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ニッケル水素蓄電池を用いた屋外電源システム

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ニッケル水素蓄電池を用いた屋外電源システム

北野

利一

宮坂

明宏

山下

a)

正代

尊久

An Outdoor Power-Supply System Using Nickel-Metal-Hydride Batteries

Riichi KITANO

, Akihiro MIYASAKA

, Akira YAMASHITA

†a)

, and Takahisa SHODAI

あらまし バックアップ用ニッケル水素蓄電池を適用した屋外電源システムを開発した.使用したニッケル水 素蓄電池は,副反応を抑制する改良が施され,充電効率改善,自己放電抑制の効果により,許容温度範囲−20∼ 55C,自己放電量 20 %/30 日(45C 環境),期待寿命 9 年(45C 環境)の性能を有する.開発した屋外電源 システムは,200 VA 出力で 14 時間のバックアップ性能を有し,信頼性の高い受動的な熱制御を基本とした.充 放電特性評価の結果,200 VA 負荷時の放電容量変動は −10C∼40C の範囲で 15 %以内に抑制され,真夏の環 境下でも電池,インバータの温度は許容温度を超えないことを確認した. キーワード ニッケル水素蓄電池,バックアップ電源,屋外,熱制御

1.

ま え が き

災害や事故の発生に対して行政機関では,被災状況 に応じた迅速で適切な初動活動が求められている.特 に近年では,大規模の地震や局所的な豪雨などの自然 災害が頻発しており,正確な被災状況を把握すること が重要な位置づけになっている.一例を示すと,管轄 地区における要監視箇所である河川や山岳などに監視 カメラと情報送信装置を組み合わせたモニタリングシ ステムを設置することによって,状況に応じた的確な 判断を行い,市民の安全を確保する施策が国によって 進められている[1].しかし,自然災害や事故などの緊 急時には,運用機器への商用電力供給に支障を来す場 合もある.そこで,電源対策としては,直流電力装置 やCVCF (Constant Voltage Constant Frequency)

によって瞬断や停電を補うとともに,予備発電機に よって電力を供給する体制を構築中である[2].また, 使用実績が非常に多く,充放電性能も安定している据 置用鉛蓄電池を使用することにより,信頼性が高く, メンテナンスの負担も小さい蓄電池設備を構築できる. 更に,小容量ではあるが,高温使用として熱逸走を抑 日本電信電話株式会社 NTT環境エネルギー研究所,厚木市

NTT Energy and Environment Systems Laboratories, NTT Corporation, 3–1 Morinosato-Wakamiya, Atsugi-shi, 243–0198 Japan a) E-mail: [email protected] 制したタイプも開発され,特に屋外使用には好適な特 性を有するものも現れている[3].しかし,予備発電機 は起動まで時間を要することや定期的な燃料交換や保 守などのメンテナンスが不可欠であることなど運用面 での負担が大きい.また,一般的に鉛蓄電池の体積当 り,及び重量当りのエネルギー密度は,それぞれ60∼ 100 Wh/,10∼30 Wh/kgと小さく,規定エリアでは 積み増しが困難な場合があり,バックアップ時間も人 が駆けつけて発電機を駆動させるまでの2∼3時間に 限られることになる.そこで,現状では数時間しか維 持できない電力供給を長時間延長でき,かつ信頼性を 高く,更にメンテナンス稼動も縮減できる高性能な蓄 電池によるバックアップの手段は,災害時における電 力供給の有望な選択肢の一つである. 据置用鉛蓄電池と比較してエネルギー密度が大き い電池候補には,大容量のリチウムイオン蓄電池や ニッケル水素蓄電池を挙げることができる.その中で は,産業用リチウムイオン電池では単セル80 Ahのモ ジュール[4]が報告されている.このリチウムイオン 電池ではエネルギー密度を143 Wh/,74 Wh/kgと 鉛蓄電池と比較して大きくでき,小型軽量が実現でき る魅力的な電池である.しかし,全般の大容量リチウ ムイオン蓄電池にいえることであるが,長期間での 信頼性・安全性が未検証な分野として残されている. 次にニッケル水素蓄電池に関しては,電解質が水溶 液であり,自己発火性がないという安全性の長所を有

(2)

