I‑179
‑
証券金 融 システ ムの意義
大 矢 繁 夫
は じ め に
証券金融ない し証券信用は,広範 囲な内容をもつ ものであるが, ここで対象 とす るのは,証券投機金融 としてのそれである。そのようなもの としての証券 金融 は,投機を支え, あるいはその動 きをコン トロール し,そのことを通 じて 証券価格の動向に影響を及ぼす, とい う機能をもつ と考 え られ る。 もう一歩押 し進めてよ り積極的に言 うと, こ こ には,いわば無秩序な証券市場の動 きがあ る程度管理 され うる可能性が 指唆されている, ということ なのであるC 小稿 は , このような観点か ら,証券金融 ・信用の制度を追い, このことを確かめよ うとす る。
証券金融 ・信用の態様は国および時代 によって異なるが
,Ⅰでは, まず,証
券市場がその姿を整えてゆ く
19世紀終 り頃か ら
1920年代 までの時期 におけるい
くつかの国の証券金融 システムの仕組みを概観す る。 それは,証券金融 システ
ムのプ ロ トタイプをなす ものであ り,上記 のような機能 を,形態 としてはすで
に備えたものであった。次いで
,Ⅱでは,現代 日本 の証券金融 システムを構成
す る株式の信用取引 と先物取引を取 りあげる。 そこでは,上述のような証券金
融 システムの 機能が, プ ロ トタイプのそれか らどのように 高度化 して いるの
か, とい う点が明 らか となる。
Ⅰ 証券金融 システムのプ ロ トタイプ
1
. 制度の概要 ドイ ツ
ドイツの証券信用
(Effektenkredite)は, ルポール ・ロンバ ー ト貸付 と呼 ばれるものであった。 これを供与す るのは銀行であ り, そのバ ランスシー トの 中では,借方 に 「 上場証券 に対す るルポ‑ル ・ロンバ ー ト」 として表示 され る ものであった
。ルボール貸付 とロンバ ー ト貸付 は,本来,形式的には区別 され るものであるが, その主要な経済的意義は次に見 るように同一であ り, したが って,銀行 のバ ランスシー トで も同一項 目に括 られていたのである。
まず ,ロンバ ー ト貸付であるが , これは,上場証券を担保 に した貸付であ り, 主 に取引所取引に利用 され るものであった。 このロンバ ー ト貸付 は,貸付期間 によって, 日賃,月貸,定期賃 とい うように
3つに分 け られるが,その中でも 重要なのは月賃である。月賃は,証券の定期取引の清算繰 り延べ に用い られ る
ものであ り,典型的な証券投機への信用なのである。
証券の定期取引 とそれ‑の月賃の関わ りほ,次のようなものであった。
ベル リン取引所での 定期取引は 月末取引 と呼ばれ, 証券 の買い手 と売 り手 は, その取引の履行を月末の清算 日に行 う。すなわち,買い手 は月末 になって はじめて支払い, 売 り手 も この時点で は じめて証券 を 引き渡せばよいのであ る。そ して,例えば, この定期取引における買い手 ( 強気投機) は,思惑どお りの相場上昇が生 じたな らば,月末の清算期 日以前 に反対取引である月末売 り を行 い,清算期 日には買い と売 りを相殺 し,相場上昇 による超過分を取得す る のである1 ) 0
このような定期取引に対 して, ロンバ ‑ ト貸付 ( 月貸) は次のように関わる のである。
強気投機は,証券価格の上昇を見込んで定期取引で買いを行 う。 しか し,忠
惑どお りの相場上昇が生 じない場合,反対取引,すなわち売 りを延期す る。だ
が,月末 の支払いは履行 されねばな らないので,支払 うべ き現金をどこか らか
証券金融システムの意義
‑ 181‑調達 して こなければな らない。 この場合,投機家は,当該証券を担保 に して銀 行か ら月賃を受 机 清算 日の支払い責任を果たすのであるO そ して,次 の月末 まで に相場上昇が生 じたな らば改めて売 りを実行 し, その清算期 日には銀行へ の借入金返済 と売 った株 の引き渡 しを履行 し,売 りの額 と返済額 との差額を取 得す るのである。以上のように,月賃は定期取引の清算繰 り延べ に用い られた
のである。
さて, このようなプ ロセスは,ルボール貸付の場合 にもほぼ同様であった。
すなわち,強気投機 は,定期取引で株を買 う。 しか し,思惑どお りに相場が 動かなか ったので反対取引 ( 売 り)を見合わせ る。だが, そのために,清算期 日の支払いのための資金を第
3者か ら調達せねばな らない。そこで,銀行か ら ルポール貸付を受 けるわけである。ただ し, この資金調達は,銀行か らの借入 ではな く,銀行への当該証券の売 りとい う形式を とる。か くして, この投機家 は,清算期 日における支払いを無事履行す ることができるのであるが,その際, 同時に,ルボール資金の出 し手か ら,同一証券 の同一価格での次月末清算の買 い戻 しを行 ってお くのである。そ して,時機をみて改めて転売 し,次月末 には, 銀行か らの証券買い戻 しとこの転売 とを清算 して差額を取得す るのである ( 図
1
参照)0
図 1 定期取引における清算繰り延べとルポール貸付
月末買い 月末清算日 月末売り 次月未清算日
月末清算 日 :ルポール貸付を受け
(100入手) ,月末買いの支払 いを履行
(100支払い)
0次月末清算 日 :月末売 り
