学 位 論 文 内 容 の 要 約
氏名 松澤 高光
論文題目
Immunological function of Langerhans cells in HIV infection (HIV感染におけるランゲルハンス細胞の免疫学的機能)
学位論文内容の要約 ( 研 究 の 目 的)
粘 膜・皮 膚表 皮 内ラ ンゲ ル ハ ンス 細 胞(以 下 LC)は 、HIVの 初 期 標的細 胞 の 一つ で あり 、所 属 リ ン パ節 に 遊走 し HIVを CD4陽 性 T細 胞に 伝 播し HIV播 種 に関 わ って いる 。
一 方 、 HIV感 染 に お い て HIV特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 や 制 御 性 T細 胞 ( 以 下 Treg細 胞 ) は HIV感 染 の 進 行 を抑 制 する こ とに お い て重 要 な役 割 を担 っ て おり 、LCと 同 じく HIV感 染 標的 細 胞の 一つ で あ る 樹 状 細 胞 ( 以 下 DC) に よ る そ れ ら の 細 胞 の 誘 導 能 に 関 し て は 報 告 が 散 見 さ れ る 。 し か し な が ら、LCが HIVに 感染 後 、どの よ うに 免 疫を 調 節 する か は現 在 まで 明 ら かに さ れて い ない 。
我 々 は LCが HIVに 感 染 後 、 HIV特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 を 誘 導 し 、 さ ら に Treg細 胞 の 誘 導 能 が 変 化 す る こと で 抗 HIV免 疫応 答 を 調節 す ると 考 えて お り 、こ の 仮説 を 実証 す る ため 以 下の 実 験を 行 っ た 。 ( 方 法 ) 本 研 究 に お い て LCと し て 、 採 血 検 体 か ら 分 離 し た ヒ ト 単 球 を GM-CSF/IL-4/TGF-β 存 在 下 で 培 養 し 作製 し た単 球 由来 LC-like DC( 以 下 mLC)と 、ヒト 表 皮水 疱 蓋よ り 得 た表 皮 シー ト から 培 養 液 へ遊 走 した 表 皮 LCを 用 い た 。コ ン トロ ール と し てヒ ト 単球 を GM-CSF/IL-4存 在 下で 培 養 し 作 製 した 単 球由 来 DC( 以 下 mDC) を 用 いた 。 1. Naive CD8陽性T細胞をHIV曝露自己mLC、mDCと共培養後、HIV曝露mLC、mDCによるHIV抗原特異的CD8 陽性T細胞誘導能をHIVgagテトラマー染色によりフローサイトメトリーを用い比較検討した。 2. Naive CD8陽性T細胞をHIV曝露自己mLC、mDCと共培養後、各々分離した CD8 陽性 T 細胞によるHIV
抗原特異的IFN-γ産生能をHIV抗原刺激下にてIFN-γ ELISPOT assayを 用 い 比 較 検 討 し た 。 一 方 、共培養後誘 導 さ れ るHIV抗原特異的CD8陽性T細胞のIFN-γ産生能を、PMA/ionomycin刺激後 に HIVgagテトラマー染色、IFN-γ染色によりフローサイトメトリーを用い比較検討した。
3. Naive CD8陽性 T細胞をHIV曝露自己表皮 LCと 共培養後、 HIV曝露表皮LCによるHIV抗原特異 的 CD8陽 性 T細 胞 誘 導 能 を HIVgagテ ト ラ マ ー 染 色 に よ り フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー を 用 い 検 討 し た 。 さ ら に 、 誘 導 さ れ る HIV抗 原 特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 の IFN-γ 産 生 能 を HIVgagテ ト ラ マ ー 染 色 、 IFN-γ 染 色 によ り フ ロー サ イト メ トリ ー を 用い 検 討し た 。
4. Naive CD4陽性T細胞をHIV非曝露、HIV曝露自己mLCと共培養後、HIV非曝露、HIV曝露mLCによるTreg 細胞誘導能を比較検討した。表皮LCでも同様の実験を行った。
学 位 論 文 内 容 の 要 約 ( 続 紙 )
氏名 松澤 高光
5. HIV非曝露、HIV曝露mLCにより誘導されたTreg細胞をallo-MLR cultureに様々な比率で加えin vitro suppression assayを行い、Treg細胞のT細胞増殖抑制能を比較検討した。
6. HIV非曝露、HIV曝露mLCにより誘導されたTreg細胞のIL-10, TGF-βなどの抑制性サイトカインや PD-1, ICOS, CTLA-4, CD39, GITR, HVEMなどの抑制性分子の発現をフローサイトメトリーを用い比 較検討した。
7. HIV曝露mLCにより誘導されたTreg細胞のHIV感染の有無をHIVp24染色によりフローサイトメトリー を用い検討した。
( 結 果 )
mLC、 表 皮 LCは HIV感 染 後 、 IFNγ 産 生 能 を 有 す る HIV特 異 的 CD8陽 性 T細 胞 を 誘 導 し た 。 さ ら に 、 mLCは mDCよ り 有 意に HIV特 異 的 CD8陽 性 T細胞 を 誘 導し た 。
一 方 、 mLC、 表 皮 LCは HIV感 染 後 、 effector Treg細 胞 誘 導 能が 低 下し た。 mLCの HIV感 染 の 有 無 に 関 わ ら ず 誘 導 さ れ る Treg細 胞 のT細胞増殖抑制能は同等であり、さらに誘導されるeffector Treg細 胞 上の抑制性サイトカイン/分子の発現も同等であり一貫した結果が得られた。
誘導されるTreg細 胞 はHIV感染していなかった。 ( 考 察 )
現 在 ま で に HIV、 CMV、 EBV、 influenza virusな ど 種 々 の ウ イ ル ス 感 染 に お い て 、 ウ イ ル ス 特 異 的 T細 胞 に よ る IFN-γ 産 生 と51Cr-release assayに お け る 細 胞 傷 害 性 活 性 が 相 関 す る と 報
告 が あ る。 ま た近 年 、ヒ ト Foxp3陽 性 T細 胞 を effector Treg細 胞 、 naive Treg細 胞 、 non Treg 細 胞 に 再分 類 する 方 法が 報 告 され 、 effector Treg細 胞 が 最 も強 い 抑制 能 を 有す る 。
本 研 究 にお い て 、LCは HIV感 染 後 、DCよ りも 強力 な 抗 HIV免 疫 応 答を 惹起 し 、さ らに 、effector Treg細 胞 誘 導 能が 低 下す る こ とで よ り強 力 な抗 HIV免 疫 応答 が 惹起 され る こ とが 示 唆さ れ た。
effector Treg細 胞 の 低下 は HIV感 染 が 原 因で はな い こ とが 示 唆さ れ た。 ( 結 論 )
HIV感 染 後 LCに よ る抗 HIV免 疫 応 答 の誘 導 は新 しい 知 見 であ る 。LCは HIVの 初 期 標的 細 胞の 一 つ で あ る 一 方 で 、 強 力 な 抗 HIV免 疫 応 答 を 惹 起 し 、 HIV感 染 の 進 行 を 抑 制 し 後 天 性 免 疫 不 全 症 候 群 の 発 症 を 遅 延 さ せ て い る 可 能 性 が あ る 。 こ の 新 知 見 を 取 り 入 れ た ワ ク チ ン 開 発 も 期 待 で き る 。