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女子学生の政治意識
―昭和女子大生に対する調査から―
澄田 知子
Female Students’ Attitudes toward Politics: A Questionnaire
Survey Conducted at Showa Women’s University
Tomoko Sumita
1. 研究の背景及び目的 現在、日本の政治状況は「シルバー民主主義」とも呼ばれ、高齢者に有利な政策が優先さ れる傾向にある。近年の参議院選挙の年代別投票率の推移をみると、20 歳代の投票率は 35% 程度で60 歳代の投票率の半分以下にとどまっている(図 1)。2016 年 7 月には、選挙権年 齢が18 歳に引き下げられて初めての国政選挙が行われ、新たに選挙権を得た 18 歳及び 19 歳の投票率は46.8%と 20 歳代(35.6%)に比べれば高かったものの、60 歳代の 70.1%には 遠く及ばない。このことは、今後高齢者人口が増加することとあいまって、政府が高齢者に 有利な政策を削減しようとした場合、選挙 によって制裁を受けるリスクを高めるこ とにつながり、政策がますます高齢者寄り になることが懸念される。 こうした状況を改めるためには、高齢者 に対して絶対数の少ない若年層の投票率 を高め、その意思を政策に反映させること が重要である。本研究は、「女子学生の政治 意識に関するアンケート調査」を通じて若 者の政治や選挙に対する意識・行動を分析 し、若者を投票に向かわせるには何が必要 かを明らかにすることを目的としている。 2. 過去の類似調査 若者の政治意識をテーマとした先行調査としては、まず明るい選挙推進委員会(2016a) 「新有権者等若年層の政治選挙に関する意識調査(参院選前調査)」(以下、先行調査①とい う)がある。ここでは、自分の生活と政治との関係についての認識の違いが投票参加意欲に 大きく関係している、また現在の政治に満足している人の投票参加意欲は高く、満足してい ない人の投票参加意欲は低い傾向がみられるとの分析がなされている。先行調査①に続い て行われた明るい選挙推進委員会(2016b)「新有権者等若年層の参院選投票日後の意識調 20 30 40 50 60 70 80 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 1988 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013 2016 図1 参議院選挙の年代別投票率の推移 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 ( 回 年 ※① この表のうち、年代別の投票率は、全国の投票区から、 回ごとに142〜188投票区を抽出し調査したもの。 ※② 10歳代の投票率は、全数調査による数値。 (出所)総務省「参議院議員通常選挙における年代別投票率2 査」(以下、先行調査②という)では、子どものころ親と投票所に行った経験の有無が、投 票行動に影響を及ぼしていると分析されている。 また、西尾敬義(2014)「学生の政治意識の変化(続):札幌学院大学の場合」は、札幌学 院大学の学生を対象として政治意識について継続的に調査しているものである(以下、先行 調査③という)。この研究では、投票に「行くべきである」と考える者は、選挙があれば実 際に投票所に行く可能性が高いと想定でき、投票義務感と投票参加意識に強い相関関係が 認められたとしている。 澤田道夫(2016)「若者の政治意識に関する調査研究―熊本県内の若年世代を対象として ー」は、明るい選挙推進委員会が実施した意識調査をベースに、熊本県の若年世代を対象と して2014 年に行われた調査である(以下、先行調査④という)。ここでは、熊本の若者は 政治に対する意識をしっかりと持ち政治への関心も高いが、それを表に出そうとしない「サ イレント・ポリティカル」であるとし、政治的事柄を理解し自らの行動が政治に影響を与え ることができるという感覚(政治的有力感)の高さや、投票行動に対する規範意識が実際の 行動に結びつくか定かではないとしている。 女子学生を対象とした調査として、皆吉淳平・柴田邦臣(2006)「若年女性の投票行動と 新しいメディア―第44 回衆議院選挙のアンケート調査から―」がある(以下、先行調査⑤ という)。