長崎医学会雑誌第30巻第11号1459−1466頁 1459
長崎市に於ける犬の糸状虫について
長崎大学風土病研究所臨床部第=研究室
片峰大助・藤巻博教・釘田芳文
かた 一みね /ごい でけ ふじ 迂手 〃.ろ のり くぎ ナニ ュL ふろ
長 崎 市 中 央 保:陵 所
瀬井義澄
せ い よし すみ
緒 呂
犬糸状虫Diro丘1ariaimmitisに関する研究 は,ひとり獣医畜産学の面からばかりでなく,
人の糸状虫症の研究の一端としても古くから 多くの巣鷹が見られている.我が国に於ける 犬糸状虫Diro丘Iariaimmitis の寄生状況の 調査は,戦前戦後を通じて各地で行われ,そ の殆んどが10%乃至30%戎いほそれ以上の高
稔 査 仔虫の捜査:毎日午前】0蒔から午後7時30分ま での間に刑責所に連行された捕獲大の耳束から,未 棺血液を一滴ずつとり,濃厚塗抹漂充を作ってブ ギ ムず染色を施し鏡検した.
成虫の検査:捕獲犬の申で返還戎いほ逃亡した 調 査 1954年6月7日から1955年5月31日までの・一ケ年 間を通じて,長崎市で捕獲した3147頭の犬について 検索した.
第1表に元す様に仔虫を検索し,返還,逃亡その 他の理由で成虫の検索を実施することの出来なかつ たもの(B)が600頭あり,その中仔虫陽性犬は32 頭であった.次に仔虫の検索を行わずに屠環しJ成 虫だけを検索したもの(C)が血2頭,この申成虫 陽性犬は8頭であった.
こゝでほ上記の二群を調査成績から除外して仔虫 も成虫も共に険嘉し得たもの(A)の2445頭につい て統討的観察を待った,
率を示している.外国に於いても,広東,北 米大陸に於いて,いづれも我が国に劣らぬ高 い寄生率を示していることが知られている.
我々は1954年から1955年にかけて長崎市内 で捕獲した犬について,その糸状虫寄生状況 を視察して来たのでこゝに報告する.
方 法
ものを除いたすべての屠殺大の右】b室)右心房J肺 動脈を剖検して成虫の有無をたしかめ,更に肺実質 内皮び他の拭器も出来る限り追求換査した.成虫の 雌雄の別,成熟未成勲の別孟こついては肉眼的或い
ほ顧壊鏡的に決定した・
成 席
209頭の感染犬の申で成虫だけを認め,仔虫を認め なかったものほ171頭で,その中単性寄生のものが 125頭,両性寄生のものが46頭であった.単性寄生の ものの申で,雄虫だけの寄生を見たものは53頭
(42・5%)で雌虫だけの寄生を見たものの72頭
(57.6%・)に比べ少い.借仔虫を認めなかった両性 寄生例46頭の申4頭ほ未成熟成虫の寄生例であった.
成虫及び仔虫を共に認めたものは36頭でいづれも 両性寄生のものであった・
心内に糸状虫成虫を認めなかったにも拘らず,仔 虫を検出したものが2頭あった(第2表)。
感染犬の仔食検出率ほ209頭中38頭18・2タ∠書こ週ぎ
片峰・藤巻・釘田・瀬井
1460
第1表
A B
C
調 査 頭数:
感 染 犬 数
5 9
.4・ ∩︶
4 2
2
02 6 0 3
註:Aほ成虫仔虫共に検索したもの B ほ仔虫だけを換査したもの Cほ成虫だけを検査したもの 弟2表
102.
8
成虫(+)仔虫(−)成虫(+)仔虫(+)
単性寄生
8 ?
53
成虫(−)
両性寄生単性寄生両性寄生仔虫(+)
72 46
171
0
36l
36
2
ない・
仔虫検出と採血時間との関係について,採血時間 によりJ正午までのもの,午錐2時までのもの)午 後4暗までのものI午後6樽までのものの4群に分 けて十両性寄生犬についてその各詳に於ける仔虫検 出率について推計学的な考察を施したが,直境確率 計算によってJ採血時問による差異ほ認めなかつ た・(第3表).
