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ネットワークポリマーNo.5.indb

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工藤 宏人

関西大学 化学生命工学部 化学・ 物質工学科 〒 564-8680 大阪府吹田市山手町 3-3-35

UV 硬化性ハイパーブランチポリマーおよび

環状オリゴマーの合成と性質

工藤 宏人* 概   要 末端にメタクリロイル基を有するハイパーブランチポリマーは,A2タイプモノマーとしてビスエポキシド, B3タイプモノマーとしてトリスカルボン酸,C タイプモノマーとしてメタクリル酸を用い,A2+B3+C 型重合 反応により,高収率で得られた。得られたハイパーブランチポリエステルの物理的特性や UV 硬化性は,対応す る直鎖状ポリマーと比較すると優れていることが分かった。さらに,硬化膜の架橋密度は高く,低複屈折性を示 すことが判明した。また,ラジカル重合性基やカチオン重合性基を有するカリックスアレーン誘導体やノーリア 誘導体を合成し UV 硬化性樹脂への応用について検討した。その結果,優れた溶解性,成膜性,および耐熱性を 示し,さらに,それらの UV 硬化性は最も優れていることが判明した。

1.はじめに

UV 硬化性材料は,印刷,建材材料,光学材料,電 子材料など,幅広い分野に応用されている1)。例えば, エポキシアクリレート2),ウレタンアクリレート3),ポ リエステルアクリレート4)などがよく知られ,それらは 直鎖状ポリマーである。さらには,カルボキシル基を 有するエポキシアクリレートはアルカリ現像型のソル ダーレジストとしてプリント基板の永久保護膜等とし て応用されている。本総説では,新しい UV 硬化性材 料の開発を目的として,ハイパーブランチポリマーや 環状オリゴマーを基盤とした応用例について紹介する。 ハイパーブランチポリマーの合成方法の報告例は, 学術論文や特許に数多く見受けられるが,それらを UV 硬化性樹脂に応用した例は少ない。ハイパーブラ ンチポリマーは,その構造的特性から直鎖状ポリマー とは異なり,以下に示す①~④の特徴が挙げられる。 ①一分子内に多数の末端基を有し,末端官能基の影響 を大きく受ける。②鎖状高分子と比較して,溶液粘度 は低い。③多くの枝分かれ骨格を有することから溶解 性に優れる。④非晶性で成膜性を有することが多い。 一方,環状オリゴマーは末端基を有さず,その構造 的特性として,剛直な骨格を有し,ポリマーと同等な

【総 説】

耐熱性や成膜性を有することが多い。従って,環状オ リゴマーはポリマーと同様に応用することが可能であ る。しかし,環状オリゴマーを UV 硬化性材料として 応用した例は,著者以外にはほとんどない。また,環 状オリゴマーの合成例は少なく,その種類は限られる。 例えば,フェノールとアルデヒドの縮合反応により合 成される環状オリゴマー,カリックスアレーン(CA) 類はかご型の構造で,シクロデキストリンやクラウン エーテル類と同様に包接能を有し,CA 類に関する研 究はホスト・ゲスト分子挙動に関することが多い5) CA 類の特徴は以下に示す①~④の特徴が挙げられ る。①一分子内に多くの水酸基を有する。②熱的安定 性が高い6)。③高いガラス転移温度(T g)と高い融点 (Tm)を有する6)。④ CA 類の構造によっては成膜性 を有する。 以上のように,ハイパーブランチポリマーや環状オ

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リゴマーの構造に起因する物理的特性は,その構造に 起因して直鎖状ポリマーとは異なる。これらの物理的 特性を上手に利用することで,優れた UV 硬化性樹脂 材料に応用可能である。