し,100 Ahクラスの大容量電池セルも実現可能であ る.これまでの一般的なニッケル水素蓄電池ではサイ クル用途として,高率出力で小容量の電池セルが使用 されており,据置用の大容量の電池セルについては, これまで報告された例は少ない.サイクル用途で用い られるニッケル水素蓄電池では,高率放電が可能であ り,サイクル寿命が長いという特徴があるが,他方に おいて自己放電量が大きく,充放電に温度依存性があ り,特に高温では所望の性能を発揮することができな い点が挙げられる.近年では,徐々に大容量のニッケ ル水素蓄電池も開発され,国内においてはサイクル用 途ではあるが,10セル積層で一体化になった440 Ah の大容量セル[5]の発表がなされており,海外では据 置用として報告されたSaft社の100 Ahセル電池[6] やCobasys社の85 Ahセル電池[7]の例がある.Saft 社のニッケル水素蓄電池では,電池内部の詳細は不明 であるが文献[6]によると,サイクル用途も意識した 2 C程度の高率放電が可能であるが,一方では,使用 上限温度が50C程度に制限される.特にセルを冷却 するために水冷を適用可能な構造にするなど,高温使 用下では十分な性能を得ることが困難なようである. また,Cobasys社の据置用として報告されているニッ ケル水素蓄電池に関しても,本来,ハイブリッド車搭 載用として開発されたものであり,サイクル用の性能 を有しており,Saft社同様に高温環境下での使用が困 難であることや自己放電量が多いことが指摘される. いずれの電池にしても高温での熱制御が設計のポイン トとなっているが,体積エネルギー密度や重量エネル ギー密度に関しては,鉛蓄電池より2∼3倍程度大き な140 Wh/,70 Wh/kg程度と大きい. 蓄電池搭載の屋外用バックアップ電源では,耐環境 性を重視するため,外気と隔てるように密閉箱内に機 器や電池が搭載される.したがって,箱内温度は季節 変動に従い大きく変化する.特に夏季では機器や電 池が高温に晒された状態になり,電池に対しては性能 や寿命が大きく左右されることになる.通常,鉛蓄電 池の寿命は常温環境下で3∼4年であり,一般的には Arrhenius則,いわゆる10C半減則に従い[8],高温 使用下では極端に寿命が短くなる.高温状態を回避す るため,熱交換器や空調設備を設置することも可能で はあるが,電源システムをできるだけ安価に信頼性を 高めた設計が必要で,高温耐久性を高めた蓄電池を用 いることが有効な手段になる. そこで,筆者らはエネルギー密度を鉛蓄電池より高 くでき,安全性も確保できるニッケル水素蓄電池に注 目し,高温環境下で自己放電量が小さく,かつ十分な 充放電性能を有し,かつ長寿命になる大容量のニッケ ル水素蓄電池セルを開発した.本論文では,まず,開 発したニッケル水素蓄電池の充放電特性を求め,バッ クアップ用として所望の性能が得られた結果を示す. その上で,この蓄電池を電源システムに組み込んだ屋 外用のバックアップ電源として,恒温槽を用いた低高 温環境で得られた充放電特性,更に実験を基にして温 度解析を含む太陽照射環境下での温度評価の結果につ いて示す.

2.

バックアップ用ニッケル水素蓄電池

2. 1 ニッケル水素蓄電池の改良 屋外バックアップ電源に適用するニッケル水素蓄電 池は,長期間での状態維持や寿命評価が必要になるな ど,従来のサイクル用途で使用されているニッケル水 素蓄電池とは異なる設計が必要となる.バックアップ 用のニッケル水素蓄電池を設計するにあたり,留意し た主な点を以下に示す. (1) 夏場など高温環境下での充放電特性の向上 (2) 満充電状態からの自己放電量の低減 (3) 高温状態での劣化低減(長寿命化) 以下,項目ごとに改良した結果について示す. (1) 夏場など高温環境下での充電特性の向上 ニッケル水素蓄電池の主反応を式(1)∼式(3)に示す. [負極] MHx+ xOH− 放電 −−→ ←−− 充電 M + xH2O + xe− (1) [正極] NiOOH + H2O + e− 放電 −−→ ←−− 充電 Ni(OH)2+ OH (2) [全電池反応] xNiOOH + MHx 放電 −−→ ←−− 充電 xNi(OH)2+ M (3) 充電では,まず,式(3)の主反応が進み,その後に 副反応が生じる.正極での副反応を式(4)に示す. [正極での充電時の副反応] OH−→1 4O2+ 1 2H2O + e (4) 一般のニッケル水素蓄電池では,35Cを超える高

