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持続可能なサプライチェーンとインクルーシブビジネス (基調講演1) (国際シンポジウム報告 -- 持続可能なサプライチェーンと倫理的貿易)

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(1)

持続可能なサプライチェーンとインクルーシブビジ

ネス (基調講演1) (国際シンポジウム報告 -- 持続

可能なサプライチェーンと倫理的貿易)

著者

増岡 俊哉

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

250

ページ

48-51

発行年

2016-07

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002918

(2)

  私の講演タイトル﹁持続可能な サプライチェーンとインクルーシ ブビジネス﹂ですけれども、カタ カ ナ ば か り で し か も 漢 字 の 部 分 ﹁ 持 続 可 能 な ﹂ も、 サ ス テ イ ナ ブ ル と い う 英 語 の 直 訳 で す。 要 は ﹁ と ﹂ 以 外 は 全 部 英 語 と い う こ と なんですけれど、なぜこうなるか というと、日本の外で出てきてい る考え方が多いことを意味します。 それが日本に入って来て、どうい う意味か訳そうという時に、日本 語 で 適 当 な 単 語 が な い。 ﹁ 持 続 可 能﹂といわれても、日本語でもい ったいどういう意味なのかつかみ 取れない。それで今これは﹁サス テイナブル﹂とそのまま使うこと が 多 く な っ て い ま す。 ﹁ サ プ ラ イ チ ェ ー ン ﹂、 こ れ は 先 ほ ど の 朝 日 新聞の方がおっしゃってましたが、 やはりごく最近使われる言葉にな りました。さらに﹁インクルーシ ブビジネス﹂といい出すと、もう これはなんだろう、日本語に訳そ うと思ったんですけれども、包括 的なビジネスといっても何だかよ くわからない。インクルーシブビ ジネスとはいったい何?︱︱先ほ ど佐藤寛先生が﹁売り手よし、買 い手よし、世間よし﹂という言葉 を使いましたが、これは近江商人 の考え方、まさにこれがインクル ーシブビジネスという考え方に非 常に近い。外から入って来たイン クルーシブビジネスなんてわから ない単語が英語になってますけれ ども、実は日本に元からある考え 方が、ちょっと外へ出ていってま た帰ってきた、という風に考えて いただいてもよいかと思います。   まず最初に少しIFC︵国際金 融公社︶についてご説明してから、 インクルーシブビジネスの話に移 らせていただきます。IFCは世 界銀行グループの一員で、民間の 企業、途上国の民間の企業に対し て資金を提供したり、投資をした り、あるいはアドバイスをしたり ということを仕事にしている機関 です。現在一三〇カ国ほどで業務 を 展 開 し て お り ま し て、 約 四〇〇〇人のスタッフがおります。   IFCには三つ大きな事業の柱 があります。ひとつは投融資。こ れはもう本当に民間の銀行と同じ ようなサービスを行います。投資 銀行あるいは商業銀行、そのなか で株式の投資をしたり、シンジケ ーションをしたり、現地通貨建て でローンを出したりというような、 これは全部現地の、地元の、途上 国の民間の企業に対する活動です。 二つめはアドバイザリー業務、こ れもいくつか種類があるのですけ れども、実際にはこれも民間宛と、 法整備、民間企業が活動し易くす るような環境を作ることを政府に 対 し て ア ド バ イ ス を す る と い う、 そういう機能も持っています。イ ンクルーシブビジネスは、このな かで我々のチームはそのアドバイ ザリー業務の方に携わっています。 最後もうひとつはアセットマネジ メント。AMCという所が子会社 を持っていまして、これは第三者 の、主にソブリンのお金を我々が 預って、それをIFCの投資する 企業に対して平行して株式投資を させていただいています。

  インクルーシブビジネスとは何 だろうということを考えてみます。 まずBOP、また横文字が出てき ましたが、 ﹁ base of the pyramid ﹂ いわゆる社会の経済構造の底辺部 門の人達、世界中でまあ低所得者 ということですけれども、途上国 に約四五億人の人間がいます。こ の人達は一日購買力平価で八ドル、 日本円でいうと一日一〇〇〇円ぐ らいの暮らしをしているというこ とです。一カ月、三万円ほどでど うやって暮らすのかという、そう いうレベルの人達で、しかも基本 的なインフラであるとか、色々な ものに対するアクセスも無い、欠 けている。そういう人達を先ほど からいっているサプライチェーン、 バ リ ュ ー チ ェ ー ン に 組 み 込 ん で、 その人たちも消費者として、ある いは生産者として恩恵を受けると、 その人たちの生活が向上すること によってさらにビジネス自体も拡 大していく。そういうプラスの循 環が非常に良いサイクルになると