2.ハイパーブランチポリマー

2.1 ‌‌ハイパーブランチポリマーの一般的な合成法 と性質 ハイパーブランチポリマーは二種類の方法により合 成される(Fig.‌1)。一つは,同一分子内に異なる重 合反応性基を有するモノマー(AB2)を合成し,それ を重合する方法である(AB2法)。二つ目は,重合反 応性基数の異なる二つのモノマー(A2モノマー,B3 モノマー)による重合方法である(A2+B3法)。AB2 法による方法ではモノマーの分子設計を慎重に行う必 要性があるが,A2+B3法は,市販品のモノマーをそ のまま使用することも可能である。また,A2+B3法 の重合過程においてミクロゲルの生成も併発するの で,詳細な重合反応条件の検討が必要であるが,大量 合成も可能である。 2.2 ‌‌光硬化性ハイパーブランチポリマーの合成と 性質 ビスエポキシド類とジカルボン酸類の反応により, 側鎖に水酸基を有するポリエステルが得られる。この 重合反応システムは,主鎖と側鎖を同時に構築する方 法として有用である7)。この重合反応を応用して A 2 +B3法によりハイパーブランチポリマーを合成する には,ビスエポキシド類とトリカルボン酸類の反応を 検討すればよい。この重合反応を,温度,濃度,時間 の反応条件を検討し,ゲルが生成する直前に,重合を 停止させるとハイパーブランチポリマーが高収率で得 られる。具体的には,ビスフェノール A ジグリシジ ルエーテル(BPGE)とトリメシン酸(TMA)との 重付加反応を,触媒として第四級オニウム塩を使用し, 濃度 1 mol/L,80℃,6 時間の条件では,ゲル化合物 は全く生成せず,対応するハイパーブランチポリエス テルが 80%程度の収率で得られている(Fig.‌2)。6 時間以上の重合反応条件では,ミクロゲルが生成し, 可溶性ポリマーの重合度と重合分布は急激に上昇し, その後,不溶性のゲルが定量的に生成される(Table‌1)。 さらに,BPGE と TMA の重合において,第三のモ ノマーとしてメタクリル酸(MA)存在下で重合反応 を検討することで,末端にメタクリロイル基を有する Fig.‌1 ハイパーブランチポリマーの合成法. Fig.‌2 ハイパーブランチポリエステルの合成. Table‌1 BPGE と TMA の重付加反応a)

Run 触媒b) 収率c) M nd) Mw/Mnd) 1 TBAC 82 6400 3.41 2 TBAB 81 5100 2.75 3 TBPC 82 5300 3.08 4 TBPB 79 4700 2.54 5 TPPC 75 5000 3.01 6 TPPB 70 4000 2.20

a) BPGE (1.5 mmol),TMA (1.0 mmol), catalyst (5 mol%) in NMP (2.5

mL) at 80℃ for 6 h. b) TBAC: tetrabutylammonium chloride, TBAB:

tetrabutylammonium bromide, TBPC: tetarabutylphosphonium chloride, TBPB: tetrabutylphosphonium bromide, TPPC: tetraphenylphosphonium chloride, TPPB: tetraphenylphosphonium bromide. c) Insoluble parts in diethyl ether. d) Estimated by GPC (DMF) based on polystyrene standards. Fig.‌3  末端にメタクリロイル基を有するハイパーブランチポ リエステルの一段階合成 (A2+B3+C 法).

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ハイパーブランチポリマーを一段階で合成することが 可能である8)。この重合は A 2+B3+C 法であり,DMF 中,80℃の条件で,さまざまな仕込み比で,さまざま な重合時間で検討すると,Mn=5100-7900 のポリマー が,4-83%の収率で得られる(Fig.‌3,Table‌2)。 BPGE/TMA/MA=6/3/3 の仕込み比で行った場合 (Runs 1-3),得られたポリマーのメタクリロイル基の 導入率は比較的高い。BPGE/TMA/MA=6:3.5:2.5 の仕込み比で行った場合(Runs 4-6),得られたポリ マーの分子量および収率は共に高いが,末端に多数の エポキシ基が残存する。さらに,この仕込み比で,重 合時間を延ばすとゲル化合物が生成する。次に, BPGE/TMA/MA=6/4/2 の仕込み比で行うと(Runs 7,8),メタクリロイル基の導入率は低く,ゲル化合物 が生成しやすい。以上のように,モノマーの仕込み比, 重合条件を選択することで,末端にメタクリロイル基 を有するハイパーブランチポリエステルを高収率で得 ることが可能である。 2.3 ‌‌末端にメタクリロイル残基を有するハイパー ブランチポリマーの‌UV 硬化性 ハイパーブランチポリエステル(Mn=5900,Mw/ Mn=3.62,Run 3 in Table‌2),と直鎖状ポリマー Ref-1,Ref-2 をメイン樹脂として,2- メチル -1-[4-(メチル チオ)フェニル]-2- モルフォリノ -1- プロパン(Irgacure 907Ⓡ)を光重合開始剤として用い,増感剤に 2- エチ ルアントラキノン(2-EAQ)を,100:3:1(wt%) の配合比で調整し,KBr 板上にフィルムを作製する。 このフィルムに光源として 250W 超高圧水銀灯(8.0 mW/cm2 at 254 nm)を用いて光照射を行い,in situ 条件下で FT-IR により測定することで,メタクリロ イル基の転化率を算出している。その結果,いずれの サンプルも光照射時間の増加に伴い光ラジカル重合が 進行することを,IR スペクトルにおいて,1636 cm-1 のメタクリロイル基(νC=C)に起因するピークの 減少による確認されている。また,照射時間約 240 秒 後において,ハイパーブランチポリエステルの転化率 が最も高い(Fig.‌4)。このことは,直鎖状構造にお いては,架橋構造が形成されると,分子運動性の制御 Table‌2 BPGE,TMA と MA の重付加反応a) Run 仕込み比(mmol) 時間(h) 収率b) M nx10-3 c) Mw/Mnc) R.M. (%)d) Methacryloyl : epoxye) BPGE TMA MA 1 6 3 3 12 70 5.1 3.58 84 36 : 7 2 6 3 3 18 72 5.9 3.62 98 40 : 1 3 6 3 3 24 73 5.9 4.47 98 40 : 1 4 6 3.5 2.5 6 78 6.2 3.76 40 16 : 24 5 6 3.5 2.5 6 83 7.7 5.88 57 20 : 15 6 6 3.5 2.5 12 78(6)f) 7.9 8.47 81 26 : 6 7 6 4 2 6 83 6.9 2.85 37 11 : 19 8 6 4 2 9 4(92)f) 7.0 5.73 a) The reaction was carried out with BPGE and TMA in the presence of MA using 5 mol% of TBAC and HQ in DMF at 80℃. b) Insoluble

