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奈良薬業業界の21世紀戦略 -第六次産業化による高齢者市場の開拓-

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(1)論文. 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. 奈良薬業業界の 21 世紀戦略 ―第六次産業化による高齢者市場の開拓 ―. 眞 島 正 臣. 1 .国内漢方産業における環境変化と奈良の六次産業化政策 (1)中国依存脱却めざす薬草国内栽培を農林水産省・厚生労働省支援 (2)第六次産業振興政策による産官学連携による地域興しの台頭 (3)植物工場での薬草栽培へ新規参入の大手企業の動向 (4)高齢化社会、予防医学の普及にみる漢方薬の需要の伸び (5)ISO など国際標準化への働きかけと国際市場への進出 (6)奈良県「漢方のメッカ推進プロジェクト」への取り組み ふだん市販の医薬品を購入する消費者の行動調査「MyVoice」アンケート (注 1) モニター・2015 年 7 月 1 日〜 7 月 5 日調査」 を参照にしても、漢方薬への. 関心はメジャー規模ではない。ご承知の通り、漢方薬産業という領域は、多 品種少量の製薬生産分野である。農林水産省の資料「国内医薬品における漢 (注 2) 方薬」 によれば、 「 「国内医薬品に占める漢方薬の割合」−国内医薬品生産. 金額は 6 兆 9,874 億円(平成 23 年) 、漢方製剤(医療用一般用)が占める割合 は 2%」という市場規模である。同じ資料に「 「漢方薬市場の動向」−直近 5 年 間(平成 23 年度) 、医療用漢方製剤の市場は 1.23 倍の伸び(医療用医薬全体は (注 3) 1.09 倍、漢方薬全体でも 1.16 倍(医薬品全体では、10.8 倍) ) という変化が. 起きている。高齢者の健康寿命延命という国民的目標に向かう際に予防医療 に適した漢方薬が見直されてきたという要因が働いているようである。漢方 の国内需要の伸びと重なるように中国が原料の製薬輸出を規制するようにな 地域創造学研究. 5.

(2) 論文. り、日本の政府は、薬草の国内栽培を支援する政策を実施し、国外からの変 化に対応している。農林水産省の「生薬の需要量」のデータに国産は、年間 使用量の 12% であり、83% が中国産であると書かれている。 「漢方製剤等の原 料となる生薬の年間使用量は約 20 千トン(H20 年度) 。このうち国産は約 2.5 千トンと全体の約 12%。漢方製剤は医療現場におけるニーズが高まっており、 その生産金額は平成 18 年〜 23 年の間に 22% 増加し、1,422 億円(H23 年度) 。 その原料となる生薬の需要量は、増加が見込まれる「薬事工業生産動態統計 (注 4) 調査資料」 。 「今後とも見込まれる増加」成長需要を目前にした戦略を打ち. 出したのが農林水産省、厚生労働省を中心とした補助金も伴う産官学の全国 向け支援システムである。当面は、薬草栽培の定着が課題である。 農林水産省が呼びかけている「薬用作物産地化に向けたブロック会議開催 (注 5) 状況」 は、すでに実践され、即応力の素早い大手企業が呼応するかのよう. に異業種企業からの新規参入を試みている。 『農業経営者』特集記事(注 6) 「鹿 島建設・ウラルカンゾウの水耕栽培技術の開発を発表」 、 「三菱樹脂グリーン イノベーション・人工栽培に関する共同研究をスタート」など、 「近い将来、 (注 7) 世界商品になるかもしれない。 」 という前向きな取り組みを見せている。漢 (注 8) 方薬の安全、安心への信頼性、 「エビデンス」 (科学的根拠) が確立してい. ないための消費者からの多岐にわたる誤解が生じている。薬事法の基準に適 応しない、健康保険が使えないなど本気で思い込んでいる人が多い。西洋薬 の品質、安全、購入の容易さなどファースト医薬品的な簡便さと比較され、 誤解による利用敬遠を是正するための PR 活動が必要である。 なおかつ最近、提案の出ている ISO のような国際標準の認定を受けるべき だと言う課題がある。次のような意見が出ているのである。 「生薬の新しい品 質評価技術(理想的生薬の定義)を確立し、普及させれば、流通する生薬の 品質がさらに向上し、ロット単位での生薬の活用度が高まる。また、この認 定基準を ISO などと連携して世界的に発信すれば、世界的な品質ランキング (注 9) に基づいた生薬の生産・流通を実現できる」 。ちなみに現在の ISO 規約に. 漢方薬の項目はまだ存在しない。長期的な治療効果を求める医薬品としての 漢方薬ながら現代生活にマッチした流通適応は望まれる。 「富士経済」ホーム 6.

(3) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. ページ(注 10)に 2010 年報告された「ブランド漢方」という括りは鋭い。漢方の 大衆薬化は、手ごわい大手企業の競争相手である。 「近年は苦戦が続く一般用 医薬品市場の中でも、漢方・生薬製剤は堅調に推移している。2010 年は前年 比 0.8% 増の 2,394 億円が見込まれる。 」という前提で、 「一方、漢方製剤は新薬 的なイメージでマーケティング展開を行う “ ブランド漢方 ” が洋薬との差別化 を図ることに成功して実績を伸ばしており、特に循環器・血液用薬の肥満防 (注 11) 止剤や泌尿器官用薬の頻尿・尿もれ改善薬がその代表格となっている。 」. という。ブランド = 国内外の本物の原料による伝統的生産の超高級漢方薬の 意味ではない。大衆的漢方薬を製造販売している。企業の知名率は確かに高 い。 漢方薬市場の需要増量の機に乗じて地産地消の再興を実現しようと企てら (注 12) れたのが奈良県「漢方のメッカ推進プロジェクト」 の提案である。六次産. 業化について「奈良県産業振興総合センター」は、次のように説明している。 「農林漁業の 1 次産業、製造・加工などの 2 次産業、小売・サービス業などの 3 次産業を掛け合わせて 6 次産業と呼んでいます。農林漁業者が農林水産物の 高付加価値化、販売促進につなげるための施策で農林水産物の生産から加工、 販売までを一体化して実施する新たな事業計画について国の認定を受ける制 (注 13) 度」 であり、地域再生をめざす国の施策に沿った産業施策である。事業. 構想の価値連鎖システム図に纏められた。柔軟な軟構造ながら一貫性を持つ。 政府の政策を是とし、地元の漢方薬の伝統的ブランド力の強みを次世代へ伝 え未来的な価値として蘇らせようという狙いが伺える。 プロジェクトへの取組みについての考察は、詳細に目配りをし、後述する。 すべての既成概念を打破した新たなシステム構築がなされており、積極的な 挑戦が望まれるであろう。地元の製薬事業所が現時点を優位になると予測さ れるビジネスチャンスと見るかいなかは、経営者の意思決定による。一定水 準をステップごとにクリアしなければならない。新製品開発への目標と連携 を取りながら研究開発から市場への出口まで共同課題を完成させていくシス テムである。ボトムアップを促す緩やかな挑戦領域の棲み分け推進プロジェ クトである。もちろん、別個の企業横断連携でもよく、個別企業単独でのビ 地域創造学研究. 7.

