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研究要旨

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(1)

厚生労働行政推進調査事業

革新的なバイオ医薬品等の創出に向けた研究開発環境の整備に関する研究 総括研究報告書

研究代表者 坂巻弘之 東京理科大学経営学部 教授

分担研究者 豊島 聡 公益財団法人日本薬剤師研修センター 理事長

研究要旨

近年、抗体 医薬品等だけではなく、バイオ医薬品に続く領域の中心として、核酸・ペプチド医 薬 品 等 のいわゆる中 分 子 医 薬 品 や、遺 伝 子 治 療 用 や細 胞 組 織 利 用 医 薬 品 など、新 たな領 域

(モダリティ)の開 発 が広 がっている。モダリティごとに、探 索 研 究 、開 発 研 究 、製 造 、特 許 、市 場

(価 格 設 定 や市 販 後 の規 制 、マーケティングなど)、サプライチェーンなど、経 営 的 なリスクは異 なることが予 想 され、産 業 政 策 のあり方 もそれぞれの検 討 が必 要 である。そこで、本 研 究 では、

各 モダリティの開 発 状 況 、使 用 状 況 等 を公 表 資 料 、企 業 アンケート等 をもとに調 査 し、企 業 ヒア リング等 を通 して、それぞれのモダリティの開 発 、製 造 、市 場 等 の課 題 を明 らかにし、産 業 振 興 の論点について検討を行った。

モダリティごとの主 な課 題 としては、①抗 体 医 薬 品 では、新 たな抗 原 の探 索 、製 造 や開 発 の ための初期 投資の大きさ、②核 酸 医薬品 、③ペプチド医 薬品では、開発のための病態モデル、

生体 内で安 定して標 的 に到達 させるための技 術、製造コスト、品 質 管理 ハーモナイゼーション、

④細 胞 治 療 ・再 生 医 療・遺 伝 子 治 療 については、探 索 研 究 のための産 官 学 の基 礎 研 究 システ ム、極めて高 額な開発・製造コスト、価格政 策のあり方 、サプライチェーンの仕組みなどが考えら れた。今 後 、人 材 ・技 術 交 流 の活 性 化 、中 分 子 における分 析 設 計 ・候 補 物 質 最 適 化 、高 機 能 化、解析 技 術開発、それらの人材 開発、企 業 の交流、イノベーション評価と財政のバランスを考 慮 した薬 価 制 度 、保 険 償 還 の仕 組 み、効 率 的 なロジスティクス・サプライチェーンの構 築 などに ついて検討すべきであると考えられた。

研究協力 山本 雄士

株式会社ミナケア代表取締役 井手野 泰久

(独法)医薬品医療機器総合機構 再生医療製品等審査部

日本製薬工業協会 バイオ医薬品委員会 日本ジェネリック製薬協会

バイオシミラー協議会

業務委託

株式会社 矢野経済研究所

A. 目的

1. 本研究の背景と目的

バイオ医薬品は、低分子薬と異なり、探索段階

から研 究 開 発 、生 産 、上 市 の各 段 階 のリスクが高

く、バイオシミラー(バイオ後 続 品 (以 下 「 BS」と略 )

ならびに革 新 的 バイオ医 薬 品 の上 市 のための支

援 策 の検 討 が必 要 である。一 方 、近 年 、抗 体 医

薬 品 等 だけではなく、バイオ医 薬 品 の次 に続 く領

域 の中 心 となる核 酸 ・ペプチド医 薬 品 等 のいわゆ

る中 分 子 医 薬 品 や、遺 伝 子 治 療 用 や細 胞 組 織

利 用医 薬 品 など、新たな領 域(モダリティ)の開 発

が広がっている。

(2)

モダリティごとに、探索 研 究、開発 研 究、製造 、 特 許 、市 場 (価 格 設 定 や市 販 後 の規 制 、マーケ ティングなど)、サプライチェーンなどの幅 広 い企 業 活 動 に 渡 り 、 投 資 判 断 等 の 経 営 的 な リ スク は 異 なることが予 想 され、産 業 政 策 のあり方 もそれ ぞれの検討が必要である。

また 、 近 年 、 抗 体 医 薬 品 や 融 合 タ ン パク 質 の バイオシミラーの上 市 も増 えつつあるが、わが国 で製造される BS は依然として多くはなく、BS 開 発・使 用 促 進 についても、課 題 を引 き続き検 討 す る必要がある。BS 製 造とも関連するが、バイオ医 薬 品 の特 性 上 、探 索 段 階 からの生 産 技 術を含 め、

バ イ オ 医 薬 品 等 の 製 造 ・ 研 究 受 託 機 関

(CMO/CDMO)の役割も拡大している。

これらのバイオ医 薬 品 開 発 に関 わる課 題 を明 らかにし、さらなるバイオ医 薬 品 産 業 振 興 策 につ いて検 討 することが求 められており、本 研 究 では、

バイオシミラーならびに新 モダリティ

1

の研 究 開 発 、 資 源 投 入 、外 部 との連 携 状 況 等 を把 握 し、各 段 階 におけるリスク分 析 と、産 業 振 興 に必 要 な政 策 提言を行うことを目的とした。

2. 本研究における調査対象モダリティ 本 研 究 における調 査 対 象 モダリティは、スライ ド1のとおりである。一 般 に「バイオ医 薬 品 」とは、

遺 伝 子 組 換 え技 術 や細 胞 培 養 技 術 を用 いて製 造したタンパク質を有 効 成分 とした医薬 品である

2

。 核酸 医 薬品 やペプチド医薬 品の多 くは化学 合 成 で製造されており、必ずしも遺伝子組換え技術等 のバイオテクノロジーを用 いた医 薬 品 ではない。

また、作 用 メカニズムも、ペプチド医 薬 品 や核 酸 医 薬 品 のアプタマーでは、タンパク質 をターゲット としており、遺 伝 情 報 に作 用 するともいえず、これ らをバイオ医 薬 品 に分 類 することは必 ずしも適 当

1

今 回 の調 査 対 象 とした、抗 体 医 薬 品 ・抗 体 改 変 医 薬 品 ・融 合 タンパク質 、再 生 医 療 等 製 品 、ペプチド医 薬 品 、核 酸 医 薬 品 を含 めて「新 モダリティ」と表 現 した。

2

くすりの適 正 使 用 協 議 会

http://www.rad-ar.or.jp/bio/pdf/whats_bio_ippan.pdf

とはいえないが、本 研 究 では、バイオ医 薬 品 と併 せて議論を行った。

一 方 、バイオテクノロジーを用 いて製 造 する医 薬 品 でも、ホルモン、サイトカイン、多 糖 類 生 物 薬 品、治療ワクチン等は対象から除いた。

核 酸 医 薬 品 などの中 分 子 医 薬 品 も含 め、新 た なモダリティは、これまで有 効 な治 療 手 段 のなか った疾病に対して革新的な治療効果をもたらすこ と が 期 待 さ れ て い る 。 例 え ば 、 脊 髄 性 筋 萎 縮 症

(spinal muscular atrophy: SMA)は、進行性で、

歩 行 、嚥 下 、最 終 的 には呼 吸 に障 害 を起 こし死 に至ることも多い難病で、2016 年まで有効な治療 方 法 はなかった。 2016 年 にアンチセンス型 核 酸 医 薬 品 であるヌシネルセンナトリウム(商 品 名 スピ ンラザ)が承 認 され、治 療 に用 いられるようになっ ている。 SMA に対する治療として、現在、遺伝子 治 療 、そしてスプライシング修 飾 の経 口 投 与 可 能 な低分子医薬品の開発も進んでいる(スライド 2)。

このようにある疾 病 に対 して多 用 なモダリティによ る治 療 選 択 肢 の広 がりがあることから、本 研 究 に おいては、議 論 の中 で核 酸 、ペプチド医 薬 品 等 の中分子医薬品も含めている。

なお、個 別 化 医 療 については、多 様 な概 念 が 含まれ、現 在、国際 医 薬経済アウトカム研究学 会 の検討グループでは、スライド 3 のように整理して いる

3

Personalized Health や Personalized Medicine は 、 健 康 や 医 療 技 術 選 択 に 関 す る 個 々 の 価 値 観の重視や政策議論のあり方を示すものと考えら れ る が 、 具 体 的 な 治 療 技 術 に つ い て は 、 Precision Medicine と Individualized Medicine と では意 味 合 いが異 なる。前 者は、日 本 語 では「高

3

Towards a Value Framework for Precision Medicine:

Recommendations from the ISPOR Precision Medicine Special Interest Group

Barcelona, Spain Monday 12 November 2018

International Society for Pharmacoeconomics and

Outcomes Research

(3)

精 度 医 療 」、「精 密 医 療 」などと訳 され、検 査 、バ イオマーカー等 による特 定 標 的 に対 する医 療 で ある。従 って、遺 伝 子 組 換 えのバイオ医 薬 品 だけ でなく、低 分 子 化 学 合 成 医 薬 品 でも分 子 標 的 薬 な ど が Precision Medicine と な る 。 一 方 、 Individualized Medicine が「個別化医療」であり、

