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JAIST Repository: 研究成果とイノベーションの橋渡し (「フェーズII」の機能) : 持続可能な素材利用システムのモデル化の事例から

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 研究成果とイノベーションの橋渡し (「フェーズII」 の機能) : 持続可能な素材利用システムのモデル化の 事例から Author(s) 醍醐, 市朗; 後藤, 芳一 Citation 年次学術大会講演要旨集, 29: 121-124 Issue Date 2014-10-18

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/12411

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

(2)

1E03

研究成果とイノベーションの橋渡し(「フェーズⅡ」の機能)

─持続可能な素材利用システムのモデル化の事例から─

○醍醐市朗,後藤芳一(東大)

1.はじめに

シーズ起点の研究における成果と社会的要請 の間には、ギャップやミスマッチがあることが課 題である。社会の要請は、多くの個別現象が総合 的かつ複雑に関与している上に、問題を解くべき 評価尺度が多数存在しており、いわば包括的な要 請である。それに対し、研究課題は、問題やその 対象とするシステム境界が明確であり、個別事象 を扱っており、いわば個別的・基礎的な成果であ る。ギャップやミスマッチの一因は、これら包括 と個別の違いにあると考えられる。著者らは、そ れを接続・翻訳する機能(「フェーズⅡ」)の重要 性に注目する。著者らは、次章で簡単に説明する 「持続可能な素材利用システム」において研究を 進めている。著者らは、当該分野において、新し いモデルの確立等を通じて分野を主導している が、この延長では素材利用の持続可能性に対する 解しか得られない。著者らは、社会の要請と研究 課題を橋渡しする機能に注目し、両者を科学・工 学・社会的視点から接続する方法論を研究してお り、成果は他の分野にも応用可能にすることをめ ざしている。本稿では、その到達点を整理して論 じる。

2.

持続可能な素材利用システムに関

する研究分野

著者らが、分析・評価の対象とする持続可能な 素材利用システムに関する研究は、産業エコロジ ー(industrial ecology)という学術分野として、 1990 年代から形成されてきた領域の一部である。 もう少し大きい括りを考えると、本研究分野が対 象とする社会的要請は、地球環境問題の 1 つであ る資源の有限性であり、資源(特には金属鉱物) の面における、持続可能な発展に向けた研究を遂 行している。 持続可能な素材利用を実現するためには、様々 な新しい基礎技術が必要になる。例えば、高効率 なリサイクル技術、素材製造や製品製造における 省資源技術、代替材料等が挙げられる。また、同 様に社会における制度等のシステム技術も発展 する必要があり、わが国でも既に資源循環利用促 進法、循環型社会形成推進基本法ならびに同計画、 各種リサイクル法が施行されている。

3.

社会的要請と技術を結ぶシステム

研究―フェーズⅡの提案

実際の社会における包括的課題を解決するの は研究や技術の発展であり、基礎的・要素的な研 究や技術を合わせて社会的要請に応えることが 望まれる。しかし、要請に応えるためには、どの ような研究や技術が欠けているのか、基礎的な研 究を社会に実装するためにどの方向に発展させ ればよいのか、このような包括的な疑問に対する 答えはなかなか見つからないのが現状である。 個別の研究成果や技術は、個別の現象に対する 機序を明確にし、それを積み上げていくことで、 社会的要請に応えようとしている。個別技術によ り一歩でも要請に近づくことに間違いはないが、 その一歩の重要性や実効性は分からず、場合によ っては、あまりにも小さな一歩であることもある。 一方で、社会学は、包括的な社会的要請を、包括 的な状態のまま受け止めるものの、個別の現象ま でブレイクダウンされることは稀であるため、技 術開発にとっての示唆を得るのは困難である。個 別の技術を出発点、社会的要請が到着点とし、そ の道筋を 10 段の階段と仮定すると、研究・技術 の発展は、0 段目、1 段目と積上げるものの、2 段 目、3 段目までなかなか積みあがらず、社会学は、 10 段目、9 段目と降りてくるものの、8 段目、7 段目までなかなか降りるのは難しい。これは、個 別研究・技術にとっては、社会的要請の全体が明 確でないとともに、その中の自分自身の位置づけ が明確でないことで、向かうべき道筋が明確にな らないことが一因と考えられる。同様に、社会学 にとっては、要請を構成すべき要素研究や要素技 術が明確でないとともに、それらの関連を明確に できないことで、問題を分解したり、モデル化し たり、一般化したり、特定の尺度や対象に投影し たりすることが困難な一因と考えられる。図1に、 階段の例示も含めて模式化した個別技術・研究と 社会的要請の関係を示した。 そこで、本稿で導入するそれらを接続・翻訳す

