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英語の発音意識に関する研究

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英語の発音意識に関する研究

橋 本 悟 子

1. はじめに

2002年の小学校での外国語指導助手(ALT)の活用開始など、初等中等教育段階から グローバル化に対応した教育環境づくりが進められ、英語教育も変わりつつある。2008 年 月に公示された小学校学習指導要領では、外国語活動の目標として、「外国語を通じ て、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうと する態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニ ケーション能力の素地を養う」とある。そして、2011年 月から全国の小学校において 外国語活動が完全実施された。

このように授業におけるオーラルコミュニケーションが重視される中で、現在の中学 生は自身の英語の発音に関してどのように意識しているのだろうか。英語に直接接触す る経験や海外への滞在経験など、英語使用の経験の違いによって英語の発音意識に変化 がみられるのだろうか。中学生と大学生へのアンケート調査を基に考察していきたい。

さらに、自身の英語発音を意識して使い分けているのであれば、どのような相手や状況 によって使い分けが行われるのか、そのような発音をする原因は何なのかについても考 察していく。そして、どのような相手や状況において英語発音が意識的に使い分けされ ているのかを分析することで、これからの学校教育の環境をいかに整えていくべきであ るのかを検討したい。

2. 先行研究 2.1. 英語教育

小学校における外国語活動の完全実施が注目される中で、小川(2013)は、 つの観 点から英語教育の早期化傾向について考察している。第一に、早期英語教育推進派の理 論的背景となっている「臨界期仮説」の妥当性について、いまだに第二言語習得の分野 においては「仮説」の域を出るものではないとし、第二に、早期バイリンガル教育の危 険性として、セミリンガル状態に陥る必然的かつ構造的な危険性と児童の学力不振、い 東京女子大学言語文化研究( )25(2016)pp.47‑60

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じめ、問題行動、カルチャーショックなどを通して児童が抱える精神的負担があると指 摘している。第三に、「英語(外国語)教育の開始は早ければ早いほど良い」という原則 は常に正しいのかという観点から、早期バイリンガル教育の目覚ましい効果からすると、

英語習得における主な目的を日常会話の流暢さの追求に設定すれば、英語学習の開始は

「早ければ早いほど良い」といえるのかもしれないと述べている。

また、早期化傾向にあるこれからの英語教育について考えるにあたり、現在の中学校 や高等学校の英語教育の現状を把握することは必要不可欠である。小川(2013)の述べ るように、早期英語教育の利点として日常会話の流暢さがあげられるのであれば、英語 教育の中でも特に音声指導の重要度は高いと考える。太田(2012)は、現役の大学生が 中学校と高等学校で受けた音声指導について調査した。その結果、中学校については回 答者の87.9%、高等学校については84.8%が音声に関する指導や音の規則に関する授業 を「受けていない」という回答であったという。これはおおむね日本の英語教育におけ る音声指導の現状を示すものであろう。

さらに、太田(2012)は小学校における外国語活動が抱える問題点の一つとして、教 員へ課せられた責任と負担の大きさがあると述べている。具体的な音声指導法の研究や 実際に活用可能な音声指導用教材の開発と充実に加えて、英語教育に携わる指導者がこ の現状を認識し、音声指導に関する理解を深め、その指導法と指導技術の向上を図る必 要があると結論づけている。

ここまで日本国内での英語教育について考えてきたが、海外での英語使用経験や学習 が学習者に与える影響はどうであろうか。八島・山本・ビスワット(1994)は、留学経 験を通じて、高校生がどの程度外国語による高等伝達能力を習得するのかを質的に分析 している。一年間アメリカの家庭にホームステイしながら現地の高校に通った 名に対 して、出発前と帰国後に英語による15分程度の英語による面接試験を行い、文法、語彙、

談話構造、音声的側面について分析した。その結果、留学後に共通して表れた特徴であ る、構文の句や節をつないで長く速く話すこと、具体的に自分の感情や評価を加えつつ 聞き手を意識して話すことは、コミュニケーションの必要にせまられる経験の中で生徒 たちが発達させていった特徴であると結論づけている。

2.2. 英語発音と心理的要因

今沖(2000)は、学習者の英語発音を観察すると、英語らしい発音をしようと思えば かなりの割合でできる者が故意に日本語的な発音をするケースが多いと述べている。こ

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の問題は外国語を発音する際のいわば心理的障壁ともいうべきものであり、母語に存在 しない外国語音を発音するのに抵抗感や違和感があるのはもっともであると述べてい る。では、日本語的な発音の英語はコミュニケーションに重大な支障となっているので あろうか。今沖(2000)は、アジア諸国の英語学習者を対象にした調査において、日本 人の発音は比較的明瞭性が高く理解されやすい部類に入っているとし、日本人学習者の コミュニケーションの相手として非英語母語話者