(4) 論文. ジネス開発でもよいのである。 本稿は、特に高齢者をターゲットにした漢方医薬品の開発と普及を中心に 地元の民間企業、事業所を中心としたプロジェクト参加の事業計画をどのよ うに立案し、実践すればよいかを提案する。マーケティング及び事業コミュ ニケーション戦略を検討する論文である。. 2 .漢方のメッカ推進プロジェクトの狙いと新たな価値開発 ⑴ プロジェクトの構築の目的と経緯 「奈良県における『漢方のメッカ推進プロジェクト』の取組について」とい う奈良県知事公室橋本安弘の論文に今回のプロジェクト立ち上げの趣旨が述 べられている。 「奈良県は、漢方に関して奈良・飛鳥時代にまで遡る文化的、 歴史的な背景を多く有している。そして、近年は地場産業として、配置薬業 が発展してきた他府県にはない特徴がある。本県にゆかりの深い漢方につい て、原料となる生薬の生産拡大から、関連する商品、サービスの創出などに (注 14) 向けた総合的な取り組み」 という目論見があることが分る。なぜ、 「漢方. のメッカ」と名付けたかも頷けるのである。また、横断的と奈良県が自ら主 張しているようにプロジェクトの対象領域の広がりを次のように説明する。 「漢方は農業から医療、食品、化粧品などにも深く関係する裾野の広い産業 分野である。奈良県ならではの漢方分野の蓄積を活かし、生薬の供給拡大か ら関連する商品・サービスの創出等に向けて、漢方の産業化を進めることで、 (注 15) 県全体の活性化を図ることが出来る」 というビジョンである。県の今回の. 意気込には、必勝あるのみとの周到さと、包囲網と集中力を感じさせる。 そしてプロジェクトの運営組織は、このように形成されたのである。 「奈良 県では、2012 年 12 月に、産業・雇用振興部、医療政策部、農林部、地域振 興部、奈良県立医科大学などからなる部局横断的な「漢方のメッカ推進プロ (注 16) ジェクト」 を立ち上げたという趣旨が述べられている。. 「本プロジェクトの推進に際して、慶応義塾大学教授の渡辺賢治先生を奈良 県漢方推進顧問及び奈良県医科大学客員教授(現在は特任教授)として迎え、 (注 17) また、本プロジェクトを統括する知事公室審議官が設置された。 」 ことで. 8.

(5) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. 奈良県活性化の推進組織は、頭脳も身体も整い現在、稼働している。 紹介した「奈良県における『漢方のメッカ推進プロジェクト』の取組につい て」では、 「奈良とくすりの歴史」についてもわかりやくす記述されている。 「国内の薬用作物栽培」に関する言及のみを確認し、 「森野旧薬園」などに繋が (注 18) る江戸期については、 『奈良薬業史通史編』 に詳しいが後に述べる。. 「奈良県とくすりの関わりは、深い。人類は大昔から草や木などの天然物か ら身体に効くものを模索し、生薬として利用してきた。日本においても、生 薬の確保・安定供給は、昔から重要な課題であり、中国等から生薬を輸入す (注 19) る一方、国内で薬用作物の栽培・採取が試みられた」 とあり、当然ながら. 奈良での薬用作物栽培を俄かに開始するものでないことを明記している。言 うまでもなく重要な伝統産業だったことが思い知らされるのである。. ⑵ プロジェクトの数値目標についての確認 (注 20) まず、奈良県薬務課のデータにより「奈良県の医療品産業の現状」 を把. 握する。平成 25 年の薬事工業生産動態統計調査によれば下記のような基礎統 計が見られる。 「 ①奈良県の製造業に占める医薬品産業の割合 医薬品生産金額 485 億円 2.6% ②全国及び奈良県の漢方製剤の市場規模 医薬品全体の生産額に占める漢方薬の割合 全国では、約 2.2%(@ 漢方 1,493 億円÷全体 6 兆 8,940 億円) 奈良県では、約 8.0%(漢方 39 億円÷全体 485 億円) ③奈良県の医療品産業に従事する人数 正規授業者 2,568 人 臨時従業者 延べ 1,174 人 ④奈良県の医療品製造従業所(H25 年 3 月末) 医療品製造事業所は 73 社内、漢方薬製剤を製造 18 社 (注 21) ※「漢方の医学体系に基づく処方からなる薬剤」. 生薬含有製剤を製造は 54 社 地域創造学研究. 9.

(6) 論文. ※「漢方の医学体系に基づかず、個々の生薬の効能から処方を構成す (注 22) る薬剤」. ⑤都道府県別の漢方製剤生産順位(H22 薬事工業生産動態統計調査) 医薬用 4 位(茨城県、静岡県、富山県に次ぐ) 一般用 3 位(富山県、大阪府に次ぐ)金額ベースで 3 府県約 80% を占 める . 」. ⑥大和トウキ(根)の場合の栽培から商品開発による産業の振興. (注 22). 〈成果目標〉 大和トウキ(根)の生産量アップ H28 年 生産量 4.5 トン 優良品種の育成、省力化・多収生産技術を進め、大和トウキの生産量 を H22 の 3 倍に拡大 H35 年 45.0 トン 過去 35 年間の奈良県において、大和トウキの生産量がピークであった (注 23) S57、S58 頃の平均生産量」. 県内薬用作物の中で大和トウキ栽培をビジネスモデルにしていく計画は、 2011 年から取り組まれたようで、前出の橋本安弘論文に経緯が記述されてい る。プロジェクトの川上の農業法人での技術試作が前提になっているのであ る。 「2013 年度までに、五条市、明日香村、黒滝村(以上トウキ) 、下北村(ジ オウ) 、十津川村(トウキ、サイコ) 、下北町(シャクヤク)の 6 市町村が栽培 に取り組んだ。引き続き 2014 年度は、葛城市(トウキ、シャクヤク) 、明日 香村(サイコ、シャクヤク) 、高取町(トウキ) 、下市町(シャクヤク)の 4 市 町村が、農業研究センターで開発された技術の導入や高品質安定生産に取り 組んでいる。−中略―農業研究開発センターの研究成果を踏まえ、薬用作物 栽培に熱心に取り組む農業生産法人を対象に経営分析を行い、この結果にも とづき、2017 年度を目途に、トウキ栽培において経営的に継続できるビジネ (注 24) スモデルについて検証していく予定である。 」 ということで川上での高品. 質管理と安全性を目標に厳格であることが理解できる。 「漢方メッカ推進プロ ジェクト」の連携において奈良の漢方薬の強みである高品質を川上から川下 の主に製薬業まで一貫して保持してゆけるか、その仕組みを次の課題として 10.

(7) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. 考察する。. ⑶ 「漢方メッカ推進プロジェクト」の 4 ステップと新価値連鎖. 上記図解奈良県ホームページより引用(注 25) プロジェクトの構成は 4 ステージに分かれている。4 つを貫いているポリ シーは、 「生産から販売までの一貫体制の構築」という目標である。 ステージ 1 「生産の供給拡大」 ステージ 2 「漢方薬等の製造」 ステージ 3 「漢方薬等の研究・臨床」 ステージ 4 「漢方の普及」 平成 26 年度の進捗状況を奈良県は、 「漢方の産業興し」としてネットで報告 しており、上記の図式は、これまでの課題と現状を踏まえた問題解決の連鎖 図ともいえるだろう。4 ステージのそれぞれの目標と課題、26 年度における 取組の状況を検証する。 「ステージ 1」が重要である。 (注 26) 「大和(奈良県)の生薬は品質が良い有名」 という大事な強みを新製品. 地域創造学研究. 11.

(8) 論文. 開発にも貫くため、試行錯誤の努力が必要であり、慎重な作業が実施されて いるようである。紹介するには、紙数を要する。幸い、26 年度における取組 の報告は、簡潔なので、見出しのみを記入するにとどめる。 当然のことながら今回のプロジェクトは第六次産業化が基本であるから 「農」から始まる。通常の工業製品の生産拡大プロジェクトでないことを重ね て認識すべきである。薬草作物は主軸として「今まで使われていなかったト (注 27) ウキ葉を活用」 しようというのである。農業を川上と考え、製薬業を川下. と考えるシステムであることを承知されたい。 「ステージ 1」で実施されていること及び課題 =「①薬用作業の安定供給に係 る研究の高度化、②薬用作物生産に関わる人材確保、③農業法人の薬用作物 栽培の検証、④種苗供給バリュチェーンの構築(優良な種苗の生産、供給体 (注 28) 制の構築を目指す) 」 という実働により「生産の供給拡大」への成果を求め. ている段階である。 「ステージ 2」で実行されていること及び課題 =「生薬製剤、漢方薬等の製 造・販売促進、①川下企業の生薬原料ニーズの調査、②川上と川下のマッチ ング支援、③県産薬用作物を使用して企業の製品開発の支援(例、新ならこ すめ(化粧品) ) 、④漢方関連製品の商品化に向けた加工技術の研究(例、ト (注 29) ウキ葉の食への応用) 」 、このステップにおいて、地元の医薬品製造企業. の役割に焦点が当てられる。また、今回のプロジェクトで注目すべきことは、 化粧品や食物といった製薬以外の分野にも開発の可能性が及び活性化が領域 拡大することである。 漢方薬の見直しと共に、エコロジーな生活改革の一環として薬草が応用さ れると言うことは、新価値の開発分野とすることが出来る。 「ステージ 3」で実行されつつある問題解決 =「①大和生薬の品質の数値化と 薬効研究、②大和漢方医学薬学センター(県立医大) (漢方医学薬学に関する (注 30) 教育・研究・診察) 」 。課題の根底にある「生薬に関するエビデンスが科 (注 31) 学的に確立していない」 という問題は多くの消費者の医療常識を意識改善. させることなので、容易に解消させられない。厳しい課題である。 「ステージ 3」の役割が設定され、改善へ近づくことになる。 12.