として「代表的なものとしては、全校拡充モデル(shoolwide Enrichment Model,以下,SEM とする)がある」 と述べ、イギリスにおける教育支援としては「才能をもつ子どもの苦手な部分を「ニーズ」としてとらえて 支援の幅を広げている」としたうえで「ギフテッドの社会性に関する補償的措置として、その代表的なもの にカウンセリングサービスがある」(松本ら,2013)とし、GT のニーズやその発信方法をサポートしている。 以上のように GT 教育での論点は、異能 vation 事業における「変な人」(総務省 a,2014)が従来の申請書類 において適切に表現出来ないためにその能力が十分に評価されていない問題と類似している可能性がある。 まだ GT 教育自体が発展途上にあるものの、これらのカウンセリングサービスの今後の知見からは、「変な人」 (総務省,2014)の多様な発信方法を確実に受け入れるために必要な要件が期待出来ると考えられるため、GT 教育のさらなる進展が望まれる。 5.考察 これらの Transformative Research を税金で実施し続ける場合、本稿で述べた実施主体と申請者側とが評 価基準と Transformative Research 評価に内在している命題の共有だけでなく、鈴木(2014c)が「税金によ るハイリスクの困難さ」を「実施主体側と財務当局との調整事例」であきらかにしたようにハイリスク研究 自体に対する社会の理解がまだ十分に専門家集団内でも共有されていないため「ハイリスク研究を実施する ために必要な評価理念文化の醸成のための要件」を社会全体でも議論し、本稿で述べた「変な人」(総務 省,2014)の多様な発信方法や固有な表現方法を誤解することなく、評価者へ確実に届けるために、偏見なく 長期を見据えて応援する機運を高めるための文化づくりによって、従来の評価基準や評価理念文化では切り 捨てられ、社会から排除されがちであった「独創的な人」(総務省 a,2014)が他薦だけではなく、社会のキ ャパシティーの拡大によって「変な人」(総務省,2014)が萎縮することなく、より積極的に自薦可能な文化 構築も同時に必要ではないだろうか。 【文献】

異能 vation a「異能 vation 公式 twitter」2014 https://twitter.com/inno_project 


異能 vation b「異能 vation 公式 facebook」2014 https://www.facebook.com/innovationproject 岡田有花「総務省が募集する「変な人」ってどんな人? 「異能 vation」(いのうべーション)担当者に聞 く (1/3)」ITMedia,2014 科学研究費委員会「平成 21 年度科学研究費補助金の審査に係る総括」日本学術振興会,2009 http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/h21/h21shinsa_soukatsu.pdf 総務省 a「総務省がこれからの日本を創るあなたを応援します―今、日本は、失敗を恐れず探求する、大い なる可 能性がある ICT 技術課題への挑戦者—異能(Inno)な人を探しています―」2014 http://www.inno.go.jp/contact.php

