産業集積の進化と近接性のダイナミクス : 知識学
習とネットワークの視点から
著者
水野 真彦
雑誌名
史林
巻
101
号
1
ページ
261-292
発行年
2018-01-31
その他のタイトル
Cluster evolution and proximity dynamics: from
a learning and network perspective.
産業集積の進化と近接性のダイナミクス
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ー 知 識 学 湖 沼 と ネ ッ ト ワ ー ク の 視 点 か らl
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産築後手立の進化と近接牲のダイナミクス(水野) ︷要約︸現在の経済地理学において知識学習とネットワークが窓姿な鍵概念となっている。産業が築相似することは、地理的に近接 した主体問での知識の学習を通じて、築様地域の発田肢をもたらすとされてきた。しかし、それは持系列でみると永続的なものでは ない。産業集積が特定の産業に特化することは、しばしば負のロックインの状態をもたらし、時間の経過とともに成熟から衰退の 経路をたどりうる。魚のロックインを防ぐためには、地域の既存産業から技術的に関逮ある産業を分岐させて産業の多様性を維持 することが必要となる。また、主体問のネットワークにおいて知識の学習を決定するのは地現的近接性だけではなく、制度的や組 織的、社会的など様々な次元での近接性もまた学習を促す。新しい知識を探索するためにはこれらの務次元で遜伎な近接性を保つ ことが求められる。地域発艇を考える際には、ネットワークと近接性の間留について動態的にとらえる視点が必要となる。 史 林 一 O 一 巻 一 号 一 一 O 一 八 年 一 月'
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め じ I 現在の経済地理学において﹁学習﹂と﹁ネットワーク﹂は、中心的トピックの一つとなっている。知識学習とネット ワークに注目が集まった背景には、産業が地域的に集積する産業集積に関する議論がある。産業集稜についてはマ!シヤ ① ルなどの古典的立地論の時代から議論がなされており、特定の産業に特化して集積することにより関連産業や労働市場が (261) 261形成されるといった利援︵外部経済︶があるためとされた。この、地域に特定産業が集積し、特化が進むことによる利益 は﹁地域特化の経済﹂とされ、産業が集積する要因とされてきた。 こ の 産 業 集 積 は 、 一 九 八
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年代以降、英一諮問の地理学および関連分野において、再び関心を集めるようになる。その背 禁として、第一に挙げられるのは、 一 九 七0
年代の欧米諮問において、大量生産・大量消費を特徴とするフォ i デイズム の危機が様々な点から指摘されるなか、箇一的な製品を大量生産するのではなく、不確実な市場の変化に柔軟に対応でき る多品種少最生産が求められるようになってきたことがある。ピオリとセ!ブルは、中小企業が地域的に集積することで れ 川 パ V 戸 し 丸 需要の変化に柔軟に対応できることを指摘し、それを﹁柔軟な専門化﹂という概念で説明した。彼らは、北東・中央イタ リアの﹁第一一一のイタリア﹂と呼ばれる地域の産業地区をその事例として挙げている。 一 方 、 スコットは、市場の不確実化 に柔軟に対応するため生産工程の分割が進み、八刀部された工程において取引にかかる費用の削減のために集穣が形成され ③ ることを論じた。その際に事例とされたのは、シリコンバレーやオレンジ郡などのカリフォルニアの産業集積であった。 第二の背景には、先進国において山単純な生産工程が縮小するなか、中島付加価値な製品の生産のために知識の重要性への 認識が高まったことがある。そこには、知識は技能を持った個人の能力の単純な合計ではなく、むしろ個人あるいは如組織 の関係から生じるものであり、それらの関係における相互作用を通じての学習が重要という認識があり、ネットワークが 鍵概念となる。ここで﹁ネットワーク﹂にはこつの意味がある。第一の意味は、その構造に関する特性であり、網の白状 になっている繋がりの形状を指すものである。第ニには、そのつながり方の質・あり方に関するものである。後者の意味 での﹁ネットワーク﹂とは、企業や官僚制約などの階層的組織と純粋な市場との中間に位置するもので、両者に自律性があ り、かつ瓦恵的・協力的な社会的関係がある関係を指す。そして、ネットワーク関係においては、それらの主体問の関係 のあり方が主体の行為に影響を与えるとみなされる。こうした企業関・個人間のネットワーク関係が、知識が伝わり、学 習されるル!トとして注目されることになった。 (262) 262知識学習のネットワークが産業集積論のなかで鍵となる理由は知識のもつ性質にある。知識には文字で脅かれ通信技術 で移転できるものだけではなく、 スキルやノウハウのような文字で表現しにくい部分を持つ、時相黙性の高い知識が存在す る。暗黙性の高い知識を学習するには、継続的で密接な対面接触が必要とされ、双方の地理的近接性がそれを効率的・効 来的なものにする。企業が集積し、地理的に近接した企業のネットワークが知識学習を促し、新たな知識の創出をもたら すことが、地域発展にとって有効である、というのが復活した産業集積の議論である。 一 九 九
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年代のこうした議論は、 単に企業が地理的に集まっているという現象だけではなく、その集積が発展する条件として、そこに知識の学習があり、 それを促すような組織や制度が必要である点に注目する。その﹁制度﹂とは成文化された法律、規則別だけでなく慣習、価 値観、規範といったインフォーマルなものを含み、そうした制度の共有が相互の信頼に基づく知識学習を促進し、集積金 ④ 体の発展につながるとされた。こうした研究においても、﹁第一二のイタリア﹂の産業地底やシリコンバレーなどが事例と し て 畳 間 及 さ れ 、 ローカルな集積内の濃密なネットワークの強みが強調された。 産業後後の進化と近接伎のダイナミクス(水野) 日本においても⋮九九0