この研究では、若年層はブログなど新しいメディアの影響を受けていると言われ ていた中で、若年女性の投票行動に影響を与える様々なメディアの影響度を比較し、「家族 との会話」の重要性を指摘している。 3. 調査の概要 本稿で分析する「女子学生の政治意識に関する アンケート調査」は、昭和女子大学の学生との共 同プロジェクトとして実施した1。アンケートは 2016 年 10 月から 11 月にかけて行い、プロジェ クト参加者等の協力の下、昭和女子大学の学生 313 人から回答を得た。回答者の所属学部及び年 齢の分布は図2 及び図 3 のとおりである。主な調 査項目は、2016 年 7 月に行われた参議院選挙で の投票の有無、政治への関心、政治家への信頼度、 家族の態度、政治や選挙に関する情報源、関心の ある政治テーマ、若者が投票に行かない理由、若 者の投票率を上げるのに効果的な方法等である。 1プロジェクトには、日本語日本文学科 3 年礒部美希さん、環境デザイン学科 3 年寺山美那子さん、管理 栄養学科 3 年森澤美希さん、現代教養学科 1 年金牧美寿々さんにご参加いただいた。また、福祉社会学科 特任教授森ます美先生にアドバイザーを務めていただいた。 人間文化 学部, 53, 16.9% 人間社会 学部, 143, 45.7% 生活科学 部, 85, 27.2% グローバ ルビジネ ス学部, 32, 10.2% 図2 回答者の所属学部 (人数、割合) 18歳, 44, 14.1% 19歳, 93, 29.7% 20歳, 72, 23.0% 21歳, 78, 24.9% 22歳以 上, 26, 8.3% 図3 回答者の年齢構成 (人数、割合)
3 4. 調査結果の概要2 (1) 投票状況 2016 年 7 月 10 日に行われた参議院選挙について、投票した回答者は 189 人、全体の 62.0%であった3(図4-1)。年齢別の割合をみると、年齢が上がるにつれて、投票率が若 干下がる傾向が見受けられる(図4-2)。 また、投票状況と居住形態(親と同居/別居) との関係をみると、親と同居している回答者の 投票率が70.4%なのに対し、親と別居している 回答者の投票率は25.9%にとどまっていた(図 4-3)。 (2) 政治への関心 政治への関心については、関心があるとする回答(非常に関心がある・ある程度関心があ る)が48.9%、関心がないとする回答(あまり関心がない・全く関心がない)が 49.8%で、 ほぼ半々に分かれた4(図5-1)。投票状況別の割合をみると、関心があるとの回答者では 72.5%が投票していたのに対し、関心がないとの回答者の投票率は 52.0%であった(図 5- 2)。 2回答者のうち投票状況が無回答だった回答者が 8 人あった。以下の分析は、投票行動との関係を中心に 行うため、回答者 313 人から上記 8 人を除いた 305 人についての結果を報告する。 3投票した人のうち 19%(36 人)は投票日以前に投票していた。 4先行調査③の同様の質問では、「関心がある」とする回答が 57.0%、「関心がない」が 42.8%であった。 3 105 70 9 2 3 38 57 16 2 0 50 100 150 非常に関心がある ある程度関心がある あまり関心がない まったく関心がない わからない 図5-1 政治への関心(回答数) 投票した 投票しなかった 28 63 42 43 13 15 29 29 31 12 0 20 40 60 80 100 18歳 19歳 20歳 21歳 22歳以上 図4-1 年齢別投票状況(回答数) 投票した 投票しなかった 65.1 68.5 59.2 58.1 52.0 34.9 31.5 40.8 41.9 48.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 18歳 19歳 20歳 21歳 22歳以上 図4-2 年齢別投票状況(割合) 投票した 投票しなかった 70.4% 25.9% 29.6% 74.1% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 親と同居 親と別居 図4-3 居住形態別投票状況(割合) 投票した 投票しなかった 50.0 73.4 55.1 36.0 50.0 50.0 26.6 44.9 64.0 50.0 0% 50% 100% 非常に関心がある ある程度関心がある あまり関心がない まったく関心がない わからない 図5-2 政治への関心 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった
4 (3) 自分の生活と政治との関係 自分の生活と政治との関係については、関係しているという回答(非常に関係している・ ある程度関係している)が74.4%を占めているのに対し、関係していないという回答(あま り関係していない・まったく関係していない)は21.3%であった(図 6-1)。投票状況別の 割合をみると、「まったく関係していない」と考える回答者の投票率は際立って低いものの、 「あまり関係していない」とする回答者の投票率が「非常に関係している」「ある程度関係 している」との回答者の投票率を上回っている(図6-2)。 (4) 政治への満足度 政治への満足度については、満足している(大いに満足している・ある程度満足している) が18.7%なのに対し、満足していない(あまり満足していない・まったく満足していない) が56.7%と過半数を占めた(図 7-1)。他方、「わからない」との回答も 24.6%あった。投 票状況別の割合をみると、満足している回答者に比べて、満足していない回答者の投票率が 高くなっている(図7-2)。 (5) 政治家の信頼度 政治家をどの程度信頼しているか尋ねたところ、「信頼している」(大いに信頼している・ ある程度信頼している)は15.1%にとどまり、「信頼していない」(あまり信頼していない・ 60.8 61.0 73.2 9.1 38.5 35.3 36.8 23.2 90.9 61.5 0% 50% 100% 非常に関係している ある程度関係している あまり関係していない まったく関係していない わからない 図6-2 自分の生活と政治の関係 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった 31 111 41 1 5 18 67 13 10 8 0 50 100 150 200 非常に関係している ある程度関係している あまり関係していない まったく関係していない わからない 図6-1 自分の生活と政治の関係 (回答数) 投票した 投票しなかった 1 28 107 13 40 5 23 44 9 35 0 50 100 150 200 大いに満足している ある程度満足している あまり満足していない まったく満足していない わからない 図7-1 政治への満足度(回答数) 投票した 投票しなかった 16.7 54.9 70.9 59.1 53.3 83.3 45.1 29.1 40.9 46.7 0% 50% 100% 大いに満足している ある程度満足している あまり満足していない まったく満足していない わからない 図7-2 政治への満足度 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった
5 まったく信頼していない)が74.1%を占めた5(図8-1)。政治家の信頼度と投票状況別の 割合については、あまり明確な傾向はみられなかった(図8-2)。 (6) 学習経験 政治や選挙に関する学習経験(複数回答)については、97.7%の学生が学習した経験があ ると回答しており、その時期については小学校が39.0%、中学校が 78.0%、高校が 75.7%、 大学が25.6%であった(図 9-1)。投票状況別の割合をみると、年齢が高くなってから学習 した経験があるとする回答者ほど投票に行った割合がやや高くなっている(図9-2)。 (7) 投票義務感 選挙に行くべきかどうかについては、「行くべきだと思う」が74.8%に対し、「行くかどう かは個人の自由」が23.9%であった6(図10-1)。投票状況別の割合をみると、「行くべき だ」と考える回答者の71.5%が実際に投票したのに対し、「行くかどうかは個人の自由」と 考える回答者で実際に投票したのは34.2%にとどまった(図 10-2)。 5先行調査③の同様の質問では、「信頼している」(大いに信頼している・ある程度信頼している)が 15.1%、「信頼していない」(あまり信頼していない・まったく信頼していない)が 79.3%であった。 