雑誌名
経営力創成研究
巻
15
ページ
77-97
発行年
2019-03
アンケート調査結果①
調査対象:情報・通信業界に属する企業のCVC 出資先ベンチャー企業 対象企業数:431 社 調査方式:郵送によるアンケート調査 回答数:51 社 実施日:2017 年 2 月 23 日 投資が主事業ではない大企業が社外のベンチャー企業に対して投資を 行う活動をベンチャー・キャピタル(Venture Capital:VC)と区別して、 コーポレート・ベンチャー・キャピタル(Corporate Venture Capital:CVC) と呼んでおり、近年注目されている投資主体の一つである。CVC がベンチ ャー企業に投資を行う目的は大きく分けて2 つあり、戦略的目的と財務リ ターン目的である。戦略的目的とは、本業の事業とのシナジー効果を狙っ たり、将来有望な市場に対する情報収集を目的としたり、その市場に自社 が参入する際のアクセスの確保を目的としたりなど、企業の戦略に関わる 目的から投資をするものである。 一方、財務リターン目的とは、純粋に投資先企業の株式を将来売却した 時の利益実現を狙うものである。したがって財務リターン目的は通常の VC の目的と非常に近いといえる。 CVC が財務リターンを獲得するためには、ベンチャー企業の企業価値 創造が不可欠であるが、出資受入れ側のベンチャー企業の企業価値認識は まだ明らかにされていないのが現状である。 本アンケートでは CVC 活動が重要であると考えられる情報通信系企業 の CVC から出資を受けたベンチャー企業を調査対象とし、HP 等から所 在確認できた431 社にアンケート票を送付した。主要なアンケート結果は 以下の通りである。 【主要なアンケート結果】 ・調査対象の多くの企業でコーポレート・ベンチャー・キャピタルだけで【出資の受入れ状況】 【出資受入れ形態】 【出資元との直接的なコミュニケーション】 はなくベンチャー・キャピタルからの出資も受入れている現状が明らかに なった。コーポレート・ベンチャー・キャピタルからのみの出資受入れ企 業は少数であり、コーポレート・ベンチャー・キャピタル独自の基準で企 業を選別しているかどうかは不明である。 ・出資受入れ形態は、ベンチャー・キャピタル単独の出資を受け入れてい る企業の比率が 66.7%ともっとも高く、次いで既存企業による直接出資 (54.2%)、既存企業とベンチャー・キャピタルのグループによる出資(31.3%)、 既存企業完全子会社からの出資(29.2%)となった。 ・出資元との直接的なコミュニケーションに関する質問には「かなりある」、 「ややある」、「ある」と回答した企業が多数を占めており、「あまりない」、 「まったくない」という回答はかなり少ない結果となった。 ・「出資元企業からの経営関与の度合い」に関しては「とても強い」、「やや 強い」と回答する企業と「やや弱い」、「弱い」と回答する企業ともに少な く、「普通」と回答する企業が一番多かった。この結果から出資元企業から の経営関与の度合いは中立的な企業が多数派であると思われる。 ・「今後の目標としての企業価値向上」は多くの企業で「とても強い」、「や や強い」と回答する結果となった。「やや弱い」、「弱い」と回答する企業は 1 社もなく、多くの企業で企業価値向上が重要な目標として認識されてい ることが明らかになった。 ・「利益最大化」に関しても「今後の目標としての企業価値向上」と同様で、 多くの企業で「とても強い」、「やや強い」と回答する結果となった。利益 はステークホルダーにとっても分かりやすい指標であるため、これを今後 の目標として掲げる企業が多かったものと考えられる。 ・「IPO(株式公開)」に関しては「企業価値向上」や「利益最大化」と比較 すると、やや弱い結果となったが、それでも5 割弱の企業で重要な目標で あると考えられている結果が得られた。 ・「共同研究による製品・サービスの完成」に関しては「とても強い」、「や や強い」と回答する企業が5 割弱あり、「やや弱い」、「弱い」と回答する企 業は2 割程度と多くの企業で共同研究による製品・サービスの完成を目指 していることも明らかになった。
【出資の受入れ状況】
【出資受入れ形態】
【今後の目標】 1. 企業価値向上
2. 利益最大化 【出資元企業からの経営関与の度合い】
【今後の目標】 1. 企業価値向上
アンケート調査結果②