ノン・ネイティブスピーカー

を含めるなら、ネイティブ・スピーカー に近い発音を目指さねばならない理由はないという。確かに、日本語的な発音の英語だ からコミュニケーションがとれないということではないだろう。しかし、コミュニケ―

ションをとる相手によっては会話が難しいことも確かである。実際の英会話での使用を 考えると、英語を学習していく上で、やはりネイティブ・スピーカーの英語を意識する ことは必要なことであると考える。

3. 研究目的と方法 3.1. 研究目的

中学生と大学生を対象に実施した「英語発音意識に関するアンケート調査」の結果か ら、それぞれの英語学習経験と英語使用経験、発音意識とその理由に関して比較し、ど のような要因で違いが生まれるのか考察する。また、英語学習・使用経験と発音意識の 観点から、これからの英語教育のあり方について考える。

3.2. 調査方法

質問紙によるアンケート調査を中学生と大学生に実施し、有効回答数は中学生178部、

大学生125部であった。中学生の調査は、茨城県の公立中学校 校で、中学三年生を対象 に行った。調査は学校に依頼して担任の先生に配布・回収を委託し、平成27年 月下旬 に実施した。大学生の調査は、複数の大学の大学生 年生〜 年生に対して平成27年 月〜10月に配布し、回収を行った。調査の分析は、各質問項目に対するそれぞれの回答 について、有効回答数中の選択した人数の割合を算出して示した。小数点以下は四捨五 入し、整数表記とした。

3.3. 調査内容

( ) 英語学習・使用経験

現在の中学生の英語使用状況を測るために、英語学習開始時期や学校外での学習状況、

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海外滞在経験を問う項目を設けた。また、大学生に関しては、中学生よりも英語使用の 経験が豊富であると仮定し、自分の話す英語が通じない経験の有無やその原因を問う項 目を追加した。

( ) 英語の発音意識

名の学生に対するインタビュー形式の予備調査をもとに、中学生と大学生それぞれ に11の質問項目を設定した。大学生が「授業でみんなで音読する」状況は少ないと想定 されるため②は中学生のみの項目とし、学校外での英語使用として⑪「アルバイトでの 外国人のお客様に対して」を大学生のみ質問項目に追加した。中学生と大学生の英語使 用状況に応じて言い回しを若干変えた。質問項目とした場面は以下の通りである。

①授業でみんなの前で発表するとき

②授業で全員で音読するとき <中学生のみの設問>

③授業で友人とペアワークするとき

④授業で日本人の先生と英会話するとき

⑤授業で外国人の先生(ALT)と英会話するとき

⑥授業以外で外国人の先生(ALT)と英会話するとき

⑦英検などの日本人試験官に対して

⑧英検などの外国人試験官に対して

⑨英会話教室などの日本人の先生との会話

⑩英会話教室などの外国人の先生との会話

⑪アルバイトで外国人のお客様に対して <大学生のみの設問>

⑫街中で外国人に英語で話しかけられたとき

それぞれの状況において、どのような英語の発音を意識するかを「 =日本語に近い 発音」「 =やや日本語に近い発音」「 =やや英語話者に近い発音」「 =英語話者に近 い発音」「 =意識したことはない」から選択形式で問い、さらにその発音意識を選択し た理由を「A =恥ずかしいから」「B =先生に言われて(教師に指摘されて)」「C =英語 が上手くなりたいから」「D =相手に合わせて」「E =周囲に合わせて」「F =英語らしい 発音が分からないから」「G =その他」から選択する二段階の回答方法とした。設定した 状況以外での英語使用は、自由記入欄を設けて、具体的な場面と相手を記入した上で、

その状況での発音意識と理由を①〜⑫と同様に選択してもらった。

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4. 調査結果と考察 4.1. 英語学習・使用経験 4.1.1. 学校外での英語使用経験

試験の面接での英語使用経験、英会話教室の教師との英会話、街中で外国人に話しか けられた経験などの学校外での英語使用経験は、中学生と大学生に大きな差が表れた(表

)。全体的に、中学生はすべての状況で「経験がない」生徒が過半数を占めている。そ れに対して、大学生は試験の「外国人試験官に対して」を除いて「経験がある」学生が 過半数を占める結果となった。

