第2学年〇組 道徳科学習指導案 1 主題名 正義を追い求めて C(11) 公正、公平、社会正義 2 教材名 「渡良瀬川の鉱毒」(東京書籍「新しい道徳2」) 3 主題設定の理由 〇 本学級の生徒に実施したアンケートでは、「間違っていることは、間違っていると言うべきだ」につ いて 95%の生徒が肯定的な回答をしている。その一方で、「間違っていることがあれば、自分にあまり 関わりがないことであっても間違っていると言うことができる」という質問に対する肯定的な回答は 56%という結果となった。このことから、自分と身近な他者の直接的な関わりにおいては、「そのまま にできない」という意識から正しさを求めようとしていることがわかった。そこで対象を身近なものか ら広げ、将来のことや、社会全体のことまで考えることができるようになるこの期に、本主題を設定し、 自分が正しいと信じることを追い求め続けることが、将来にわたって、多くの人が幸せに暮らすことが できることにつながることに気付かせたい。 〇 「正義」とは自分が正しいと信じることを自ら積極的に実践できるように努めることであり、よりよ い社会の実現のために自らが追い求めていくものである。つまり、いじめや不公正な行動等が起きたと きに、不正を憎み、断固として拒否し、自分の信じる正しさによって、差別や偏見の解決に努めること である。 本主題は小学校(高学年)では「誰に対しても差別をすることや偏見をもつことなく、公正、公平な 態度で接し、正義の実現に努めること」と設定されており、中学校では「正義と公正さを重んじ、誰に 対しても公平に接し、差別や偏見のない社会の実現に努めること」に発展しているものである。中学校 1年生では主に身近な差別や偏見に対して正しいと信じることを実践するように努めることをねらう。 中学3年生では、主に世の中のあらゆる差別や偏見に対して自分の信念に従って、真理を追い求め、実 践することをねらう。そこで、中学2年生という発達段階を考えたときに、社会の在り方についても目 を向け始め、社会における矛盾や葛藤、さらに差別や偏見といった社会的な問題を見いだすことができ ると考える。これらのことを踏まえ、本時の授業では、身近な社会における不公正に気付き、自分が正 しいと信じることを追い求め、実践していくことが、将来にわたって差別や偏見のない社会を実現する ことにつながることを重点的に指導していきたい。 〇 教材「渡良瀬川の鉱毒」は足尾銅山の鉱毒問題の解決に向けて立ち向かい、農民の救済に半生を捧げ た田中正造の伝記教材である。正造は議会の檀上から鉱毒の実態や政府の責任を訴え続けたが、状況は 改善されなかった。ついに正造は議員を自ら辞し、被害地の農民と寝食をともにしながら、鉱毒問題の 解決に打ち込もうと決心したのであった。どんな困難があっても、自分の信念を曲げずに、正しいこと を追い求めようとした田中正造の生き方を通して、世の中の不合理を無くすために、不正を憎み、正義 を追い求める心について、考えを深めることができる教材である。 本時の授業では、正造の心情を表した表現物を基に対話させることで社会正義を追い求めることが 難しい状況で訴え続けた正造に共感させ、社会正義を実現するための考えを深めさせることをねらう。 本主題を指導するに当たっては、まず、見つめる段階では、社会正義について問題意識をもたせるた めに、場面設定を基に正しいことを実践することの難しさについて話し合わせる。次に、気付く段階で は、社会正義を実現するこが難しい状況と田中正造のねらいに対する弱さに気付かせるために、表現物 を基に話し合わせる。さらに、深める段階では、弱さを乗り越え、社会正義を追い求める考えを深めさ せるために、シーソー図を基に話し合わせる。最後に、あたためる段階では、今後の実践意欲をもたせ るために、本時で学んだことを書かせる。