(150入手)とルポール貸付の返済
(100支払い)
を清算
(50取得) 。
以上のようにして,ルポール貸付 とロンバ ー ト貸付 ( 月貸) による繰 り延べ 資金の提供は,強気投機への刺激を常に与えるのである。なぜな らば,繰 り延 べ資金は,売 りが時機を得ていない場合に,清算を次の月末 まで延期すること を可能 にするか らである 。 ルポール貸付 とロンバー ト貸付 ( 月貸)は,か くし・
て,強気投機を支える役割を果たすのである。なお, これ らの貸付の削減は, 当然なが ら,強気投機を鎮静化させ る影響をもつ。 ドイツの銀行の証券信用, ルポール ・ロンバ ー ト貸付は,総 じて,強気投機をコン トロールする機能をも つ, といえるのである2 ) 0
日 本
日本における証券金融の制度 は, ドイツで見 られたような,取引所取引に対 して第
3者が信用を与えるという形ではな く,取引当事者が相互に信用を与え あう清算取引として展開 した
3)。 このような清算取引は, 短期清算取引と長期 清算取引 とに分かれていた。短期清算取引は
,1922年か ら制度的に認め られ, 昭和期に入 って 盛ん となってゆ く。 昭和
2年か ら
16年までの
15年間
(1927‑
1941
年)では,全国の株式取引所の売買合計額の
76.5%をこの短期清算取引が 占めていたという 。 この時期,短期清算取引が株式取引の大宗であった。
短期清算取引とは
, 7日以内の期限をもって履行期 とす る取引であるが,実 際には翌 日決済が行われていた。 しか し,決済は
, 1カ月を限度 として繰 り延 べ ることができ, そ してそれは 転売 ・買い戻 しによる差金決済が 可能であっ
た 。
ところで, このような決済の繰 り延べは,通常,買い方 と売 り方の問でその 株数は一致 しない.そこで,
算 3着が介在 して決済分 と繰 り延べ分 における過 不足を調整 したのであった。具体的には,次のような仕組みであった。
例えば
, 1万株の買い方が,受渡 しを
1,000株,繰 り延べを
9,000株 というよ
うに希望 して いるとする。 他方, 売 り方は, 受渡 しを
3,000株, 繰 り延べを
7,000株 というように希望する。 通常, このように不均衡が生 じるが,それを
埋め合わせ るために,代行機関 ( 東棟代行株式会社,大株代行株式会社)は,
買い方の不足分である
2,000株を 代行 して引き取るのである。そ して同時に,
この代行機関は, この
2,000株の売 りを行 うのだが, その受け渡 しを 繰 り延べ
証券金融システムの意義
表
1短期清算取引における決済 ・繰り延べの調整
‑183‑
買 い 方 売 り 方
繰り延べ
9,000株 繰り延べ ‑
7,000株 受渡し
1,000株 受渡し
3,000株 代行機関受渡し
2,000株 代行機関繰り延べ
2,000株
( 出所)向井鹿松 『 取引所投機と株式金融 』( 森山書店
,1934年) ,
183
‑189ページによる。
るわけである。結果は,表
1のようにな り,決済 と換 り延べの株数の不均衡は 埋 め合わされるのである。
短期清算取引は, このようにして繰 り延べ られ,実質的には
1カ月の期間を もつ清算取引 として投機 に活動の場を与えるものとな った。なお,一般的に, この取引では,買い方の繰 り延べ希望の方が売 り方のそれよりも多いのが常態 であった。 そのため,代行機関の資金不足が生 じることになるが,その場合 に は,代行機関は金融業者へ依存す ることとなった。
以上のようにして,短期清算取引では,代行機関の介在が投機を支えていた わけであるが, しか しなが らこの介在は,投機の動向に外部か ら支配的影響を 及ぼす とい うよりは,む しろ投機の活動に追随 してそれを援護す るものであっ た, といえるであろ う 。 この点は,先 にみた ドイツの銀行が,投機 に対 して外 部か ら自律的に関わるとい う事態 とは,かな り様相を異 にす るものであった。
日本 における清算取引のもう一方をなすのは,長期清算取引であった。 この 制度は,当月末 目を受渡期 日とす る当限,翌月末 日を受渡期 日とす る中限,翌 々月末 日を受渡期 日とす る先限 とい う
3つの取引が並行 して行われ る
3カ月
3限月制であった( 1 9 25年か ら29年 までは 2カ月 3限月制)。決済の方法は,受渡 期 日以前 に反対売買 ( 転売,買い戻 し)を行 って売買損益を取引所 との間で授 受す る差金決済か, もしくは,受渡期 日に現物によってなす方法があったが, 主流は前者であった。
なお, この長期清算取引には,早受渡制度 というものが存在 した。それは,
売 り方が受渡期 日以前 に株式を取引所 に差 し出 し, それに対 して取引所が受渡
期 日の翌 日を支払 日とす る約束手形を振 り出 し,売 り方が これを受 け取 る, と い うものであった ( 早渡 し)。 そ して , この手形を得 た売 り方は,銀行でそれ を割 り引いて も らい株式売却代金を入手す るのである。他方で,買い方が受渡 期 日以前 に買付代金を提供すれば,取引所は , 「 早渡 し」 で保管 している株数 の範 囲で現株 を引き渡すのである ( 早受 け)。 このように早受渡制度は,当初 の受渡期 日までの期間を短期化するものであ り,長期清算取引を実物取引に近 づけるものであった, といえよう。