6先行調査③の同様の質問では、「行くべき」が 54.8%、「行かないことがあってもよい」が 41.9%であった のと比較すると、今回調査では、投票義務感の強い回答者が多かった。 0.0 64.4 62.5 68.0 48.5 100.0 35.6 37.5 32.0 51.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 大いに信頼している ある程度信頼している あまり信頼していない まったく信頼していない わからない 図8-2 政治家の信頼度 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった 61.3 62.6 65.4 70.5 38.7 37.4 34.6 29.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 小学校 中学校 高校 大学 図9-2 学習経験(投票状況別割合) 投票した 投票しなかった 0 29 110 34 16 1 16 66 16 17 大いに信頼している ある程度信頼している あまり信頼していない まったく信頼していない わからない 0 100 200 図8-1 政治家の信頼度(回答数) 投票した 投票しなかった 73 149 151 55 46 89 80 23 0 50 100 150 200 250 小学校 中学校 高校 大学 図9-1 学習経験(回答数) 投票した 投票しなかった
6 (8) 家族の態度 家族の政治や選挙への態度(複数回答)について、「家族と政治の話をしたことがある」 が 63.6%、「家族は投票に行っている」が 70.8%、「家族と一緒に投票所へ行ったことがあ る」が58.4%7、「家族から投票に行くように言われたことがある」が45.6%であった(図 11 -1)。投票状況別の割合をみると、「家族と政治の話をしたことがある」「家族は投票に行っ ている」「家族から投票に行くように言われたことがある」回答者は70%以上が投票してお り、「家族と一緒に投票所へ行ったことがある」回答者では83.1%が投票していたのに対し、 これらに該当しない回答者は93.8%が投票していなかった(図 11-2)。 (9) 関心のある政治テーマ 関心のある政治テーマ(複数回答)は、第1位が「少子化対策」(60.7%)、第2位が「雇 用・労働政策」(51.1%)、第3位が「社会保障政策」(49.2%)、第4位が「女性の活躍推進」 (43.9%)、第5位が「経済財政政策」(39.7%)であった(図 12)。なお、東京オリンピッ クを控えていることもあり、「文化・スポーツの振興」もこれらに次いで多く35.7%を占め た。 7先行調査②では、子どもの頃、親の投票について行ったことがあるとの回答が 43.4%であった。 71.5 34.2 25.0 28.5 65.8 75.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 投票には行くべき 行くかどうかは個人の自由 わからない 図10-2 投票義務感 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった 72.2 70.8 83.1 72.7 6.3 27.8 29.2 16.9 27.3 93.8 0% 20% 40% 60% 80% 100% 家族と政治の 話をしたことがある 家族は投票している 家族と一緒に 投票所へ行った 家族から投票に 行くように言われた 該当なし 図11-2 家族の態度 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった 163 25 1 65 48 3 投票には行くべき 行くかどうかは個人の 自由 わからない 0 50 100 150 200 250 図10-1 投票義務感(回答数) 投票した 投票しなかった 140 153 148 101 1 54 63 30 38 15 0 100 200 300 家族と政治の 話をしたことがある 家族は投票している 家族と一緒に 投票所へ行った 家族から投票に 行くように言われた 該当なし 図11-1 家族の態度(回答数) 投票した 投票しなかった
