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教授・学習過程について ― 教授要素検索機 ―
著者 吉田 武尚, 岡本 直
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 18
ページ 81‑90
発行年 1982‑03‑23
その他のタイトル A Study of the Teaching and Learning Process
― A Searching Machine of Teaching Element ― URL http://hdl.handle.net/10105/6516
教授・学習過程について*
一教授要素検索機一
吉田武尚州・岡本 直*榊
(技術教室) (熊本市立城南中学校)
I はじめに
教育の分野においても、技術革新の影響が顕著に現われるようになってきた。これは単に語い や言葉の段階でなく、平常の教育実践活動の中で現実化している。教授・学習における教育機器 の大巾な導入や教材教具の整備・開発、それをささえる授業のシステム設計などは、技術革新の 教育にあたえる影響を大きく物語る例である。教育界のこうした状況のもとに、教授・学習過程
における授業設計用の教授要素検索機の完成を試みた。
授業には、教授目標を達成するための大切な構成要素が多くある。その構成要素の組合せによ って効果のあがる授業であったり、効果のあがらない授業であったりする。効果的な授業を行な うためには、授業の構成要素を分析し、分析された構成要素のあり方を現実の授業にあてはめて みて、よりよい授業につくりあげていくことが必要不可欠である。
このことから、技術科電気分野の教授・学習を進めるにあたり、各単元学習の確立された授業 設計からの学習指導が要求される。そこで単元学習指導のブロックフローチャートをカードに表 示し、そのカードが何らかの方法で現われてくるとすれば、授業(学習)構造の再確認と再発見 ができることから、より合理的、効率的な授業が実施されると考える。
以上のことから、技術科電気分野を学習領域と学習者の実態と教育媒体に分類し、それぞれ、
6領域と2種の型と2種の媒質に分け、これらを入力変数としてそれぞれセットすることにより 出力変数側に6×2×2の24なる組合せカードが出力される。そして、その1マスには2〜3の 単元が含まれている。
指導Iの型 K R情報
学習 流れスライド 誘
0HP 導集団 学習 の実一 学学
導法の・ 鯉習 発見学習 一プ 。ミζル 育メディアTV 学習領域 一 レテ
小脳
入力 出力
一名務、 4裏話、
1撚芦)÷鳴苅
讐 \1笹/
第1−1図 指導者の頭 第1−2図 入出力要因(変数)
* A Study of the Teaching and Learning Pr㏄ess A Searching Machine of Teaching Element
**Takehisa Yoshida(Department of Tecnology,Nara University of Education,Nara)
*榊Smao Okamoto(Jonan Junior High School,Kumamoto)
皿 原理構想
授業のシステム設計に役立つ検索機の原理構想をI)〜lV)に述べる。
I)授業のシステム設計にかかわる基本的でかつ是非必要性のある要因を抽出し、それらの要 素を叩求めるための基本変数 と…認められる変数 に分離する。
皿)求めるためのいくつかの変数を抽出することにより、これに最も適合した求められる変数 の組み合せを出力させる方法を考える。
㎜)第エー1図より、定常の学習の場で、指導者と学習者の条件から、指導法の型、指導の形 態、教育媒体の3変数を考える。これらを簡単に入出力表現すれば第1−2図のようになる。
なお入出力変数においては現場での設計を考慮し、もっとも影響をもつ要素を取り上げ、また、
検索機の機能としての限界も考慮した上で、人出力とも3要素にとどめている。
㎜)ブロックフローチャートの具備すべき点は、授業の流れが指導者のだれにもよくわかるも のでなければならない。それには記号の意味表示を統一する。フローチャートは、他人が見て も授業の流れが正確につかめるように必要最少限の説明を加える。
n−1 入力変数
入力変数として、学習領域、授業の流れ、学習者の実態の3つを設定し、入力にどのような変 数とするかについて述べる。
ω 学習の領域
学習■の分類方法としては、大脳皮質の機能を考慮し、心事学的機能によって分類を行はい、
学習の種類を次の6領域に分類している。この6領域分類は中学校技術科電気分野に沿ったも のを取り上げている。つまり、技術科の性格としては特に創造学習Iや技能学習■を取り上げる必 要がある。
。知的学習一根本実在の直接的・精神的把握から知識・知性化へ変わる。
。記憶学習一規則・法則、名称、注意をくり返すことによって記憶方法が習得され、正確をお びることになる。
。思考学習一推理、判断等のくりかえしによって、問題解決が進み、新しい思考方法が見出さ れ、思考技能の習熟が行なわれん
