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環境保全型農業の現状と展望 −消費者、生産者、生物多様性による比較研究

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Academic year: 2021

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環境保全型農業の現状と展望 −消費者、生産者、

生物多様性による比較研究

著者

高橋 みゆき

雑誌名

農業経済研究報告

52

ページ

45-45

発行年

2021-02-28

URL

http://hdl.handle.net/10097/00131586

(2)

環境保全型農業の現状と展望 −消費者、生産者、生物多様性による比較研究

高橋みゆき(資源環境経済学講座・環境経済学分野) 【背景と目的】水田はアジア最大の湿地帯であり、生産機能のみならず、多様な生き物の生息地の 機能を備えている。生物多様性の恩恵を将来世代に残すためには、社会において生物多様性保全を 支えるシステムが構築される必要がある。その取り組みの一例として、環境保全型農業による生物 多様性保全と環境保全型農業生産物の価格プレミアムが挙げられる。水田における生き物の多様性 が果たして市場価格に反映されているのか、慣行栽培米と環境保全属性をもつコメの市場価格調査 を行ったところ、現状として慣行栽培と比較して環境保全型属性は消費者から高く評価されている とは言えない状況であることが明らかになった。よって本研究では、なぜ環境保全型農業が広がら ないのか、その原因を明らかにすることを目的とし、そもそも農業が保全している環境とは何を指 すのかについて考察し、社会において生物多様性保全を支えるシステム構築の礎とする。 【方法】(1)環境保全型農業の整理、(2)消費者の評価、(3)生産者の意識と現場における生 物多様性、(4)プロデューサーの立場からみる環境保全型農業、(5)生きものブランド米事例研 究、の5つの観点から分析、検証を行う。(1)、(2)は文献調査により実施し、(3)生産者の意 識については、かが有機農法研究会とたかしま有機農法研究会の方々にヒアリング調査を行った。 (4)については、平成21年度農林水産生きものマークモデル事業の委託事業実施者である株式 会社アミタ持続可能経済研究所の本多清氏と宮城県を拠点とする環境保全米ネットワークの黄金 澤孝昭氏にヒアリング調査を行った。(5)は上記ヒアリング調査及び文献調査により実施した。 【分析結果】(1)では、環境保全属性を持つコメの定義の曖昧さが明らかになった。JAS 有機以外 に国内統一の基準がなく、特別栽培米として認可される栽培方法の農薬、化学肥料の成分及び回数 は地域差が大きくある。地域の気候など特性に合致した基準とも言えるが、環境保全の観点からは 統一の基準でないため効果が同一でないことが推定される。(2)に関して、矢部・林ら(2005) に代表されるように、減農薬・減化学肥料栽培に対する消費者の評価は生物多様性そのものでなく、 自身や家族の健康のための間接的な指標にしかなり得ていないことが再確認された。(3)の生産 者からも顧客は健康のために無農薬栽培米を購入しており、生きものについて聞かれたことはない とのヒアリング結果を得た。(3)、(4)、(5)に関し、生きものブランド米に関わる生産者は生 物多様性に強い関心を持っており、他の農家とは違う「生きもの保全」というコンセプトがあるコ メを作っていることに誇りを持っているという意見が多数あった。一方で、特別栽培米の生産は価 格の点で魅力を感じておらず、補助金によって栽培が開始され、これまで維持されていることが示 唆された。生きものブランド米の成功事例と言われるコウノトリ育むお米の場合、JA が特別栽培米 を慣行栽培より高い価格で購入しており、価格プレミアムを農家がマーケティングを実施せずに得 ることが可能なシステムが存在している。加えて、農家の高齢化による問題が深刻であり、慣行栽 培でも水田自体が消滅してしまうのではという危機感が明らかになった。 【結論】環境保全型農業に対する生産者と消費者の意識には評価項目のギャップがあること、また、 環境保全型農業の国内統一基準がなく、健康、生物多様性への効果共に評価が難しいことが明らか になった。さらに、環境保全寄与に対する価格プレミアムを手軽に得ることが可能なシステムの重 要性が示唆された。これは JA、自治体、生産者が同じ方向性で取り組みを行うことの重要性と言え る。農業において環境保全ができるシステムを整えていくべきであり、慣行栽培を含めた生産基盤 としての農業が環境に果たしている役割を認識し、社会で持続していくことが必要である。 45

参照

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