報 道 発 表
科学技術・学術政策研究所
平成29年12月12日
「国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願の網羅的調査」
の公表について
科学技術・学術政策研究所では、国立大学の研究開発活動について、産業への貢献の側 面を把握する目的で、国立大学の研究者の発明に基づき様々な経路(企業、TLO 等)で出願さ れた特許を網羅的に調査しました。従来の国立大学の特許分析では、概して国立大学を出願 人とする特許出願が対象とされていましたが、本調査では、発明者情報を確認して出願人が国 立大学法人ではない特許出願も網羅的に抽出・調査しました。
また、本調査研究では、全
86国立大学法人の研究者の発明に基づいた特許出願を、特許 文書に記載される発明者情報の確認等により国立大学法人化前後の
20年に渡って抽出し、
必要情報をデータベース化しました。このデータベースを用いて、各国立大学法人の研究者の 発明による特許出願状況を図表で表示しました。
本調査研究で明らかになった、国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願の主な状況は、
以下の通りです。
(1) 国立大学の法人化(2004 年以前)を境として国立大学法人の特許出願数が急増したことが 知られているが、発明者情報により国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願を集計し た結果、国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願は、法人化以前から漸増傾向にあ ったことが新たに見出された。
(2)今回、調査対象とした
1995~2012年度に特許出願実績を持つ国立大学の研究者の実数は 約4万名であり、法人化後の各年度で見ると、約7千名である。
(3)国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願のうち、外国出願が行われた割合は、1990 年代後半の
20%台半ば程度から、2010年度以降は
40%超に増加している。(4)国立大学の研究者の発明に基づき出願され、審査請求が行われた特許の査定率は、2000 年代初頭には
50~60%であったが、その後、右肩上がりに推移し、2010年度以降、80%強 となり、我が国の特許出願の平均的な査定率(2012 年度で
65%強)と比較して高くなっている。
本調査研究の概要は次頁以降に示す通りです。
※本報告書は、下記のウェブサイトから電子媒体を入手することが可能です。
<お問合せ>
科学技術・学術政策研究所
第2研究グループ 担当:中山、富澤
TEL:03-6733-6539 FAX: 03-3503-3996e-mail:[email protected]
ウェブサイト:http://www.nistep.go.jp/
国立大学の研究者の発明に基づいた 特許出願の網羅的調査
文部科学省 科学技術・学術政策研究所
第2研究グループ
本調査研究の狙い
2
大学における研究開発の実態を把握するために、学術論文を用いた科学 の分析に加えて、特許を用いた技術の分析を行うため、本調査研究を行っ ている。
従来、国立大学の研究者が創出した発明の特許出願については、国立大 学が出願人となっている特許出願の分析がされていた。本調査研究では、
特許出願の実態を踏まえて、国立大学の研究者の発明に基づいた特許 出願の網羅的なデータベースを構築し分析を行った。
本調査研究の成果は、大学の産学連携や知的財産の活用に関する戦略 や施策の策定の一助として、大学の特許活動に関する諸状況を相対化し、
大学相互の状況把握に資することを想定している。
今回の報告では、網羅的なデータを作成することによって得られた国立大 学の研究者の発明に基づいた特許出願の件数や出願人・発明者構成な どの基本的分析に関する報告を行う。
今後は、発明の特許取得活動を通じて、ハブとなる研究者を介した技術移
転、移転先における技術活用など多岐に渡る分析を行いたい。
本調査研究対象の国立大学研究者の発明に基づいた特許出願
国立大学研究者の発明は国立大学から特許出願されるだけでなく、様々な機関・組 織等から出願されている。
そのため、本調査では、独自の方法で、それらも含む網羅的なデータを抽出した。
発明者(個人)からの特許出願
大学が権利を承継しない発明 等 企業からの特許出願
大学から権利が譲渡された発明 発明者から権利譲渡された発明 等
契約で定められた権利者(ファンディング機関等)からの出願 TLOからの特許出願
国立大学法人以外の様々な機関・組織等からの出願の例
3
国立大学法人からの特許出願
今 回 の 調 査 従
来
調
査
本調査研究における網羅的なデータの抽出方法
4
特許出願のデータ
(特許庁より公開)
特許庁より公開されている特許出願データより、
下記の方法で国立大学の研究者の発明に基づいた特許を抽出
(1) 国立大学の名称で出願人検索
