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幼稚園における自閉スペクトラム症児の 社会的相互作用を促進する保育プログラムの効果

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Academic year: 2021

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【ABSTRACT】

The purpose of this research was to verify whether the social interaction of autism spectrum disorder could be promoted through a childcare program by conducting childcare programs that social interaction. In movement education and therapy, we emphasize “learning through movement = improving psychological functions through movement”. And a childcare program to promote social interaction for young children with autism spectrum disorder diagnosis and underdeveloped social skills was conducted in F kindergarten for three years from 201W to 201Y, using movement education and therapy and 11 sessions. Previous similar studies (Kawai 2018) that suggested the effectiveness of movement education and therapy for the education of children with disabilities in kindergarten showed that social interaction in the group was increased in the former group of young children who had and did not have a movement program. Based on the results, we analyzed how the social interaction (number of contacts) between disabled children and healthy children changed before (Pre) and after (Post) each session.

As a result, with the child D who did not have a childcare program that in the program increased the number of contacts in one session, but decreased in other sessions.

On the other hand, the child A who performed the program was decreased, but there was an increase of 6 times at the maximum. There was no decrease in child B, and there was an increase of up to 6 times. Child C decreased in one session but increased up to 10 times.

The results indicated that the childcare program that promotes social interaction increases the number of contacts with other children among the children A, B and C who were diagnosed with autism spectrum at the kindergarten.

This research concerns only children with autism spectrum. There is a need for developing childcare programs to promote social interaction among children with other disorders.

人間関係学研究 第 巻 第 号

The Japanese Journal of Human Relations, Vol. ‐ ‐

幼稚園における自閉スペクトラム症児の社会的相互作用を

促進する保育プログラムの効果

河 合 高 鋭

Effect of childcare programs that promote social interaction children

with autism spectrum disorder in kindergarten

TAKATOSHI KAWAI

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Ⅰ.背景と目的 日本自閉症協会の自閉症の手引き( )によると、 自閉症スペクトラム障害とは、社会的相互交渉の質的 な障害、コミュニケーション機能の質的な障害、活動 と興味の範囲の著しい限局の つの行動特徴で診断さ れる障害である。できる限り早期から適切な支援を受 けることによって状態が改善することも期待され、早 期診断・早期教育による適切なコミュニケーションの 獲得は、たとえ単純なコミュニケーション手段であっ ても、有効なコミュニケーション手段を身につけてい く こ と で、問 題 行 動 の 軽 減 や 予 防 に 効 果 が あ る (Howlin )とされる。文部科学省( )は「自 閉症とは、 歳くらいまでに現れ、他人との社会的関 係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が 狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障 害である」としており、幼児期に過ごす環境が子ども にとって与える影響はとても大きいと考えられる。 できる限り早期から適切な支援を受けることが可能 となるように、障害児と健常児の交流教育や共生教育 のプログラムにも活用されているムーブメント教育・ 療法を、障害について専門的な知識がない保育者でも 行える保育プログラムとして活用できるようにするこ とが望まれる。そのためには、幼稚園における自閉ス ペクトラム症児の社会性向上に対するムーブメント教 育・療法の効果を検証していくことが必要であると考 えられる。なお、ムーブメント教育・療法とは、アメ リカの知覚―運動学習理論家であるマリアンヌ・フロ スティッグによって開発された、運動遊びを原点とす る発達支援法で、「子ども(対象者)の自主性、自発 性を尊重し、子ども自身が動くことを学び、動きをと おして『からだ(動くこと)』と『あたま(考えるこ と)』と『こころ(感じること)』の調和のとれた発達 を援助」する方法である(日本ムーブメント教育・療 法協会 )。 本研究では、幼稚園における自閉スペクトラム症の 診断を受け、その特性によって社会性スキルが未発達 な 名の自閉スペクトラム症幼児を対象に、ムーブメ ント教育・療法を基に、誰もが行える社会的相互作用 を促進する保育プログラムを行うことで社会的相互作 用を促進できるか検証を試みた。 Ⅱ.研究方法 .対象 調査対象は、E 県の F 幼稚園で園児数は全体で 名程度である。対象クラスは自閉スペクトラム症幼児 (A 児・B 児・C 児・D 児)を各クラスに 名ずつ受 け入れている クラスで、幼児数は クラス約 名、 合計 名程度である。 クラスのうち、A 児、B 児、 C 児の所属する クラスはムーブメントプログラムを 実施し、D 児の所属する クラスはムーブメントプロ グラムを実施しなかった。 社会的相互作用を促進する保育プログラムを実施し た A 児は、 年中クラスに在籍している 歳の男児で、 自閉スペクトラム症と診断されている。今までにムー ブメントプログラムの経験はなく、ムーブメントプロ グラム実施前の W 年 月時点では、MEPA-R によ る言語発達面では、第 ∼ ステージに位置している が、受容よりも表出領域に困難さがあった(Table.)。 また、社会性は第 ステージに位置しており、ムーブ メントプログラム開始前に行った母親との聞き取り面 接では、本児は口頭による説明では理解が難しいとい うことであった。 社会的相互作用を促進する保育プログラムを実施し た B 児は、 年長クラスに在籍している 歳の男児で、 自閉スペクトラム症と診断されている。ムーブメント プログラム実施前の X 年 月時点では、MEPA-R 評価は、言語面では第 ∼ ステージ、社会性は第 ステージに位置していた(Table.)。ムーブメント プログラム開始前に行った母親からの聞き取り面接で は、興奮気味になって、走り回ることもあるというこ とであった。 社会的相互作用を促進する保育プログラムを実施し た C 児は、 年長クラスに在籍している 歳の男児で、 自閉スペクトラム症と診断されている。ムーブメント 【KEY WORDS】 幼稚園 自閉スペクトラム症 社会的相互作用 保育プログラム

