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高温がチャバネアオカメムシの産卵およびふ化に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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42 Kyushu Pl. Prot. Res. Vol. 65 緒     言  果樹を加害するカメムシ類(以下,果樹カメムシ 類)の主要種はチャバネアオカメムシ SCOTT( 以 下, チ ャ バ ネ ), ツ ヤ ア オ カ メ ム シ Walker, ク サ ギ カ メ ム シ (Stål)である(堤,2003)。このうち, チャバネは北海道,本州,九州,対馬,南西諸島に分 布し(友国ら,1993),東北南部から九州南部と広い 地域で果樹カメムシ類の優占種となっている(堤, 2003)。  本種は1973年に全国的に大発生し,それ以降西日本 を中心に周期的に大発生を繰り返してきた(長谷川, 1974;梅谷,1976;井上,1986)。福岡県においても, 1974年以降チャバネの発生量は,周期的に増減を繰り 返している。これは,越冬成虫の次世代である当年世 代の発生量が餌であるヒノキ球果(内田ら,1975)の 豊凶の影響を受けるためである(山田 ・ 宮原,1980)。 このため,当年発生した成虫の越冬量はヒノキの豊凶 に影響されると考えられる。しかし,1984∼2004年に 比べ,2005∼2017年のヒノキ球果量に対する越冬量は 減少傾向である(福岡県,2018)。このため,2005年 以降にヒノキ球果量より影響は小さいが,チャバネの 発生を抑制する要因が存在すると考えられた。  2005年前後は福岡県において,一日の最高気温が 35℃以上の猛暑日が頻繁に出現し始めた時期にあたり, 2005∼2018年の平均猛暑日数は年間13日と,1984年か ら2004年の3.1日に比べて増加している(気象庁, 2019)。チャバネと同じカメムシ科のミナミアオカメ ムシは夏期に高温障害を起こしている可能性が示唆さ れている(藤崎,2010)。また,成虫期に経験した高 温が生涯産卵数に,幼虫期に経験した高温も羽化後の 生涯産卵数に影響を及ぼした(桐谷,2010)。更に, ホソヘリカメムシは33.8℃で高温障害を起こした (Kim et al, 2009)等,チャバネ以外のカメムシ亜目 昆虫の高温障害による生涯産卵数減少及びふ化率低下, 発育遅延,羽化率低下に関する報告がある。チャバネ では,23℃,25℃における生涯産卵数及びふ化率が明 らかにされているものの(大野,1985;小滝ら, 1983),25℃を超える温度の影響は確認されていない。 そこで,近年,野外においても遭遇する可能性が増加 している35℃の高温がチャバネの成虫の産卵及びふ化 に与える影響を調べた。また,幼虫期の高温経験が羽 化後の産卵及びふ化に与える影響について,成虫に最 九病虫研会報 65:42−45(2019)

Kyushu Pl. Prot. Res. 65:42−45(2019)

†  saitou-n8020@pref.fukuoka.lg.jp

*  現在 福岡県福岡農林事務所福岡普及指導センター *  Present address:Fukuoka Agriculture and

Forestry Office for the Dissemination of Improved Agricultural Methods, 902-1 Iji, Nishi-ku, Fukuoka 819-0371, Japan

高温がチャバネアオカメムシの産卵およびふ化に及ぼす影響

齊藤 紀子†*・足立 龍弥・手柴 真弓

(福岡県農林業総合試験場)

Effect of high temperature on the number of laying eggs and hatching of the Brownwinged green bug (Plautia stali SCOTT). Noriko Saitou†*, Tatsuya Adachi, Mayumi Teshiba (Fukuoka Agriculture and Forestry Research Center, 587 Yoshiki, Chikushino, Fukuoka 818-8549, Japan.)

 果樹の重要害虫であるチャバネアオカメムシ( SCOTT)累代飼育虫(23℃, 16L8D)を用いて産卵およびふ化に対する高温の影響を調査した。羽化後35℃で飼育した雌成虫 は,25℃で飼育した場合に比べ生涯産卵数は少なく,その卵はふ化しなかった。また,5齢幼虫 の期間のみ35℃におくと全期間23℃で飼育した場合に比べ生涯産卵数は少なく,そのふ化数も少 なかった。以上のことから35℃の高温は,チャバネアオカメムシの産卵およびふ化に悪影響を及 ぼすと考えられた。