(3)

温で充電を実施すると,ニッケル極で酸素過電圧が急 速に低下することによって式(4)に示す副反応が生じ やすくなり[9],充電に伴う酸素発生により充電効率が 著しく低下する現象が見られる.そこで,高温時の充 電効率を高めるため,小型のニッケル水素蓄電池では ニッケル極に希土類系酸化物,例えば,Er, Tm, Yb などを添加することによって,酸素発生の過電圧を高 めて,より還元作用のある状態に保つ手段がこれまで 報告されている.しかし,添加剤や添加量などについ ては,用途や電池容量,材料構成などに依存し,電池 開発各社独自で最適化している[9], [10].今回開発し た大容量ニッケル水素蓄電池においても希土類系酸化 物を添加することによって酸素過電圧のレベルを上昇 させる手段を講じている.そのため,添加物の選択, 添加量の調整等を実施した.正極への添加剤として は,酸化イッテルビウム(Yb2O3)とコバルト(Co)を 含み,添加量は重量配分を変えて試験を実施し調整を 行った結果,水酸化ニッケル(Ni(OH)2) 100重量部に 対し,金属Coを5重量部,Yb2O3を4重量部とし た.Yb2O3は,アルカリ中で水酸化物となり,ニッケ ル電極の酸素発生電位を大きく貴にシフトでき,高温 でも充電効率を高く維持することができるため,副反 応(式(4))を抑えることが可能となる. (2) 満充電状態での自己放電の低減 ニッケル水素蓄電池は,一般にニッケルカドミウム 電池よりも自己放電量が大きいため,実用化に際して, これまで自己放電量を低下する多数の報告がなされて いる[11]∼[13].その中で自己放電の主な要因として は以下の2点が挙げられる. 1  これまでニッケルカドミウムではポリアミド系 のセパレータが使用されており,電解液との接触で分 解反応によってアンモニアが発生し,正極での酸化と 負極での還元によって自己放電が促進される. 2  式(5)で示すような反応が生じることによって, ニッケル極での活物質(NiOOH)の自己分解が生じ, 表 1 NiMH電池の改良点 Table 1 Improvements of NiMH battery.

この反応は特に高温で加速される. NiOOH +1 2H2O→ Ni(OH)2+ 1 4O2 (5) そこで,1に対する処置では,セパレータの材料を 選択し,ポリオレフィン系の不織布を用いて,分解反 応を抑制した.同時にスルホン化処理を施すことに よって親水性も向上させている.また,2において, 酸素ガスを発生し難くする点では酸素過電圧レベルを 高めることが必要となり,正極での副反応を抑制する ことと同じ意味を成す. (3) 高温状態での劣化低減(長寿命化) 高温で充放電を繰り返した場合には,負極に含まれ る水素吸蔵合金が電解溶液と反応し,腐食する.腐食 によって水素吸蔵合金は水酸化物になり,反応時には 電解溶液の水を消費するため,電解溶液の液量の減少 が生じ,電池内における内部抵抗が上昇する.特に温 度が高い場合には,酸素発生によって水素吸蔵合金の 腐食作用を高める. 電解溶液組成の設計では,電池の低温放電特性を 高めるには電気導電性を向上させ,水酸化カリウム (KOH)の濃度比率を高める方法が有効である.一方, 高温での充電効率を高め,自己放電量を抑制するに は,酸素過電圧を上昇できるように水酸化リチウム (LiOH)濃度比率を上げる必要がある.本開発では, 高温における充電効率改善と自己放電量の抑制を主な 設計指針に設定し,電解溶液組成を決定した.電解溶 液として,KOH,LiOH,及びNaOHの三成分混合 液とし,LiOHは他のアルカリ溶液に対して溶解限界 があるため,高温における電気導電性が高いNaOH の濃度比率を高く設定した. 上記の改良点を表1に示し,開発したNiMH電池 の諸元を表2に示す. 開発したNiMH電池について充放電特性を測定し た.放電の前の充電は,電池の発熱を抑制し,充電時 間を短くすることができる20 A一定電流により行い,

(4)