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プログラム実施前の Y 年 月の時点では、MEPA 評価は、言語面では第 ∼ ステージ、社会性は第 ステージに位置していた(Table.)。ムーブメントプ ログラム開始前の母親からの聞き取り面接では、どこ かに走り出してしまうとのことであった。 社会的相互作用を促進する保育プログラムを実施し なかった D 児は、年中クラスに在籍している 歳の 男児で、自閉スペクトラム症と診断されている。ムー ブメントプログラム実施前の W 年 月時点では、 MEPA-R での言語面では第 ∼ ステージ、社会性 は第 ステージに位置していた(Table.)。ムーブ メントプログラム開始前の母親からの聞き取り面接で は、多動でずっと一緒の姿勢をしていることは難しい ということであった。 Table. A 児の発達の変化 Table. B 児の発達の変化 Table. C 児の発達の変化 Table. D 児の発達の変化

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Table. 先行研究による社会的相互作用を促進する保育プログラム .社会的相互作用を促進する保育プログラムの内容 先行研究(河合 )による社会的相互作用を促進 する保育プログラムを Table.に示す。ムーブメント プログラムの実施に当たっては、ムーブメント教育・ 療法の遊具を用いることによって、友だちと遊びなが ら接触回数が増加するように設定した。各セッション では、セッション開始前に自由に遊具に触れる時間を 設け、修了後には振り返りを行うこととした。 .データの収集 調査(ムーブメントプログラムの実施)は、 W 年度∼ Y 年度の 期( 年間)にわたって行われ た。すなわち、A 児と D 児については W 年度、B 児は X 年度、C 児は Y 年度にムーブメントプロ グラムを実施した。各期とも 月の夏休み( 日間) を除く期間に、全 回のセッションを行った。各セッ ションは、午前 時から 分間程度とし、社会的相互 作用を促進する保育プログラムがどのように有効であ るかを測定するため、ムーブメントプログラムを実施 する前と後に幼児同士のかかわりが多くなる 分間の 接触回数のデータをタイムサンプリング法で収集し た。対象児の様子は、「事象見本法の観察記録(相互 作用)」に依拠しビデオ録画を行い、対象児の行動の 生起を記録し対象児とクラスの友だちとのかかわりの 回数を記録した。 また、対象児の発達特性の変化を調べるために、面 接調査によって MEPA-R を使用し事前アセスメント を行った。その際、研究の目的に即して社会性を重視 した MEPA-R のアセスメントは筆者が行い、保護者と 担任に対して、対象児の現在の状況や気になるところ についての半構造化面接による聴き取りを行った。な