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43 九 州 病 害 虫 研 究 会 報   第65巻 も近い5齢幼虫を用いて調査した。 材料および方法 1.成虫期に経験した高温が産卵とふ化に及ぼす影響  試験には,福岡県筑紫野市で採集し,水と生ラッカ セイを与え,23℃恒温,16時間日長条件下で累代飼育 しているチャバネ成虫を用いた。  ろ紙(直径90mm)を敷いたプラスチック容器(直 径90mm,高さ20mm,以下,プラスチックシャーレ) に餌として生ピーナツ3個,給水器(プラスチック容 器(直径38mm,高さ10mm)に水を含ませた脱脂綿 を入れたもの),産卵および身をひそめる場所として 扇状に加工したろ紙(1辺約5cm)を入れ,当日羽 化した雄雌成虫を1個体ずつ収容し(第1図),25℃, 30℃,35℃の各温度で飼育した。なお,日長は長日条 件として24時間日長で試験を行った。生涯産卵数は, 2∼3日毎に産下卵を採集して計数した。なお,採集 した卵塊は,供試した雌毎,採卵日毎に給水器ととも にプラスチックシャーレに収容し,上記の温度と日長 で継続して飼育し,採卵21日後にふ化卵を計数した。  試験には雌を10個体用い,雌が全て死亡するまで調 査した。なお,雄が死亡した場合は,供試虫と同日に 羽化し,集団飼育容器(山中・堤,1991)で,上記の 温度と日長条件で飼育した雄と交換した。 a c d 第1図 試験時の飼育状況.a: 生ピーナッツ,b: 水を含 ませた脱脂綿を入れたプラスチック容器,c: 扇 状のろ紙製産卵場所,d: 底面に敷いたろ紙 2.5齢幼虫期に経験した高温が羽化後の産卵とふ化 に及ぼす影響  試験には,試験1と同様に累代飼育したチャバネ5 齢幼虫を用いた。試験当日に脱皮したチャバネ5齢幼 虫を集団飼育用容器に50個体収容し,23℃または35℃, 24時間日長で飼育し,羽化させた。羽化した雄雌成虫 を1個体ずつ試験1と同様に餌,給水器とともにプラ スチックシャーレに収容した。23℃,24時間日長条件 下で飼育し,試験1と同様に産下卵を採集して生涯産 卵数を調べた。採集後の卵塊は,23℃,24時間日長条 件下で飼育し,採卵21日後にふ化卵を計数した。試験 には,雌を10個体用い,21日以上継続して産卵しない 場合は調査を終了した。また,雄が死亡した場合には, 試験1と同様に上記温度と日長で飼育した雄と交換し た。 3.統計解析  生涯産卵数およびふ化卵数は,0.5を加えた値を BoxCox 変換し,試験1では,Tukey-kramer の HDS で,試験2では分散分析を行った。統計解析には JMPver.9(SAS Institute Inc.)を用いた。

結     果 1.成虫期に経験した高温が産卵とふ化に及ぼす影響  25℃,30℃,35℃で飼育した雌の生涯産卵数とその ふ化卵数をそれぞれ第2図,第3図に示した。各温度 の生涯産卵数中央値は25℃で87.5個,30℃で44個, 35℃で12個と高温になるほど減少し,25℃と35℃では 有意差が認められた( =0.0489,Tukey-Kramer)。 ふ化卵数も生涯産卵数と同様に25℃で40.5個,30℃で 2個,35℃で0個(中央値)と高温になるほど減少す る 傾 向 が あ り,25 ℃ と35 ℃( =0.0007,Tukey-/ 第3図 成虫期に経験した高温がふ化卵数に及ぼす影響. 異なるアルファベットを付した処理区間で有意 差あり,(孵化卵数に0.5を加えた値を BoxCox 変換後,Tukey-Kramer 検定, <0.01). / 第2図 成虫期に経験した高温が生涯産卵数に及ぼす影 響.異なるアルファベットを付した処理間で有 意 差 あ り( 生 涯 産 卵 数 に0.5を 加 え た 値 を BoxCox 変換後,Tukey-Kramer 検定, <0.05).