ところで, この早受渡制度では,上記のように,売 り方が株式売却代金を入 手す る際に銀行の信用 ( 手形割引)が 介在す ることとなる. この点,清算取引 の制度 に外部か ら信用が加え られるとい うことになるが, しか しこの場合,投 機 に対 して株 の買付代金や売付株が貸 し出され るわけではな く, また,相場が 不利に動いているときに投機を続行せ しめる, とい うような関わ り方をもつ も ので もない。 したが って,早受渡制度 に関わ る銀行信用は,清算取引に対 して 外部か ら関わる信用であるとL / て も,先 にみた ドイツの証券信用 とは大 き く異 なるし, また,前述の 日本 の短期清算取引における繰延べ システムの,投機 を 援護するとい う証券金融の態様 とも異 なるものであった。証券金融を,投機支 持 とい う観点か ら捉えようとす るとき,長期清算取引における証券金融 とは, 取引当事者が相互 に信用を与え合 うとい う清算取引制度それ 自体の中にのみ兄 い出される。
日本 における証券金融は,以上で見て きたように,短期および長期の清算取 引の制度 として展 開 した。 このような証券金融 は,いわばそれ 自体が投機 の制 度 なのであった。 そ して,短期清算取引においては繰 り延べのための代行機関 の介在がみ られたが, しか しなが らそれ も,投機の外部 に位置 してその動向を 左右する, とい うような 自律性をもつ ものではなか った, といえよう。
米 国
米国における証券金融は,証券業者が顧客 に与 える信用 と,銀行等が証券業 者へ与える信用 とが結 びついて展開 した。前者の信用供与は証拠金取引
(mar‑ gintrading)
を成 り立たせ るものであ り,後者 の信用はブローカーズ ・ローン
であった4 ) 0
証券金融 システムの意義
ー 185‑ 証拠金取引は,顧客が証券業者か ら買付代金を借 りて買付を行 う証拠金買付 と,反対に,顧客が証券業者か ら売付証券を借 りて売付を行 う空売 という2 つ の取引を含む。
これ らの取引は,具体的には次のようなものであった。証拠金買付の場合, 証券業者は,買付を行 う顧客 に一定額の証拠金を預託 させ,証券価格 ( 買付価 格) と証拠金の差額を貸付けて証券を購入 させ るのである。そして,買付け ら れた証券は証券業者へ担保 として差 し出される。空売 りの場合,証券業者は, 売付けを行 う顧客に,やはり一定額の証拠金を預託 させ,証券を貸付けてそれ を売却させ るのである。そ して,証券の売却代金が証券業者 に担保 として差 し 出されるのである。
このような 証拠金取引は, 取引所での決済については 実物取引と 同じであ る。ただ,顧客 と証券業者 との問で貸借関係が形成 されるのである。さて,上 記のような取引の後, 証拠金買付を 行 った顧客は, 反対取引である売 りを行 い,その売却代金で証券業者か らの借入れを返済する。空売 りを行 った顧客は, 反対取引である買いを行い,その買付証券で,証券業者か ら借入れた証券を返 済するのである。 このようにして顧客 と証券業者の貸借関係は終了 し,顧客の 手許には, これ らの取引か ら生 じた証券の売買差損益が残 るのである。証拠金 取引とは,か くして,顧客に,彼が買付資金や売付証券を十分保有 していな く
とも売買差益獲得を 目指 した 取引を 行わ しめるものであり, したが ってそれ は,投機 に活動の場を提供するものであった, といえる。
証拠金取引とは以上のようなものであったが,実際には, この取引の大部分 は証拠金買付であ り,空売 りの方はわずかであった。また,証拠金取引の規模 が最 も大きかったのは1
929年であり,ニューヨーク株式取引所では,証券業者 と取引する顧客の
40%が証拠金顧客であった。なお,証拠金の比率は,第
1次 大戦前ではおよそ
10%,1920年代では
20%ほどであった。
' さて,上にみたような証拠金取引 ・買付は,他方で,証券業者 に対する銀行
等の貸付,すなわち,ブローカーズ ・ローンによって支え られていた。証券業
者は̲ ,証拠金買付を行 う顧客に対 して, 自己の資金や他の顧客の貸越残高を用
いて貸付を行 うが,それで賄いきれない場合は,ブローカーズ ・ロ「ソに蔵 る
ことになるのである.ニュー ヨーク株式取引所会員 によるこの ローンの取入れ が最大規模 を示 したのは
,1929年
10月
1日であ り, その額 は
85億
4,900万 ドル に達 した 。 この額は,当 日の上場株式時価総額 の
9.8% に相当 した。
このように して,米国では,証拠金取引 とそれを支 えるブ ローカーズ ・ロー ンが証券金融の制度なのであり,これが証券投機 の活発な展開を促 した, とい えるのである。
以上では, ドイツ, 日本,米国における証券金融 ・証券信用 について, それ の投機信用 たる側面を重視 して, その仕組みの概要 を追 った。それは, それ 自 体が投機取引c P制度であった り, また,投機取引の外部か ら信用を与 えて投機 を支える, とい う制度であった。証券金融 ・投機信用は,か くして, このよう な視点か ら見 たとき 内部信用 と外部信用 とい うように分け られ る
