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(腎臓病学専攻)

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題 目

急性腎障害およびループス腎炎の病態に おける NKT 細胞の関与に関する研究

うちだ たかひろ

内 田 貴 大

(腎臓病学専攻)

防衛医科大学校

平成 29 年度

(2)

目次

第1章 緒言 1頁 第2章 [研究1] 活性化NKT細胞が引き起こす急性腎障害の発症機序の検討

4頁

第1節 方法 4頁 (1) マウスNKT細胞の活性化 4頁

(2) 中和抗体および細胞除去抗体の投与 4頁 (3) 血清サイトカインおよびBUN値測定 5頁 (4) 尿の解析 5頁 (5) 免疫蛍光染色 5頁 (6) 単核球の採取およびフローサイトメトリー 6頁 (7) In vitroの細胞傷害性評価 6頁 (8) 統計処理 7頁 第2節 結果 7頁

(1) 雌性若齢/中齢マウス間のデータ比較 7頁 (2) 中和抗体前投与がα-GalCer投与後の腎障害に与える影響 8頁 (3) In vitroの細胞傷害性評価 8頁 (4) 雄性若齢マウスにおいて、NK細胞除去あるいはIL-12前投与が

α-GalCer投与後の腎障害に与える影響 9頁 第3章 活性化ヒトCD56+ T細胞が引き起こす腎障害についての検討 11頁

第1節 方法 11頁 (1) 実験プロトコール 11頁

(2) 統計処理 12頁 第2節 結果 12頁

(3)

第4章 [研究2] α-GalCer反復投与によるループス腎炎マウスの蛋白尿改善にお ける、NKT細胞の関与についての検討 13頁

第1節 方法 13頁

(1) 実験プロトコール 13頁 (2) サイトカイン、免疫グロブリンおよび血清学的パラメーター測定

13頁 (3) 腎病変の組織学的検討 14頁

(4) 免疫ペルオキシダーゼ染色および免疫蛍光染色 14頁 (5) 単核球の採取およびフローサイトメトリー 15頁 (6) In vitroのサイトカイン、免疫グロブリン産生評価 15頁 (7) 統計処理 15頁 第2節 結果 16頁

(1) 蛋白尿の発症頻度、生存率、および血清学的パラメーターの比較 16頁 (2) 腎機能および腎組織所見の比較 16頁 (3) α-GalCer反復投与が単核球比率に与える影響 17頁 (4) α-GalCer反復投与後のサイトカイン産生 17頁 第5章 考察および結論 19頁 謝辞 27頁 引用文献 28頁 図表 35頁

(4)

1

第1章 緒言

マウス natural killer T (NKT) 細胞は NK 細胞抗原と T 細胞受容体 (T cell

receptor: TCR) 両者を保有し、肝臓に多数存在する自然免疫細胞である。IL-12

や抗CD3抗体刺激によりサイトカイン産生を行い、抗腫瘍活性を発揮すること が知られている1, 2)。マウスNKT細胞の多くは、TCRα鎖にVα14Jα18遺伝子 産物、β鎖にVβ8遺伝子を用いており、多様性に乏しいTCRを使用することか ら、invariant NKT細胞とも呼ばれる。invariant NKT細胞の特異的リガンドとし て、抗原提示細胞上の CD1d 分子によって提示される、スフィンゴ糖脂質の α-galactosylceramide (α-GalCer) が海綿から同定され3)以降NKT細胞の機能解明 が進められてきた。本研究では、NKT細胞の腎障害における役割について、[研 究1]と[研究2]に分けて報告することとした。

[研究1] 活性化マウスNKT細胞およびヒトCD56+ T細胞が引き起こす腎障害の

検討

急性腎不全はかねてから予後不良の疾患であることが知られていたが、単一 基準による診断・分類がなされていなかった。近年、国際的に統一された診断 基準が作成されるとともに急性腎障害という疾患概念が提唱され、ごく軽度な 腎機能の悪化が、腎疾患のみならず他の全身疾患の生命予後の指標にもなりう ることが報告された4)α-GalCer NKT細胞を活性化し、引き続きNK細胞や CD8+ T細胞による強力な抗腫瘍効果を誘導する反面、特に加齢マウスにおいて は、活性化されたNKT細胞がIL-4IFN-γといったサイトカインを産生すると ともに、強い肝障害、肺障害や急性腎障害を含む多臓器不全を惹起する5)。その 腎障害の病態においては急性尿細管壊死を呈すことは既に報告されており、

tumor necrosis factor alpha (TNF-α)/fas-ligand (FasL) の関与が示唆されるものの5)

(5)

2

病態の全体像の詳細は明らかにされていない。活性化NKT細胞が惹起する腎障 害の機序を明らかにすることは、急性腎障害の病態機序解明のために意義があ ることと考え、本研究では、まず正常マウスへの α-GalCer 投与腎障害モデルを 用いた詳細な検討を行うこととした (第2章)

マウス NKT細胞の機能は明らかにされてきたが、ヒト NKT細胞については 不明な点が多い。本来マウスのVα14Jα18TCRと遺伝子的類似性を示しα-GalCer にも反応するV24J18/V11TCR を発現しているヒトのT 細胞がヒト NKT 胞であると定義するとの報告がなされたが6)、このT細胞はヒトの末梢血にも肝 臓にもわずかにしか存在しない。そのため、ヒト肝臓リンパ球に 20%程度存在 NK細胞の表面分子CD56を発現しているCD56+ T細胞において、IL-12刺激

により IFN-産生と抗腫瘍活性が誘導されることから、マウス NKT 細胞と相同

であるとの見解が報告されている7-9)。この見解に基づき、本研究では第2に、

ヒトにおいてCD56+ T細胞が、培養糸球体内皮細胞や尿細管上皮細胞といった 腎固有細胞に対する細胞傷害性を発揮するか否かを検討した。CD56+ T細胞と腎 疾患との関連については、移植腎の尿細管壊死や拒絶反応に関与する 10)、血管 炎の腎病変である半月体形成性腎炎発症に関与する 11)、といった一部の報告が ある程度に過ぎない。一方で、単染色フローサイトメトリーによる尿中単核球 の検討では、CD56+ NK細胞との区別がなされていないものの、代表的な慢性腎 炎であるIgA腎症の患者においてCD56+ 細胞を多数認めることが報告されてお 12)、CD56+ T細胞が腎疾患に関与していることも想定される (第3章)

