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アルカリ性浴中におけるアルミニウムの腐食に及ぼす多価アルコール類添加の効果について 利用統計を見る

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(1)

アルカリ性浴中におけるアルミニウムの腐食に

及ぼす多価アルコール類添加の効果について

初鹿敏明

渡辺正秀

早川保昌

(昭和52年8月10日受理)

Inhibitive Effects of Polyhydroxy-alcohols as Corrosion Inhibitors

for Aluminum in Alkaline Media

ToshiakiHATSUSHIKA MasahideWATANABE YasumasaHAYAKAWA

Abstract  Studies on corrosion inhibitors for aluminum immersed into alkaline media have been made by use of various materials.  In this paper, the addition effect of polyhydroxy−alcohols, especially of sorbitol and man・ nitol, on the corrosion of aluminum in alkaline media was studied.  In case of addition of such polyhydroxy・alcohols, the values of pH, temperature and the concentration of additives affect the corrosion rate of aluminum.  By the addition of polyhydroxy・alcohols, the inhibition of corrosion for aluminum was not seen under pH 9−−10, but the inhibition or promotion behaviors were seen under pH 8 0rpH10.  The corrosion of aluminum in alkaline media is considered to take place under anodic control and the reaction is at the rate process.  The inhibition mechanism in case of adding soroitol and mannitol in alkaline media is considered to be due to film forming on the surface of aluminum.  The behavior of iron was also studied. Sorbitol and mannitol play part to remove iron precipitated on the surface of aluminum. The presence of iron powder inhibits the corrosion of aluminum.  The authors thank the award of National research fund of the Department of Education.

1.はじめに

 アルカリ性水溶液中に浸漬した金属アルミニウムの 腐食を抑制するために添加するいわゆる腐食抑制剤に *本論文は「アルカリ性浴中における金属アルミニウムの腐  食抑制剤に関する研究(第13報)」になる。内容の一一部は  電気化学協会第40回大会(昭48年8月,札幌一初鹿・渡  辺・早川,温アルカリ性浴における金属アルミニウムの腐  食に及ぼす多価アルコール類添加の効果)および第41回大  会(昭49年5月,千葉一初鹿・渡辺・早川,アルミニゥ  ムの腐食に及ぼす多価アルコール類の添加効果について)  にて講演した。 ついては多くの物質種についての研究がなされてお り1),またその作用機構についても論ぜられている2)。  分子内に一つの一〇H基をもつ1価アルコール類に ついては抑制効果がメタノール,エタノールおよびn一 プロピルァルコールについては認められないが3},ヘ キシルアルコールおよびセシルアルコールではわずか に効果が認められる。しかしiso一プロピルアルコール ではむしろ腐食を促進することが報告されている4)。  多価アルコール類についてはエチレングリコールお よびグリセロールが抑制作用を示す。ソルビトール1 %を添加すると高純度アルミニウムの腐食をかなり促

(2)

進する5)。マソニトールの少量添加ではアルミニウム の腐食を促進するが,多量添加では抑制するという結 果が報告されている6)。  しかし分子内に多数の一〇H基を有する糖類につい ては,単糖類や二糖類では一般に腐食を促進するよう であるが5),多量添加した場合には抑制を示すという 結果も報告されている3)。多糖類ではアラビアゴム5), トラカントゴム6),アカシアゴムη,デキストリン7), i寒天5・7),デソプン5)などは1%内外の添加で抑制率40 ∼90%を示している。  これらの諸報告からわかるように,−OH基をもつ 比較的似た構造のものでも,場合によっては添加によ りアルミニウムの腐食が促進されたり抑制されたりし ている。この結果のバラツキについては,アルミニウ ム中に少量含まれている鉄の挙動が要因をなしている のではないかとも考えられるので,本報告ではこの点 について論及する。また多価アルコール類添加がアル ミニウムの腐食に及ぼす効果がアノード支配によるも のか否かについても考察する。