(9) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. 「ステージ 4」で実行されている啓蒙及び PR 活動 =「 「漢方薬に関する正確 (注 32) な情報が知られていない」 という現状を改善するために「漢方の認知度向. 上」を目標としたイベントが回を重ねて実施されている。 「①漢方薬シンポジ ウムの開催、②薬剤師等向けの漢方研修会、③漢方薬や生薬に関する広報・ (注 33) 周知、④学会、展示会等での広報」 。このステップ 4 での活動は、医師な. どの専門家対象から一般市民まで幅広い人々への訴求が考えられており、日 本の漢方薬の専門家が努力を尽くしたにもかかわらず力及ばなかった課題で ある。更なるきめ細かいイベントや販売促進アイディアを開発しなければな らないだろう。医療マーケティング戦略における広報や広告の役割であり、 コミュニケーション戦略の説得力の領域といえる。 . 3 .漢方のメッカ推進プロジェクトへ民間企業の取組み ⑴ 奈良薬業業界の柔軟な対応、参画、棲み分けが望ましい 奈良県立商科大学時代の元教授であった橋爪勝次は、 『奈良県薬業史通史編』 (注 34) 第七章「第二次世界大戦後の薬業」 を執筆されたが「奈良県内薬用植物栽. 培分布図」を載せて、戦後の「薬用資源の増産」対策について触れている。い わば歴史は繰り返すということであろうか。 「一九四八年(昭和二三)には薬 用資源の増産を期するため、奈良県薬草増産対策協議会が設置され、委員と して関係官庁の職員・県議会員・市長村長・関係団体・学識経験者が委嘱さ れ、薬草栽培の総合計画、薬草の利用啓発、栽培の実施指導などについての (注 35) ことが協議され、業界の発展に大きな役割りを果たした」 とある。次の. 一九五五年(昭和三〇)以降の「成長時代の薬業」を成功に誘導した準備戦略 となったことが覗える。 経済状況も漢方薬の市場におけるポジショニングも異なる現在と同一視で きないが奈良県が一丸となって実行し成果をあげた過去の軌跡は先人の功績 であろう。 『奈良県薬業史通史編』第七章には、その後、現実的な奈良薬業界 の「調査報告」が例えば、昭和 55 年、57 年と記録されている(注 36)。現在も解 決されていない問題点も残存しているだろう。漢方薬需要の増加を見込める 今回の市場機運に乗じて各事業所がそれぞれの強みを発揮できる棲み分けを 地域創造学研究. 13.

(10) 論文. 行い新機軸へ挑む。慎重さと大胆さ、各事業所の特色に見合った能力の発揮 が望ましい。急な行政指導への挑戦だからと云って失敗は許されない。. ⑵ 神奈川、富山、奈良の連携により 10 兆円産業創出 平成 25 年 12 月 18 日、 「一般社団法人産業化推進研究会」設立記者発表が行 われ新聞各紙に記事が掲載された。このたび、神奈川県・富山県・奈良県を 中心に自治体および企業が連携し、漢方の産業化をテーマとして薬草栽培か ら製品化や周辺医療機器・システムの開発、さらには海外展開をも見据えた 新たな組織として、 「一般社団法人漢方産業化推進研究会(仮称) 」を正式に 立ち上げる運びとなりました。この研究会をきっかけとして、先進的な 3 自 治体とイノベーティブな企業群が協働し、世界に発信する次世代ヘルスケア モデルを構築するとともに、日本再興に向けた大きな産業へと躍進させてい (注 37) きます」 と記者発表資料には宣言されている。発表された 10 兆円産業の. 市場規模をめざす。注目すべきは研究会へ参加した民間会社の顔ぶれである。 「先進的な取り組みをしている 3 県と食品、製薬会社など約 20 社で構成。三菱 商事や JR 東日本、富士通、リゾートトラスト、パナソニックなども含まれて おり、漢方薬の研究や生産から輸出、診療、診察まで見据えて今後も幅広い (注 38) 業種の参加を求める」 と富山新聞は記事を書いている。. 問い合わせ先、事務局は、株式会社三菱総合研究所である。設立提唱者の 慶応義塾大学教授の渡辺賢治は、民間企業が主体的に推進すべきだという。 ただし、 「漢方のメッカ推進プロジェクト」が市場を求めるにも、生産拡大の 知恵を求めるにも奈良県内に留まらない協働ネットワークを組めるのは力強 い。この「漢方産業化推進研究会」のセミナー「なぜ漢方産業なのか」という 講演をした渡辺賢治教授は、 「漢方でこの国の 6 次産業化をする」とビジョン を語った。 「地元創生で、薬草・薬木栽培が注目されており、既に多くの地域 で作り始めている。しかしながら出口戦略と一緒に進めないとせっかく作っ (注 39) ても売れない。 」 であるから「薬草・薬栽培の出口戦略を徹底的に」とい. う。 「①保険医療用、②自由診療医療用、③一般用薬、④健康食品、⑤海外向 け(一般用、健康食品) 」と具体的な形にすべき医薬品を分類し事例として挙 14.

(11) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. げている。まさにこの「出口戦略」をおろそかにしないことがマーケティング の役割である。迅速に、包括的に、見える化の分りやすさでプロジェクトは 進められているが民間事業の戦略について後に、再度検討したい。. 4 .高齢化社会を予測した新医薬品産業ビジョンは 2007 年に発表 グローバル化の波が漢方薬に来たというか中国の原料輸出制限により、国 内薬草栽培が再開された。同時に高齢化の波は、急ピッチで押し寄せて来て いる。まず、10 年前に予測された医療産業のビジョンを考察する。 東京大学大学院において開催された医療経営学の公開講座の記録『プロた ちが語る「医療ビジネス」医薬品産業日本の競争力』木村廣道監修(注 40)によ れば次のようなパースペクティブがあったようである。木村廣道の報告から 始まる。 「本講座の主題である「新医療品産業ビジョン」についてすでに目を 通された方も多いと思います。2007 年 7 月 23 日に厚生労働省が発表した「国 際的に魅力ある創薬環境・医療品市場の実現及び医療品産業の国際競争力を 強化する」ための提言で、医薬品にかかわる仕事をされている方々にとって はもちろんのこと、多くの国民にとってきわめて重要な意味をもつものです」 という。また、現在、マスコミでも喧しくいわれるようになった「予防・. (注 41). (注 42) 健康市場が本格始動した」 という予測がなされていた。. 「日本は世界一の長寿国になりました。これによって新規の事業機会が創出 され、特に予防・健康市場の「本格始動」が顕著になるだろうと考えられて (注 43) (注 44) います。 」 といい、 「変化する製薬ビジネスモデル」 への言及からすと、. 当時は、先端医療を視野に入れてのことかと思われたのが、 「漢方薬」が視野 に入って来たとは、驚きである。 「医療は、基礎研究、探索研究、臨床開発、 製造、販売という一連の専門化されたモジュールの連鎖でビジネスが成り立っ ています。日本でも最近の規制緩和により、研究支援型サービス、受託臨床 受託業、製造受託業、委託販売業の設立が活発になりました。この動きに呼 応して、これまで自前主義の強かった日本の製薬業界でもアウトソーシング (注 46) が定着してきました。 」 と奈良での推進プロジェクトの価値連鎖、分業化. と連携システムも予測されていたような先見的発言である。 地域創造学研究. 15.