総務省 b「戦略的情報通信研究開発推進事業 SCOPE inno「異能 vation」プログラム平成 26 年度採用分 募 集要項」 2014 http://www.inno.go.jp/link/innovation_bosyuyoko_20140716.pdf 鈴木羽留香 a「価値ある失敗」による「有益な教訓」を奨励する評価を公募段階で示す政策事例―内閣府 ImPACT と総務省異能 vation の比較分析ー」社会情報学会,2014 年度秋季大会一般発表,発表予定日 2014/09/20 鈴木羽留香 b「自由形式申請書や他薦枠を用いた異能 vation 事例を参考に─評価対象者と評価者間における Transformative Research を見越した理解共有とイノベ-ション資源としての失敗に関する線引きのための評 価システムの可能性と課題─」政策情報学会,2014 年 8 月投稿,審査中 鈴木羽留香 c「ImPACT 等のハイリスク研究にみる回収スパンと財務当局との調整事例を参考にー 「Transformative Research 評価理念文化へのキャピタルゲイン型クラウドファンディングによる潜在シー ズの政策エビデンス化と対話基盤を用いた受益者自身による潜在ニーズの配当創出とのマッチングの可能性 と課題-」研究・技術計画学会,発表予定 2014/10/19(日) 高尾楢雄「科研費申請の憂うつ(文部省科学研究費申請と配分の問題点)」ファルマシア 15(11),1979 科学技術政策担当大臣,総合科学技術会議有識者議員 「平成 23 年度科学・技術重要施策アクション・プラ ン」文部科学省,2010, http://www8.cao.go.jp/cstp/output/20100708ap.pdf 山田竜司「総務省、「異能 vation」人材を募集--“強い意志を持って挑む”を重視」ZDNETJapan,2014 http://japan.zdnet.com/development/analysis/35050971/ 松本茉莉衣,是永かな子「ギフテッドに対する補完的指導としての特別ニーズ教育」高知大学,2013 JSPSUSA「NSF、INSPIRE プログラムの下、新プロジェクト 11 件を発表(7 月 18 日)」2012 http://jspsusa.org/us-science/FY2012/07.July/20120718.pdf

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図 3 使用済み製品に含まれる素材に対するリサ イクル実行可能性判断ツール アプローチであったと考えられた。先の階段の例 示にならうと、本研究は、3 段目から 7 段目くら いまでをカバーし、技術や制度とイノベーション を明確に結びつける堅固な橋になっていると考 えられる。 4.3 俯瞰的リサイクルへの展開 従来は、鉄鋼材は鉄鋼材へ、アルミニウム素材 はアルミニウム素材へリサイクルを高効率にす るための技術開発を進めてきた。著者らの研究6) では、ガラス等の酸化物系セラミックスに含まれ る成分に着目し、主要な 10 種の酸化物成分を特 定し、それらを主要な構成成分とする様々な素材 にまで対象を広げた分析をおこなった。その結果、 ガラス、陶磁器、タイル、耐火物等の窯業におけ る生産物のほとんどの他、鉄鋼スラグや汚泥溶融 スラグまでも同様の構成成分であり、各素材間で のリサイクルの可能性が明らかになった。成分制 約と需給量を制約要因とした線形計画法による 最適化をおこなった結果、今まで想定されていな かった新たなリサイクルルートを発見すること ができた。図 4 に得られた最適なリサイクルルー トを模式的に表した。本研究では、コストの問題、 回収時に混入する不純物の問題、利用時の投入方 法等、捨象した事象もあるが、これらは、実際に 検討する際に技術開発により解消されるべき課 題であると認識している。階段の例示で表現する と、俯瞰的にシステム全体から見渡した分析によ り、今まで向かっていなかった方向にも 5 段目の ステップを示すことができた事例と言えよう。 図 4 酸化物系セラミックスを構成する 10 種の成 分から考えた最適なリサイクルルート 4.4 リサイクルの質への展開 従来のリサイクル技術は、よりリサイクル量を 増加させることが命題であった。しかし実際には、 品位の低い素材への再利用(カスケード・リサイ クル)では、次に再びリサイクルされることはな い。例えば、使用済みコンクリートを路盤材とし て利用すると、路盤材は回収されない。著者らは、 これを平均リサイクル回数という指標で評価す ることを提案し、定量的に示す 7)ことで、持続可 能な素材利用システムの中でのリサイクルの在 り方を明確にした。より高い品位への再利用が可 能なリサイクル技術の発展に向けたメッセージ を送っている。言い換えれば、そのようなリサイ クル技術の貢献度を定量的に“見える化”できる モデルを構築した。階段の例示で表現すると、以 前は感覚と実際が合致し、よりリサイクル量を増 加させることが社会的要請に直結していたもの が、リサイクルも進み、時代とともに社会的要請 は変化しており、同じステップを登っても、10 段 目には必ずしも向かわないことを示し、新たな 5 段目を明確にしたと言えよう。