年代後半より、地理学だけでなく経済学、経営学も含めて産業集積に関する研究が急激に増加 す恥。日本でその時期に急激に増加した産業集積に関する議論の多くは、産品策が集積することが地域発展に結びつくとい う集積のメリットを強調する傾向があり、シリコンバレーなどの発展を続けている一部の成功地域の事例がしばしば参照 されてきた。そうした研究は、特に政策論に強い影響を与え、産業の条積を維持・発燥させることが地域経済および国民 経済の発展に資するという考えのもと、地域での産業集積を支援する政策に対する理論的基盤を与える役割を来たしてき た。例えば、東京大問註や東大阪地域における機械金属加工産業集積など各地の地域産業への支援政策ゃ、産業競争力強 化のための産業クラスタi
計画などの経済産業省の施策にそれらの議論が反映されてきた。 一部の特定の成功率例をとりあげて集積のメリットを強調する研究群に対する批判もなされ しかし英語関においては、 てい旬。集積にはシリコンバレーのように発展を続ける地域もあるが、 ヨーロッパにおける古くからの重工業地域のよう (263) 263に、ある時期は発展するものの、その後停滞から衰退に向かうという集積地域は先進国の各地でみられる。そうした、集 (264) 積しながらも停滞や衰退の状態におちいっている地域は、集積していれば利益があり優位性があるという議論だけでは十 分に説明できない。言い換えるなら、それまでの集積論では、集積していることの利益は時間の経過にかかわらず永久の 264 ものであると暗黙のうちにみなされる傾向にあったが、その妥当性に疑問が投げかけられ、集積を考察するには時系列的 段階を踏まえた動態的な考察が必要であるという議論が行われてき的。 また英語劉では、距離を隔てての学習の可能性という点から集積論に対する批判が盛んに行われている。
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年代 において集積論の隆盛と問時並行的にグローバル企業の台頭という現実があるなかで、学習はすべてにおいて地理的に近 接していないと不可能なのか、学習が集積の中だけで行われるという考え方は果たして現実的なのか、という批判がなさ ⑧ れてきた。そこで、距離を隔てての学習が可能であるとすれば、それを可能にするのはどのような婆図なのか、という観 点から、﹁近接性﹂というものを地理的な意味以外のものに拡張するという方向に議論が展開されてきた。 以下では、この二つの点に焦点を当てて、英語圏の経済地理学の集積をめぐる議論において、知識の学習とネットワ l クについて、どのように議論が展開されてきたかを整理、展望したうえで、それらの議論が地域発展論や政策論にどのよ うに関係するのかを考察する。産業が集積すれば知識の学習が促され、地域が発展する、という単純な図式が成り立つと は限らないとすれば、地域の発展に資する知識の学習とネットワークのあり方とはいかなるものであるのか、という点の 考祭を試みるo
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章では、集積を動態的にとらえるために﹁進化﹂という視点を取り入れる議論について務理し検討した ぃ。こうした考え方は近年、﹁進化経済地理学﹂として欧州閣を中心に活発な議論がおこなわれている潮流の一部となっ ている。進化経済地理学とは単純化すると、現在の状態を説明する際に、現在の状態を作りあげてきたプロセス︵つまり 廃史︶から説明しようというアプローチである。ただし、本稿は進化経済地理学の議論の網羅的な紹介を白的とするもの ⑤ ではなく、産業集積と知識学潔に関する議論に焦点を絞りたい。続くE
章では、﹁近接性﹂という概念を拡張して知識創造と近接性の関係を考察するというアプローチをとりあげ、 ま と め と し て 、 それらが現在統合されつつあることを示し、 つ い て 述 べ た い 。 (水野) ①マーシャル、 A , ︵ 一 九 六 六 ︶ 吋 経 済 学 原 理 ﹄ ︵ 馬 場 慾 之 助 訳 ︶ 、 東 洋 絞 済 新 報 社 。 小 泊 宏 億 ︵ 一 一 00 悶 ︶ ﹁ 産 数 地 域 論
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マ ー シ ャ ル か ら 現 代 へ ﹂ 杉 浦 芳 炎 編 吋 空 間 の 経 済 地 理 い 朝 食 議 店 、 一 一 問 1rA 二 頁 。 ②ピオリ、 MM1 ・ セ i プ ル 、 C F ・ ︵ 二 O ヱ ハ ︶ 吋 第 二 の 遊 幾 分 水 綴 ﹂ ︵ 山 之 内 務 ・ 永 田 知 浩 一 ・ 川 崎 山 あ つ み 訳 ︶ 筑 摩 毅 一 房 ︵ 原 著 は M U S E − 三 ︼ き 巳 印 刷 H F O 一 − り 司 会 由 ∞ 品 Y 3 N ぬ 旬 。 2 とK 3 K N 岳 町 、 N a Q∼
k N 2 門 出 向 志 望 ミ 凡 な EK 町 、 耳 、 。 旬 、 句 、 民 h v ・ ∞ 忠 一 円 切 。 。 r m ︶ 。 ③ ス コ ッ ト58
. ﹁ メ ト ロ ポ リ ス ﹂ ︵ 水 問 問 不 二 級 政 知 的 ︶ 、 台 今 術 協 続 ︵ 原 説 明 は ∞ 円 O仲 戸 ﹀ ] ︵ s g a e h 向え さ も え な ∼ k y s w W H E t N G N K S E A 刊 E F 室 、 吉 句 、 、 F Q お ︾ コ 芯 C 包 ︿ O円 ω一 昨 日 、 。 向 。 凶 出 向 。 E 一 創 出 u z m m ︶ 。 印 円 O R ﹀ e ︸ ︵ ggg − 足 立 、 N V N 札 N h a z a ∼ 旬 、 問 220 一 ④ 水 野 真 彦 ︵ 一 九 九 九 ︶ ﹁ 制 抑 止 ・ 脱 出 羽 悶 ・ 進 化 と 産 業 地 理 学 九 0 年代 の 英 一 滞 開 聞 の 地 理 学 と 隣 扱 分 野 の 動 向 か ら ﹂ 経 済 地 理 学 年 報 関 fai 一 一 、 一 一 一 OI 一 一 一 一 九 資 。 ⑤ 経 済 学 や 絞 品 質 学 に お い て 集 積 の 議 論 が 増 加 し た 品 目 殺 に は 、 ク ル I グ マ ン や ポ i タ ! の 彩 終 も 大 き い 。 ク ル l グ マ ン 、 P 4 ︵ 一 九 九 悶 ︶ 吋 脱 ﹁ 国 境 ﹂ の 経 済 学 ﹂ ︵ 北 村 行 伸 ・ 潟 橋 一 割 引 ・ 妹 尾 美 知 地 訳 ︶ 、 東 洋 経 淡 新 報 社 。 ポ i タ l 、 M ︵ 一 九 九 一 一 ︶ ﹁ 閣 の 競 争 俊 位 同 ︵ 土 岐 坤 ほ か 訳 ︶ 、 ダ 産業集綴の進化と近接性のダイナミクス ⑤ イ ヤ モ ン ド 社 。 例えば、現夜、進化経済地理学の論者の一人として知られるサン ネットワーク論との関係に焦点を当てて検討する。 即 日 貿 暑 で は それらの知見からどのような地域発展の政策が導かれるかに レーは、一九九二年の論文において、戦間期におけるランカシャ!の 紛復業集積の事例より、マーシャルの記述が地域特化の経済の効率牲 を過度に強調しすぎていることを指絡している。印5
