と他の要素と比較して、より外部的かつ周縁的なもの位 置づけられるのである。 このように、アブストラクトで研究の概要を述べる際 には、「何が最も中心的な論点か」ということを学生自 身が意識できるようになる必要がある。これまで述べた ようにアブストラクトは二段階の思考プロセスを経てい る。第一段階として、学生はリサーチの具体的なデータ

(8)

から、アブストラクトで述べるべき五要素(「背景」、「目 的」、「素材と方法」、「結果」、「結論」)を抽出する。そ して、第二段階として、これらの五要素から論理的な構 造を作る。五要素の中で重要度を区別し、より中心的な 論点(「目的」と「結論」)から、より従属的な論点(「背 景」、「素材と方法」、「結果」)を区分する。このような 重要度の区別を意識することによって、「論点」と「論拠」 という論理構造を学ぶことができる。社会科学系の学部 では、リサーチを通して現実社会と接点を作ることが重 視される傾向にあり、多くの学生はフィールドに出たり、 膨大な文献資料と取り組みながら「社会」を理解しよう としている。アブストラクト・ライティングは、学生は リサーチから学んだことを論理的に構成する契機となる だろう。

Ⅲ.学生アブストラクトの事例分析

では、学生は実際にどのようなアブストラクトを書い ているのであろうか。本節では、2007 年度卒業の四年 次生が卒業論文とともに提出した英語アブストラク ト 32)(有効サンプル 129 篇)の質的および量的分析を行 う。前節ではアブストラクトの論理性を説明するために、 学生が書いた中では例外的に「良い」アブストラクト(サ ンプル 1)を理念型として提示した。サンプル 1 は論理 的構造という観点から優れているだけでなく、英語表現 としても抜群によいものである。しかし、多くの学生が 書くアブストラクトは、論理構造への意識も、英語表現 も、サンプル 1 にははるかに及ばない。したがって、本 節前半において、学生アブストラクトの実態をより反映 していると思われるアブストラクト二篇を選び、内容を 具体的に分析する。特に、アブストラクトの五要素を学 生がどのように表現しているか分析し、表現の論理性を 見る。さらに、本節後半の量的分析では、学生が書いた 129 篇のアブストラクトを全体的な傾向をとらえるため に概観する。特に、前節で説明したアブストラクトの五 要素(「研究背景」、「研究目的」、「研究素材と方法」、「研 究結果」、「結論」)を、学生がどのくらい抽出でき、ま た論理的に構造化できたのかを見て、これからの課題を 考えたい。 1 .学生アブストラクトの論理性と英語表現 Ⅱ.3 で示した「五要素の抽出」と「論理的構造化」と いうアブストラクトにおける二段階の思考過程を、学生 がどの程度理解および実践できているか本節では考えた い。前節のサンプル 1 は五要素全てが記載されている理 想的なものであった。これに対し、本節で紹介するサン プル 2 とサンプル 3 は不完全なものである。サンプル 2 は五要素中の四つのみ記載されており、サンプル 3 は五 要素全てが記述されていないものである。後述するよう に、多くの学生のアブストラクトはこの二つのサンプル の範囲に収まるものである。したがって、この二つのサ ンプルは学生の思考過程の全体的な傾向を考える上で は、よりよいものであるといえるだろう。 1 . 1 .五要素の抽出 まず、学生がアブストラクトの五要素をどのように抽 出しているかを、サンプル 2 から見てみよう。このサン プルは、先に述べたアブストラクトに記述すべき五要素 中、「研究結果」(④)以外の四つの要素が記述されてい るものである。 [サンプル 2]

The change of Taiwanese identity caused by foreign power

(A)The idea of the independence of Taiwan often causes conflict.(B)However, how and when did this problem occur?(C)This study reveals that it came from the change of Taiwanese identity and how the politics of the foreign power affected and formed it.(D)In past colonial administration, especially Japanese did not only develop the Taiwanese economy but also took an assimilation policy which affected Taiwanese identity a lot.(E)Taiwanese people struggled among their inculcated Japanese identity, the inculcated Chinese identity created by the Kuomintang government and the Taiwanese identity this is demonstrated by their experience in differentiating between them and us .(F) Therefore, the purpose of this study is to consider that how their obscure identities affect today s situation and the future.(G)This paper reviews the past colonial administrations policy and Taiwanese identity caused by harmful effect of the imperfect assimilation policy.