5.フェーズⅡに必要なこと

著者らの持続可能な素材利用システムに関す る研究分野における実例を通じて考えると、個別 技術である材料科学の分野の基礎的な知識を有 しながら、対象とする社会システム全体を評価対 象とすることが、フェーズⅡの実践の必須要素で あると考えられた。 社会システムを包括的システムとしてとらえ て分析しながらも、その個別要素である研究技術 を把握することで、今までにない知見を創出し、 より効率的に、研究開発成果とイノベーションを 結びつける筋道を明確に打ち出せる可能性があ 図 1 模式化した個別技術・研究と社会的要請の 関係。階段の例示は本文を参照のこと。 る機能は、個別の研究・技術とも、社会的要請と も直接は接続していないものの、図 1 で示す 5 段 目のような飛び石のようなステップを構築する ものである。これを、個別技術の積上げ型アプロ ーチをフェーズIとし、社会的要請の分解型アプ ローチをフェーズⅢとしたときに、どちらでもな い中間段階を創出するアプローチとして「フェー ズⅡ」と称する。

4.

持続可能な素材利用システムにお

けるフェーズⅡの実例

4.1 物質ストック分析への新しい展開 2000 年頃に循環型社会に資する法制度が整備 され、リサイクルに関する仕組みならびにそれに 合致したプロセス技術が開発されてきた。2004 年 から著者らは、資源消費の削減のためには、リサ イクルだけでなく、物質ストックの管理も同等に 重要であることを提示してきた(図 2)1)。2013 年 5 月の循環型社会推進基本計画の見直しにおい ても、”今次計画では、循環型社会を形成する上 で、物質のフローとともに重要な物質の「ストッ ク」にも焦点を当てることとする。2)として物 質ストックに大きく言及されることになった。先 の階段の例示で表現すると、5 段目のステップは、 感覚的にリサイクルだけだと今までは認識され てきたのに対し、対象全体をシステム的に把握す ることで、もう 1 つの重要な 5 段目の要素がある ことが明確になった、と言えよう。これにより、 別途、材料における個別の研究として進められて いた、高強度化等の高機能化が、物質ストックの 価値を高める技術開発であると言える。今まで明 確に位置づけられていなかった技術要素に、持続 可能な素材利用の中での指針を与えることがで きた。さらには、都市鉱山という用語による、二 次資源の重要性を示す取組みについても、この潮 流の 1 つである。 図 2 蓄積増分の減少がリサイクルと同等に重要 であることを示した我が国の主要な物質フロー の時系列変化 4.2 リサイクルの促進へ向けた要素技術・制度 の包括的研究 リサイクルの促進のためには、個別製品のリサ イクル法を施行したり、新しいリサイクル技術を 開発したり、あるいは外部環境として資源価格が 高騰することによっても資源の回収が進むこと が知られている 3, 4)。法制度の整備や技術開発に 対する施策は、今まで包括的に議論されてこなか った。これは、それらの関係性が明確でないこと が大きな事由であると考えられる。著者らの研究 では、使用済み製品は発生することを所与の条件 とし、その中の特定の素材がリサイクルされるか どうかを判断できる包括的な評価ツールを開発 した5)(図 3)。本ツールの個別の要素は、物理則 等により不変な要素、意図的に変化させることが できる要素、変化するものの随意には変化させら れない要素の 3 種類に分類された。図 3 では、そ れぞれの条件が満たされているかどうかで、緑色 と赤色に塗り分けられている。上から下まで緑色 の要素をつないで通る経路があれば、リサイクル が実行可能な社会ならびに技術が整備されてい ると判断される。これにより、現行リサイクルが 実施されていない製品や素材に対して、どのよう な施策により、リサイクル可能な社会に転換する ことができるかを示すことが可能になった。また、 個別の要素の緑色/赤色を判断するためには、技 術的要素に対しては、その背景となる学理体系が、 社会システムに対してはシステム分析が求めら れた。つまり、技術にも社会システムにも精通し て初めて発想でき、構築できたツールであるとい えよう。また、部分的に要素の緑色/赤色を判断 するためのバックグラウンドに対する現在の知 見が不十分であると認められる要素もあった。こ れは、今後の研究課題が全体観の中から明らかに なったことを意味しており、リサイクルにかかわ る研究の方針を示すという意味でも大変有効な

