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原子力発電設備のケーブル非破壊劣化診断技術

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Academic year: 2021

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特集

電力設備の予防保全技術

∪.D.C.〔る21.315.221.812:る78.743.22〕‥占20・1d9・2

原子力発電設備のケーブル非破壊劣化診断技術

Non-destructiveDiagnosisMethodofCableDeteriorationforNuclearPowerPlant

原子力発電所用低圧CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブ

ル)の劣化診断手法の検討を行った。ケーブルシース材料に着目し,ビニルにつ

いて放射線と熱による同時加速劣化を行い,加速劣化曲線を得た。この加速劣

化曲線より,線量率および温度について加速係数を求め,材料に固有の合成劣

化曲線を得た。

さらに,非破壊劣化診断技術について種々検討したなかで,シース材料を微

量採取し,熟垂岩分析を行うことにより,非破壊的にケーブルの劣化度を診断

できることが見いだされた。合成劣化曲線から求めた伸びの劣化度を,熱量量

分析法による伸びの劣化度で補正することによr),劣化診断および残存寿命予

測の精度を上げることができる。

わが国初の原子ノJ発電所が稼動して以来,すでに2()午が経 過した。原了・力発電所の長期安定運転のためには,設備に多 主副二布設されているケーブルの劣化度,残存寿命を正確かつ 容易に診断できる技術が必要とされている。

原子力発電所用ケーブルには多くの稗類があるが,人別す

ると高圧用と低圧用になる。高圧用ケーブルについては,直 流漏れ電流法など電気的な診断技術が確二、工されている。従来, 低圧用ケーブルについては,目視点検や撤去品の破壊試験に よる電与も特性・機械特件の低下を測定し診断を行っていた。 しかし,目視点検は定量化が難しく,また破壊試験による診 断は供試試料が採取できない場合があり,適切な非破壊劣化 診断法が求められていた。 本稿では,原子力発電所で使用されているケーブルの人半 を,上iめる低址CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシー スケーブル)を対象とした新しい非破壊劣化診断方法,および 残存寿命予測方法の概要とその適用例について述べる(,

劣化診断の考え方

2.1劣化判定基準 ケーブルの劣化診断にあたっては,劣化判延基準をどのよ

うに定義するかが重要となる。

低比CVケーブルに関する劣化判定基準を図1に示す。

ケーブルは,放射線と熟によって主に酸化劣化が進行し,

日馬康雄*

川上和市郎**

城市久徳***

大西隆雄****

神村誠二*****

柳生秀樹*****

㍑s〝()〟∼(∫〝7邦〟 ルtJ才(l/z77一β/r〟乙†7(Jん〟〃プi 〃オ∫〔川(ノr才ノ方才(イ∼才 7t/々〟rJO㌢∼由/け Sどむ才Å〟タ〃才′乃∼′り廿 〟J〟ぐんオ n脚,ガ 低圧CVケーブル 放射線 熱 劣化現象と劣化速度 機械特性・伸び低下≫電気特性低下 ビニルシース>架橋ポリエチレン絶縁体 劣化判定基準 ビニルシースの伸び50% 注:略語説明 CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル) 図l劣化判定基準 低圧CVケーブルの劣化は,電気特性よりも機 械特性が先行し,絶縁体よりもシースのほうが速いので,シースの伸び を劣化判定基準に採用する。 機械特性および電気特性が低下する。低圧CVケーブルは,電 気特性の低下よりも,機械特性の一部である伸びの低下が先 行する。架橋ポリエチレン絶縁体よr)もビニルシースのほう

が耐熱性,耐放射線性が劣るため,伸びの低下はどニルシー

スが速い。したがって,ここで対象としている低圧CVケーブ *rl木塙けノJ研究所高崎研究所開発部 **「1木坂-f一力研究所高崎研究所開発部工学博上 ***口立製作所口立二1二場 ****【1立電線株式会社rl烏工場 *****【1立電線株式会社電線研究所 89

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796 日立評論 VOL.72 No.8(1990-8) 加速劣化曲線 (放射線,熱) 実ケーブル 非破壊劣化診断 図2 劣化診断の基本方針 合成劣化曲線 伸びの経時変化 残存寿命予測 実環境モニタ (放射線,熱) ケーブルシース材料の加速劣化曲線を 求め,実環境をモニタし,劣化診断を行うとともに実使用ケーブルの非 破壊劣化診断技術を加え,精度を高める。 ルの劣化判定基準は,ビニルシースの伸び50%とする。これ は劣化後のケーブルを自己径に曲げたとき,割れの発生する 他に相当するものである。 2.2 劣化診断の基本方針 劣化診断を行うにあたっての北本方針を図2に示す。

