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日本基礎心理学会第39回大会(2020年11月7日~11月17日)北海道大学(オンライン開催)

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日本基礎心理学会第39回大会

(2020年11月7日∼11月17日)

北海道大学(オンライン開催)

色弁別および色知覚におよぼすS錐体刺激量比の効果 愛知淑徳大学 高橋啓介 眼科杉田病院 岡崎杏香 眼科臨床では羞明を軽減するために遮光眼鏡が用いら れるが,カット波長による色弁別の低下や色知覚の変化 が問題となる。遮光レンズがどの程度S錐体反応を維持 するのか(S 錐体刺激量比)が重要で,S 錐体刺激量比 が著しく低いと色弁別が悪くなり,色知覚に影響が生じ る。本研究ではS錐体刺激量比がどの程度低下すると色 弁別,色知覚に影響が生じるのかについて,色弁別はパ ネルD-15, Lanthony D-15テストを用いて,色知覚は,カ ラー・ネーミング法を用いて検討した。その結果,S錐 体刺激量比0.08以下で,第3色覚異常に類似した色弁別 の傾向が生じ,S錐体刺激量比が0.18以下となると色知 覚の変化が強くなり,中波長色,長波長色は短波長色側 に色相が変化し,短波長色は長波長側に色相が変化して 知覚される傾向が認められた。S錐体刺激量比の低下は, 色弁別としては第 3色覚異常に対応するが,色知覚につ いては,r-g反対色系出力にも影響する可能性がある。 知覚トレーニングによる時間窓の縮小が 急速再較正に与える影響 同志社大学 竹島康博 視聴覚刺激の同時性判断では,先行する試行の刺激提 示タイミングによって後続する試行の判断が変化する。 この現象は急速再較正と呼ばれ,その効果量は同時性判 断の時間窓の幅と正の相関関係があることが報告されて いる。そこで本研究では,判断に対して正誤のフィード バックを行うことで時間窓が縮小する,視覚刺激の空間 周波数によって相関関係が異なるという特性を利用して, この2変数間の因果関係について検討した。実験では判 断の正誤をフィードバックされるトレーニングを行い, その前後で2種類の空間周波数刺激を使った同時性判断 を行った。その結果,トレーニング前後で急速再較正の 効果量はどちらの空間周波数刺激でも変化しなかった が,1試行前の提示タイミングが視覚先行の条件では主 観的同期点の偏向がトレーニング前後で減少した。時間 窓も視覚先行側で大きく縮小したことから,時間窓の大 きさが再較正量を調整するという因果関係が示された。 逆向マスキングによる傾き対比の減少とその微小時間過程 東京大学大学院 中村友哉 東京大学大学院 村上郁也 単独では十分見える視覚標的が後続のマスクによって 見えにくくなる現象を逆向マスキングという。逆向マス キングは,気づきが生じるのに十分な表象が形成されな いうちにマスクによって処理が中断されることで起こる とされている。本研究では,傾きの視覚表象が文脈に よって変調される過程にも同様の中断が起こる可能性を 考え,共通オンセットマスキング事態(Di Lollo et al., 2000)での傾き対比効果(標的の傾きが周囲を取り囲む 誘導刺激の傾きとは逆方向に傾いて知覚される錯視)の 大きさを測定した。その結果,逆向マスキングによって 対比効果は減少し,この対比効果の減少は,誘導刺激が 標的より前でなく同時か後に呈示された場合により顕著 となった。これらの結果は,対比効果が生じるには傾き に関連する脳内表象において文脈変調の情報処理が一定 時間続く必要があり,マスクによってその過程が中断さ れるという可能性を示唆する。 動的な視覚身体情報は運動主体感を通して 触知覚を促進する 立教大学 鈴石陽介 立教大学 日高聡太 課題非関連な視覚身体情報が触知覚を促進することを 報告されているが,静止した視覚身体情報のみが提示さ れてきた。我々がふだん観察している動的な視覚身体情 報に対して,身体の一部である感覚(身体所有感)と動 きを制御している感覚(運動主体感)が生じる。本研究 では,動的な視覚身体情報が触知覚を促進するかを,身 体所有感と運動主体感との関係から検討した。光点を用 いて手の運動のみを視覚刺激として提示し,視覚刺激と 参加者の手の運動が同期する・同期しない条件を設定し た。参加者の触覚振動強度の弁別閾を測定し,また視覚 運動に対する身体所有感と運動主体感の強さを質問紙で 測定した。同期条件で視覚運動への運動主体感がより強 Copyright 2021. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved.

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いほど触覚弁別閾が低くなったが(実験1),この効果は 光点が手の形を保持しない場合は生じなかった(実験2)。 結果から,身体形状を伴う動的な視覚情報が,運動主体 感を通じて触知覚を促進することが示唆された。 明度の倒立錯視は奥行きのない画像でも生じる: 光源仮定に依存しない上下異方的な明度処理 立命館大学/日本学術振興会 小林勇輝 大阪大学 森川和則 Kobayashi & Morikawa(2019)は,長方形パネルの画 像を用いて,「三次元的な画像を倒立させることで明度 が変化して見える」錯視効果を報告した。彼らはさら に,奥行き情報と光源位置仮定が明度の倒立効果の生起 に重要であることを示した。しかし,刺激が有する二次 元的な情報がこの倒立効果に及ぼす影響は未だ直接的に 調べられていない。本研究では,先行研究の刺激をもと に,奥行きのない平面的な画像を作成し,明度の倒立効 果を測定した。実験室実験(N=12)では,頑健な倒立 錯視が確認され,さらに対象・周辺領域間のコントラス ト極性により錯視量が変化することが示された。また, 条件を変えながら3度行われたオンライン実験(それぞ れN=200)においても同様の効果が再現され,二次元図 形における明度の倒立効果の頑健性が強く示された。奥 行きの感じられない画像の情報処理過程においても,上 下異方的な明度処理が存在することが初めて明らかと なった。 視野闘争を簡便に実現する方法 新潟大学 新美亮輔 従来,視野闘争は専用の器具を用いるか裸眼融像を修 得することでしか体験できなかった。しかし,Wells (1792)が用いた手法を応用し,紙一枚で視野闘争を実 現できることがわかった。紙に直径 1 cm程度の小さな 穴を2つ,水平方向に4 cm程度離して設ける。次に,壁 に1つ注視目標を置き,壁から 2 m程度離れて立って紙 を両手に持ち,穴を通して注視目標を注視する。このと き,右眼では右の穴を通して,左眼では左の穴を通して 注視目標が見えるようにする。この状態で両眼融像が成 立すると,2つの穴の周囲にある画像を融像することが でき,視野闘争も実現できた。裸眼融像を修得していて いない観察者でも容易に視野闘争を体験できた。この方 法では裸眼融像で必要な不自然な輻輳を行う必要がない。 授業やイベントで簡便に実施可能なデモンストレーショ ン手法として有用であろう。Wells(1792)の知見やそ の他の関連する手法・錯視現象についても議論する。 自律感覚絶頂反応(ASMR)と音嫌悪症の類似性 中京大学大学院  多田奏恵 中京大学大学院 長谷川龍樹 中京大学心理学部  近藤洋史 映像や音声などの視聴覚刺激によって生じる心地よい ゾ ク ゾ ク感 を 自 律 感 覚 絶 頂 反 応(ASMR) と 呼 ぶ。 ASMRは欧米を中心にインターネット・ユーザーに親し まれている。しかし,ASMRの利用実態を横断的に調査 した研究はほとんどない。本研究では,大学生および 20 代から 60 代までの社会人の 500 名以上を対象として, 本邦における ASMR の認知度,音嫌悪症(MQ 得点), 自閉症傾向(AQ得点)に関するオンライン調査を実施 した。その結果,若年者を中心にASMRは認知されてお り,全体として 3割程度の人々にASMR経験があること がわかった。ASMRとMQ得点との間に正の相関が認め られたが,ASMR と AQ 得点の間には有意な相関はな かった。したがって,音に対する快・不快の感受性は類 似している可能性が示唆される。これらの知見は,視聴 覚情報が情動や内受容感覚にどのような影響を及ぼして いるのかを知る重要な手掛かりとなる。 メイクの似合い判断に感じる悩みと 正立顔過小知覚との関係 資生堂グローバルイノベーションセンター 池田華子 資生堂グローバルイノベーションセンター 新井智大 本研究では自らのメイクが自身に似合っているかの判 断へ感じる悩みと顔知覚の全体的処理・局所的処理との 関連を検証することを目的とした。美容情報メディアに よる調査ではメイクの上手さには自己顔を客観的に見る ことが重要であるという報告がある。他者顔知覚は自己 顔に比較して全体的処理の傾向が強いとされているため, 自身のメイクの似合い判断に悩む者ほど本来局所的処理 の傾向の強い自己顔に対して,更にこの傾向が促進され るという仮説を立てた。正立顔は倒立顔よりも小さく見 え,これは倒立顔への局所的処理が強いためであるとさ れているため,自己顔への局所的処理が強いほどこの過 小評価がより弱くなると考えた。正立自己顔の過小知覚 の割合をメイクの似合い判断悩み高群と低群で比較した ところ,悩み高群でより過小知覚が小さい傾向がみられ た。この結果はメイクの似合い判断の自覚に顔の全体 的・局所的処理の特性が関連することを示唆している。