現86国立大学に加えて、統合・移行した17大学も対象
(2) TLOの名称で出願人検索(発明者の所属も確認)
外部TLO35機関(承認TLO)を対象
広域TLOの場合、発明者に国立大学所属の研究者が含まれている出願のみを抽出
(3) ファンディング機関の名称で出願人検索(発明者の所属も確認)
JSTほか6機関(統合・変更前の機関名を含む)について出願人検索し、発明者に国立 大学所属の研究者が含まれている出願を抽出
(4) 発明者住所と大学研究者情報による抽出
※上記方法により抽出した特許出願との重複は排除
発明者住所に国立大学名があり、且つ当該発明者が発明時点で同大学の研究者であっ たと確認できる特許出願を抽出
(5)発明者同定による抽出
※上記方法により抽出した特許出願との重複は排除
過去に発明者として特許出願に関与した国立大学研究者と、氏名の一致、及び各種情 報(出願人/共同発明者構成/住所の近接性/特許全文)の類似性などにより、同一 者であると判別した発明者が含まれる出願のうち、当該発明者が発明時点で同大学の 研究者であったと確認できる特許出願を抽出
国立大学の研究 者の発明に基づい
た特許出願データ ベース
本調査独自の 抽出方法 一般的な抽出 方法
企業からの特許出願 研究者個人からの特許出願 対象となる特許出願の経路
国立大学法人からの特許出願
国立大学法人からの特許出願 TLOからの特許出願
TLOからの特許出願
ファンディング機関からの特許出願
企業からの特許出願 研究者個人からの特許出願 ファンディング機関からの特許出願
TLOからの特許出願 国立大学法人からの特許出願
本調査研究のデータ抽出の成果
5
(2,593)
(9,729)
(36,941)
(7,405)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1995-2003年度 2004-2012年度
21.0%
83.3%
79.0%
16.7%
国立大学名の出願人検索で特定できる範囲 その他の特定方法
<今までの一般的な抽出>
法人化前は、国立大学名の出願人検索で2割を把握。
特許を受ける権利が、国に帰属する条件に合致する発明以外は、原則、発明者帰属であったことに起因。
法人化後は、国立大学名の出願人検索で8割以上特定できるが、ファンドを使った発明 や出願前権利譲渡した重要出願などが把握できていない。
<今回調査(網羅的な抽出)>
多様な特許出願経路について、発明者情報により国立大学の研究者の発明に基づ
いた特許出願を網羅的に抽出した結果、法人化前では全体の約8割、法人化後では
約2割の大学研究者の発明に基づいた特許出願を把握。
I. 様々な機関・組織等による出願を考慮して、国立大学の研究者の発明 に基づいた特許出願を網羅性高く収集したこと
II. 法人化前の1993年度から2013年度に渡る長期間の国立大学の研究 者の発明に基づいた特許出願を収録していること
III. 発明者は全て名寄せが行われ、同姓同名の別人は区別して取り扱い できること
IV. 特許出願した発明がなされた時点の発明者の所属情報が付加され、
研究者個々人の生涯特許出願状況を定量化できること
6 1993年度~2013年度出願分
出願件数: 61,414件(国内出願)
延べ出願人数: 98,852人
延べ発明者数: 221,441人(企業等所属者を含む)
発明者総数(名寄せ後): 79,697人(同上)
国大所属研究者総数(名寄せ後):41,176人
外国出願は、国内出願を基礎出願とするパリ優先権主張 出願、又は国際出願(PCT出願)の国内移行情報で補足
国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願DBの特徴
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000
368 395 521 768 1,049 1,582 1,889 2,468 3,282 4,144 5,331 5,751 5,196 4,994 4,906 4,755 4,638 4,631
42 43 90 174 231 307 362 448 896 2,842 4,590 4,968 4,332 4,150 4,164 4,032 3,914 3,949
出 願 数
法人化(2004年度)後に国立大学法人を出願人とする特許出願数は急増。
国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願数は、法人化前から階段状 に漸増、その後は一定規模で推移。
※ 制度変更の要素と、大学の研究者の成果に基づく特許出願数の増の要素を、初めて個別に観察。
うち、国立大学を出願人 とする特許出願数 国立大学の研究者の発明
に基づいた特許出願数
漸 増
急 増
国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願数