完 全 に個 別 患 者 のための治 療 になる。例 えば、

自 家 細 胞 による再 生 医 療 製 品 は個 別 化 医 療 製 品 に相 当 する。個 別 化 医 療 製 品 では、多 くの場 合 、その個 人 に対 して極 めて高 い有 効 性 を示 す が、個 別 性 が高 い疾 患 についての臨 床 評 価 、経 済評価のあり方が課題となる。

多 様 なモダリティの開 発 は、医 薬 品 市 場 のパラ ダイムシフトをもたらしている(スライド 4)。

従 来 、製 薬 企 業 は、患 者 数 が多 い市 場 において 市場シェアの拡大による売上げ増大を目指してき た。こうした市 場 モデルでの成 功 を収 めた製 品 は いわゆる「ブロックバスター」とよばれていた。例 え ば高 血 圧 におけるアンジオテンシン変 換 酵 素 阻 害薬 ARB などがその代表であり、製品によっては ピーク時の売上げが 1,000 億円を超えるものもあ ったが、同じ ARB 製品間の差異も小さく、ジェネ リックも発 売 されており、「コモディティ」市 場 とな っている。

コモディティ市 場 医 薬 品 の例 として、高 血 圧 に ついては、ARB に加え、Ca 拮抗薬などの様々な 薬 理 作 用 を有 する降 圧 薬 が用 いられているもの の、薬 価 のばらつきも大 きい。また、薬 価 はバイオ 医 薬 品 などに比 べ、相 対 的 に安 価 であるものの、

市 場 規 模 が大 きいため、薬 剤 費 への影 響 は大 き い。そのため、薬 理 作 用 の違いと効 果 、薬 価の違 いとについての費用対効果が検討されるべきであ る。

一 方 、市 場 規 模 の大 きな疾 患 領 域 に対 して、

市場規模の小さい領域では、相対的に新薬開 発 が遅 れており、アンメットニーズが満 たされていな い領域も多 い。こうした疾病に対して、バイオ医薬

品 などの新 たな作 用 メカニズムを持 つ根 本 治 療 につながることが期 待 される医 薬 品 が開 発 されて いる。患者 数が少ないため、治療を受ける医療 機 関 も全 国 に散 在 しており、いかに効 率 的 に、かつ 必 要 とされる患 者 に対 して的 確 に供 給 するか、ロ ジスティクスについても、ブロックバスターモデルと は異 なる、新 たなロジスティクスモデルの構 築も求 められる(細 胞 治 療などでは、「原 料 」となる「細 胞 ソース」を患 者 から採 取 するため、「サプライチェ ーンモデル」とよぶことが適切である)。

こうしたパラダイムシフトを前 提 に、新 たなバイ オ医 薬 品 の開 発 、製 造 、市 場 、ロジスティクス(サ プライチェーン)の特 徴 と開 発 促 進 のための課 題 を考察することが必要である。

そ こ で 、 本 研 究 に お い て は 、 医 薬 品 開 発 、 製 造 、サプライチェーンのそれぞれについて、スライ ド 5 のように分類し、それぞれのステージにおける 課題についての検討を行った。

B. 研究方法

本 研 究 で は 、 以 下 の 事 項 に つ い て 調 査 を 行 っ た。

(1) 新モダリティ開発、使用に関わる現状調査 以 下 に つ い て 、 企 業 決 算 資 料 、 レ セ プ ト 情 報 ・ 特 定 健 診 等 情 報 デ ータ ベース( NDB) 、 先 行 研 究 の 公 表 資 料 等 か ら 現 状 を 調 査 し た。

・ 新 モダリティ開 発 への取 り組 み:抗 体 、抗 体 改 変 医 薬 品 (ADC 、バイスペシフィック抗 体 など)、核 酸 医 薬 品 、ペプチド医 薬 品 、細 胞 治療、遺伝子治療などの全体的開発状況

・ バイオ医薬品使用状況:NDB での使用状況 (2) 新モダリティ開発にかかる企業調査

新 モダリティについてアンケート(製 薬 協 バイオ

委 員 会 調 査 を引 用 )を実 施 し、研 究 開 発 過 程 に

おける課題、意思決定などを調査・分析した。

(4)

(3) バイオ医 薬 品 、新 モダリティ企 業 、製 造・研 究 受託機関等調査

· バイオ医 薬 品 や、核 酸 、ペプチド医 薬 品 、細 胞 治 療 などの新 モダリティの開 発 を行 ってい る企業、開発、生産に関わる CMO/CDMO、

CRO へのヒアリングを行 い、モダリティごとの 開発、生産に関わる現状と課題を検討した

· CMO/CDMO については、専 門 家(コンサル

タント)による現 状 、コスト試 算 、支 援 方 策 等 についてレポートを作成した。

· 医 薬 品 卸 等 へのヒアリングをもとに、ロジステ ィクス、サプライチェーンの検 討 課 題 につい て考察した。

· なお、企 業 ヒアリング結 果 については、本 報 告 書 に お い て は 、 原 則 と し て 、 調 査 対 象 企 業名を記載しないこととした。

(4) バイオシミラーに関する調査

BS に関する調査は、以下 2 調査を実施した。

· 製 薬 企 業 の バ イ オ シ ミ ラ ー 事 業 取 り 組 み 状 況 ならびに製 造 /研 究 開 発 に関 わる課 題 に 関する調査

· 医療関係者の BS に関する意識調査

(5) 自 治体 におけるバイオ開 発 促進 に関 わる取 り 組 み(バイオクラスター)について、設 置 の背 景 、特 徴 などについてヒアリング調 査 を行 い、

バイオクラスターの役割について検討した。

なお、本研 究で実 施した調査 のうち、以 下につ いてはそれぞれの分担研究報告書に取纏めた。

· (1)および(2)のバイオ医 薬 品 の開 発 ならびに

市場動 向、新モダリティの開発動 向 について は、「バイオ医 薬品 の開 発ならびに市 場動 向 、 新モダリティの開発動向」に取りまとめた。

· (3)のうち、CMO/CDMO の専 門 家 (コンサル

タント)による現 状 、コスト試 算 、支 援 方 策 等 についてのレポートは、「バイオ医 薬 品 の開 発 および製 造 におけるアウトソーシングの国 内 動 向 」および「バイオ医 薬 品 の製 造 コスト、

薬価および製造設備に関する考察」として取 纏めた。

· (4)バイオシミラーに関 する調 査 については、

「バイオシミラーに関 わる企 業 の取 り組 みなら びに医 療 関 係 者 の意 識 調 査 」として取 纏 め た。

C. 結果

1. バイオ医薬品、新モダリティ開発動向

4

遺 伝 子 組 換 えのバイオ医 薬 品 については、わ が国 では、1985 年 のインスリン以 降 、数 多 くの製 品 が開 発 、承 認 されており、国 立 医 薬 品 食 品 衛 生研究所の集計では、2017 年 12 月までに 145 品 目 が薬 事 承 認 を受 けており、初 期 のバイオ医 薬 品 はサイトカインなどの生 体 中 に存 在 する物 質 を利 用 したものが多 か ったが、近 年 は抗 体 医 薬 品 が 増 加 し て き て い る 。 ま た 、 BS に つ い て は 、 2019 年 3 月までに、17 品目が承認されている(ス ライド 6~8)

5

一 方 、新 モダリティについては、わが国 でも多 様 なモダリティの開 発 が進 んでおり、製 薬 協 バイ オ委 員 会 のアンケート調 査 でも、抗 体 改 変 医 薬 品 や核 酸 医 薬 品 、ペプチド医 薬 品 、遺 伝 子 治 療 な ど の 開 発 を 手 が け る 企 業 数 も 増 え て お り 、

CMO/CDMO、CRO の利 用の増 加 が見込 まれて

いる。その一 方 で、海 外 との比 較 で見 ると、企 業 数 の違 いもあって、わが国 での新 モダリティ開 発 プロジェクト数は少ないことや、海 外 企 業と比 べて、

相 対 的 に低 分 子 化 合 物 の割 合 が高 いなどの特 徴も示されている(「バイオ医薬品の開 発ならびに 市場動向、新モダリティの開発動向」参照)。

4

詳 細 は、「バイオ医 薬 品 の開 発 ならびに市 場 動 向 、新 モダリティの開 発 動 向 」参 照 。

5

スライド 6~8 については、厚 生 労 働 省 :バイオ医 薬 品 ・ バイオシミラー講 習 会 資 料 より引 用 。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000

0132762_00005.html

(5)

2. 抗体医薬品、融合タンパク質

(1) 抗 体 医 薬 品 、融 合 タンパク質 の開 発 ならび に市場

抗 体 医 薬 品 は、疾 患 関 連 分 子 に特 異 的 に結 合 する抗 体 を遺 伝 子 組 換 え技 術 等 を応 用して作 製 し、医 薬 品 としたものである。抗 体 医 薬 品 は、