−o M J T ・ 3 8 N ︶ ・ ε 乞 司 ω宏一一 E P E e m g m 一 ι 許 可 山 口 容 ・ 任 命 E m o 。 町 同 町 o g ロ 円 凶 m F 一 円 。 n o 尽 き 5 ι c m 守 山 、 5 門F O E H O 円 E 巧 m w 吋 可 O m w 円 ω j M J S E a n H 3 ミ 句 。 \ 忌 内 w b z E H m h G 。 \ 匂 Z H E P C E u h 、 お も ﹄ 号 、 句 − − 叶 − 百 円 ︾ e ω 色 町 i i ω N 0 ・ ⑦このことは、経済地理学における藤策集積に関する俄々の事例研究 が 時 系 列 を 無 視 し て き た と い う 窓 味 で は な い 。 事 例 研 究 に お い て は 、 地 域 後 数 の 起 源 か ら 発 問 棋 の 過 程 を 記 述 す る こ と は 通 常 行 わ れ て い る 。 しかしそれを説明する理論ないし概念が静態的なものであったという こ と で あ る 。 ③例えば、﹀ EB − ﹀ ’ 自 己 。 。 zg ︽ 同 F H U 3 8 3 3 F o m 門 口 5 問自品包 8 g’ 2 0 ロ 5 品 。 円 。 己 主 一 路 島 gm52225 円 E J N 山 室 内 守 E N k h 玄 2 ・ ロ i r u u e ∞ 叶 : H P K F ・ ⑨ 進 化 経 潟 地 理 学 会 体 の 棚 制 緩 的 な 紹 介 や 潮 位 協 制 的 品 目 殺 に つ い て は 、 す で に 外 一 伊 保 ︵ 二 O 一 一 一 ︶ や 野 氏 ︵ 二 O 二 一 一 ︶ が あ り 、 そ ち ら を 参 照 さ れ た い 。 外 一 伊 保 大 介 ︵ 二 O 一 一 一 ︶ ﹁ 進 化 経 済 地 理 学 の 発 閉 店 経 路 と 可 能 性 ﹂ 地遊学評論八五巻五号、凶 0 1 五 七 資 。 野 尻 一 臼 ⋮ ︵ 二 O 一 一 ニ ︶ ﹁ 進 化 経 潟 地 潔 学 と は 何 か ﹂ 人 文 地 理 六 五 巻 五 号 、 一 二l m
一 真 。 (265) 265JI 産業集積のライフサイクルと進化 ( ー ) ロ ッ ク イ ン グラブハは一九九一一一年の論文において、ドイツのル!ル工業地帯の石炭・鉄鋼産業の事例から、特定の産業に特化して 発展してきた集積では、特化が進みすぎることで﹁ロックイン﹂という現象が生じ、集積が停滞・衰退することを指織し ① た。ロックインとは回定化・硬直化という意味で、 一般的には過去の選択あるいは出来事が、累積約・自己強化的プロセ スによって画定化されてしまうことを指す。特に、時間を経てそれが合理的、効中学的でなくなっても変えることができな ③ い状況を指してしばしば用いられている。グラブハはそれを産業集積地域に適用し、特定産業への特化が変化への隣接と なり硬直化を進めてしまうことをロックインという概念で説明した。彼はロックインを三つに分類しており、特定の緊密 な取引先との関係に特化し、外部の需要への対応が滞るといった機能的ロックイン、ものの見方が均費化してしまうこと により、外部の変化に対して集団として適切な対応ができなくなるといった認知的ロックイン、特定の産業と地域の政 治・行政システムが結びついて産業機迭の転換を阻む働きをする政治的ロックインがある。グラブハはこうしたロックイ ンをもたらすものとして、地域が特定の産業に特化することによって、知識や資源、能力の一闘で特化・均質化が進み、 ﹁冗長性﹂が減少することを挙げている。企業が問題に直樹した際には、倒人の認知能力には限界があることにより、し ③ マスケルとマルンバ!グが空間的近視眼と呼ぶもので、 ば し ば 尚 早 問 問 的 ・ 地 理 的 に 近 い と こ ろ か ら 解 決 策 を 探 す 。 こ れ は 、 地域の特化・均震化と空間的近視畑山が総みム口わり、問題に夜面したとしても均質化された周鴎からは適切な解決策を見い だすことが図難になる。これが地域のロックインをもたらす恭本的なメカニズムである。こうしたロックインという概念 は、より一般的には経路依存性の問題として扱われる。経路依存性とは、現在の選択は過去の選択に依存する、というこ (266) 266
とであり、地域の経路依存とは、地域のある時点の発渓経路は、過去の経路の影響を受けるということを窓味する。 ( ) 産 業 集 積 の ラ イ フ サ イ ク ル 先述のグラブハの論文は古い産業地域を事例に衰退をもたらす負の意味でのロックインを強調した先駆的なものであっ た 。 し か し そ の 後 、
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は、産業集積が地域特化の経済によって発展するプロセスは正のロックインと してとらえることができ、時間が絞るにつれてその発展した要因である地域特化が硬直性の源泉となり、魚のロックイン ③ の段階に移行するという見方を提示し、ロックインを負だけでなく、正と品開の雨節からみることが必要であるとした。そ ⑤ うした見方をより詳織に図式化する試みの一つに、産業集積のライフサイクル論がある。産業集積のライフサイクル論は、 産業集積には誕生、成長から成熟、衰退までのライフサイクルがあるとし、そのサイクルを動態的に捉えることを試みる ものであり、それには産業、主導の説明によるものと、集積国有のプロセスによる説明のニつの流れがあ加。 産業後後の進化と近接伎のダイナミクス(水野) 第一の産業主導の説明によるものは、技術・産業のサイクルから集積のライフサイクルを考えるものである。技術・産 業が新しく生まれたばかりの誕生段階では技術が未成熟で知識が特定の地域︵例えばある技術・製品の発明者が厨伎している 地域など︶に偏在しているために、知識が得られる場所へ立地することが重要である。それが時間の経過とともに技術や 産業が成熟してくると、徐々に知識が標準化され地理的に拡散してしまうことで集積に立地する利益が減少し、逆に混雑 や賃金の上昇などの集積の不利益が顕在化する。それによって立地は地理的な分散傾向を一示し、集積は衰退してゆく、と い う も の で あ る 。 つまり、産業のライフサイクルの初期には集積に立地する食業が有利に働くが、産業が成熟した後期に は逆に集積外の企業がむしろ有利になる、ということができる。経済地理学ではすでに製品のライフサイクルから産業の ⑦ 立地を説明するプロダクトサイクル論がヴァ l ノンによって提起されており、産業主導の説明による集積のライフサイク ル論は、このプロダクトサイクル論の系諸にあると考えられる。プロダクトサイクル論では、製品のライフサイクルが誕 (267) 267~殺のライフサイクルの図式 図1 笈退