。「内部信用 は,投機取引過程 そのものの うちに信用過程が包摂 されている形態であ り,外 部信用は,投機取引過程 の外部 にそれ に接触 して信用過程があるとい う形態で
ある」5 )とい う, ことになる。
ドイツ, 日本,米国の投機信用の態様を改めて整理 してお くと次のようにな るであろ う
。.ドイツの場合は, まず,定期取引 ・清算取引において,取引当事者は買付代 金 と売付証券の引き渡 しを相互 に猶予 しているわけであり, こ こにはすで に投 機相互間での内部信用授受がみ られ るのである。そ して さ らに,投機 の月末清 算の繰 り延べを可能 にす るべ く,ルポール ・ロンバ ー ト貸付 とい う銀行か らの 信用が加わ るのであった。内部信用 に外部信用が加わ り,J投機は支え られ るこ とになる。なお, この外部信用は,逆 に, その削減 によって投機を鎮静化す る とい う力 ももつであろ う。
日本の場合,短期および長期の清算取引はそれ 自体が投機信用であ り, した
が って内部信用であった, とい う点 については上記 の ドイツの定期取引の場合
と同じである.そ して,短期清算取引については,決済の繰 り延べを可能 にす
るべ く第
3者である代行機関が介在 した。 この点, ここでは内部信用 に外部信
用が加わ っている,とみることがで きる。 しか しなが ら,先 にも指摘 した点で
あるが,代行機 関の介在は,投機 の活動 に追随 したより受動的なものであった
証券金融システムの意義
‑ 187‑ といえる。 したが って,同 じく外部信用 とはいって も, ドイツの
Jt ,ポール ̀ TI ? ンバ ー ト貸付 のように,外部か ら投機の活動 に影響を及ぼす, というような作 用をもつものではなか った。
米国の証券金融システムは,証拠金取引における証券業者 の信用供与,そ し て証券業者 に対す る銀行のブローカーズ ・ローンとい うように,取引当事者 に 外部か ら信用が与え られる外部信用の形態を とっていた。 この外部信用は, そ の実体は措 くとして,形態的には,投機 の活動 に対 して 自律的に影響を与え う
る , したが って投機を コン トロールす る可能性 をもつもの, とみることがで き る。 この形態 とい う点か らみれば,同じ く外部信用であるルポ‑ル ・ロンバ ー
ト貸付 と同様の機能をもつ, といえるであろ う。
以上のように して,証券金融 ・信用システムは,証券取引の外部か ら関与す る外部信用の場合,投機 に対 して強い影響力を もつ ものなのであ り,その活動 を支えた り鎮静化 しうるものなのである。 このことが,証券金融 ・信用の役割
として重視 されねばな らないのである。
2.
意義 と限界
証券金融 ・信用の制度 は, 内部信用や外部信用の制度, そ して両者が結合 し たもの, とい うように種 々の形態を とって発展 した。 この ことは, ドイツ, 日 本,米 国についてみて きた とお りである 。 これ ら証券金融 ・信用制度 の役割は, 一般 に,投機の活動を促す,とい う点 にある。そ してと くに,投機への外部信 用は,投機 を支持 ・鼓舞 した り,場合 によっては逆 に鎮静化させ ることができ る形態を とっているのであ り, この点で,投機をコン トロールす る可能性 をも つ, といえるのである。
証券金融 システムは,投機 に受動的に対応 してそれに追随す るのみな らば,
相場を大 き く変動 させ る市場の不安定要因 となるが, しか しなが ら, より発展
した証券金融 システムは,上述のように投機をコン トロールす る機能をもつも
のなのである。次 に,証券金融の有するこのような意義 についてより具体的に
追い,そ して
,1920年代 とい う時期 までにおけるそれの限界 についても考察す
ることにす る。以下では, より発展 した証券金融 システム とみることができる
ド
イツ の 事例 か ら みて
ゆく こ と にす る。
\意 義
ドイツの証券金融 ・信用 システムは,定期取引 ・清算取引 とい う内部信用 に 銀行 のル ポール ・ロンベ ー ト貸付 とい う外部信用が加わ ったものであった。 こ の外部信用 たるルポール ・ロンバ ー ト貸付 は,定期取引 ・清算取引におけ る証 券投機 の不利 な清算 を,繰延べ可能 とす るものであ った。 したが って証券投機
を支持 ・鼓舞す る, とい う働 きを もつ ものなのである。
さて,投機が支持 ・鼓舞 されて,市場‑のその参加が促 され るな らば,証券 需給 は増 幅 し,取引は活発 となる。 そ して,証券価格 は一般 に上昇傾向をもつ であろ う。つま り,銀行 のルポール ・ロンバ ー ト貸付 とい う証券信用 は,証券 価格 の動向へ支配的な影響をもちうる, とい うことなのである。
図
2は,ルポー
JL ,・ロンバ ー ト貸付 の株価へ の影響をみようとしたものであ る。 この図か らほ,両者 の大 まかな相関関係が窺われ る。 また図
3は
,1920年 代 について,各年 内におけるル ポール ・ロンバ ー ト貸付及び株価指数 の ピーク とボ トムを拾い出 し, よ り詳細 に両者 の関連 を捉 えようとしたものであるが, ここでは緊密な相関関係 を確認 で きる。