(12) 論文. 最も大事な意見は、 「医薬品産業の課題」として今後の医療市場の重要性 を述べたところにある。 「医療における「当座の目標」は、新しい社会システ ムに大幅なデザイン変更をし、団塊の世代が後期高齢者(75 歳以上)となる 2022 年以降の社会を軟着陸して迎えることにあります。今後の、この世代が 医療市場の主役となる時代がやってきます。彼らが後期高齢者になるまであ (注 47) と十数年。タイムリミットはすでに設定されています」 と社会的課題だと. まで断言しており、ビジネスとしての医療のみに焦点を当てていては立ち行 かないような見解である。この公開講座でアステラ製薬(株)代表取締役社長 (注 48) 野木森雅郁の講演は、 「医薬品産業の社会への貢献」 で、意外な見解を述. べている。 「医薬には、ハーブ(薬草)由来もの、発酵から生まれたもの、化 学合成から生まれたものなど、さまざまな種類がありますが、歴史的にみて 医薬品に大きな成長が認めら得たのは(日本で言う)戦後以降のことです。医 薬品および医療の進歩が大きく進展したのは、わずか 20 世紀後半の 50、60 (注 49) 年のことなのです」 という。現在の「医薬品および医療」を成熟した頑強. なシステムと見据えるのみでは改革ができないのだと思わせられる。10 年前 に準備されていた健康寿命延命の課題による高齢者医療が脚光を浴びている。 木村廣道が事例を挙げている「介護予防診断」 、 「雇主は従業員に健康診断を (注 50) 受けさせなければならない」 などの義務づけは、定着し始めている。. 配置薬業の顧客も家庭中心から企業、団体などの組織対象へ市場を移しつ つある。現在、企業内で健康管理経営が叫ばれている。. ⑴ 「高齢者の虚弱フレイルその対処法と漢方」 2015 年 9 月 5 日(14:00 〜 15:00)NHKE テレで放送された「高齢者の虚弱 フレイルその対処法と漢方」というシンポジウムなどは、高齢者に漢方薬の 効用を教育するタイムリーな番組であった。 「高齢者の虚弱フレイル」という 聞きなれない専門用語を初めて耳にした。 「日本老年医学会は、高齢になって筋力や活力が衰えた段階を「フレイル」 と名付け、予防に取り組むとする提言をまとめた。これまでは「老化現象」と して見過ごされてきたが、統一した名称をつくることで医療や介護の現場の 16.

(13) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. 意識改革を目指している。フレイルは「虚弱」を意味する英語「frailty」から 来ている。健康と病気の「中間的な段階」で、提言では、75 歳以上の多くは (注 51) この段階を経て要介護状態に陥るとしている。 」 という日本老年医学会の. 提言解説がされている。 この高齢者の虚弱体質にどうすれば漢方薬が有効に作用するのか考えて見 たい。ここに二人の専門家の意見がある。 「漢方には未病という考え方がある」 「漢方医学には未病という概念があり、フレイルと同様に健康と病気の中間的 病態と定義されます。未病に対する漢方医学による治療目標は、単なる予防 医学だけではなく、医食同源をはじめとする養生法により、身体を健常な状 態に戻すことにあります。フレイルの治療には、身体的、精神・心理的、社 会的側面からのアプローチが必要とされます。それ故、心身一如を主眼とす る漢方医学は、フレイルに対して大変有効な治療手段であると思います。現 代医学において、フレイルの研究はまだまだ発展途上であり、漢方医学がこ の領域で果たすべき役割を、今後模索していく必要があると思っています」 ( 「漢方よもやま話 : フレイルと漢方」 ( 「谷川醫院」院長、谷川聖明 = 富山市・ 毎日新聞」(2014 年 12 月 04 日 地方版)。 もう一つ、渡辺教授の高齢者医療に漢方薬が適していると言う意見がある。 先に紹介した「一般社団法人産業化推進研究会」での講演の中において「高齢 (注 52) 者医療における漢方の役割」 を教授は、こう述べている。. 「①病気ではなく人を治す」 、 「②よって年齢・性別・疾患に関らず治療。三 代を診ることもしばしば」 、 「③複合物である漢方薬は複数のターゲットを持っ ていて、複数の疾患を持っていても一つの漢方薬で対応するのが原則」 、 「④ 個別化医療であり、個人個人の体質や社会状況に合わせた治療を行う」 (前出 「なぜ漢方産業化なのか」ネットより引用。番号は執筆者が付記) 。ここでは、 高齢者フレイルに限定した漢方薬の治療についての意見ではないが、西洋薬 の概念とはおおよそ根本的に異なる効能であり、便益性である。ちなみに渡 辺教授は、再度、紹介する「一般社団法人産業化推進研究会」主催のセミナー (注 53) において「漢方医療の強み」 このように要約している。. 地域創造学研究. 17.

(14) 論文. ⑵ 「漢方医療の強み」と「東西医療が融合した世界」 「①生体をシステムとして治療できる(不眠、食欲不振、便秘)高齢社会で のニーズの高まり、②東西医療が融合した世界でもユニークな医療モデル。 世界に類のない新しい医療を創生、③ジャパンブランドの最高品質の生薬お よび製剤。欧米およびアジア富裕層からの絶対の信頼⇒日本が世界にリード (注 54) できる貴重な素材」 渡辺教授の発言の中でも注目されるのが、 「高齢社会. でのニーズの高まり」という漢方薬市場の増大を予測した大胆な見解である。 今後は、富裕層の漢方活用という方向でなく、裾野が広がる大衆薬としての 普及も望みたい。高齢者の総人口が漢方薬支持者に転向するとは予想しがた い。 (株)野村総合研究所、森田哲明論文「国際的な拡大の可能性を秘めた漢 (注 55) 方―漢方薬業の概況と今後の発展に向けた課題―」 では、高齢者の健康に. 対する関心度により漢方活用の傾向が強いと推定する。 「 「年代別にみると年 代が高くなるほど健康に対する関心が高い」 、 「NRI が実施したアンケートに (注 56) よると健康に対する意識が高い人は 6 割弱存在する。 」 とデータ結果を解. 読している。大掴みな見解だが「高齢社会でのニーズの高まり」傾向において 「健康に関心の高い 6 割弱」の消費者が漢方薬需要の潜在顧客になりうる可能 性があるということである。. ⑶ 「高齢者疾患に適応する漢方処方」の薬の選択 先に挙げた『奈良県薬業史』 (通史編)における「奈良県内服用植物栽培地 (注 57) 分布図」 によれば、奈良県南部山間地の薬草分布は、多様で豊富である。. いずれの薬草がどんな疾病に効くかということを知ることと高齢者疾患に結 び付けられることが原点ながら、新たな製薬開発の基礎知識になる。 『すぐに使える漢方薬入門―自分にあう漢方薬の選び方』 (関水康彰著、技 術評論社、2015 年刊)は、 「高齢者疾患に適応する漢方処方」という第九章を 設けている。具体的な漢方薬との結びつけは、次のようにガイドをしている。 「高齢者では、免疫能が低下しているケースが一般的です。西洋医薬には、免 疫賦活作用をもつ薬は少ないのですが、漢方薬には十全大補湯、補中益気湯、 四君子湯、小柴胡湯、人参養栄湯、八味地黄丸、牛車腎気丸など免疫賦活作 18.