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高気圧曝露が知覚運動協応に及ぼす影響 海上自衛隊潜水医学実験隊 景山 望 高気圧環境では,検査用紙に回答を手で入力する認知 課題を複数回実施しても課題成績は向上しないことが報 告されている。一方で,高気圧環境では健常者であって も手に震顫が生じるとされている。このことは,この現 象が課題に必要な刺激の処理が高気圧曝露によって困難 となったためではなく,課題中の知覚運動協応の阻害に よって生じた可能性を示唆するものであった。よって, 高気圧曝露と知覚運動協応について,本実験では代表的 な課題である鏡映描写課題を大気圧(1 気圧),25 気圧 および35 気圧の順に実施した結果,大気圧時のみ課題 中の遂行時間の短縮が見られた。一方で,1試行目の遂 行時間は,1回目から2回目(25気圧)にかけて大幅に 短縮した。この結果は,1回目の課題遂行によって2回 目の課題遂行能力が向上しており,課題中に知覚運動協 応が阻害されなかったことを示唆している。 自動車の昼間走行灯の形状による幅錯視効果 大阪大学 富田瑛智 株式会社本田技術研究所 田中義朗 株式会社本田技術研究所 小万修二 大阪大学 森川和則 昼間走行灯(DRL: Daytime-Running-Lamps)の形状に よるランプ間の幅知覚の変化を心理物理学的に検討し た。富田ら(2019)は一対比較法を用いて DRL の形状 により知覚されるランプ間の幅が異なることを相対的尺 度値で示した。本研究では階段法を用いて DRL形状ご との幅知覚錯視の絶対値を測定した。参加者は 28名の 若年成人であった。標準刺激は DRLを模した画像であ り,黒背景に白の線分が左右対称に配置された2本の線 分パターンで構成された(9 刺激)。比較刺激は間隔の 異なる2本の短い垂直の白線であった。毎試行,参加者 は幅の広く見える方を選択した。主観的等価点を計算し た結果は富田ら(2019)の結果とほぼ一致した。DRLの 幅の錯視は,1)屈曲部の位置(刺激の内側か外側) と,2)ミュラー・リヤー錯視との類似度が主な要因に なっていることが示された。また,DRLの錯視は幅知覚 を約5%変化させることが示された。 視覚誘導性運動反応における時間的側面の検討 静岡大学情報学部 板口典弘 私たちの身体運動は,視覚的に呈示された運動に“自 動的に”影響を受ける。これまで,このような視覚刺激 が身体運動実行に与える影響の時間的側面は明らかでな かった。そこで本研究では,視覚誘導性運動反応に対し て,ディストラクタと運動実行のための手掛かり刺激の 時間差(SOA)が与える影響を検討した。実験の結果, 手掛かり刺激の 250 ms 前から 150 ms 後にかけての範囲 でディストラクタ運動(50 ms)が呈示された場合に Congruency effect(刺激・反応の方向一致条件と不一致 条件の反応時間の差)が生じた。つまり,運動計画・実 行処理が開始されてから,比較的長時間(∼150 ms)に 渡って,運動実行処理に対して視覚刺激が干渉した。本 結果は,運動計画のごく初期段階から,外界の視覚刺激 はオンラインで取り込まれ,その運動実行に影響を与え ることを示唆する。 両手協調運動における両手間の追従関係が 感覚運動同期に及ぼす影響 北海道大学  斎藤優花 北海道大学 河原純一郎 周期的な感覚刺激と運動を同期させる感覚運動同期事 態で,刺激と運動のズレを同期誤差と呼ぶ。このとき, 左右の効果器間で異なるビートをタップさせると,左手 よりも右手が先にタップされる(Fujii et al., 2011)。この 原因として,ビートを基準とした左右の効果器の追従関 係による影響が考えられる。そこで本研究では,メトロ ノームの音に同期してタップする基準ビート,メトロ ノームの1/2あるいは2倍のビートでタップする抑制ビー トあるいは付加ビートの 3条件を設け,基準ビートと抑 制あるいは付加ビートを同時にタップした際の同期誤差 を比較することで,ビートを基準とした追従関係が存在 するか検討した。この結果,一貫して基準ビートよりも 抑制・付加ビートが先行してタップされることが判明し た。このことは,ビートを基準とした追従関係を有して おり,抑制・付加ビートを基準として基準ビートをタッ プしていることを示唆する。 共感覚のオンライン大規模調査 新潟大学 伊藤浩介 共感覚(やその類似現象)の有無や共感覚色を調べる オンラインシステムを構築し,約300名を対象とした大 規模な調査を実施したので,その結果を報告する。

