インテリアデザインにおける材質感の 伝達に関する一考察
長 山 洋 子 *
A Study of Interior Design Impression on Material Feeling
Yoko Nagayama
要 旨 インテリアデザイン情報を伝達する場合,空間の大きさ,形状の他に,床,壁,天井,照明,
家具,インテリアテキスタイル,観葉植物等の色,形,材質等が,デザイン認知の手掛かりになる。コ ンピュータを用いて,視覚情報だけでデザインを認知する場合,本来は,触覚を伴って直接肌で触れて 感じる材質の感覚を,実際と同じに感じるように伝達しなければならないと考える。そこで,床仕上げ 材料に注目し, CG 画像を提供した時の床材料に対する感じ方が,実際の感じ方と大きく差の無い状態 で伝達することができるかを明らかにするために,官能評価の手法を利用して材質感伝達の実験を行っ た。その結果,カーペット,畳の CG 画像は,実物サンプルと大きく差がない感じ方ができたが,天然 石,合成樹脂系床は, CG 画像ではその材質を識別しにくいため,実物との感じ方にも差が認められた。
さらに,追加実験を行った結果, CG 画像で提示した床材料の材質が何であるかを正しく識別できれば,
実物と大きく差がない感じ方ができることが明らかになった。
1.
は じ め に
インテリア空間をデザインする場合には,建 築材料の強度や施工法など技術的な配慮が重要 ではあるが,その空間のデザインを認知する場 合はその手掛かりとして,図
1に示すように,
インテリアを構成する要素の,内装仕上げ材料,
家具,照明,テキスタイル;観葉植物などの色 調,形,触感等が重要になる。これらは,イン テリアデザイン情報を伝達する場合にも,情報 を受取る側の,空間認知の手掛かりとして重要 である。中でも,大きな面積を占める内装仕上 げ材料(床,壁,天井)は,空間の雰囲気を演 出し,その空間を快適にも不快にも感じさせる ものであり,インテリアデザインを伝達するた めの重要な要素となる。
コンピュータを用いて,インテリアデザイン 情報を伝達する場合にも,空間の大きさ,形等
*本学助教授 インテリアデザイン
(123 )
とともに,材質感情報も,実物と同じに感じる ように伝達しなければならないと考える。しか し,人間の感性に頼るところが大きいインテリ アデザインの材質感情報を,情報を受取る側が,
どのように感じているのかは定量的に明らかに なっていない。そこで,情報を受取る側が,コ ンピュータのディスプレイを通して提供したイ ンテリアの材質を,現実と大きく差のない範囲 で,布は布であることを,石は石であることを,
板は板であることを感じることが出来るか,明 らかにしなければならないと考える。特に,そ の素材の材質感の伝達が重要となる「床材料」
に注目して,コンピュ}タのディスプレイを通 して,視覚情報だけで提供した場合に感じる材 質感が,実際に見て肌で触れて感じる材質感と,
大きく差のない範囲で伝達することができるか 確認するため,官能評価の手法を用いて実験を 行った。
床仕上げ材料は,靴を脱いで生活する日本の
一般的な住宅では,人がその上で生活を営むも
図
1空間認知の手掛かり
ので,最も身近に材質を感じる仕上げ材料であ る。その材質感は,本来は,視覚情報と共に触 覚を伴って感じるもの,手で触る,素足で感じ る,座って,寝ころんで等,人が直接肌で触れ て感じる感覚である。従って,床材料の材質感 を伝達することは,インテリア空間を認知する 場合の重要な要素である。
2開
材質感伝達実験
(1)
実験に用いた床仕上げ材料
住宅の床仕上げ材料は,種類が多く,下地と その施工法によってもさまざまに分類すること ができるが,ここでは,床材料の施工法,性能 等について論じるのではないため,デザインの 視点から以下の
6種類に分類し,実験に用いる サンプルとして,一般的な床仕上げ材料
6点を 選定
1)した。その場合,色,柄,デザイン等が 材質感の評価に影響しないよう,自然の生地を 生かした色合いのものとした。
①カーペット
(124 )
カ}ベットの種類は,機械織りカーペット (一般的なものは,ウィルトンカーペット,タフ テッドカーペット)と,手織りカーペットに分 けられる。また,パイルの形状によって,カッ