[研究2] α-GalCer 反復投与によるループス腎炎マウスの蛋白尿改善における、

NKT細胞の関与についての検討

また、NKT 細胞は、いくつかの自己免疫疾患にも関与すると考えられている が、疾患増悪的に作用するか保護的に作用するか、統一した見解は得られてい

(6)

3

ない。腎炎/血管炎モデルにおいては、NKT細胞が保護的に作用するとの報告が 散見される13, 14)。全身性エリテマトーデス (SLE) やその腎病変であるループス 腎炎モデルについては、NKT細胞が疾患の発症に関わるとの報告がある一方15) ヒトSLEおよび SLE モデルのいずれにおいてもNKT細胞が疾患抑制的に機能 しているとの報告もみられる 16-18)。α-GalCer 投与が自己免疫疾患モデルに与え る影響についても同様で、疾患モデルにより正負いずれもの効果を呈すること が報告されている。例えば、1型糖尿病モデルとして知られるNODマウスへの

α-GalCer 投与は糖尿病発症を抑制したとされる一方 19)、SLE モデルである

NZBW/F1 (BWF1) マウスに対するα-GalCer投与については、腎炎を増悪させる

20)、逆に抑制する21)、という両方の報告がある。以上をふまえて、第3にα-GalCer を複数回投与したBWF1マウスにおいて、ループス腎炎の病態におけるNKT 胞の機能と役割について再検討を試みた (第4章)

今日の臨床において、SLE の発症を予測するマーカーも、SLE 患者のループ ス腎炎発症を予測するマーカーも存在しない。また、現行の国際的診療指針で も、軽症のループス腎炎は一般的には免疫抑制療法の適応になっていないこと から22)、若齢期からのα-GalCer投与は実臨床に必ずしも適さないと考え、本研 究においては、蛋白尿が軽度出現した時期、すなわち腎炎発症後からのα-GalCer 投与を行い、その効果について検討することとした。

(7)

4

第2章 [研究1] 活性化NKT細胞が引き起こす急性腎障害の発症機序の検討

第1節 方法

(1)マウスNKT細胞の活性化

本研究は、防衛医科大学校動物実験倫理委員会の承認を受け (承認番号

15087) 、防衛医科大学校の実験動物使用に関するガイドラインに従い実施した。

Young (若齢) マウスとして生後6-10週齢の雌性および雄性C57BL/6 (B6)

ウスを、Middle-aged (中間齢、中齢) マウスとして生後25週齢前後の雌性B6

ウスを使用した。マウスは日本エスエルシーより購入し、その飼育は通常のマ ウス飼料および自由飲水にて行った。NKT 細胞を活性化させるため、α-GalCer

(フナコシ) をマウスの尾静脈から100μg/kgで単回投与した。また、vehicleとし

て同量の生理食塩水を投与した。一部の実験では、NKT 細胞を活性化させる IL-12 (R & D Systems) を、α-GalCer の投与24時間前に25μg/kgで腹腔投与した

23)α-GalCerの投与2時間後に、ネンブタール麻酔下でマウスをsacrificeし、臓 器及び単核球採取とフローサイトメトリーを行った。また、α-GalCer の投与 24 時間後に採取した腎の一部を 10%ホルマリンで固定、残りをただちに液体窒素 で凍結し-80℃で保存した。

(2)中和抗体および細胞除去抗体の投与

In vivo でのサイトカインなどの抑制のため、1.0mg/body の抗 TNF-α 抗体

(MP6-XT22, IBL) 、抗IFN-γ抗体 (R4-6A2, IBL) 、および0.5mg/bodyの抗FasL 抗 (MFL4, BD Biosciences) を、α-GalCer の投与12時間前に腹腔投与した。

細胞除去抗体として、NK細胞を除去する抗asialo-GM1 (AGM1) 抗体 (Wako)

およびNK/NKT細胞を共に除去する抗NK1.1抗体 (IBL) を使用した。抗AGM1

(8)

5

抗体は50μg/body、抗NK1.1抗体は300μg/bodyを、α-GalCer の投与96時間前と 24時間前の計2回、腹腔投与した。抗体非投与群には、vehicleとして抗体と同 量の生理食塩水を投与した。

(3)血清サイトカインおよびBUN値測定

α-GalCer 投与後の血清TNF-α濃度測定についてはThermo Fisher Scientific の、血清 IL-4 および IFN-γ 濃度については BD Biosciences 社の enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) キットを用いて行った。BUN 値は、 DRICHEM

3000V system (富士フイルム) を用いて測定した。検体採取のための採血は、尾

静脈より行った。

(4)尿の解析

腹部を愛護的に圧迫刺激して、カテーテルを用いずに尿検体を採取した。尿 検査試験紙を用いて血尿の有無を評価した。尿沈渣を顕微鏡下で観察し、細胞 性円柱の有無を評価した。

(5)免疫蛍光染色

液体窒素で凍結した検体を用いて、免疫蛍光染色による評価を行った。検体 4μmで薄切して、アセトン固定を行い、非特異的結合のブロックを施行した。

尿細管上皮細胞表面マーカーであるE-カドヘリン (AF748、R&D Systems、50 希釈) 、NK1.1 (Bioss Antibodies、50倍希釈) 、およびマクロファージマーカー であるF4/80 (CI:A3-1Serotec50倍希釈) に対する1次抗体を4℃で一晩反応 させた後、Alexa Fluor 488 もしくは Alexa Fluor 594 で標識された 2 次抗体 (Thermo Fisher Scientific、150倍) を反応させた。E-カドヘリン染色については、

各検体 100 個の尿細管を 200 倍で観察し、染色陽性率を計測した。NK1.1 およ

(9)