お、MEPA-R(Movement Education and Therapy Program Assessment-Revised)とは、対象児に適切な ムーブメント教育・療法プログラムを作成するために、 対象児の運動技能、身体意識や心理的諸機能の発達特 性を測定するアセスメント法として 年に開発され たものの修正版である(小林 )。 .分析方法 統計解析は、Friedman 検定を用いて、合計 回の セッションの前後において対象児がクラスの子どもに 接触する回数に差があるかを検定した。次いで、Shirley -Williams 法による多重比較を実施し、各セッション の接触回数の差を調べた。統計ソフトは、BellCurve for Excel(version . )を使用し、有意水準は %と した。 .倫理的配慮 本研究は、九州保健福祉大学倫理委員会の承認(受 理番号 ‐ )を得て行われたものである。調査に当 たっては、研究対象者が未成年(幼児)であることか ら、その保護者に対し、研究実施説明書に基づいて権 利擁護などを説明した後、同意書に署名を得た。

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㛤ጞ๓ ⤊஢ᚋ 㛤ጞ๓ ⤊஢ᚋ 㛤ጞ๓ ⤊஢ᚋ 㛤ጞ๓ ⤊஢ᚋ                                 㐠ື࣭ឤぬ㡿ᇦࡢ㌟యព㆑㡯┠ ゝㄒ࣭♫఍ᛶ㡿ᇦࡢ㌟యព㆑㡯┠ ㄪᩚຊ㡯┠ ➽ຊ࣭ᣢஂຊ㡯┠ 㸺ᩘᏐ㸣㸼 ࣒࣮ࣈ࣓ࣥࢺㄢ㢟㡯┠ $ ඣ % ඣ & ඣ ' ඣ Ⅲ.結果 .MEPA-R プロフィール表に基づく発達特性の変 W 年 度( W 年 月∼ X 年 月)の 年 間 に全 セッションのムーブメントプログラムを実施し た A 児と、同じ期間にムーブメントプログラムを実 施しなかった D 児における発達プロフィールの変化 は、Table.と Table.に示した通りである。 X 年 度( X 年 月∼ Y 年 月)にムーブメントプロ グラムを実施した B 児および Y 年度( Y 年 月 ∼ Z 年 月)にムーブメントプログラムを実施し た C 児の第 回目のセッション(B 児は X 年 月、 C 児は Y 年 月)と第 回目のセッション(B 児 は Y 年 月、D 児は Z 年 月)における発達プ ロフィールの変化は Table.と Table.に示す通りで ある。 A 児の発達プロフィールの変化について、「社会性」 分野の「対人関係」領域では、S‐ 「小さな子の面 倒を見る」、S‐ 「スカーフの上に風船をのせて二人 で落とさずに運ぶ」などのアセスメント活用がプログ ラム実施後に、顕著に向上し、暦年齢よりも高い数で あった。さらに S‐ 「ままごとの役を演じることが できる」、S‐ 「友だちと互いに主張したり妥協した りして遊ぶ」、S‐ 「経験したことを、他の子に話す」、 S‐ 「小さい子の面倒をみる」で芽生え反応が示さ れた。 B 児の発達プロフィールの変化について、「言語」 分野の Le‐ 「自分のことを愛称を使って表現できる」 や「言語」分野の L‐ 「『あんよをあげてごらん』『お ててをあげてごらん』の指示に従える」などの向上が 見られた。また、「社会性」分野の S‐ 「何かを『見 てちょうだい』と人を引っぱる」、S‐ 「ままごとの 役を演じることができる」などの向上が見られた。 C 児の発達プロフィールの変化については、「言語」 分野の Le‐ 「自分のことを愛称を使って表現でき る」、L‐ 「赤・黄・青が言える」、「社会性」分野の S‐ 「ボール遊びの順番を待つことができる」、S‐ 「友だちと互いに主張したり妥協したりして遊ぶ」、 S‐ 「経験したことを、他の子に話す」、S‐ 「禁止 されていることを他の子がやったとき、その子に注意 する」などでは向上が見られた。 プログラムを実施しなかった D 児の発達プロフィ ールの変化は、 年の間に「言語」分野の「受容」領 域と「表出」領域の一部が伸びているが、「社会性」 など他の分野では顕著な変化は見られなかった。 年間のムーブメントプログラム実施の開始前と終 了後における MEPA-R クロスインデックス表でみた 課題達成度の変化を Table.に示した。ムーブメント プログラムを実施した A 児、B 児、C 児はムーブメン トプログラムを実施しなかった D 児に比べて全項目 でセッションの前後において課題達成度が増大してい る。なかでも「言語、社会性領域の身体意識項目」で は A 児、C 児とも著しい発達の変化が見られた。B 児、 D 児も同様に「言語、社会性領域の身体意識項目」で 発達の変化が見られたが、D 児に関しては増大してい るものの他児と比較するとその数値は低い。また、発 達プロフィール表から D 児の発達は間隔があいてい ることが見受けられる一方、B 児は連続した発達が見 られ発達の流れとして良い傾向であった。 年間のム ーブメントプログラム終了後、母親への聞き取りをし たところ、C 児は、「 学期になると落ち着きが出て きたように感じた。先生の話もよく聞いているみたい だ」、「少しずつ集団の中に自分の居場所を作り、友だ ちと楽しむ姿が見られるようになった。集団での遊び Table. MEPA-R クロスインデックス表でみた課題達成度の変化