ジェトロ・アジア経済研究所、世界銀行、朝日新聞社共催 

国際シンポジウム 持続可能なサプライチェーンと倫理的貿易

基調講演1

持続可能なサプライチェーンと

インクルーシブビジネス

増岡 俊哉

(3)

いうことを、既に発見してやって いる人達が途上国にはたくさんい ます。それでインクルーシブビジ ネスという所で、IFCのお客さ んになって我々が投融資をさせて いただいているのは、おそらく九 割以上は現地の、地場の会社です。 現地で、その人達にお話をすると ﹁ 我 々 の 国 っ て い う の は、 は っ き りいって九割の人が貧乏なんだか ら、この貧乏な人達とどういう風 に付きあっていくか、という仕組 みを作らなければ商売にならない でしょう﹂とおっしゃる方もいま す。ただ社会貢献をしたいからや っているという訳ではなくて、あ るいはCSR、この頃よく話に出 て き ま す け れ ど も﹁ corporate social responsibility ﹂、 社 会 貢 献 をレスポンシビリティでやらなけ ればいけない、というのではなく て、実際にこのビジネスをやるこ とによってビジネス自体も継続で きるし、利益も上がっていく。そ ういうことを組み込んでそれを戦 略的にやっている企業達、それが インクルーシブビジネスというこ とになります。IFCが過去どれ くらいの件数、金額をそういう企 業 達 に 投 融 資 を し た か と い う と、 約四五〇くらい例があるのですが、 過 去 一 〇 年 間 ほ ど で、 だ い た い 一三〇億ドル近くの投融資を行っ ております。直近では年間一六億 ドルぐらいの規模を投融資してい ます。地域的には、もちろんアジ アもありますし、ラテンアメリカ あるいはアフリカについても万遍 なく、インクルーシブビジネスの 案件があります。セクター別です と、アグリビジネス、農業関係も ありますが、その他にも、バリュ ー チ ェ ー ン の 下 流 の ほ う で す ね、 そういうところのたとえばインフ ラであるとか、あるいは教育サー ビス、ヘルスケアサービス、テレ コミュニケーション、電子決済と 多彩です。それから金融サービス、 これはマイクロファイナンスも入 っていますし、最近ではマイクロ インシュアランスというようなも のも入ってきています。

  さて、では具体的にインクルー シブビジネスとはどんなものなの か。まず、エコム︵ECOM︶グ ローバルの例です。エコムはコー ヒー、カカオ、綿花等を取り扱う 商社ですけれども、この会社は個 人の農家とのお付き合いというの をたいへん大事にしていて、世界 的に展開しており、二五万人くら いの小規模農家から調達をしてい ます。実はそのコーヒーを調達す る 農 家 を 確 保 す る と い う こ と が、 商社にとって一番大事なことなん です。やはりある程度の量をきち んと固めないと、たとえばスター バックス、ネスレとかに売る時に も、ある程度の量がないといけな いんですけれども、それが常に不 足してくる可能性があるので、そ れをきちんと押さえるために、農 家と常に、長いお付き合いで関係 を構築していって、そこから必ず コーヒーを売ってもらえるように しています。しかも良い品質のコ ーヒーを確保しなければいけない。 まず農家の方々に技術指導をして、 製品の質を上げてもらう。あわよ くば、認証制度として、レインフ ォレストアライアンスであるとか、 色 々 な 所 か ら、 サ ス テ イ ナ ブ ル、 持続可能な農業をやっていますと いう認証をもらう。その認証をい ただくことによって、値段にプレ ミアムがつくわけです。収穫量も さらに上がっているし、それで農 家の収入が上がる。収入が上がれ ば、それによって色々なことがま たできるようになります。そのよ うなことから農家は、ここの会社 と付き合っていれば生活が良くな る、他のトレーダーとかへ行くと そういうことまではしてもらえな い、ということを認識していくこ とになります。また、たとえば種 を買わなければいけない、肥料を 買わなければいけない、あるいは 農業機械を借りなければいけない、 という時に、それに対する借り入 れの資金もエコムが貸しています。 ほとんどの零細農家には、普通の 銀行は貸してくれません。そうい う意味でも農家に対する運転資金 を供給することもやっています。 増岡俊哉氏(2016 年 2 月 10 日、主催者撮影)