6

F4/80については、各染色陽性細胞の局在を確認した。

(6)単核球の採取およびフローサイトメトリー

肝および腎組織をステンレスのメッシュを通して濾過させた後、肝について

33%パーコールを用いた比重遠心および溶血処理を行い、腎については 67%

パーコールと 33%パーコールを用いた二層比重遠心および溶血処理を行い、そ れぞれの単核球を採取した。肝臓から採取した単核球は、後述する細胞傷害性 の評価に用いた。腎臓から採取した単核球については、4℃にて Fc-blocker

(eBioscience) 15分間反応させて非特異的結合のブロックを行った後に、フロ

ーサイトメトリーのための細胞染色を行った。NKT 細胞の活性化により細胞表

面上のNK1.1抗原の発現が低下するため、NKT細胞の同定には、FITC標識され

た抗 αβTCR 抗体 (H57-597、eBioscience) および PE 標識された抗 NK1.1 抗体 (PK136、eBioscience) を用いる染色と、α-GalCer を結合させた PE 標識 Mouse

CD1d Tetramer (MBL) を用いる染色を用いた。CD69NKT細胞上の活性化マ

ーカーとして選択して、ビオチン標識された抗CD69抗体 (H1.2F3、eBioscience) およびPE-Cy5標識されたstreptavidin (eBioscience) を用いて、その発現を評価し た。フローサイトメトリーの解析は、Cytomics FC500 instrument (Beckman Coulter) を用いて行った。

(7)In vitroの細胞傷害性評価

α-GalCer の投与 2 時間後に中齢マウスの肝臓から採取した単核球を、エフェ

クター細胞として用いた。腎から採取された血管内皮細胞株である TKD2 細胞

(JCRB 細胞バンク) および近位尿細管上皮細胞株である mProx24 細胞をターゲ

ット細胞として用いた。ターゲット細胞を 51Cr で標識し、エフェクター細胞と

in vitro 4時間混合培養した後、培養上清中の51Cr量をγ線量計で計測した。

(10)

7

細胞傷害活性 (%) を、100 × (計測値 – 自然遊離値)/(最大遊離値 – 自然遊離値) の計算式で求めた。本計算式において、最大遊離値を1NHClでターゲット細 胞を全て傷害した際の計測値とし、自然遊離値をターゲット細胞のみで培養し た際の計測値とした。α-GalCerの投与前に、上述の方法でvehicle (生理食塩水)

TNF-α 抗体、抗 IFN-γ抗体、もしくはその両方を投与してサイトカイン抑制

の影響を検討するとともに、混合培養前にエフェクター細胞に抗 FasL 抗体 (10μg/mL) やコンカナマイシン A (1μM Wako) 2 時間添加して FasL 系や

perforin系抑制の影響を検討した。

(8)統計処理

結果は平均値±標準誤差で表した。2 群間差に関する統計解析は t 検定で、群 間差に関する統計解析は分散分析および Tukey-Kramer honestly significant difference (HSD) 検定で行い、p値が0.05未満を有意と判断した。

第2節 結果

(1)雌性若齢/中齢マウス間のデータ比較

Vehicle投与 2時間後の腎単核球を検討したところ、若齢マウスと比して中齢

マウスの腎におけるCD69+ NKT細胞比率は有意に高値であった。また、α-GalCer 投与 2 時間後の若齢マウスでは変化を認めなかったが、中齢マウスの腎におい て、CD69+ NKT細胞比率は有意に高値となった (図1) α-GalCer投与後のNKT 細胞比率自体は、若齢・中齢マウスいずれにおいても差を認めなかった (図示せ ず)

α-GalCerの投与24時間後に、全ての中齢マウスで血尿を認めたが、若齢マウ

スでは、血尿の発症頻度は有意に低かった。乏尿性腎不全を呈したため、蛋白

(11)

8

尿の評価は困難であった。尿沈渣では顆粒円柱や上皮円柱を認め、活動性腎炎 の存在が示唆された (図2) 。また、α-GalCerの投与24時間後のBUN値は、若 齢マウスに比して中齢マウスで有意に高値であった。腎組織所見上、若齢マウ スに比して中齢マウスでは高度の尿細管傷害の所見を認めた (図3) α-GalCer の投与により血清TNF-α 値、IL-4値、および IFN-γ値は著明に上昇し、また、

投与1時間後の血清 TNF-α値は、若齢マウスに比して中齢マウスで有意に高値 であった (図4)

(2)中和抗体前投与がα-GalCer投与後の腎障害に与える影響

α-GalCer 投与後の腎障害の機序を明らかにするために、中齢マウスに対して

各種中和抗体の前投与を行った。抗TNF-α 抗体の前投与群で、α-GalCer 投与後 の血尿発症は抑制されなかったが、BUN値は有意に低値であった (図5a、b)

IFN-γ抗体の前投与単独では、α-GalCer投与後のBUN値上昇も血尿発症も抑

制されなかった。一方、抗 TNF-α 抗体および抗 IFN-γ抗体両方を前投与するこ とで、血尿の発症は完全に抑制された。両抗体の前投与群と抗 TNF-α 抗体単独 前投与群のBUN値に差は認めなかった。α-GalCer投与3時間後の血清IL-4値は、

vehicle群に比して抗TNF-α抗体前投与群および両抗体前投与群で有意に低値で

あった (図5c)

FasL抗体の前投与群では、α-GalCer投与後の血尿発症は抑制されなかった が、BUN 値は有意に低値であった (図5d、e) α-GalCer 投与により尿細管上 皮細胞上の E-カドヘリンの発現低下が認められたが、抗 TNF-α 抗体や抗 FasL 抗体の前投与により、その発現低下は有意に抑制された (図6)

(3)In vitro の細胞傷害性評価

α-GalCerの投与により活性化した肝NKT細胞は、TKD2細胞、mProx24細胞

(12)