第4表地区別平均寄生成虫数
第3表 仔虫検出と採血時間との関係
1
正午迄
こ5−
2 3
l■
′・・■14時 一16時 一18時
仔虫数
(+)
(≠)
(≠)
4
1
一
2
1 3 5
4
0
0
\ − ノ
′l\
】3 10 95
1)地区別感染状況
第1図に戻す様に長崎市をa地区(浦上,任意,
滑石方面),b地区(対岸J稲佐方面),C地区(中 央部),d地区(西山〉伊艮杯J螢茶屋,寒河内方 面),e地区_(高平町,小島町,愛宕町方面),f地 区(広庸執大浦方面)Jg地区(南山手,小官棍,
戸町,土井ノ首方面)の7蝿区に分断捕獲蝿区別 にその感染状況を見た・
感染率はe地区の86頭中】9頭22・1%を最高にg地 区149頭申24頭16・1%,j a確区826頭中鋸頭10・2%,●
d地区欝2頭申24頭8・0%,一地区が2頭中23頭7・9%,
c地区497頭申飢頭4・8%,b蝿区295頭中10頭3・4%つ の順で,b地区が最も低い・
仔虫検出率ではe地区5・8%,g地区4・0%,f地 区2・1%,9地区1・6%)d鞄区1・0%,C地区0・8%,
b地区0.3%で概わ感染率と併行する(第2図ん これらの成績は推計学的にポチストによ・り1%
の危険率で各地区相互間の感染率,仔虫検出率に有 意の差を認めた.即ち市周辺部である山手地区は
∵8 6
e
99
d 2
均 区 別
a
bC
一m g
調査頭数
826 295 497
2 9 2 9 4 1
寄生成虫数
41 33 5 1 0
1
2′〉 5
6′・.つ10
ユ1′・一15
16′一19
寄 生 大 数 紐 成 虫 数
5
4
1
0 ハ U
4 6 2 0
﹁ J
l
49 5 0 1
9 8 6
∩
︶ 0
9 9 3 1 0
4 5 2 2 1
1
3 4 2 7 22 4 2 3 呂
75 3・41
9 3 ワ ー
﹁
⊥ 史 U 3
●
4
3 6 7 2 6 8
●
2
nV 4 0
1 2 4
●2
〇 .4 00 8 1
平均成典数 2 3 0
3。22
=≡3.4弓
長崎市に於ける犬の糸状虫について
飢
4 Ⅰ
第1図
﹇∪
■
︳
∩
‖
∪
d
/′竹ノ久保
雅
文帥
浦 ﹁ 上
︑ つ ら か み
∩
‖ 丘
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−・■一・−・−、■●■−・−、 l
稲 佐
道 舶所
岩
能 ノ 浦
b
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Ⅳ 一 ■ つ 一 一 − 一 一 が 〆 √ シ 〆 〆 ㍉
■ − ㍉ ㍉
■ − つ 一 一 一
斉2園 地区別感染状況
鴫 感 染 妾 20 ⊂コ 仔望楼出率
︳闘嗣鷹野脳嗣閥
0
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∪ い
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読;(・)の教学は調査頭数
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・
− 1
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●  ̄ 市 校 所
損庁○
水源 地
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離学清文淫﹁
l
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− 1
吊諏訪神社
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大
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′・ /・
・古平町
\
ノ
島
\ \ 電久 ︷石
e ∵ 蛍茶屋町ニ ヽI \ 1 1 ・ lヽ
[亘亘市牒各国
感染率J仔虫検出率共に高く,市中央部及び対岸確 区は極めて低い.