国立大学の研究者の発明に基づいた特許の出願機関は、国立大学の法 人化(2004年度)以前は企業が多い。法人化後も企業出願数が増加しつ つ、それを上回るペースで国立大学法人出願数が急増。
TLO法施行後(1998年)は承認TLO(外部型)からの出願が増加したが、
2004年度以降はTLO事業の内部組織化により外部型による出願は減少。
8
・各年度の出願人区分別の出願人数を整数カウントで集計
・出願人区分:高等教育機関等は内訳として国立大学長(法人化前)、国立大学法人(法人化後)が大多数を占め(98%)、国立大 学として置き換えてみることができる
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
出 願 人 数( 整 数 カ ウ ン ト)
年度
高等教育機関等
国内営利企業
公的機関
✖その他 承認TLO(外部型)
*外国機関
国立大学法人の研究者の発明に基づいた出願人構成の変化
269 288 358 450 538 702
835 1,031
1,366 1,854
2,491
2,860 2,881 2,915
2,747 2,706 2,789 2,751
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
出 願 率 特
許 出 願 数
国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願における 国立大学と企業の出願の特徴について
国立大学の研究者の発明に基づいた特許の出願は、企業または国立大学による単独出願から 共同出願へ移行する傾向(共同出願率の増)。
特に、企業の出願は、法人化を境に大学との共同出願へと顕著に変化し、 2005 年度以降は、約8 割が大学との共同出願(権利を共有する出願)。
国立大学の特許出願状況
(国立大学の研究者の発明に基づいた)
企業の特許出願状況
42 43 90 174 231 307 362 448 896
2,842 4,587
4,967 4,331
4,150 4,164 4,032 3,914 3,949
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000
出 願 率 特
許 出 願 数
年度
国立大学の単独出願率
国立大学と企業の共同出願率
国立大学の単独出願
国立大学と企業の共同出願
国立大学と企業以外の他機関との共同出願
企業の単独出願率
企業と国立大学の共同出願率
企業と国立大学の共同出願 企業の単独出願
企業と国立大学を除く他機関との共同出願
特許出願に至る発明を行った国立大学の研究者数の推移
今回、調査対象とした1995年度~2012年度に、特許出願実績をもつ国立大学の 研究者の実数は、約4万名である(38,626名→同姓同名の別人を区別し名寄せし たユニーク数)。
年度ごとには、2006年度の約7,800名をピークとして、2008年度以降は7,000名を 若干下回る人数で推移する。
法人化後では、特許出願実績のある国立大学研究者数の半数程度が、産学共 同で発明を行っている。
10
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000
697 728 1,000 1,512 2,122
3,242 4,057 5,420
7,348 9,039
11,954 12,821
11,755
11,108 11,365 11,109
10,756 10,699
528 525 734 1,062 1,477 2,208 2,717 3,686
4,538 5,757
7,487 7,807 7,335
6,963 7,220 7,117
6,803 6,763
334 317 398 465 596 775 891 1,198 1,573 2,203 2,941 3,394 3,557 3,523 3,471
3,333 3,480 3,336 国
立 大 学 の 研 究 者 数
国大の研究者数(延べ) 国大の研究者数(実研究者数) 産学共同発明を行った国大の研究者数(実研究者数)
国立大学の研究者が関与した特許出願数(累積数)の分布について
6,439
5,018
2,229 1,285
818 1,101
499 263 182 172 108 36 13 15 20,448
0 5,000 10,000 15,000 20,000
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 20000 21000
国 立 大 学 所 属 発 明 者 数
特許出願数
100件以上の特許出願実績(累積数)を持つ研究者が存在する(15名)一方で、1件の
みの者の割合は特許出願実績を持つ研究者全体の53% (20,448名/38,626名) を占める。
特許出願実績を持つ研究者の間の特許出願数(累積数)の偏りを表すジニ係数は0.57 であり、偏りの度合いは大きいと判断できる。