ケーブルに与える影響が特に大きいと考えられる放射線,

熟に着日して加速劣化し,伸びの劣化曲線を求める。次に,

実環境の放射線,熱(温度)に対応した伸びの劣化曲線からシ

ースの伸びの劣化度を求め,残存寿命の予測を行う。 さらに,劣化診断,残存寿命予測の精度を__Lげるためには, ケーブルの劣化度を頼接的,かつ非破壊で診断できる技術の 確立が必要である。以下,伸びと良い対応性を持つ非破壊劣 化指標を検討する。

8

加速劣化曲線

はじめに,低圧CVケーブルのシース材であるどニルの加速 劣化曲線について検討する。 一般に原子力発電所の通常運転時の平均温度は30∼60℃, 線量率は1Gy/h以下であー),この環境▼卜での布設ケーブルは 熱劣化を含む低線量率・長時間照射により,ゆっくりと劣化 する。そこで,温度を室温,70℃,100℃,120℃,線量率

を1.09kGy/h,0.21kGy/h,0.()3kGy/hと変え,ビニルシー

スを加速劣化し,伸びの劣化度を検討する。 上記条件によって得た加速劣化曲線を図3に示す。

図3(a)から,伸びの低下は線量率および温度によって異な

r),線鼠率,温度が低いほどゆっくりと劣化することがわか

る。これらの加速劣化曲線の形状は,線量率と温度が異なっ

てもよく似ていることがわかる。

劣化の最もゆっくりと進行する低線量率(0.03kGy/h),室

温の曲線を基準とし,おのおのの曲線を加速係数(伸びが50%

に低下する時間比)だけ長時間軸側へ平行移動し重ね合わせる

と,図3(b)に示す1本の曲線となる。この曲線を合成劣化曲 線と呼ぶ。 合成劣化曲線が得られることは,劣化の機構が加古速度論 90 2.0 「○ 東萩G掛鮮b草 2.0 5 0 森吉G柵琴○里 0.5 A \

恥鳩卜\1

い\

幹毒巳㌣呂

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汽恥卜㌧、▲1ゝ・

102 103 時 間(h) (a)加速劣化曲線

叫喚無為

■\

1

103 時 間(h) (b)合成劣化曲線 104 温 度 線量率 (kGy/h) 室 温 70uC 1000c 120℃ ○ (} l) ● 1,09 △ A ▲ ▲ 0.21 口 □ ■1 ■ 0.03 図3 ビニルの加速劣化曲線と合成劣化曲線 ビニルについて,線 量率と温度を変え加速劣化曲線を求め,加速係数によって平行移動して 合成劣化曲線を得る。

的に線量率および温度によって影響を受けないことを意味す

る。したがって,実環境の1Gy/h以下の低線量率,平均

30∼60℃の比較的低温での劣化機構も同じとし,合成劣化曲

線を時間軸に対して移動することによr),実環境下での劣化 度を推定する。

(3)

原子力発電設備のケーブル非破壊劣化診断技術 797

非破壌診断技術の検討

伸びに対応する指標を椎々検討した結果,物理化学変化を 高感度分析機器を利用し,検知することがイ√力と考えた1)。 4.1ビニルの劣化形態と微量分析技術

ビニルの放射線および熟による厳密な劣化機構は明らかで

はない。しかし,主な劣化形態としては,ポリマの崩壊によ る分了眉低卜,可塑剤の酸化および揮散があげられる。ポリ

マの分子量低下の微量分析方法として,TGA法(熱垂竜分析

法)が適切かつ有望と考えたので,TGA法について検討した結

果を次節に述べる。 4.2 TGA法の検討 TGA法は試料採取最が5mg以■卜と微員で済むため,ケーブ

ル回路の機能を停_1ト破壊することなく診断することができ

る。〕ポリマの分子量低下の劣化形態は,TGA法によって得ら れる熱分解速度に敏感に反映されると判断した2)。そこで放射 線・熟のl祁寺劣化した試料について,TGA法による測定を行 った(〕この結果の一例を図4にホす。 末劣化試料と劣化試料のTGA曲線を比較してみると, 2nO∼300℃にかけて顕著な違いがみられ,劣化によって垂旨 減少の開始温度が低温側に移動する。この領域は,ポリマの 脱塩化水素反応と可塑材の挿散現象が混在したところである が,椎々解析の結凪 ポリマの脱塩化水素加古が主凶と考え た。この熱分解速度を重量が5%減少する温度(以下,T5(!∼;と 称する。)で表し,劣化による変化を評価した。結果を図5に 示す。ビニルのT5切,は積算練炭の増大によって低下する。多少 のばらつきはあるものの,積算線呆とT5く㌔,の間にはある一定の 傾向が観察され,T5ワもは線量率,温度に影響を受けず積算線量 0 5 0 ∩ブ ー、-ご■■、 ヽ ----1、 (訳)柵令駕州側 lヽ lヽ