2.実

験  2.1金属アルミニウム  広さ10×40mm,厚さO.4mm,純度99.7%のアル ミニウムの薄板をカセイソーダの温水溶液で洗い,ト リクレソで処理し,デシケータ中に保存したものを試 料とした。分極特性の測定には必要面積以外を非電導 性の樹脂塗料で被覆して用いた。  2.2試   薬  ソルビトール,マンニトール,エリトリトール,グ リセロール,エチレングリコールおよび電解鉄粉はい ずれも市販品をそのまま使用した。水酸化ナトリウム は市販特級試薬を用いた。  2.3 腐食抑制率の測定  水素発生量または腐食電流密度を測定して腐食速度 を求め,次式により腐食抑制率zを計算した。   ・一一ρ一ρ・100−(1一ρ/ρ。)・100(%)     ρo ここにρ。は抑制剤を含まない場合の腐食速度, 抑制剤を含む場合の腐食速度を表す。  2.3.1水素発生量の測定 (1) ρは  恒温槽中に収めた容量300 mlの三角フラスコ中に 試験液300・mlを入れたものにアルミニウム試料を浸 漬し,マグネチックスターラで液をかきまぜながら水 素を発生させ,その容量をガスビュレットと水準管で 測定し,この値を標準状態値に換算した。水素発生量 の比を腐食速度の比に相当するものとし,(1)式により 抑制率を計算した。  2.3.2 腐食電流密度の測定  自然電極電位の経時変化を約2hrsにわたって測定 した系から(2.5参照),飽和カロメル電極を除き,代 わりに面積1cm2の白金を対極として浸漬し,電位の 安定を確かめてから,ポテンショガルバノスタットに より分極曲線を求め,これより腐食電流密度を作図に より求めた。この比を腐食速度の比に相当するものと し,(1)式により抑制率を計算した。  2.4 粘度の測定  恒温槽中で30°Cに保った腐食液について,オスト ワルド粘度計により測定した。  2.5 自然電極電位の測定  恒温槽中に収めた容量100 mlのビーカ中に腐食液 を入れる。アルミニウム試料の片面1cm2だけを残し 他を非電導性の樹脂塗料で被覆し,これをビーカ中に 浸漬し,飽和甘示電極を参照電極としてアルミニウム の電位変化を約2hrsにわたって測定し,2hrs後の 安定した値を腐食電位とした。  2.6 腐食生成物中の鉄分の定量  アルミニウムを水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し て溶解させ,この際(イ)アルミニウム表面にできた黒色 被膜,(ロ)溶液中の黒色沈殿物,および◎溶液の炉液の 3者につきそれぞれdil H2SO4で処理してpH 2. o∼ 2.4の水溶液とし,これらにスルポサリチル酸ナトリ ウムを加えて発色させて鉄分を比色定量した。  2.7 脱着試験  添加剤を含むpH 11.9および12.8のNaOH水溶 液(30°C)にアルミニウム(20cm2)を浸漬し,この 時の水素発生量と電極電位の経時変化を測定した(前 処理試験)。  2hrs経過した後,このアルミニウム試料を引出し て水洗し,これを添加剤を含まないpH 11.9および 12.8のNaOH水溶液(30°C)に浸漬し,この時の水 素発生量と電極電位の経時変化を測定した(脱着試 験)。  2.8 アルミニウムキレートの安定度測定  Al(NO3)3とソルビトールをそれぞれ0:1(A), 1:2(B),1:0(C)の比で含むような試料溶液をつ くり(各組20ずつ),それぞれにN/10−NaOHを所 定量加え,かきまわしつつ30°Cに3日間放置した。 この際各試料溶液はイオン強度をKNO3で0.1±0.01 とした。  3日後各試料溶液のpHを測定して滴定曲線をつく り,これからキレートの安定度を計算した。

(3)