parts in diethyl ether. c) Estimated by GPC (DMF) based on polystyrene standards. d) The ratio of methacryloyl groups in synthesized

polymers. e) The relative ratio of methacryloyl groups and epoxy groups was estimated by 1H NMR. f) Insoluble parts in THF.

Fig.‌4  ハイパーブランチポリエステル(■),低分子ジアク

リレート Ref-1(●),直鎖状ポリマー Ref-2(▲)の 光ラジカル重合.

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により光反応性が低下する。しかし,ハイパーブラン チポリマーの架橋構造は分子運動性に優れることか ら,最終的には,ハイパーブランチポリマーの転化率 は高くなると考えられる。 2.4 ‌‌アルカリ現像型ソルダーレジスト材料への誘導 ハイパーブランチポリエステルの側鎖水酸基にアル カリ現像性基の導入を目的として,ハイパーブランチ ポ リ エ ス テ ル(Mn=5900,Mw/Mn=3.62,Run 3 in Table‌2)とテトラヒドロフタル酸無水物(THPA) との反応により,側鎖にカルボキシル基を導入するこ とで,対応するハイパーブランチポリマーへ誘導され る。その結果,誘導されたハイパーブランチポリマー は,2.38 wt%のテトラメチルアンモニウムヒドロキ シド(TMAH)水溶液に可溶となり,アルカリ現像 型ソルダーレジスト材料への応用が可能となる(Fig.‌ 5)。 2.5 硬化性樹脂の架橋密度 Table‌3 に,Ref-1(低分子ジアクリレート化合物), Ref-2(直鎖状ポリマー)およびハイパーブランチポ リエステルの UV 硬化によるメタクリロイル基の転化 率,ガラス転移温度(Tg)および架橋密度をまとめ ている。ハイパーブランチポリエステルは低分子ジア クリレート化合物と直鎖状ポリマーの中間の性質を有 していると思われる。 熱硬化後のハイパーブランチポリエステルの架橋密 度は直鎖状ポリマー(Ref-2)よりも高い。このことは, ハイパーブランチポリエステルの場合,分岐骨格が架 橋部位に変化するためと考えられる。 2.6 複屈折率特性 Table‌4 に,アルカリ現像型ハイパーブランチポリ マー HBPEAc-COOH と直鎖状ポリマー Ref-2-COOH を UV 照射することで得られた硬化膜とそれらの硬化 膜を延伸した場合における複屈折率の値をまとめてい る。HBPEAc-COOH の複屈折率は Ref-2-COOH に比べ て非常に小さい。このことは,ハイパーブランチポリマー の硬化膜はアモルファス状であるためと考えられる。