(9)

「五要素の抽出」という観点からすると、この「台湾人 アイデンティティ」(Taiwanese identity)を主題とする 文章では、「研究背景」(①)をあらわしているのは下線 (A)、「研究目的」(②)をあらわしているのは下線(B) と(F)、「研究素材と方法」(③)をあらわしているの は下線(G)、「研究結果」(④)を記述する文はなく、「結 論」(⑤)をあらわしているのは下線(C)であるとみ なすことができる。五つの要素のうち、「研究結果」(④) のみが記述されていない文章である33) しかし、この区分はあくまでも目安であり、英語表現 上①∼⑤までの要素のいずれともいえない文もよくみら れる。このような曖昧さは上記のサンプル 2 だけではな く、学生が書いたアブストラクト全体についていえる傾 向である。五要素の記述が「ある」か「ない」かという 判断は客観的に行えるものではなく、読み手の解釈に依 存する面が大きいのである。例えばサンプル 2 で言えば 下線(A)と下線(B)の関係は二通りに解釈すること が可能である。一つ目の解釈は、上記のとおり、下線(A) を「背景」(①)とみなし、下線(B)を「目的」(②) を述べた文とみなすものである。(A)は「台湾の独立 はしばしば対立を引き起こす」という一般的な事象、す なわち研究の「背景」を述べ、(B)は書き手がリサー チで問いたい疑問(「いつ、どのようにして、この問題(= 「対立」)は起きたのか」)を提示し、リサーチの「目的」 を述べているとみなすのである。これに対し、二つ目の 解釈として、(A)と(B)の文の両方を「目的」(②) とみなし、「背景」(①)は記述されていないと考えるこ とも可能である。(A)の文の内容( conflict )が、(B) の文で this problem として言及されており、(A)と(B) の二文が一体となって「目的」を述べていると解釈でき るからである。この場合、(A)と(B)の文は一つの文 章で表現できる。例えば、 In my research, I would like to show how and when the independence of Taiwan became the stirring issue in Taiwan, frequently invoking nationwide conflicts. である。私たち論者はこの(A)、(B) の二文で「背景」(①)+「目的」(②)を表現している とみなしているが、二つの文をあわせて「目的」とみな し、「背景」は「なし」と解釈することも可能である。 このように、アブストラクトの五要素の判別は曖昧であ り、読み手の主観的な解釈による面が大きい。 五要素の判別は読み手の解釈に影響されやすい。しか し、英文アブストラクトに特徴的な書き方を学ぶことで、 アブストラクトで伝えるべき五つの要素を強調すること ができる。特に、第一段階の五要素の抽出においては、 アブストラクトの五要素が入っていることを強調する英 文の語句を使うことが重要である34)。例えば、上の例 文であれば下線(C)の This study reveals…  や、下 線(F)の the purpose of this study…,  さらに下線(G) の This paper reviews… などである。 This study 、 this paper などの定型化された主語は、研究の「主題」 を言語化し、読み手に提示することを可能にする。これ に対し、 reviews,   reveals などの動詞は、書き手が 研究で何を「する」のかという、書き手の行為を区別す るのに役立つ。例えば reviews は「研究素材と方法」 (③)を述べる際に使われるのが普通であり、 reveals は「研究結果」(④)、もしくはより一般的な「結論」(⑤) に言及する際に使われる動詞である。このような定型表 現は必ずしも抽象的なものばかりではない。「目的」(②) を述べるために、 I study … のように、平易な文を使う ことも多いのである。 I を主語とする文は「学術的で ない」とみなされることも多いが、五要素の抽出という 訓練にはむしろ向いている。無生物主語や抽象名詞を多 用するよりも S + V という英語の基本文型が明確にな るからである。これにより、学生が調査を行う行為主体 ( S )であることがはっきりする。英語の定型化表現が 重要であるのは、「調査者」(書き手)と「調査対象」と いう関係を文中で明確に表現可能にするからである。逆 に、このような定型化された表現がないと、読み手は書 き手がどのようなリサーチを行ったのか理解できなくな る。サンプル 3 は、上記の定型化表現が全くない例であ る。 [サンプル 3]