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図 3 使用済み製品に含まれる素材に対するリサ イクル実行可能性判断ツール アプローチであったと考えられた。先の階段の例 示にならうと、本研究は、3 段目から 7 段目くら いまでをカバーし、技術や制度とイノベーション を明確に結びつける堅固な橋になっていると考 えられる。 4.3 俯瞰的リサイクルへの展開 従来は、鉄鋼材は鉄鋼材へ、アルミニウム素材 はアルミニウム素材へリサイクルを高効率にす るための技術開発を進めてきた。著者らの研究6) では、ガラス等の酸化物系セラミックスに含まれ る成分に着目し、主要な 10 種の酸化物成分を特 定し、それらを主要な構成成分とする様々な素材 にまで対象を広げた分析をおこなった。その結果、 ガラス、陶磁器、タイル、耐火物等の窯業におけ る生産物のほとんどの他、鉄鋼スラグや汚泥溶融 スラグまでも同様の構成成分であり、各素材間で のリサイクルの可能性が明らかになった。成分制 約と需給量を制約要因とした線形計画法による 最適化をおこなった結果、今まで想定されていな かった新たなリサイクルルートを発見すること ができた。図 4 に得られた最適なリサイクルルー トを模式的に表した。本研究では、コストの問題、 回収時に混入する不純物の問題、利用時の投入方 法等、捨象した事象もあるが、これらは、実際に 検討する際に技術開発により解消されるべき課 題であると認識している。階段の例示で表現する と、俯瞰的にシステム全体から見渡した分析によ り、今まで向かっていなかった方向にも 5 段目の ステップを示すことができた事例と言えよう。 図 4 酸化物系セラミックスを構成する 10 種の成 分から考えた最適なリサイクルルート 4.4 リサイクルの質への展開 従来のリサイクル技術は、よりリサイクル量を 増加させることが命題であった。しかし実際には、 品位の低い素材への再利用(カスケード・リサイ クル)では、次に再びリサイクルされることはな い。例えば、使用済みコンクリートを路盤材とし て利用すると、路盤材は回収されない。著者らは、 これを平均リサイクル回数という指標で評価す ることを提案し、定量的に示す 7)ことで、持続可 能な素材利用システムの中でのリサイクルの在 り方を明確にした。より高い品位への再利用が可 能なリサイクル技術の発展に向けたメッセージ を送っている。言い換えれば、そのようなリサイ クル技術の貢献度を定量的に“見える化”できる モデルを構築した。階段の例示で表現すると、以 前は感覚と実際が合致し、よりリサイクル量を増 加させることが社会的要請に直結していたもの が、リサイクルも進み、時代とともに社会的要請 は変化しており、同じステップを登っても、10 段 目には必ずしも向かわないことを示し、新たな 5 段目を明確にしたと言えよう。

5.フェーズⅡに必要なこと

著者らの持続可能な素材利用システムに関す る研究分野における実例を通じて考えると、個別 技術である材料科学の分野の基礎的な知識を有 しながら、対象とする社会システム全体を評価対 象とすることが、フェーズⅡの実践の必須要素で あると考えられた。 社会システムを包括的システムとしてとらえ て分析しながらも、その個別要素である研究技術 を把握することで、今までにない知見を創出し、 より効率的に、研究開発成果とイノベーションを 結びつける筋道を明確に打ち出せる可能性があ 図 1 模式化した個別技術・研究と社会的要請の 関係。階段の例示は本文を参照のこと。 る機能は、個別の研究・技術とも、社会的要請と も直接は接続していないものの、図 1 で示す 5 段 目のような飛び石のようなステップを構築する ものである。これを、個別技術の積上げ型アプロ ーチをフェーズIとし、社会的要請の分解型アプ ローチをフェーズⅢとしたときに、どちらでもな い中間段階を創出するアプローチとして「フェー ズⅡ」と称する。