4. 環状オリゴマーを基盤とした UV 硬化

性樹脂

4.1 カリックスアレーン カリックスアレーン(CA)はフェノール類とアルデ ヒド類との縮合反応により生成する環状オリゴマーであ る。CA 類の合成は Gutsche 9)らによって 4 量体,calix [4]resorcinarene(CRA[4]),6 量体 p-methylcalix[6] arene(MCA[6]),8 量体 t-buthylcalix[8]arene(BCA [8])が容易にかつ選択的に高収率で合成する方法が 確立されている(Fig.‌6)。 Fig.‌5 アルカリ現像型ハイパーブランチポリエステルの合成. Table‌3 硬化フィルムの架橋密度と Tg

Main resin(硬化方法) Tg(℃) cross-link density(mol/m3 conversion (%)Methacrylate

ハイパーブランチポリエステル(光硬化) 54 1091 54 ハイパーブランチポリエステル(光硬化+熱硬化) 83 1156 70 低分子ジアクリレート Ref-1.(光硬化) 99 2834 37 低分子ジアクリレート Ref-1(光硬化+熱硬化) 129 5392 62    直鎖状ポリマー Ref-2.(光硬化) 45 123 40    直鎖状ポリマー Ref-2(光硬化+熱硬化) 94 213 67 Table‌4 硬化膜の複屈折率の測定 Run 硬化膜 Δn 1 HBPEAc-COOH の硬化膜 0.00007 2 延伸した HBPEAc-COOH の硬化膜 0.00029 3 Ref-2-COOH の硬化膜 0.00018 4 延伸した Ref-2-COOH の硬化膜 0.00042 The intensity (I) of the probe light transmitted through crossed polarizers was measured. The relationship between I and birefringence (⊿n) is biven by the following equation I = I0sin2 (πd⊿n/λ) where I0

is the light intensity transmitted under parallel polarizers, d is the film thickness, and, λ is the wavelength of the probe light.

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4.2 ‌‌ラジカル重合性基を有するカリックスアレーン 誘導体類の合成と性質およびその光反応性10) メタクリロイル基およびアクリロイル基を有するカ リックスアレーン誘導体類(2a,2b,3a,3b)は, MCA および BCA とメタクリロイルクロライドおよ びアクリロイルクロライドとの反応を 1- メチル -2- ピ ロリドン(NMP)中,塩基としてトリエチルアミン を用いて合成される。さらに,カリックスアレーンと メタクリロイル基との間にスペーサーとしてアルキル 基を有するカリックスアレーン誘導体(4a)は MCA とグリシジルメタクリレートとの反応を NMP 中,触 媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB) を用いて得られている。同様に,カリックスアレーン 誘導体 類(5a,5b)は MCA と(2- メタクリルオキシ) エチルイソシアネートとの反応を触媒としてジラウリ ン酸ジエステルジブチルスズを触媒に用いた反応によ り得られている。また,カリックスアレーンとアクリ ロイル基との間にスペーサーとしてエチルエーテル基 を有するカリックスアレーン誘導体(6a)は MCA と 2- クロロエタノールを水酸化ナトリウム水溶液中で反 応させた後,アクリル酸と縮合させることで合成され ている。以上のようにカリックスアレーン誘導体類, 2a ~ 6a が合成され,それぞれの物理的特性および光 硬化性について検討されている(Fig.‌7)。 得られたカリックスアレーン誘導体類の耐熱性はす べて非常に高い。特に,熱重量損失分析装置(TGA) による 10%重量損失温度 2a と 2b はそれぞれ,434℃, 406℃で非常に高い値を示す。しかし,カリックスア レーンと重合性基との間にスペーサーとしてアルキル 基を有するカリックスアレーン誘導体類(4a,5a, 5b,6a)の熱安定性は低くなる傾向を示している。 2a,3a,4a と 5a の光重合を 2- フェノキシエチルア クリレートで希釈し,光開始剤としてベンジルジメチ ルケタール(Irgacure 651,Ciba-geigy)を用い,UV 照射することで検討を行い,光重合性が高いことを示 している(Fig.‌8)。 Fig.‌6 カリックスアレーンの合成. Fig.‌7  ラジカル重合性基を有するカリックスアレーン誘導体 類の合成. Fig.‌8  ラジカル重合性基を有するカリックスアレーン誘導体 類の光硬化性.