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過剰予期効果をコオロギの連合学習で検証する 東京医科歯科大学 寺尾勘太 北海道大学 ÁLVAREZ Beatritz 東京医科歯科大学 松本幸久 北海道大学 水波 誠 Rescorla and Wagner モデル(RW モデル)はほ乳類動 物の学習を説明する理論の一つであり,脳ドーパミン神 経系の活動に基づいて学習を説明する理論の基礎であ る。RWモデルによれば,学習は動物が予測した報酬と 実際に受け取った報酬の差に基づく。過剰予期効果は RW モデルを支持する行動学的な証拠の一つであるが, その報告はほ乳類と鳥類に限られていた。昆虫の学習で 同様の現象が確認できるかを検証するために,本研究で はコオロギに以下の訓練を行った。1. ある植物の匂い提 示直後に水報酬を与える 2. 中心が白く外側が黒い模様 (白中模様)の提示直後に水報酬を与える 3. 植物の匂 い・白中模様の同時提示後に水報酬を与える訓練を行っ た。訓練前後で,植物の匂いとコントロールの匂いの選 択比率を確認すると,訓練 1 と 2 のみを受けたコント ロール群に比べて,実験群は植物の匂いの選択比率が優 位に低かった。この傾向は過去の過剰予期効果の報告と 一致する。 顔のアンサンブル符号化における平均像知覚の検討 中京大学 鑓水秀和 明治学院大学 金城 光 中京大学 高橋康介 一度に複数人の顔を観察する場面では,アンサンブル 符号化により,顔の表情の平均などが知覚される。本研 究では,その際の知覚が,画像合成により平均化された 顔と同一かを明らかにすることを目的とした。実験1で は,まず 2 つの標的顔画像の平均合成像を参加者にイ メージさせ,次にテスト顔として合成顔を呈示し,標的 の平均顔かを yes/noで回答させた。テスト顔は,標的2 つの平均顔(A),標的1つと別の顔の合成顔(B),別の 顔2つの合成顔(C)の3種を用いた。実験2では,実験 1 の手続き後,回答の正誤を毎試行示した。実験 1, 2 に 共通して,テスト Cへのyes反応率は他のテスト顔への yes 反応率より低かった。一方,実験 1 では標的の平均 顔(A)と,標的と似た合成顔(B)に対するyes反応率 に差が認められず,実験 2 ではテストA への yes 反応率 がBより高かった。正誤のフィードバックによりイメー ジすべき顔が精緻化されれば,平均顔により近い顔を知 覚できることが示唆された。 1・2次運動残効は1・2次運動Mask刺激の影響を受ける のか? 愛知淑徳大学 本居 快 我々が知覚可能な運動刺激として,輝度変調のある1 次運動と輝度変調がなくコントラスト変調による2次運 動の2種類が存在している。それらは,運動残効(Flicker MAE)の実験において相互順応することが知られてい る。しかし,処理系は同一ではなく,並列処理されてお り,高次段階では運動統合されることがモデル化されて いる(Nishida & Ashida, 2000)。そこで,1 次・2 次運動 の処理系が並列処理モデルの整合性について検討するた めに,本研究は1次・2次運動順応刺激に対しMask刺激 を呈示した時の運動残効持続時間を測定した。Mask刺 激は,各運動処理系を選択的に刺激するため,1次運動 で構成されたMask, 2次運動で構成されたMaskを呈示し た。その結果,Mask刺激と順応刺激が類似刺激条件時 と相違刺激条件時で残効量が変動することが示唆され た。上記の結果をもとに,1 次・2 次運動処理系につい て議論する。 視聴覚統合の生起確率を最大化する刺激間の 時間ずれに関する検討 東京大学 宇野究人 東京大学 横澤一彦 視聴覚統合に関する先行研究では,視覚刺激が聴覚刺 激よりもわずかに先行して感覚器官に到達した場合に最 も統合が起こりやすくなる可能性が示唆されている。こ の可能性について統合に影響しうる様々な刺激特性を統 制して検討するため,本研究では各観察者における視聴 覚同時性判断の過渡的な変化を調べた。視聴覚刺激を一 定順序で連続提示されると同時性判断が提示順序の方向 へシフトすることが知られている。そこで本研究では, 視聴覚刺激の知覚プロセスに非対称性がある場合に,刺 激が順序の偏りなく連続提示されても同時性判断がシフ トする可能性を検証した。参加者は様々な時間ずれ (−450 ms: 聴覚が先∼450 ms: 視覚が先)で提示され る視聴覚刺激について,同時に知覚されたか否かを回答 した。その結果,課題が進むにつれて主観的同時点が負 の方向へ移動した。このことは視覚刺激が聴覚刺激に先 行する場合に統合の生起確率が最大化されていることを 示している。

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分離された身体部位周辺への身体近傍空間の転移 東京大学大学院人文社会系研究科 峯 大典 東京大学大学院人文社会系研究科 横澤一彦 身体に提示された振動刺激に単純反応をする際に,自 身の身体に近い領域(身体近傍空間)に課題非関連の視 覚刺激が提示されると,振動刺激への反応速度が促進さ れることが知られている(感覚間一致性課題)。また道 具の使用により,道具の先端まで身体近傍空間が拡張す ることが同様の課題を用いて調べられている。しかし先 行研究では,実身体と連続していない身体部位が提示さ れた際に身体近傍空間がどのような表象を持つかは十分 に調べられていない。本研究では,バーチャル空間にお いて自身の身体と分離した手のアバターを用いて感覚間 一致性課題を行ってもらい,身体と分離された身体部位 および実身体の周辺の身体近傍空間を調べた。その結果, 実身体の周辺から,実身体から切り離され遠くに提示さ れた手のアバター周辺に身体近傍空間が転移することが 示された。この結果は,先行研究で示されていた以上に 身体近傍空間が柔軟性を持つことを示すものである。 筋肉量が身体近傍空間で生じる視触覚相互作用に与える 影響 熊本大学 黒田尚輝 熊本大学 寺本 渉 身体周辺の空間(身体近傍空間,PPS)では視覚刺激 が触覚刺激の検出を早めることが知られている。高齢者 では若齢成人と比べてPPSが広いとの報告がある。しか し,その機序は未だ不明である。本研究では,高齢者の 特徴である身体の動かしにくさと筋力の弱さに注目し, それらとPPSでの視触覚相互作用との関連性を若齢成人 を対象として調べた。様々な距離から接近または後退運 動する視覚刺激呈示中に,参加者の手に触覚刺激を呈示 して検出させた。視覚接近後退運動非呈示時の触覚検出 時間をベースラインとして各距離における視触覚相互作 用量を算出した。独立変数として,膝上に5 kgの重りが ある条件とない条件を設定した。また,握力を測定して 関連性を調べた。その結果,重りの有無による違いはみ られない一方で,握力弱群では握力強群と比べて視触覚 相互作用が強くなる傾向がみられた。このことは筋力の 弱さが高齢者のPPS拡大と関連することを示唆する。 懐かしさが時間知覚に与える影響 東京女子大学 大寺 輝 東京女子大学 田中章浩 感情が時間知覚に与える影響について,先行研究では 恐怖感情が喚起されると刺激の呈示時間が長く知覚され ることが示されている。本研究では,記憶によって認知 過程が支えられ,過去の出来事に焦点が向けられた状態 で喚起される懐かしさ感情が時間知覚にどのような影響 を与えるのか検討した。懐かしさの喚起には,各参加者 が懐かしさを感じる刺激を事前に提出させ,実験中に呈 示するという手法を採用した。時間知覚の検討には,刺 激の呈示時間が短いもの(400 ms)と長いもの(1600 ms) のどちらに近いかを選択させる間隔二等分課題を用い た。その結果,恐怖感情と同様に,懐かしさが喚起され た後には「長い」反応と「短い」反応の境界が 400 ms 寄りにシフトするという結果が得られ,時間知覚が変化 する可能性が示唆された。この結果が懐かしさ感情によ るものであることを裏付けるため,今後中立条件におい て同様の実験を実施する。 能動的な刺激呈示と刺激呈示位置への予期が 痛みの閾値と不快感へ及ぼす効果 駿河台大学 村越琢磨 本研究では,痛み刺激の能動的な呈示が痛みの主観的 強度および不快感の評価に与える効果を検討した。侵害 刺激を実験参加者が自らの手の甲または指先に呈示する 条件と他者が刺激を呈示する条件を設定し,痛み知覚の 閾値と主観的等価点およびその刺激への不快感を測定し た。また,侵害刺激の呈示タイミングと呈示位置が予期 できる条件と予期できない条件で,痛みの主観的評価に 対する能動的な痛み刺激への予期の効果を検証した。実 験の結果,能動的に自身の身体に痛み刺激を呈示した場 合には,受動的な痛み刺激が呈示された場合に比べて閾 値が上昇し,同じ物理刺激に対して不快感が低下した。 また,痛み刺激が呈示される位置が予測可能な場合に は,予測できない場合に比べて痛み刺激への不快感が減 少した。この結果は,痛み刺激に対する予期が,痛み刺 激への感度および痛みに対する不快感の緩和に寄与する 可能性を示唆する。