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持続可能な素材利用システムにお

けるフェーズⅡの実例

4.1 物質ストック分析への新しい展開 2000 年頃に循環型社会に資する法制度が整備 され、リサイクルに関する仕組みならびにそれに 合致したプロセス技術が開発されてきた。2004 年 から著者らは、資源消費の削減のためには、リサ イクルだけでなく、物質ストックの管理も同等に 重要であることを提示してきた(図 2)1)。2013 年 5 月の循環型社会推進基本計画の見直しにおい ても、”今次計画では、循環型社会を形成する上 で、物質のフローとともに重要な物質の「ストッ ク」にも焦点を当てることとする。2)として物 質ストックに大きく言及されることになった。先 の階段の例示で表現すると、5 段目のステップは、 感覚的にリサイクルだけだと今までは認識され てきたのに対し、対象全体をシステム的に把握す ることで、もう 1 つの重要な 5 段目の要素がある ことが明確になった、と言えよう。これにより、 別途、材料における個別の研究として進められて いた、高強度化等の高機能化が、物質ストックの 価値を高める技術開発であると言える。今まで明 確に位置づけられていなかった技術要素に、持続 可能な素材利用の中での指針を与えることがで きた。さらには、都市鉱山という用語による、二 次資源の重要性を示す取組みについても、この潮 流の 1 つである。 図 2 蓄積増分の減少がリサイクルと同等に重要 であることを示した我が国の主要な物質フロー の時系列変化 4.2 リサイクルの促進へ向けた要素技術・制度 の包括的研究 リサイクルの促進のためには、個別製品のリサ イクル法を施行したり、新しいリサイクル技術を 開発したり、あるいは外部環境として資源価格が 高騰することによっても資源の回収が進むこと が知られている 3, 4)。法制度の整備や技術開発に 対する施策は、今まで包括的に議論されてこなか った。これは、それらの関係性が明確でないこと が大きな事由であると考えられる。著者らの研究 では、使用済み製品は発生することを所与の条件 とし、その中の特定の素材がリサイクルされるか どうかを判断できる包括的な評価ツールを開発 した5)(図 3)。本ツールの個別の要素は、物理則 等により不変な要素、意図的に変化させることが できる要素、変化するものの随意には変化させら れない要素の 3 種類に分類された。図 3 では、そ れぞれの条件が満たされているかどうかで、緑色 と赤色に塗り分けられている。上から下まで緑色 の要素をつないで通る経路があれば、リサイクル が実行可能な社会ならびに技術が整備されてい ると判断される。これにより、現行リサイクルが 実施されていない製品や素材に対して、どのよう な施策により、リサイクル可能な社会に転換する ことができるかを示すことが可能になった。また、 個別の要素の緑色/赤色を判断するためには、技 術的要素に対しては、その背景となる学理体系が、 社会システムに対してはシステム分析が求めら れた。つまり、技術にも社会システムにも精通し て初めて発想でき、構築できたツールであるとい えよう。また、部分的に要素の緑色/赤色を判断 するためのバックグラウンドに対する現在の知 見が不十分であると認められる要素もあった。こ れは、今後の研究課題が全体観の中から明らかに なったことを意味しており、リサイクルにかかわ る研究の方針を示すという意味でも大変有効な

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1E04

一気通貫型イノベーション

(国プロ・産学連携による植物バイオポリマーの創生)