7 (10) 政治活動経験 政治に関わる活動(選挙ボランティア、市民 運動、請願書への署名、政治塾、議員事務所や 官庁でのインターンなど)への参加経験につい ては、「参加したことがある」との回答は3.2% にとどまり、「参加したことはないが、興味はあ る」との回答が 14.3%、「参加したことがない し、興味もない」が82.5%と圧倒的多数を占め た。なお、「参加したことはないが、興味はある」 との回答の中の具体的な内容として、小池百合 子東京都知事の政経塾という回答が複数見ら れた。 (11) 選挙に関する情報源 投票したかどうかにかかわらず、選挙に関する情報をどこから得ているかについて尋ね たところ、「テレビ・ラジオのニュース番組・新聞記事」が 89.2%と大多数を占めた 8(図 13-1)。次いで多かったのは「家族との会話」で 45.2%であった。日本では、2013 年 4 月 に公職選挙法が改正され、インターネ ットを利用した選挙運動が可能にな ったが、「候補者や政党のホームペー ジ・ブログ」「候補者や政党以外のイン ターネット情報(まとめサイト、マッ チングサイト、ブログ、SNS など)」 を参考にしたとの回答は、それぞれ 12.1%、10.2%にとどまり、選挙情報を 得る上で、インターネットはあまり活 用されていない状況が明らかになっ た。 8先行調査②の同様の質問では、「政党や候補者のポスター」(45.1%)、「テレビのニュースや報道番組」 (32.1%)、「政党や候補者の政見放送」(22.2%)が上位3つとなっている。 118 92 90 81 72 77 45 36 29 27 37 21 20 24 14 1 65 62 56 50 48 32 24 20 21 22 9 16 16 7 6 4 0 50 100 150 200 少子化対策 雇用・労働政策 社会保障政策 女性の活躍推進 経済財政政策 文化・スポーツの振興 教育政策 治安・テロ対策 災害対策 観光振興 憲法改正 地域活性化 外交・安全保障政策 エネルギー・環境政策 農林水産政策 特になし 図12 関心のある政治テーマ (回答数) 投票した 投票しなかった 170 104 60 34 18 23 27 15 17 25 22 2 1 102 34 36 14 25 18 10 19 15 6 7 5 0 0 50 100 150 200 250 300 テレビ・ラジオ・新聞 家族との会話 ポスター・チラシ 政見放送 友人との会話 学校で学んだこと 候補者・政党のHPなど 街頭演説 選挙カー 候補者以外のネット情報 選挙公報 何も役立たず その他 図13-1 選挙に関する情報源(回答数) 投票した 投票しなかった
8 また、投票状況別にそれぞれの回 答を選択した割合をみると、「テレ ビ・ラジオ・新聞」及び「ポスター・ チラシ」では、投票した回答者と投票 しなかった回答者に差がみられなか ったが、「家族との会話」については、 投票した回答者が参考にした割合が 55.0%と、投票しなかった回答者の 29.3%に比べて著しく高かった(図 13-2)。このほか、投票した回答者が 参 考にし た割合 が高かっ た情報 源 は、「政見放送」「候補者や政党のホー ムページ・ブログ、SNS」「候補者以 外のインターネット情報」「選挙公報」であり、反対に投票しなかった回答者が参考にした 割合の高かった情報源は「友人との会話」「学校で学んだこと」「街頭演説」「選挙カー」で あった。 (12) 投票に行かない理由 投票に行かない理由でもっと も多かったのが「どの候補者や政 党に投票すればよいか判断でき ないから」(61.4%)であり、「選 挙に興味がないから」(46.8%)、 「投票したい候補者や政党がな いから」(45.4%)、「投票しても 政 治 は 変 わ ら な い か ら 」 (38.7%)、「投票するのが面倒 だから」(35.8%)と続いた9(図 14-1)。投票状況別にそれぞれ の回答 を選択した割 合をみ る と、投票しなかった回答者に比 べて投票した回答者が選んだ割 合が高いのは、「投票しても政治 9先行調査②では、投票に行かなかった人に対してその理由を尋ねている。その上位3つは、「面倒だった (29.4%)、」「選挙にあまり関心がなかった(26.4%)」、「現在の居住地で投票ができなかったから (22.8%)」であった。また先行調査③では、選択肢に違いはあるものの、3 回の調査を通じて 7 割の学生 が「投票しても世の中変わらない」を選択し続けているとの結果であった。 