調査対象:2011 年以降に新規上場した企業 対象企業数:545 社 調査方式:郵送によるアンケート調査 回答数:33 社 実施日:2017 年 8 月 1 日 本アンケートは 2011 年以降に新規上場した企業の経営・財務認識を明 らかにするため行った。新規上場企業は老舗企業の上場もあるが、多くが これからも成長を期待される企業であり、それら企業の経営・財務認識を 明らかにするのは学術的にも意義がある。 主要なアンケート結果は次の通りである。 【主要なアンケート結果】 ・2011 年以降に新規上場した企業ではコーポレート・ベンチャー・キャピ タルから出資を受けた企業はベンチャー・キャピタルから出資を受けた企 業と比べると少数派であった。 ・重視する経営指標としてROE や ROA などの指標では「重視しない」企 業から「とても強く重視する」企業まで散らばりが見られたが、売上高や 営業利益などでは多くの企業で「とても強く重視する」と回答する企業が 見受けられた。これは資本の効率性よりも絶対額を重視する企業が多い可 能性を示唆している。 ・資金調達において重視する項目として、資本コストを重視する企業の割 合よりも調達金利を重視すると回答する企業の割合が高い結果となった。 資本コストは直接目に見える利払いのような義務が存在しないため、企業 では直接的に利払いの額に関連する調達金利に比べて重要度が低いと考 えている可能性がある。 ・出資を受け入れる限度に関しては創業者の持株比率を「重視しない」、「あ まり重視しない」と回答した企業は少数であり、経営への口出しや実質的 3. IPO(株式公開) 4. 共同研究による製品・サービスの完成アンケート調査結果②
調査対象:2011 年以降に新規上場した企業 対象企業数:545 社 調査方式:郵送によるアンケート調査 回答数:33 社 実施日:2017 年 8 月 1 日 本アンケートは 2011 年以降に新規上場した企業の経営・財務認識を明 らかにするため行った。新規上場企業は老舗企業の上場もあるが、多くが これからも成長を期待される企業であり、それら企業の経営・財務認識を 明らかにするのは学術的にも意義がある。 主要なアンケート結果は次の通りである。 【主要なアンケート結果】 ・2011 年以降に新規上場した企業ではコーポレート・ベンチャー・キャピ タルから出資を受けた企業はベンチャー・キャピタルから出資を受けた企 業と比べると少数派であった。 ・重視する経営指標としてROE や ROA などの指標では「重視しない」企 業から「とても強く重視する」企業まで散らばりが見られたが、売上高や 営業利益などでは多くの企業で「とても強く重視する」と回答する企業が 見受けられた。これは資本の効率性よりも絶対額を重視する企業が多い可 能性を示唆している。 ・資金調達において重視する項目として、資本コストを重視する企業の割 合よりも調達金利を重視すると回答する企業の割合が高い結果となった。 資本コストは直接目に見える利払いのような義務が存在しないため、企業 では直接的に利払いの額に関連する調達金利に比べて重要度が低いと考 えている可能性がある。 ・出資を受け入れる限度に関しては創業者の持株比率を「重視しない」、「あ まり重視しない」と回答した企業は少数であり、経営への口出しや実質的【ベンチャー・キャピタルによる出資の有無】 【コーポレート・ベンチャー・キャピタルによる出資の有無】 な経営権確保を警戒するベンチャー企業が多いという結果になった。 ・負債総額に関しては創業者の持株比率より「重視しない」、「あまり重視 しない」と回答した企業は多かったが、平均的にはある程度現在の負債総 額を考慮しながら新規の資金調達を検討する企業が多い。 ・ライバル企業からの資金調達に関しては、「重視しない」、「あまり重視し ない」と回答した企業と、「やや強く重視する」、「とても強く重視する」と 回答した企業ともに事前の予想以上に少ない結果となった。多くの企業で はそもそも重視も軽視もせずに中立的な視点でライバル企業からの資金 調達を位置づけていると考えられる。 ・株主資本コストに関しては「重視しない」、「あまり重視しない」と回答 した企業は少数であり、「普通」と回答した企業がもっとも多かった。一方 「やや強く重視する」、「とても強く重視する」と回答した企業も「普通」 と回答した企業に比べると少なく、株主資本コストを重要視する企業が多 数を占めていない結果となった。 ・企業全体の業績評価基準として「収入/売上高」使用している企業が多数 派を占めており、使用しない企業は少数派であった。 ・「売上高利益率」に関しても「収入/売上高」とほぼ同じ結果であり、企 業全体の業績評価基準として使用している企業が多いことが明らかにな った。 ・「価値ベースの尺度(EVA など)」は「収入/売上高」や「売上高利益率」 と比較すると多くの企業で企業全体の業績評価基準として採用されてい ないことが明らかになった。 ・「純資産やワーキングキャピタルなどの絶対的な尺度」に関しても「価値 ベースの尺度(EVA など)」と同様に多くの企業で企業全体の業績評価基準 として採用されておらず、「収入/売上高」や「売上高利益率」といった基 準との違いが明らかになった。