○中澤慶久・鈴木伸昭・武野真也(大阪大/日立造船)・奈良敬(大阪大)・後藤芳一(東京大) 1.はじめに 大阪大学Hitz(バイオ)協働研究所では当学の産学連携方針である「Industry on Campus」のもと、国 プロを活用した産学連携による植物バイオポリマーの基礎研究から応用開発。更には市場に投入までの マーケティング戦略の立案と実行を行っている。本報告は平成24 年度以降1)の活動事例を紹介し、大 阪大学「共同研究講座・協働研究所」制度がもたらした一気通貫型イノベーション成果を報告する。 2.一気通貫イノベーション事例 平成 26 年 6 月 24 日に閣議決定され た「科学技術イノベーション総合戦略 2014 について」2)、科学技術イノベー ション政策を推進する上での6原則の 2つに「川上から川下までの研究開発段 階をカバーした一気通貫の政策とする こと」「担い手の役割分担を明示しつつ、 産学官が連携すること」とある。 当該協働研究所(大阪大学/日立造船) では、国家プロジェクト(NEDO,JST,農水 省)と産学官連携を効果的に活用したイ ノベーションを図1のとおり取り組ん でいる。①川上にあたる研究として、 NEDO による 2 つの基盤プロジェクトが 該当しており、ここでは遺伝子研究や分 析評価法の開発(大阪大/日立造船)を 行い、川中・川下に繋がる基礎技術力を 構築した。②川中では、①をもとに NEDO 助成事業(ODA)とした国内および海外 で FS 事業を行いその成果から企業(日 立造船)に事業化の判断材料を提供し事 業化への投資に至った。更に、②の延長 として農水省によるカントリーリスク 対策や国内林業バイオマス産業化開発 (大阪大→再委託)を継続している。③ 川下は、出口商品開発に向けた NEDO 事 業によるプロセス開発である。図2に示 すプラットフォーム型の開発により、再 委託企業との連携開発拠点を協働研究 所が提供し、効果的なもの作りを実現し ている。更に、NEDO 外部評価を通じた縛 りによって、国プロとしての PDCA 評価 を受けることにより効果的な開発に結 び付けている。更に、JST 産学共同実用 化開発によって、事業化を目的とした実 用化精製装置開発を進めている。 ると言えよう。 アプローチとしては、社会システムの中で当該 技術の影響するサブシステムをモデル化するこ とが、本稿で紹介した著者らの研究分野における 有効な手段であった。また、モデルが扱う次元と しては、貨幣価値による分析では意図しない影響 因子(投機、景気変動、政情不安等)を考慮に入 れなければならず、個別技術との関係性において 誤差項の影響が大きくなり、モデルの中での個別 技術の位置づけが明瞭になりにくいと考えられ る。そのため、本稿で紹介したような。物理量に よって分析するモデル化を用い、個別技術とシス テム全体の定量的関係性を記述することが望ま しい。単純な例では、100 万円の鉄鋼材であって も、高張力と鉄筋棒鋼では技術的にまったく異な る特性であることが明らかであり、各用途での代 替性はないが、鉄鋼材という区分で貨幣価値によ り評価すれば等価とみなされる。このような評価 の解像度は、詳細なほど良いがデータの入手可能 性から限界もある。そのバランスを考慮し評価モ デルの枠組みを決定するためには、技術的知見が 必要である。 さらに、モデル化の際の捨象する事象を判断す る背景には技術に対する理解が必要であり、モデ ルにおける現象間の関係性(数理的な関係)を判 断するには、システムに対する全体感を持ち合わ せる必要がある。例えば、鉄鋼材リサイクルによ る鉄鋼材中の銅の濃化モデルに意味はあっても、 アルミニウムの濃化モデルに意味はない。学理や 技術を知らなければ、同じように見えるが、熱力 学的な原則に従って、現行の製鋼プロセス技術の 基では、アルミニウムは酸化されやすくスラグに 分配され、鉄鋼材中にほとんど残らないためであ る。 このようなシステムをモデル化することによ るシステム分析の研究の重要性の一方で、その分 析対象が社会的事象であることから、再現実験は できず、検証データも十分でなく、時にはまだ起 きていない事象を分析することもある。このよう なアプローチは、従来の科学的な手順からすれば、 不十分と捉えられる可能性もある。しかしながら、 従来の確実な検証を積み上げることだけでは、偶 発的な目覚ましい成果を待たなければ、社会の課 題が解決されない。効率良く研究成果とイノベー ションにつなげるためには、本稿で紹介したよう なアプローチを、様々な分野において実施すべき であると考えられる。特に、環境問題等の社会全 体の(時間軸や空間軸が大きな)社会的要請にお いては、本稿で提案したフェーズⅡの取組みがよ り重要であろう。