。創造学習一既習をもとに、模倣によるのではなく、自由な発想から創意工夫することにより 新しいものを生みだす。
。技能学習一設計・製作、その他を通して必要とする技術的能力を獲得する。
。社会的学習一共同設計、集団による問題解決の積み重ねにより、新しい対人行動・協力等が 行なわれる。
12〕学習者の実態
授業(学習)の主役は学習者である。学習者の実態は入力変数として重要な要素になると考 える。これは大切なレディネスであると表現され、いろいろな角度から細かな実態に応じたソ ブト面を組み込むことにすれば申し分ないと考えるが、機構上の制約からr難」、 r易」の2 変数に限定する。第1表に指導要素組み合せ、第2表に学習単元の指導要素を示す。
難:学習者にとって学習の抵抗度が高いもの 易: 〃 〃 〃 がないもの
第1表 指導要素組み合せ一覧表
易・直 難・直 易・分 難・分
知 誘・誘発 誘・誘発 誘・誘発 誘・誘発
一斉 一斉・小 個 小・個
的 AV静 AV動 AV静 AV動
記 誘 誘 誘 誘
一斉 一斉 個 個
憶 Word AV静 Word AV静
思 誘発 誘発・発 誘発 誘発・発
一斉・小 一斉・小 小・個 小・個
考 AV静 AV動 AV静 AV動
創 発 発 発 発
一斉 一斉・小 個 個・小
造 AV静 AV静 AV静 AV静
枝 誘 誘 誘 誘
一斉 一斉 個 個
能 AV静 AV静 AV動
社 誘発・発 誘発・発 誘発・発 誘発・発
会 一斉・小 一斉・小 小・個 小・個
的 Word AV静 Word AV静
第2表 学習単元の指導要素一覧表
易 ・ 直 難 ・直 易 ・分 易 ・分
知 電気回路 増幅回路のしくみ 回路計のしくみ インタホンのしくみ
電気材料 電源回路のしくみ 部品・材料表 電気機器のしくみ
的 回路計のはたらき トランジスタ 増幅器のしくみ
記 導通テスタの使い方 回路計の使い方 電気機器と回蕗図 点検の仕方
トランジスタ スピーカ 電気機器の取り扱い 増幅回路と回路図
憶 トランス コンデンサ
思 ダイオード トランジスタによる 電気機器の選び方 増幅器の選び方
抵抗器 増幅 部品の配置 作業の安全
考 試験と調整 電気機器と安全 工 程 表
創 電気回路の設計 インタホンプリント 導通テスタの設計 インタホン回路の設 導通テスタの設計 基板の設計 電気回路の設計 計
造
技 身近にある電気器具コードの接続 部品の検査と回路検 導通テスタの製作 配 線
の導通 査 電気回路の製作 インタホンの回路図
インタホン部品のと の製作
能 りつけ 電気機器の点検 竃気器具の製作
基板の加工 社 身のまわりの電気機 身のまわりの増幅器 電気機器における電 電子機器における電
会 器 電気法規 気の利用 気の利用
的 電子技術の進歩
電気利用のおいたち 電気と安全 電気と生活
13〕授業のフロ■チャート
授業を系統づける重要な変数は授業のフローチャートである。これを大別すると、直線型と 分技型が考えられる。この2つの型について, 正答 正答 正答 正答
直線型は全ての学習者が同一の一一一を進払
→目→回→回→
学習者にいつでも正しい反応が行なわれるように
第2図 直線型のプログラ∠
す乱学習者に求める反応の大部分が構成型で生 徒が自分で答をつくり出す
もの。
分技型は学習者によって Fl F2 Fo F4 本流 同一コースから分技し、再
び同一コースに進む。すな !1
わち、正答者は同一コース、
誤答者は同一、分技、同一 といったコースをたどる。
学習者の実態に応じた技分 かれでいくつかのコース準 備が必要である。
授業者のフローチャ■ト
∫。 ム ハ 五
ム
篶
ハ
第3図 分岐型のプログラム
支流
は、学習環境の構成、資料等の準備、指導者のプラン・指導といった学校と教師間の相互に関 係する指導者側の変数である。
次に指導のフローチャートを図示する。たとえば、第2,3図に示す。
正一2 出力変数 ω学習指導法の型
授業設計でまず要求されるのは指導法である。学習内容によっては、指導者側からの注入的 手法、学習者の発見的手法のどちらがよいかということもいえる。この方法の選択の誤まりは 失敗原因の大きさにつながることにもなる。現在、学習指導法はいろいろな型に分類されてい るが、六機の機構上の問題(制約)から大別して3変数(誘導型、誘導発見型、発見型)に限
定す乱そして、この3変数を出力とする。
12〕学習指導の形態
次に要求される変数は学習者の集団形態のし方である。個別指導、グループ指導、一斉指導 形態の長短を吟味し、学習領域、授業のフローチャート、学習抵抗などにあった適切な組み合 せを考える必要がある。
13〕教育メディア
授業設計にとって、これまで以上に重要視するのは教育媒体である。この教育媒体は学習者 の理解度を左右するともいわれる大切な変数であり、現場の実態と将来展望を考えても重要で ある。そして、学習効果を高めるには効果的ともいえる。多くの教育媒体はいくつもの種類に 分類されるが、ここでは、関連する機構上から3変数分類とする。また、教育媒体の位置づけ を図示する。
⑦ ⑥ ⑤
評価 診断 教 反応 ④
② 育 ③ 情
①
情報 媒
情 体 情報 報