充電終止は電池温度の上昇率の測定で判定した.充電 終止判定値はdT /dt = 0.3◦C/分とした.充電後に, 30 A一定電流による放電を行い,電圧が1.0 Vに達 するまでの放電容量を測定した.放電電流を30 Aと したのは,バックアップ電源システムの放電時間が3 時間で設計されていることによる.図1に25C,及 び55C環境下における充放電特性を示す.充電容量 が放電容量よりも大きいのは,充電時には内部抵抗に よる損失や式(4)により表される副反応によりエネル ギーが消費されるためである.環境温度55Cの放電 容量は,環境温度25Cの結果と比較して2 %程度し か減らず,55Cの高温環境下でも充放電が十分可能 であることが分かる. 次に,自己放電特性を試験により評価した.試験で は,環境温度を変えた状態で満充電後の放置日数と自 己放電量の関係を求めている.図2に試験結果を示す. 図中の縦軸に自己放電率,横軸には放置日数の平方根 をとっている.記載された自己放電量は,放置する前 に測定した容量を100としたときの放電量の割合であ る.容量が100 %から70 %までの範囲では,自己放 表 2 NiMH電池の諸元 Table 2 Parameters of NiMH battery.

図 1 充放電特性

Fig. 1 Charge/Discharge characteristics.

電率は放置日数の1/2乗に比例した.また,環境温度 45Cで30日間放置すれば,20 %程度の自己放電量 であることが分かる. 図3は,寿命を評価した結果であり,環境温度45C, 及び55Cでの放電容量劣化の特性を示す.横軸は充 電状態で放置した日数,縦軸は所定の放置日数が経過 した後の放電容量であり,劣化前の容量を100とした ときの劣化の容量割合を示す.自己放電により,電池 残容量が90 %になった場合には充電を実施し,温度こ う配判定(dT /dt)で満充電判定を行っている.図2に 示すように自己放電量は温度に依存するため,例えば, 45Cのときは10日に1回,55Cのときは5日に1 回の割合での充電となる.放電容量の測定は,メモリ 効果を解消するため,一度1.0 Vまでの放電を行い, 20 A一定電流充電を充電終止判定(dT /dt = 0.3◦C/ 分)に到達するまで行った後,30 A一定電流放電を電 図 2 自己放電特性 Fig. 2 Self-discharge characteristics.

図 3 劣 化 特 性

(5)

圧が1.0 Vに達するまで行ったときの放電容量を求め ることにより行った. 劣化試験を継続して行っているが,現状では放置日 数に関して容量割合が線形に減少している傾向が見 られる.仮に線形性を維持したまま電池取換えである 80 %の容量に達する日数を算出すると45Cで9年程 度となる.55Cの場合には2年程度である.したがっ て,現状の結果では45Cの高温環境下で長寿命が期 待できると考える. 一般的に鉛蓄電池は,Arrhenius則をもとにした 10C半減則が成り立ち[8],例えば,20C環境下で6 年の寿命であれば,30C環境下では3年になること が知られている.しかし,図3の結果からは,この法 則が成り立っていない.したがって,通常では,電池 に寿命を評価する際に温度半減則に立脚して環境温度 を設定して加速試験をするが,本電池の加速試験を実 施する際の環境温度設定には詳細な検討が必要になる. 今後,放置日数と劣化容量の関係は線形性が維持さ れるのか,Arrhenius則が成り立つのか,急激な劣化 現象が生じるのかなど,試験を継続して確認する必要 がある.

3. NiMH

電池搭載屋外電源システム

3. 1 構 成 バックアップ用のNiMH電池を搭載した屋外電源シ ステムの外観,構成図を図4,図5に示す.また,仕 様を表3に示す. NiMH電池は10セルを直列に配置した電池モジュー ルとして電源システムに組み込んでいる.図6に電 池モジュールを示す.モジュール化の特長としては, 1 モジュールに冷却ファンを配備することによってモ ジュールごとの独立熱制御が可能になり,電池規模 (モジュール数)を変えても電池の温度管理法を変え る必要がない.2出力容量に合わせてモジュール個数 を調整できるため,容易に電源システムの規模を変え ることができる.3モジュール箱に一体化されたコネ クタにより,電源システムへの脱着が容易になること から複雑な配線作業が不要になり,安全かつ迅速に電 源システムを構築できる.以上の3点を挙げることが できる. 屋外電源システムの出力は,交流100 V,定格電力 200 VAである.電池モジュールは並列状態で電源シ ステムへ接続され,バックアップ時間に応じて,蓄電 池モジュール数を1箱から3箱まで調整できる.電池 図 4 屋外電源システム外観 Fig. 4 Appearance of the system.