標 的 分 子 との結 合 性 等 を指 標 に取 得 ・選 択 され た抗 体 の遺 伝 子 を、組 換 えタンパク質 発 現 用 の 細胞に導入 して、医 薬品 生産 用の細 胞株を樹 立 することにより製 造 される。2018 年 末 時 点 におい て 約 80 種類のモノクローナル抗体医薬品が承 認、上市、実用化されている。

一 方 、 受 容 体 細 胞 外 ド メイ ン 等 の 機 能 性 タン パク質と IgG の Fc ドメインを融合させたタンパク 質 は、「 Fc 融 合 タンパク質 」(以 下 「融 合 タンパク 質」という)と呼ばれる。融合タンパク質は、IgG の Fc ドメインとの融合により血中半減期の延長を期 待して人工 的に設計されたもので、抗体医薬品と 同様 に遺伝 子組 換 え技 術等 を応 用 して製 造され る。

初期の抗体医薬品は、マウス抗体から出発し、

その後 、キメラ抗 体 、ヒト化 抗 体 と展 開 してきたが、

近 年 では、すべてヒト由 来 配 列 抗 体 を動 物 細 胞 で製 造 する技 術 が確 立 するとともに、基 本 特 許 も 失 効 したため、ヒト抗 体 (完 全 ヒト化 抗 体 )が開 発 の主流となっている。

抗 体 医 薬 品 は、中 和 作 用 (アンタゴニスト)、細 胞 傷 害 活 性 ( 抗 体 依 存 性 細 胞 傷 害 Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity : ADCC 、 補 体 依 存 性 細 胞 傷 害 Complement-Dependent Cytotoxicity:CDC)など が作 用 メカニズムの中 心 であるため、悪 性 腫 瘍 や 自 己 免 疫 疾 患 が標 的 疾 患 の中 心 であったが、近 年 、生 活 習 慣 病 やアルツハイマー認 知 症 などへ の上市、開発も広がっている(スライド 9)

6

。また、

6

特 許 庁 :平 成 26 年 度 特 許 出 願 技 術 動 向 調 査 書 -抗

バイオマーカー・コンパニオン診 断 薬 との組 合 せ で精密医療 Precision Medicine に用いられる。

通 常 の 抗 体 医 薬 品 ( Naked 抗 体 ) の ほ か 、 様 々 な 構 造 改 変 や 修 飾 さ れ た 抗 体 医 薬 品 も 登 場している。それらは以下のように分類される。

・ 糖 鎖 改 変 抗 体 :抗 体 の一 部 の部 位 (主 に Fc 部 位 )に存 在 する糖 鎖 構 造 を改 変 した抗 体 。 ポテリジェント技 術による Poteligeo (協和発 酵 キリンが上市)が代表的。

・ 抗 体 ・ 薬 物 複 合 体 ( Antibody Drug Conjugate:ADC):抗 体 のターゲティング効 果 を用 い、抗 体 にリンカーを介 して低 分 子 化 合 物 を結 合 させたもの。放 射 性 物 質 との複 合 体 もある。

・ 多 重 特 異 性 抗 体 (multispecific antibody): 2 つ以上の抗原に対して特異性を示す抗体。

2 つの抗 原 の場 合 は、二 重 特 異 性 抗 体 、ある いはバイスペシフィック抗 体 と呼 ぶ

7

。Blincyto

(アムジェン)、Hemlibra (中外)が上市。

・ 低分子化抗体:抗体の Fc 部位を切り離して低 分 子 化 した抗 体 。Lucentis(ジェネンテック・ノ バルティス)、Cimzia(UCB) 、Blincyto(アムジ ェン)、Lumoxiti(アストラゼネカ)などが上市。

・ その他:IgA や IgE 抗体を利用するものなど。

抗 体 ・薬 物 複 合 体 開 発 における技 術 的 特 徴 と しては、抗 体 と薬 物 を結 合 させるリンカーの設 計

(リンカーが血 中 の酵 素 では切 断 されず、目 的 の 組 織 ・細 胞 において切 断 されること)、あるいは、

抗 体 ・ 薬 物 結 合 反 応 の 収 率 の向 上 などが あ り 、 抗 体 に 結 合 される 薬 物 の種 類 と し ては、 以 下 が 中心となっているとされる。

体 医 薬 (平 成 27年 3月 )

https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houko ku/tokkyo/document/index/26_11.pdf

7 現 在 の開 発 の中 心 は二 重 特 異 性 抗 体 であるため、

本 稿 で は 、 「 バ イ ス ペ シ フ ィ ッ ク 抗 体 」 と す る 。 な お 、

(抗 原 は1種 類 で)抗 原 結 合 部 位 (エピトープ)が複 数

ある 場 合 は、 多 価 抗 体 (multivarent antibody) とよぶ

が、次 ページに記 載 するように、この場 合 も、バイスペ

シフィック抗 体 とよんでいる。

(6)

· 抗腫瘍化合物:抗腫瘍効果を持つ抗がん剤

· 治 療 用 タ ン パ ク 質 : 抗 腫 瘍 効 果 や ホ ル モ ン 作 用 、酵 素 活 性 を持 つタンパク質 、IL-2 や IL-4、エリスロポエチンなど

· 放射性同位元素:抗腫瘍効果を持つ RI 、ビ スマス 213、ヨウ素 131 など

· DDS:血 中 半 減 期 を向 上 させるための PEG

など

バ イ ス ペ シフ ィ ッ ク 抗 体 の 目 的 と し て は 、 有 効 性 向 上 のため複 数 抗 原 を標 的 とする。例 えば、 2 つ(以 上 )の異 なるがん抗 原 や、異 なるエピトープ を標 的 とするにすることで、有 効 性 向 上 を狙 う。が ん治療における T 細胞誘導(T 細胞リダイレクト)

では、がん抗原と T 細胞( CD3 が多い)を同時に 標的とし、がん細胞へ T 細胞を誘導することなど がある。

国 内 で承 認 されている抗 体 改 変 医 薬 品 (糖 鎖 改 変 抗 体 、抗 体 ・薬 物 複 合 体 、バイスペシフィッ ク抗体)をスライド 10 に示した。なお、抗体改変 医 薬 品 には、他 にも、国 内 承 認 となると、少 なくと も Bilincyto( ア ス テ ラ ス ア ム ジ ェ ン ) 、 Besponsa

( Pfizer ) 、 Adcetris ( 武 田 ) 、 Zevalin ( Bayel ) 、 Mylotarg(Pfizer)などがある。

日 本 のバイオ医 薬 品 市 場 は、2016 年 には約

1 兆 4,219 億円(バイオ医薬品比率 13.6%)であ

り、2005 年頃は 85%が抗体医薬品以外のリコン ビナントタンパク質 であったのに対 し、2013 年 に は抗体医薬品が 5 割以上を占め、2016 年には 62.9%に ま で 伸 長 し て い る 。 抗 体 医 薬 品 の 売 上 高は、2016 年は約 8,943 億円であり、医薬品市

場の約 8.6%を占めているとされる

8

8 IQVIA 社 (旧 Quintiles IMS 社 )のデータを用 い、赤 羽 宏 友 氏 推 計 。

赤 羽 宏 友 :バイオ医 薬 産 業 の課 題 と更 なる発 展 に向 けた提 言 .医 薬 産 業 政 策 研 究 所 リサーチペーパー・シ リーズ No. 71 (平 成 30 年 3 月 )日 本 製 薬 工 業 協 会 医 薬 産 業 政 策 研 究 所 .

http://www.jpma.or.jp/opir/research/rs_071/paper_7

(2) 開 発 ・製 造 ステージとバイオ医 薬 品 開 発 等 における課題

9,10

先行研 究・調査ならびに企業ヒアリングをもとに、

抗体医薬品等開発における課題を スライド 11 に まとめた。

探 索 研 究 に おいて は、 現 在 開 発 中 の 抗 体 医 薬 品 の標 的 分 子 の大 半 が 2000 年 代 前 半 以 前 に報 告 された分 子 であり、新 たな標 的 分 子 の探 索 の困 難 さも指 摘 されている。現 在 のバイオ医 薬 品開発の中心は抗体医薬品といえるが、これまで 有 効 な治 療 方 法 が存 在 しなかった領 域 で、核 酸 医 薬 品 や細 胞 治 療 などの他 のモダリティとの「競 合 」もありうる。また、脳 血 管 関 門 通 過 など抗 体 技 術の他の創薬への応用なども期待されている。

開 発 ・評 価 系 研 究 については、標 的 に対 する 有 効 性 評 価 、ヒトと動 物 との違 いによる評 価 モデ ルの開発、目的とする API が製造されているかス クリーニングする技 術 、アフィニティ、免 疫 原 性 の 改良、比較対照薬の入手コストなども含む開発プ ロセスや規制が課題として指摘されている。