【表 】中学生と大学生の学校外での英語使用経験(%)

4.1.2. 海外滞在経験

中学生と大学生では、海外での滞在経験、滞在理由、滞在期間に違いがみられた。中 学生は海外での滞在経験がある生徒が全体の23%であったのに対して、大学生になると 全体の79%の学生が一度は海外へ滞在したことがある(表 )。また、滞在理由も変化し ている。中学生は旅行が70%を占めており、続いて、居住13%、留学 %となっている

(図 )。それに対して、大学生は留学が48%と最も多く、旅行38%、居住10%と続いて いる(図 )。さらに、滞在理由の変化とともに、滞在期間も長期化する傾向がある。中 学生で最も多い滞在期間は 週間以内と短期間なことが分かる(図 )。しかし、大学生 になると最も多い滞在期間は か月以内となっていることが示されている(図 )。

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4.2. 英語の発音意識 4.2.1. 学校内の英語使用

4.2.1.1. 日本人教師に対する場合と外国人教師に対する場合

学校の授業内の英会話では、中学生と大学生どちらも、外国人教師に対して日本人教 師よりも英語話者的な発音を意識する割合が高かった(表 、表 )。

授業内での英会話において中学生は、日本人教師よりも外国人教師(ALT)に対して

「英語話者に近い発音」「やや英語話者に近い発音」をする傾向があった。日本人教師に

【表 】海外滞在経験

【図 】滞在理由<中学生> n =41 【図 】滞在理由<大学生> n =99

【図 】滞在期間<中学生>(人)n =41 【図 】滞在期間<大学生>(人)n =99

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対しては、「英語話者に近い発音」「やや英語話者に近い発音」が48%であったのに対し、

外国人教師に対しては58%であり、11ポイントの差があった。

また、大学生も中学生と同様、外国人教師との英会話のほうが日本人教師よりも「英 語話者に近い発音」「やや英語話者に近い発音」を選択した学生が多くなっていた(表 、 表 )。日本人教師に対しては、「英語話者に近い発音」「やや英語話者に近い発音」が67%

であったのに対し、外国人教師に対しては77%であり、10ポイントの差があった。

【表 】授業:日本人教師と<中学生>

n=178

【表 】授業:外国人教師と<中学生>

n=178

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【表 】授業:日本人教師と<大学生>

n=125

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【表 】授業:外国人教師と<大学生>

n=125

この結果より、外国人教師による授業は日本人教師よりも英語の発音意識に関して良い 影響を与えていると考える。英語話者に近い発音を意識する理由としても、中学生と大 学生ともに、外国人教師に対して「相手に合わせているから」と回答する割合が高くなっ ている。このことからも、実際にネイティブ・スピーカーの発音に触れることは良い刺 激になっているのではないか。

4.2.1.2. 自分の発音を友人に聞かれる状況

日本語的な発音を意識的に使用する状況として、授業内で友人に自分の発音を聞かれ

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る状況があげられる。今回の調査では、〈授業でみんなの前で発表するとき(授業でプレ ゼンテーションするとき)〉〈授業で友人とペアワークするとき〉の二つの状況について 質問した。

中学生に関しては、この二つの項目のみ「日本語に近い発音」「やや日本語に近い発音」

を選択した生徒が「英語話者に近い発音」「やや英語話者に近い発音」を選択した生徒を 上回っている(表 、表 )。しかし、それぞれ「日本語に近い発音」「やや日本語に近 い発音」を意識する生徒が多い理由は異なるものであった。〈授業でみんなの前で発表 するとき〉は、「英語らしい発音が分からないから」とする生徒が32%と最も多い。それ に対して、〈授業で友人とペアワークするとき〉は、「相手に合わせているから」とする 生徒が32%と最も多かった。この結果より、発表のような自分一人の発音をクラス全体 に聞かれる状況では、自分の発音が正しいのか自信が持てないために日本語に近い発音 になり、友人と一対一で発音する状況では、相手も日本語に近い発音だから同じ発音を 意識する傾向があることが分かる。また、自分の意見を英語で話すことが必要な状況に おいて日本語に近い発音を意識する生徒の割合が高いとも考えられる(表 、表 )。