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Fig. 各セッションの前後における A 児、B 児、C 児、D 児の友だちとの接触回数の推移 に楽しく参加できるようになった。回数を重ね、時間 を過ごしていく中で表情が明るくなり、言葉も増えて いったように思う。友だちの様子を見て同じように行 動するようになった。」と普段の生活での変化が見ら れたことが語られたが、母親が受け止めたこのような C 児の変化は、クロスインデックス表に示された結果 によって裏付けられているといえよう。 .社会的かかわり(接触回数)の変化 「事象見本法の観察記録(相互作用)」による各セ ッションの前後における A 児、B 児、C 児、D 児の友 だちとの接触回数の推移を Fig.に示した。社会的相 互作用を促進する保育プログラムを行わなかった D 児は、セッション 回目は接触回数が増加したが、そ の他の回は接触回数が減少または変わらなかった。こ れに対し、社会的相互作用を促進する保育プログラム を行った A 児は減少している回もあるが、他の回で は増加が見られ最大で 回の増加が観察された。B 児 は減少した回はなく変化が見られなかった回もあった が、 回目のセッションで最大の 回の増加が観察さ れた。C 児は 回目のセッションでは減少したが他の セッションでは増加が見られ、 回目のセッションで 最大の 回の増加が観察された。 .介入前後におけるかかわりの差 各セッションの前後における社会的相互作用の接触 が肯定的だったか否定的だったかで分類し集計した (Fig.)。合計多重比較(Shirley-Williams)による接 触回数の解析は、介入前 回から 回、介入後 回か ら 回までを時系列に合計接触回数の経時変化のう ち、介入前の最初の接触回数をベースに介入後の 回 目から順に、どの対までに差があるかを調べた。介入 前 回目と介入後 回目では回数が介入後 回目の方 が有意に多いことがわかり、その後、介入前 回目ま で差が見られた。また、介入前 回目と介入後 回目 も有意差が出ており、これは、介入前 回目よりも介 入後 回目の方が有意に回数が多かった。これはムー ブメントプログラムを行った初回であることが起因し ていると考えられる。肯定的接触回数のみカウントし た場合(Fig.)、介入前 回から 回、介入後 回か Fig. 介入前後における関わり数の差(合計)