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ノ/ 成主~\皮 町田町入手できる知談の異'!!if主 一一従業者数 生段階︵あるいは初期段階︶、成長段階、成熟段階、衰退段階に分けられる。新しく製 (268) 成熟 品が誕生した誕生段階では、まだ生産量は少量であり市場への近接性や技術者の存在 268 成長 誕生 鋭 的 問 と 築 資 性 Menzel and Fornahl (2009)を元にさ表者作成 から中核的地域︵先進国の大都市など︶に立地するが、生産量一が増えて大規模設備と資 本が要求される成長段階を経て、成熟段階では価格競争に対応するためにより低廉な 労働力を求めてしだいに周辺地域へと移動する。プロダクトサイクル論が個々の製品 の成熟度を輸にして製品の生産地点の移動を説明しているのに対し、産業主導の説明 による集積のライフサイクル論は集積地域の側を輸に、集積の発展と衰退を考察する いずれも技術的成熟・標準化が技術や市場に関する知識の偏在性を弱め る点と、価格競争のために低賃金労働力が求められることによって集積の必要性が低 も の で あ る 。 下する点から立地や地域の動態を説明する。しかし、この産業主導の見方では、産業 が成長・成熟すると必然的に集積も成長、成熟の段階に到達することになり、集積は 立地する産業の段階を反映するのみで、個々の集積に固有の条件などは考慮されない。 一方、集積固有のプロセスによる説明は、産業の発展段階とは独立した、集積に国有の要因によってライフサイクルの 図 ー は 、 段階が決まると考えるものである。前述の正と負のロックインの議論は、この集積回有のプロセスによる集積のライフサ イクル説明と関連が強い。以下ではこの集積回有のプロセスによる説明を検討す畑。 @ メンツエルとフオーナールによる集積の国有の要因による集積のライフサイクルを示した図である。実線は集 積内の従業者数を、破線は集積において入手できる知識の異質性︵F
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を示す。また、横軸は時間とともに増 大する成熟度を一不し、縦軸に従業者数で示される規模と入手できる知識の異質性を示す。集積回有の要因によるライフサ イクルは、以下のように誕生、成長、成熟、衰退の四つの段階に分けられる。︵
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︶ 誕生段絡 集積のライフサイクル説では、集積の誕生と成長を考える際に、既存企業から起業家が独立創業するスピンオフという 現象を特に重視する。新規創業には経験が必要であり、既存の企業で経験を積んだ起業家による銃存企業からのスピンオ フという形をとることが多い。スピンオフした新規企業は元の組織︵企業や研究機関など︶の近くで創業する傾向があるた め、集積が誕生する。スピンオフ企業は、元組織から知識もしくはルi
テインを受け継いでおり、さらにスピンオフ企業 と元組織の簡の協力的関係から知識学習が行われる。集積していることはスピンオフによる新規創業の増加にプラスの効 ⑬ スピンオフによる集積の発生はさらなるスピンオフを生む。 来 が あ る と さ れ 、 ︵b
︶ 成長段階 新規創業が継続することでその産業に腐する企業や組織の密度が上がり、企業や組織の関で知識学習や取引のネット ワークが形成され、関連産業や地域的労働市場が形成される。産業集積論における地域特化の外部経済が強く働くのがこ E霊祭袋綴の進化と近接性のダイナミクス(水野) の段階である。そして、この地域特化の経済の存在によって、産業集積はさらに成長し、その特化度はより高められる。 ︵ C ︶ 成熟段階 この段階では、急速な成長も急速な衰退もせず安定的な状態を示す。特化が進むことで知識の異質性は、徐々に小さく な旬。地理的に近接した企業が相互作用を繰り返すなかでお互いを模倣することや、あるいは集積内の組織が定めた規則 ⑬ や手続きに従い徐々に行動や認知が似通ったものになる﹁向型化﹂がこの段階で起こる。また、地域の産業の特化が進む 品 目 と、地域における様々な制度もその産業に遜したものへと徐々に変えられてゆくことになる。 ︵d
︶ 衰退段階 衰退段階では、企業者数や従業者数が減少していく。成熟段階を通じて特化が進むことによって異質性が維持できなく なることで、既存の産業・技術にロックインされ、外的な変化に対応できなくなることがこの衰退を引き起こす。成熟段 (269) 269。
踏までに形成された特定の産業に適した制度は、ますます他の産業への転換を妨げる要因となる。さらに地域の政治や行 政もまた特化した産業と結びついて、その利害に対応した行動をとるようになり、先のグラブハのいう﹁政治的ロックイ ン ﹂ が 起 こ る 。 以上が集積岡山有のプロセスによるライフサイクル論であるが、これは上述の産業主導によるものとは排他的なものでは ない。特化が進み、異質性が維持できないことで成熟した産業にロックインされてしまうということであり、産業、五導の 要因と集積岡山有の要因が綴み合わさることによって集積にライフサイクルが生じるという考え方もできよう。 ( ー ) ロ ッ ク イ ン の 打 破 と 経 路 創 出 産業集積において、成長段階の後に、成熟・衰退の段階が来るというのは多くの事例でみられる傾向ではあるが、それ は必然だろうか。経済学におけるロックインの議論では、 ロックインの状態になることも、そこから抜け出すことも、偶 然の出来事や外的なショックによって説明されている。 つ ま り 、 一度ロックインの状態になってしまうとそこから抜け出 す ルi