9

の両者を傷害した (図7) TKD2細胞に対する傷害は、抗TNF-α抗体および抗

IFN-γ 抗体の単独前投与では抑制されず、両抗体前投与群で有意に抑制された

(図7a) 。mProx24細胞については、抗IFN-γ抗体の前投与では傷害が抑制され

なかったが、抗TNF-α抗体の前投与で有意に抑制された。抗TNF-α抗体単独前 投与群と両抗体前投与群の間で、細胞傷害活性に差は認めなかった (図7b) また、TKD2細胞への傷害はコンカナマイシンAの投与によるperforin阻害で 有意に抑制され、抗FasL抗体の投与は細胞傷害に影響を与えなかった。その一 方で、mProx24細胞への傷害は、抗FasL抗体の投与により有意に抑制され、コ ンカナマイシンAの投与は影響を与えなかった (図8)

(4)雄性若齢マウスにおいて、NK細胞除去あるいはIL-12前投与がα-GalCe 投与後の腎障害に与える影響

図2、3に示したとおり、中齢マウスと比べて、若齢マウスにおけるα-GalCer 投与後の腎障害は軽度であった。また、雌性若齢マウスと比して雄性若齢マウ スの腎障害はさらに軽症傾向を示した (図9、図示せず) 。しかし、雄性若齢マ ウスにおいても、抗AGM1 抗体投与によるNK細胞除去、さらにIL-12の前投 与を行うことで、α-GalCer 投与後の血清IL-4 値およびIFN-γ値が有意に上昇す るとともに、重度の腎障害を認めた (図9) 。抗 AGM1 抗体および IL-12 前投 与群の血尿発症頻度は vehicle 群に比して有意に高く、抗 AGM1 抗体投与群の 血尿発症頻度は有意ではないものの vehicle 群に比して高い傾向を認めた。

α-GalCerの投与12時間後のBUN値は、抗 AGM1 抗体投与群、抗AGM1 抗体

およびIL-12前投与群のいずれにおいても、vehicle群に比して有意に高値であっ

た。腎組織上も、糸球体管外性病変や血管周囲の細胞浸潤の所見を認めるとと もに、糸球体へのF4/80陽性マクロファージ浸潤および、糸球体内や尿細管周囲 へのNKT細胞浸潤を認め、活動性の糸球体病変や血管病変の存在が示唆された

(13)

10

(図10) 。抗 NK1.1 抗体の前投与により、α-GalCer 投与後の血尿および BUN

値上昇は抑制された (図11)

Vehicle (生理食塩水) 、抗AGM1抗体、抗AGM1 抗体およびIL-12を投与し た雄性若齢マウスの腎単核球をフローサイトメトリーで観察した (図12) 。抗

AGM1 抗体投与群における、腎NKT細胞上の活性化マーカーCD69発現は有意

に高値であり (図12b) 、抗AGM1 抗体およびIL-12投与群における、腎NKT 細胞比率は有意に高値であった (図12c) 。これらの結果から、NK細胞はNKT 細胞に抑制的に作用すること、IL-12 前投与などによる NKT 細胞の活性化が、

若齢マウスにおいてもα-GalCer投与後の腎障害を惹起することが示された。

(14)

11

第3章 活性化ヒトCD56+ T細胞が引き起こす腎障害についての検討

第1節 方法

(1) 実験プロトコール

本研究は、防衛医科大学校倫理委員会の承認を受け (承認番号2756) 、ガイド ラインに基づき実施した。

腎生検を受ける20歳以上の患者から、文書による同意を得た上で末梢血採血 を行い、Lymphocyte Separation Media (MP Biomedicals) を用いた比重遠心法で単 核球を採取した。採取した単核球をFITC標識された抗CD8 抗体 (B9.11) 、PE 標識された抗CD56抗体 (N901 (NKH-1) ) 、およびPE-Cy5標識された抗αβTCR 抗体 (IP26A、全てBeckman Coulter) で染色した後、BD FACSAria™ III セルソ ーター (BD Biosciences) を用いて、①CD56+ αβTCR+ 細胞 (CD56+ T細胞) 、② CD56+ αβTCR- 細胞 (CD56+ NK細胞) 、③CD8+ CD56- 細胞 (CD8+ T細胞) 、④ その他 (CD4+ T細胞およびB細胞) に分離した。分離した細胞は、フローサ イトメーター (Cytomics FC500 instrument) を用いてその純度が平均95%以上で あることを確認した後、1.0×106 個/ml でウェルにて培養した。ウェルに IL-2 (100ng/mLPepro Tech) IL-12 (20ng/mLPepro Tech) 、および IL-15 (5ng/mL

Pepro Tech) を添加し、各細胞群を刺激した。

96 時間の培養後に、各細胞群を事前に 51Cr 標識したヒト糸球体内皮細胞 (Human Renal Glomerular Endothelial Cells、コスモバイオ) およびヒト近位尿細管 上皮細胞 (HK-2ATCC) 4時間共培養し、各細胞群の細胞傷害活性 (%) を、

100 × (計測値 - 自然遊離値)/(最大遊離値 - 自然遊離値) の計算式で求めた (最 大遊離値は1NHClでターゲット細胞を全て傷害した際の計測値、自然遊離値 はターゲット細胞のみで培養した際の計測値) 。また、共培養前に一部のCD56+

(15)

12

T細胞にコンカナマイシンA (1μM、Wako) 2時間添加して、perforin系抑制の 影響を検討した。

(2) 統計処理

結果は平均値±標準誤差で表した。群間差に関する統計解析は分散分析および

Tukey-KramerHSD検定で行い、2群間差に関する統計解析はt検定で行った。

p値が0.05未満を有意と判断した。

第2節 結果

活性化したヒトCD56+ T細胞は、糸球体内皮細胞・尿細管上皮細胞の両方を 直接的に傷害した。さらに、その傷害活性はCD8+ T細胞よりも有意に高値であ った (図13) 。コンカナマイシンAの投与によるperforin阻害は、CD56+ T 胞の糸球体内皮細胞傷害活性を有意に抑制した (図14)

(16)