図 5 屋外電源システム構成図 Fig. 5 Block diagram of the system.

表 3 屋外電源システム仕様 Table 3 Specifications of the system.

の最大搭載容量は3.4 kWhである.屋外電源システム は,充電器,インバータ,切換器及び制御装置を含む 電源部,及び電池モジュールを搭載した電池部から構 成される.電源部は電池部の上部に設置されている. 平常時には商用電力がパイパス回路を通して負荷へ 供給される常時商用方式を採用しており,停電発生時 には高速半導体スイッチにより電池出力へ切り換えら れ,インバータを介して電力供給が行われる.

(6)

3. 2 評価機器と熱設計指針 屋外電源システムでは,ほぼ密閉状態になるため, 内部機器からの発熱,更に外部からの太陽光入射や設 置面からのふく射などによって内部機器温度が上昇す る.ここで,温度評価が必要となる機器は,インバー タ,及び電池である.搭載機器には充電器も含まれて いるが,充電器が稼動する状況は,電池の自己放電に より残容量が90 %未満となったとき,期間としては1 か月に1回程度である.更に充電器からの発熱量も小 さく,充電時間も30分程度と短いため,急激な温度 上昇が生じない. インバータの発熱量や許容温度などを表4に示す. 熱的に最も厳しくなる条件は電池モジュールを1箱 搭載した場合であり,負荷を200 VAとすると,放電 末期に20 A程度の電流が1モジュールに流れる.電 池からの発熱はジュール熱であり,流れる電流の2乗 に比例するため,電流が大きくなると発熱量も大きく なる.なお,電池温度としては,図1で示す環境温度 55Cのときの満充電時の電池温度が65Cであった ため,電池許容上限温度をこの値に設定した. 屋外用電源システムの熱設計指針として,システム 信頼性を向上させるため,受動的な熱制御法を基本と する.ただし,搭載機器が規定以上の温度状態になっ た場合には,各機器に内蔵している冷却ファンが駆動 する.以下に主な熱制御手段を示す. 電源システムの外壁には,赤外線反射塗料を塗布 し,太陽光吸収量を抑制する. 図 6 電池モジュール Fig. 6 Battery module.

表 4 インバータ発熱量と許容温度

Table 4 Heat and limit temperature of the inverter.

電源システムには天蓋板を設けて,太陽光吸収量 が多い天蓋から電源システム内部への熱入力をふ く射によって遮断する. インバータと搭載板間の接触熱抵抗を軽減するた め,取り付け圧力(接触圧)を増し,熱伝導を促 進させる. インバータ内部機器の温度が規定以上になった ときには内蔵ファンを駆動させる.ここで,イン バータ内部機器の温度を測定することが困難なた め,インバータきょう体に温度規定点を設け,内 部機器温度の推定を行っている.内蔵ファン駆動 時の温度は,設置環境に依存しており,規定点で 45± 5◦C程度である. 電池温度が45Cを超えた場合には,電池モジュー ル内蔵の空冷ファンを駆動する.温度センサは最 も高温になる電池セルに取り付けている. 3. 3 放電特性と温度評価試験 屋外用電源システムの放電試験を恒温槽内で行って 機器の温度を評価した.20C環境下で充電を行った 後,商用電力を負荷へ供給した状態で停電を起こし, 電池からの放電に切換えた.電源システムの放電停 止は,電池モジュールからインバータへの入力電圧が 11.4 V以下になるときである.搭載電池モジュール数 は1である.環境温度40Cで負荷を200 VA (180 W) に設定した場合のインバータ温度,及び電池温度の測 定結果を図7に示す. 電池から放電する前では,インバータ,及び電池が 待機状態であり,それぞれの内蔵ファンは駆動してい ない.図7の結果より,環境温度が40Cでは屋外電 源システム内部の温度は50C程度に達することが分 かる.内部発熱としては,インバータや充電器の待機 状態での発熱,及び高速半導体スイッチによる発熱で ある.これらの機器の総発熱量は40 W程度である. 電池からの放電が始まると,電源システム内の温度 が45Cを超えているため,インバータ,及び電池モ ジュールに内蔵している空冷ファンが駆動する.その 結果,インバータや電池の温度は低下する.電池につ いては,放電に伴う電池電圧の低下による電流の増大

(7)