トタイプ,ループタイプ,カット&ル}プタイ プに分けられる。カーペットの特質は,パイル の糸の質,長さ,形状,密度によって決まる。
また,色,柄等が豊富で,住宅においても,幅 広いインテリアの演出が可能である。
実験では,ベ}ジュ系の無地パイルカーペッ トを選定した。
②畳
畳は,主に和室の床材料として使われ,畳表 (いぐさ),畳床(いねわら),畳縁で構成され ているが,現在は,ポリスチレンフォーム板等 を使ったものも作られている。また,畳は,吸 放湿性,断熱性等に優れ,適度な弾力性もあり,
歩行感もよく,和風,和室の代名調として認識 されている。
実験では,天然いぐさの畳表を使用した。
③木製床
インテリアデザインにおける材質感の伝達に関する一考察 インテリアで用いられる木製床仕上げ材料に
は,フローリング(化粧単板を基材とした合板 の上に張り合わせたもの,サクラ,ブナ,ナラ,
カパなどの広葉樹),縁甲板(ヒノキ,アカマ ツなどの針葉樹が使われる),パーケットブロ ック(挽き板などの小片を並べて組み合わせた もの,ブナ,ナラ,カパ等)などがあり,塗装 仕上げの方法によって,さまざまな色合いを提 供することができる。
実験では,
rオーク j材のフローリング,ウ レタン塗装(センターブラウン)仕上げを使用 した。
④石
石張り床仕上げには,大きく分けると,割石 張り仕上げと,挽石張り仕上げがある。
割石は,石の目にそって割ったままの凸凹の ある状態のものの片面を仕上げたもので,花両 岩,安山岩系と堅石がある。花岡岩,安山岩系 の仕上げには,のみ切り,ぴしゃん叩き,小叩 き,粗磨き,水磨き,本磨きがある。堅石は鉄 平石を代表とするもので,素面,粗磨き,水磨 き仕上げがある。花両岩系は耐摩耗性に優れる ので,歩行者の多い床に用いられる。本磨きは,
雨などで水に濡れると滑る。
挽石とは,荒加工の板石の事で,切断器で挽 いたままの状態で,片面を仕上げたもので,花 両岩,安山岩系,軟石,大理石に分ける。花両 岩,安山岩系の仕上げには,粗挽き,水挽き,
本磨きがあり,大谷石を代表とする軟石の仕上 げには,鋸挽目,粗磨きがある。吸水性が大き く,他の石よりは足ざわりがよく滑らないので 浴室の床などに適している。大理石の仕上げに は,粗磨き,本磨きがあり,軟石,大理石は耐 磨耗性はあまり期待できない。
以上のように,石はその種類が多く,表面仕 上げ,色等によってその表情は大きく異なる。
実験では,住宅のインテリアに使われる石材 料の中から,色で個性を主張しないベ}ジ、ュ系 の大理石,本磨き仕上げ,
400角を使用した。
⑤タイル
床用タイルは,磁器質および炉器質タイルな
(125 )
どの硬質タイルで,一般的には施粕されたもの が用いられる。滑り止めに表面に凸凹のあるテ クスチャーのタイルなどもある。目地は,タイ ル裏面への水の浸透を防いで剥離防止のための 処理であり,目地の割り付けが,タイルの仕上 げの美観を決定するものとなり,デザイン上,
重要な役割を持っている。住宅の床タイルは,
主に,洗面所,浴室,便所に用いられ,その寸 法は,
150角 ,
200角 ,
300角などが用いられて いる。
実験では,
200角のタイルを使用した。
@合成樹脂系床
合成樹脂系床は,プラスチック積層基材の上 に,塩化ビニル系,ゴム系,の表面層をそれぞ れコーティングしたもので,クッシヨンフロア 等の長尺シート類とタイル形式のものがある。
これらは,意匠性,耐磨耗性,施工性,経済性 などに比較的優れており,住宅,オフィス等で 幅広く用いられている。印刷技術の向上に伴い,
さまざまな床がデザインされ提供されている。
実験ではベージュ系のクッションフロアを用 いた。
( 2 ) 材質感伝達実験
コンピュータのディスプレイを通して,視覚 情報だけで提供した場合に感じる材質感が,実 際に見て肌で触れて感じる材質感と,大きく 差のない範囲で伝達することができるか定量的 に把握するため,官能評価の手法
2)3) 4)を用い て,材質感伝達実験を行った。
①イメ}ジ調査
調査方法:インテリアデザインにおける材質感 とは,その材料を,見て,触って,直接肌に触 れて感じる心理的,感覚的な「感じ」であり,
その代表的な表現用語は,
rやわらかい
Jrざら ざら
Jrつめたい
Jr自然な
Jr和風な