13

第4章 [研究2] α-GalCer 反復投与によるループス腎炎マウスの蛋白尿改善に

おける、NKT細胞の関与についての検討

第1節 方法

(1)実験プロトコール

本研究は、防衛医科大学校動物実験倫理委員会の承認を受け (承認番号

15087) 、防衛医科大学校の実験動物使用に関するガイドラインに従い実施した。

SLEモデルマウスとして雌性 BWF1マウスを使用した。BWF1 マウスは、生

3~4か月でIgM型からIgG型抗dsDNA抗体へのクラススイッチを起こし、加

齢と共に自己免疫疾患の徴候を呈するようになり、ループス腎炎様の免疫複合 体型腎炎による腎不全により生後1年未満で死亡する17)

マウスは日本エスエルシーより購入し、その飼育は通常のマウス飼料および 自由飲水にて行った。α-GalCer (フナコシ) を、24週齢時点から2μg/bodyで週1 度、計 4 回腹腔内に投与した。vehicle 群には、生理食塩水を同量、同頻度で同 期間投与した。代謝ケージを用いて定期的に蓄尿を行い、一日蛋白尿量を計測 し、1mg/日以上を蛋白尿陽性とした。α-GalCer の反復投与終了 8 週間後に、ネ ンブタールによる麻酔下でマウスの肝、脾、腎を採取した。肝および脾は単核 球採取に用いた。腎は一部を 10%ホルマリンで固定、一部をただちに液体窒素 で凍結し-80℃で保存し、残りを単核球採取に用いた。また、同一週齢の雌性B6 マウス (日本エスエルシーより購入) を用いて、α-GalCerを同量、同頻度で同期 間反復投与する群を作成した。

(2)サイトカイン、免疫グロブリンおよび血清学的パラメーター測定

前述の通り、IL-4およびIFN-γ濃度測定についてはBD Biosciences社の、TNF-α

(17)

14

濃度についてはThermo Fisher Scientific社のELISAキットを用いて測定した。ま

た、IgM濃度をBETHYL社の、IgG型の抗dsDNA抗体価をシバヤギ社のELISA

キットを用いて測定した。血清アルブミン、総蛋白、ALT および BUN 値は

DRICHEM 3000V systemを用いて測定した。検体採取のための採血は、尾静脈よ

り行った。

(3)腎病変の組織学的検討

ホルマリン固定した腎臓を3μmで薄切してperiodic acid-Schiff (PAS) 染色を行 い、糸球体への免疫複合体沈着、硬化病変、半月体形成を評価した。各検体 50 個の糸球体を400倍で観察し、wire loop lesionまたはhyaline thrombusを認める 糸球体を免疫複合体沈着陽性、全節性または分節性硬化を認める糸球体を硬化 病変陽性とした。

(4)免疫ペルオキシダーゼ染色および免疫蛍光染色

ホルマリン固定、パラフィン包埋した検体を用いた免疫ペルオキシダーゼ染 色で、腎臓の炎症細胞浸潤を評価した。キシレンで脱パラフィンを行い、抗原 賦活処理、内因性ペルオキシダーゼおよび非特異的結合のブロックを施行した 後、F4/80 (CI:A3-1Serotec100倍希釈) CD3 (Agilent10倍希釈) に対する

1次抗体を4℃で一晩反応させた。なお、F4/80染色に対してはproteinase Kで、

CD3染色に対してはpH6のクエン酸緩衝液で抗原賦活処理した。ヒストファイ ン (ニチレイ) 2次抗体として用い、ジアミノベンジジンにて染色した。核染 色はマイヤーヘマトキシリン (Wako) で行った。各検体を 200 倍で 5 視野を観 察し、それをデジタルカメラで撮影した。各染色の陽性面積率を、得られた画 像を元に解析ソフト (LuminaVision ver. 2.04, Mitani Corporation) を用いて算出し た。

(18)

15

液体窒素で凍結した検体を用いた免疫蛍光染色で、糸球体への IgG 沈着を評 価した。検体を4μmで薄切して、4%PFAによる固定を行い、非特異的結合のブ ロックを施行した。FITC標識された抗IgG抗体 (MP Biomedicals、100倍希釈)

4℃で一晩反応させた。各検体を200倍で5視野を観察、デジタルカメラで撮影

し、解析ソフトを用いて蛍光強度を算出した。

(5)単核球の採取およびフローサイトメトリー

肝、脾、腎組織をステンレスのメッシュを通して濾過させた後、肝および腎 については第2章に記載の方法で、脾については溶血処理を行い、それぞれの 単核球を採取した。肝および脾臓から採取した単核球は、一部をフローサイト メトリー解析に使用し、残りは後述する培養実験に用いた。腎臓から採取した 単核球は、全てフローサイトメトリー解析で使用した。抗αβTCR 抗体および抗

NK1.1 抗体を用いる染色で NKT 細胞全体を検出し、抗 αβTCR 抗体および

α-GalCerを結合させたMouse CD1d Tetramerを用いる染色でinvariant NKT細胞 を検出した。フローサイトメトリーの解析は、Cytomics FC500 instrumentを用い て行った。

(6)In vitro のサイトカイン、免疫グロブリン産生評価

肝および脾臓から採取した単核球を、96 ウェルマイクロプレートを用いて、

0.5×106個/ウェルで培養した。α-GalCer (100ng/mL、フナコシ) 、固相化抗 CD3 抗体(10μg/mL、eBioscience) 、concanavalin A (1ng/mL、Vector Laboratories) common bacterial DNA (CpG-ODN 20μg/mL Hycult Biotech) ま た は lipopolysaccharide (LPS、10μg/mL、Sigma-Aldrich) で刺激し、開始6時間後およ 48時間後に上清を採取、前者を用いてTNF-α値を、後者を用いてIL-4、IFN-γ およびIgM値を測定した。

(19)