6.おわりに

本稿では、研究活動とその社会的寄与との間の ギャップを乗り越え、研究開発成果とイノベーシ ョンを結びつけるための方法論として、成果発で もなく社会的要請発でもない、それらの中間に 飛び石”的なステップを創出することを提案し、フ ェーズⅡと名付けた。 本稿で紹介した分野以外であっても、フェーズ Ⅱ研究によるシステム分析は、有効であると考え られる。一方で、このような研究に対する評価な らびに研究資金の援助等は、まだまだ低いと言わ ざるを得ない。成果が直接イノベーションを起こ す訳ではないものの、今後の戦略的イノベーショ ンにとっては必須のインフラであると考えられ る。その意義ならびに重要性を認識し、各分野に おいても同様のフェーズⅡアプローチが普及す ることを願っている。 1) 醍醐市朗ら: NIMS-EMC 材料環境情報データ No.12『社会蓄積量の把握に関する専門家意見 調査』独立行政法人 物質・材料研究機構 エ コマテリアル研究センター(2006 年 9 月) 2) 環境省:第三次循環型社会形成推進基本計画 (平成 25 年 5 月 31 日閣議決定), p.20 3) 川原健吾,醍醐市朗,松野泰也,足立芳寛: 銅スクラップの回収に対する素材価格の影響 分析、日本金属学会誌、75(6) 327-331, (2011) 4) Wei-Qiang Chen: Recycling Rates of

Aluminum in the United States. J. Industrial Ecology, 17(6) 926–938, (2013) 5) 関根伸雄,醍醐市朗,松野泰也,後藤芳一: 都市鉱山からの回収を決定する機構のモデル 化. 第 9 回日本 LCA 学会研究発表会, 東京, 2014.3.4-3.6, D3-13, (2014) 6) 清原慎,後藤芳一,醍醐市朗:清原ガラスを 中心とした酸化物系セラミックスの循環利用 システムの設計. 第 9 回日本 LCA 学会研究発 表会、2014 年 3 月 4 日-6 日, 東京, C1-03 7) 醍醐市朗ら: マルコフ連鎖モデルを適用した 鉄エレメントのライフサイクルにおける平均 使用回数ならびに社会での平均滞留時間の解 析手法 の構築, 鉄と鋼, 91(1), pp.159-166, (2005)

図 3  使用済み製品に含まれる素材に対するリサ イクル実行可能性判断ツール  アプローチであったと考えられた。先の階段の例 示にならうと、本研究は、3 段目から 7 段目くら いまでをカバーし、技術や制度とイノベーション を明確に結びつける堅固な橋になっていると考 えられる。  4.3  俯瞰的リサイクルへの展開  従来は、鉄鋼材は鉄鋼材へ、アルミニウム素材 はアルミニウム素材へリサイクルを高効率にす るための技術開発を進めてきた。著者らの研究 6) では、ガラス等の酸化物系セラミックスに含まれ る成分に
図 3  使用済み製品に含まれる素材に対するリサ イクル実行可能性判断ツール  アプローチであったと考えられた。先の階段の例 示にならうと、本研究は、3 段目から 7 段目くら いまでをカバーし、技術や制度とイノベーション を明確に結びつける堅固な橋になっていると考 えられる。  4.3  俯瞰的リサイクルへの展開  従来は、鉄鋼材は鉄鋼材へ、アルミニウム素材 はアルミニウム素材へリサイクルを高効率にす るための技術開発を進めてきた。著者らの研究 6) では、ガラス等の酸化物系セラミックスに含まれ る成分に

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