Jrかさか きした
Jr親しみやすい
Jr厚手な
Jr細かな」
「人工的な」などがある。これら,材質を表す 表現用語は,他にも多数存在し,その材質の感 じ方は,人によって異なるものであると考える。
そこで,まず,前述した
6種類の床材料に対し
てどのようなイメージを持っているか把握する
ためイメージ調査を行った。この調査は,一般 的な材質の感じを表現していると思われる表現 用語を7
8語(建築学会論文集,人間工学会論文 等から抽出)を提示し,カーペット,畳,フロ ーリング,天然石,タイル,合成樹脂系床につ いて,そのイメージに当てはまる語句に O をし てもらい,そのイメージを確認した。
調査対象:本学インテリアデザインコース
3,
4年生
79名
②実験
1 CG画像に対する官能評価実験 実験方法:ディスプレイ上に提示した
CG画像
(写真
1~
6)をみて,その床材料の材質につ いてどのように感じるかを定量的に把握するた めに,官能評価の手法を用いて実験した。
CG
画像は,まず,スキャナーで実物床材料
写真 1 CG 画像力一ペット
写真
2CG 画 像 畳
( 126)
およびインテリア空間写真を読み込み,次に,
その床材料を
CGソフトを用いてインテリア写 真に張り込んで制作したものを用いた。このイ
ンテリア空間写真は,その空間が材質の感じ方 に影響を与えないように白黒のデータを用い,
インテリアのデザインが床材料の感じ方に影響 を与えないようにすべて同ーの空間を用い,床 材料だけを変えたものとした。表現用語は,イ メージ調査で確認した床材料のイメージを基に 抽出した。また,評価時のデータの提示時間に は,制限を加えないものとした。
さらに,官能評価の最後に,
CG画像で提示 した床材料がどのような材料だと思ったのかを 確認するため,その床材料の一般的呼称を記入
してもらった。
写真
3CG 画像 フローリング
写真
4CG 薗像天然石(大理石)
インテリアデザ、インにおける材質感の伝達に関する一考察
写真 5 CG 画像タイル
写真 6 CG画 像 合 成 樹 脂 系 床
被験者:本学インテリアデザインコース
4年生
16名
③実験
2実物に対する官能評価実験 実験方法:実物を見て触:って,その材質をど のように感じるか,官能評価実験を行った。実 験に用いた実物サンプルは,写真
7~12 に示す もので, 900
皿X900 凹程度以上の大きさになる よう配置した。評価時には,実物を自由に見て 触って評価をするよう教示した。官能評価は,
CG
画像と実物サンプルとの,感じ方の比較を 行うため,実験
1と同一内容を用いた。
被験者:本学インテリアデザ、インコース
4年生
16名
④実験結果
一般的な床材料に対するイメージ調査の結
( 127)写真
7実物サンプルカーペット
写真
8実物サンプル畳
写真
9実物サンプル フローリング 果,表
1に示す通り,カ}ベットは,温かみが あり,軟らかいイメージが強く,畳は,和風で,
落ち着いていて,涼しそうでわびさびのあるイ メージが強く,板(フローリング)は,自然で,
涼しそうなイメージが比較的強いものの材質感
に対する特に際立つた認識はされていないと思
われる。また,天然石は,硬く,冷たく,涼し
そうなイメージが強く,タイルは,人工的で,
写真10 実物サンプル天然石(大理石)
写真1
1実物サンプル タイル
写真12 実物サンプル合成樹指系床
涼しそう,冷たく,滑りやすいイメージが強く,
合 成 樹 脂 系 床 は , 安 っ ぽ い イ メ ー ジ が 強 い と い う結果が得られた。
実 験 2 の , CG 画 像 の 床 材 料 に 対 す る 認 識 結 果 は , 表
2に 示 す と お り , カ ー ペ ッ ト お よ び 畳 で は , カ } ベ ッ ト は カ ー ペ ッ ト と 認 識 し , 畳 は 畳 と 認 識 で き た 。 フ ロ ー リ ン グ お よ び タ イ ル で は , 誤 っ て , 合 成 樹 脂 系 床 で あ る と 認 識 し た 被
(128 )
床 材 料 イメージ
%カーペット
j量かみのある
68%軟らかい
65%畳 和風の
81%落ち着いた
72%涼しそうな
70%わぴさびのある
51%フローリング 自然な
52%涼しそうな