製 造 技 術 、品 質 管 理 ・品 質 保 証 については、

高 産 生 細 胞 、培 養 、精 製 等 のすべてのプロセス においてコスト低減 が重 要であり、そのために、連 続 生 産 等 の新 たな技 術 開 発 、コスト低 減 のため の製 造 プロセス一 変 の簡 便 化 、さらに、国 内 での 技術開発(ADC、多価も含む)、人材育成が重視 されている。あわせて、CMO 育 成と利用 のあり方 も課 題 である。また、抗 体 ・薬 物 複 合 体 では、安 定 かつ 効 率 的 な 薬 物 結 合 技 術 の 開 発 が さ か ん に進められている。

1.pdf

9 上 記 公 表 資 料 ・論 文 とあわせ、企 業 ヒアリングをもとに まとめた。

10 また、以 下 の国 際 会 議 での議 論 を参 考 にした。

·

Festival of Biologics2018 ( Basel )平 成 30 年 10 月 31 日 ~ 11 月 1 日

·

第 16 回 biosimilar Medicines Conference

(London2018 年 4 月 26~27 日 )

(7)

製 剤 化 技 術 に 関 し て は 、 抗 体 医 薬 品 の 製 剤 化 技 術 はほぼプラットフォーム化 しているといえる が、新 たな抗 体 改 変 により製 剤 化 技 術 開 発 も必 要 となる。さらに、今 後 、DDS など新 たな投 与 形 態 の開 発 も期 待 される。また、バイオシミラーにつ いては、BS 開 発 を行 う企 業 の一 部 が必 ずしもバ イオ医 薬 の製 剤 化 のノウハウを有 しておらず、同

様に CMO/CDMO も経験がないことから、課題と

して残るとされる

11

薬 価 ・市 場 に関 しては、バイオシミラー普 及 に おける高 額 療 養 費 等 の仕 組 みが課 題 として指 摘 されている。また、抗 体 医 薬 品 そのものは、現 時 点 では製 造 コストが高 く、これまでの成 人 用 製 品 について小 児 用 製 剤 を新 たに開 発 する場 合 、市 場規 模が小 さい小児 用 の製 剤の開 発コストがさら に高 額 となってしまい、現 行 の薬 価 算 定 方 式 でも 原価を償却しにくいとの指摘がなされていた。

3. 核酸医薬品

(1) 核酸医薬品の開発ならびに市場

12

核酸 あるいは修飾 型 核 酸が直 鎖状 に結 合した オリゴ核 酸 を薬 効 本 体 とし、タンパク質 発 現 を介 さず直 接 生 体 に作 用 するものもので,化 学 合 成 に よ り 製 造 さ れ る 医 薬 品 。 英 語 で は oligonucleotide therapeutics と 称 さ れ る が 、 nucleic acid drugs , nucleic acid therapeutics,

oligonucleotide therapeutics などの表現も用いら れる。

DNA の一 次 配 列 に直 接 影 響 を与 えず、DNA

11

バイオシミラーに関 する課 題 については、分 担 研 究 報 告 書 「「バイオシミラーに関 わる企 業 の取 り組 みならび に医 療 関 係 者 の意 識 調 査 」を参 照 のこと。

12

以 下 を参 考 にした。

· 井 上 貴 雄 (国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 ):核 酸 医 薬

品 における開 発 の現 状 と安 全 性 評 価.

http://www.nihs.go.jp/mtgt/section2/201704-ISBN9 78-4-86104-650-6.pdf

· 特 許 庁 :平 成 27年 度

特 許 出 願 技 術 動 向 調 査 報 告 書 (概 要 ) 核 酸 医 薬 . 平 成 28年 3月

· 前 記 資 料 に加 え、企 業 ヒアリングによりとりまとめた。

の修 飾 等 により遺 伝 情 報 機 構 に影 響 を与 えて薬 効 を発 現 するものとして、エピジェネティック医 薬 品 というカテゴリーもあり、これらは比 較 的 低 分 子 の医 薬 品 である。核 酸 で構 成 される医 薬 品 として の遺 伝 子 治 療 薬 は、作 用 発 現 にタンパク質 への 翻 訳 を介 する点 ,生 物 学 的 に製 造 される点 にお いて核酸医薬品とは異なる。

10 ~ 30 塩 基 長 ( 分 子 量 は 3,000 ~ 10,000 程 度 )であり、抗 体 医 薬 品 と同 様 に高 い 特 異 性 と有 効 性 が期 待 される一 方 で,化 学 合 成 により製 造 することができる。また、薬 効 本 体 が核 酸 モノマーを連 結 したオリゴ核 酸 で構 成 されると いう共 通 の特 徴 を有 することから、合 成 (製 造 )、

スクリーニングについて、共 通 のプラットフォーム での新薬開発も可能と考えられている。

アンチセンス,siRNA(small interfering RNA),

アプ タマー などがある 。 核 酸 医 薬 品 は生 体 内 に おいて分 解 されやすく、安 定 性 の問 題 が指 摘 さ れ て い た が , 修 飾 核 酸 技 術 や DDS ( Drug delivery system)技 術により、安 定 で有 効 性の高 い候補品が開発されている。

核 酸 医 薬 品 の技 術 的 特 徴 としては、開 発 され ている核酸医薬品の大半は、修飾型モノマー(塩 基 )が用 いられている。塩 基 修 飾 により機 能 性 が 向 上 する一 方で、コスト上 昇 にもつながっていると の課 題 にもなっている。修 飾 モノマーを提 供 でき る企業も限定され、核酸 CDMO がその機能を保 有 しており、「売 り手 市 場 」での高 価 格 の要 因 の 一つとも言える。

大量合成できる企業は Avecia グループ(米国 1kg 以上規模、Girindus を資本傘下、日本では 日 東 電 工 との資 本 提 携 )、Agilent(米 国 、kg 規

模)、 ST-Pharma(韓国、500g 規模)、ジーンデザ

イン(日本、新プラント完成後は kg 規模、味の素 社の液相合成技術 AJIPHASE

®

では 100kg 以上 可 能 )、サノフィ(欧 州 、 500g 規 模 )、 BioSpring

(欧州 kg 規模)にとどまる。現在の製造は固相法

(8)

が主 流 であるが、効 率 的 な大 量 合 成 のために液 相法技術開発も行われている。

なお、核 酸 医 薬 品 製 造 に関 わる委 託 の形 態 と しては、核 酸 医 薬 品 開 発 企 業 がモノマーを合 成 する会 社 に委 託 し、合 成 されたモノマーをオリゴ マー合成企業(CMO)に提供して、合成してもらう というケースや、オリゴマー合 成 企 業 がモノマーも 合 成 する あ るいは直 接 モノマーを 入 手 して 合 成 するなど、いくつかの形態がありうる。

その他 、コストに影 響を与える要 因 として、現時 点では、市場規模が小さく CDMO 数も少ないた め、市 場 競 争 が少 ない。また高 度 な技 術 が求 め られる一 方 で、収 率 が低 く、核 酸 製 剤 の低 コスト 化 を困 難 としている。治 療 対 象 となる遺 伝 子 に対 する核 酸 医 薬 候 補 物 質 の最 適 化 のためにスクリ ーニングにおいて様 々な修 飾 型 核 酸 の試 作 品 を 合 成 する必 要 があり、探 索 研 究 リードタイムとコス トに影響を与えている。

(2) 核酸医薬品の分類(スライド 12)

核 酸 医 薬 品 は、細 胞 の内 側 で作 用 するか,外 側で作用するかにより,大きく 2 つに分類すること が で き る 。 細 胞 内 で 作 用 す る 拡 散 医 薬 品 は 、 RNA を標的とするアンチセンスや siRNA、タンパ ク質 (転 写 因 子 )と結 合 して転 写 段 階 を抑 制 する デコイなどに分類される。一方、·細胞 外で作用す るものは、細 胞 外 タンパク質 と結 合 して機 能 を阻 害 す る ア プ タ マ ー な ど が あ り 、 Toll 様 受 容 体 9

( TLR9 ) に 作 用 し て 自 然 免 疫 を 活 性 化 さ せ る

「CpG オリゴ(CpG oligodeoxynucleotides)」が開 発されている。

細 胞 内 で作 用 するものは、細 胞 内 (細 胞 質 )に 移 行 させるための工 夫 が必 要 (分 子 改 変 、オリゴ 核酸末端修飾、DDS 技術など)であり、いずれに しても、投 与 経 路 や標 的 組 織 にも依 存 しており,

硝 子 体 内 注 射 や肺 への吸 入 など局 所 的 に投 与 する場合にはキャリアを必要としない場合もある。

わが国 で承 認 、上 市 されている核 酸 医 薬 品 事

例 と し て 、 Macugen 、 Spinraza に つ い て ス ラ イ ド 13 に 示 し た 。 海 外 で は 、 こ れ ら の ほ か に 、 Vitravene ( 一 般 名 fomivirsen 、 ア ン チ セ ン ス ) 、 Kynamro ( mipomersen 、 ア ン チ セ ン ス ) 、 Exondys 51 (eteplirsen 、アンチセンス)が発 売 さ れている。