ジニ係数は0.57は、例えば、特許出願数(累積数)上位20%の国立大学の研究者の発 明に基づいた特許出願数の合計が、国立大学の研究者の発明に基づいた全体の特 許出願数のおおよそ65%を占める程度である。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
累 積 相 対 特 許 出 願 数
累積相対研究者数 20%
65%
ジニ係数:0.57
・1995-2012年度の特許出願累積数
・特許出願数は整数カウント法による
【参考】
国立大学の研究者の発明に基づいた特許の外国出願状況
国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願数のうち外国出願を行った割合は、
1990年代後半の20%台半ば程度から、2010年度以降は40%超に増加。
(※国際出願:PCT加盟国に一斉出願 ※海外への直接出願:海外の特定国に出願)
12 注:外国出願の状況は、2016年9月末時点の調査による
注:外国出願数は、国立大学の研究者の発明に基づいた1件の出願が、1カ国以上の国に外国出願された場合、
1件の出願として計上している
40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
審 査 請 求 率
(%
)年度
国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願の審査請求率
国立大学単独出願
法人化前は、特許は国に継承され、国は、基準に合致した発明を出願しているため、ほぼ100%の審査
法人化後、2004年度に審査請求率が低下している点については、先行技術の存在、経済的価値などを勘案し て一部請求しなくなった可能性があり、2007年度に審査請求率が低下している点については、 法人化の経過 措置であった特許関連料金の免除期間が終了した影響。
特許行政年次報告書に見られる我が国の平均的な審査請求率を常に上回り、一貫して高い特許化意欲。
国立大学の研究者の発明に基づいた特許の企業単独出願
法人化前から請求率が上昇、法人化後も、ゆっくりと上昇を継続。法人化前は、特許を受ける権利を研究者は 企業に譲渡し、後は企業に任せきりとした出願が多かったことが請求率の低さにつながった可能性。
法人化後は、企業が大学から権利譲渡を受ける必要があるため、価値の高い発明に絞った可能性。
国立大学の単独出願
企業の単独出願
我が国の特許出願の平均
・国立大学の単独出願
国立大学の研究者の発明に 基づいた特許出願のうち、国 立大学が単独で出願したもの
・企業の単独出願
国立大学の研究者の発明に 基づいた特許出願のうち、企 業が単独で出願したもの
・我が国の特許出願の平均
我が国の特許出願の平均の値 は、特許行政年次報告書に示さ れた特許出願全体の審査請求 率を用いている(年度でなく歴年 データ)
国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願の特許査定率
14
1990年代後半は、企業の単独出願に比べて、国立大学単独出願の特許査定率は高かったが、
2000年度から2003年度まで連続して減少した。
国立大学法人化(2004年度)後は、国立大学単独出願と企業単独出願の特許査定率の差はほ ぼなく、右肩上がりに推移し、2010年度以降は共に80%強となっている。これは、我が国の特 許出願の平均の特許査定率をかなり上回ることから、出願者が技術的・経済的側面を含めた 特許化の見込める発明に絞り込みを行い、審査請求を行った結果の反映と考えられる。
40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
特 許 査 定 率 (
% )
年度
国立大学の単独出願
企業の単独出願
我が国の特許出願の平均
・国立大学の単独出願
国立大学の研究者の発明に 基づいた特許出願のうち、国 立大学が単独で出願したもの
・企業の単独出願
国立大学の研究者の発明に 基づいた特許出願のうち、企 業が単独で出願したもの
・我が国の特許出願の平均
我が国の特許出願の平均の値 は、特許行政年次報告書に示さ れた特許出願全体の特許査定 率を用いている(年度でなく歴年 データ)
国立大学別 特許出願状況シート(例)
15
国立大学別 特許出願状況シート(共同発明企業の所在地)
16
国立大学と企業との地域内連携状況を示すため、共同発明企業の所在地ごと
(都道府県)に分数カウントした特許出願数を使って定量化を実施
左棒 右棒
1995~2003年度 2004~2012年度
0.8
0.3 1.5 2.7
1.0 2.6
0.5 6.8
1.9
1.0
0.5 0.3 1.9 14.0
0.5 9.3
4.5 4.6 9.8 1.5 12.7
8.5 47.8 12.8 35.6
0.5 3.0 23.9 116.1
1.0 0.3 7.2
2.5 14.5
1.3
4.9 2.3
3.6
3.5 15.3
1.8 19.7 1.0 5.3
0.5
2.4 0.8
1.5