52%石 硬い
71%冷たい
68%涼しそうな
65%タイ
1レ 人工的な
63%涼しそうな
59%冷たい
51%滑りやすい
51%クッションフロア 安っぽい
62%*50%
以上の人が感じているイメージ 表
1床材料のイメージ調査結果
CG 画像で提示 被験者が認識した した床材料 床材料 人 数
カーペット カーペット
16畳 畳
16フローリング フローリング
16合成樹脂系床
1天然石 天然石
5合成樹脂系床
5タイル
3フローリング
1カーペット
1タイル タイル
15合成樹脂系床
1合成樹脂系床 合成樹脂系床
9石
4カーペット
2表
2床材料の認識結果
験 者 が 各 々
1名 い た 。 ま た , 天 然 石 お よ び 合 成 樹 脂 系 床 で は , そ の 商 像 を 見 て 他 の 床 材 料 を イ
メージする被験者が多かった。
実 験
2の CG 画 像 で の 材 質 感 の 評 価 と 実 験
3の 実 物 に 対 す る 材 質 感 の 評 価 を 比 較 し た 結 果 , 以 下 の よ う に な っ た 。 図
2‑ 1はカーペット,
図
2‑2は 畳 に 対 す る 実 物 サ ン プ ル と CG 画 像
の感じ方を比較したものである。 カーペット,
インテリアデザインにおける材質感の伝達に関する一考察
ど ち
非 か ら か 非
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温かみのある←
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図
2‑1カーペットの感じ方比較
畳,フローリング,タイルに対しては, CG画 像と実物サンプルの評価に,大きな差は認めら れず,ほほ同様な感じ方ができると推測できた。
しかし,
図 2‑ 3に示すように,天然石は, CG画像 を見て,フローリング,カーペット,タイル,
合成樹脂系床であると他の床材料を認識する被 験 者 が
10名いた。そのため,実物サンプルと CG画像の評価を比較すると,その感じ方にも 差が生じた。また,合成樹脂系床のCG画像を,
石,カ}ベットと認識した被験者が
6名おり,
その場合にも,感じ方には差が生じた。
3.
コ ン ビ ュ ー タ を 用 い た 材 質 感 の 伝 達
(1)
材質感の伝達の可能性について
以上の結果から,インテリアデザ、イン教育に おける,コンビュ}タを用いた材質感の伝達の 可能性について考察する。
まず,人は,各々の床材料に対して,デザイ ン,色調等に影響されずに,その呼称、から受取
(129 )
ど ち
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図
2‑2畳の感じ方比較
ど ち
非 か ら か 非
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落 ち 着 か な い い 一 ← 一 泊 一 三 十 一 ぃ 一 ← → 溶 ち 精 〈 動的な i一 一 ← ー ト ベ 一 一 ← ‑ ← → 静 的 な 滑らかな 1ー‑t‑‑tkてや→一一一トー→滑らかでない 優しい ト…削+一一→一一工会一割一一一トーベ慢し〈ない日曜ト?実物に対する際価 争 CG翻像に対する僻価
図2‑3 大理石の感じ方比較
るイメージは,固定したものを持っていると考 える。特に,合成樹脂系床は,そのデザインよ りも,合成樹脂系床であることだけで, i 安っ ぽい」というイメージに固定されていた。
次に, CG 画像に対する評価と実物サンプル の感じ方を比較した結果, CG 画像のカーペッ ト,畳に対して,被験者は,カーペットはカー ペットと認識し,畳は畳と認識することができ たため, CG 画像での感じ方も,実物と大きく 差がない感じ方ができた。これは,日常,カー ペットや畳に,身近に接しているため,その材 料が何であるかを認識しやすいためであると考 える。そのため, CG 画像の床材料が,カーペ ットはカーペット,畳は畳と,識別しやすかっ たと推測できる。しかし,天然石,合成樹脂系 床の CG 画像を見て「カーペット」と答えた被 験者がいた。これは,天然石,合成樹脂系床の CG 画像が,カ}ベットの「温かみのある