The Impact of Oil & Gas Nationalism on Diplomacy

(A)Diplomacy is very important role of states. There were main three kind of pressure. They are pressure from power, economy, and international public opinion. Each pressure has different characters and work well in different situations.

Importance of each pressure has changed according to the period. Pressure from power was thought as most important pressure until the cold war ends. After the cold

(10)

war, pressure from economy gets more importance because that scale of international economy is expanding. And now, international public opinion is also thought as important pressure. As democracy expands, international public opinion becomes more important.

(B)There is one tendency that gas & oil nationalism in South America. Oil nationalization has started since 1970s. However latest oil & gas nationalization has different purpose from former one. Latest oil & gas nationalization gets impact on diplomacy as pressure from economy. この文章は、タイトルからすると「原油、天然ガスのナ ショナリズムの外交に与える影響」となっている。実際、 下線(A)や(B)で始まる段落では、「外交」や「原油、 天然ガスのナショナリズム」について、書き手は言及し ている。しかし、このアブストラクトを読んでも、書き 手が「何」を研究したのか、「どのような」結論を得た のか、「何」を素材として「どのように」調べたのかに ついての情報を、読み手が得ることはない。サンプル 2 でみたような定型化表現が全く使用されておらず、「調 査者」/「調査対象」という関係が文中に表現されてい ないのである。このため、書き手の「リサーチ」がアブ ストラクトで記述されていることとどのように関係して いるのか文中で説明されず、ただの一般論になっている。 もちろん定型化された表現を使っても、アブストラクト が英語表現としては、より「良い」ものとはならない場 合も多い。定型化表現は多くの場合抽象度が高く、学生 が書く英語とは語彙、文法の両面でギャップがあるから である。しかし、定型化表現を意識しないと、上のサン プル 3 のように、書き手が研究対象にどのようにアプ ローチしたかが記述されず、ただの一般論になる可能性 が大きい。したがって、リサーチから重要なポイントを 抽出する訓練(「五要素の抽出」)としては、この定型化 表現を学生に意識させるのは有意義であると思われる。 1 . 2 .五要素の論理的構造化 「論理的構造化」とは、リサーチから抽象化したポイ ント間の整合性(関連性)を意識し論理的に提示するこ とである。この論理的な構造化をアブストラクトで学生 がどのくらい意識しているかを見るために、上記の五要 素の相互関係を三つに分類し目安とする。第一に、リサー チの「目的」(②)とリサーチ全体の「結論」(⑤)が両 方とも述べられていることを確認する(関係 1)。この 両者はリサーチで書き手が述べる最も重要な「論点」を 形成する。第二に、「関係 2」として、研究の「素材と 方法」(③)と、その「結果」(④)の両方が含まれてい るかを確認する。実際の研究プロセスを書き手が的確に 要約しているかを見るためである。最後に、書き手の論 理性への意識を見るために「関係 3」を考える。関係 3 は関係 1 と関係 2 の両方があるかどうかを見るものであ る。関係 1 は書き手の論点を示すものであるのに対し、 関係 2 は、書き手が論点をサポートするために示す論拠 である。論拠があって初めて、書き手は論理的に論点を 述べることができる。したがって、関係 3 は、論理構造 への学生への理解度を見るものである。 サンプル 2 に戻って考えると、関係 1 の「目的」(②) と「結論」(⑤)の対応は文中に存在する。下線(B)(= 「目的」)と下線(C)(=「結論」)である。しかし、こ の対応は内容的には不十分なものである。先に述べたよ うに、(B)は「目的」を述べるにはやや抽象度が低い 表現である。「何」を調べたいのか(「目的」)を、文と して十分表現しているとはいえない。「結論」をあらわ す下線(C)も同様である。文章後半の how the politics of the foreign power affected and formed it という箇所 で、「影響」がどのようなものであるのかを十分に言語 化せず、how を使った表現で言及するにとどめている。 「結論」の抽象化としては不十分である。したがって、「目 的」(②)と「結論」(⑤)を述べる文章があるといって も、書き手のもっとも中心的な「主張」を述べるという 点では弱い表現である。ただ、アブストラクトを書く上 で一番重要な「論点」(「目的」+「結論」)を伝える努 力はしているので、サンプル 2 の書き手はアブストラク トの役割を理解していると見ることはできる。適切な助 言をすれば、より強い表現で論点を述べることができる だろう。 次に、このサンプル 2 で研究プロセスの要約がどのよ うに行われているか(関係 2)を見よう。リサーチを的 確に要約するためには「研究素材と方法」(③)と「研 究結果」(④)の両者を述べる必要がある。サンプル 2 では「素材と方法」(③)に関する記述はあるが(下線 (G))、「研究結果」(④)に関するものはない35)。それ ゆえ、このアブストラクトには「研究過程の要約」(関 係 2)は存在しない。したがって、「関係 3」(「論理構造」)