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【表 】授業:みんなの前で発表<中学生>

n=178

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【表 】授業:友人とペアワーク<中学生>

n=178

大学生に関しては、中学生ほど「日本語に近い発音」「やや日本語に近い発音」を選択す る割合は高くないものの、ほかの項目に比べると約10ポイント高くなっている。その発 音を意識する理由としては、〈授業でのプレゼンテーション〉では、「英語が上手くなり たいから」が33%と最も高く、〈授業で友人とペアワークするとき〉は、中学生と同じ「相 手に合わせているから」が28%と最も高くなった。この理由の違いから、「日本語に近い 発音」「やや日本語に近い発音」を選択する割合が中学生よりも低くなっていると考える。

大学生は中学生よりも、英語らしい発音を理解しており、友人とペアワークする際もお 互いの発音がより英語話者に近くなっているため、発音に関してお互いに良い影響を与

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えているのではないか。

【表 】授業:プレゼンテーション

<大学生> n=125

【表10】授業:友人とペアワーク<大学生>

n=125

4.2.2. 学校外の英語使用

中学生の70%が学校以外で英語を学習していると回答しており、その中で最も英語を 使用する状況として、塾や英会話教室があげられる。

英会話教室などでの教師に対する発音意識は、中学生と大学生ともに「英語話者に近 い発音」「やや英語話者に近い発音」が「日本語に近い発音」「やや日本語に近い発音」

を上回っている(表11、表12、表13、表14)。中学生は、日本人教師と外国人教師で発音 意識に大きな差はない。一方、大学生は、外国人教師のほうが日本人教師よりも「英語 話者に近い発音」「やや英語話者に近い発音」を選択する学生が多い結果となった。日本 人教師に対しては、「英語話者に近い発音」「やや英語話者に近い発音」が69%であった のに対し、外国人教師に対しては83%であり、14ポイントの差があった。このことから、

大学生のほうが相手が日本人であるか外国人であるかによって、発音を意識的に変える 傾向があると考える。

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【表11】英会話教室の日本人教師と

<中学生> n=70

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【表12】英会話教室で外国人教師と

<中学生> n=103

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【表13】英会話教室の日本人教師と

<大学生> n=77

【表14】英会話教室で外国人教師と

<大学生> n=75

4.2.3. 海外経験が与える影響

海外滞在経験がある中学生は、41名で全体の23%であった。海外滞在経験がある生徒 の特徴として、経験がない生徒よりも発音意識が日本語的になる傾向がみられた。さら に、海外滞在経験者が日本語的な発音を意識する理由の中で「英語らしい発音が分から ないから」を選択する割合が高くなっていた。海外で日本語以外を公用語として使用し ている環境が刺激となり、英語の発音もよりネイティブ・スピーカーを意識するように なると予測していたが、結果は反対であった。この結果より、海外経験により英語らし い発音というものが分からなくなり、自分の英語への自信がなくなったことで、日本語 的な発音を意識的に使用してしまう生徒が増えたのではないかと考える。

海外滞在経験者のほうが日本語的な発音を意識する割合が増えるという結果は、大学 生の調査ではみられなかった。この中学生と大学生の違いから、中学生の海外経験者が 日本語的な発音を意識的に使用する要因は、英語の学習状況や年齢的な問題が関係して いる可能性があると考える。大学生は中学生よりも英語を学んでいる期間が長い分、英 語話者との接触経験も豊富であると考える。そのため、英語が通じない経験などを通し てよりネイティブ・スピーカーに近い発音を意識しようとするのではないか。英語学 習・使用経験に関する調査でも、自分の話す英語が通じない経験をしたことがあると答 えた学生は86%であった。さらに、通じなかった要因としては、「発音・アクセントが分 かりにくかったから」とする学生が46%と最も高い割合だった。このことから、大学生 が海外滞在を経験しても日本語的な発音を意識しない要因のひとつとして、発音やアク セントを改善することで自分の英語が通じやすくなると考えているためだと思われる。

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5. 結論

中学生と大学生の英語使用経験には大きな差がみられた。特に海外での滞在経験は経 験者数、理由、期間など大学生のほうが海外での経験が豊富であることが分かった。海 外経験の豊富な大学生のほうが中学生よりも英語話者的な発音を意識していることか ら、日本語以外でコミュニケーションをとるという経験が、英語を使用したコミュニケー ションにおいても影響を及ぼしていると考えられる。