(3) 核酸医薬品の開発動向

現 在 の開 発 動 向 として、井 上 によれば(シード プランニング資 料 をもとにした解 説 )、アンチセン ス医 薬 では、遺 伝 性 ・希 少 疾 患 、がん、感 染 症 、 循環器などの開発が多く行われており、siRNA 医 薬 では、がん、遺 伝 性 ・希 少 疾 患 、眼 疾 患 などの 開発が多いとされている。

一 方 、特 許 庁 が平 成 27年 度 特 許 出 願 技 術 動 向 調 査 報 告 書 において、核 酸 医 薬 品 の開 発 動 向 に つ い て 取 り ま と め ら れ て い る 。 本 集 計 は 2015 年 9 月のものであるが、企業国籍別、企業 種 別 (大 手 製 薬 企 業 /ベンチャーなどの別 )、疾 患領域別など、詳細な調査が行われている。

企 業 国 籍 別 では、2015 年 10 月 末 時 点 で、

世界で 43 社により 141 件の臨床試験が行われ ており、企業国籍別では、米国籍企業が 24 社・

99 件で、企業数の約 6 割、臨床試験数で約 7 割 を占 めている。続 いて欧 州 国 籍 企 業 が 8 社 ・ 21 件、日本国籍企業が 4 社・7 件であり、相対 的 に、日 本 企 業 の核 酸 医 薬 品 開 発 が少 ないとい える。また、開発 43 企業のほとんどがベンチャー 企業であり、大手企業は、グローバル企業 4 社で あるが、これらもすべてベンチャー企 業 からの導 入 で あ り 、 核 酸 医 薬 品 開 発 も 、 ベ ン チ ャ ー 企 業

(特 許 庁 報 告 書 では米 国 発 )が中 心 となっている ことが示されている。

開発領域(疾病分野別)では、2015 年 10 月

末時点で、「がん」が 43 件で全体の約 3 割を占

め、「神 経 ・筋 疾 患 」が 16 件 、「内 分 泌 ・代 謝 系

疾 患 」が 14 件 、「感 染 症 」と「皮 膚 疾 患 」がそれ

ぞれ 12 件 、「眼 疾 患 」が 11 件 でそれに次 いで

(9)

いる。それ以 外 にも様 々な疾 患 分 野 で臨 床 開 発 が始 まっており、核 酸 医 薬 の開 発 が行われている 疾 患 分 野 は拡 大 しつつあるとされる。また、種 類 別 では、アンチセンスが 68 件 で約 半 数 を占 め、

siRNA が 47 件でそれに続いている(スライド 14、

15)。

また、日経バイオテクでは、「世界の創薬パイプ ライン」において、国 内 外 製 薬 企 業 、ベンチャー 企業を対 象 に臨床 開発 中のプロジェクトについて 分 析 している。本 資 料 の一 部 の引 用 許 諾 を得 て、

国内企業、海外企業の核酸医薬品の 2018 年ま での開発領域(疾病分野別)をスライド 16 に示し た。この資料 でも、最も多い領域はがんであるが、

次 は循 環 器 官 用 薬 が続 いている。また、国 内 外 で開発領域の違いもあり、海外企業は抗がん剤、

循 環 器 官 用 薬 が多 いのに対 し、国 内 企 業 では、

筋 骨 格 系 用 薬 、感 覚 器 官 用 薬 が多 くなっている。

スライド 17 にわが国における主な核酸医薬品の 開発プロジェクトを示した。

核酸 医 薬の市場 規 模としては、市 場 調査・コン サルタント会社のシードプランニングが 2011 年に まとめた調査報告書によると、2010 年に 20 億円 だ っ た 核 酸 医 薬 の 世 界 市 場 は 、 2020 年 に は 5000 億円に達する見通し。同社は、2020 年以降 にはブロックバスターになる核 酸 医 薬 も出 てくると しており、抗 体 医 薬 品 と同 じように市 場 が急 速 に 拡大する可能性も高いと推測している。

(4) 核酸医薬品の受託製造企業

上 述 のようにわが国 では、核 酸 医 薬 原 料 や核 酸 医薬品製造の CMO/CDMO も限られている。その うちの 3 社について概要を示した。

① 株式会社 ジーンデザイン

13

平成 12 年 12 月設立。少量多品種に優れる固 相 合 成 法 による特 殊 修 飾 、人 工 核 酸 を使 ったオ リゴ核 酸 の製 造 開 発 を行 ってきた。 2016 年 、味 の素 株 式 会 社 の連 結 子 会 社 となり「 AJIPHASE

®

」 技 術 による液 相 合 成 法 による核 酸 医 薬 の大 量 生 産の開発を進めている。

【営業品目】

· DNA / RNA / 人 工 核 酸 BNA ( Bridged Nucleic Acid)・LNA(Locked Nucleic Acid)

//リボン型デコイ核酸/

· 遺 伝 子 関 連 分 野 /蛋 白 質 関 連 分 野 /生 化 学関連分野 研究支援事業/等

【研究開発】

· 核 酸 医 薬 品 の高 機 能 化 を目 指 し、 PEG、ペ プチド、脂 質 などのオリゴヌクレオチドの付 加 反応開発

· オリゴヌクレオチドのグラムスケール製 造 およ び GMP 製造に向けたプロセス開発、並びに プロセスバリデーション

· 機 能 性 核 酸 モノマーおよびオリゴヌクレオチ ド合成用担体の製造開発

· 長鎖 RNA 合成などこれまで合成が困難であ ったものの製法開発

· その他、核酸医薬品製造に関する開発

② 住友化学株式会社・株式会社ボナック

14

【事業内容】

· 原薬製造ビジネス: 2013 年 11 月、住友化 学 株 式 会 社 (以 下 、「住 友 化 学 」)にボナック 核 酸 及 び独 自 の核 酸 原 料 の製 造 販 売 権 を ライセンスアウト。

13

株 式 会 社 ジーンデザイン

https://www.genedesign.jp/company/

14

住 友 化 学 株 式 会 社 ・株 式 会 社 ボナック

https://www.sumitomo-chem.co.jp/oligonucleotide/j p/

https://www.sumitomo-chem.co.jp/newsreleases/doc

s/20131122.pdf

(10)

· 医 薬 開 発 ビジネス:「ボナック核 酸 」をプラット フォーム技術とし核酸医薬品の創出を行う。

· ボナック核酸とは:ボナックが創出した新規一 本 鎖 核 酸 の総 称 。天 然 型 の核 酸で構 成 され、

特 徴 的 な構 造 から分 解 されにくく、安 定 的 に 体 内 の必 要 とする箇 所 へ届 けることができ、

安 全 性 が高 いと考 えられる。内 部 の配 列 設 計を工夫することにより、siRNA 及び miRNA と同様の効果を発揮する。

· その他、次のような特徴 を有する。1) 一本鎖 核酸であり鎖長は 50 塩基以上から構成され ること、2) セルフアニーリングにより、ユニー クな 二 次 構 造 を と り、 ア ニー リン グ 工 程 が不 要なこと、3) 核酸分子のみならず、独自のア ミノ酸アミダイト(核酸原料)とのハイブリッド分 子(PnkRNA)であること、4) 従 来 法に比 べ、

高 い安 定 性 を保 有 し、免 疫 応 答 を惹 起 しな い。

③ 日東電工アビシア

15

日 東 電 工 は、米 ブリストル・マイヤーズスクイブ と提 携 。日 東 電 工 がアビシアバイオテクノロジー 社を 2011 年 2 月に買収して新たに設立した核酸 医 薬 の受 託 合 成 製 造 会 社 。米 国 マサチューセッ ツ州 、ミルフォード と、オハイオ州 、シンシナティ に所 在 し、前 臨 床 段 階 から商 業 的 施 設 までのス テージにおいて、アンチセンス、siRNA、アプタマ ー、免 疫 賦 活 剤 、 miRNA およびデコイ分 子 など の 核 酸 医 薬 原 薬 を 、 FDA の 検 査 を ク リ ア し た cGMP 施 設 にて製 造 するほか、分 析 方 法 開 発 、 プロセスバリデーション、安 定 性 試 験 、品 質 管 理 及び薬事面サポートのサービスの提供を行う。

日東電工自身も、札幌医科大学と共同で肝硬 変および肝線維症の核酸医薬品 ND-L02-s0201 の開発を行っている。

15

日 東 電 工 アビシア Nitto Denko Avecia Inc.

https://www.nitto.com/jp/ja/products/group/medical/

002/

(5) 核酸医薬品開発における課題

16

先行研 究・調査ならびに企業ヒアリングをもとに、

核酸医薬品の開発等における課題をスライド 18 にまとめた。

探 索 研 究 に関 する課 題 としては、遺 伝 子 等 に 対 する機 能 の向 上 が基 本 的 な課 題 であり、具 体 的 には 、 結 合 特 異 性 ・ 親 和 性 の 向 上 、核 酸 修 飾 や 長 鎖 な どの新 規 の 核 酸 医 薬 開 発 、 核 酸 構 造 への機 能 性 グループの付 加 等 による機 能 の向 上が検討されている。