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色情報がエッジの認識に与える影響 広島大学 吉本早苗 広島大学 三輪 響 画像のエッジ検出において輝度情報は色情報よりも優 位な手がかりであり,色情報に基づくぼけは知覚されに くい。本研究では,従来の知見に反し,複数の色情報を 付加することで鮮明な輝度エッジがぼけて見える現象を 報告する。無彩色(白黒)の矩形波格子を赤,緑,青, 黄の4色で縁取り,色相により輝度が異なる条件(Full), 輝度を一定とし色相が異なる条件(Color),色相を一定 とし輝度が異なる条件(Luminance),及び縁取りを施さ ない統制条件で一対比較を行い,相対的なぼけ知覚の強 さを測定した。その結果,Full 条件,Luminance 条件, Color 条件,統制条件の順にぼけが強く知覚された。こ の傾向は,他の色の組み合わせ(紫,橙,青緑,黄緑) を使用した場合にも見られた。矩形波格子を単色で縁取 りしてもぼけ知覚は生じないことから,水彩錯視とは異 なる現象であると考えられる。以上の結果は,色情報の 付加がぼけ知覚を増強し,エッジの検出精度を低下させ る可能性を示唆する。 検出課題における感覚処理感受性と脳波との関係 信州大学 今井 章 信州大学 井坪友美 検出課題における感覚処理感受性(SPS)の違いが脳 波(EEG)に及ぼす影響について,10名の大学生を対象 として検討した。日本語版 SPS尺度(HSPS-J19)により 参加者を高群,低群に配置し,視覚的および聴覚的に提 示する数字検出課題において,妨害刺激条件として白色 雑音の有無を設定した。その結果,視覚課題における正 答率は雑音の有無にかかわらず,SPS高群において有意 に高かった。FFTパワー値による脳波は,SPSの高低に かかわらず聴覚課題時の頭頂部アルファ波帯域におい て,雑音有条件が無条件に比較して有意に増大してい た。ベータ帯域では,視覚課題時の右側頭部パワー値が 雑音無条件において有意に増大し,右前頭部ではSPS高 群のみ雑音無条件において有意に増大していた。聴覚課 題時では,全頭部的に雑音無条件における有意な増大が みられた。脳波と SPSとの関係を調べた研究は少なく, さらに今後の検討を要する。 随意的な眼瞼運動による知覚交替の促進 千葉大学 佐藤涼矢 千葉大学 木村英司 本研究では,瞬目が知覚的競合事態における知覚交替 に及ぼす影響について検討するため,連続フラッシュ抑 制(断続的に描き変わる視覚刺激を片眼に提示すること で,反対眼に提示された検査刺激の見えが長時間にわ たって抑制される現象)を用いて,意図的に生じさせる 随意性瞬目と意図せずに生じる自発性瞬目が検査刺激の 検出に及ぼす影響を比較した。その結果,随意性瞬目が 生じた試行において検出時間が短くなり,瞬目の 0.4秒 後に検出が頻出することが示された。一方で,自発性瞬 目が生じた試行において検出時間は長くなったが,瞬目 と検出の間に体系的な時間関係はみられなかった。この 結果は,発生要因の異なる瞬目が知覚交替に異なる影響 を及ぼすことを示唆する。また,随意性瞬目条件と同様 に,瞼を一過的に挙上させた条件においても,検出時間 が短くなることが確認された。これらの結果から,随意 的な眼瞼運動が知覚交替を促進することが示唆された。 層化を伴って開口部に知覚される面色に関する 実験現象学的検討 明星大学 境 敦史 ある不透明な色の面の上に,大きさと色が等しい円形 を縦横に等しい中心間距離をとって配列した場合(大き さの勾配は存在しない),円の群が図として,それらの 周囲の領域が地として,知覚される。このとき,円が背 景の上に載っているように見える場合と,両者が同一平 面上に印刷されているように見える場合がある。大きさ の異なる円を,複数の列を成して大きさの順に配列(即 ち,大きさの勾配を導入)した場合,周囲の領域が手前 に見えて図となり,そこに空いた複数の穴(開口部)の 背後に一続きの面が知覚され,その色は,面色(Katz, 1935)として現れる。円の群の色と周囲の色との組み合 わせによっては,複数の穴の背後に明かりが灯されてい る印象が得られる場合もある。本研究では,このような 「層化を伴って開口部に知覚される面色」の成立条件に ついて,Vicario(2008)の「知覚研究のプロトコル」に 則って実験現象学的に検討した。