(11)

も存在しない。関係 3 は、関係 1 と関係 2 の両者を必要 とするからである。 このサンプル 2 は、「研究結果」(④)を明確に記述し ていないために、「研究プロセスの要約」(関係 2)、お よび、論理構造の中での「論拠の提示」(関係 3)が不 完全である。この文章の根本的な問題は、論理的構造を 理解していないということである。つまり「論点」(関 係 1)を提示するためには、「論拠」(関係 2)を示す必 要があるということの理解が不十分なのである。このた め、アブストラクトの書き方としては問題点が多いもの となっている。特に問題なのが、論拠に関する二つのポ イントである。一つ目は、「研究素材と方法」(③)を示 す文がアブストラクトの最後におかれていることであ る。「素材と方法」は、書き手が述べる論点を説明する ために必要なものであるから、論点に近い場所で述べる 必要がある。二つ目の問題は、下線(D)と(E)の文 章が文中で果たす役割が不明確であることである。(D)、 (E)は書き手が「論点」(下線(B)+(C))で述べる「過 去の植民地政策」の説明であり、おそらく書き手はこの (D)、(E)の内容を、研究を通じて得たはずである。し たがって、(D)、(E)は「研究結果」(④)として記述 されるべき内容であろう。しかしこの文章表現からは、 書き手がここで研究の「結果」を述べているとは読み手 は判断できない。この理由は、まず「素材と方法」(③) を述べる文(G)と離れていること、そして定型表現な どで(D)、(E)が「結果」(④)であると言及されない ことのためである。論理的な整合性をもう少し意識して サンプル 2 の文を並べ替えると以下のようになる。(「目 的」をあらわす文が二つある(B と F)ので、(F)は省 略した。)

(A)The idea of the independence of Taiwan often causes conflict.(B)However, how and when did this problem occur?(G)This paper reviews the past colonial administrations policy and Taiwanese identity caused by harmful effect of the imperfect assimilation policy.(D) In past colonial administration, especially Japanese did not only develop the Taiwanese economy but also took an assimilation policy which affected Taiwanese identity a lot.(E)Taiwanese people struggled among their inculcated Japanese identity, the inculcated Chinese identity created by the Kuomintang government and the

Taiwanese identity this is demonstrated by their experience in differentiating between them and us .(C) This study reveals that it came from the change of Taiwanese identity and how the politics of the foreign power affected and formed it.