開 発 ・評 価 系 、研 究 における課 題 としては、毒 性 の低 下 、オフターゲット効 果 抑 制 、免 疫 原 性 抑 制 が、相 対 的 に核 酸 医 薬 品 特 有 の課 題 であり、

その他 、動 物 モデルからヒトへの外 挿 や、多 くが 希少疾患治 療薬であるため新たな臨床評価系 の 開 発 などが、後 述 するペプチド医 薬 品 も含 めた、

新規モダリティの課題といえる。

製 造 技 術 、品 質 管 理 ・品 質 保 証 に関 しては、

核酸原料供給が限られていることによる原材料費 の高 さ、固 相 法 での合 成 での収 率 などから、コス ト低 下 、収 率 向 上 が課 題 である。また、純 度 向 上 、 キラリティーの制 御 等 、クロマトグラフィー・膜 分 離 等 精 製 に関 わる技 術 改 良 も進 められている。さら に、品 質 に関 するガイドラインが未 確 立 (ICH ガ イドライン Q3A(R2)、Q3B(R2)、Q6A、M7 など核 酸 を対 象 外 とする)であることから、製 造 に関 する ガイドライン策定の議論も求められる。

製 剤 技 術 に 関 し て は 、 細 胞 内 導 入 効 率 の 向 上 、目 的 組 織 への送 達 (ターゲッティング)、体 内 安 定 性 の向 上 、薬 物 動 態 の改 善 (血 中 滞 留 性

16

上 記 資 料 のほか、以 下 の資 料 を参 考 に取 りまとめた。

·

ICH S6 対 応 研 究 班 :核 酸 医 薬 の非 臨 床 安 全 性 を 考 える. 医 薬 品 医 療 機 器 レギュラトリーサイエンス PMDRS 46(5):286- 289,2015

· 厚 労 省 医 薬 品 審 査 管 理 課 長 「核 酸 医 薬 品 の品 質 の

担 保 と評 価 において考 慮 すべき事 項 について」(薬 生 薬 審 発 0927 第 3号

· 企 業 ヒアリング結 果 に基 づく。

(11)

等)が検討されている。

ロジスティクス等 については、核 酸 医 薬 品 に限 らず、少 数 例 が対 象 のモダリティで共 通 の課 題 で あるが、少 数 患 者のためのロジスティクスモデルを 構築する必要があるとされる。また、コスト(製造技 術 等 )にも関 連 するが、修 飾 型 塩 基 モノマーの合 成 と供 給 企 業 が限 定 されており、今 後 、コストや 安 定 供 給 に か か わ る 課 題 と し て 、 わ が 国 で の CMO、原材 料供 給企 業 の育成 が課 題と考 えられ る。

薬 価 ・ 市 場 に 関 わ る 課 題 とし ては 、 高 コ ス トに 対 応 した薬 価 算 定 、イノベーション評 価 のあり方 の検討が求められる。

4. ペプチド医薬品

(1) ペプチド医薬品の開発ならびに市場

17

ペプチドとは、一 般 には、アミノ酸 が 2 個 以 上 結 合 したものを指 す。ペプチドとタンパク質 との間 に明 確 な境 界 はなく、ペプチド医 薬 品 に明 確 な 定義があるわけではないが、アミノ酸 2~50 残基 程 度 結 合 した分 子 をペプチド医 薬 品 と呼 んでい る。インスリンは 51 残基のアミノ酸(A 鎖 21 残基、

B 鎖 30 残基)からなっており、インスリンより残基 数が小さいものが基準となる。

現 在 、 医 薬 品 と し て 開 発 が 試 み ら れ て い る 既

17

以 下 を参 考 。

· NEDO

記 事 創 薬 に新 たな道 を拓 いたペプチド探 索 システム

http://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201804p eptide/index.html

· 舛 屋 圭 一 :特 殊 環 状 ペプチドがもたらす創 薬 研 究

開 発 の新 潮 流 日 薬 理 誌 148:322-328,2016 https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/148/6/148_

322/_pdf

· ひむか AM ファーマ株 式 会 社 - himuka am pharma corp.https://www.himuka-am.com/public/indexj.ht ml

· Kitamura K, Kangawa K, Kawamoto M, et al.

Adrenomedullin: a novel hypotensive peptide isolated from human pheochromocytoma. Biochem Biophys Res Commun. 1993; 192: 553-60.

知 のペプチドには、 C 型 ナトリウム利 尿 ペプチド

(CNP)、アドレノメデュリン( AM)、グレリン、ウイル ムス腫 瘍 遺 伝 子 ( WT1)などがある。CNP は狭 心 症や心筋 梗 塞治療の PTCA 後の再狭窄 予防 、 AM は炎 症 性 腸 疾 患 や急 性 心 筋 梗 塞 、グレリン は心 機 能 改 善 や 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 ( COPD ) 、 WT1 は各種癌への治療応用が試みられている。

これらは、体内に存在するペプチドホルモンのアミ ノ酸 配 列 を模 倣 した薬 剤 であり、天 然 型 アミノ酸 で構成され、特殊な修飾は少ないもので、第一世 代ペプチド医薬品といえる。

ペプチド医 薬 品 は大 きく、以 下 のように大 別 で きる。

· 天 然 型 ペプチド医 薬 品 :ホルモン、サイトカイ ンなど、インスリンでは、アミノ酸 配 列 を一 部 改 変 したり、DDS 製 剤 (経 肺 吸 収 や経 口 吸 収 可 能 )としたものも含 む。C 型 ナトリウム利 尿ペプチド(CNP、狭心症、PTCA 後再狭窄 予 防 )、アドレノメデュリン(AM、炎 症 性 腸 疾 患 、急 性 心 筋 梗 塞)、グレリン(心 機 能 改 善 、 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 ) 、 ウ イ ル ム ス 腫 瘍 遺 伝 子(WT1)などが開発中。

· 非 天 然 型 (特 殊 )ペプチド:非 天 然 のアミノ酸 を含 み、構 造 上 も天 然 型 と異 なるペプチド医 薬品。

· ペプチド修 飾 医 薬 品 :ペプチドに脂 肪 酸 、ポ リエチレングリコール(PEG)、薬 物 などを結 合 したペプチド医薬品(PDA) 。

· ペプチドワクチン: 標 的 となるタンパク質 ( 抗 原)に対して免疫誘導するペプチド。

· ジェネリックペプチド医 薬 品 : 特 許 切 れのペ プチド医 薬 品 (国 内 ではジェネリックとして扱 われる)。

ペペプチド医 薬 品 の課 題 としては、細 胞 膜 透

過 性 の問 題 、生 体 内 安 定 性 の低 さなどが指 摘 さ

れてきた。こ れに対 して 、生 体 内 タ ンパク質 を 構

成する天然型の L 型アミノ酸だけではなく、特殊

アミノ酸と呼ばれる D-アミノ酸や N-メチルアミノ酸

(12)

等 を含 んだものは特 殊 ペプチド医 薬 品 、大 環 状 骨 格 を有 するペプチドは特 殊 環 状 ペプチド医 薬 品 とよばれる。これらは、いずれも、非 タンパク質 性 アミノ酸 を含 み,N 末 端 の脂 肪 鎖 修 飾 や大 環 状 骨 格 などといった特 殊 な骨 格 を有 しており、シ クロスポリン A やポリミキシン B など、天然由来ペ プチドも上市 されている。こうした構造 上の特 徴に より、ペプチダーゼ分解 酵素に対 して抵抗性を示 し、安定性が増す。環状構造や N-メチル化構造 による脂 溶 性 の増 大 は 膜 透 過 性 の 向 上 や結 合 能の向上がもたらされる。

(2)ペプチド医薬品の技術的特徴

ペプチド医 薬 品 は、バイオテクノロジーでも製 造 できるが、完 全 化 学 合 成 での原 薬 製 造 が可 能 であり、製 造 方 法 開 発 や製 造 ライン維 持 ・管 理 コ ストが相対的に低くなる。アミノ酸残基数が 30 以 下 であっても遺 伝 子 組 換 えで製 造 している製 品

(例 えば、カルペリチド(ヒト心 房 性 ナトリウム利 尿 ペプチド、28 アミノ酸))などもある。また、カルシト ニン(32 アミノ酸 )は化 学 合 成 、副 甲 状 腺 ホルモ ン製 剤 テリパラチド(38 アミノ酸 )は化 学 合 成 とバ イオ製 剤 の両 方 の製 剤 が発 売 されている。「リュ ープロレリン」は、LH/RH(黄体形 成 ホルモン放 出 ホルモン)を一 部 構 造 変 換 して合 成 したペプチド 医薬品である。インスリンは 51 残基のアミノ酸(A 鎖 21 残基、B 鎖 30 残基)からなっており、構造