3. 実験結果と考察  3.1pH抑制剤濃度および温度の影響  3.1.1pH,抑制剤濃度の影響  30°Cにて各pHの溶液に加えた抑制剤の濃度が抑 制率に及ぼす影響を表一1に示す。  ソルビトールおよびマンニトールの添加はpH 12 および13付近で抑制作用を示すが,pH 9および10 では促進作用を示し,pH 8付近で再び抑制作用を示 す。pH 10以上では添加濃度の高い程,抑制率も高く なる傾向がある。グリセロールおよびエチレングリコ ールの添加はpH 9および10付近で促進作用を示す が,pH 8付近で抑制作用を示す(図一1参照)。  3.1.2 温度の影響  アルミニウムをそれぞれ1N, N/10, N/100の NaOH水溶液に浸漬した場合の,腐食抑制率に及ぼす 温度効果を図一2および図一3に示す。温度が上昇する と抑制作用が直線的に低下することがこれらの図から 表一1pH,抑制剤濃度と抑制率(%)の関係(30℃) わかる。

 アルミニウムのNaOH水溶液中での腐食速度の対

数を1/Tに対してプロットすると図一4が得られる。 図一4における直線の傾斜より,(2)式により腐食の活性 化エネルギーEを求め,(2)式にE値を代入して積分定 数(頻度因子)を求め,結果を表一2に示した。   10g v・=log C−E/2.303RT      (2) ここにvは腐食速度(ml/hr・cm2), Cは頻度因子を 表す。 十80 十60 一十40 巡 量+20 蓑

  0

一20 添  加  剤

pH

68 9 10 111213

一くe−一ソルビトール(1%) 十マンニトール(1%) +グリセロー・一ル(1%) 一エチレングリコール(1%)

   \ \

      \ ソルビトール マンニトール (%) 0.3 1.0 3.0 0.3 1.0 3.0 12  54   −28   −37    34  56  28 12  72   −45    35    40  62  32 12  25   −66    53   44  65  60 15  84  −137   −35  −29  37  20 15  82    −    21    0  44  34 35   0  −137     10    14  59  50 グ・セ・一・レ1 ・.・1−59−・44−・5318・7

㌻㌃グリ1 …1−3722−2531151・

30  40  50  60  70°C 図一2 温度一抑制率の関係(pH 11.9) § 量 蓑 十40 十20 0 3.0

f

9

る2・o 唱 顧  1.0 4   6   8  10  12  14pH  図一1pH一腐食速度の関係 gr 100 § 圭 ≒ S. iO 亘

2

惚 1 一20 一⑤一ソルビトール(1%) −yマンニトール(1%) 一△一グリセロール(1%) +エチレングリコール(1%) 一’←ソルビトール(1%,1N−NaOH)

→“−X−X_x一

    30   40   50   60°C 図一3温度一抑制率の関係(pH 12.8) 一t!’一ブランク ーΦ一ソルビトール ーN一マンニトール N/10−NaOH

N

邊ミミ}llき

 + ソルビトール N/100−NaOH  一昌一マンニトール 3.0 3.1    3.2 図一4腐食速度と温度 3.3 (1/T〉<103>

(4)

表一2活性化エネルギー(E,kcal/mole) 添  加  剤   な   し ソルビトール  1% 一マンニ トーノレ    1% N/10−NaOH

E

C

12.2    1.07 13.5  0.60 13.5  0.61 N/100−NaOH

E

c

9.56    0.14 14.4    0.15 14.4    0.26  加藤ら5)の研究により明らかにされたように,一般 に腐食反応が拡散過程によって律速されている場合 (拡散支配)には活性化エネルギーは数kcal/mole以 下であるから,表一2に示されている値はこれよりかな り大きく,この場合には(電極)反応過程によって律 速されている(反応支配)のかも知れないが,E値の 大小だけでいかなる過程であるかを決定するわけには し・カ・なし・o  表一2から明らかなように,N/10−NaOH溶液では 添加剤の存在によって活性化エネルギーの変化がほと んど見られない。これはアルカリ性が強くて添加剤の 存在によっても腐食速度を加減できないためと思われ る。しかしN/100−NaOH溶液では少量の添加剤が 活性化エネルギーに大きな変化を与えていることは, やはり拡散支配というよりはむしろ反応支配によるも のだと思わざるを得ない。  3.2 粘度の影響  多価アルコール類を添加した場合のNaOH水溶液 の相対粘度(添加液の粘度と無添加液粘度の比)を測 定した。結果を表一3に示す。  表一3に示されているように,多価アルコール類を添