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  これに対してIFCは一億五〇 〇〇万ほどの長期融資と、あとは 純株式で投資を行っています。今 日のテーマは特にサプライチェー ンですので、どちらかというと生 産者側のサプライのほうのインク ルーシブという話をさせていただ いているのですが、次に例をあげ るジャイン・イリゲーション、こ れはインドの会社なんですけれど も、この会社は実は両側をやって います。もともとこの会社の事業 というのは、マイクロイリゲーシ ョン、マイクロドリップイリゲー ションでした。要するにパイプを 引いて、そこからポタポタと水が 出て、その地面に水を引いている んですね。灌漑をしてその水の効 率の良い使い方によって、作物を 育てるというアイデアを、インド の農民にも普及させたいというこ とで始めました。ですからこの会 社の本業は、プラスチックのパイ プを作るということなんです。と こ ろ が そ れ を 売 ろ う と 思 っ た ら、 インドはほとんどが零細農民です ので、そのままでは売れないこと がわかりました。それでは農民に 最初はまずこのドリップイリゲー ションというやり方を、覚えても ら お う、 そ の 技 術 指 導 を し よ う、 設置の仕方も教えようと考えまし た。また、設置をしても作物の作 り方がちゃんとわからないと、そ れを使って生産もできない、良い 物も作れない、というので、農民 に対して技術指導、物の作り方も 教えるようになります。零細農民 ですので、 ﹁わかった。この製品、 御社から買うよ﹂ということにな ったのですけれども、お金が無い。 インドでは零細農民に対して若干 の補助金制度があります。それで その補助金を使えば何とか買える じゃないか、というんですけれど も、ほとんどの方が字を書けない ので、どうやって政府に対して補 助金の申請をしていいかわからな い。ではそれもお手伝いしましょ う。とはいえ、申請してから補助 金が出てくるまでものすごい時間 がかかるんですね。そこもその会 社、ジャイン・イリゲーションが 肩代わりしましょうということで、 補助金が下りた時にその、要は短 期のローンを相殺することになり ました。そういうことでドリップ イリゲーション、いわゆるマイク ロ灌漑システムが入ります。作物 も作れるようになりました。   さて、作った作物をどうしよう ということで、次にやったことは、 その作物を買い上げることでした。 それで買った物を工場で加工して、 乾燥させたりピューレみたいな形 にして輸出します。現地で売るよ りも輸出価格の方が高いので、そ れでまた農民の収入が増えること になります。今はジャイン・イリ ゲーションは、こういう作物を作 りましょうと農民に指導して、輸 出用の作物を作ってもらって、そ れを加工して輸出する。ですから 農民との付き合い、マイクロ灌漑 システムの製造販売会社、それか ら農産物の輸出会社、そういうこ とを全部ひとまとめにしてインク ルーシブなビジネスをやっている、 ということになります。   先ほども申し上げましたけれど も、四五〇件ほど、年間一六億ド ル く ら い、 制 約 が あ り ま す の で、 では今度はボンドを発行して、皆 さんに投資していただこうと考え ました。これは他にもグリーンボ ンドだとかマイクロファイナンス ボンドとか、日本でも債券を発行 するようになっているんですけれ ども、インクルーシブビジネスボ ンドも実はインクルーシブビジネ スボンドという名前で出したのは 日 本 が 初 め て で、 二 〇 一 四 年 の 一〇月に初めて一般の投資家に対 して発行しました。IFCを通し てインクルーシブビジネスに投資 していただけるということです。

  ここまでは個別のお客さんの話 をしたのですが、ここから先はも っと難しい案件になります。お客 さんだけではできないこともあり ます。では皆が協力してやるには どうしたらよいのだろう、という ので仕組みを二つぐらいご紹介し たいと思います。これはもう正に 官民共同してインクルーシブな仕 組みを作る、というところです。   まずはルワンダの例です。もと もとの動機は、小規模農家にどう やって肥料だとか種を買うファイ ナンスをつけようかというところ から始まっているのですが、普通 の現地の銀行ではお金を貸してく れません。零細農家は貸し倒れリ スクが高すぎて誰も手をつけない の で す。 こ れ を 何 と か し よ う と、 現地の銀行とIFCとでリスクシ ェアリングをしてやろうというこ とになったんですけれども、それ でもかなり難しい。本当に農民は 作物を作って返してくれるの?と 現地の銀行も色々悩むわけですね。 IFCがリスクシェアするといっ

