ジクロフェナクの皮膚透過に及ぼす単環モノテルペ ン類とエタノールの併用効果
著者 小幡 誉子
学位名 博士(薬学)
学位授与機関 星薬科大学
学位授与年度 1992年度
学位授与番号 32676甲第51号
URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000308/
氏名(本籍) 小幡誉子(神奈川県)
学位の種類 博士(薬学)
学位記番号 甲 第51号 学位授与年月日 平成5年3月15日
学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当者
学位論文の題名 ジクロフェナクの皮膚透過に及ぼす単環モノテルペン類と エタノールの併用効果
論文審査委員 主 査 教 授 永井恒 司
副査 教授 高橋朋子
副査講師鈴木勉
論文内容の要旨
経皮治療システムは、皮膚を経由して直接体循環系に薬物を送達す ることを目的とした新しい薬物投与法であり、他の投与方法に比較して 多くの利点を有している。しかし、皮膚は元来、外因性物質の体内侵入
に対する防御壁としての機能を持っているために、通常の状態では、薬 物を皮膚から体内へ、治療上充分な量を送達することは困難である。こ の障壁能を一時的に低下させ、薬物の透過を促進する方法がいくつか考 案されており、そのひとつとして、吸収促進剤を用いる方法がある。こ れは、皮膚に直接作用して、一時的にその障壁能を低下させ、薬物の皮 膚透過を促進する物質を併用するものである。この方法は、簡便で、製 剤への応用性にも優れている。
近年、いくつかの抗炎症薬に対して、テルペン系化合物の経皮吸収促 進作用がスクリーニングされた結果、数種の化合物に極めて高い促進活
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し、その経皮吸収に対す
Fig.1 Chemical strucm㏄s of cyclic monoterpenes used in this study
るテルペン系化合物(Fig.1)
の促進活性の評価と、促進機構の解明を目的として詳細な研究を展開し、
以下に示す知見を得た。
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テルペン1%、エタ ノール30%を含有 するゲル軟膏からの
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認・蒜慧麗畿・:霊顎碧器ぷ瀦篇こご また、既存の吸収促 進剤であるAzoneに
は至適濃度が存在したのに対して、1一メントールの効果は濃度依存的で あった。さらに、in vitro皮膚透過実験から得られたジクロフェナクナト リウムの透過フラックスを用いることにより、in viVOにおける血中濃度 を精度よく予測でき、これより経皮吸収の律速は皮膚角質層の透過過程 であると推測された。さらに、in vivo実験におけるジクロフェナクナト
リウムの経皮吸収に対して、処方中のエタノールとテルペンの促進活性に おける交互作用を検討したところ、テルペンの活性発現にはエタノール
の共存が重要であること
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〜≡ の種類によって大きく異 閲 なることが観察された
大きく、分子形ジクロフ
, ㌍。 にイオン形の透過も不唆
Fig・3 Ef ㏄t of differing concen町誕ion of terpenes and ethanol on AUCα8h detemWned泌diclofenac sodium gel o緬1抽ents.
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摘出皮膚を透過膜として装着した2一チャンバー拡散セルを用いるこ とにより、テルペン類とエタノールの併用によって惹起される吸収促進 機構について検討した。その結果、ドナー液へのエタノールの添加によ
り、ジクロフェナクの透過係数の減少が観察された。エタノールの添加 によってドナー液中ジクロフェナクの溶解度が増大し、その結果、薬物 の皮膚への分配係数が減少したために、透過係数が減少したものと考え られる。このことは、エタノール添加量が少ない場合には、透過係数の 計算値が実験値とよく一致したことからも確認される。しかしながら、
ドナー液へのエタノールの添加量が 5°
多くなると、透過係数の計算値より ξω ら 実験値の方が大きくなることが認め 三 コ むられた(Fig,5)。従って、大量のエタ §1。
ノールが添加された場合には、エタ
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ノールが皮膚に直接作用してジクロ ∬ 篇 n 75 フェナクの透過を促進していること 麗㌫蒜溜品i;愁毘冷i慧.
が示唆された。また、イオン形ジク 監㌃蒜慧蒜眠m㎝±SD㎞
ロフェナクもエタノールの添加に対して分子形と類似の皮膚透過挙動を 示した。従って、イオン形ジクロフェナクの皮膚透過は細孔経路では説 明することが困難iであり、例えば、イオンペアのような形で、分子形と 同様脂質経路を通る可能性が示唆された。
in vi⑪o皮膚透過実験において、テルペン類(d一リモネン、1一メントー ル)の40%エタノール溶液で皮膚を前処理することにより、ジクロフ
ェナクの透過係数は増大し、テルペンの溶解度以上の添加で最大効果が 得られた(Fig.6)。一方、テルペンが溶解度以下の系では、前処理時間の 延長に伴って、ジクロフェナクの透過係数は徐々に増加した。従って、
テルペン類の促進活性の発現には熱力学的活動度が重要な役割を演じて いることが示唆された。
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論文審査の結果の要旨
本論文はジクロフェナクの皮膚透過に及ぼす単環モノテルペン類と工タノールの併用 効果について仇痂・、iπ減γo実験を通じて検討し、以下に示す知見を得ている。
まず、テルペン1%、工タノール30%を含有するゲル軟膏からのジクロフェナクナト リウムの経皮吸収は、1一メントールを配合することによって著明に増大した。また、既 存の吸収促進剤であるAzoneには至適濃度が存在したのに対して、1一メントールの効果 は濃度依存的であった。さらに、仇耐γo皮膚透過実験から得られたジクロフェナクナ
トリウムの透過フラックスを用いることにより、飢u初oにおける血中濃度を精度よく 予測でき、これより経皮吸収の律速は皮膚角質層の透過過程であると推測された。
さらに、仇輌o実験におけるジクロフェナクナトリウムの経皮吸収に対して、処方
中のエタノールとテルペンの促進活性における交互作用を検討したところ、テルペンの 活性発現には工タノールの共存が重要であることがわかった。また、最大の活性を得る 上で必要な両者の添加量はテルペンの種類によって大きく異なることが観察された。さ らに、ジクロフェナクの経皮吸収にはゲル軟膏のpHの影響が大きく、分子形ジクロフ ェナクの皮膚透過とともにイオン形の透過も示唆された。
伽耐γo皮膚透過実験においては、ドナー液への工タノールの添加により、ジクロフ ェナクの透過係数が減少した。しかしながら、ドナー液中のジクロフェナクの溶解度上 昇による皮膚への分配係数の減少を考慮すると、とくに工タノールの添加量が多い場合 には、透過係数の計算値より実験値の方が大きくなり、工タノールが皮膚に直接作用し てジクロフェナクの透過を促進していることが示唆された。イオン形ジクロフェナクの 皮膚透過は細孔経路では説明することが困難であり、例えば、イオンペアのような形で、
分子形と同様脂質経路を通る可能性が示唆された。
/πカitγo皮膚透過実験において、テルペン類(d一リモネン、1一メントール)の40%工
タノール溶液で皮膚を前処理することにより、前処理後のジクロフェナクの透過係数は 増大し、テルペンの溶解度以上の添加で最大効果が得られた。一方、テルペンが溶解度 以下の系では、前処理時間の延長に伴って、ジクロフェナクの透過係数は徐々に増加し た。従って、テルペン類の促進活性の発現には熱力学的活動度が重要な役割を演じてい
ることが示唆された。
以上の内容は薬物経皮吸収促進剤として極あて有望なテルペン類の作用機序を解明す ることに資する多くの情報を提供している。論文の記述も正確であり、博士の学位論文 として充分な条件を備えている。よって合格と判定した。