ドイツにおいては,すで に当時か ら,証券信用 と株式相場 は長期間 にわたっ て同調す ること, また銀行 によるこの証券信用の拡大や縮小 は相場の上昇や下 降を伴 うことが指摘 され, したが って,銀行 のル ポール .ロンバ ー ト貸付 は株 価形成上強い影 響力 を もつ点が強調 されていた6 ) 0
さて, 同様 の ことは,米 国の証券信用であるブ ローカーズ ・ローンについて もいえる。米 国において も, この証券信用 と株価は密接 に関連 して動いた。例 えば
,1926年
1月か ら
1931年
3月 までの期間では, この期間の
8割 において, ブ ローカーズ ・ロー ンと株価 の毎 月の数値 は同一方 向へ動いたのである7 ) 0
しか しなが ら,米 国の例では , この証券信用 と株価 との関連 は, ドイツの例
ほどは,前者 か ら後者へ とい う強 い因果関係 を表わす ものではなか ったOブ ロ
ーカーズ ・ロー ンの供与が株価の動向を左右す るとい うような強い規定関係が
確認 され たわけではなか った。両者は,いわば相侯 って増大 ・上昇 してい った
のであ り,株価上昇は投機 を誘 い,投機 はブ ローカーズ ・ローンを増大せ しめ,
図
2ド イ ツ に お け る 証 券 信 用 と 株 価 動 向
1885189018951900190519101915192019251930出 所 :
DeutscheBundesbank,DeutschesGeld‑undBankwesen3‑nZahlen1876‑1975,Frankfurtam Mein,1976,S.56‑58,79,295よ り 作 成 。
閏琳 砂型 ヾA j l 卜 8 帥淋 It 8 9 ‑
図 3 ルポール ・ロンバート貸付と株価動向
1924 25 26 27
2 8
29 30 31 32 3334
出所 :
Viertel2'ahrsheftezurKonjunkturforschung,Sonderheft36.S.99,103により作成。
そ してブローカーズ ・ローンの増大はさらに株価を押 し上げてゆ く, という具 合であった8 ) o結局, ブローカーズ .ローンと投機および株価は絡み合 って動 いていった, ということ以上のことは言えず , この点, ドイツの事例 とは若干 様相が異なっていた。
以上のようにして,一般的には,証券金融 ・信用は,それが外部信用 という 形をとるとき,株価の動向に支配的な影響を及ぼしうる,とみることができる。
したが って,その意義をもう一歩進めて捉えようとすれば, このような証券信
用は,相場を大 き く変動せ しめる株式市場の無秩序な運動 に対 しても一定のコ
ン トロールを加えうるもの,というように捉えることができるOいわば,一定
程度の市場管理をな しうるもの, とい うことである。株式取引の外部か ら関わ
証券金融システムの意義 ‑ 1 9 1‑
る証券信用は, このような意義をもちうる, というのである。
限 界
証券金融 ・信用 は,上述 のように,株式市場の無秩序 な運動 に対 して一定の 管理をな しうるもの, としうる。 しか しなが ら
,1920年代 までの証券金融シス テムは, そのようなものとして十分機能 した というわけではなか った。
ドイツの場合,大銀行 による証券信用の供与 は,大銀行 自身の利害関係 にも とづいて加減 された.大銀行 は,例えば,産業株の一時的 ・大量的所有者 とな って株主総会で決定的な力を行使す るという目的のため,ルボール貸付を行 う ことがあった 。 ルポール貸付 は,既 にみたように,証券売買 とい う形式をもつ ものであったため,資金を供与す る銀行は一時的にその証券の所有者 となる こ
とができたか らである。
また大銀行は,逆 に,例えばロンバ ー ト貸付を顧客か ら取 りあげることによ って,投機 の続行を不可能 にさせ,証券の投げ売 りを余儀 な くさせ る。そして, この突然の証券 の供給増 によって相場を崩 し,安い価格で証券を手 に入れた。
さ らに,大銀行 は,株式発行を 自ら手掛ける場合,市場の高値気分 を扇 るた めに,「 金利」 ( 繰 り延べ料)を下 げてルポール貸付を拡大 し,投機 の買いを支 えることも行 った9 ) 0
このように して, ドイツの場合,株式相場の動 向に強い影響力をもつルポー ル ・ロンバ ー ト貸付 は,主 として大銀行の個別的利害 のための相場支配 に用い られたにす ぎなか った。市場の無秩序 な動 きにコン トロールを加えるという証 券信用のいわばマクロ的意義か らみた場合,現実の状況 はそれ とは遠 く隔 った ものであった 。 この点 に,当時の ドイツの証券信用の限界を見 ることができる。
ただ し
,1920年代 には,過熟 した相場を押えるとい う一般的な意図の下 にル ボール貸付が大幅 に削減 されたこともあったo図
3に見 られる
,1927年の証券 信用の減少 と相場の急落がそれであった。当時,相場の過熱を,中央銀行であ るライヒスバ ンクのみな らずベル リン大銀行 自身 も危慎 し,前者 の指導の下 で ルポール貸付の
25%の削減が緊急 に実施 されたのであったO この削減 によって相場は急転す る。そして, その後,28 年 には相場は持 ち直 してゆ くのである。
27
年の事態は,中央銀行の指導下 で大銀行が意識的にルポール貸付を削減 し,