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国際シンポジウム 持続可能なサプライチェーンと倫理的貿易 てもだいじょうぶだろうか?   そ れでは買い手を作って、必ず物を 買ってもらえるという仕組みを作 りましょうということになりまし た。それでその全体のバリューチ ェーンを全部構築する、サプライ チェーンですね。それを作ってこ の仕組みでやれば何とか上手くい く の で は な い か、 と い う こ と で、 た く さ ん の 方 が 参 加 し て い ま す。 買い付けていただくのは、ワール ドフードプログラムとルワンダ政 府、国連の食料機構ですね。それ に買い手、農民から買い付けてく れ る の は D S M と い う 会 社 で す。 この会社は民間の会社でIFCの 投資先です。この方々が小規模農 家の農協から買い付けて、それを 加工してWFPやルワンダ政府に 売る、という仕組みをきちっと作 ってくれるので、銀行も、それな らお金の流れがはっきりしている のでなんとかなる、と考えること になります。ただ農民に対しては、 技術指導をしなければなりません。 技術指導をしてくれる方たちとい うのは、クリントン・ヘルスアク セス・イニシアティブというファ ウンデーションも参加して、ルワ ンダ政府も一緒に共同して技術支 援を行うことになりました。この システムによって、きちっと農民 のファイナンスが付いていく、と いう仕組みを作り上げたことにな ります。これは今できたところで すので、これから起動していくこ とになっています。

  最 後 の 例 で す が、 こ れ は 実 は 我々のチームでずっと過去五年ほ ど作り上げるのに努力しているの ですが、まだ最終的にはBOP層、 貧困層までは届いていません。こ れはグローバル・トレード・サプ ライヤー・ファイナンス・プログ ラムといって、実際には色々な会 社とやっているのですが、そのな かのリーバイスの例です。リーバ イスは、たとえばバングラデシュ で中小のアパレルの企業で火事が あったり、ビルが倒れたり、労働 環境もいわゆるスウェットショッ プ な ど 非 常 に 悪 い の で は な い か、 というよくない話題がいっぱい出 たので、何とかしないといけない、 と色々考えたのですけれども、リ ーバイスの考えた事は、まず労働 者の環境を良くしなければいけな いので、だったらその労働環境を 良くしているサプライヤーと付き 合わなければいけない、というこ とでした。IFCとILO・国際 労働機構が共同してプログラムを 作って、現地のサプライヤーの労 働環境を良くするように、中小企 業 に 対 し て 技 術 支 援 を 行 う の が、 ベターワークというプログラムで す。それを使ってサプライヤーの 労働環境を良くするプログラムを 手伝っております。   資料の真ん中に電子プラットフ ォームとありますが、これは何の 役割を持っているか。たとえばリ ーバイスが買うのですが、サプラ イヤーからみると売掛金が入って く る ま で の 間 に 時 間 が 空 く の で、 現金がすぐに欲しい際に、これを 要は割引してもらう訳ですね。そ れで割引してもらうのに電子プラ ットフォームを使うと、お金の流 れ も 目 に み え る よ う に な り ま す。 銀行からこの流れがみえれば、こ れだったらその売掛金がリーバイ スから入ってくるから、中小企業 の リ ス ク で は な く て リ ー バ イ ス、 大手企業のリスクでお金を貸せる、 という仕組みです。リーバイスが そこでもう一歩考えて、IFCと 一緒にやったことは、サプライヤ ーが、どのようにサステイナブル にやっているかということに対す るランク付けです。一つひとつを 必ずオーディットして、精査して、 この企業、このサプライヤーはこ の レ ベ ル、 こ ち ら は 別 の レ ベ ル、 というランク付けをして、あるラ ンク以下は付き合わないという仕 組みを作ったのですね。   もっと向上してランクを上げて もらいたい時にどうしたらよいか。 そこでIFCと協力したのは、リ ーバイスにおけるランクが上がっ ていくほど、金利を下げることに しました。ですから調達金利が実 際に環境社会問題に対応するサプ ライヤーほど、借り入れの金利が 安くなる、そういうインセンティ ブを付けて、それによってサプラ イヤーの環境問題とか社会問題へ の対応をさらに良くしていこうと、 仕組みを作りました。これはリー バイスから始めていますが、今後 は他のアパレルのサプライヤーに も展開していくつもりです。 ︵ ま す お か   と し や / 世 界 銀 行 グ ループ国際金融公社開発インパク ト担当局長︶

参照

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