Ji 軟 らかい」イメージに見えたためであると考えら れる。 CG 画像では,その画像を見た人が「温 かい一冷たい
Ji 軟らかい 硬い」の材質感を 受取ることが難しいのではないかと推測でき る 。
さらに,天然石,合成樹脂系床は, CG 画像 では,その材質を識別しにくため,その材質感 の評価でも,実物との感じ方に,差が認められ た。大理石の CG 画像と実物サンプルとの評価 の比較をした結果,特に,大きな差が見られた のは, i 硬い
Ji 冷たい
Ji 滑りやすい
Ji 豪華な」
という語句に対してであり,これは,天然石の イメージの「硬く
Ji 冷たく
Ji 涼しそうな」と いう語句と重複するものであった。このことか らも,実験で用いた CG 画像では, i 硬く
Ji 冷 たく
Ji 涼しそうな」材質感を受取ることが難 しいのではないかと推測できる。
従って, CG 画像では, i 軟らかい一硬い」
「温かい冷たい
Ji 滑りやすい滑りにくい」
等の材質の特徴を,情報の受取り側が,認識し にくいため,評価しにくくなるものであると考 える。
また,合成樹脂系床では,印刷技術の発達に
( 130)より,肉眼でも見ただけでは合成樹脂系床だと 識別できないようなデザインのものも多く存在 するため,被験者が判断に迷うのではないかと 思われる。
そこで, CG 画像で提示した床材料の材質が どのような材質であるかを,被験者が正しく識 別できれば,インテリアデザイン情報を伝達す る場合,実物と大きく差がない感じ方ができる のではないかと推測した。この推測を確認する ために,以下の追加実験を行った。
( 2 ) 追加実験
追加実験では, CG 画像で提示した床材料が どのような材質なのかを,被験者に認識させた 上で, CG 画像を見てどのように感じるかを確 認した。
追加実験方法:
まず,提示じた CG 画像の床材料が何である かを教示し,床材料の材質を認識させた。追加 実験に用いた床材料は,実験
1で,その床材料 を誤って別の床材料だと認識する被験者が多か った天然石を取り上げ,実験 1 で用いた CG 画 像を,追加実験でもそのまま用いた。また,実 験
1で用いた実験方法をそのまま用いた。
被験者:
被験者は,天然大理石の床を敷いた CG 画像 に対して,その床材料をフローリング,カーペ ットと誤って認識し,実物サンプルとの感じ方 に,大きな差が認められた被験者A ,B の
2名 とした。
教示:
天然大理石を敷いた CG 画像を提示し, i これ は,天然大理石を敷いたものです。この床材料 に対してどのように感じるか答えてください。」
という教示を与えた。その際,実験
1を実施し た時の記憶が,その感じ方に影響しないように,
2
ヵ月の聞をおいてから実施した。
結果:
図
3は,被験者A の,実験
1,
2,および追
加実験の感じ方を比較したものである。教示を
与えないで評価した場合の CG 画像の官能評価
と,あらかじめ床材料がどのような床材料であ
インテリアデザインにおける材質感の伝達に関する一考察 るのかを認識して評価した場合とでは,その感
じ方に違いが生じた。床材料を認識してから,
その材質感の評価を行った場合は,実物サンプ ルに対する感じ方に近い感じ方ができると推測 できた。
考察:
あらかじめ床材料の材質を教示したため,実 験
1で感じた評価とは,異なった結果が得られ た。これは,床材料が何であるのかを認識する ことによって,その床材料が持つイメ}ジを,
CG 画像の床材料に重複させてイメージし,材 質を感じることができるためであると考える。
特に,実験 1 の CG 画像に対する評価と実験
2の実物サンプルに対する評価とで,大きな差 が生じた「軟らかい一硬い
JI温かい 冷たい」
「滑りやすそう一滑りにくそう」という項目で は,図
3に示すように,追加実験では,実物サ ンプルに近い感じ方が得られた。このことから,
先に推測したように, CG 画像の材質を感じる 場合に,情報の受取り側が持っている床材料の イメージが影響していると考える。そこで,イ ンテリアデザイン情報を伝達する場合には,あ らかじめその材料の材質が何であるかを認識す ることで,ある程度,実際に近い感じ方ができ る可能性を確認した。
4.