加してもNaOH水溶液の粘度はく10%しか影響を

受けていないことがわかる。この点も腐食抑制が拡散 支配であることを示していないわけである。  3.3 腐食電流密度  分極曲線をつくり,立ち上がりの部分を自然電極電 位値にまで外挿して腐食電流密度を求めた。作図の1 例を図一5に示した。またこのようにして求めた腐食電 流値を表一4に示した。表一4より明らかなように,ポリ アルコール類の添加は腐食を著しく抑制する効果があ る。  3. 4 自然電極電位  NaOH水溶液にアルミニウムを浸漬し飽和甘禾電 極を対極として電極電位の経時変化を求めた,その1 例を図一6に示す。約2hrs経過して電位が安定したと 表一4腐食電流密度

pH

8 9 12 添 加 剤 種

類1濃度(%)

 な    し

ソルビトール

マ ン ニ ト ー ル グ リ セ ロ ー ル エチレングリコール  な    し

ソルビトール

マ ン ニ ト ー ル グ リ セ ロ ー ル エチレングリコール  な    し

ソルビトール

マ ソ ニ ト ー ル グ リ セ ロ ー ル エチレングリコール 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 腐食電流密度 μA/cm2 31 3.8 1.7 3.3 4.3 83 24 18 38 44 3200 1200 1400 2500 2700 表一3多価アルコール類添加によるNaOH水溶液の相対粘度    (30℃,粘度値は無添加浴との比)  一〇.8 禽 O−1.0 の S−1.2

b

週一1・4 鯉  一1.6 添 加 剤 種

類1灘(%)

ソ  ノレ  ビ  ト ー ノレ マ ン ニ ト ール 0.3 1.0 3.0 0.3 1.0 3. 0

NaOH水溶液のpH

8.0  10.0  11.0  12.0 1.00  1.00  1.02  1.00 1.04  1.02  1.04  1.08 1.04  1.07  1.07  1.08 1.01  0.98  1.00  1.03 1.03  1.06  1.06  1.06 1.04  1.06  1.09  1.07 ・・セ・一・レ13.・1・.・61.・8・.・・1… 一チ・ング・・一ル13.・1…3・・・・…6…6       /       /▲         /▲

念==e〈

       \△

      \x 一L−_一___一_一__L_一_______L___       1     10    100        電流密度(μA/cm2) 図一5分極曲線(pH 9.0,ソルビトール3%) 臼_1.3

8

2 ≧−1・4  −1.5 図一6 +ソルビトール(1%) −fiF一マンニトー一ル(1%)  20     40     60     80     100 電極電位の経時変化(N/100−NaOH)

(5)

きの値を表一5に示す。表一5に示されているように, pH 8.0においては添加剤の効果が著しいが,強アル カリ域ではアルミニウムの溶解がはげしくて均一被膜 の形成が行われ難いので効果がほとんど見られない。  3.5 脱着試験  添加剤を含むNaOH水溶液にアルミニウムを浸漬 し2hrs経過して後(前処理試験),引出し水洗してか ら添加物を含まないNaOH水溶液中に浸漬して腐食 を行った(脱着試験)。前処理試験および脱着試験に おける水素発生量および電極電位の経時変化をそれぞ れ表一6および表一7に示した。  これらの表からわかるように,前処理試験に添加剤 を用いると,脱着試験で添加剤の効果が始めの中残っ ているが,時間がたつと添加剤の効果が失われ,最終 的には添加剤を含まない前処理試験の場合の結果に近 くなる。このことはこれら添加剤による腐食抑制が金 属表面の変化によること,またこの表面変化はあまり 強固なものではないといわざるを得ない。 表一5 自然電極電位(Vvs, SCE,30°C) 添 加 剤 種 類 濃度(%)

pH

8.0 9.0 10.0 11.0     11.86     12.80 な し

1

 −1.29    −1.34    −1.37    −1.40    −1.37    −1.29

ソルビトール

マ ン ニ ト ー ル 0.3 1.0 3.0 0.3 1.0 3.0 一〇.90 −0.59 −0.96 一1.31 −1.30 −1.23 一1.45    −1.44    −1.42    −1.36 −1.42   −1.44   −1.44   −1.41 −1.39    −1.44    −1。40    −1.42 一〇.61 −1.18 −1.29 一1.33 −1.30 −1.29 一1.35    −1.42    −1.39    −1.33 −1.36    −1.40    −1.39    −1.46 −1.37    −1.40    −1.44    −1.46