16

(7)統計処理

結果は平均値±標準誤差で表した。両群間の蛋白尿発症頻度の差に関する検定

Kaplan-Meier法で、その他の2群間差に関する統計解析はt検定で行った。p

値が0.05未満を有意と判断した。

第2節 結果

(1)蛋白尿の発症頻度、生存率、および血清学的パラメーターの比較

α-GalCer投与群では、vehicle群に比してα-GalCerの反復投与終了8週間後 (36 週齢) までの蛋白尿発症が有意に少なかった。また、マウスの生存率も高値の傾 向を示した (図15) α-GalCer投与群の血清アルブミン値は、vehicle群に比し て有意に高値であった (表1) 。両群間の血清総蛋白値に差は認めなかったが、

A/G比はα-GalCer投与群において有意に高値であった。両群間のALT値に差を

認めなかった。全マウスの蛋白尿と抗dsDNA抗体価の間に相関を認めず、両群

間の抗 dsDNA 抗体価に差は認めなかった。なお、24 週齢の BWF1 マウスは、

同週齢の B6 マウスに比べて、α-GalCer 単回投与後の血尿を呈さず、BUN の上 昇も軽微であった (図示せず)

(2)腎機能および腎組織所見の比較

α-GalCer投与群のBUN値は、vehicle群に比して有意に低値であった (表1) 光学顕微鏡で評価した、α-GalCer反復投与終了8週間後 (36週齢) の免疫複合体 沈着陽性糸球体比率は α-GalCer 投与群で有意に少なく、硬化糸球体比率も

α-GalCer 投与群で有意に低値であった。有意な差を認めなかったが、半月体形

成糸球体比率もα-GalCer投与群で低値の傾向を認めた (図16) 。免疫蛍光染色

(20)

17

で評価した糸球体IgG沈着も、vehicle群に比してα-GalCer群で有意に軽度であ った (図17) 。腎の炎症細胞浸潤を評価した、F4/80染色陽性面積率 (図18) および CD3 染色陽性面積率 (図19) は、α-GalCer 投与群でいずれも有意に低 値であった。

(3)α-GalCer反復投与が単核球比率に与える影響

α-GalCer反復投与終了8週間後 (36週齢) の肝NKT細胞比率 (NK1.1抗原お

よびαβTCRintermediateに発現する細胞の比率) は有意に減少していた

(図20) また、invariant NKT細胞比率 (α-GalCer 結合CD1d Tetramer陽性で、

αβTCR を発現する細胞の比率) は、肝、脾および腎の三臓器全てにおいて有意

に少なかった (図21)

(4)α-GalCer反復投与後のサイトカイン産生

1度、4α-GalCerを反復投与した際の、毎投与後の血清IL-4およびIFN-γ 値を検討した。IL-4値の検討にはα-GalCerの投与3時間後、IFN-γ値の検討には 投与12時間後に採取した検体を用いた。その結果、α-GalCerを反復投与すると、

血清IL-4および IFN-γ 値は検出されなくなり、α-GalCerに対する免疫不応答を

起こしていることが示唆された (図22) 。コントロールとして用いたB6 マウ スにおいても同様の結果が観察され、α-GalCer に対するNKT細胞の免疫不応答 は、SLEモデルマウスに特異的ではないことが判明した。

α-GalCer反復投与終了8週間後のBWF1マウスでは、in vitroでのα-GalCer 激に対する肝単核球のIL-4IFN-γの産生能が、α-GalCer投与群で著明に低下し ていた (図23) 。肝単核球に対して固相化抗CD3抗体およびconcanavalin A

よるin vitro刺激を行い検討したところ、IL-4の産生能はα-GalCer投与群で有意

に低下した一方で、IFN-γの産生能はα-GalCer投与群とvehicle群の間で有意な

(21)

18

差を認めなかった (図24) α-GalCer反復投与B6マウスにおいてもBWF1 ウスと同様に、IL-4産生能は低下していたがIFN-γ産生能は保たれていた。BWF1 マウスの脾単核球に対して細菌成分による刺激を行ったところ、CpG-ODN刺激

に対する IgM 産生は、α-GalCer 投与群で有意に低値であった (図25) 。LPS

刺激に対するα-GalCer投与群のIgM産生は、vehicle群に比して低値の傾向を認 めた。

NK細胞の機能評価として24)in vitroでのCpG-ODN刺激によるIFN-γ産生を 検討したところ、α-GalCer投与群で有意に高値であった (図26) 。したがって、

α-GalCer の反復投与は BWF1 マウスに免疫不全状態を誘導していないことが示

唆された。TNF-α産生に関しては、両群間で差を認めなかった (図示せず)

(22)

19

第5章 考察および結論

本研究では、まずα-GalCer投与モデルを用いて活性化NKT細胞が引き起こす 急性腎障害の発症機序を B6 マウスにおいて検討するとともに、次いでヒト CD56+ T 細胞が糸球体内皮細胞や尿細管上皮細胞を傷害し得るか検討した [研 究1] 。また、BWF1マウスを用いて、ループス腎炎の病態におけるNKT細胞 の役割を検討した [研究2]

[研究1] では、若齢B6マウスと比較して中齢B6マウスの腎におけるCD69+

NKT細胞比率が有意に高かったことから、腎のNKT細胞は、加齢により通常状 態でも活性化している可能性が示唆された。また、中齢マウスの腎において、

α-GalCer 投与後の CD69+ NKT 細胞比率が有意に高値であったことから、

α-GalCer投与による腎局所でのNKT細胞活性化が示唆された。一方で、若齢マ

ウスにおいてはα-GalCer投与後もNKT細胞表面上のCD69発現が亢進しなかっ たことは、本モデルにおける腎障害が年齢に依存していることを裏付ける結果 と考えられた。実際に中齢マウスでは、α-GalCer 投与後の血尿発症頻度が有意 に高く、BUN値も有意に高値であり、高度の尿細管傷害の所見を認めた。既報