のため,放電末期では電池からの発熱量が増大し,温 度も上昇する傾向が見られる.この結果より,環境温 度が40Cであってもインバータと電池温度は,とも に許容上限値を超えないことが確認された. 図8に放電時の電池モジュールの電圧値,及び電流 値を示す.横軸は電池モジュールの放電容量である.こ の結果より,電池モジュールからの放電容量は85 Ah 程度であることが分かる.1モジュールの電池容量の 公称値は95 Ahであるが,電池下限電圧を11.4 Vと規 定しているため,10 Ahほど容量が小さくなっている. 次に低温環境下における放電時の温度特性について 示す.図9は,環境温度を−10◦Cとして放電したと きのインバータと電池の温度推移である.放電初期に おける電池温度は0Cであるが,そのときのインバー タ温度は,待機時の発熱や電池よりも上部に位置す るなどの理由のため,10Cほど温度が高くなってい 図 7 放電時の電池,インバータ温度の推移(負荷 200 VA, 40C)

Fig. 7 Temperature characteristics under discharge at 200 VA, 40C.

図 8 放電時のモジュール電圧,電流の推移(負荷 200 VA, 40C)

Fig. 8 Voltage/Current characteristics under discharge at 200 VA, 40C. る.この実験結果より,両者とも放電後の温度上昇と しては5C程度であることが分かる.また,図10に 電池の電圧,及び電流を示す.放電初期では,電池温 度が0C程度と低温であるため,電池電圧が環境温度 40Cのときよりも高めである.低温環境下での放電 では,放電電流が高温時と比べて大きく内部抵抗によ る損失が増大したため,電圧低下率が大きくなり,放 電容量は75 Ahと高温時と比べて90 %程度であった. 一般に電解液の電気抵抗は粘度に比例する[14], [15]. 電解液の粘度は温度が低いほど増大するため,低温で は内部抵抗が大きくなり,放電時の電圧降下が大きく なって放電容量が減少する. これまでの結果から分かるように,放電容量は環境 温度に依存する.そこで,環境温度を変えて200 VA 負荷時の放電容量を求めた結果を図11に示す.電池 の充電条件は同一であり,図1で示したように,環境 温度を25Cから55Cに変えてもほとんど影響をな 図 9 放電時のインバータ,電池温度の推移(負荷 200 VA, −10◦C)

Fig. 9 Temperature characteristics under discharge at 200 VA,−10◦C.

図 10 放電時の電池電圧,電流の推移(負荷 200 VA, −10◦C)

Fig. 10 Voltage/Current characteristics under discharge at 200 VA,−10◦C.

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図 11 放電容量の温度依存性

Fig. 11 Temperature dependence of discharge capacity.

さないため,25C環境下で同じ電流量を充電してい る.図11では,40C環境下での放電量を100とし た場合の各環境温度での放電容量率を求めた結果を示 している.この結果より,−10◦Cから40Cの範囲で は,バックアップ容量の変動が15 %以内に抑制されて いることが分かる.また,40C環境では,インバー タ及び電池モジュールの空冷ファンの駆動による消費 電力は大きくなるが,図11の結果より,その寄与は 極めて小さいことが分かる. 3. 4 太陽光照射での温度評価 3.3では,恒温槽内の高温環境下で放電特性を評価 したが,運用時には電源箱が太陽に晒されて,内部機 器が更に高温になる可能性がある.そこで,実際に電 源システムを真夏の晴天時に屋外へ設置し,放電を実 施して内部機器の温度を測定した.そのときの実験条 件を表5に示す. 放電試験は屋外へ電源システムを運び出した後に 行っている.温度センサは,内部搭載機器(インバー タ,充電器,電池),内部空気(インバータ周り,電池 回り),及び電源箱の壁面内部(4側面)に設置してい る.しかし,放電後2時間から曇り状態になったため, 放電を中止した.そこで,電源システムの温度解析を 実施し,実測値との比較による考察を行った.更に温 度解析によって,機器の許容温度に対する最大負荷量 も明らかにした. 図12にインバータ温度,電池温度,内部空気温度, 及び電源箱壁面温度の実測結果を示す.電源箱の温度 は4側面(東西南北に向いた側内面)の平均温度であ り,4側面の温度差は4C以内と小さい結果が得られ ている. インバータきょう体の温度規定点が45C± 5◦C以 表 5 屋外における実験条件 Table 5 Experimental conditions.