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新しい幾何学的錯視「渡辺錯視」の検討 立命館大学 臼井健太郎 立命館大学  北岡明佳 円の中心と円内のドットの延長線上に描かれている円 外のドットが,延長線上にないように見えるという錯視 が, 視 線 方 向 の 錯 視 と し て 報 告 さ れ て い る(渡 辺, 2010)。この錯視は,刺激図形の角度が45度未満のとき は水平軸方向への角度過小視,45 度より大きいときに は垂直軸方向への角度過小視が起きることがわかってい る(臼井・北岡,2020)。本研究では,円の中にドット が存在するという目のような構造が上述の錯視の要因な のかどうかを検討した。目のような構造を取り除くため の操作として,円内のドットを線分に置き換えた刺激と 円を中心点に置き換えた刺激を作成し,錯視量を計測し た。その結果,今回用意したどちらの刺激でも元の錯視 と同様の錯視が確認された。このことから,渡辺が報告 した視線方向の錯視には円の中にドットが存在すること が必ずしも必要なわけではなく,この錯視は3点間で起 こる一般的な幾何学的錯視であることが示唆された。 時間処理は知覚と運動で共通か? 1秒以上での自己生成される時間間隔の知覚精度低下 は共通ノイズモデルで説明できる 玉川大学 箕谷啓太 玉川大学 酒井 裕 日本電信電話株式会社 柏野牧夫 知覚系と運動系で時間は共通に処理されるのかあるい は別個なのかという問題は長く研究の対象となってきた がいまだ未解決である。我々はこの問題に迫るため,自 己の行為によって生成される時間間隔に対する1秒以上 範囲での知覚精度低下に着目した。本研究では,共通処 理されるならば知覚と運動における時間表現は共変し, 自己生成時に知覚精度が下がると仮説を立てた。まず, 二重課題法を用いて処理資源の競合による自己生成時の 知覚精度低下の説明可能性を排除した。次に,1秒以下 よりも1秒以上範囲で,再生課題を伴う時間弁別は再生 間隔にバイアスされた。この現象は共通処理から予測さ れたものであり,知覚精度低下の時間範囲依存性とも一 致した。最後に,本研究の弁別課題を数理モデル化し共 通処理による自己生成時の知覚精度低下を再現した。こ れらの知見は本研究の仮説を支持し,1秒以下よりも1 秒以上範囲で共通処理の程度が大きいことを示唆した。 白色・黒色の衛生マスク着用者に対する潜在的態度の 地域差―新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 流行前後の比較― 東京大学  伊藤資浩 北海道大学  鎌谷美希 福山大学  宮 由樹 北海道大学 河原純一郎 対人評価において,被評価者の衛生マスクの色によっ て異なる印象が与えられる。例えば,白または黒色のマ スク着用者への潜在的態度を比較したとき,黒マスク着 用者への非好意的な態度がみられた。これは,単純接触 効果の観点から,親和性の高い白マスクへのより好意的 な態度があらわれたと示唆される。本研究は,COV-ID-19流行前後におけるマスク着用者への印象について, マスクの色(白/黒)と実施地域(東京/札幌)に注目 する。調査において,黒マスク着用者を見かける頻度は 札幌に比べて東京で多かった。また,COVID-19流行前 後に札幌で実施したとき,黒マスク着用者に対して同程 度の非好意的な態度がみられた。ただし,流行後の東京 でその非好意的な態度は最も低かった。以上より,CO-VID-19 影響後においても,黒マスク着用者に対する非 好意的な態度がみられたが,地域差があり,親和性によ る影響で説明されうることを明らかにした。 小説を対象とした潜在意味解析における次元数 およびウエイト変数の検討 弘前大学  小河妙子 南山大学 藤田知加子 単語の認知過程において,心的辞書に貯蔵されている 単語の意味表象を検索する認知メカニズムを解明するた めに,単語の意味処理に影響する様々な要因が検討され てきた。本研究では,単語の意味を空間ベクトルとして 捉え,文書における単語間の共起頻度に基づくシミュ レーションによって意味空間を構築する潜在意味解析 (latent semantic analysis)を実施した。小説200冊から抽 出した文書をコーパスとした。単語文書行列から近似行 列への空間圧縮における次元削減数と,単語文書行列に 対するローカルおよびグローバルウエイト変数を操作 し,構築した意味空間における単語間のコサイン類似度 を求め,人間の評定による単語間の意味的類似性評定値 および連想強度との相関分析を行った。これらの結果に 基づき,人間の心的辞書における単語間の意味的類似性 をより反映する変数の組み合わせについて考察する。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による 黒色衛生マスク着用者への顕在的態度の変容 北海道大学  鎌谷美希 東京大学・日本学術振興会  伊藤資浩 福山大学  宮 由樹 北海道大学 河原純一郎 着用する衛生マスク(以下,マスク)の色が,被評定 者に対する態度に影響することが知られている。例え ば,黒マスク着用者に対する信念や,白マスク着用者と の魅力評定値を比較したとき,黒マスク着用者への否定 的な態度がみられる。この理由として,単純接触効果の 観点から,白マスクに対してより好意的な態度があらわ れた可能性が示されている。しかし,COVID-19流行に より,マスクの着用が感染症対策として重要になり,そ の色にも多様性が生じた。本研究では,COVID-19流行 によって,黒マスク着用者への顕在的態度が変容したか を検証した。その結果,黒マスク着用者に対する魅力・ 健康さ・ファッション性の信念は,流行前に比べて肯定 的または中立的な態度になった。また,白・黒マスク着 用者の魅力評定値を比較した結果,マスクの色の効果は なかった。以上から,COVID-19により,黒マスク着用 者に対する顕在的な態度は流行前よりも肯定的なものに 変容したことが示唆された。 注意の促進と抑制は独立にはたらくか:

オンライン実験によるChang and Egeth(2019)の 追試と再検討

情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター  川島朋也 情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター 

天野 薫 Chang & Egeth(2019)は視覚探索課題とプローブ課題 を組み合わせ,標的刺激への注意の促進と妨害刺激への 注意の抑制が同時に注意を誘導することを示し,その独 立性を示唆した。本研究では,彼らの課題を追試し,追 加分析として促進と抑制の効果の相関を取ることで,両 者の独立性を再検討した。その結果,視覚探索課題では シングルトンあり試行で反応時間が短くなることが再現 された一方,プローブ課題における注意の促進ならびに 抑制効果は認められなかった。プローブ課題における反 応時間の促進と抑制の効果を個人ごとに算出し,相関分 析を行ったところ,負の相関が認められた(r=−.46, p =.001)。これは,標的刺激へ注意をより向けていた個 人ほど,妨害刺激に注意が捕捉されていたことを示す。 このような個人の方略の違いによって,全体で促進と抑 制の効果を追試できなかった可能性がある。以上の結果 は,注意の促進と抑制が独立にはたらくという考えとは 一致しない。