トは偶然の出来事や外的ショックしかないということになる。しかし、もし偶然の出来事や外的ショックでしか経 路を抜け出せないということであれば、ミクロレベルでの主体︵企業や組織︶の行為や地域の政策は無力ということにな ってしまう。負のロックインによって成熟ののち衰退から消滅に歪る集積も確かに存在するが、 一方で負のロックインを 打破し、ライフサイクルがより前の段階に︵例えば成熟段階から成長段階に︶戻る、言い換えると新しい経路を作り出すこ と︵綬路創出︶に成功している地域もまた存在する。マ
l テ イ ン は 、 ロックインを安定した状態をもたらすという均衡論 ロックインの状態から新しい経路がいかに生まれるかを論じ説明できなければ現実 べ ぬ d p の地域変化を十分に説明したとはいえないと主張している。多くの進化経済地理学の論者の議論は、ロックインや経路依 存を、均衡ではなく進化の視点で捉え直すとところに特徴がある。考えるべきは、負のロックインで長期衰退の状態にあ 的な概念としてとらえるのではなく、 (270) 270る地域と新しい経路創出に成功する地域の遠いは何かという点である。このことを考えることは地域政策論にとっても愛 前 官 で あ る 。 こ こ で 、 先 述 の グ ? フ ハ が 提 起 し た ﹁ 適 応 ︵ 民 間 口 喜 一
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こ と ﹁ 適 応 力 ︵ 出 品8
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々にの度分が有用であり、後の研究で ⑬ もしばしば用いられている。適応とは、既存の経路のなかで変化することであり、適応力とは新しい経路を作りだす能力 を指す。ここで重要なのは、適応と適応力はトレードオフの関係にあるということである。﹁適応﹂においては、特定の 環境のなかで効率性を上げるために資源の特化度を増すなど、既存の構造を強化するようになり、そのことが新しい経路 一方、﹁適応力﹂とは、既存の経路に向けて合理的に行動するだけでなく、 を作り出す﹁適応力﹂を失うことにつながる。 その経路自体の妥当性・適切性を問、って経路を変える能力である。この適応力を決めるのはグラブハの用語でいえばコん 長 性 ﹂ で あ り 、 メンツエルとフオーナールの用語では﹁異質性﹂であるとされる。冗長であり、不均質で異質な知識が混 じっていれば、その多様な知識のバラエティの中に再結合することで新たな知識を生み出せるポテンシャルを保持してお 藤委長線機の進化と近緩i症のダイナミクス(水野) り、それが適応力の源泉となる。しかし、そうした不均質で異質なものが混じっていることは、得られる地域特化の経済 は限定されることになるなど短期的な効率性を下げてしまう。この効率性の低下は既存の経路への短期的適応にはむしろ 妨げになりうる。逆に短期的な適応のために、冗長なものを排除し特化を進めることが、長期的な適応力を損なうことに なる。これが適応と適応カのトレードオフである。 ではこのことを踏まえて、グラブハのいう﹁適応力﹂があり負のロックインから脱して新しい経路創出が可能になると ⑬ は具体的にはいかなるものであるのだろうか。マi
ティンとサンレ!は、以下のような例を示してい畑。第一に、新しい 技術パラダイムによって内生約に新しい発展経路を見つけ出すことである。これを可能にするために鍵となるのは、資 本・技術を保有する大企業、高レベルの研究機関および高スキルをもった人材の存在である。ただしこれは限られた特定 の大都市圏では可能であるが、それ以外の地域では容易ではない。 (271) 271第二に、地域の外部にある別の場所からの移植である。例えば、地域の外に拠点を持つ企業の分工場から地域の企業が 知識の学習を行うことなどがある。例えば日本においても太平洋戦争時に空襲を避けるため京浜地域から工場の疎開が行 われたが、その下請けや疎開工場からスピンオフした工場が技術を取得し向上させて集積が形成され発展した地域はいく ⑮ っか認められ、長野県坂城町などはその一つである。ただし、地域の外部からの知識や技術を取り入れる場合、地域の食 品 明 業がそれを理解し活用することができるようになる能力である﹁吸収能力﹂が地域の側に必要となる。また、地域を越え てグローバルに活動する企業には拠点をよそに移すという能力・選択肢があり、そのためにグローバル企業と地域の潤に は依然として非対称的な力関係があることには注意が必要で、知識を学潔し、地域の企業がより多くの価値が獲得できる 品 別 ようになることはそれほど︷容易なことではないというマツキノンの指摘もある。この外部からの知識の導入については次 章でもとりあげる。 第一一一に、主体、技術、制度、社会ネットワークの異質性、多様性である。グラブハの冗長性の議論にあったように、異 質な要素を多く含み不均一である地域は、その中にそれまで有効に使われていなかった能力を含み、それが予測できない 環境の変化が起こった際に有用なものに変わりうる。 第悶に、関連産業への多様化である。これは、既存の産業からそれに技術的に関連する新しい産業を生み出すことを指 す。ここで注尽したいのは、第四番目の関連産業への多様化である。 ︵ 四 ︶ 多 様 化 に よ る 経 路 創 出 品 砂 地域の産業の多様化といえば、都市論の古典であるジエイコブズの議論が思い起こされる。ジエイコブズは、都市とは 古い仕事の一部に、インプロピゼ!シヨン︵臨機応変による改良︶によってちょっとした新しい仕事を付け加える場所であ り、そうした新しい仕事の追加によって分業を増やすことで都市が発展する、と、五張している。ちょっとした新しい仕事 (272) 272