(ジスルフィド結合)上、遺 伝子 組換 えで製造 する 方 が安 価 でもあることから、インスリンはペプチド 医 薬 品 として扱 わないことが一 般 的 である。現 在 開 発 が進 められているペプチド医 薬 品 の製 造 は、

化学合成が 93%の比率を占めているとされる。

ペプチド医 薬 品 は、低 分 子 が標 的 とすることが できないような分 子 についても効 果 を発 揮 するこ とが期 待 されているが、さらにバイオテクノロジー を用 いて生 体 に存 在 しないペプチドを新 薬 として 開 発 する探 索 技 術 も確 立 しつつある。既 存 ペプ チド医 薬 品 は生 体 由 来 成 分 、あるいは誘 導 体 が 中 心 であったが、今 後 、全 く新 規 のペプチド医 薬

品の登場も期待されている。さらに、ペプチドに対 して化 学 的 修 飾 を行 い、ペプチド医 薬 品 としての 有 効 性 をさらに高 めたり、安 定 性 の向 上 などを目 指すペプチド医薬品の開発も検討されている。

ペプチド創 薬 自 体 は古 くから取 り組 みがあるも のの、細 胞 膜透 過 性の問題 や、生 体内 安 定性 の 低 さ(体 内 で分 解 を受 けやすい)、十 分 な吸 収 量 が得られないなどが課題であった。

また、ペプチド医 薬 品 をスクリーニングするため のライブラリがないことや、そもそも、未知のペプチ ドを発見することの困 難さも指摘されている。特 殊 ペプチド医 薬 品 開 発 においては、未 知 のペプチ ドを発 見 することの困 難 さがあるとされ、病 態 カス ケードとそれに関 係 するタンパク質 の研 究 が必 要 である。

従 来 の ペ プ チ ド 合 成 ( 固 相 法 / 液 相 法 な ど の

「化 学 合 成 法 」)は、非 タンパク質 性 アミノ酸 をペ プチドに自 由 に組 み込 めるが、製 造 コスト・スピー ドの問 題 がある。一 方 、生 化 学 的 製 造 方 法 (リボ ソームを用いた翻訳合成 )は、正確で、スピードが 速 いが、非 タンパク質 性 アミノ酸 以 外 は組 み込 め ないとの課題がある。

国内 CMO もあるが、グローバルには、Bachem AG (スイス)、Polypeptide グループ(米)2 社で世 界シェアの 7 割を占める。特殊アミノ酸原料の供 給も上記 2 社に限定される。探索段階(小スケー ル製 造 )については、ペプチド合 成 機 により少 量 製造が可能である。

2019 年 より、ペプチドリームからの技 術 移 転 、

株 式 会 社 産 業 革 新 機 構 からの支 援 によりペプチ

スター株 式 会 社 が設 立 され、特 殊 ペプチド原 薬

の研究開発、製造及び販売を手がけている。

(13)

(3) ペプチド医薬品の市場規模

18

ペプチド医 薬 品 の総 世 界 市 場 (ペプチド医 薬 品の先発品 ・後発品、インスリンの合計)について、

2016 年度は 420 億米ドル(4 兆 8,000 億円)を超 えるとされる。

(4) ペプチド医薬品開発事例(1) 天然型ペプチドアドレノメデュリン(AM)と ひむか AM ファーマ

19

【企業概要】

· 2017 年 2 月宮崎大学清武キャンパス内に設 立 されたペプチド医 薬 品 開 発 のベンチャー企 業 。宮 崎 大 学 医 学 部 (旧 ・宮 崎 医 科 大 学 )で 発 見 され、基 礎 研 究 ・臨 床 研 究 が進 められて い る 生 理 活 性 ペ プ チ ド ; ア ド レ ノ メ デ ュ リ ン

(Adrenomedullin)の改 良 による創 薬 シーズの 研究開発を行っている。

設立: 2017 年 2 月。同社は、宮崎大学の研 究 成 果 に基 づく「宮 崎 大 学 発 ベンチャー企 業 」 として 5 例目として認定されている。

· 本社所在地: 宮崎市清武町木原 5200 番地 宮崎大学清武キャンパス内

· 代表取締役: 新城 裕司

· 事 業 概 要 : 改 良 型 アドレノメデュリンの新 規 創薬シーズの研究開発

· 連 携 機関 : 国 立 大学 法 人 宮 崎大 学 (宮 崎大 学発ベンチャー企業 認定)

【アドレノメデュリン(AM)について】

ア ド レ ノ メ デ ュ リ ン ( adrenomedullin AM) は , 1993 年に宮崎医科大学(当時)の北村教授、寒 川 国 立 循 環 器 病 センター(当 時 )研 究 所 長 らがヒ ト褐 色 細 胞 腫 組 織 から発 見 した生 理 活 性 ペプチ ド。ヒト AM は,52 個のアミノ酸残基で構成され,

分 子 内 に 6 個 のアミノ酸 残 基 からなるリング構

18

BB Bridge2018 年 版 世 界 のペプチド医 薬 品 開 発 の 方 向 性 とビジネス展 望

https://www.bb-bridge.co.jp/news/2381/

19

ひむか AM ファーマ

https://www.himuka-am.com/public/indexj.html

造と C 末端のアミド構造 を有する。

AM は、血 管 拡 張 による血 圧 低 下 作 用 を有 す るほか、臓 器 保 護 作 用 ,組 織 再 生 作 用 ,抗 炎 症 作用等を有する。

(5) ペプチド医薬品開発事例(2)—特殊ペプチド ランダムスクリーニング技 術 とペプチドリーム、

ペプチスター

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大 規 模 ライブラリとランダムスクリーング技 術 を 組 合 せて新 規 ペプチド(デノボペプチド)の開 発 が進 められている。標 的 タンパク質 に極 めて強 い 結 合 能 を持 ち、アゴニスト、アンタゴニスト活 性 を 持つペプチドを創 出することができる。国 内では、

ペ プ チ ド リ ー ム 社 の PDPS (Peptide Discovery

Platform System) が進んでおり、非天然型ペプチ

ドを極 めて効 率 的 に創 出 できる。他 にも Extreme Diversity Platform(Ra Pharmaceuticals) 、cDNA

Display( メスキュージェナシス)などがある。

【PDPS について】

フレキシザイム(人工 RNA 触媒、非天然型アミ ノ酸も組み込むことができる)と FIT system(カスタ ムメイド無 細 胞 翻 訳 系 、無 細 胞 条 件 でペプチド・

ライブラリを構 築 できる)、 RAPID display system

(特 殊 環 状 ペプチド・ライブラリの構 築 、特 定 の標 的に対する高活性ペプチドの同定を行う実験 系)

を組合せたもの。

ペプドリームは、NEDO プロジェクト発の東大発 ベ ン チ ャ ー で あ り 、 Peptide Discovery Platform

System を基盤技術として平成 18 年 7 月設立さ

れた。基 盤 技 術は、東 京 大 学 の菅 裕 明 教 授 が開 発 した「フレキシザイム技 術 」。20 種 類 以 外 の特 殊アミノ酸と tRNA の結合を翻訳合成によって実 現 し、これまでにないペプチド合 成 を可 能 とする。

さらに、フレキシザイム技 術 をもとに、数 千 億 の特 殊 ペプチド・ライブラリを構 築 しており、その中 から

20

ペプチドリーム、ペプチスター https://www.peptidream.com/

https://peptistarinc.com/com

(14)

標 的 分 子 の特 徴 に応 じて、高 効 率 ・高 精 度 に最 適 なペプチドを迅 速 にスクリーニングする方 法 も 確立している。

多様 性が極 めて高い特 殊環 状ペプチドを多 数 合 成 し、高 速 で評 価 を可 能 にすることで、開 発 可 能 な特 殊 ペプチドへの最 適 化 に加 え、ファーマコ フォアを使 った低 分 子 創 薬 への展 開 及 びペプチ ド薬 物 複 合 体 への展 開 などの技 術 開 発 を行 う。

「特殊ペプチド」と呼ばれるタンパク質 の一種 の量 産 技 術 に強 みを持 ち、多 様 な特 殊 ペプチドの中 から病 気 に作 用 するものを探 し、新 薬 候 補 となる ペ プ チ ド を提 携 先 に 提 供 す る ビ ジネ ス モ デルが 基 本であるが、自 社でも開 発を行っている。ブリス トルと共 同 開 発 中 の PD‐1、PD‐L1を標 的 とした ペプチド医薬を開発しているとされる。

一 方 、ペプチスターは、高 品 質 で価 格 競 争 力 のある原 薬 供 給 目 指 す 、ペプチド原 薬 開 発 ・ 製 造 受 託 企 業 (CDMO) である。non-GMP グレード から cGMP グレードまで、創薬ステージから商用 ステージまで幅 広いペプチド原薬 の製 造を行い、