このように、文の配置は論理的構造化の上で重要な役割 を果たす。下線(G)(「素材と方法」)と下線(D)およ び(E)(「研究結果」)が上記のように文中でより近い 位置におかれると、両者を論拠(関係 2 =「素材と方法」 +「結果」)として理解することが可能になる。また、 論拠となる関係 2 が、(B)(「目的」)と(C)(「結論」) の間に入ることで、論理構造(関係 3)が明確になる。(B) で提示した主題を、(G)、(D)、(E)の文が論拠として サポートし、(C)の「結論」へ論理的につなげる働き をするからである。このような位置関係によって、「論点」 (「目的」+「結論」)と「論拠」(「素材と方法」+「結果」) の関係が明確になる。アブストラクトを論理的な構成に するためには、このように抽象化した要素間の論理的な つながりを理解し、それにふさわしい配置を考える必要 がある。上記の例文が示すように文の間の接続関係を明 示して初めて、書き手は「論点と論拠」という構造を読 み手に提示することができるのである。 Ⅱ.3 のアブストラクト・ライティングの理念的な枠組 みでは、論理的構造化は第二段階として位置づけられて いる。しかし、五要素の抽出(第一段階)と論理的構造 化(第二段階)は、必ずしも排他的な「段階」ではない。 むしろ、第一段階の抽出と、第二段階の論理的構造化は 深く結び付いている。サンプル 2 で見ると、第一段階で 「研究結果」(④)の抽出ができていないのは、実は第二 段階の論理的構造化の意義を書き手が理解していないか らである可能性が高い。つまり、「研究結果」が論拠と して必要であることを理解しないと、なぜそれを抽出す る必要があるかも本当の意味では理解できないからであ る。このように考えると、第一段階の五要素の抽出と第 二段階の論理的構造化は理論的には区分可能だが、実際 の訓練の上では何かの形で橋渡しする必要があることが わかる。アブストラクトを書いたことのない学生にアブ ストラクト・ライティングを教える場合、第一段階の抽 出に焦点を当てるのが妥当であるが、それと同時にアブ ストラクト全体の論理構造を意識させる訓練も考える必 要がありそうである。

(12)