5)の通り、α-GalCer投与1時間後の血清TNF-α値は、若齢マウスに比して中齢マ

ウスで有意に高値であった。

糸球体内皮障害と尿細管障害の双方の観点から α-GalCer による急性腎障害の 機序を検討したところ、血尿や顆粒円柱・上皮円柱など活動性腎炎を示唆する 尿異常を認めるとともに、腎組織所見上、尿細管傷害の所見も認めた。腎に存 在する百万ものネフロンのうち、ごくわずかな糸球体係蹄壁が傷害されること で血尿が発生すると考えられており 25)、本研究ではその部位を同定することは 困難であった。一方で、NKT細胞を豊富に含んだ肝単核球を用いたin vitroの細 胞傷害性評価では、活性化されたNKT細胞が糸球体内皮細胞を含む腎血管内皮

(23)

20

細胞と尿細管上皮細胞の両者を傷害することが確認された。本研究では腎から 採取されたとする血管内皮細胞細胞株を用いており、糸球体内皮細胞のみをタ ーゲットとした検討はできなかったが、中齢マウスの肝単核球を採取したタイ ミングであるα-GalCer投与2 時間後において、上述のとおり腎におけるCD69+ 活性化 NKT細胞が増加しており、腎の NKT 細胞が腎の糸球体内皮細胞・尿細 管上皮細胞に対する傷害活性を有していることを示唆する結果と考えられた。

中齢マウスにおける中和抗体を用いた検討では、TNF-αFasLの阻害により、

α-GalCer投与後のBUN値上昇が有意に抑制されることを確認した。尿細管上皮

細胞傷害により細胞表面マーカーの発現が低下することを我々は過去に報告し

ており26, 27)、本研究においてもα-GalCer投与により尿細管上皮細胞表面マーカ

ーである E-カドヘリン発現が低下し、尿細管上皮細胞傷害が確認された。一方

で、TNF-α抗体や抗FasL抗体の前投与によりその発現低下は有意に抑制され、

尿細管上皮細胞傷害の抑制が示唆された。In vitroの細胞傷害性の評価結果も同 様で、TNF-α および FasL 阻害により尿細管上皮細胞傷害は有意に抑制された。

α-GalCer投与モデルの肝障害にはTNF-α/FasL系が関与するが28, 29)、尿細管上皮 傷害についても同様の病態機序が存在することが強く示唆された。一方で、

TNF-α阻害は、血尿発症およびin vitroの糸球体内皮細胞を含む腎血管内皮細胞

傷害に対して有意な抑制効果を示さず、FasL 阻害は、両者に対して全く抑制効 果を示さなかった。この結果と、抗 TNF-α 抗体および抗 IFN-γ抗体両方を前投 与することで血尿の発症が完全に抑制され、腎血管内皮細胞への細胞傷害活性 が有意に抑制されたこと、およびコンカナマイシン A の添加により腎血管内皮 細胞への細胞傷害活性が有意に抑制されたことをふまえると、活性化NKT細胞

perforin 系を介して糸球体内皮細胞を含む腎血管内皮細胞傷害を引き起こし

ていることが示唆された (図27) 。シュワルツマン反応の検討でも、血管内皮 細胞傷害はFasL系ではなくperforin系を介して発症することが示されている30)

(24)

21

大規模臨床研究において、抗 TNF-α 抗体が小型血管炎の再発抑制効果をもたら さなかったことが報告されている一方で31)、抗perforin抗体が血管炎モデルにお ける腎病変の改善に有効であったことが報告されている 32)。糸球体内皮細胞を 含む腎血管内皮細胞傷害に TNF-α 系よりも perforin 系が関与していることを実 験的に示した本研究結果は、既報と合致するのみならず、その病態の機序をさ らに詳細に示したと考えられる。今日の腎臓病診療において、perforin FasL 阻害を主たる標的とした治療法は存在しない。本研究結果を踏まえ、今後は腎 障害の病態に応じて、perforin 阻害と FasL 阻害を使い分けるような治療戦略が 立てられることが期待される。

中齢マウスと比べて若齢マウスにおける α-GalCer 投与後の腎障害は軽度であ り、また、雌性若齢マウスと比して雄性若齢マウスの腎障害はさらに軽症傾向 であった。しかし、その雄性若齢マウスにおける抗AGM1 抗体やIL-12を用い た検討では、α-GalCer 投与後の血中 IL-4 値、IFN-γ値の上昇とともに血尿の増 悪やBUN値上昇を認めた。また、活動性の糸球体病変や血管病変を示唆する腎 組織所見を認めた。この結果から、若齢マウスにおいても、強くNKT細胞を活 性化することで重症の腎障害が発症し得ることが示唆された。抗AGM1 抗体投 与マウスやNK細胞不全マウスにおいて33)あるいはIL-12の前投与により23)

α-GalCer 投与後の肝障害が増悪傾向を示すことが過去に報告されている。本研

究では、NK細胞除去により、腎 NKT細胞上の活性化マーカーである CD69 現が亢進した。それゆえα-GalCer 投与モデルにおいて、NK細胞はNKT細胞に 対して抑制的に機能する可能性がある。また、IL-12投与により、腎リンパ球に おける NKT 細胞比率が上昇した。IL-12 投与により、肝から腎に遊走した活性 NKT細胞が悪性腫瘍の腎転移を抑制することが報告されており8, 9)IL-12 与でNKT細胞比率が上昇した本研究結果との関連が示唆された。

α-GalCer は合成リガンドであるが、CpG-ODN のような細菌に共通する DNA

(25)

22

投与によっても、NKT 細胞の活性化による急性腎障害が起こることが報告され ている24)。また、腎虚血再灌流モデルにおける腎障害にNKT細胞が関与するこ とが報告されており34)、同モデルの腎障害即ち尿細管傷害にFasL系が関与する ことも示唆されている 35)。これらの背景をふまえて、本研究ではNKT細胞の組 織傷害性を中心に検討したが、その一方で、NKT 細胞は肝細胞の再生促進に関 わるなど、組織修復への関与も示唆されている 36)。近年注目が高まっている急 性腎障害の病態機序や治療方法を検討する上でも、NKT 細胞に着目することの 重要性が本研究結果から示された。