投機を鎮静化 し,相場の過熟を抑制 し,いわば行 き過 ぎた状況を調整 した, と い うことなのである。つまり,一時的ではあるが,市場の無秩序な動 きにコン
トロールを加える, とい う事態がみ られたわけである。
次 に米国の場合であるが,米国の証券金融 システムは,既述 のように,証拠 金取引における顧客‑の証券業者か らの信用供与, そ して証券業者 に対す る銀 行 のブローカーズ ・ローンとい うように,取引当事者 に外部か ら信用が与 え ら れ る典型的な外部信用の形態を とるものであった。 したが って , このような米 国の証券金融は,上述の ドイツの銀行 によるルポール ・ロンバ ー ト貸付 と同様 に,投機 の動 きに対 して 自律的に影響を与え うる,投機 をコン トロール しうる 形態をもっていた,といえるのであるO この点,清算取引 とい う内部信用を備 えただけ と言 ってよい 日本の証券金融 システムとは,米国の場合は ドイツとと もに大いに異 なっていた。
さて,米国では
,1920年代 に, ブローカーズ ・ローンの増大 と株価上昇 とが 相侯 って進行 してい った。前者が後者を規定す るとい うような関係が ドイツの 場合 ほど明確 に見 られ るわけではなか ったが, とにか く,ブ ローカーズ ・ロー ンの増大 とともに
1929年のブームが もた らされていった。 この経過の中で,注 意 され るべ き点は,やは り,市場の過熱を押えるために投機 の鎮静化が試み ら れた, とい うことである。すなわち
,1928年および
29年 に,連邦準備局は,公 式の声明や 「道義的説得」を とお して,連邦準備制度加盟銀行がプ ロ二 ヵーズ
・ローンを抑制す るよう働 きかけたのである.
しか しなが ら, ブローカーズ ・ローンの貸手 は加盟銀行 に限 られていたわけ ではなか った。加盟銀行のはかに,非加盟銀行,事業会社や外銀を含む 「その 他 のもの」が, ブローカーズ ・ローンの重要な貸手 として存在 していたのであ る。 とくに , 「その他のもの」 は,当時
(1929年
10月) の貸付総額の少 な くと も半分以上のシェアを 占めるほどであった。そ して, この 「その他 のもの」 の 貸付増大が,加盟銀行の貸付抑制を無意味に したのであった。
1929
年の暴落後においては,ニュー ヨーク市中の大銀行 は,連邦準備局の政
策 に応 じて相場を支 える行動 もとった。 この点 も注 目され るべ きなのであり,
1930年 に, ニューヨーク市中銀行は
,28年や
29年の貸付額 を超える規模の貸付
証券金融システムの意義
ー 193‑を行 ったのである。 しか し, この時 もまた, 「その他のもの」 は,暴落後の資 金引き揚 げを性急 に行 ったのであった 10) O
さて,以上のような経過については,次のように言 うことができよう。すな わち,投機を, したが ってまた市場をある程度 コン トロール しうるブローカー ズ ・ローンは,当時なお,そのようなもの としては組織化されていず,政策当 局や大銀行 の十分掌撞す るところではなか った, と。典型的な外部信用形態を とっていた米国の証券金融 システムも,当時はこのような限界性を もつ もので あった。
Ⅱ 現代 日本の証券金融システム
証券金融 システムは, それが とりわけ外部信用 とい う形態をもつ とき,投機 の動 きに, したが って株価の動向に影響力をもち,か くして変動の激 しい市場 をある程度 コン トロール しうる,そのような力能を もつ,とい うことであった。
ここでは, このような ことが現代で もどのよ うに貫 き,発展 しているのか, と い うことを 日本 における株式の信用取引 と先物取引を とりあげて追 ってゆ く。
1
. 信用取引
信用取引 とは,周知のように,株 の売買を行 う顧客 に対 して証券会社が株の 買付資金 または売付株券を貸付けて行わ しめる取引である。顧客は一定の委託 保証金を所持す るだけで取引す ることがで きる制度なのである。そ して,貸付 け られた資金や株の返済は,反対売買 ( 転売 ・買い戻 し) によって行われる。
このように,信用取引は投機的取引なのである。そ して, この投機的取引を扇 った り鎮静化す ることによって株価の動 きに影響を与えうる, ということが, 信用取引制度 に備え られた市場管理機能 なのである1 1 ) 0
信用取引の利用状況は表 2が示 している。普通取引に占める割合は近年低下 傾向にあるが, それで も
91年中には売買金額で
25%台 にも達す る月があ り,信 用取引の,市場への影響力が窺われる。
さて,信用取引 ・投機へのコン トロールは,具体的には,委託保証金率の引
表 2 普通取引に占める信用取引 ( 東証第一部)
年 月 ‑ 売買高A 売買金額B 売買高C 売買金額D 普 通 取 引 信 用 取 引 C / A D / B 個人投資家 利 用 率
1982 1億株
,5261
70
0億円
,248億株
417 1109億円
,821 2%7.3 2%8.2 ‑%49.883 2,000 ・101,595 513 25,961 25.7 25.6 44.1 84 1,983 126,957 459 30.136 23.1 23.7 4
1 . 1 8 5