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44 Kyushu Pl. Prot. Res. Vol. 65 Kramer)及び,30℃と35℃の試験区間には有意差が 認められた( =0.0028,Tukey-Kramer)。 2.5齢幼虫期に経験した高温が羽化後の産卵とふ化 に及ぼす影響  5齢幼虫期に23℃,35℃で飼育し,その後23℃で飼 育した個体の生涯産卵数とふ化卵数をそれぞれ第4図, 第5図に示した。生涯産卵数は,23℃の211.5個に比べ, 35℃では95個と少ない傾向にあった。同様にふ化卵数 も35℃では24個と,23℃の113個と比べて有意に少な かった(中央値, =0.0452,分散分析)。 / 第4図 5齢幼虫期に経験した高温が羽化後の産卵に及 ぼす影響. / * 第5図 5齢幼虫期に経験した高温が羽化後のふ化に及 ぼす影響.処理間に有意差あり(0.5を加えた 値を BoxCox 変換後,分散分析, <0.05) 考     察  高温の経験がチャバネの産卵数やふ化に及ぼす影響 について,成虫と5齢幼虫を用いて調べた。福岡県で 35℃を超える猛暑日の出現回数が増加している7月下 旬から8月は,チャバネ成虫がヒノキ球果を摂取し, 卵巣を発達させて産卵する時期である。試験1におい て,35℃におけるチャバネ成虫の生涯産卵数は25℃, 30℃に比べ少なく,更に次世代もふ化しなかった。野 外では,今回の試験のように35℃が継続したことはな いため,この結果から野外でも同様のことが起こって いるとまでは言及できないものの,近年の高温がチャ バネの増殖に何らかの影響を及ぼしている可能性が示 唆された。なお,(福田・藤家1988)は,30℃では チャバネは発育遅延を起こさなかったとしており, 30℃で高温障害が認められなかった本試験の結果と一 致した。同様に,試験2では,5齢幼虫期に35℃の高 温を経験すると,羽化後の生涯産卵数とふ化卵数が減 少したことから,5齢幼虫期の35℃の高温経験は,羽 化後の障害を引き起こすと考えられた。チャバネの高 温障害について調査するため,今後は発育遅延,羽化 率の低下,及び1齢から4齢幼虫期に経験した高温が 産卵及びふ化に及ぼす影響について,30℃から35℃ま での数段階の温度条件下で調査をする必要がある。ま た,本試験では,恒温条件で試験しているが,野外で の発生量減少の要因について検証するためには,野外 を模した変温管理による飼育,または野外での詳細な 調査が必要である。 引 用 文 献 藤崎憲治(2010)ミナミアオカメムシの高温障害.植 物防疫.64:434-438 福田寛・藤家梓(1988)チャバネアオカメムシの生活 史.千葉農試験研報29:173-180 福岡県(2018)平成31年度版病害虫・雑草防除の手引 き.http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/ 346684_53800972_misc.pdf(2019年4月16日アクセス 確認) 長谷川仁・梅谷献二(1974)果樹における果樹カメム シ類の多発被害.植物防疫28:279-278

Kim H., S. Baek, S. Kim, S. Lee and J. Lee.  Temperature-dependent development and oviposition models of (Thunberg)(Hemiptera: Alydidae). Entomol Zool. 44:515-523

井上晃一(1986)昨年における果樹カメムシ類の大発 生とその原因.植物防疫40:289-292 桐谷圭治(2010)昆虫の温度反応と分布域の変化.植 物防疫64:419-424 気象庁(2019) 気象観測データ 過去の気象データ・ ダウンロード アメダス太宰府,アメダス黒木  http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/index. php(2019年4月16日アクセス確認) 小滝豊美・畑公夫・軍司守俊・八木繁美(1983)種食 餌によるチャバネアオカメムシ( SCOTT)の飼育.応動昆27:63-68 大野和朗(1985)チャバネアオカメムシ越冬後成虫の

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45 九 州 病 害 虫 研 究 会 報   第65巻 飼育条件下での産卵特性.応動昆.29:304-308 友国雅章・安永智秀・高井幹男・山下泉・川村満・  川澤哲夫(1993)日本原色カメムシ図鑑 堤隆文(2003)果樹カメムシ面白生態とかしこい防ぎ 方 内田信義・行徳直己・山田健一(1975).果樹を加害 するカメムシ類の寄主植物について(予報).九病 虫研会報.21:24-31 梅谷献二(1976)果樹における果樹カメムシ類の被害 (続報).植物防疫30:133-141 山田健一・宮原実(1980)果樹を加害するカメムシ類 の生態と防除に関する研究(第3報)チャパネアオ カメムシとツヤアオカメムシの寄生植物について. 福岡園研報.18:54-61 山中正博・堤隆文(1991)チャバネアオカメムシ省力 大量飼育のための容器の開発.平成3年度福岡県農 業総合試験場果樹病害虫関係試験成績書.266-277 (2019年4月19日受領,9月17日受理)

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