図 12 放電時の温度変化

Fig. 12 Temperature characteristics under discharge outdoor. 上になると内蔵ファンの駆動が始まる.実験では,0.7 時間を過ぎた後に空冷ファンが駆動し,インバータを 冷却し始める.インバータ温度は取り込む空気温度 に依存し,空気温度は電源箱温度に依存する.更に電 源箱温度は太陽光吸収量や内部発熱量で決定される. 図12の結果より,インバータ,内部空気,及び電源箱 壁面の温度は,インバータ内蔵ファンが駆動した後で は,ほぼ同じ温度差で推移し,その値も3C以内と小 さい.一方,電池は熱容量が大きく温度上昇に時間を 要し,放電後,2時間を超えても45Cに達していな いので,内蔵ファンも駆動しない.電池の温度上昇は 直線的であり,放電時間を5時間と仮定し,線形に温 度上昇するとしても上昇温度は60C以下である.更 に45C以上では電池モジュール内蔵ファンが駆動す るため,上限温度65Cには達することはない.した がって,高温で厳しい環境におかれる機器はインバー タであり,特にインバータ温度を評価対象とした. インバータ温度は,空冷ファンによって通過する内 部空気温度に依存し,内部空気温度は太陽光に晒され た電源システムの温度に依存する.そこで,電源シス テムの温度を解析によって求め,更に求めた電源シス テムの温度をファン駆動時の空気温度条件として与え ることでインバータ温度を算出した. 式(6)に電源システム,及び式(7)にインバータに

(9)

ついての熱平衡式を示す. Cps dTs dt +hsAs(Ts− T∞)+σεF As  Ts4− T 4  −Qsol− Qrad− Qin= 0 (6) Cpi dTi dt +hiAi(Ti− Ts)+cpaρauaAa(Ti− Ts) −Qi= 0 (7) 上式における係数の説明を表6に示す. 式(6)の左辺の第1項は熱容量に蓄えられる熱量, 第2項は表面から外気への対流による放熱,第3項は 外気へのふく射,第4項は電源箱へ吸収される太陽光 熱量,第5項は地面と電源箱間のふく射,第6項は電 源システムの内部発熱である.式(7)の左辺第2項は インバータきょう体からの放熱,第3項は内蔵ファン によって除去される熱量であり,別途,インバータ個 体試験にて流速等を求めている.第4項はインバータ 発熱量である. ここで,式(6),式(7)で示される熱伝達率hihs は,自然対流時のものであり,これまで多くの研究が なされているが,その中で文献[16]に示される式(8), 式(9)を用いて計算を実施した.この式については分 野を問わず,多くの文献[17]∼[19]などでも用いられ ているものである. 表 6 係数の説明

Table 6 Explanation of coefficient.

表 7 パラメータの設定

Table 7 Geometric parameter in natural convection. Nu= hx k = C(Gr· Pr) m (8) Gr= gβΔT x3 υ2 (9) ここで,NuはNusselt数,GrはGrashof数,Pr はPrandl数,hは空気の熱伝達率,kは空気の熱伝導 率,C及びmは形状や設置状態で決定できる自然対 流のパラメータであり,本計算では,文献[16]を参照 として表7に示す値に設定している.xは対象物の代 表寸法,gは重力加速度,βは空気の体膨張係数,νは 空気の動粘性係数,ΔT は温度差である.また,熱入 力量,QsolQradQin(Qi)に関して,表8に示す. ここで,Qradは,地面と電源システム間のふく射 による影響であり,計算結果より,地面と電源温度の 差が小さくなるため,熱量としては6 W程度と小さ く,太陽光吸収量Qsolや内部発熱Qinが大きいため, 無視できる値が得られた.そこで,計算ではQradの 項は除外している. 図13に式(6),及び式(7)から得られたインバータ と電源システムの温度を示す.解析における初期温度 は,外気温である35Cに設定している.実測値で示 す値はインバータ温度,及び電源システム箱表面の平 均温度である.解析結果より,各機器の温度が平衡状

(10)

表 8 熱 入 力 量 Table 8 Thermal input.