Ordinal Linguistic Personification(OLP)の特性の検討; 中途喪失経験に着目して 立教大学 櫻井晴子 立教大学 浅野倫子 文字や数字が特定のパーソナリティと結びつく OLP は共感覚の一種とされている。本研究では OLP の発達 過程における喪失に着目し,その基本的特性を調べた。 研究 1で414名を対象にOLP所有率の質問紙調査を行っ た結果,全体の 13.7%が OLP を現在も所有し,3.9%が 発達途中で OLP を喪失したと答えた。残りの参加者は OLP 非保持であった(統制群)。研究 2 と 3 では,研究 1 の参加者の一部に協力を依頼し,OLPの時間的一貫性と 自動性について検証した(OLP群3名,中途喪失群3名, 統制群 11名)。その結果,OLP群は他2群よりも高い一 貫性を示したが,統計的有意差はなく(研究 2),また, 結びつきの自動性の強さに群間差は見られなかった(研 究 3, 共感覚プライミング課題)。以上の結果を踏まえ, 色字共感覚などの他の共感覚と比較した際の OLPの特 性について,喪失の可能性や,結びつきの一貫性や自動 性の観点から考察する。 チンパンジーは顔の年齢カテゴリーを弁別する際に 形態情報より色情報を利用する 京都大学 川口ゆり 早稲田大学 中村航洋 京都大学 友永雅己 乳児はおとなと異なる外見特徴を有する。例えば相対 的に大きな目などの特徴は養育行動の解発刺激だと考え られている(幼児図式)。また,多くの霊長類は乳児期 におとなと異なる肌や体毛の色を示す(幼児色)。しかし, これらの特徴が年齢カテゴリーの手がかりとなっている のかは明らかでない。本研究は顔の形態と色を独立に操 作したモーフィング刺激を用いた象徴見本合わせ課題に より,チンパンジーがどちらの特徴を年齢カテゴリーの 弁別に用いているかを調べた。画像解析をおこなったと ころ,形態,色ともにおとな顔と乳児顔では有意な差が 見られた。一方,弁別課題においては色特徴のほうがチ ンパンジーの年齢カテゴリー弁別に寄与していた。この 結果はチンパンジーにとって種特異的な顔の色がおとな と乳児を弁別する際の顕著な手がかりであることを示し

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ており,顔の色によって自らの発達段階を示すことで, 年齢に応じた行動を引き出している可能性がある。 描画による記憶促進の事前登録型追試 山形大学 小林正法 単語の書き写しよりも単語の絵を描くこと(描画)は 記憶を促進する(Wimmars et al., 2016)。本研究では,こ の描画記憶促進の事前登録型追試を行った。実験1で筆 記方略と描画方略,実験2で筆記方略,描画方略,視覚 的イメージ方略を取り上げ,方略間で記憶成績を比較し た。その結果,実験1では描画と筆記の間で成績に有意 な差はなかったが,実験 2では描画が2つの方略よりも 成績が有意に高かった。さらに実験1, 2の促進効果(描 画–筆記)の標準化差(standardized difference)について Rとmetafor(Viechtbauer, 2010)によるメタ分析(random effects model)を行ったところ,平均標準化差は 0.43 (95%CI=[0.11, 076], p<.01)であった。したがって,本 研究において描画による記憶促進が生じたと考えられる。 乳児におけるcovert attentionの発達過程 中央大学大学院,日本学術振興会  鶴見周摩 日本女子大学  金沢 創 中央大学  山口真美 北海道大学 河原純一郎 注意は眼球運動に付随することなく,眼球運動と独立 してシフトできる。眼球運動を伴わない注意(covert attention)はこれまで成人で広く調べられてきたが,発 達メカニズムについてはあまり知られておらず,乳児研 究では眼球運動と注意が切り離されて議論されてこな かった。本研究では,生後間もない乳児において注意が 眼球運動と独立して機能するかを空間的手がかり課題を 用いて調べた。左右どちらか一方に黒丸の外発的手がか りを100 ms 提示し,その後左右に水平と垂直のガボー ルを200 ms 提示した。手がかりの提示位置は常に特定 の方位の提示位置と一致していた。学習後,水平と垂直 のガボールを左右に提示し,乳児の選好を検討した。も し手がかりの位置に注意がシフトするのであれば,手が かりが提示された側の方位を学習し,それとは逆の方位 に新規選好すると考えられる。実験の結果,仮説通りの 新規選好が見られ,covert attention が生後 4 ヵ月頃に機 能することが示唆された。 不正行為における暗さの促進効果についての多面的検証 九州大学 劉 歓緒 九州大学 山田祐樹 これまでの研究において,実験中の部屋の明るさが不 正行為の生起に影響することが示されてきた。先行研究 ではこの現象を錯覚的な匿名感(i.e., 暗いと匿名性が上 がって感じる)によって説明しようとしてきたが,我々 は概念メタファー(i.e., 暗い=悪)によっても説明可能 であると考えた。そこで本研究は,明るさが不正行為に 影響するメカニズムを明らかにするため,コイントス課 題を用いた 3つのオンライン実験を行った。実験1では 部屋の明るさ,実験2では教示文の背景の明るさ,実験 3では所属集団のチームカラーの明るさを操作した。参 加者はコイントスを 10回行い裏が出た回数を報告した。 結果として,全ての条件で平均裏数は 5を有意に超え, 不正の存在が示された。一方ですべての実験において明 るさ条件間に有意差はなく,むしろ有意に同等であるこ とが示された。これらの結果は,不正行為への明るさ効 果自体の再現性に強い疑念を生じさせるものである。 変化する表情に対する感情認知特性: 呈示比率の効果 国立障害者リハビリテーションセンター研究所  原田佑規 国立研究開発法人産業技術総合研究所 大山潤爾 国立障害者リハビリテーションセンター研究所  和田 真 他者感情を推定するうえで,表情の変化は重要な手が かりの一つである。表情の変化には,感情表情の比率, 時間系列,微分などのパラメータがあるものの,これら を操作して表情認知に及ぼす影響を検討した研究はほと んどない。そこで本研究では感情表情の呈示比率が他者 感情の認知に及ぼす影響を検討した。実験では,被写体 の表情を感情表情(怒り,嫌悪,幸せ,恐怖,悲しみ, 驚きのいずれか)と中性表情の間で異なる比率で変化さ せた。各表情が最小300ミリ秒の間隔でランダムに変化 し,合計3秒間呈示された後,参加者は被写体の感情の 強さを7段階で評定した。独立変数として,感情表情と 中性表情の呈示比率を6段階で操作した。その結果,感 情評定値は感情表情の比率に伴って上昇したが,怒り表 情に対するその効果は小さかった。この結果から,感情 表情の呈示比率は他者感情の認知に影響するものの,そ の効果は感情の種類によって異なることが示唆される。