2,362 150,790 454 29,852 19.2 19.8 35.4 86 3,869 311,591 721 55,825 18.6 17.9 35.3 87 5,184 490,636 868 74,345 16.7 15.2 31.2 88‑ 5,568 558,989 1,093 103,397 19.6 18.5 39.3 89 4,364 651,212 708 100,554 16.2 15.4 34.8 90 2,376 351,937 446 62,706 18.8 17.8 45.4 91 1,833 ・214,
088
404 44,222 21一4 20.7 57.6 91.1 115 13,155 24 2,641 20.9 20.1 53.9 2 307 34,959 83
8,963 27.0 25.6 62.6 3 221 ,27,507 48 5,
643 21.7 20.5 56.8 4 167 21,856 40 4,876 24.0 22.3 57.1 5 130 16,
36 4
23 2,815 17.7 17.2 49.1 6 116 15,024. 20 2,349 ・17.2 15.6 48.7 7 122 14,998 24 2,716 19.7 18.1 53.2 8 101 ll,058 23 2,229 22.8 20.2 54.6 9 182 18,871 40 3,841 22.0 20.4 57.9 10 170 18,915 41 4,168 24.1 22.0 56.8 ll 96 10,828. 20 2,132 20.8 19.7 50.1( 症) 1 .売買高,売買金額は売 り・買い合計
2.個人投資家利用率 とは個人投資家 の売買金額に占める信用取引の割合 ( 総合証券会社ベース)
3.1991年
12月
16日より信用 ・貸借錆柄が市場第二部銘柄へ拡大されたため
,12月分は市場 第一 ・二部合計
出所 :東京証券取引所 『 東証要覧
』1992年版
,80ページ。
上 げ ・引下 げ, そ して代用証券 の評価掛 目の上 げ下 げによ って行われ る。例え
ば,委託保証金率 を引下 げ,代用証券掛 目を高 くすれば,投機 の市場への参加
は促 され,信用取引は活発 とな り,相場を押 し上 げてゆ く効果を もた らす。逆
の場合 は逆 の成 り行 き となる。 この操作の最近 の動 向は表 3に見 られ るが,比
較的ひんぽん に上 げ下 げが行われてい るのがわか る。
証券金融システムの意義 表
3委託保証金率 ・株券代用掛目の推移
‑ 195‑
委 託 保 証 金 率 株 券 代 用 掛 目
.1987.2.27 60%‑ 70% 1987̲2.20. 60%→
50%4.15 70%
(うち現金
20%) 7.22 :50%‑ 70%7.9 70%
(うち現金
.0%) 10ー15 70%‑ 60%1988.3.17 50%
‑
460% 1989.2.23 70%‑
‑ 60%6.3 60%
→
70% 12.6 60%‑‑ 50%1989.6.30 70%‑ 60% 1990.1,ll 50%
‑
‑ 60%1990.2.21 60%‑ 50% 2.27 60%‑‑ 70%
2i27
9.6 540%0%‑ 4
「→
30%0% 10,5 70%‑ 80%出所 :『 大蔵省証券局年報
』198 8 年版
,28ページ
,1991年版
,27ページによるO 最近の事例 としては
,1990年
10月
1日の暴落 に際 して取 られた措置がある。
委託保証金率 はすでに
9月に
30%へ と引下 げ られていたが, この暴落 によって 新 たに
10月
5日か ら株券代用掛 目が
70%か ら
80%へ と引上げ られた。後者 の措 置は,掛 目は大蔵省令で
70%が上限 とされていたので,新 たに特例省令を制定 して実施 されたのであった
。80%とい う掛 目は,昭和
40年の証券不況時以来
25年ぶ りのことであった。 この措置は,一般的には,上記 のように信用取引への 参加を喚起 しようとす る方策の
1つ といえるが,直接的 ・即時的な効果 として 期待されたのは次のことであった。
すなわち,相場の下落 とともに,信用取引で買付を行 っていた顧客の計算上
の損失が生 じ,委託保証金は減額 されるなど してその実質は減少する。それが
20%を割 り込めば追 い証が必要 とされ, そのために株 の売却が強い られ る。そ
して, これが, さ らに株価下落 に拍車をかけるO予想 され る成 り行 きはこのよ
なものであるが,だが,株券代用掛 目が
10ポイン ト引き上げ られ ることによっ
て,保証金 として差 し入れ られていた代用株券の評価額 はそれだけ高 まり, こ
れを行 っていた投資家 にとっては当面追い証が回避 され る, とい うことが起 こ
る。 したが って,追い証 に迫 られた株の売 りも引込み,連鎖的な株式売却によ
る相場の崩落は くい止 め られ るのである。株券代用掛 目の引上 げは, このよう
な即時的効果をもつものであった。実際に, この措置を好感 して
,10月
2日に
は 日経平均株価
2,676円と い う それまでで 最大の 上げ幅を記録 したのであっ た
12)0
以上のように して,信用取引 ・投機 は,委託保証金率や代用証券掛 目の操作 によって喚起 ・支持 あるいは鎮静化され,株価の動 きに影響を与えるもの とな るのである。投機へのコン トロールによって株価が影響を受 ける, とい うこと なのである。
2.