報 提示 受容
シ 処
処 ⑧
一今
諱p一
ス 理理 テ 一・一一■■一一 ・
ム
教師 子ども
第4図教授・学習過程における教育媒体の位置づけ(西之園に加える)
⑦文字・図・印刷一word・板書 ◎AV動 一AV動・演示 ◎AV静 一AV静・印刷物 皿一3 指導要素の組み合せ
ω 入出カ変数
入力側としての学習領域(6領域)と学習抵抗(2種)と授業のフロー(2種)の組み合せ
から24通りとなる。実際には22通りで行なっている。それは入力変数が難となっていても、出 力変数の組み合せでは、同一の要素が適しているとした結果である。その部分は、記憶学習(
難一直)と技能学習(易一分)の〔誘導・一斉・AV静〕と記憶学習(難一分)と技能学習(
易一分)の〔誘導・個別・AV静〕の2組みである。
12〕入出力変数と出力カード
24種の入出力の組み合せに対し、さらに、ブ0ツクフローチャートのカードを出力カードと して出力に接続する。出力変数の表示と出力カードは同じである。
ブロックフローチャートのカードは組み合せにしたがい2−3枚に限定し、その変数の組み 合せは最も効果的だと思われる単元のみを選定している。また、出力カードには入出力変数の 要素が単元のブロックフローチャートと一緒に含まれた形で表記されている。
教授者が入力変数をインプットすると、出力カードがアウトプットされる。
入
切換スイッチ力 変
数
出 力 変 数
リレー・円状接点・モータ
出 カ
カ ト
第5図 検索機 の 機 構
㎜ 機 椰
ここでは検索機の機構について、機構図を第5図に示す。まず、入力変数から出力変数に至る 部分の機構、と、出力変数から出力カードに至る部分の2機構に分ける。
ω 検索機のパネル面の写真を 第6図に示す。左上に見えてい るのがメインスイッチ、その右 隣りがドライブとステップの切 り換えスイッチ、下がドライブ スイッチ、その右隣りがスナッ プスイッチである。これらの右 側にあるランプは出力変数を確 認するためのランプ(発光ダイ オード)で、右端には入力変数 のスイッチが3点状にならべて ある。そして、正面中央には出
力カードが見える。 第6図 検索横のパネル面
なお、出力変数については入力スイッチの関係で最高5個までとすることから、教育媒体の 出力変数を1つに限定する。
リレー部
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円状接点
モータ
第7図全体配線図
wordはword,AV静はword・AV静、AV動はword・AV静・AV動
12〕出力変数から出力カードに至る部分の機構
入力変数をセットし、表示ランプが点燈する。それに、ドライブスイッチを動作すると、ラ ンプ表示に合った出力カードがリレーの働きにより、選択され出力する。
全体配線図、外観写真および ブ0ツクフローチャート例をそ れぞれ第7図から第9図に示す。
m 六機の利用
この検索機の使途は、これを利 用する者の意図によりいろいろと 考えられるが筆者らが考えるもの を項目的にあげる。
11〕平常の授業設計の手段 12〕平常授業の反省の手段 13〕教育実習生や初心者の授業
設計・技術向上の踏み台 第8図 検索機の外観
導通テスタの設計 電気〔1〕
始め 創 造
直 線
易
構想の説明 構想図 点 検 修 正
構想をねる前に、導通テスタの使用目的を 考えさせる。
導通テスタの技能をはたしているか点検す乱
発 見 一 斉
回路図の説口
回路図 点 検
回路図をどのように設計するか、その記号など。
はじめの構想に応じた回路図ができたか、回 路を点検する。
修 正 Word、板書
終り
第9図 ブ0ツクフローチャートの例
(4〕共同授業・研究の客観的材料の提供 151授業研究の理論的理解
(6〕授業の構造的理解
(7〕教材・教具(メディア)の整備および開発
V 結果と今後の進め
以上、この検索機は教師が漠然とした入力を入れることで、明確で具体的なフローチャートを 与えてくれる。また、入力変数から即座に出力カードを得ることは、授業のシステム化における 内容の順序すけ、方法の割りつけの段階から、授業実践の段階へたどりつくためのよき指導者の 役割りを果してくれるものとして最も有効な原理機構である。
つぎに、六機の今後重要であると考えられる面は、機能性であると思われる。これを解決する にはコンピュータにも勝る人間教師(ベテラン教師)の経験とカンからくる複雑化していない基 本的に重要なものを、実際面で実証することである。すなわち、ソフト面を修正・改善すること により教授・学習■システムの確立に役立つことと考える。
最後に、本研究を進めるにあたり、多数の学生諸君の手助けを得たことに心からお礼申します。
参 考 文 献
1)沼野一男:授業の設計入門、国土社、1976.
2)松野豊訳:人間の脳と心理過程、金子書房、/976.
3)西本洋一、篠田功編:教育工学の実践6、学習研究杜、1975.
4)文部省:中学校学習指導要領.
5)文部省:中学校指導書(技術・家庭編).
6)堀内敏夫:プログラム学習とTM.
7)吉田武尚:ラジオ受信機のガイダンスプログラム、宗教大数工報、N皿1.1978.