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時間情報に基づく規則性の学習と 個人の時間管理との関連性 京都大学 大塚幸生 これまでの研究では,オブジェクト刺激の時間情報に 基づいて統計的規則性を学習できることが示されてい る。本研究では,時間情報に基づく規則性の学習と個人 の時間管理との関連性を検討した。実験では,無意味な オブジェクトがランダムな順序で呈示されるが,3つの オブジェクトの呈示時間が常に一定になる刺激列を作成 した。学習段階では,実験参加者はこの刺激列を観察し た。後のテスト段階では,学習段階で観察した時間の規 則性を持つトリプレット,学習段階では順序としては観 察しなかったフォイルを呈示した。参加者は,学習段階 を参考に familiarity判断課題を行った。最後に,井邑他 (2016)が作成した個人の時間管理を測定する尺度に回 答した。実験の結果,時間管理尺度の得点が低い参加者 よりも高い参加者の方で familiarity判断課題の成績が高 いことが示された。この結果は,時間管理という個人差 が時間情報に基づく統計学習に影響を及ぼす可能性を示 唆している。 迷路歩行作業記憶課題における 視聴覚手がかりの空間優位性 北海道大学  前澤知輝 北海道大学 河原純一郎 2つのモダリティでの空間知覚の際に,視覚は聴覚よ りも勝る傾向にある。空間弁別性の低さから,聴覚手が かりは視空間表象と強固な結びつきを持ちにくい。しか し,空間弁別性の優劣を操作することで,こうした聴覚 モダリティの劣勢は逆転する可能性がある。そこで,作 業記憶表象における視聴覚手がかりの空間優位性を特定 するために,迷路歩行課題を用いた。被験者は始めに標 的位置を記憶した後,同時呈示される方向手がかりのど ちらか(視覚/聴覚)に注意を向けて迷路内を歩行し た。視覚手がかりの弁別成績を聴覚手がかりに対して等 しくなる(または劣る/優る)ように事前に調整した。 2つの手がかりの進行方向が一致するとき,空間優位性 を持つ視覚手がかりが聴覚による迷路歩行を補強し,視 覚と聴覚の優位性を入れ替えるとこの関係は逆転した。 このことは,視覚に限らず空間的に優位な手がかりが空 間表象を補強していることを示唆する。 ネガティブな顔写真と漫画顔・線画顔への注意バイアス 北海道大学  豊森 開 北海道大学 河原純一郎 注意の定位は気分の影響を受ける。高不安者はネガ ティブな情報に注意しやすいため,中立顔よりも怒り顔 への反応時間が短い(注意バイアス,Enock et al., 2014)。 これまでは写真顔が用いられており,漫画顔や線画顔で は測定されていない。そこで本研究では,ネガティブ表 情を強調した漫画顔,顔写真を写実的に加工した線画顔 を用い,写真顔よりも高不安者による注意バイアスは増 大するかを検証した。注意バイアスと不安・抑うつの高 さは正の相関をとると予測される。180名の被験者は不 安・抑うつ質問紙に回答し,顔刺激の後に呈示されるプ ローブを弁別した。得られた注意バイアスと不安・抑う つは,顔写真では有意な正の相関となり,高不安者ほど 注意バイアスが強かった。一方,漫画顔と線画顔では注 意バイアスは生じなかった。これらの結果から,写真顔 と漫画顔・線画顔に対しては異なる様式で注意が定位さ れる可能性が示唆される。 多肢選択問題における回答行動と眼球運動の分析 慶應義塾大学 森井真広 慶應義塾大学 坂上貴之 慶應義塾大学 増田真也 多肢選択問題として,指定された国の国旗を選択させ る問題を実施した。実験では,画面上に7つの国旗が横 一列に提示され,指定された国の国旗をマウス操作によ り選択することを求めた。問題は難易度が低い問題(認 知度が高い国の国旗の選択)が2問,難易度が高い問題 (認知度が低い国の国旗の選択)が5問の計7問あり,被 験者ごとにランダムな順序で提示された。大学生・大学 院生 27 名(男性 9 名,女性 18 名,平均年齢 20.7 歳)が 実験に参加し,実験中の被験者の視線は眼球運動測定装 置により記録された。実験の結果,難易度が低い問題で は,解答にかかる時間が短く,正答の選択肢付近に視線 が集中した。一方,難易度が高い問題においては,前半 3問においては左端の選択肢への解答がやや多い傾向が みられたが,後半4問においては左右両端の選択肢を避 ける傾向がみられた。また,問題文を読んだ後に選択肢 を左から右へ推移する視線パターンがみられた。

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ハトによる刺激呈示位置における系列位置効果 明星大学 茅野一穂 3羽のハトを用いて,刺激呈示位置における系列位置 効果を検討した。訓練試行とテスト試行を設け,いずれ の試行も,記銘段階では,記銘刺激(白色の円)を6箇 所の呈示位置のいずれか 3 箇所に 1 個ずつ順次呈示し, 被験体が3個全ての記銘刺激をつつくと再認段階に移行 した。訓練試行の再認段階では,記銘刺激3個全てを同 時に呈示したが,テスト試行では妨害刺激を加えた。い ずれの試行も,被験体が 3個の刺激をつつくと強化子を 呈示した。記銘段階と再認段階の遅延時間を0秒・2秒・ 10秒の3条件,妨害刺激数を1個・2個・3個の条件を設 定し,テスト試行を分析した。その結果,いずれの被験 体において,遅延時間が増加しても,各系列位置におけ る再認の程度はさほど変わらないが,妨害刺激数が増加 すると,各系列位置における再認の程度は低下する傾向 が得られた。ただし,系列位置効果に関しては,被験体 間で一貫した傾向は得られなかった。 反復接触時の刺激処理の違いが接触後のニオイの 好ましさに与える影響 筑波大学 小川 緑 筑波大学 綾部早穂 本研究では,反復接触によるニオイの好ましさの変化 において,反復接触時に感覚記憶に基づく知覚処理が促 進された場合(実験 1)と,意味記憶の活性化が促進さ れた場合(実験 2)で違いがみられるかどうかを検討し た。快臭と不快臭をそれぞれ40回連続で嗅がせ,実験1 では,1つ前に嗅いだニオイとの強さの比較を求めた。 ニオイの強さの判断に意味記憶の活性化は必ずしも必要 ではないため,感覚記憶に基づくボトムアップ処理が行 われると想定した。実験2では接触時にニオイの名前を 回答させることで,意味記憶が活性化すると想定した。 接触の前後のニオイの好ましさ評価を比較した。ボトム アップ処理を行ったときにのみ,快臭の好ましさの低 下,不快臭の好ましさの上昇(情動馴化)が確認され た。意味記憶の活性化が促された場合には,快臭のみで 情動馴化がみられた。反復接触時の刺激処理の違いが, 反復接触の効果に影響している可能性が示された。 なぜ上下空間と感情の連合は左右よりも強いのか? 九州大学大学院人間環境学府/日本学術振興会 特別研究員   米満文哉 関西大学 佐々木恭志郎 九州大学   山田祐樹 快感情は空間的な上側や利き手側と,不快感情は下側 や非利き手側と結びついている(空間–感情メタファ連 合)。これまでに,垂直方向の連合の効果は,水平方向 の効果よりも顕著であることが示唆されている。また, この異方性は,処理流暢性の関与が強い反応時間(RT) 課題の場合では見られない可能性がある。本研究では, 以上の仮説を実証的に検討するために,感情画像の上下 左右に出現するプローブの位置をできるだけ素早く回答 するRT課題と感情画像の呈示後に画面の任意の位置を タッチする非RT課題を実施し,両者の結果を比較した。 その結果,垂直連合の効果はRT課題と非RT課題の両方 で確認されたが,水平連合の典型的な効果はいずれの課 題でも見られなかった。本研究は,空間–感情メタファ 連合は垂直方向で顕著であるが,水平方向では頑健では ないことを示唆し,さらに,この異方性は実験課題の種 類に依存しないことを示す。 身体近傍空間の拡張における道具の物理的実体の 必要性についての検討 帝京大学 実吉綾子 帝京大学 市川和樹 身体近傍空間は把持した道具が届く範囲まで拡張する ことが報告されている。本研究では物理的な実体を伴わ ない光線が身体近傍空間を拡張するかどうかを検討し た。身体近傍空間では線分二等分課題において左側無視 (擬似無視)が生じる。そこで,参加者から30, 60, 90 cm の距離に提示された線分の中心を,把持した棒の先で示 す条件,通常のレーザーポインタの光点で示す条件, レーザーポインタの光線を可視化させた状態で示す条件 を比較し,擬似無視が生じるかどうかを検討した。その 結果,30 cm条件ではいずれの回答条件でも擬似無視が 認められたが,身体近傍空間を超える 90 cm 条件では レーザーポインタ条件において擬似無視が消失し右側へ の偏りが認められた。一方,棒条件と可視化レーザー条 件では90 cm条件においても擬似無視が認められた。こ の結果は,把持しているものが物理的な実体を持たなく ても視覚的に延長していることに伴い身体近傍空間が延 長する可能性を示唆している。