(15) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略 (注 58) 用をもつ処方が多くあり、生体防御力を強める効果があります」 というよ. うに漢方薬がどのような疾患に効用があるかを知らせるのも、入門、初級段 階での今後の「薬育」の課題である。 また、 『体質・症状・病気で選ぶ漢方薬の手引き』 (永田勝太郎監修、小学 館、2006 年刊)には、 「漢方薬に配合されているおもな生薬」の一覧が集めら れている。 「漢方薬の素材となるものが生薬です。生薬は、天然の植物、動物、 鉱物を原料としています。漢方薬には、生薬を単独で使うことはほとんどな (注 59) く、二種類以上の生薬を組み合わせて用います」 という。詳細な生薬の組. み合わせは、薬剤師の専門知識になるが製品開発の際には、大学薬学部研究 センターの新薬開発の助言が必要になる。協働連携が前提である。 今回のプロジェクトの最終顧客ターゲットを高齢者ということに絞り込み、 川下のマーケティング及びコミュニケーション戦略のプラニングをどのよう にすればよいか提案する。川下とは、製薬業を中心とした地元事業所のなす べき経営戦略と市場創造の実際的な施策の考え方についてである。. 5 .高齢者漢方薬ニーズへ向けてのマーケティング及びコミュニケーション 戦略の仕組みと実際 ⑴ プロジェクト全体の構想、個別事業体戦略、消費者への薬育 ①「漢方のメッカ推進プロジェクト」全体のマーケティング及びコミュニ ケーション⇒第六次産業化の連携内容をまとめて表現したダイナミズムを継 続しなければならない。立ち上げの総合戦略の広報は、効果的に伝達されて いる。県推進本部の考案すべき仕事であるが今後、稼働する個別事業体のビ ジネスと躍動感ある調和を見せなければならない。バラバラにならない法則 を取り決めておく必要がある。推進システムと個別事業の協働性を常に意識 するべきであろう。 ②個別事業体戦略におけるマーケティング⇒今回の論文では、プロジェク トへ参画する個々の事業を成功に導くための方策を基本から検討する。高齢 者を購入者ターゲットに見据えて、どのような思考回路を取るべきか基本の 取組順序を紹介する。これまでのビジネス界の経験からするとたとえは、大 地域創造学研究. 19.

(16) 論文. まかであるが「万国博覧会」における推進本部と参加スポンサーのような位 置づけになるだろう。個別事業体の需要者獲得の方法について後に触れたい。 参画企業での個性発揮が大事な課題になる。 ③消費者への薬育⇒従来は西洋薬でも薬局と呼んだ小売店で相談をしなが ら大衆薬を購入した。元暦元年創業から 24 代続く奈良町菊岡薬局は、現在で も相談に応じる薬店である。漢方薬の価値見直しの市場を創造するために大 勢の人口に普及させる「薬育」と、購入見込層へ深堀の啓蒙をする目的別の活 動が望ましい。逆転の顧客ニーズからマーケティング戦略発想を取る「マー ケット・イン」の手法で考える。顧客にすれば漢方薬は、新しい価値の医療 品で、従来の医師の処方箋の薬や大衆薬とは異なる欲求で活用しようとして いる。期待を裏切らない顧客満足を第一目的にした仕組みづくりが求められ る。 「エビデンス」に対する科学的根拠を必ずしも示せない場合も漢方薬は効 用を個人単位で診断し、カウンセリングによる服用の提案が行われる。. ⑵ 推進プロジェクトへ参画する事業体のマーケティングプロセス ①「平成 26 年度川上川下のマッチングの状況」に見える市場機会獲得のヒ ント⇒県の実践報告によれば、 「ステージ 2」における「漢方薬等の製造」の領 域に今後の参入企業へのヒントがうかがえる。川上での原料栽培農家での取 組が始まり、川下の薬品会社との国事業や県の栽培指導によるマッチングに より、一例では、 「A 生薬の会」と「D 薬品大阪市」が「ゲンノショウコ」を「医 (注 60) 薬品原料」として「試験栽培」 開始という。平成 26 年川下の声として記録. されているコメントも、前向きな商品開発意欲である。 ②「・ブランド化を進める上で重要なのはコモディティ化(一般化)を避け ること < 製薬会社 >、 ・自社ブランド化を推進し、少々高くても納得し買って (注 61) もらえる商品の開発〈製薬会社〉 」 などの独自製品開発が施行されている。. 川下の製薬会社と奈良県の原料栽培農家が「ヤマトトウキ」 、 「シャクヤク」な ど競合しがちな薬草とは異なる品種を探し、商品化する傾向も生じるであろ (注 62) う。 「下市の漢方史」 というネット情報には、江戸時代からの原料栽培が. 盛んな頃の薬草の種類が挙げられている。ベテランの薬種商が地元に続いて 20.

(17) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. いたことも紹介されていて、市場機会の発掘は、これからである。中小企業 向けのマーケティング手法を適応する企業が多いかと思われるが基本的な市 場環境分析から小売店での販売促進を視野に入れた工程を考える。大手企業 の「ブランド漢方」に拮抗できる結束力が底力になる。 ③マーケティング戦略の立案・実行のプロセスと事業プラン (注 63) 「グロービスビジネススクール」 のシンプルな要約スタイルを借りて戦. 略の順序を紹介する。 「(1)マーケティング環境分析と市場機会の発見 (2)セグメンテーション(市場細分化) (3)ターゲティング(市場の絞り込み) (4)ポジショニング (5)マーケティング・ミックス(4P) (6)マーケティング戦略の実行と評価 」 ①「漢方のメッカ推進プロジェクト」により、漢方薬の地産地消を目標に自 社の強みを活かした事業を起こすには、どのような隙間市場、ニッチ分野を 探すかが重要である。漢方薬にも病院で処方される医薬用もあれば、薬局で 販売される一般用もある。②セグメンテーション(市場細分化)は、漢方薬市 場のどこに棲み分けの領域を発見するかを検討する。③高齢者を標的にする ことは、決定している。だが、富裕層を狙うのか、人口構成の分厚い中間層 を狙うのか漢方薬市場での位置づけを設定しなければならない。④マーケティ ング・ミックスは、製品、価格、流通、販売促進(コミュニケーション)と呼 ばれる眼に見える展開になり経営戦略から生み出されたコンセプトを形にし た実行になる。 「市場におけるチャンスを発見し、顧客を絞り込み、競合より も魅力的な製品・サービスを作り上げた次のステップが、マーケティング・ ミックスである。製品・サービスの価値を損なうことなく顧客に伝えること が求められる。そのために必要な要素が、製品(Product) 、価格(Price) 、流 (注 64) 通(Place) 、コミュニケーション(Promotion)となる。 」 ⑤実行と評価で. は、市場で効果を発揮しないと改善することも必要になり改善の後、再び市 場に問うと言う循環を行う。 地域創造学研究. 21.

(18) 論文. ⑶ 二つの医薬品マーケティング戦略の違いと領域における使い分け あくまで拙稿のマーケティング戦略提案において恣意的にマーケティング 手法を使い分けるのであり、もともと下記のような決まりがあるわけではな い。アメリカからの現場での手法が普及し、わが国に影響している DTC マー ケティングは、医療機関では、今後の課題と言えるあり方である。商品開発 の市場が病院か、一般薬かにより活用領域の違いに鑑み使い分ける。 A. 医療用向け = 従来の医師の処方箋による医薬品選択、 「従来の医療用医 薬品マーケティング・コミュニケーションの流れ、製薬企業⇒卸⇒ド (注 65) クター⇒患者。すべて医療機関のドクター経由で患者に提供」 とい. う仕組みが取られていた。古川隆は、日本での慣習について次のよう に把握している。 「日本における医薬品マーケティングを体系化し著わ した佐賀國一氏は、ユーザーを医師、薬剤師とし、 「ユーザーに働きか ける内容および手段を、企業が持つ資源(ヒト、モノ、カネ、情報、ス キル)の組み合わせにより具体化する政策の内容をプロモーションとい (注 139 頁) う」としている」 との定説を挙げるのである。国内の多くの患者. は医師の勧める医薬品を服用している。 B. 一般医薬品向け =「DTC マーケティング」 「これは Direct to Consumer の略で、製薬企業が疾病や医療用薬品に関する情報を直接医療消費者 (患者、生活者)に伝えていくマーケティング・コミュニケーションの (注67)ということで配置販売業による一般医薬品の販売な ことである。 」. ど DTC マーケティングである。顧客満足第一の営業活動を積み重ねて きた。奈良の配置販売業後退は、流通、販売促進における経営戦略上 の弱みとなった。インターネット新媒体普及による双方伝達の革命が 起こっている。既存のマスコミ 4 媒体と SP 媒体など一方方向伝達利用 は後退した。. ⑷ 個別企業の蓄積を推進プロジェクトの底力に変える ①農家、製薬企業、配置業者の経験が生む新漢方薬⇒推進プロジェクトは 奈良の薬業関連事業の価値連鎖を見える化し、明確なビジョンとして打ち立 22.