62.3 47.5 47.0 45.4 38.3 23.0 8.2 4.9 0.5 1.1 60.0 45.5 42.7 28.2 31.8 34.5 16.4 7.3 3.6 0.9 0 10 20 30 40 50 60 70 どの候補者がよいかわからない 興味がない 投票したい候補者がいない 投票しても政治は変わらない 面倒 忙しい 現在の居住地に住民票がない 投票所が不便 わからない その他 図14-2 投票に行かない理由 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった (%) 114 87 86 83 70 42 15 9 1 2 66 50 47 31 35 38 18 8 4 1 0 50 100 150 200 どの候補者がよいかわからない 興味がない 投票したい候補者がいない 投票しても政治は変わらない 面倒 忙しい 現在の居住地に住民票がない 投票所が不便 わからない その他 図14-1 投票に行かない理由(回答数) 投票した 投票しなかった 89.9 55.0 31.7 18.0 9.5 12.2 14.3 7.9 9.0 13.2 11.6 1.1 0.5 0 50 100 テレビ・ラジオ・新聞 家族との会話 ポスター・チラシ 政見放送 友人との会話 学校で学んだこと 候補者・政党のHPなど 街頭演説 選挙カー 候補者以外のネット情報 選挙公報 何も役立たず その他 図13-2 選挙に関する情報源 (投票状況別割合) 投票した 投票しなかった (%)
9 は変わらない」「面倒」との回答であった(図14-2)。一方、投票した回答者よりも投票し なかった回答者が選んだ割合が高いのは、「忙しい」「現在の居住地に住民票がない」との回 答であった。 (13) 投票率の向上策 若者の投票率を向上させるた めに有効な方策について質問し たところ、第1 位は「インター ネットで簡単に投票できたら」 (59.4%)となったが、僅差で第 2 位だったのが「若者にとって魅 力ある政策が打ち出されたら」 (58.7%)であった。第 3 位は 「信頼できる政党や候補者が現 れたら」(48.5%)、第 4 位は「政 治や選挙についてもっとわかり や す い 情 報 が あ っ た ら 」 (47.8%)、第 5 位は「大学やコ ンビニなど身近な場所で投票で きたら」(46.1%)であった(図 15-1)。なお、「政治や選挙につ いても っと学ぶ機会 があっ た ら」も(33.8%)と、これらに次 いで多かった。 投票状況別にそれぞれの選択 肢が選ばれた割合をみると、投 票しなかった回答者より投票し た回答者が選んだ割合が高い主 な項目は、「若者に魅力的な政策」「投票すると特典」「投票時間の延長」「棄権すると罰則」 であった。反対に、投票した回答者より投票しなかった回答者が選んだ割合が高い主な項目 は、「信頼できる候補者」「学ぶ機会の増加」「住民票にかかわらず投票できたら」であった (図15-2)。 5. 考察 女子学生の投票行動に関して、本調査を通じたもっとも大きな発見は、家族の影響の大き さである。家族の影響については、先行調査②及び先行調査⑤でも指摘されていたが、本調 108 110 88 84 83 58 23 30 28 25 19 16 10 7 4 1 66 62 52 58 52 41 19 13 11 9 13 7 8 6 3 5 0 50 100 150 200 インターネット投票 若者に魅力的な政策 わかりやすい情報 信頼できる候補者 身近なところに投票所 学ぶ機会の増加 住民票にかかわらず投票 投票すると特典 投票時間の延長 棄権すると罰則 投票所でイベント 著名人のよびかけ マイナス1票 仕方ない 被選挙権年齢引き下げ わからない 図15-1 投票率の向上策(回答数) 投票した 投票しなかった 59.3 60.4 48.4 46.2 45.6 31.9 12.6 16.5 15.4 13.7 10.4 8.8 5.5 3.8 2.2 0.5 59.5 55.9 46.8 52.3 46.8 36.9 17.1 11.7 9.9 8.1 11.7 6.3 7.2 5.4 2.7 4.5 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 インターネット投票 若者に魅力的な政策 わかりやすい情報 信頼できる候補者 身近なところに投票所 学ぶ機会の増加 住民票にかかわらず投票 投票すると特典 投票時間の延長 棄権すると罰則 投票所でイベント 著名人のよびかけ マイナス1票 仕方ない 被選挙権年齢引き下げ わからない 図15-2 投票率の向上策(投票状況別割合) 投票した 投票しなかった (%)