均区別の平均寄生成虫数(寄生成虫絶数/感染犬 数)はJ感染率の高いe,g,f,dの4鞄区はやはり 平均寄生成虫数も高く,C地区がこれにつゞいてい る.感染率の最も低かったb地区では寄生成虫数 の最も多かったものでも6匹でJその平均寄生成虫 数も2.40で低い・即ち感染率の高い地区は寄生成虫 数も多い・但しa地区は例外で感染率が高かったに も拘らヂ,その平均寄生成虫数ほ黄も少く,2・30で あった(欝4表),
1462 片峰・藤巻・釘凪・瀬井 2)∫年令別盛典状況
歯牙の発育及び磨滅状態その他の一般所見から推 定して,その年令別の感染状況を見ると,一年未満 のものほ感染率2・6%で最も低く,1年から2年ま でのもの8・2%,3年までのもの14・2%,4年17.1
%,5年20・0%と年令の進むにつれて高くなり′ 6 年までのものの23・3%を最高にして,6年以上の老 犬になると10・9%と急激に低下する・仔虫検出率ほ
第5表 年令別平均寄生成虫数
1年未満0%,2年1.0%,3年4.0%J4年4.3%J 5年4・6%,6年7.0%,6年以上1.8%で感染率の 同様の年令的推移を京した.この成績ほ推計学的に ズ2テストにより1%の危険率で各年令問に有意の 差を認めた(第a図・).
年令別の平均寄生成虫数を見ると年令問に著明な 差は認められないがク 成虫寄生数の多い犬は3年以 下の若年犬に多く見られた(第5表).
年 令 別 1年未満 2 年迄 3 年 4 年
5
年6
年 6 年 以 上調査頭数 寄生成虫数
689 】135
3 02
・
−
1 −
7 17 6 1 1 42 3 7 2 6 1
・ 3
0 4 1 5 6 3 4 5 5
1 7
﹂
︼ 0 0 2
1 2 5
d
▲
O
l
︵ U
O
l
1 6 0 1 1 9
4 3 1 8
0 6 1 0 1
︵ d l
l 1
2′・・ノ 5
6 −10
11′・て15
16 ′・・・′19
寄 生 大 数
8 3 2 0
∴
︑
・
∴
㌦
. 4 一 l 1 0 0
3 4 5 9
・
2
稔 成 虫 数 平 均 成 虫 数
5 5 4 7
2
●
2 60●73
2
√
べ ∴
− 直
3 3 ■ 3 0 3 3)性別感染状況
宿主犬の性別によってその感染率を見ると雄犬ほ 1427頭申118頭8.3%)雌犬は1016頭申90頭8・8%で 雌犬にやゝ高率を示し,平均寄生成虫数ほ雄犬3.2岳)
雌犬2・別で逆に雄大に高い成績を得たが,推計学的 には有意の差を認めなかった(第3図,第6表).
第3図 年令別,性別感染状況
−・・・・・一 感染率
−・一 仔虫検虎王 20
10
日= % ノ′ ̄
㌢ 方 i
一一一−′
2
つ______一−ノつ/へ\
ユ 4 5 象 令
∂
4)感染の章節帽劫
掃攣の行われなかった10月,3月,4月を除いた
弟6表 性別平均寄生成虫数 性 別
寄生成虫数
調査頭数
8 ?
1427 1016
1
2 ′−て 5
6 ′}10
】1一て】5
16〜19
4 7 6 2 3
5 3 1
4 2 3 7 8 2 8
数 数
2 3
1 亡 U
1 3
寄 生 大
総 平
成 成 虫 虫 数
均
4 2
・
3
896 22 4 5 2
各月毎の感染率,仔虫検出率を求めた.
感染率に於いてほ6月4.3%;,7月10・2%,8月 11・1%} 9月10.9%,11月6・8%,12月6・7%,1月 6・3%,2月12.2%,5月10・5%,仔虫娩出率に於 いてほJ6月0・3%′ 4月1・3タ左ノ ア月2・5プ∠ヶ 9月
長崎市に放ける犬の糸状虫について 1463−
3.4%,11月2.2%,12月0・9%,1月0%,2月Oi5
%,5月2.9%といづれも月により差がいちじる.し い(第4図)・
平均寄生成虫数ほ6月2・43)7月2・55,8月2.40,
9月3.28,10月3・26J12月3.73,_1月3・17,2月 3.26J5月2・71で軟から冬にかけて,その平均寄生 数も高く,叉成虫数の多い犬が比較的多くなる(第
7表).