グリセロール 3.0

一1.37    −1.29    −1.33    −1.35    −1.36    −1.35 エチレングリコール  3.0 一〇.84    −1.35    −1.36    −1.36    −1.35    −1.41 表一6脱着試験における水素の発生量(ml/20 cm2Al,30°C) 試  験  の 種     類 前  処  理 脱 着 金属 試料

A

B

C

A

B

C

添 加 剤 種 類1濃度(%) な    し ソルビトール マンニトール な な な し し し 1 1

H,発 生 量 (mの

pH 11.9 10(分)20(分)50(分)80(分) 2.5 1.O

LO

6.0 2. 5 2.5 16 6 9 27 9 14 4.0 1.0 1.0 7.5 3.0 4.0 19 15 16 30 27 29 pH 12. 8 10(分)20(分)50(分)80(分) 2.0    4.5    115 1.0   1.5    30 1.5   2.5    45 125 55 70 4.5  45 2.0  20 2.0  25 120 73 80 128 130 表一7脱着試験における電極電位(Vvs, SCE,30°C) 試  験  の 種     類 前  処  理 脱 着 金属 試料

A

B

C

A

B

C

添 加 剤 種

川麟(%)

な    し ソルビトール ーマンニトール な な な し し し 1 1 電  極 電 位 (V) pH 11.9 20(分) 50(分) 80(分) 一1. 38 −1.44 −1.45 一1.37 −1.44 −1.42 一1.37 −1.45 −1.39 一1.35 −1.33 −1.37 一1.33 −1.30 −1.36 一1.33 −1.29 −1.36 pH 12.8 20(分)  50(分) 80(分) 一1.40     −1.35 −1.40    −一 1.42 −1.42     −1.42 一1.31 −1.42 −1.42 一1.30     −1.29 −1.35     −1.31 −1.34     −1.31 一1.29 −1.30 −1.30

(6)

 3.6 鉄分の影響  3.6.1 アルミニウム表面の観察  pH 8の弱アルカリ性浴にアルミニウムを浸漬した 場合には,マンニトールやソルビトールが存在すると 表面に色縞の被膜形成が見られるが金属光沢は失われ ない。しかし強アルカリ性の浴に浸漬した場合には, 添加物の有無こかかわらず金属ははげしく反応して表 面は黒皮で覆われるが,ソルビトールが存在するとき には黒皮が著しく少ない。黒皮をナイフではがして分 析した結果,これは金属鉄であることがわかった。  3.6.2 黒色沈殿物  溶液中に生じた黒色沈殿を分離し,dil H2SO,に溶 解して分析した結果,これは金属鉄であることがわか った。またこのものは磁石に強く引付けられるし,放 置しておくと黒色から赤かっ色にかわり,赤かっ色に なったものは強磁性を失っていることがわかった。  3.6.3 溶解鉄分

 ソルビトール1%を含むNaOH水溶液と含まない

ものそれぞれ100 mlに0.5gの金属アルミニウムを 溶解した場合,溶液中に溶解している鉄分の量は表一8 のとおりである。表一8から明らかなように,ソルビト ールの存在が溶解鉄の量を多くしていることは,鉄分 が可溶性の錯体となって溶液中に移行しているためと 思われる。  3.6.4 鉄粉添加の影響  NaOH水溶液中にソルビトールおよび鉄粉を種々 の組み合わせで添加し,この中にアルミニウムを浸漬 して腐食させ,抑制効果を調べた結果を表一9に示す。 Dが高い抑制率を示していることは,添加した鉄粉が ソルビトールの抑制効果を高めているわけで,これは 腐食過程においてアルミニウム表面に析出した金属鉄 をソルビトールが溶解除去し,表面のFe−Al局部 電池を消滅させて抑制効果をあらわすためではなく, むしろ鉄の存在(皮膜)がアルミニウムの腐食を直接 抑制していることを示すものである。  3.7 アルミニウムキレートの安定度  ソルビトール(A),A1(NO3)3(C)および両者を含 む溶液(B)にそれぞれNaOHを加えたいわゆる滴定 曲線を図一7に示す。A曲線より,ソルビトールの解離 定数を求めることができなかったので,キレートの安 定度を計算できなかった。  しかしB,C曲線に見られるようにpH 9∼10でB 曲線のpH値が小さくなっていることは,ソルピトー ルがアルミニウムとキレートをつくり,このとき放出 したH+によりpH低下を起こしているものと思われ る。表一1にも示してあるように,pH 9∼10でソルビ 表一8溶存鉄分(O. 5g Al/100 mの