(19) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. てた。個別企業は、現実の仕事に置いて顧客ニーズを汲み上げ、それぞれが 創意工夫をし、経営実践を行っている。日常、気付きながらも保留にしてき た新ビジネスの提案を推進プロジェクトへ投げかけて貰えば、個別企業にお いてもイノベーションとなる。現在、まだそのようなプレゼンテーションは、 浮上していない。推進プロジェクトと地場企業の緊密な結びつきが第六次産 業化の成功をもたらすと思われる。地場企業を引き込むリーダーシップの発 揮が求められる。生き残る経営戦略を実践している(株) 三光丸からは学ぶべ き戦術が見て取れる。 「三光丸は一般に「置き薬屋さん」といわれる配置員を 通して、独特の形式で販売される配置家庭薬です。現在、三光丸では約 300 の配置販売業者、約 700 人の配置員が、配置先の都道府県知事の免許を受け、 全国 100 万世帯を年 2 〜 4 回の割で回商しています。 」(注 68)という企業行動力 は抜きん出ている。老舗に安住しないイノベーションが見られる。 「三光丸ク スリ資料館」は貴重な「薬草と配置薬のミュージアム」である。 ②自社の強みを活かせばビジネス創造の可能性が開かれる⇒奈良の製薬業 は約 100 社存在する(注 69)と三光丸社のホームページに書かれている。 株式会社三光丸の 700 年の伝統的ある漢方薬づくりの技術、GHP 適合の近 代工場の設備、全国的知名度狙うブランド戦略(大相撲の懸賞広告は現在も 継続) 、配置薬業としての販売網と共に今後の生き残りを学ぶべき企業である。 ホームページを開設し自社の強みを訴求しているワキ製薬社は、GMP 取得奈 良県第一号の認可工場を備え、ミミズを原料にするなど技術開発でもレベル が高い(注 70)。佐藤薬品工業は、60 社からの生産受託の実績を誇る(注 71)。この ような強みを協働連鎖させていくと独自の新製品と流通ルート、販売網が開 拓される。ちなみに上記 GHP とは、 「医薬品の製造および品質に関する基準」 のことである。. (注 72). ③高品質保持の商品開発と販売網開拓の事例 A1.高品質の新製品⇒産官学共同開発による初の奈良ブランド医薬品「天平 宝漢」⇒配置業界の現況を改善する目的で開発された(・規制緩和によ る医薬品販売制度の見直し(コンビニでの販売展開) ・ドラッグストア などの大手量販店の進出・配置従業員者の高齢化と後継者不足) 地域創造学研究. 23.

(20) 論文. A2. 全国知事会ホームページに次のような PR 記事が掲載された。 「伸び悩 む配置薬業界の活性化を目的として平成 15 年度より産官学(奈良県製 薬協同組合、奈良県、京都薬科大学)の共同で新しい配置薬「奈良ブラ ンド医薬品」を開発し、平成 18 年 8 月に発売を開始しました。本製品 にはニンジンを主薬成分として奈良にゆかりのある 14 種類の和漢生薬 が配合されており、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲 不振、血色不良、冷え症などの滋養強壮としての効能効果がございま す。なお、現在、市販後の有効性・安全性を担保するために長期安定 性試験を実施しております」(注 73). というもので、推進プロジェクトに先駆けて開発された新製品である。 愛用者からの声がネットに見られるが服用効果が明らかだという。. B. ロート製薬の食品開発事例⇒トウキの葉を「サラダ」や「スムージー」 に応用。食品分野で新ビジネスを実践した記事が 2015 年 9 月 18 日に日 本経済新聞記事に掲載された。こちらは、推進プロジェクト開始以降 の快挙である。 「奈良産「トウキ」有効活用―東京・渋谷で自社が運営 する飲食店で漢方薬の葉を使った料理を提供する。10 月 12 日までの期 間限定で、消費者の反応を検証する。−中略―ロートは 3 月に奈良県と 漢方薬の栽培や関連産業の振興で連携・協定を結んでおり、今回の料 理の提供は実際の取組みの第一弾となる」と紹介されている。ロート製 薬ではないが食品、化粧品などの薬用以外の開発事例もすでに推進プ ロジェクトホームページに掲載されている(注 74)。推進プロジェクトの 価値連鎖と多様な参画企業の動きで奈良県の地場産業を基盤とした底 上げがなされることの先進事例と考えたい。. 6 .観光ツアー、奈良のくすり PR を兼ねた漢方薬の産業遺産活用 ⑴ 流通、販売促進、コミュニケーションと推進プロジェクト 配置薬業と製薬業を両立させてきた会社が存在する奈良の薬業界は、いわ ば製造販売を一貫し、マーケティング・ミックス、4P を自社で完結する形で 家業を継続してきた。ワキ製薬は明治以来 100 年以上の薬業の歴史を経てい 24.

(21) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. るが現在は、製薬業が中心である。登録販売員というかたちで委託社員を雇 い、配置業に変わる流通、販売促進の機能も現代化(注 75)している。自社完結 した製造から販売までの一貫作業が当たり前のせいか奈良産業はすべからく (注 76) 流通が弱い。データによれば、一般小売店販売額も全国下位に入る。 そこ. で観光イベントを販売促進に活用すべきと考えた。漢方薬産地の現場を見学 しつつ、薬育を受ける高齢者むけのグリーン・ツーリズム企画を提案したい。 個人対象と企業対象の両方が考えられる。健康管理経営を実行する企業が大 手を中心に増大している。漢方薬を企業に普及させる販促を企画も必要。見 学会のような一般イベントに企業人を参加させる。イベントのスポンサード にロート製薬の協賛を依頼するなど考えられる。. ⑵ ロート製薬は会社全体に「健康」を考えた事業促進 奈良県と「漢方のメッカ推進プロジェクト」を中心とした連携をめざして奈 良県との包括協定を 2015 年 3 月 16 日締結した。ロート製薬のホームページに 告知されたが趣旨は、 「健康寿命を延ばす」ことを目標に掲げ、社員・商品・ サービス等で「 「健康」を考えた事業推進を行って」(注 77)いるという。連携内 容に「・経営が成り立つ薬草栽培のビジネスモデルの構築への協力、 ・県産薬 草を用いた健康食品などの商品化への促進・一般県民向け漢方・薬草セミナー への協力」などを挙げており、イベント企画しだいでは、スポンサー協力も 可能ではないだろうか。もちろん奈良県主催の「推進プロジェクト」を PR し、 参画企業の新事業を宣伝するための見学ツアーである。. ⑶ 流通、販売促進、コミュニケーションと医療用医薬品マーケティング マーケティング手法における「コミュニケーション手段」について米国でも 日本でも「営業部隊」の活躍が重要であったようである。マーケティングの権 威者コトラーの考え方が引用されて米国の販促が紹介されている。 「コミュニケーション手段を広告、SP(セールス・プロモーション) 、PR(パ ブリック・リレーションズ) 、営業部隊、ダイレクト・マーケティングの 5 つ に分けている。―中略―DTC 発祥以前の米国でも、この 5 つのコミュニケー 地域創造学研究. 25.

(22) 論文. ション手段のうち営業部隊による活動が、医薬品のマーケティング・コミュ ニケーションにおいて特に大きなウエイトを占めていたことを物語っている」 ということである。西洋医学で解消しないと言われる高齢者の虚弱フレ. (注 78). イルに適応する漢方薬を選択するのは、もはや医師の処方箋のみの役割とは 限らない。高齢者ニーズを消費者のモチベーションにより誘導する方法があ る。患者、生活者の「奈良のくすり」に関する信頼を高めるには、伝統的な生 産の場、産業遺産を目のあたりにするのが第一ではなかろうか。本稿執筆者 もフィールドワークで地元に触れたことが原点である。. ⑷ 「奈良のくすり」産地見学ツアーのコース別分類 ①入門コース [ 三光丸資料館→高取くすり館(夢創館)→大一薬品→太陽堂 製薬など観光とくすりの町を見学 ] ②薬草栽培地コース [ 下市のトウキなど薬 草栽培→芍薬の花盛りには観光地に→薬種商として有名な家を見学→吉野山 「陀羅尼助」の製薬会社見学 ] ③薬草園見学コース [ 春日退社神苑萬葉植物園→ 奈良県薬事研究センター薬用植物見本園→森野旧薬園→田村薬草園(田村薬 品工業株式会社)] ④宇陀松山くすりの町見学コース [ 森野旧薬園→薬の館→ 松山の町並み→菟田野の薬草採集 ] 粗くまとめたが以下、①から⑤までの要点 を述べる。その前に高齢購入潜在見込み客にどのような関心をもたらすか検 討する。 A. 〈奈良のくすりの産業遺産から得る薬育〉①漢方薬の売薬が経済として 盛んであった。②古代から受け継がれる漢方薬への取組と歴史を実感 ③生命、健康長寿延命の課題は現在に始まったことではない。④漢方 薬の原料が自然から育まれたという再確認④奈良の山間地という薬草 に適した風土⑤(株)三光丸のように 700 年の伝統を受け継ぎ、全国に 配置業のネットを持ち生き続けている企業が活躍。消費者の支持が持 続したことの証明である。⑥奈良のくすりの固定顧客と潜在顧客の交 流会や消費者間研究会を結成し見学会などの機会に、体験報告や質疑 応答、一般医薬品 PR などの場にする。消費者ニーズを組み取る機会に もなる。安心して服用できる漢方薬の情報交換会の組織づくりが販売 26.