2 .学生アブストラクトの全般的傾向 次に、学生が書いたアブストラクトの全体的な傾向を 概観してみよう。前節で行った内容分析では、学生のア ブストラクトを素材として、個別のサンプルを用いて「五 要素の抽出」と「論理的構造化」という二段階の思考作 業を分析した。本節では量的な分析を使って、学生が書 いたアブストラクトの全般的な傾向を考えてみたい。日 本においては学生アブストラクトの分析がほとんど存在 しないため、このような分析は研究や教育に役に立つ可 能性があるからだ。アブストラクトの量的分析では、こ れまで見てきたアブストラクトの五要素(「背景」、「目 的」、「素材と方法」、「結果」、「結論」)が記述されてい るかどうか(「記載あり」と「記載なし」)を判別し、「五 要素の抽出」と「論理的構造化」の二段階に数値化して いく。 しかしながら、前節で述べたように、五要素を判別す る作業は、かなり曖昧なものであり、読み手側の解釈に 依存する面が大きい。また、学生の英語力は個人差が非 常に大きいため、同じように「記載あり」と判断しても、 英語表現レベルでは雲泥の差がある場合もある。さらに サンプル 3 で見たように、アブストラクトの中にこの五 要素に言及する指標がまったく存在しない場合は、たと え英語表現として優れているものでも、五要素はすべて 「記載がない」とみなされることになる。このように「量 的分析」とは言っても、判別作業には主観的な解釈が強 く入り込むため、科学的なデータとしては弱いものであ る。したがって、このセクションの分析はあくまでも全 体的な傾向を知るための目安として位置づけている。 2 . 1 .五要素の抽出 このように限定を付けたうえで、まず学生のアブスト ラクトが上記五要素をどのくらい抽出できているかを見 ていこう。結果は、下の図 1 のとおりである。 図 1 から明らかなように、学生は研究の「背景」(①)、 「目的」(②)、「結論」(⑤)については、他の要素と比 較してやや高い割合で記述できていることがわかる。正 確には、「背景」は 94 件(72.9%)、「目的」は 90 件(69.8%)、 「結論」は 81 件(62.8%)であり、やや背景が割合とし て高い。先に述べたように、アブストラクトは学生がリ サーチで「何」について調べ、「どのような」結論に到 達したかを述べることが最も重要である。六割以上の学 生が「目的」もしくは「結論」に言及しているというこ とは、「研究」を簡潔に伝えるというアブストラクトの 役割を、学生はある程度理解しているとみてよいだろう。 しかし、「背景」の割合が一番高いことを考えると、研 究のコンテクスト(「背景」)から研究の「内容」を区別 することができない学生も多いと思われる。このような 学生は、Ⅲ.1.1 で説明した、アブストラクトの定型化表 現をもっと学ぶ必要があるだろう。 これに対し、「研究素材と方法」(③)と「研究結果」(④) に関する記述は多くない。「素材と方法」については 61 件(47.3%)であり、「結果」は 61 件(47.3%)である。「研 究結果」の記述については、解釈学的研究など「結果」 と「結論」(⑤)の区別が難しいタイプの研究もあるので、 少なくてもしかたがないだろう。しかし、「素材と方法」 は記述する必要があることを、学生は理解する必要があ る。また、学生によっては、「素材と方法」と「結果」 という二つの要素を述べる必要を理解していない可能性 もある。これについては後述する。 2 . 2 .五要素の論理的構造化 次に、論理的構造化を見てみよう。論理的構造化とは 抽出したポイント間のつながりを理解することである。 Ⅲ.1.2 と同様、ここでも「関係」への理解を三つに分類 している。一つ目はリサーチの「目的」(②)とリサー チ全体の「結論」(⑤)が両方とも述べられているかど うかである(関係 1)。これは書き手の論点が明確に述 べられているかを見るものである。次に、「研究素材と 方法」(③)と、その「結果」(④)の両方があるかどう かを確認する。この関係は、研究プロセスを書き手が端 的に要約できるかどうかを見るものである(関係 2)。 最後に、関係 1 と関係 2 の両者を含んでいるかどうか(関 係 3)から、書き手のアブストラクトの論理性への理解 度を見る。関係 1 は書き手の論点であり、関係 2 はそれ を補強するための論拠である。両者を述べることが、論 81 61 61 90 94 48 68 68 39 35 0% 20% 40% 60% 80% 100% 結論 研究結果 研究素材・方法 研究目的 研究背景 あり なし 図 1 129 件中の各要素の記載の有無

(13)

理的に主張するためには必須だからである。それぞれの 「関係」においては、関連づけられている二つの要素が 記述されている場合は、「関係あり」とし、片方、もし くは両方の要素がない場合には「関係なし」としている。 結果は以下のとおりである。 関係 1 関係 2 関係 3 あり 53 44 35 なし 76 85 94 合計 129 129 129 表 1 129 件中の「関係 1, 2, 3」の有無 この結果、学生のアブストラクトで「目的」(②)と「結 論」(⑤)の両者を含んでいるもの(関係 1)は、129 件 中 53 件(41.1%)である。約四割の学生が、リサーチ の論点を述べている。言い換えると、半数以上の学生は 「論点」を明快に表現できていない。これに対し、関係 2 の値はさらに低くなる。研究の「素材と方法」(③) とその「結果」(④)(関係 2)を両方とも述べている学 生は 44 件(34.1%)である。そもそもこれらの要素の 抽出自体が先にみたようにやや低いのであるから、結果 としては当然ともいえる。データによると、七割に近い 学生が、Ⅲ.1.1 のサンプル 2 と同様に「素材と方法」か「結 果」のいずれか(もしくは両方)を記述していないアブ ストラクトを書いている。先に述べたように「結果」(④) と「結論」(⑤)の区別が難しい研究も多いので一概に は言えないが、アブストラクトで書き手の主張を支える 「論拠」を表現できていない学生も相当数いると思われ る。 しかしながら、関係 3 が示すように、「関係 2」(「素 材と方法」+「結果」)が「あり」であるアブストラク トは、「関係 1」(「目的」+「結論」)に言及している割 合が高い(44 件中 35 件、83.3%)。研究プロセスの的確 な要約(関係 2:「素材と方法」+「結果」)ができる学 生は、アブストラクトの「論理構造」(論点+論拠)を 理解している可能性が高いことがわかる。ただ、このよ うに関係 3 を明示している学生自体は、全体の三割程度 にとどまっている。やはり全体的な傾向としては、アブ ストラクトで論理構造を表現している学生の割合は高く ない。Ⅲ.1.2. でも見たように、これは単なる英語表現の 問題ではなく、学生の論理構造への理解度をある程度反 映していると推測できる。したがって、五要素の抽出だ けでなく、論理構造についても学生の理解を高めること が、これからの課題であろう。