未成熟成虫の出現は11月から見られ11月,12月各5 例Il月J2月各1例で3月以降には認め碍なかつ た.未成熟成虫保有宿主犬の年令を見ると1年未満
第7表 平均寄生成虫数の月別変数
lZ
10
8
d
4
巧\◆
%‖
第4図 感染率の月別変動
口■
∩∪
紺. 8 刷
ロ
7
2
3
■■■円 ﹁ト
¶■ ロ
ト・
∩﹈
︒=∪∬肺4相
t
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1 凡 て
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・ ・ ・ − 7
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8 ?日
月 別
6 7
89 0 1
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25
l l l ︑ l l
⁝ l ⁝ − ⁚ 叶
数頭生寄 \\ 372 236
7 5 2 n Y O 1
′2.一て 5
6.・}10
】1′、つ・15
16 一}】9
寄 生 犬 数
鍋 1
9 8 1
9 2 3
9 7 2
8 3 2
4 0 .4 9 0 2
79600▼2232007●3
873101962・26●3
913205281282329.1︒3︒1生計
J〇.4一12
714100225655・2
1
7
. 2
†
†
∴ 人 U l ワ
・ 一
▲ 1
1 2 5 7
.
●
2
2 ご U 4 0 1 3 5
・ 6
1 2 7 2
・ 3
●
6 5 0
︵ U 1 2 只 リ ア
﹁ J 3 1
・
3
. 4 −1
4 3
3 4
●2
織 成・虫 数
平 均 成 虫 数
第8表ゝ未成熟成虫出頭の時期 幼弱成虫保有犬数 月別
主副2年迄J3年迄は苦 .茂音 ̄「丁 ̄
6 7 8 9 11
】2
1
2
0 0 0 0 …
=汗=;
O rO O O 2 2 0 0 1 2 F2 1 0 0 :1 0 0
0 喜 1 0 0
5: 0 0 0 0
]
0 0.
0 0 5 5.
1 1 0
のもの4例Jl年から2年までの●もの6例,3年ま でのもの1例,年令不詳のもの1例を除いてすべ て3年以下の若年犬であった.その中未成熟成虫だ けの寄生を見たものは6例でその年令は6ケ月末滞
表9第 層
査
調 数
Summer Sampl
el Winter SaⅡ】ple
1012 707、
感 染 犬 数
窒‡
仔虫(斗)
仔虫 (−)
単 性 寄 生 仔虫のみ(+)
8514﹁16550
57 4
21(4)
32(2)
0
平均寄生成虫数
j
●44
2 3.43
()内は未成熟成虫寄生頭数
のもの2例と1年のもの4例であった(第8表).
捕隆した犬2445頭について,6月,ア月,8月 の3ケ月間の1014頭をSummlmm]er Sampleとし,12月,
1月,2月の3ゲ月間の707頭をⅥ1ntem Samp】eと して両者の感染状況を比較した,
1464 片峰・藤巻・釘田・坂井 Summ]mer SaIm)Pleでは感染犬85頭でその率は8・4%,
仔虫検出率は14頭1・4%であった.又この85頭の感 染大の中で55頭は単性寄生であり,両性寄生のもの は30頭であった・両性寄生のものの申で仔虫の陽性 のものは14頭,陰性のものほ16頭で未成熟成虫寄生 例ほ全く認めなかった・又この間の平均寄生成虫数 は2・44であった.
Winter Samnpleでほ感染犬57頭で感染率8・1%で あったが仔虫検出率ほ4頭0・6%に過ぎなかった・
又この57頭の感染大の中で′ 単性寄生りものは32頭,
両性寄生のものは25頭であった.両性寄生のものの
申で仔虫を発見したものは4頭,仔虫を認めなかつ たもの21頭であり,この中4覇は全く未成熟成虫だ けの寄生例であった.平均寄生成虫数は3.43であつ た(第9表)・
感染率に於いてほ推計学的にズ2テストによりI 両Sample間に有意の差を認めなかったが未成熟成 虫ほⅥrintemSampleにだけ認められ,仔虫検出率に 於いては5%に近い危険率でWinterSamm)Pleに低値 を示した・叉,平均寄生成虫数に於いては有意の差 を認めなかったが,6匹以上の多数寄生例がWinter Samm・Pleに多い傾向があると云える.