先物取引
信用取引 とな らんで先物取引は,投機が活動す る場である。現在実際に行わ れている株式先物取引の うち,主要なものは株価指数先物取引である。 ここで は,株価指数先物取引に即 して,投機へのコン トロールによって株価が影響を 受 ける, とい うことをみてゆ く。
しか し,株価指数先物取引の場合 ,上述の信用取引において見 られたような, 投機 にコン トロールを加えていわば即時的に株価動向に影響を及ぼす, とい う 成 り行 きとはかな り様相を異 にす る。市場 に対す る株価指数先物取引の影響の 及ぼ し方は,信用取引のように即時的 ・対症療法的なものではな く,む しろ構 造的に株価水準維持 に寄与す る, とで も言い うるようなものである。以下,秩 価指数先物取引の概要 を追い, その後に, このような意義を考えてゆ くことに す る
13)。
株価指数先物取引は,大阪証券取引所では 日経平均株価先物取引が,東京証 券取引所では東証株価指数先物取引が,1
988年
9月
3日か ら開始 された。それ ぞれ,「日経
225先物取引
」,
「TOPIX先物取引」 と呼ばれるが, この
2つの取 引は,取引単位以外の種 々の条件 については, ほとんど同じである
14)。株価指数先物取引 とは, 一般 に, 「当事者があ らか じめ約定す る株価指数の 数値 と将来の特定の期 日における現実の株価指数 との差 に相 当す る金銭の授受 を約す る取引」である, とい うことであるが,株価指数 とい う実際には受渡 し ので きない数値を取引す るために, その決済は買い戻 し ・転売 による差金決済
となる
15)0
さて, このような株価指数先物取引の利用方法 ・機能 に関 しては,通常,吹
証券金融 システムの意義
‑ 1 9 7 ‑の
3つが挙 げ られ る。
第
1は,ヘ ッジ取引であ り,現物取引 と反対 のポジシ ョンを株価指数先物取 引で設定 し, それ によって現物市場の価格変動 リスクを回避す る, とい う取引 で ある。第
2は,裁定取引であ り,実 際の先物価格 と理論的な先物価格 ( 現物指 数 か ら導 びかれ る) との問の帝離 を利用 した り,または異 なる限月間の価格差 を利用 して利益 を得 よ うとす る取引である。第
3は,オープ ン ・ポジシ ョン取 引または単純取引など と呼ばれ るもので,相場 の先行 きを予想 して買いまたは 売 りを行 い,その後反対売買 によって決済 し利益を得 よ うとす る取引である。
以上 の
3つの取引・ 利用方法の中で,最 も重要 なもの として強調 され るのは, 第
1のヘ ッジ取引である。つま り,株価指数先物取引は,機 関投資家などの大 量 の株式保有 ・投資 に,株価変動か ら生 じる リスクを効率的 にヘ ッジす る場を 提供す る, とい うことが その主要 目的 として挙げ られ るのである。
以下, このよ うな, 株価指数先物取引の 利用 による リスクヘ ッジの 仕組み を , 「日経
225先物取 引」 に即 して具体的 にみることにす る。なあ ヘ ッジ取引 には 「 売 り‑ ツジ」 と 「買いヘ ッジ」が あるが,前者か らとりあげる。成 り行 きは次のようになる ( 図
4参照)0
①
10月11日現在, ある投資家 は,い くつかの銘柄か ら構成 され る時価
10億 円のポー トフォ リオを保有 してい る。
‑㊥ しか し,相場の下落が予想 され るので,同 日
,「日経
225先物取引」で
46単位
(10億 円
÷〔22,000円
×1,000〕‑45.46)を売建て る。
◎
11月
10日に現物 の相場は
10%下落 した。 そこで先物取引の方 を,反対取 図
4「 売り‑ツジ」
1
0億円
9億円
10/11 叫 10
現称保有 >
22,000
円
20,000円
10/11 11/10
先軸光 り > 反対取 引・ Jい戻 し
による決済
1 1 億円 1 0億円
く 現物取引〉
図
5「 買いヘッジ」
10/11 11/10
現物買い
24,000
円
22,000円
く日経
225先物取引〉
「
二10/11 11/10
先軸Xい > ・ 反対取引. 転売
による決済
引 ・買い 戻 しを 行 って 決済す る。 その結果, 売 りによる
10億1,
200万 円
(22,000円
×1,000×46単位) と買いの支払い
9億2,
000万 円
(20,000円 ×
1,000×46単位) は決済 されて9,
200万 円の利益 となる。
④ か くして,現物保有の方 は,相場の下落 によ り
1億 円の評価損
(10億円
‑ 9