むすびにかえて

これまで学士課程におけるアブストラクト・ライティ ングについて考察を行ってきた。アブストラクト・ライ ティングは、学生が行ったリサーチをベースにした論理 的な思考の訓練である。第一節では、高等教育機関の学 術研究において必要とされる論理的思考を身につけるた めに、アブストラクト・ライティングが役立つことを述 べた。第二節では、アカデミックな英語が論理的思考の 訓練に役立つこと、特に英語アブストラクトの構造が論 理構造を凝縮したものであることを説明した。アブスト ラクトには、記述すべき五つの要素がある。すなわち、「研 究背景」(①)、「研究目的」(②)、「研究素材と方法」(③)、 「研究結果」(④)、「結論」(⑤)である。これらをリサー チ・ペーパー本文(具体)から抽出し、一貫性を持って 各要素を論理的に構造化する二段階の思考過程が、「良 い」アブストラクトには不可欠である。第三節では、こ れまで述べたことを検証するために、本学部の卒業論文 の英語アブストラクトをケースとして質的・量的分析を 行い、学生が「五要素の抽出」と、「論理的構造化」を どの程度表現できているかを見た。まず「五要素の抽出」 という観点からは、学生は「背景」に言及している割合 が一番高く、リサーチの「目的」や「結論」などを記述 している割合はその次に高い。そして、「素材と方法」 や「結果」というリサーチプロセスへは五割弱の学生が 言及している。全般的な傾向としては、アブストラクト が伝えるべきことを理解している学生の割合はあまり高 くないといえるだろう。 「論理的構造化」については、Ⅲ.2.2 で見たように、 多くの学生が「論点」(「研究目的」+「結論」)も「論拠」 (「研究素材と方法」+「研究結果」)も記述していない。 同様に、約六割のアブストラクトでは「論点+論拠」と いう論理構造を記述していない。このようなことから、 全体的な傾向としてアブストラクトの五要素それぞれの 意義や、要素間の論理的関係に対する学生の理解は十分 ではないと思われる。サンプル 2 の質的分析でみたよう に、第一段階の「五要素の抽出」で、五要素それぞれの 意義を理解することは、第二段階の「論理的構造化」に おいて要素間の関係を理解することと切り離せない。し

参照

関連したドキュメント

Therefore, with the weak form of the positive mass theorem, the strict inequality of Theorem 2 is satisfied by locally conformally flat manifolds and by manifolds of dimensions 3, 4

In this paper, we study the generalized Keldys- Fichera boundary value problem which is a kind of new boundary conditions for a class of higher-order equations with

Kilbas; Conditions of the existence of a classical solution of a Cauchy type problem for the diffusion equation with the Riemann-Liouville partial derivative, Differential Equations,

The main problem upon which most of the geometric topology is based is that of classifying and comparing the various supplementary structures that can be imposed on a

It is known that if the Dirichlet problem for the Laplace equation is considered in a 2D domain bounded by sufficiently smooth closed curves, and if the function specified in the

Indeed, when using the method of integral representations, the two prob- lems; exterior problem (which has a unique solution) and the interior one (which has no unique solution for

理工学部・情報理工学部・生命科学部・薬学部 AO 英語基準入学試験【4 月入学】 国際関係学部・グローバル教養学部・情報理工学部 AO

There arises a question whether the following alternative holds: Given function f from W ( R 2 ), can the differentiation properties of the integral R f after changing the sign of