綽括並びに考鞍
1)犬糸状虫Dirofilariaimmitisの寄生率について,我が国では,−岡山地方の34・8%
(宮川,1927),京阪神地方の2.89%(豊田,
1928),神戸市の21.4%一29・3%(書川,
1935−1936),佐賀県三養基都の】1・5%
(岡部,1952),佐世保市の6.2%(永田,
1953−1954)等の報告があり,外国でも広東 の13・5%(Cben,1934),New Omleonsの24.4
%(Hinman,1936),Virgin島St・Croix の 33.0%(0,conner他,1938),Savannahの 33.7%(Brown,1939),Auburnの37%(Mu・
ndhenk他,1939),Memphisの21・6%(Eyles 他,1952−1953),NewJarsey州北部の 5.4%(Mann,1952)等我が国に劣らぬ高率
を示している・
我々ほ1954年6:月から1年間に亘って長崎 市内で捕獲した2445頭の犬について,その糸 状虫仔虫及び成虫の検索を行い,感染率8.5
%,仔虫検出率l.6%の成績を待た・この成 績は上記諸地方の感染率に比べれば決して高 率であるとは云えないが,戦後の調査である 佐賀県の11.5%,佐世保市の6.2%に近い成 績である.
2)剖検・した209頭の感染犬の中で成虫を 発見したものほ207頭で,その60%を占める 125頭が単性寄生で,雄虫だけの寄生を見た ものほ52頭,雌虫だけの寄生を見たものは72 頭で雌虫の方が多い●両性寄生を認めたもの ほ82頭でその中36頭ほ仔虫を認め,他の46頭
と単性寄生の125頭とは何れも仔虫は陰性で あった.両性寄生で仔虫を認めなかった46頭 の中4頭ほ雌雄の何れか,或は雌雄共に全く 未成熟の成虫の寄生例であった.叉,仔虫を 認めたにも拘らず成虫の寄生を認めなかった ものが2頭あった.
以上の様に209頭の感染犬の中,仔虫陽性 犬は38頭であるから,昼間一滴の血液採取に よって犬糸状虫症の診断を行わんとすれば,
感染犬の約20%を発見するに過ぎないと云え る.
成虫を認めず仔虫のみの陽性例が2例
(0.08%)あった事は先に述べたが,Brown は1939年のSavannahの調査で同嘩の例を 9.6%(感染率33−7%)に,叉,D・E.Eyles 等ほ16・7%(感染率21・6%)の高率に認めて いる・そしてD.E・Eyles等ほ,成虫死滅 後も筒長期間仔虫は生存出来るのであろうと 想像しているが,この点は今後追求される問 題であろう.
3)捕獲した犬の大部分は法によって定め られた鑑札或は予防注射済票をつけていなか ったもので,純粋の野犬とほ云えなく,一道去 或いは現在に於いて家畜として飼育されて来 たものである.従ってその行動範囲は狭く常 に一定の地域に限られていると考えて差支え ない.
長崎市を捕獲地区別につ7地区に分けてその 感染状況を見ると,感染率,仔虫検出率共に
長崎市に於ける犬の糸状虫について 1465 地区相互間にいちじるしい差が見られ,推計
学的にも1%の危険率で有意の差を認めた.
即ち,市周辺部である山手地区,.海岸地区に 高い感染を示し,市中央部及び対岸稲任地区
でほ甚だ低い・
4)各年令問の感染率,仔虫検出率ほ推計 学的に1%以下の危険率で有意の差を認めた.