ま と め
床材料のイメージは,デザ、イン,色調等に影 響されない,固定したイメ
Mージを持っていて,
そのイメージが, CG 画像を用いた材質感伝達 の場合の手掛かりになっていた。そこで, CG 画像で提示した床材料の材質が何であるかを正
しく識別できれば,インテリアデザ、イン情報を 伝達する場合,実物に対する感じ方と大きく差 がない感じ方ができる可能性が得られた。
また,
I軟 ら か い 硬 い
JI温 か い 冷 た い 」
「滑りにくい一滑りやすい
J等の材質の感じは,
低解像度の CG 画像では表現しにくく,このよ うなイメージの特徴を持つ床材料の材質感を視 覚情報だけで伝達することは難しいと考える。
( 131)
ど ち
非 か ら か 非
常 な や で な ゃ な 常 に り や も い や り に 軟らかい い一一十一‑‑‑‑+‑‑‑‑‑l一一一←一一迫ー‑‑111硬い
l
〆 / '渇かみのある←‑‑‑' .̲̲. I :>毛ナ~... ι叩→冷たい
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滑り付そうト...:.._~妥f~~~'._十一!一一寸滑り!こ〈そう
安つ節、 ト ー ← … + ー ニ ス 三 宅 対 脚 な 自然な ト一一→一一環安ミニニー→一一一←‑→人工的な 古典的な トー→ー→一弘一よ二よ"̲‑‑‑j現代的な
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拠物に対する野価 CG画像に対す晶鰐偲 追加実験の野{商
図3 被験者A の大理石に対する感じ方 実物サンプル, CG 画像,追加実 験の比較
そこで, CG 画像を用いてインテリアデザイン 情報を伝達する場合には,その材質が何である のかを,あらかじめ教示しておく等の工夫が必 要である。
5.
今 後 の 課 題
3
次元
CADでインテリアデザインの情報伝 達等行う場合には,ウォークスルー, V.R 等の 視点を移動しながら画像を提供することが有効 である
5)。しかし,教育の現場では,コンピュ ータ機器の能力に限界があり,高解像度の CG 画像は,データ量が大きくなりすぎ,そのよう な画像を臨場感を伴って提供することは難し い。また,
3次元
CADを用いてインテリアデ ザインの情報伝達等を行う場合の材質感の伝達 についても,データ量を押さえた簡略化した画 像を利用しなくてはならなくなっている。今後,
このような簡略化した画像に対して,情報の受
取り側がどのように材質を感じるのか,検討し
なくてはならないと考える。さらに,実物と同 じに感じるための材質の表現を工夫しながら,
動画,
V.R等への応用も検討していく。
また,実験
1を実施中の被験者の様子を観察 した結果, CG 画像の材質を識別する場合に,
フローリングおよびタイル等の目地が,その材 質を識別するための手掛かりになっているので はないかと推測できた。このことから,今後,
目地に注目して材質感の認識,感じ方を検討し ていくこととする。
6
開 謝 辞
研究にあたり,拓殖大学工学部増山英太郎先 生,東京都立大学文学部心理学田中平八先生,
本学内井乃生先生にご教示賜わりました。感謝 申し上げます。
(132 )
参考文献
1)
インテリア大辞典:壁装材料協会,
1988 2)増山英太郎,小林茂雄:センソリー・エバリユエ
ーション 官能検査へのいざない一,垣内出版 ( 株 ) ,
19893)
小林重順:建築デザインの心理学一発想のトレー ニングー, (株)彰国社,
19774)金子隆芳:色彩の心理学,岩波新書l34