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4.3 ‌‌カチオン重合性基を有するカリックスアレーン 誘導体類の合成と性質およびその光反応性11) プロパルギルエーテルおよびアリルエーテル基を有 するカリックスアレーン誘導体類(7a,8a)は MCA とプロパルギルブロマイドおよびアリルブロマイドと を NMP 中,相間移動触媒として TBAB 存在下,塩 基として水酸化カリウム(KOH)を用いて,50℃, 24 時間の条件で反応させることで合成される(Fig.‌ 9)。同様にして,2- エトキシビニルエーテル基を有 するカリックスアレーン誘導体類(9a,9c)を MCA および BCA と 2- クロロエチルビニルエーテルと反応 させることで得られている。さらに,8a の異性化反 応を NMP 中,TBAB とカリウム tert- ブトキシド存 在下,l80℃,24 時間の条件で行うことにより 1- プロ ペニルエーテル基を有するカリックスアレーン誘導体 (10a)を得ている。さらに,側鎖に水酸基とビニルエー テル基を有するカリックスアレーン誘導体(11a)の 合成は MCA とグリシジルビニルエーテルの反応を, TBAB を触媒に用いて,NMP 中,110℃,48 時間の 条件で反応することで得られている。 さらに,熱重量分析(TGA)と示差走査熱量分析 (DSC)による熱的特性を調べたところ,ガラス転移 温度(Tg=148-314℃)および耐熱性(Td10=148- 314℃)は共に高い値を示している。 次に,カリックスアレーン誘導体 7a-11a の光架橋 反応挙動は,光酸発生剤を添加した膜を作製し,UV 照射後,80℃で加熱することで検討している(Fig.‌ 10)。光酸発生剤としてビス[4-(ジフェニルスルフォ ニオ)フェニルスルフィド ビス(ヘキサフルオロホ スフェイト)](DPSP)を用いた場合,エトキシビニ ルエーテル基を有する 9a と 9c が高い光反応性を示 している。Crivello らにより,ポリマー側鎖の光架橋 反応は 1- プロペニルエーテル基の方がエトキシビニ ルエーテル基よりも高いと報告されている12)。しか しながら,カリックスアレーン誘導体類では逆の結果 が得られており,カリックスアレーン誘導体類の環状 構造と関係がある可能性がある。 4.4 ‌‌環状エーテル基を有するカリックスアレーン 誘導体類の合成と性質およびその光反応性13) オキセタニル残基を有するカリックスアレーン誘導 体類(12a,12c,12d)は,MCA[6],BCA[8],お よび CRA[4]と 3- メチル -3- オキセタニルメトキシ トシレートと NMP 中,塩基として KOH を用い,室 温下,48 時間の条件で得られる(Fig.‌11(a))。同様 に,オキシラニル残基を有するカリックスアレーン誘 導 体 類(13a,13c,13d) は,MCA[6],BCA[8], CRA[4]とエピブロモヒドリンとの反応を塩基とし て Cs2CO3を用いることで合成されている(Fig.‌11 (b))。 また,得られたカリックスアレーン誘導体類の Td10 は 366-414℃であり,耐熱性は非常に高い。 次に,カリックスアレーン誘導体類の光硬化性挙動 は,5 mol%の DPSP を添加したフィルムを調製し, UV を照射し,その後 150℃前後で加熱することで検 Fig.‌9  カチオン重合性基を有するカリックスアレーン誘導体 の合成. Fig.‌10  カチオン重合性基を有するカリックスアレーン誘導 体類の UV 硬化性.

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Fig.‌11  オキセタニル残基およびオキシラニル残基を有する カリックスアレーン誘導体類の合成. Fig.‌12  オキセタニル残基を有するカリックスアレーン誘導 体の UV 硬化性. Fig.‌13  スピロオルソエステル残基を有するカリックスア レーン誘導体類の合成. 討され,速やかに光カチオン重合が進行している(Fig.‌ 12)。これらの結果は,オキセタニル残基を有する方 がオキシラニル残基を有する誘導体より光反応性が高 く,また CRA 誘導体が最も光反応性に優れているこ とを示している。 さらに,スピロオルトエステル残基を有するカリッ クスアレーン誘導体類(14a,14c,14d)はカリック スアレーン誘導体類,MCA-2,BCA-2 および CRA-2 と 2- ブロモエチル -1,4,6- トリオキサスピロ[4,4]ノ ナン(BMTSN)との反応を DBU 存在下で行うこと で合成される(Fig.‌13)。しかし,MCA[6],BCA[8], および CRA[4]と BMTSN の反応は立体障害により 進行しない。 Fig.‌14  スピロオルソエステル残基を有するカリックスア レーン誘導体類の UV 硬化性.