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特殊な偏光レンズが展示作品の印象に与える影響 立命館大学 西川 恵 立命館大学 北岡明佳 本研究では絵画などの展示作品をより効果的に鑑賞す る方法として,585 nm 前後の光波長を選択的にカット するレンズ(ネオコントラスト,三井化学社)に注目 し,調査を行った。研究1ではネオコントラストレンズ のメガネを装着し,絵画の印象に与える効果の予備的調 査として PC画面上での絵画鑑賞実験を行った。その結 果,装着により絵画はより美しく,鮮やかに,好まし く,魅力的に評価されることがわかった。研究2では錯 視を増強する効果があるかを調べたが,劇的な効果があ るものはなかった。ただ,色依存の Fraser–Wilcox 錯視 や蛇の回転のような回転錯視の回転が少し速くなる可能 性が示された。研究3ではネオコントラストの装着から 時間経過し順応することで,色票,回転錯視,絵画の評 価に違いがみられるかを調べたが,装着直後,5, 10, 15, 30 分後においてこれらの評価にほとんど差はみられな いと示唆された。 漢字により構成されたNavon図形による 反射的注意のシフト 立命館大学 郷原皓彦 九州大学大学院 森 優希 九州大学 山田祐樹 本研究では,漢字(「左」あるいは「右」)を大域情報 や局所情報としたNavon図形を手がかり刺激とした場合 に,大域・局所それぞれの情報がどの程度空間的注意を シフトさせるかを検討した。実験1では複数個の漢字に て構成された漢字が手がかりとして呈示され,実験参加 者はその 117 ms 後あるいは 700 ms 後に手がかりの左右 いずれかに呈示された標的の位置を回答した。実験の結 果,大域・局所情報の漢字双方の示す方向が標的の位置 と一致する場合により反応時間が速くなった。さらに実 験 2および実験3では大域または局所情報を矢印に変更 して検討したところ,漢字の示す方向に関わらず,標的 の位置と矢印の向きが一致する場合により反応時間が速 くなった。これらの結果は,漢字にて構成された Navon 図形の大域・局所処理情報の双方が空間的注意における 反射的手がかりとなる一方,矢印と比べ手がかりとして の効果は弱いことを示唆する。 他者の判断した情報取得に伴う自己の意思決定 及び認知過程の変化 生理学研究所 南條啓孝 生理学研究所 小池耕彦 東京大学大学院 宮田紘平 生理学研究所 定藤規弘 ヒトが他者と共同して行う社会的な意思決定の精度は, 個人単体でのそれよりも優れていると考えられている。 意思決定精度の上昇は,コミュニケーションを介して, 意思決定に対する個人の確信度が共有されることで生じ るとされるが,実社会で確信度が共有されることは稀で あり,他者の意思決定の結果のみが共有されるだけで意 思決定の精度が上昇するかは自明ではない。我々は,強 制二肢選択法を用いた視覚弁別課題において,パート ナーと判断結果を共有するDyad条件と,共有しないSolo 条件を設定し,これらの条件間で弁別課題の精度に差が あるかを検討した(参加者数=合計 44 人).その結果, Dyad 条件では Solo 条件と比較して弁別能が有意に上昇 した。しかし,呈示される他者の判断結果をランダムな 回答に置換すると,この効果は失われた。この結果は, 同じ課題を行っている他者の判断を参照して視覚弁別課 題を遂行すると,その精度が上昇することを示している。 二重課題状況下での直視視線の検出: 素人観察者における検討 愛媛大学 大塚由美子 早稲田大学  渡邊克巳 素人観察者が焦点的注意をともなわずに直視視線と逸 れた視線を識別する可能性を,QUEST 法を利用した二 重課題パラダイム(Matthews et al., 2018)を用いて検討 した。単一課題条件では,参加者は視野中心からやや周 辺に逸れた位置に提示される顔の視線方向(直視/逸 視)の識別判断のみを行った。一方,二重課題条件では 参加者は,焦点的注意を要する視野中心部の文字識別課 題を行いつつ,同時並行的に周辺部の顔の視線識別課題 を遂行した。現在の結果は,二重課題条件では単一課題 条件と比べ視線識別成績は低下するものの,偶然よりは 高い水準に保たれることを示す。さらに,このような結 果パターンは正面向きの顔のみを用いた条件と,左・正 面・右の異なる顔向き文脈が用いられた条件の両方で得 られている。本研究の結果は,素人観察者においても注 意を伴わずに直視視線が検出されうることを示唆する。

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弱者への共感に協力と競争の気分・体験が及ぼす効果 豊橋技術科学大学 北 充晃 豊橋技術科学大学 丸岡 拓 豊橋技術科学大学 松田勇祐 同志社大学 板倉昭二 前言語期の乳児が苦境にある他者を好むことから,同 情が生来的である可能性が示唆されている。しかし,同 情が普遍的か人の状態に影響を受けるのかは明らかでは ない。本研究は,参加者の気分や社会的体験が,苦境に ある他者の選好に影響を与えるかを検証した。実験1で は,複数人による協調的状況あるいは競争的状況を示す 絵に説明文をつける課題を行い被験者の気分を操作した。 その後,被験者はある物体が別の物体を攻撃する映像を 観察し,どちらの物体が好きかを相対的に回答した。そ の結果,被害者が攻撃者よりも好まれたが,気分条件の 間に差はなかった。実験 2 では,被験者のペアが協力 ゲームあるいは競争ゲームを行い,社会的関係を操作し た。その結果,協力ゲームでは被害者が有意に好まれた が,競争ゲームでは好まれなかった。したがって,同情 は比較的普遍的なものであるが,他者との社会的関係の 体験が初歩的共感に影響を与える可能性が示唆された。

参照

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