一般ペプチド、特殊ペプチドの製造を行う。

(6) ペプチド医薬品開発における課題

先行研 究・調査ならびに企業ヒアリングをもとに、

ペプチド医 薬品の開発 等における課題をスライド 19 にまとめた。探 索 研 究 においては、天 然 型 ペ プチドでは、新 たな医 薬 品 としての可 能 性 のある 生 体 内 ペプチドの発 見 が困 難 となっているとされ る。一 方 で、特 殊 ペプチド医 薬 の特 徴 ・ポテンシ ャ ル が ま だ 十 分 に 理 解 で き て い る わ け で は な い

(オープンイノベーションとメディシナルケミストリー の融 合 が重 要 )。また、特 に非 天 然 型 ペプチドで は、細 胞 内 /外 の標 的 タンパク質 に効 率 的 に搬 送する仕 組 みの開 発が重要とされている(細胞内 に届 けることも理 論 的 には可 能 であるが、効 率 的 に細 胞 内 に届 けることと細 胞 外 に排 泄 されないよ うな仕組みも必要)。

開 発 ・評 価 系 研 究 では、核 酸 医 薬 品 等 と同 様

に、動 物 モデルからヒトへ外 挿 できる探 索 ・ 評 価 系 モデルの開 発 が重 視 されているとともに、アナ フィラキシーのリスクも指摘される。

製 造 技 術 、品 質 管 理 ・品 質 保 証 の面 では、化 学 合 成 に お け る コ ス ト 低 下 が 重 要 で あ り 、

CMO/CDMO については、海 外 に依 存しており、

国 内 製 造 技 術 の進 歩 が望 まれている(少 量 合 成 は技 術 的 に可 能 であるが、治 験 薬 や商 用 生 産 に ついては天然型でも国内 CMO での対応には限 界がある。また、 原 料 ア ミ ノ 酸 も 、 か な り が 海 外 に依 存 している)。その他 、目 的 とするペプチドの カラム精 製 の効 率 性 、非 天 然 アミノ酸 、ペプチド の安全性評価スタンダードが未確立など、が課題 とされる。

製 剤 技 術 に つ い て は 、 現 行 は 非 経 口 投 与 の みであるため、より簡 便 な投 与 (経 口 、経 肺 など)

経路の開発が望まれている。

5. 遺伝子治療、細胞治療、再生医療

(1) 遺 伝 子 治 療 、細 胞 治 療 、再 生 医 療 の分 類 (スライド 20)

21

遺伝子医薬とは、広義には、遺伝子をターゲット にした医 薬 品 であり、近 年 のゲノム解 析 に関 連 す る研 究 、技 術 開 発 の進 展 によって遺 伝 子 治 療 製

21

以 下 を参 考 とした。

· 国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 遺 伝 子 医 薬 部

http://www.nihs.go.jp/mtgt/

· 日 本 輸 血 ・細 胞 治 療 学 会

http://yuketsu.jstmct.or.jp/general/cell_therapy/

· FDA

の定 義 、国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 再 生 ・ 細 胞 医 療 製 品 部

http://www.nihs.go.jp/gaiyou/saisei-saibou-iryosei hinbu.html

· 内 田 恵 理 子 ( 国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 遺 伝

子 細 胞 医 薬 部 ):遺 伝 子 治 療 の動 向 と課 題 ヒューマ ン サ イ エ ン ス 振 興 財 団 規 制 基 準 委 員 会 勉 強 会 2011.6.22

· 多 能 性 幹 細 胞 安 全 情 報 サ イ ト

http://www.nihs.go.jp/cbtp/sispsc/html/saisei.html

· 経 済 産 業 省 :再 生 医 療 の実 用 化 ・産 業 化 に関 する

研 究 会 」最 終 報 告 書

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002v

591-att/2r9852000002v5dn.pdf

(15)

品 、核 酸 医 薬 品 、分 子 標 的 治 療 薬 などが含 まれ る。これらの遺 伝 子 医 薬 の登 場 により、既 存 の治 療法では治療困難であった難病や疾患を治療で きる可 能 性 が大 きく 広 がってい る。 また、 病 態 の 把 握 や治 療 効 果 を判 定 するための診 断 技 術 ・診 断 薬 も医 療 現 場 で重 要 な役 割 を 果 たしてお り、

個 別 化 医 療 (いわゆるオーダーメイド医 療 )を提 供 するための遺 伝 子 診 断 技 術 など、診 断 薬 も広 い意味では遺伝子医薬に含まれる。

遺 伝 子 治 療 とは、疾 病 の治 療 を目 的 として遺 伝 子 又 は 遺 伝 子 を 導 入 し た 細 胞 を 人 の 体 内 に 投 与 することとされる(遺 伝 子 治 療 臨 床 研 究 指 針 )

22

。現 時 点 では、正 常 遺 伝 子 を補 充 する治 療 法 であり、次 世 代 の遺 伝 子 治 療 としてゲノム編 集 も 研 究 が進 んでいる。遺 伝 子 治 療 は、タンパク質 の 発 現 プロセスに介 入 し、タンパク質 の発 現 量 / 機 能 に介 入 ができ、多 くの場 合 、半 永 続 的 な効 果 持 続 が期 待 できるとされる。遺 伝 子 治 療 は、極 め て有 効 率 が高 いことが期 待 されている半 面 、サイ トカイン放 出 症 候 群 など新 たな安 全 性 確 保 のた めの制度設計も必要となる。

遺 伝 子 治 療 の標 的 疾 患 としては、単 一 遺 伝 子 異常による遺伝病(血友病 B など、但し難病以外 は希 少 疾 患 が中 心 )、がん遺 伝 子 治 療 、生 活 習 慣 病(コストを考 えると重 症 なものに限 られる)など が考えられている。

遺 伝 子 治 療 臨 床 研 究 指 針 では、重 篤 な遺 伝 性 疾 患 、がんその他 の生 命 を脅 かす疾 患 又 は身 体 の機 能 を著 しく損 なう疾 患 とされ、具 体 的 には、

以下のような疾患を対象に開発が行われている。

• 先 天 性 遺 伝 子 疾 患 ( 単 一 遺 伝 子 疾 患 ) : ADA 欠損症、X-SCID、 CGD、βサラセミア、

Leber 病、ALD(副腎白質ジストロフィー)など

• がん:肺 がん、腎 がん、前 立 腺 がん、食 道 が

22 厚 生 労 働 省 :ヒトゲノム・遺 伝 子 解 析 研 究 に関 する倫 理 指 針 、 遺 伝 子 治 療 等 臨 床 研 究 に 関 す る 指 針

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/ho kabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/index.html

ん、脳腫瘍、黒色腫など

• 末梢性血管疾患:閉塞性動脈硬化症など

• 虚血性心疾患:狭心症、心筋梗塞など

• 神 経 変 性 疾 患 :アルツハイマー病 、パーキン ソン病、ALS など

• ウイルス感 染 症 :HIV 、 B 型 肝 炎 ウイルス、C 型肝炎ウイルスなど

• 眼疾患:加齢黄斑変性など

• 生 活 習 慣 病 、慢 性 疾 患 :糖 尿 病 、関 節 リウマ チなど

遺 伝 子 治 療 に用 いられるベクターとしては、大 きく、ウイルスベクターと非 ウイルスベクターとに分 けられ、後 者 の代 表 がプラスミドである。ウイルス ベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、

アデノウイルス、アデノ随 伴 ウイルス( AAV)、ヘル ペスウイルス、センダイウイルスが用 いられ、分 化 後 の細 胞 に遺 伝 子 導 入 可 能 、長 期 発 現 が期 待 できる、免 疫 原 性 が比 較 的 弱 い等 の特 徴 から、

AAV ベクターを用 いた研 究 開 発 が多 く行 われて いる。

一 方 、 近 年 の再 生 医 療 や幹 細 胞 に 関 する 研 究 の 急 速 な 進 展 に よ っ て 、 人 工 多 能 性 幹 細 胞

(iPS 細 胞)、胚 性 幹 細 胞(ES 細 胞 )、培 養 体 性 幹 細 胞 などの細 胞 を用 いた再 生 医 療 ・細 胞 治 療 の開 発 も行 われている。細 胞 治 療 には、比 較 的 古 くから実 施 されている、自 身 の細 胞 または他 人 の 細 胞 を そ の ま ま 投 与 す る 「 輸 血 ・ 幹 細 胞 移 植

(治 療 )」や、血 液 中 の白 血 球 、赤 血 球 、血 小 板 を作 り出 す造 血 幹 細 胞 を含 む血 液 を投 与 し、造 血 幹 細 胞 から白 血 球 、赤 血 球 、血 小 板 を作 らせ、

その過程で疾患を治療する「造血幹細胞移植」も 細胞治療に含まれるとされる。

また、広 い意 味 での再 生 医 療 には、さらにスキ

ャホールド(足 場 材 )と呼 ばれるコラーゲンの三 次

構 造 物 や脱 細 胞 化 したヒトの器 官 などを手 術 等

で体 内 に設 置 し、体 内 の幹 細 胞 (外 部 からの幹

細胞投与も含む)によって組織再生を目指すもの

も含まれる。

参照

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