の追加とは、地元需要のうち、それまで外から輸入︵移入︶するしかなかったものを、地元で生産するようになる﹁輸入 置換﹂のことである。この輸入置換は次の輸出︵移出︶口聞の創出につながる。そうしたプロセスの繰り返しによって、都 市は多様化する。都市の発展は多様性を生み、多様性が都市の発展をもたらす、というのがジエイコブズの議論であり、 地域発展論に与えた影響は大きい。 このように地域に既存の巌業から関連のある新しい産業が生まれることは分岐︵ブランチング︶と呼ばれる。分岐は、 既存企業からの新事業のスピンオフ、企業内・事業所内での多角化、労働力の地域内移動、地域内の社会的ネットワーク などしばしば地域レベルの知識移転メカニズムを通じて起こり、この分岐によって地域の産業の多様性を増すことができ ③ る 。 具体的に日本における産業の分岐の事例をみてゆこう。竹内は、現在の機械工業集積地域には、かつて何らかの産業が ii~寝袋殺の進化と近接性のダイナミクス(水聖子) 存在し、それを技術的あるいは市場的基盤として新しい産業が派生してきたことを指摘し、それらのもともと存在した産 品 り 業を﹁先行産業﹂と呼んだ。例えば京都市では近役からの陶磁器業から近代期に陶磁器製の碍子︵がいし︶の生産が分岐 録 し、さらにその碍子の生産から戦後一電子部品産業が生まれている。長野県の諏訪地域では、製糸業工場の機械修理から精 ⑮ 密機械工業が分岐し、浜松では織機生産と木工業から自動車・楽器が分岐した。新潟県の燕では、和釘・煙管・銅器から ⑫ ハウスウェア、さらにその他複合金属製品が分岐してきた。これらの事例ではいずれも、その先行産業は縮小し 洋 食 器 、 ても新たに分岐した産業が成長しており、集積のライフサイクルを脱した事例と言えよう。シリコンバレーにおいても、 軍需・航空宇宙産業から半導体産業が分岐し、半導体産業からパーソナルコンピュータ i 産業が、さらにはソフトウエア ロックインによる衰退の状態に陥ることを防いでい何。 ウェブサービス巌業が分岐することで、 産 業 、 (273) 一方逆に、地域の産業が多様であるほど、産業開の知識学習によって新しい産業が分岐して生まれる可能性ないし確事 は高くなるとされる。特に、地域の分岐が起こりゃすいとされるのは、産業が多様ではあるが、それがある程度関連性を 273
もっているという﹁関連ある多様性の状態であることがボシユマらの研究によって示されてい旬。特定の産業に特化し すぎることは負のロックインをもたらすため、異質なものを含んだ多様性が必婆であることはすでに述べたが、逆に全く 関連のない産業の間ではお互いの知識学習が困難になってしまう。その中間で、お互いにある程度関連があり、かつ多様 な産業が地域に存在する状態が、産業聞の知識学習によって産業の分岐を促す。この﹁関連ある多様性﹂は、雇用の成長 や生産性の上昇とも棺関があるなど、地域発展において重要な意味があることが、 ⑧ て明らかにされている。 フレンケンらの統計的計最分析によっ 地域において関連ある蔑業が分岐することで、地域の産業は多様化し、他方で関連ある産業が地域にあれば、そこから 新たな産業が分岐する可能性は高まる。 フレンケンとボシユマは、地域の多様性と地域の分岐の向には一定のポジティブ ⑧ フィードバックのメカニズムが働くとする。こうしたことから、 ロックイン状態を打破するのは、偶然の外的ショックだ けではないことが指摘できる。既存瑳業から関連する新しい産業を分岐させることは、ミクロレベルの企業などの行為で あり、偶然のショックではない。容易ではないにしても、思慮深い主体の意図的な行為によって新しい経路が創出される 可能性があるといえ何。ただしそこには、それまでの産業構造が多様であれば、分岐が起こる可能性・確率も高まるとい 品 嚇 う条件があり、それまでの産業構造にある程度影響を受けるというものであることも向時にいえる。 ︵ 五 ︶ ラ イ フ サ イ ク ル か ら 進 化 へ これまでみてきたように集積のライフサイクルは、成熟段階から新たな経路を創出し以前の段階に戻って再生すること があり、決して宿命ではない。しかし、﹁ライフサイクル﹂という一言葉はそもそも生命が誕生し、成長し、老いて最後に は死亡するまでを指すものであり、老いたものが再び若返るということは実際にはありえない。﹁ライフサイクル﹂とい う比織は分かりゃすさという点では有用性があるとはいえるものの、その比総としての適切さを疑問視するマ
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ティンと (274) 274集有!の衰退 産業集和の進化と近接性のダイナミクス (水野) 図2 産業集積の適応サイクルモデル 集積の誕生/ 集積の方向転換 再生または置き換え \ 集積の成熟 集積の失敗 集積の成長 サンレ
l
は 、より 一 般的に集積の進化という表現を用いたうえで 、 ライフサイク ルの代わりとして図2
に示されるような集積の適応サイクルモデルというものを @ 提起して い る 。 適応サイクルモデルは、ライフサイク ル モデルと同様に、基本的 には誕生 、 成長、成熟、衰退・消滅の段階から成 っ て いるが、その方向は 一 方向 で は な く 、6
つのケ l スが考えられる 。 ①完全な循環サイクルをたどるケ l ス で は、誕生から成長、成熟、衰退をたどった後 、 新しい産業の集積に取って代わら れる 口 次に 、 ②集積の 持続的変異であり 、 これは成長段階から関連産業への分岐 を繰り返し、成長段階にとどまり続けるケ l スである 。 シ リ コ ン バ レ ー のようなMartin and Sunley (2011)をもとに録者作成。
ものがこれに相当する 。三 番目は③集積の安定であり、成長を終え、成熟段階に いたりながらも、生産を高度化することなどで成熟段階にとどまり続けるケ
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ス である 。 例えば 三 河地域の自動車関連 産業集積など は現在この状態にあると 考え られる 。④集積の方向転 換は、成熟したのち、衰退に 至る前に 、 新たな産業への 分岐を果たすというものである 。 前述の京都の電子部品産業や浜松の自動車、 楽 器産業などはこのプロセスをたどった 。 なお、先の 三 河 地域の自動車産業集積地 域も、元 は 綿織物産業と織機生産の集積から自動車 産業 が分岐したのであり 、 か つてはこのプロセスをたどったといえる 。 一方、集積のライフサイクル説が示唆するように 、 最終的に消滅に向かうケ l (275) ス と し て 、 ⑤集積の消滅がある 。 誕生、成長、成熟ののち衰退し、消滅に至ると いうものである 。 同じ消滅する 集積でも 、誕生後成長に至る前に縮 小 ・ 消滅し て 275︵ p h N ︶ 1ト ヤ ト 令 ヤ 除 去
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5 2 2 h 直 近接性概念の拡張 ( ) 爪 W ﹁ 近 接 性 ﹂ 複数の 域レベルでも知識学期同によって分絞を行うことで多機伎を増加させる 主体の働きがなければ、時間の経過とともに特化が進んで多様性が失 われてしまい、負のロックインの伏慾に陥ることとなる。明, H 1 0ロ ︸ ハ2
・ (278) 278 叩 ハ ・ m w ロ ハ 凶 同 ﹀ ・ ︵ N O︷ ︶ J ぐ r ] 可 。 円 円F O O 円 。 仲 間 円 ω− 同門出 H M O 君 。 円 宵 ∞ 。 ω 口 ︸ d u m w − ~ ~ 0 0--;