図 13 充電時の温度変化

Fig. 13 Temperature characteristics under charge outdoor. 態に達するにはおおむね3時間かかることが分かる. 実測値と解析値を比較すると,実験開始直後では, 両者の差が大きくなっている.この理由としては,初 期における実験条件と解析条件が異なるからである. すなわち,インバータ温度計算時での条件は,イン バータ内蔵ファンが既に駆動していると仮定しており, ファンの吸い込み空気温度を電源システム温度に設定 している.しかし,実験では,開始直後にインバータ 温度が45Cを超えていないため,内蔵ファンが駆動 していない.したがって,駆動時のインバータ温度が 低い理由と内部空気間の伝熱が小さいことにより,解 析値と実測値の差が生じている.しかし,放電が続 き,インバータからの発熱は生じて,インバータ温度 が45Cを超えるようになると,内蔵ファンが駆動す るので,実測値と解析値は急速に一致する傾向が見ら れた. 解析予測の目的は,高温環境下でのインバータ温度 を評価することである.この解析結果より,インバー タ温度は,負荷200 VAの真夏の環境下においても許 容温度65Cを超えない見通しが得られた. 次に,同じ環境下でインバータへの最大負荷量を 求めた.図14にインバータ負荷量とインバータ平衡 温度との関係の解析結果を示す.負荷量とインバータ 平衡温度は線形の関係になり,インバータ温度上限を 図 14 インバータ負荷量とインバータ平衡温度との関係 Fig. 14 Relationship between inverter load and

inverter equilibrium temperature.

65Cとすると,インバータの最大負荷量は600 Wで あることが分かる. 以上の結果より,公称負荷として考えている200 VA では,インバータ許容温度範囲内に維持でき,屋外電 源システムとして所望の性能を期待できる.更に,負 荷量を増して600 Wとしても屋外電源システムは高 温環境下で使用できることが明らかとなった.

4.

む す び

屋外バックアップ電源用蓄電池として開発したニッ ケル水素蓄電池を適用した屋外電源システムを開発し, 充放電特性の評価を行った.この結果,以下を明らか にした. (1) ニッケル水素蓄電池に対して,酸素過電圧を 高めて正極での副反応を抑制するため,1正極に希土 類系酸化物を添加し,正極周辺の見掛けの水酸基濃度 を減少させて副反応を抑制し,2セパレータにポリオ レフィン系の不織布を採用して分解反応を抑制し,3

電解液をKOH,NaOH,LiOHの3成分混合液とし て酸素過電圧の上昇を図り,NaOHの濃度比率を高く 設定して高温における電気伝導性を高めた.この結果, 高温時の充電効率改善及び自己放電抑制の効果によ り,許容温度範囲−20∼55C,自己放電量20 %/30

(11)

が得られた. (2) 開発した屋外電源システムは,200 VA出力 で14時間のバックアップ性能を有し,電池のモジュー ル化により着脱を容易とした.信頼性を向上させるた め,受動的な熱制御を基本とし,太陽光による内部へ の熱入力を抑制するための赤外線反射塗料,天蓋板 を利用し,また内部の熱拡散を促進する構成とした. その結果,200 VA負荷時の放電容量変動は−10◦C∼ 40Cの範囲で15 %以内に抑制され,真夏の環境下で も電池,インバータの温度は許容温度を超えないこと を確認した. 文 献 [1] 国土交通省河川局河川計画課,“河川局における情報化の取 組み,” JACIC情報(日本建設情報総合センター),no.80, pp.41–45, Oct. 2005. [2] 二階堂義則,“国土交通省の防災情報システム,”電気設備 学会誌,vol.26, no.4, pp.252–255, April 2006. [3] 広瀬圭一,馬場崎忠利,本圖 有,白羽 真,“高温対応

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(12)

山下 明 (正員) 昭 55 東北大・理・化学卒.昭 60 同大 大学院博士後期課程了.同年 NTT 入社. 以来,バイオエレクトロニクス,有機分子 線蒸着法,アルカリ蓄電池のバッテリーマ ネージメントの研究に従事.平 14 年 7 月 より現職.日本化学会,電気化学会各会員. 理博. 正代 尊久 昭 61 九大・工・応用原子核卒.昭 63 同 大大学院修士課程了.同年 NTT 入社.リ チウムイオン電池やニッケル水素蓄電池の 研究開発に従事.平 18 年 4 月より現職. 米国電気化学会,電気化学会,固体イオニ クス学会各会員.平 20 年 1 月より電池技 術委員会幹事.博士(工学).

図 1 充放電特性
図 5 屋外電源システム構成図 Fig. 5 Block diagram of the system.
表 4 インバータ発熱量と許容温度
図 8 放電時のモジュール電圧,電流の推移(負荷 200 VA,
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参照

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