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同様に,14a,14c,14d を用いて,DPSP を含む 薄膜を調製し,UV 光照射した後,150℃で加熱処理 した結果,光架橋反応は速やかに進行した(Fig.‌14)。 また,これらの光酸発生剤を用いた光反応は光照射後 に加熱をしない場合には全く反応が進行しない。 4.5 ノーリアの合成 著者らはレゾルシノールとジアルデヒド類の反応 を,仕込み比レゾルシノール:ジアルデヒド類=4:1 で,エタノール中,80℃,48 時間の条件で行った場合, ゲル化合物は全く得られず,Fig.‌15 に示すような可 溶性のオリゴマーのみが合成されることを見出してい る14) 合成されたオリゴマーの構造解析を,1H NMR, MALDI-TOF Mass スペクトル,単結晶 X 線構造解 析を用いて行い,一分子内に 24 個の水酸基を有する ラダー型環状オリゴマーであることを証明し,その構 造体をラテン語で水車を意味するノーリア(noria) と命名している(Fig.‌16)(収率=83%)。 この縮合反応は,可逆反応課程で,熱的制御下で進 行し,ノーリアのみを選択的に,高収率で合成するこ とが可能であり,動的共有結合化学(DCC; Dynamic Covalent Chemistry)システム15)と称される。ノー リアは,CA よりも,剛直な骨格を有し,より多くの 光重合性基を導入することが可能であり,優れた UV 硬化樹脂への応用が期待される。 Fig.‌15 レゾルシノールと 1,5- ペンタンジアールの縮合反応. Fig.‌16 ノーリアの構造.

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4.6 ‌‌光重合性基を有するノーリア誘導体の合成と それらの物理特性 ノーリアの全ての水酸基を光重合性基(メタクリロ イル基,オキセタニル基,ビニルエーテル基)に変換 し,得られたノーリア誘導体類の物理特性(溶解性, 製膜性,耐熱性)と光反応特性について詳細に検討さ れている(Fig.‌17)16) ノーリアと合成したノーリア誘導体類の溶解性およ び成膜性についてまとめると,ノーリアは,非プロト ン性,極性溶媒に可溶であるが,その他の一般的有機 溶媒には不溶である。しかし,ノーリアの水酸基を重 合性基で置換すると優れた溶解性を示す。成膜性の評 価は,有機溶媒に溶解させ,シリコンウエハー上にス ピンコートすることで評価し,ノーリアは成膜性を示 さないが,他のノーリア誘導体類は全て良好な成膜性 を有している(Table‌5)。 さらに,ノーリアやノーリア誘導体類の耐熱性を熱 重量損失温度分析(TGA)装置により測定し,330 度 以上の耐熱性を有することが判明している(Table‌6)。 4.7 ‌‌光重合性基を有するノーリア誘導体の光硬化 反応 合成したノーリア誘導体類の光硬化反応は,noria-MA と noria-HMPA の場合は,Irgacure 907 を光ラ ジカル重合開始剤とし,noria-VE と noria-OX の場合 は,DPSP を光カチオン重合開始剤として用い,それ ぞれの薄膜を調製し光照射を行い検討すると,Fig.‌18 Table‌5 ノーリアとノーリア誘導体類の溶解性および成膜性

溶媒 noria noria-MA noria-HMPA noria-VE noria-OX

water - - - - - DMSO ++ ++ ++ ++ ++ NMP ++ ++ ++ ++ ++ DMF +- ++ ++ +- ++ methanol - - - - - acetone - ++ ++ ++ ++ 2-propanol - +- +- ++ ++ THF - ++ ++ ++ ++ ethyl acetate - ++ ++ ++ ++ chloroform - ++ ++ ++ ++ n-hexane - - - - ++ PGMEA +- ++ ++ ++ ++ 2.5 wt% TMAHaq. ++ - - - - 成膜性 × ○ ○ ○ ○ ++:Soluble at room temperature.  +:Soluble by heating. +-:Partially soluble.   O:Possible, X: Impossible. Table‌6 ノーリアおよびノーリア誘導体の耐熱性

noria derivative Tdi a) T d5% b)

noria 333 365 noria-MA 387 418 noria-HMPA 332 365 noria-OX 347 387 noria-VE 336 365 a)T di : Thermal decomposition initial temperature. b)Td5% : 5wt% -loss of thermal decomposition temperature Fig.‌17 重合性基を有するノーリア誘導体の合成.