添加当溶液の∋・・(m・/…rnl)

な     し ソルビトール な な し し 0.13 2. 80 表一9鉄分添加の影響 記号

A

B

C

D

添  加  割  合 『鵠゜『ソル6;一ノ「鍋(m・) 100 100 100 100 0 5 0 5 0 0 10 10 腐食抑制率 (%,対A比) 38 17 51 pH 11      ノ     o!× _o_㊤一ンン  A

    s_Pt

渚th/

A:ソルビトール B:ソルビトール十Al(NO,)3 C:Al(NO3)3 2     4     6  図一7NaOH滴定曲線 8α トールO. 36%を含む溶液では,アルミニウムの腐食は むしろ促進されていることをもあわせて考えると,ソ ルビトールを含むpH 9∼10の溶液ではアルミニウム キレートの形成が行われているものと考えられる。

4.結

論  次の結論が得られる。  1.多価アルコール類のソルビトールおよびマソニ トールはアルカリ性浴中でアルミニウムの腐食に影響 を与える。  2. ソルピトールおよびマソニトールを添加した場 合,浴のpH,温度および添加剤濃度の高低により, アルミニウムの腐食は促進されたり抑制されたりす る。  3. ソルビトールおよびマソニトールを添加した場 合には,pH 9∼10でアルミニウムの腐食は抑制され ない。これは可溶性のキレートを生成するためである と思われる。  4. ソルビトールおよびマンニトールはpH 8また はpH 12付近で抑制効果をあらわす。 pH 8付近では

(7)

添加剤濃度が高いとむしろ腐食促進作用を示すが, pH 12付近では添加剤濃度の高い方が抑制効果が高 い0  5. アルカリ性浴中におけるアルミニウムの腐食は アノード支配の傾向で,反応過程が律速段階をなして いる。  6. アルカリ性浴中でソルビトールまたはマンニト ールを添加することによってアルミニウムの腐食が抑 制されるのは,金属表面に被膜が形成されるためと思 われる。  7. ソルビトールおよびマンニトールを添加した浴 は,アルミニウム中に含有されている鉄分の中アルミ ニウム表面に析出したものを除去する効果がある。  8.鉄粉を浴に添加するとアルミニウムの腐食抑制 が見られる。  終わりに本研究は文部省科学研究費に負うところが 大きい。厚く感謝する次第である。          文   献 1)早川他:電化26,643(昭33);29,39(昭36);29,   855(昭36);34,439(昭41);34,911(昭41);35,   199(昭42);35,503(昭42);36,61(昭43);36,   659(昭43);37,123(昭44);37,288(昭44);38,   9 (1970). 2)伊豆山・堀口・早川:防食技術,12,261(昭38);早   川・初鹿:Mol 12,49(1974);早川:電化,39,   774(1971);早川・加藤・河合:電化,37,804(昭   44);Y.Hayakawa,青山学院大学一般教育部会論   集9,77(1968). 3)F.H. Rhodes, F. W. Berner:Ind. Eng. Chem.   25, 1336 (1933). 4)M.N. Desai, S. M. Desai:Corrosion Science   10, 233 (1970). 5)M.Kato, K. Tanaka:工化67,1196(1964);68,   166 (1965). 6)J.C. MUller:Rev. faczaltad quim. ind. yag,r.   1g, No.32,92(1950). 7) Idem, Corrosion 17,39(1961).

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