【ベンチャー・キャピタルによる出資の有無】
3. 売上高
4. 営業利益 【重視する経営指標に関する質問】
1. ROE
3. 売上高
3. 創業者の持株比率(出資を受け入れる限度)
4. 負債額(現在の負債総額) 【資金調達において重視する項目】
1. 資本コスト
3. 創業者の持株比率(出資を受け入れる限度)
【企業全体の業績評価基準】 1. 収入/売上高
2. 売上高利益率 5. 資金調達の制限(ライバル企業からの)
【企業全体の業績評価基準】 1. 収入/売上高
アンケート調査結果③
調査対象:日本の情報通信系ベンチャー企業に投資している CVC の投資 先 対象企業数:500 社 調査方式:郵送によるアンケート調査 回答数:39 社 実施日:2018 年 3 月 3 日 本アンケートでは日本の情報通信系ベンチャー企業に投資しているコ ーポレート・ベンチャー・キャピタルの投資先に対して、コーポレート・ ベンチャー・キャピタルとの関係を明らかにするための質問を行った。 近年、大企業を中心に CVC の設立によるベンチャー企業投資が増加傾 向にある。特に、情報通信系のベンチャー企業などに投資が集中している が、CVC との人事交流やハンズオンなどとの関係構築についての調査を 行っている。さらに、投資が活性化することにより、様々な問題が生じる 可能性もある。本調査では、さらに、技術やアイディアなどの問題につい て、調査を行っている。 主要なアンケート結果は次の通りである。 【主要なアンケート結果】 ・「CVC との情報伝達手段は完備されているか」という質問に対して 5 段 階評価で平均3.4 という結果が得られた一方、「CVC との人事交流は活発 であるか」との質問には同平均で2.6 とやや低めの結果となった。 ・CVC から人材引き抜きや技術やアイディアを盗まれるという警戒感は あまりなく、アンケート回答企業では出資元の事業会社からのM&A の提 案を受けた企業は一社もないという結果になった。 3. 価値ベースの尺度(EVA など) 4. 純資産やワーキングキャピタルなどの絶対的な尺度アンケート調査結果③
調査対象:日本の情報通信系ベンチャー企業に投資している CVC の投資 先 対象企業数:500 社 調査方式:郵送によるアンケート調査 回答数:39 社 実施日:2018 年 3 月 3 日 本アンケートでは日本の情報通信系ベンチャー企業に投資しているコ ーポレート・ベンチャー・キャピタルの投資先に対して、コーポレート・ ベンチャー・キャピタルとの関係を明らかにするための質問を行った。 近年、大企業を中心に CVC の設立によるベンチャー企業投資が増加傾 向にある。特に、情報通信系のベンチャー企業などに投資が集中している が、CVC との人事交流やハンズオンなどとの関係構築についての調査を 行っている。さらに、投資が活性化することにより、様々な問題が生じる 可能性もある。本調査では、さらに、技術やアイディアなどの問題につい て、調査を行っている。 主要なアンケート結果は次の通りである。 【主要なアンケート結果】 ・「CVC との情報伝達手段は完備されているか」という質問に対して 5 段 階評価で平均3.4 という結果が得られた一方、「CVC との人事交流は活発 であるか」との質問には同平均で2.6 とやや低めの結果となった。 ・CVC から人材引き抜きや技術やアイディアを盗まれるという警戒感は あまりなく、アンケート回答企業では出資元の事業会社からのM&A の提 案を受けた企業は一社もないという結果になった。3.【CVC から人材引き抜きや技術やアイディアを盗まれる警戒感】
4.【出資元の事業会社からの M&A の提案】 1.【CVC との情報伝達手段の有無】
3.【CVC から人材引き抜きや技術やアイディアを盗まれる警戒感】
7.CVC のハンズオンはあったか 5.出資元の事業会社から出資比率の引き上げの提案はあったか