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に示すように,それぞれの官能基により光反応性は異 なることが分かる。また,得られた硬化樹脂の耐熱性 を TGA で測定したところ,硬化前とほとんど変わら なかった。一般的に,ポリマーの光硬化性樹脂の場合, 硬化後の耐熱性は大きく向上し,構造によっては 50℃以上の耐熱性の向上を示すこともある。このこと は,硬化後により多くの共有結合が三次元的に形成さ れ,ポリマーのセグメント運動が大きな制限を受ける ことによる。ノーリアの場合,硬化前後に耐熱性の変 化が確認されないのは,硬化前後において分子運動性 の変化がほとんどないためと考えられる。

5.おわりに

A2+B3法によりハイパーブランチポリマーは高収 率で合成することが可能であった。また,A2+B3+C 法により,末端に官能基を有するハイパーブランチポ リマーを一段階で合成することも可能であった。A2 タイプモノマーとしてビスエポキシド,B3タイプモ ノマーとしてトリスカルボン酸,C タイプモノマーと してメタクリル酸を用いると,末端にメタクリロイル 基を有するハイパーブランチポリエステルが高収率で 合成された。得られたハイパーブランチポリエステル は優れた溶解性や成膜性を有した。さらに,それらの UV 硬化性は対応する直鎖状ポリマーよりも優れてい た。また,UV 照射後,さらに加熱を行うことで得ら れた硬化膜は,直鎖状ポリマーを用いた場合よりも架 橋密度が高く,低複屈折率性を示した。このことは, ハイパーブランチポリマーの分岐骨格に起因すると考 えられる。 また,カリックスアレーンは,フェノールとアルデ ヒドの縮合反応により選択的に合成され,多くの水酸 基を有する。ラジカル重合性基やカチオン重合性基を 導入したカリックアレーン誘導体類は,高い耐熱性, 優れた溶解性や成膜性を有した。さらに,それらの UV 硬化性は,直鎖状ポリマーやハイパーブランチポ リマーよりも優れていることを示した。動的共有結合 化学(DCC)システムで合成されたノーリアは,ラダー 型環状オリゴマー骨格を有し,一分子内に 24 個の水 酸基を有する。ノーリアを基盤とした UV 硬化性樹脂 はカリックスアレーンと同様に,優れた物理的特性(溶 解性,成膜性,耐熱性)と優れた UV 硬化性を示した。 ハイパーブランチポリマー,カリックスアレーン, およびノーリアの合成方法は,それぞれ一段階合成の 簡便な方法である。市販品モノマーをそのまま用いる ことが可能であり,大量合成も可能である。このこと からも,今後の本研究の発展と実用化は大いに期待さ れる。

追悼

本論文は,筆者が神奈川大学工学部において本研究 を遂行するにあたり,多大なるご指導およびご助言を いただいた,故西久保忠臣先生(2010 年 12 月 26 日, 永眠)に捧げます。 参考文献 1) a) T.Nishikubo, Ed. “Synthesis and Application of Photosensitive Polymers,” CMC, Tokyo(1979); b) R. Holman and P. Oldring, Eds., “UV and EB Curing Formulation for Printing Inks, Coatings and Paints,” International Training Associates Limited, London (1988); c) Y. Tabata, Y. Takimoto, Y. Tominaga, H. Nakamoto, and T. Nishikubo, Eds., “Ultraviolet and Electron Beam Curable Materials,” CMC, Tokyo (1989); d) Y. Tabata, T. Isobe, T. Otaka., M. Sato,

M. Takayama, Y. Tominaga, and T. Nishikubo, Eds., “Technology & Application of UV/EB Curing,”

CMC, Tokyo(1997).

2) T. Nishikubo, T. Imaura, M.. Mizuko, T. Takaoka, T. J. Appl. Polym. Sci., 18, 3445(1974).

3) S.S. Labana, J. Polym. Sci. A-1, 6, 3283(1968). 4) H. Tatemichi and T. Ogasawara, Chem. Economy &

Eng. Rev., 10, 37(1978). 

5) For example; T. Arimura, S. Shinkai, and T. Matsuda, J. Syn. Org. Chem. Jpn., 47, 523(1989). 6) For example; a) M. Takeshita, and S. Shinkai, Bull.

Chem. Soc. Jpn., 68, 1088(1995); b)P. Lhotak and S.

(11)

Shinkai, J. Syn. Org. Chem. Jpn., 53, 523(1995). 7) a) 鈴木 明,亀山 敦,西久保忠臣,高分子論文集,

53,522(1996); b) N. Ito, S. Tonosaki, H. Kudo, A.