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ら 回までを時系列に合計接触回数の経時変化をフリ ードマン検定により分析したところ、p< . と有意 差が確認された。続いて、否定接触回数のみカウント し(Fig.)、介入前 回から 回、介入後 回から 回までを時系列に合計接触回数の経時変化をフリード マン検定により分析を行った。p= . と有意差は見 られなかった。 Ⅳ.考察 MEPA-R プロフィール表による発達の変化では、 社会的相互作用を促進する保育プログラムを行った A 児、B 児、C 児に「言語」分野と「社会性」分野の発 達が見られた。一般的な保育プログラムでは、障害児 と健常児が一緒に活動する際に、障害児がついていけ ずに見学をしていたり、個別の活動を行っていたりす る場合がある。しかし、ムーブメント教育・療法では、 無理なく参加できるプログラムを行うことにより、子 ども自身が自然に「やりたい」と思う気持ちを引き出 しながら、それぞれの発達段階にあった支援を行うこ とができる。このことから幼稚園で社会性スキルが未 発達な自閉スペクトラム症と診断された A 児、 B 児、 C 児にとって、 年間(夏休みを除いて月に 回全 回)社会的相互作用を促進する保育プログラムを行う ことによって、他児との接触回数が増え、自然にかか わることのきっかけとなっていることが示唆された。 A 児、B 児、C 児、D 児の介入前後のかかわりの変 化では、A 児は介入前と介入後で肯定的と否定的の割 合に特に差はみられなかったが、他児に比べると、そ もそも肯定的の割合が高かったことが影響している可 能性も考えられる。B 児と C 児はいずれも介入後に おいて、肯定的の割合が増えていた。D 児の有意差は みられなかったが、小さい効果量があったことから、 そもそも全体の度数が少なかったために、有意差が検 出されなかった可能性が考えられ、D 児のかかわりの 機会がもっと増えた場合に再度検討する必要があると 考えられる。本プログラムを行うことで、肯定的な接 触回収は優位に増え否定的な接触回数に有意差は見ら れなかった。これは遊びを介して行う保育プログラム であることから、否定的なかかわりよりも肯定的なか かわりが増えたのだと考えられる。 社会的妥当性として、対象となる保育者へのインタ ビュー内容を逐語録に起こし、記述された文章を KJ 法(川喜多 )によって分析を行った。保育プログ ラムを行ったクラスの A 先生からは「子ども同士で 受け入れ合うというところができる。好きなお友達が できて、その友達を頼りにしたり、温かい雰囲気の中 で受け入れあうということが自然にできてくる。」、B 先生からは「手をかけてあげなきゃいけないけど、ほ Fig. 介入前後における関わりの差(肯定) Fig. 介入前後における関わりの差(否定)