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③つま号、主体が合渡的に行動すればすべてが可能になるという怒味 ではない。やはりそれまでの経路の一定の即断線もしくは制約は受ける ということでもある。 前 掲 E i ⑥ 之 常 古 口 自 己 印 ロ ロ 一 3二
N C H H ︶この図式の背後には、開発 ← 即 時 存 i 解放 i 再綴;開発とたどる地域生態系における巡応サイクル の考え方がある。適応サイクルについて詳しくは前掲I
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③野民間 U 2 1 ω 品 を 参 間 伐 さ れ た い 。 前 掲 El ホ 山 首 、 叶 ユ 官 官 庁 ‘ 守 口 − znpHSUEE ︽ 回 以 5 N w n ︵N G H 印 ︶ ⑧ ③ − a掌 で 述 べ た よ う に 、 政業集積論は地理的近接性が知識の学習を促すことを強調してきたが、 知識学習において地理的 近接性は重要だが必ずしも必要条件ではなく、 また地理的近接性があっても必ずしも学留が起こるとは限らない。 ﹁ 地 理 的 決 定 論 ﹂ で あ る 予 ﹂ 、 つ ノ ー し た 観 点 か ら 、 集積論において知識学習における地理的近接性の意義が強調されすぎる傾向に対しという批判がなされた。 では距離を隔てての学期闘が可能であるとすれば、それを可能にするのはどのような要因なのか、といった議論が必要に なる。そこで、ト i レなどフランスの地域科学者たちによる﹁近接性学派﹂と呼ばれるグループは、近接性概念を拡張し、 ② 地理的近接性以外に、組織的近接性、制度的近接性という概念を提起した。まず、組織的近接性について説明したい。組 織的近接性が高いとは、向じ組織︵企業など︶に属していること。あるいは属している組織どうしが親会社と子会社など の資本関係にあると定義できる。組織的近接性が高いと、同じル!ティン、規範などを共有している、もしくはそれらが ③ 類似していると考えられる。このような総織的近接性は、地潮位的距離を補うことができる。というのも、遠距離であった ル!日アインなどを共有していることが知識学習を促すからである。例えば、複数の拠点を持つ企業︵例えば多 国籍企業︶は、出張や人事異動などの﹁一時的な近接性﹂によって知識学習を可能にすい。 と し て も 、 逆に地理的近接糾はが組織的距離を補うこともある。組織として異なる、 つまり組織的に距離があるアクター関での知識 産業1長干f{の進化と近援組:のダイナミクス(水野) 移転を例に考える。独立した企業関では、それぞれ奥なるル
1
テインや競範をもっているため、両者の知識移転が円滑に いかない可能性がある。その場合、両者が地理的に近接しているならば、頻繁な対面接触、経験の共有を重ねることによ り、そのギャップを埋めることが可能になる。 つまり、地理的近接性が、離れた組織的距離を補完し、知識移転を促しう る と い え る 。 次に、制度的近接性とは、領域という形で表れるような制度や慣行の類似性を指す。ここでいう制度とは、国家スケ i ルで形成されるフォーマルな制度だけでなく地域スケールで形成されるインフォーマルな慣行や規範なども含む。そうし つまり制度的近授はが知識の相互移転・学習を促す恭燥になると孝えられ旬。地理的距離が離 た制度の共有または類似、 (27)自 れていても、問じ領域を本拠地とする組織の潤や、あるいは共通の制度やアイデンティティを持つ人々︵民族など︶の間 で陶制度的距離は小さくなり、知識の移転が号、 C れる。こうした事例は、制度的近接性が地理的距離の遼さを補完するこ 279と を 示 し て い る 。 (280) 一方、制度的距離があるアクターが、知識を移転する場合を考える。例えば、異なる国を本拠地とする企業の関での知 280 識のやりとりなどが挙げられよう。間企業は、お瓦いの本拠とする国の制度、慣行の影響を強く受けており、制度的距離 は大きい。こうした場合においても、お互いが地理的に近接していれば、密接で継続的な対面接触を重ねることで、互い の規範や価値についての理解を深めることで知識移転を促しうる。このようなことから地環的近接性が制度的距離を補完 し、円滑な知識移転・学習を可能にすると考えられる。 以上のように、それぞれの近接性は互いに補完し合う関係にある。このように近接性に複数の次元を取り入れそれらの 棺互関係を考察する議論は、地理的近接性だけが学習を決定するという地理的決定論を回避している。また、距離や地域 など空間的なものと組織や制度などの社会的なものの間にある相互作用を捉えるものであり、空間的なものが社会的なも のを変え、同時に社会的なものが空間的なものを変えるという﹁社会計空間弁萩法﹂の議論とも重なっていると考えられ る
。
では複数の次元の組み合わせからなる近媛性は高ければ円高いほど知識学習の効率は上がり、新たな知識を創出する可能 ⑦ ノ ! 日 ア ボi
ムが提起した認知的近接性と学習の図式をとりあげたい。 性は高まると考えることは妥当であろうか。ここで、 人間の認知は環境に捜め込まれ、環境との相互作用から生まれる。そのため物混的・社会的に開発なる環境にいた人はそれ ぞれ世界の見え方が呉なる。そうなると、相手が伝えようとすることをどれだけ理解できるかは、相手との過去の経験の 遠いによって変わってくる。相手との言葉の違い、教育・職業経験の違い、育った国や地域の価値観や規範の途い、属す ⑨ る組織によるルールや慣行の違い、こうした違いが認知的距離を生む。認知的距離が小さい、 つまり認知的近接性が大き い 場 合 に 、 コミュニケーションの可能性は高まる。 ③ 水野・立見は、認知的近接性には、制度的近接性、組織的近接性が関連しているとする。 つまり、同じ制度・文化的環境で過ごしている人間どうしは認知的近接性が高く、同じ組織で行動のル