当初ヒトのNKT細胞の定義として、マウスinvariant NKT細胞にTCR遺伝子 配列が類似したVα24J18Vβ11遺伝子産物をTCRとして使用するT細胞をヒト NKT細胞とすることが提唱されたが6)、本研究ではCD56+ T細胞を対象に検 討を行った。CD56+ T細胞は、肝臓の単核球の20%程度を占めること、IL-12 激により抗腫瘍活性を発揮すること、さらに肝細胞癌の発症抑制に関与するこ となどの点がマウスinvariant NKT細胞に類似するからである7, 37)。実際に、活 性化されたCD56+ T細胞は、糸球体内皮細胞および尿細管上皮細胞をCD8+ T 胞よりも有意に強く傷害した。本研究でのマウスにおける α-GalCer 誘導性の急 性腎障害において、NK細胞は抑制的に機能した可能性も考えられるが、過去の 報告からヒト CD56+ NK 細胞が各種腎障害の発症に関与することが示唆されて

いる38, 39)。本研究においてもヒトCD56+ NK細胞が腎固有細胞に対する傷害性

を呈することが示されたが、CD56+ T細胞はNK細胞が発現する抑制性レセプタ ーCD94/NKG2Aを発現しておらず、NK細胞が傷害できないMHC Class-Iを発現 する正常細胞を傷害しうる点は注目に値する7)CD8+ T細胞の細胞傷害活性は、

CD4+ T細胞およびB細胞からなる細胞群の細胞障害活性と比して高値の傾向を 認めたものの、有意な差は認めず、正常組織を傷害する機能は低いと考えられ た。

(26)

23

また、コンカナマイシンAの投与によるperforin阻害により、CD56+ T細胞の 糸球体内皮細胞傷害活性は有意に抑制された。CD56+ T細胞はCD8+ T細胞より IFN-γ、perforinおよびFasL産生能が高いことから40, 41)、マウスNKT細胞と 同様の機序により腎固有細胞を傷害した可能性がある。本研究から得られた知 見を図27に示す。これまでに認識されていた抗腫瘍免疫能のみならず、マウ NKT細胞、ヒトCD56+ T細胞ともに、何らかの刺激により腎固有細胞への傷 害性を呈し、腎障害のエフェクターとなる可能性を示した本研究結果は示唆に 富むと思われる。CD56+ T細胞と腎疾患との関連については、移植腎の尿細管壊 死や拒絶反応への関与 10)、半月体形成性腎炎発症への関与 11)、といった一部の 報告がある程度に過ぎない。一方で、代表的な慢性腎炎である IgA 腎症の患者 においてCD56+ 細胞を尿中に多数認めることが報告されており12)CD56+ T 胞による腎固有細胞傷害を示した本研究結果と合わせて考えると、CD56+ T細胞 と腎疾患の関与に関して、これまで以上に着目することの重要性が示された。

[研究2] では、SLEモデルであるBWF1マウスにおいて、α-GalCer の反復投

与は、予想に反して IL-4の産生能と蛋白尿の発症率を低下させ、ループス腎炎 の重症化を抑制した。α-GalCerの反復投与はBWF1マウスのIFN-産生を亢進さ せ、ループス腎炎の発症を促進し予後を悪化させるというZengらの報告があり

20)、本研究はこれと相反する結果であった。ZengらはBWF1マウスに、20週齢

からα-GalCerを週2回、計4回投与していたが、これに対して我々は、軽度の

腎炎を発症していることが想定される24週齢から週1度、計4α-GalCerを投 与した。Youngらは若齢BWF1マウス (7週齢) に対するα-GalCerの短期投与 ( 2回のみ) により腎炎の発症が有意に抑制されたが、18週齢からの反復投与では 効果がなかったと報告している21)

NKT細胞はB細胞に直接的に作用して自己抗体産生を促進させるとの報告が

(27)

24

ある一方42)、自己応答性のB細胞を抑制するとの報告もみられる43)。いずれの 報告においてもCD1d分子を介したNKT細胞とB細胞の相互作用が示唆されて いることから、α-GalCer の反復投与が B 細胞機能に与える影響を本研究でも検 討した。その結果、α-GalCer反復投与により免疫複合体沈着が軽減すること (図 16、17) を初めて提示することで、B細胞機能低下による自己免疫応答の抑 制を示すことができた。また、α-GalCer投与群の脾B細胞において、CpG-ODN 刺激に対する IgM 産生が有意に低下していたこと、および有意ではなかったも ののLPS刺激に対するIgM産生も低下傾向であったことも、B細胞の機能抑制 を裏付ける結果と考えられた。BWF1 マウスに対する α-GalCer の反復投与は、

SLEの疾患活動性マーカーである抗ds-DNA抗体価に影響を与えなかったが、蛋

白尿と抗 dsDNA抗体価の間にも相関を認めておらず、抗 dsDNA 抗体価が腎炎

の活動性を必ずしも反映していない可能性が考えられた。この点に関連して、

他のSLEモデルであるMRL/lprマウスに対するα-GalCerの反復投与は、マウス の皮膚病変を改善したものの、抗ds-DNA抗体価には影響を与えなかったとの報 告もある44)

血中およびin vitro のサイトカイン産生の検討結果から、α-GalCer反復投与は

α-GalCerに対するNKT細胞の免疫不応答を誘導したと考えた。また、肝、脾お

よび腎における invariant NKT 細胞比率は α-GalCer 投与群で有意に少なく、抗 CD3抗体刺激やT細胞刺激因子であるconcanavalin A刺激に対する肝単核球の IL-4産生能が有意に低下していた。その一方で、IFN-γ産生能は保たれていたこ とから、NKT細胞の免疫不応答はα-GalCerに特異的であると考えられた。また、

CpG-ODN刺激に対する IFN-γ産生はむしろ亢進していたことから、NK細胞は

逆に活性化されており、BWF1マウス自体が免疫不全状態にあるのではないと考 えられた。NKT 細胞の確かな生理的リガンドはいまだ同定されていないが、

α-GalCer が糖脂質であること、ある種の細菌が生理的リガンドの候補として報

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