さらに、相手や状況によって英語の発音が意識的に使い分けされていることが、今回 の調査で明らかとなった。中学生と大学生どちらも、全体としては英語話者的な発音を 意識する割合が高くなっている。しかし、相手や状況別に分析を進めると、大学生は全 質問項目で英語話者的な発音が過半数を占めているのに対して、中学生は自分の発音を 友人に聞かれる状況では日本語的な発音を意識する生徒の割合のほうが高くなってい た。この状況で、大学生は、日本語的な発音を意識する学生は増えるものの、英語話者 的な発音を意識する割合のほうが高くなっている。この違いは、年齢的な問題や中学生 と大学生の学習に対する意欲の違いが関係していると考える。十代の英語学習者は、羞 恥心が強く、集団の中で自分が目立つことを避けようとする消極的傾向が、特に強くみ られる(有本 2000)。そのために、自分の発音を友人に聞かれるような状況では、意識 的に日本語的な発音になってしまうのではないか。このことから、日本語的な発音を意 識する理由として「恥ずかしいから」を選択する生徒が多いと予測した。しかし、結果 は「英語らしい発音が分からない」を選択する生徒が多くみられた。つまり、中学生が 日本語的な発音を意識してしまう要因として、ネイティブ・スピーカーの発音に関する 知識不足からどのように発音すればいいのかを知らないということが考えられる。それ に対して、大学生は「英語が上手くなりたい」を選択している学生が最も多い。この発 音意識の理由の違いが、中学生が大学生よりも日本語的な発音を意識する要因の一つだ といえる。英語の学習や英語使用の経験が十分でない中学生は、ネイティブ・スピーカー の英語の発音をどのようにするのか分からないために実践できないのに対し、中学生よ りもネイティブ・スピーカーの英語に触れる機会の多い大学生は、それに近づこうとネ イティブ・スピーカーの発音を意識するのだと考える。

6. これからの英語教育

本研究により、必ずしも初等中等教育段階のうちから、海外への滞在を経験すること が英語の発音に良い影響を与えるとは限らないことが分かった。しかし、学校の授業に

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おける外国人教師との英会話や、学校外の活動として英会話教室や塾で英語を使う機会 など、国内での学習環境でネイティブ・スピーカーの発音に触れる機会をより多く設け ることは、とても重要だと考える。

英語学習・使用経験に関する調査によると、中学生の海外滞在経験者は23%であり、

学校外での英語使用経験もほとんどの項目で「経験がない」生徒が過半数を占めている。

このように、海外経験や学校外での英語使用経験ができる環境が少ない中、中学校での 英語教育は誰もが英語に触れることのできる重要な機会であると考える。しかし、授業 において ALT 等との会話で英語的な発音を意識しても、他の場面で英語を使用する際 に、その発音ができる自信にまでつながらないことが考えられる。そのため、友人同士 の英会話や授業で発表をする際には、日本語的な発音をしてしまう生徒が増えるのであ ろう。そこで、今回の英語発音意識に関する調査により明らかとなった、相手や状況に よる発音の使い分けを踏まえて、これからの授業づくりについて考えていきたい。

まず、日本人教師よりも外国人教師に対してより英語的な発音を意識していたことか ら、授業における ALT 等の外国人教師の活用はさらに進められるべきであると考える。

また、初対面の外国人との英会話に関しても、より英語的な発音意識がみられたことか ら日々の指導にあたる教師以外に、初対面の外国人と英会話ができる機会を設けること で、より実際のコミュニケーションを学ぶことができるのではないか。さらに、試験な どの自分の英会話力が測られる状況を増やすことも有効であると考える。スピーキング やコミュニケーションのような試験科目を学校で取り入れることで、学習者のモチベー ション向上にもつながると思われる。このような実践的な授業づくりを心がけていくこ とで、学習者の英語発音への自信にもつながるのではないか。

参考文献

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(13)

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横佩道彦(1982)『和製英語を正す』朝日新聞社

Abstract

The present study investigates difference in learnersʼ English pronunciation goals according to person and situation and whether there is a relationship with direct contact with English such as going abroad. This study is based on a questionnaire conducted with junior high school and university students. The questionnaire was divided into two major parts. The first part consisted of questions about the learnersʼ experience of learning and using English. The

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second part asked about the learnersʼ English pronunciation in different situations and their goals for pronunciation.

Most of the university students selected pronunciation close to English speakers as their goal in most situations when they speak English. While the general pattern was similar for junior high school students, more chose Japanese English pronunciation . As reasons, more junior high school students selected I do not know English pronunciation while university students selected I want to be a good English speaker. This difference appears to be one of the factors behind university studentsʼ effort to use English native speaker-like pronunciation. The survey also showed a great difference between junior high school and university studentsʼ experience of learning and using English. The implications of this research for the future of English education in Japan are discussed.

参照

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