4 本時 日時、場所 令和元年〇月〇日 第〇校時 2年〇組教室 (1) ねらい 〇 自分が正しいと信じることを追い求め続けることが将来にわたって、多くの人が幸せに暮らすこと につながることがわかり、難しい状況でも、正しいことを追い求めたいという心情を育てる。 〇 表現物を基に対話をすることで、田中正造が社会正義を追い求めることが困難な状況の中で訴えを続 けた田中正造に共感しながら、社会正義を実現するための考えを深めることができるようにする。 (2)準備 教材「渡良瀬川の鉱毒」、学習プリント、テレビ (3) 学習指導過程 段階 学習活動 主な発問と予想される反応 指導上の留意点 見 つ め る 1 本時の問題意識をもたせるため に、場面設定を基に公正、公平につ いて話し合う。 グループを注意する ・だめなことはだめと言うべき。 自分は食べない ・よくないことに加わりたくない。 食べる ・その場の雰囲気。 〇立場を可視化でき るように、青色と黄 色 の カ ー ド を 用 い て、全体で理由を出 させる。 気 付 く 2 資料「渡良瀬川の鉱毒」を基に、 田中正造が置かれた状況や、その状 況の中で抱いた弱さについて話し合 う。 (1)「議員」「国民」「農民」の立場や 当時の状況を明らかにするために 関係図を作成し、話し合う。 ① 小集団で関係図を作成する。 (矢印や心情を書き加える) ② 関係図をもとに全体で話し合う。 【議員→農民】 ・国の発展のためには農民に我慢し てもらうしかない。 【国民→議員】 ・他国からの圧力に負けない国づく りを進めてもらいたい。 【国民→農民】 ・かわいそうだけど…。 〇当時の状況に気付 かせるために、関 係図に矢印や心情 を書きこむように 指示する。 〇小集団で話したこ とを全体で共有で きるように、ホワ イトボードに関係 図を示す。 ある日仲の良い友達グループ4人で トイレに行ったときに、その中の一 人が、飴をもってきており、一緒に食 べようと誘ってきた。他のメンバー は渡された飴を受け取り、最後にあ なたに飴を渡してきた。 めあて:おかしいことをおかしいと言える社会をつくるためには、どのような心が大切なのか考えよう。 発問あなたならこの状況で どうしますか。 発問1 「議員」「国民」「農民」は それぞれに対してどのように 思っていたのか。
(2)田中正造が社会正義を実現するこ とに対する弱さを明らかにするため に田中正造の心情について話し合 う。 ① シーソー図を用いて、田中正造の 心情を表現し、ペアで説明し合う。 ② 田中正造の心情を学習プリントに 書き、全体で田中正造の心情につい て話し合う。 【自分に対して】 ・農民を救うことはできるのか。 【政府に対して】 ・国の発展を考えたら、足尾銅山を 操業させるのは仕方ない。 【その他】 ・農民を救わなければならない。 ・農民がかわいそう。 〇国の発展も考えな ければならない田 中正造の気持ちに 気付かせるため に、シーソー図を 提示する。 〇田中正造の弱さに 気付かせるため に、シーソー図に 表した根拠を問 う。 深 め る 3 田中正造が貫いた社会正義の実現 につながる考えを深めるために正造 の心情について話し合う。 ① シーソー図に表現したものを基に ペアで話し合う。 ② 田中正造の心情を学習プリントに 書き、全体で田中正造の心情につい て話し合う。 ・全体の幸せを求めて。 ・今だけでなく将来の発展を求めて。 ・自分がやらなければ社会は変わらない。 ・農民を助けることが国を動かす ことにつながる。 ・一人の人間として、農民を助けたい。 〇田中正造が貫いた 社会正義について 考えを深めるため に、「農民」「国」 のどちらを考えて いたのかをシーソ ー図を示す。 〇ねらいに迫るために、 出た意見を深めた り比較したりでき るような補助発問 を問う。 あ た た め る 4 学んだことを基に今後の意欲化を 図る。 〇 価値の一般化を図る。 〇 今後の意欲化を図る。 ・これまで自分は○○だった。 ・今日の授業では□□のことを学ん だ。 ・これからは△△・・・。 〇今後の実践意欲につ なげるために、「田 中正造から学んだこ と」「自分ができそ うなこと」の視点で 振り返るように指示 する。 発問2 農商務大臣が足尾銅山の操業 を止めないことを正造はどの ように思っていたのか。 まとめ:この先も続く幸せのために、社会のおかしさに立ち向かうことが大切である。 発問3 議員を辞めてまでも、農民を助 けようとした正造を支えた心 はどのようなものだったのか。 補助発問 国を変えたいならば、議 員を続けた方がよかっ たのではないか。