10 査で、親と同居している、家族と政治の話をする、家族が投票している、家族から投票に行 くよう勧められた、と回答した学生は 7 割以上が投票に行っており、中でも家族と投票に 行った経験のある回答者は8 割以上が投票していた。また、投票した回答者の中で、選挙に 関する情報源として家族との会話を選んだ人の割合が特に高かった。 先行調査①で分析されていた、自分の生活と政治との関係の認識と投票参加意欲の関係 については、本調査で事前の「意欲」ではなく事後の「投票状況」との関係をみたところ、 明確な傾向がみられなかった。その理由として考えられるのは、意欲はあっても実際に投票 するとは限らないというギャップである。先行調査④においても、政治的有力感の高さや投 票行動に対する規範意識が実際の行動に結びつくかどうかは定かではないと指摘されてい るが、普段の政治への認識にかかわらず、若者を投票に向かわせるにはほんのちょっとした 一押しが影響を与える可能性がある。その点、多くの若者に対して投票へのハードルを下げ る方法として、インターネット投票の導入はかなりの効果が期待できる。面倒、忙しい、投 票所が不便という人にとっては、インターネット投票が問題を解決してくれる。 また、同じく先行調査①で分析されていた政治への満足度と投票参加意欲の関係につい て、本調査では、政治への満足度が低いまたはわからないという回答者の投票率が、満足度 の高い回答者よりも高い結果となった。もっとも、現在の政治に満足していない回答者が変 化を求めて投票に行くというのは自然な行動と考えられ、投票の質とも関係している。「若 者に魅力的な政策」や「信頼できる候補者」が現れれば言うことはないかもしれないが、た とえ「投票したい候補者がいない」状況であっても、「わかりやすい情報」や「学ぶ機会を 増加」させることを通じて、若者が投票の必要性を感じて投票に向かえば、それが為政者へ のメッセージとなって若者に向けた政策の重要度を高めることにつながる。 若者の投票率を向上させ、若者に必要な政策を実現させていくためには、インターネット 投票のような投票手段の改善と並行して、政治や選挙についてもっとわかりやすい情報が 発信されること、またこれらを学べる機会を増やすことも重要である。そのためには、マス コミや教育機関、あるいは未だ情報源として充分に活用されていないインターネットも、も っと大きな役割を果たせるのではないか。若者の投票行動に関しては、投票率を高めること も必要であるが、その質を高める取り組みも同時に進めていくことが求められる。 【引用文献】 明るい選挙推進委員会(2016a)「新有権者等若年層の政治選挙に関する意識調査(参院選 前調査)」 (http://www.akaruisenkyo.or.jp/060project/066search/6720/)2017.1.21 明るい選挙推進委員会(2016b)「新有権者等若年層の参院選投票日後の意識調査」 (http://www.akaruisenkyo.or.jp/060project/066search/6720/)2017.1.21 澤田道夫(2016)「若者の政治意識に関する調査研究―熊本県内の若年世代を対象としてー」 『熊本県立大学総合管理学会アドミニストレーション第22 巻第 2 号』25-46 頁
11 (http://rp-kumakendai.pu-kumamoto.ac.jp/dspace/handle/123456789/159)2016.6.6 西尾敬義(2014)「学生の政治意識の変化(続):札幌学院大学の場合」『札幌学院大学総合 研究所紀要第1 巻』11-30 頁 (http://hdl.handle.net/10742/1870)2016.8.2 皆吉淳平・柴田邦臣(2006)「若年女性の投票行動と新しいメディア―第 44 回衆議院選挙の アンケート調査から―」『大妻女子大学紀要―社会情報系―社会情報学研究 15』 95-117 頁(http://ci.nii.ac.jp/naid/110006459094)2016.8.2