Kameyama, and T. Nishikubo, J. Polym. Sci., Part A., 40, 1395(2002).

8) a) T. Nishikubo, H. Kudo, and T. Nakagami. Polymer Journal, 38, 447(2006); b) K. Maruyama, H. Kudo, T. Ikehara, T. Nishikubo, I. Nishimura, A. Shishido, and T. Ikeda, Macromolecules, 40, 4895 (2007); c) K. Maruyama, T. Hirabayashi, H. Kudo,

and T. Nishikubo, Polymer J., 42, 790(2010). 9) For example; C. D. Gutsche, “Calixarenes,” Royal

Society of Chemistry, Cambridg(1989).

10) a) M. Iyo, K. Tsutsui, A. Kameyama, and T. Nishikubo, J. Polym. Sci. Part A. Polym. Chem.,

37, 3071(1999); b) T. Nishikubo, A. Kameyama,

K. Tsutsui, and M. Iyo, J. Polym. Sci. Part A. Polym. Chem., 37, 1805(1999); c) T. Nishikubo, A. Kameyama, and K. Tsutsui, J. Polym. Sci. Part A. Polym. Chem., 39, 1169(2001).

11) T. Nishikubo, A. Kameyama, H. Kudo, and K. Tsutsui, J. Polym. Sci. Part A. Polym. Chem., 40, 1293(2002).

12) J. V. Crivello and B. Yang, J. Polym. Sci. Part A. Polym. Chem., 33, 1381(1995); b) J. V. Crivello and B. Yang, J. Polym. Sci. Part A. Polym. Chem.,

34, 2051(1996).

13) a) T. Nakayama, K. Haga, O. Haba, and M. Ueda, Chem. Lett., 265(1997); b) M. Ueda, D. Takahashi, T. Nakamura, and O. Haba, Chem. Mater., 10, 2230 (1998); c) K. Takeshi, R. Nakayama, and M. Ueda,

Chem. Lett., 865(1998); d) T. Nakayama, M. Nomura, K. Haga, and M. Ueda, Bull. Chem. Soc., Jpn., 71, 2979(1998).

14) (a) H. Kudo, R. Hayashi, K. Mitani, T. Yokozawa, N. C. Kasuga, and T. Nishikubo, Angew. Chem. Int. Ed., 45, 7948(2006);(b) H. Kudo, K. Shigematsu, K. Mitani, T. Nishikubo, N. C. Kasuga, H. Uekusa, and Y. Ohashi, Macromolecules, 41, 2030(2008).

15) a) S. J. Rowan, S. J. Cantrill, G. R. L. Cousin, J. K. M. Sanders, and J. F. Stoddart, Angew. Chem. Int. Ed. 41, 1460(2002); b) O. Ramstrom, T. Bunyapaiboonsri, S. Lohmann, and J.-M. Lehn, Biochim. Biophys. Acta, 1572, 178(2002).

16) H. Kudo, N. Niina, R. Hayashi, K. Kojima, and T. Nishikubo, Macromolecules, 43, 4822(2010).

(12)

[Review]

Development of Novel UV-Curing Materials Based on Hyperbranched

Polymers and Cyclic Oligomers

Hiroto Kudo*

* Department of Chemistry and Materials Engineering, Faculty of Chemistry, Materials and Bioengineering, Kansai University (3-3-35, Yamate-cho, Suita-shi, Osaka 564-8680, Japan)

Synopsis

This paper reviews synthesis and property of UV-curing materials based on hyperbranched polymers, calixarenes, and noria. The synthesis of UV-curing hyperbranched polymers was examined by the polyaddition of bisepoxide as A2 -type monomer, triscarboxilic acid as B3-type monomer, and methacrylic acid as C-type monomer, i.e., A2+B3+C method afforded corresponding hyperbranched polyesters with methacryloyl groups at the ends. The synthesized hyperbranched polyester had good solubility, good film-forming property, and high UV-curing reactivity. Furthermore, the obtained cured films of hyperbranched polymers had higher cross-linking densities compared to those of linear polymer. Next, calixarene derivatives and noria derivatives with pendant radical polymerizable groups and cationic polymerizable groups were synthesized, and their physical properties and UV-curing reactivity were examined. As the result, synthesized calixarene derivatives and noria derivatives had also good solubility and good film-forming property. Especially, their UV-curing reactivity were superior to those of linear polymers and hyperbranched polymers.

参照

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