(23) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. 促進のツールとしても PR 対象としても必須である。会合のネーミング は「漢方薬お試し意見交換会」 、 「奈良のくすり応援隊」 、 「漢方薬の健康 道場」などの仮案が考えられる。 B. 上記見学コースの見どころ①(株)三光丸クスリ資料館 = 薬草と配置薬 のミュージアムと呼ばれ奈良の薬業の歴史が世代に関係なく学べる施 くすりがり. 設。宇陀とともに推古天皇が「薬猟」をされたという高取町である(注 。現在の製薬業の原点を土佐街道の町並みに確認できる(注 80)。②下. 79). 市は江戸時代、宇陀と共に盛んであった。当地と関連があるのが将軍 吉宗に派遣された植村佐平次政勝である。 「売薬業の興隆にともなって、 薬草の栽培もしだいにさかんになるが、大和では、瀑布の採薬使植村 佐平次の採薬調査、その結果としての森野・下市両薬園の開設が大き な刺激になった」(注 81)と前出の『奈良県薬業史通史編』に奈良教育大学 名誉教授木村博一が記述している。③葛城山の麓の御所にある田村薬 草園では標本園 8,440㎡にて 550 種の薬草(注 82)が見られる。④森野旧薬 園は、宇陀松山旧伊勢本街道の町並みに今も営業している森野吉野葛 本舗の敷地内に保存されている。約 600㎡の山肌に薬草木が植えられ ている。 「春はカタクリ、夏はオニユリ、秋はサフラン、冬はフクジュ ソウなど」(注 83)現在は、観光スポットとしても訪れる人が多い。前出、 『奈良県薬業史通史編』にカラー印刷で江戸時代の当主森野通貞画「松 山本草」薬草図鑑が掲載されている。歴史に興味を持っておられない方 も植物画の美しさには驚かれるだろう。将軍吉宗も来訪したと聞くが 園を歩けば書斎と茶室もあり、森野通貞の江戸時代におけるベンチャー 起業家ぶりが伺える。宇陀市歴史文化館「薬の館」は、江戸時代の薬問 屋を公開。藤沢薬品との関わり、大阪道修町との縁も知ることができ くすりりょう. て興味深い。 「菟田野」は古代に薬猟されたと日本書紀に書かれている。 奈良のくすりの産業遺産をめぐると、いかに人海戦術の集積であるか が理解できる。格子作りに虫籠窓の民家の町並みを歩いていると金沢 などの小京都を思い出させる。やはり、漢方薬が高価であることも頷 けるのである。人手をかけないと良質の品質は容易に確保できないが、 地域創造学研究. 27.

(24) 論文. 現代に通用させられる効用も多い。現代に再生させる際の問題点やジ レンマに気づく。担い手の育成も今後の課題であろう。. 7 .結論 = 奈良の漢方業による第六次産業化の課題と問題点 ⑴ 推進プロジェクトへの参画における棲み分けシステム 個別企業間の棲み分けが有機的に成立するような参画の方法はないだろう か。 「推進プロジェクト」へ参加意欲を強く表明している事例を捉えてみると 2013 年創立の若い企業(注 84)である。 「 (株) 健康野菜の宇陀農園」は、 「宇陀市 と連携」できる自社の強みがあるという。中堅企業は、参画に慎重である。 企業秘密が漏れたり、提案したアイディアを盗まれたりするのに不安を抱く のかもしれない。高級品、大衆薬、食品、化粧品など出来上がる新製品はそ れぞれ個別に生み出し、強みを発揮しながら新たな共通価値を共創できる仕 組みだ。. ⑵ 奈良県立医大と個別企業の連携を活発に 一般民間企業の新製品開発は研究所の研究からソリューションにより、経 営戦略から小売店での販売までを実施する。県立医大の担当チームとの技術 提携からスタートする開発もあってよい。. ⑶ 推進プロジェクトと現場の中長期な取組に相互磁力が必要 「陀羅尼助」や「三光丸」原料の原料でもある「キハダ : 生薬名オウバク」再 栽培の報告が奈良県からされている。 「①栽培地の荒廃②皮剥のノウハウ欠如 農家の高齢化③管理不足」(注 85)のような時間を要する現場とプロジェクト構 想を事業計画として進行する忍耐が求められる。従事者の高齢化も問題だ。. ⑷ インターネットの活用における PR と通販の拡大 「平成 25 年度 奈良県薬事審議会 議事概要」 (平成 26 年 2 月 7 日実施)に よると、薬事法改正によりネット販売が可能になった事実が報告されている。 「適切なルールの下であれば、第一類医薬薬品を含めて全ての一般用医薬品が、 28.

(25) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. 薬局、店舗販売業の許可を持った施設でのインターネット販売が可能になっ (注 86) た」 ということである。製品広告の薬事法規制などは、規則に従い掲載し. なければならないがインターネットの販売促進ツールとしての役割は重要で (注 87) ある。薬事法改正による「登録販売者制度」 を薬種商には、義務付けられ. る。薬剤師に変わり品揃えを担当してもよいという。漢方薬の購入者を拡大 しようとする推進プロジェクトの顧客との接点部分が小売店店舗であるから 気を抜けない配慮ポイントなのである。 . ⑸ 健康保険適応を外す、国内栽培の原料高騰などマイナス要因 日本臨床漢方医会理事長渡辺賢治は警告を発している。 「現在、200 種類以 上の生薬に保険が適用。厚生労働省から認可を受けている「医療用漢方エキ (注 88) ス製剤」は、約 150 種類」 という現在の適応を財政上の都合で外されかね. ない状況である。中国からの輸入原料を利用できなくなった国内生産の漢方 薬の高騰を成りゆきとして黙認することは避けたい。団塊の世代の後期高齢 化による漢方薬購買意欲を抑制することになる。渡辺教授のがん術後の治療 さんしょう. かんきょう. にんじん. こう い. 方針に関する発言は説得力がある。 「大建中湯は、山椒、乾姜、人参、膠飴と いった生薬を配合した漢方薬です。これを用いると消化機能の回復が早まり、 大腸がん手術後の腸閉塞の発症が減少します。個人差もありますが、入院日 数も平均 3.5 日短縮されており、国民医療費の削減にもつながっています。こ うした経験から、慶應義塾大学病院では、大建中湯の投与は大腸がん手術の (注 89) 標準的な治療計画に入っています」 がん術後の漢方薬の効用と健康保険医. 療費に結び付けてよく記憶すべきである。. ⑹ 漢方医薬品の高級品と大衆薬の両標的市場創造 ネット上にホームページを開設している日本全国の漢方薬小売店の説明を 読むと、健康保険適応の漢方薬は効用力が落ちるというような病院で処方箋 に書かれる医療用医薬品への非難めいた表記が見られる。広告表記規約では、 競争むきだしの比較表現は、禁止だと思われる。我田引水の訴求でありすぎ る。漢方薬を富裕層の購買対象に限って生産される医薬品であれば、多品種 地域創造学研究. 29.