;、、、

1 1 1 1 1 1 1 1 1 \1、 200 T5% 温 度(Oc) 400 注:-未劣化試料,---劣化試料 図4 ビニルのTGA曲線の一例 TGA法(熟重量分析法)によって同一 の重量減少が生じる温度は,劣化試料が末劣化試料よりも低くなること を示す。 280 270 P £260 トー 250 ロ0 ●

皇ヾ㌧∴

線量事(kGサイト1) 温度(C) ○:1_口9 室温 ●:トロ9 7〔) △:〔).21 室温 ▲:0-21 70 □:〔)_03 室)息 ■ ニ0.n3 70

▲\△盲:\

0.1 0.2 0,3 0・4 積算線量(MGy) 図5 ビニルの積算線量によるT5%の劣化 ビニルのT5%は,積算線 量に逆比例した直線となることを示す。 0 0 4 0 nU O O O O 3 2 (訳).c 菅 緯墨字(h口〃ll) 温度(C) ○ こl口勺 室温 ●:】∩9 7〔) △ 二=_21 室温 ▲:口_21 7い □:‥(〕3 呈温 ■:(1_(13 7∩ □ ▲

・▲.ノ手合〆

二/0一日・

/

皇 230 240 250 260 270 280 丁5?。(℃) 図6 ビニルのT5%と伸びの相関 ビニルの丁5%は,伸びと比例する ことを示す。 の増大によって低1こ▲することがわかる。 4.3 T5%と伸びの相関性 ビニルのごく微岩なサンプルのTGA法によって求めた1、51㌔, と伸びとの相関惟を図6に示す。T51キ;と伸びの間には良い州関 件があることがわかり,この一丁法による劣化診断の可能性が 兄いだされた。 4.4 実布設ケーブルへの適用 約18年間稼動したト一寸立電線株式会社製の実布設低庄CVケー ブルに対し,この一丁法の適用を検討した。結果を図7にホす(, ごく微量採収したビニルシースのT5%を求め,あらかじめ得 た図6にホす相関図を川い伸びを推定した。この推定した伸 びと破壊試験によって実際に■求めた伸びとを比較した結果を 図7にホす。両者の仰は比較的良い【一致を示し,このf法の 有効性が認められた。 91

(4)

798 日立評論 VOL_7Z No.8い990-8) 300 0 0 0 0 2 (訳)一3里巾¶〓一番詫鮮潜

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100 200 TGA法による伸び(%) 300 図了 TGA法から推定した伸びと破壌試験によって求めた伸びの関 係 実使用したケーブルに対し,TGA法と実破壊試験を実施し,求めた 伸びが比較的よく一致することを示す。

残存寿命の予測法

実環境の線量率,温度に対応した合成劣化曲線を作成する。

この曲線から伸び50%に低下する時間,すなわち寿命がわか り,ケーブルの稼動年数との差によって残存寿命が推定され

る。想定環境を線量率0.2Gy/h,温度60℃としたときの合成

劣化曲線を図8に示す。寿命は65年と推定される。ここで, 稼動年数を20年とすれば,劣化度は伸び290%,および残存寿 命は45年と推定できる。 最終的には,TGA法によって求めた伸びの値と合成劣化曲 線から求めた伸びの値を比較し,この佃者がほぼ同程度であ れば,推定した残存寿命の精度が高まる。もし両者に差があ れば,伸びの偶の小さいほうを優先する。 92 400 300

b200 一缶-100 50 劣化判定基準 ---丁■ TGA法 伸び 合成劣化曲線

(芸≡‡≡≡率;…ごy/h)

105 時 間(h) 稼動年数20年 106 寿命65年 残存寿命45年 図8 残存寿命予測法の適用 長期にわたる環境条件の測定により, 合成劣化曲線から残存寿命が推定できるが,さらにTGA法による実使用ケ ーブルの劣化度合を考慮することによって精度の向上を図る。

8

低圧CVケー7小ルの非破壊劣化診断技術について検討した結 果,以下の結論を得た。

(1)シースであるビニルの劣化形態は,放射線の線量率,温

度に影響を受けないことがわかった。 (2)ビニルシースをご〈微量採取し,TGA法によって測定す ることにより,ビニルシースの伸びを非破壊的に推定できる。 (3)以上の手法により,劣化診断および残存寿命予測が可能 となる。今後は,データの蓄積によって精度の向上を図って いく予定である。 参考文献 1)早川:高分子材料の寿命とその予測,アイピーシー(平1) 2)M.B.ネイマン(稲葉,ほか共訳):高分子劣化,産業国吉 (昭41)

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