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テインや規範を共有している場合もまた認知 的近接性が高いと考えられる。それ以外にも認知的近接性に影響を与える婆国は存在する。例えば、もっている知識基盤 の共通性が挙げられる。同じ産業、業界に属している場合、そこで必要となる知識は共通していると考えられ認知的近接 性は大きくなる。あるいは、社会的ネットワークにおいてつながりを持っているかどうか、さらにそのつながりの最と質 も認知的近接性に影響を与えよう。これは社会的近接性︵もしくはネットワーク近接性︶と言い換えることができる。これ 産業袋綴の進化と近後伎のダイナミクス(水里?) Nooteboomによる知識学習の図式 知識の新谷1'1 図3 学潟の効果の泌さ認知織の新若手性× コミュニケーション可能佼 コミュニケーション可能性 認知的llE荷量 については後述したい。 さて、この認知的近接性が高い場合、 つまり、認知的距隊が小さい場合、お互いの理 解の可能性は高く、知識の学習は円滑なものとなる。知識の活用、 つまりすでにある知 識を活用し深化させることで、その延長上に新しい知識を生むというプロセスにおいて は認知的近接性が大きいことは有利に働く。しかし、これまでもっている知識と大きく Nooteboom (1999)をもとにE若者作成 異なる新しい知識を生むためには、もっている知識とは異なる新奇的知識を得て、それ と既存の知識を組み合わせることが必要とな旬。この知識の探索、 つまり既存の知識と は異なる新奇的知識を探索するためには、認知的近接性が大きいことは有利にはならな ぃ。なぜなら認知的に近接した相手とは、もっている知識が近いということも意味する。 新奇性のある知識を持っているのは、しばしば認知的距離が離れている棺手である。た だし、認知的距離が離れていることはコミュニケーション可能性の低下を意味する。 ノi
テ ボ ! ム に よ る と 、 コミュニケーションの可能性と新奇性を考慮すると、イノベ i (281) シヨンがもっとも効率的に行われるのは、図3
の図式で示されるように近すぎも遠すぎ もない認知的距離においてであるという。 281では、近すぎも透すぎもしない適度な認知的距離を作り出すには兵体的にはどのようにすればいいのだろうか。組織的 近接性、制度的近接性、地理的近接性のうち、 いずれかの近接性が小さすぎる、 つまり距離が大きすぎ、認知ギャップが (282) 生じる場合は、その他の近接性を大きくすればそれを補完し適度な認知的近接性を作り出すことができる。逆に、 い ず れ 282 か の 近 接 性 が 大 き す 、 ぎ る 、 つまり距離が近く、類似性が高いことで新本則的知識が得られない場合、 いずれかの近接性を小 さ く す る 、 つまり距離を創りだすことで適度な認知的距離を保つことが、新本則的知識を得るために必要となる︵なお、級 織 的 、 制 度 的 、 地 理 的 近 接 性 は 互 い に 関 透 し て い る た め 、 単 純 な 足 し 算 に は な ら な い が 、 分 か り ゃ す く 説 明 す る た め 単 純 化 し て い る ︶ 0 具体的に考えてみたい。業種・組織・文化は向じもしくは近いが、地理的に遠い相手との知識学習は、地理的近接性の小 ささを認知的近接性が補うことができる。また、業稜・抑制織・文化は異なるが地理的に近い相手の場合は、認知的近接性 の小ささを地理的近接性が補うことができる。 このように認知的近接性の議論を上記の近接性概念の拡張の議論を関連付けて、組織的近接性と制度的近接性と地礎的 近接伎の組み合わせによって適度な近接性を実現することにより、新しい知識を創出する可能性が高まるという仮説が提
、
UJ 一不できる。ここで適度な近接性のもとでの知識学習を促進するためには、﹁域外とのつながり﹂と﹁域内の多様性﹂が有 効であることが示唆される。域内の多様性が新しい知識を生む点については、前章で述べたロックインと経路創出の議論 と相似していることが分かるだろう。認知的近接性が大きすぎることはグラブハのいう﹁認知的ロックイン﹂に対応する。 また、ボシユマらの﹁関連ある多様性﹂の議論は、認知的距離が近すぎず逮すぎない適度な関係を、産業分類という視点 から捉えたものであるといえる。ここで、域外とのつながりにしろ、域内の多様性にしろ、それらを実現するためには知 識 の ルi
トとなるネットワークの適切な組み替えが必要であり、ネットワークの観点を検討することが必要となる。( ー ) ネ ッ ト ワ ー ク の 隠 係 ・ 構 造 と 社 会 的 近 接 性 −撃で述べたように、知識が個人や組織のネットワークというル
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トを通じて流通すると考えると、ネットワークにお ける関係のあり方やネットワーク全体の構造は、知識の学習において章一要な役割を果たしていると考えられる。そのため、 ⑬ 経済地理学においても社会ネットワーク識の議論を援用した研究が多くなされてきた。 社会ネットワーク論では、ネットワークを考祭する際に、二者間の関係の質に着目する視点とネットワーク全体のつな がり方の構造に着目する視点がある。ここでは前者を関係的視点、後者を構造的視点とよぶ。関係的視点はニ者間の関係 の質に骨滞日するもので、例えば二者が家族や友人関係にある、もしくは継続的に緊密な関係を築いているなどの場合、こ の二者は関係的に捜め込まれているとされ、この関係的な埋め込みは、問者の信頼をもたらし、協力関係のもとでの知識 移転を促すとされる。これは個人間だけでなく企業関にも適用できる。逆に、二者間の関係が緊密ではない、弱いつなが 産業銀綴の進化と近接伎のダイナミクス(水野) りで結びついている場合、この弱いつながりは新しい情報を得るルi
トとして有益であることがグラノベツターによって 指摘されてい旬。このように関係的に強く埋め込まれている場合と埋め込みが弱い場合には、それぞれ特性があり、強い 埋め込みは、信頼の形成と暗黙的な知識の移転において有持俄であり、弱い埋め込みは既存のものとは奥なる新たな情報の ルートとなりうる可能性が認められる。ウッジは、弱いつながりと強いつながりがバランス良く保持していることが企業 ⑪ の成果を最大化すると論じている。 一方、構造的な視点は、二者間の関係だけでなくネットワーク全体の繋がり方の構造に関するものであり、社会ネット ⑬ ワ1
ク分析の手法の発展とともに研究が増加している。例えば、A
とB
が 親 し い 友 人 で 、A
とC
もまた親しい友人である ⑬8
とC
が友人である可能性、または紹介などを通じて友人になる可能性は高い。つまり、友人の友人は友人である 場 合 、 可能性が高いということである。A
とB
とC
の三者が共に強いつながりで結ばれている状態は、ネットワークの閉鎖性が (283) 283高いとされ、そこには効果的な規範と信頼が形成されやすいとされる。こうした一一一者間の関係の議論をさらに広げてネツ ト ワ