(26) 論文. 少量、少数精鋭主義であっても問題がない。 「漢方のメッカ推進プロジェクト」 の高品質の強みを一貫してコンセプトにし持続するという志の高いビジョン を守り抜くべきである。だが、広く大衆が漢方薬を見直し、先祖から受け継 いだ貴重な産業として現代に存在させなければならない。浮上可能なプロセ スを検証し、戦略を考察してきた。高齢者医療のための実現困難な矛盾した 目標であり、課題である。 「漢方のメッカ推進プロジェクト」という地域興し 構想を上部構造のビジョンとして考え、県内外の参画事業所が新たな市場開 発に挑む実践の下部構造が支えているという棲み分けのある地域再生。中小 企業にも実践できる着実なビジネス戦略のアイディアを繰り返し提案し続け たい。個別企業と製品は、奈良県薬務課のフェイスブックに詳しい(注 90)。今 後は、企業の事例を挙げて対策を論じたい。漢方薬における特許取得や、海 外進出についての展望も検討すべきだと考える。. 脚注・参考文献. (1) 「医薬品購入」. 「MyVoice」アンケートモニター・2015 年 7 月 1 日〜 7 月 5 日 調査」マイボイスコム HP http://www.myvoice.co.jp (2) 「薬用作物における農林水産省の取組」. (2013 年 10 月)4 頁掲載. http://www.maff.go.jp/j/keikaku/pdf/yakuyou_sesaku1.pdf (3) 上記資料 4 頁 (4) 上記資料 5 頁 (5) 上記資料 11 頁 (6) 「今から始める漢方生産」. ( 『農業経営』2012 年 8 月号特集) (7) 上記資料 30 頁 (8) 「漢方の産業興し」. 奈良県. http://www.pref.nara.jp/secure/125486/siryou2_57-77.pdf (9) 東洋医学の産業化に関する展望. http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/.../2015-1-5.html (10) 「一般用医薬品の. 「漢方・生薬製剤」市場を調査」. https://www.fuji-keizai.co.jp/market/10083.html (11) 上記「富士経済」記事、 「otc 漢方マーケット便覧 2010」報告書参照 「他の薬効領域でも、胃腸薬では「大正漢方胃腸薬」 (大正製薬)や「ストレー ジ」 (武田薬品工業) 、その他消化器官用薬(便秘薬、止瀉薬など)では「タ ケダ漢方便秘薬」 (武田薬品工業) 、感冒関連用薬では認知度の高い葛根湯や 小青竜湯処方製品に加え鼻炎治療剤の「チクナイン」 (小林製薬)などが有力. 30.

(27) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略 な “ ブランド漢方 ” として挙げられる」 (12) (8). 資料 58 頁 (13) 「第六次産業化支援」http://www.nara. − sangyoshinko.or.jp/funds/funds04. html (14) 「奈良県における『漢方のメッカ推進プロジェクト』の取組について」奈良県. 知事公室橋本安弘 2014 年広報。8 頁. http://www.e − nae.com/cms/wp − content/pdf/36 − 2/36 − 2 − 2.pdf (15) 上記同資料 10 頁 (14). 資料 10 頁 (16) (17) 上記資料 14 頁 (18) 編集奈良県薬業史編さん審議会、奈良県薬業連合会発行、平成三年刊、第 2 章 (19) (14). 資料 8 頁 (20) 内閣府ホームページ「提案募集地方公共団体等提供資料第 24 回 7/8「医薬品 製造販売の地方承認権限の範囲拡大(奈良県)資料 4 http://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/kaigikaisai/teianbukai24gijishidai. html (21) 上記(20)資料内データ. http://www.cao.go.jp/bunken.../teianbukai24sanko-shiryou01-7.pdf (22) 上記(20)資料データ (23)上記(20)資料データ (24) 上記(14)資料 12 頁・13 頁 (25) 上記( 8 )資料 58 頁 (26)上記( 8 )資料 57 頁 (27)上記( 8 )資料 61 頁 (28) 上記( 8 )資料 58・59 頁 (29) 上記( 8 )資料 59 頁 (30) 上記( 8 )資料 59 頁 (31) 上記( 8 )資料 57 頁 (32) 上記( 8 )資料 57 頁 (33) 上記( 8 )資料 59 頁 (34) 上記(18)資料 265 頁 上記(18)資料 270 〜 280 頁 (35) (36) 上記(18)資料 300 〜 302 頁 「 「一般社団法人漢方産業推進研究会(仮称) 」の設立に当たって」記者発表資 (37) 料、三菱総合研究所「漢方産業化推進研究会」事務局 (38)上記(37)資料 (39) 「漢方産業化推進研究会・2015 年セミナー「今なぜ漢方産業化なのか」 地域創造学研究. 31.

(28) 論文. http://www.kampo-promotion.jp/topics/items/docs/20150827170454.pdf (40) かんき出版、2008 年刊、10 頁 (41) 上記(40)資料 10 頁 (42) 上記(40)資料 14 頁 (43) 上記(40)資料 14 頁 (44) 上記(40)資料 18 頁 (45) 上記(40)資料 18 頁 (46) 上記(40)資料 18 頁 上記(40)資料 29 頁 (47) (48) 上記(40)資料 218 頁 (49) 上記(40)資料 218 頁 (50) 上記(40)資料 14 頁 (51) 朝日新聞医療サイトアピタル http://apital.asahi.com/article/news/2014050800006.html (52) 上記(39)資料 10 頁 (53) 上記(39)資料 13 頁 (54) 上記(39)資料 13 頁 (55) 野村総合研究所「ナレッジデータベース」. https://truenavi.net/research/article.html (56) (55). 資料に同じ。1 頁・2 頁 (57) 上記(18)271 頁 (58) 資料 190 頁 (59) 書物巻末資料 (60) 上記( 8 )資料 10 頁 (61) 上記( 8 )資料 10 頁 (62) 下市てくてく情報「下市の漢方史」http://shimoichi.org/yakuzen/ (63) グロービスビジネススクール http://gms.globis.co.jp/dic/00936.php (64) 上記(63)資料 (65) 『実践 医薬品マーケティング・コミュニケーション−医薬品マーケター必. 携の実務書―』古川隆著、2006 年刊。140 頁 (66) 上記(65)資料 139 頁 (67) 上記(65)資料 135 頁 株式会社三光丸ホームページ http://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/shibu/ (68) h21/h_nara.pdf (69) 上記(68)資料 (70) ワキ製薬 http://www.a − kusuri.co.jp/about/ (71) 佐藤薬品工業 http://www.sato − yakuhin.co.jp/company/ (72) 奈良県薬務課「奈良県 GMP 手順書ガイドライン」 32.

(29) 奈良薬業業界の 21 世紀戦略. http://www.pref.nara.jp/item/147355.htm#itemid147355 (73) 全国知事会ホームぺージ http://www.nga.gr.jp/app/seisaku/details/1350/ (74) 日本経済新聞 2015 年 9 月 18 日近畿経済欄掲載 (75) 上記(70)資料 (76) 上記(80) 「小売店の販売額、全国最下位 2 位」64 頁 (77) ロート製薬株式会社ホームページ http://www.rohto.co.jp/ (78) 上記(65)資料 137 頁 (79) 上記(14)資料 8 頁 大一薬品株式会社 http://www.eonet.ne.jp/~daiichiyakuhin/ (80) (81) 上記(62)資料 (82) 田村薬草園 http://www.goseshikankou.jp/ (83) 森野吉野葛本舗 http://www.morino-kuzu.com/ (84) 2014 年農業生産法人として「第六次産業化総合事業計画」に認定。. http://www.udano-en.jp/kanpou.html (85) 上記( 8 )資料「製薬原料の地産地消を目指して」62 頁 (86) 一般用医薬品のネット販売について. http://www.pref.nara.jp/secure/115260/h25gijigaiyo.pd (87) 『図解入門ビジネス 最新薬事法改正と医薬品ビジネスがよーくわかる本』. 林田学著、2006 年刊 33 頁 (88) 「ダイヤモンド男の健康」. 「世界で注目される日本の漢方医学保険はずし議論 は時代の流れに逆行」http://diamond.jp/articles/-/12320?page=2 (89) 上記(88)資料に同じ (90) 奈良県薬務課ホームページ https://www.facebook.com/nara.dru. 地域創造学研究. 33.

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参照

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