即ち,感染率でほ1年未満のものほ極めて低 く2.6%であったが,年令の進むにつれて上 昇し,6才の犬に最高の23・3%を示し,6才 以上の高齢犬となると10.9%と急激に低下す る.仔虫検出率に於いても全く同様の傾向を 示した・糸状虫に感染した犬は6年以上も生 きのびるものが少いのではないかと考え・られ る.
5)宿主犬の性別の感染率は,堆犬8・3%,
雌犬8.8%で,雌犬にやゝ高い値を示したが 推計学的にほ有意の差は認めなかった.
6)我々は捕獲犬2,445頭について,6月,
7月,8月の3ケ月に捕獲した1,014頭を Summer Sample とし,12月,1月,2月の3 ケ月に捕獲した707頭をWinter Sampleと して両者の感染状況を比較して見ると,感染 率に於いてはSummer Sampleの8・4%に対 しWinter Sampleは8.1%で,推計学的に は有意の差を認めなかった.しかし,仔虫検 出率に於いてはSummer Sampleの1・4%に 対してWinter Sampleは0.6%と極めて低・
く,推計学的にも5%に近い危険率で有意の 差を認めた.
叉,この間の平均寄生成虫数はSummer む す 1)1954年6月から1955年5月までに長崎市 で捕獲した2,445頭の犬のDiro丘1ariaimmitis の感染率は8・5%,仔虫検出率は1・6%であつ た.
2)感染犬209頭の中で,成虫のみの寄生 を見たものほ171頭,その中125頭が単性寄生 であった・成虫,仔虫共に認めたものは36頭,
仔虫のみを認めたものは2頭であった.
Sampleの,2・44rに対しWint6rSamnleは 3・ヰ3と高い値を示した..推計学的には有意の 差は認めなかったが,成虫数の多いものは Winter Sampleに多い傾向にある.
即ち,感染率では有意の差を認めなかった が,Winter Sampleに於いてほ仔虫の検出 率が低く、寄生成虫数の多いものが多く、未成 熟成虫寄生例が多いのが特徴であると云える・
未成熟成虫寄生例が見られたのほ,11月以 降翌年2月迄の4ケ月間で,その最初の発見 ほ11月20日で,・C地区で捕獲した生後6ケ月
の堆犬に於ける13.6×0.45mm の晰虫で,
最後の発見は2月1臥 生後1年の堆犬であ った.久米によれほ,感染した成熟幼虫が心 内に直し成虫となるには概ね4ケ月を要する ものと思われもから,我々の例は何れもその 年の6−10月の間に感染されたものと推測さ れ,叉その時期が,Diro丘1ariaimmitisの感 染成立の最も盛んな時期と考えられる・
いづれにしても,Dirofi1ariaimmitisの感
′染にほ明らかに季節的な消長を認めろ.
7)新しい感染を思わしめる未成熟成虫の 寄生を見た犬12頭は,年令不詳の1例を除い て,すべてが3年以下の若年犬であり,その 中未成熟成虫のみを寄生していた6側はすべ て,1年或いはそれ以下のものであった.
叉寄生成虫数も,高齢犬に少く,若年犬に 多い傾向を認めた.
かゝる結果から感染後年を経た高齢犬は,
再感染に対して可成りの抵抗性を獲得するの ではないかと考えられる.
ぴ
3)市周辺部の山手地区,海岸地区には高 い感染を示したが,市中央部及び対岸稲任地
区ほ低率であった.
4)感染率,仔虫検出率共に1年未満を最 低に年令の進むにつれて上昇し,6年の犬が 最高で,6年以上は著しく低下する.
5)宿主犬の性別には感染の差を見ない.
6)DiroGlariaimmitisの感染には,季節
1466つ 片峰・藤巻・釘田・瀬井 的な消長を認め,特に冬雲如こは寄生成虫数,
未成熟成虫寄生例が増加し,仔虫検出率ほ低 下している.
7)長崎に於けるDiro丘Iariaimmitisのl
感染時期は6月初旬から10月初旬に至る約4 ケ月間と堆測される.
摘筆に当り校閲を賜わった兼任所員北村精一教授に深謝する.
文_
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(昭30・6・20受付)