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かの子どもたちと特に変わらない。」、C 先生からは「障 害のある子ものびのび動ける環境があったり、子ども 自身もとても喜んでいたので、とてもいい機会だった。 障害のある子と関わってみて可愛いと思ったし、自分 自身が勉強になり、より広い視野で保育ができると思 った。」など、障害の有無は関係なく、すべての子ど もを受け入れ保育を行っていく意識がみられた。保育 プログラムを行っていないクラスの D 先生からは、 「周りの子にとっても難しいものは障害のある子にと ってはより難しい。本人も自分が迷惑をかけちゃって いるのではないか、という気持ちが芽生えている。」「そ の子だけを見ているわけではないので、今の私はでき ない。そういう気持ちがあっても難しい。」と、障害 児と健常児を一緒に保育することの困難さを示す発言 があった。 自閉スペクトラム症幼児とクラス全体で行う保育プ ログラムは少ないが、社会的相互作用を促進する保育 プログラムを導入することで子ども同士の変化のみな らず、保育者の意識も変化が見られた。また、ムーブ メントプログラムを行った幼児と行わなかった幼児で は、前者のほうが、集団における社会的相互作用が増 大し、幼稚園における障害児教育においても、ムーブ メント教育・療法が有効であることが示唆された(河 合 )ことからも、社会的相互作用を促進する保 育プログラムは、自閉スペクトラム症幼児と健常児が ともに育つ保育のきっかけとなると推察された。 Ⅴ.今後の課題 本研究の一部は、 年 月に行われた日本人間関 係学会大会第 回全国大会にて口頭による研究発表を 行っているが、今回の研究限界として、実践事例が 事例であったということ、有効性を検討するためには さらに多くの事例を重ねる必要があり、対象児数の増 加を図るとともに、ムーブメント教育・療法を活用し た社会的相互作用の増加による子どもたちの接触回数 増加を高めるための調査研究の推進が必要である。ま た障害幼児を自閉スペクトラム症幼児と限定したが、 それ以外の障害種別にも検討がすべき内容である。 幼稚園における自閉スペクトラム症幼児への実践的 な研究が非常に少なく保育現場においても保育プログ ラムの開発は急務であり、これから必要とされると考 えている。そのために保育者が難しいと考えている実 践のプログラム開発と保育者への研修が今後の必須課 題であり、障害当事者においても期待される分野であ る。保育方法の開発や有効な実践研究を意識し今後さ らに研究を深めたい。 最後に、本研究にご協力いただきました対象児と保 護者の皆様、研究の遂行に多大なるご支援を承りまし た私立幼稚園の園長先生、担任保育者の皆様に心から 感謝申し上げます。 参考・引用文献 一般社団法人日本自閉症協会( )自閉症の手引き, 美巧社. 河合高鋭( )幼稚園におけるインクルーシブ教育 のためのムーブメント教育・療法の活用―社会的相 互作用に焦点をあてて―,児童研究,日本児童学 会, ,pp. ∼ . 小林芳文( )MEPA-R‐ムーブメント教育・療法 プログラムアセスメント《手引き》,日本文化科学 社. 小林芳文・是枝喜代治( )楽しい遊びの動的環境 による LD・ADHD・高機能自閉症児のコミュニケ ーション支援,明治図書. 小林芳文・大橋さつき( )和光大学から発信する ムーブメント教育・療法の軌跡と展望,研究プロジ ェクト:子どもの育成支援を巡る遊びの環境づく り,東西南北,pp. ‐ . 小林芳文・飯村敦子・竹内麗子・吉村喜久子( ) 包括的保育に結びつけたムーブメント教育の実践分 析に関する研究,保育科学研究, ,pp. ‐ . 小林芳文・大橋さつき・飯村敦子( )発達障がい 児の育成・支援とムーブメント教育,大修館書店, . 社会福祉法人日本保育協会( )保育所における障 害児やいわゆる「気になる子」等の受入れ実態,障 害児保育等のその支援の内容、居宅訪問型保育の利 用実態に関する調査研究報告書. 日本精神神経学会( )DSM‐ 精神疾患の分類 と診断の手引,医学書院. 日本保育学会大会実行委員会( )一般社団法人日

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本保育学会第 回大会第 号通信. 袴田優子( )コミュニケーション支援のための動 的環境の検討―自閉スペクトラム症児のムーブメン ト活動の観察を通して―,児童学研究, ,pp. ‐ . Frostig, M.:肥田野直・茂木茂八・小林芳文訳( ) ムーブメント教育―理論と実際.,日本文化科学社. Frostig, M.:小林芳文訳( )フロスティッグのム ーブメント教育・療法 理論と実際,日本文化科学 社. 文部科学省( )今後の特別支援教育の在り方につ いて(最終報告)https : //www.mext.go.jp/a_menu/sh otou/tokubetu/004/008/001.htm. 文部科学省( )インクルーシブ教育システム構築 事 業 www.mext.go.jp/component/a_menu/education/m icro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/01/30/1343742_1_ 1.pdf. Patricia Howlin( )自閉症の心理治療と治療教育, pp. ‐ .

UNESCO( )Guidelines for Inclusion : Ensuring Access to Education for All.

Fig. 各セッションの前後における A 児、B 児、C 児、D 児の友だちとの接触回数の推移に楽しく参加できるようになった。回数を重ね、時間を過ごしていく中で表情が明るくなり、言葉も増えていったように思う。友だちの様子を見て同じように行動するようになった。」と普段の生活での変化が見られたことが語られたが、母親が受け止めたこのようなC児の変化は、クロスインデックス表に示された結果によって裏付けられているといえよう。.社会的かかわり(接触回数)の変化「事象見本法の観察記録(相互作用)」による各セッションの前後

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