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考壬雲圭達三圭雪圭雲室

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(1)

即興表現のための教材づくり

渡 辺 学 ・ 久 枝 隆 子

TheMakingofTeachingMaterialforlnprovisation

ManabuWATANABE andTakakoHIsAGAE.

資 料

(ReceivedOctober2,1989)

は じ め に

これまで「ミュージカル制作による教材開発の試 み」(2)(3)において'),学級でのミニオペレッタによる 創造的試みの諸相について,熊本県内各地における スタッフの実践例に基づいて述べ,さらに,オルフ・

インスティテユートでの現時点における方法論のい くつかを紹介し,新しい教材を作り出す視点を「動 き」「即興的創作」「民族音楽」「楽器づくり」「ミュ ージカル作り」「環境音」として理念的に,また,具 体的な教材として世に問うてきた.

いずれも,こどもと大人がともに 楽しめる,,教 材であり,音を 遊ぶ ことを通して,いわゆる基 礎・基本をも身に付けることを意図してきた−と 振り返ってみることもできるのであるが,われわれ は何よりもまず,こどもの表出意欲に即し,平易に して普遍的なそれを実現してきたと自負はしている.

つまり,教師の理想へとこどもを引き上げることの みに力を注ぐのでなく, 今',目の前にいるこども達 が何を欲して 動き 即興',しようとしているのか を正しく見極め,そこに必要な手立てを適宜講じて いくことが必要だと考えるのであり,それは,創造 的でそしてまさに即興的な仕事であるといえるであ ろう.

また,こどもの(大人も)集団において何人かの 芸達者が,その教材の意図するところを(記されて いる音符を)察知し,教師と共に全体をリードして いくという,従来の音楽教室によく見られたパター ンではなく,すべてのこどもが,−あるいは大部 分のこどもが(その割合が極めて重要なのであるが)

作る,,ことに参加し,何よりもまず作ること を 楽しみ,,ながら 音楽する, ことができるよう な教材のあり方を,新しい発想をもって開発してい

*音楽科

くことも,前向きに行なっていくべきであろう.

今回は,こどもの「動き」や「音作り」における 表現の素朴さゆえに,後にどのような高度な展開を も可能にするような最低限の基礎的能力を養う意味 での集団的パフォーマンスを保証し,音楽の基礎的 段階としての「民族音楽」をそのモデルとして取り 入れたりしているいくつかの実践例を報告する.

なお,筆者達は,常々様々なこども達と接し,オ リジナルな教材による実践研究を重ねており,本資 料での事例は,その中の代表的なものを取り上げて いる.

実 践 報 告 1.動き

筆者達の理想とする音楽の授業のあり方の一つに,

こども達が自主的に行う即興ミュージカルがある.

これまで熊本大学公開講座 ミュージカル制作 八代オルフの会2)のメンバーで実践し,その方法は 図lのように定着しつつある.即興ミュージカルの ファクターとしては,即興的に話す,動く,歌う,

踊る,そして楽器を演奏する等があげられるが,即 興で話すことはこどもにとって比較的容易で,台詞 を覚えて言うよりもはるかに表情豊かで個性的な表 現を見ることができる.問題は,動きと音楽の即興 表現で,これは一見非常に貧しいように見えるのだ が,それはただそのような体験が少なかったに過ぎ ないのであって,指導者側が前向きに機会を作って やることが必要だろう.そのようなねらいで最初に 試みた実践が.「音と動きによる即興ドラマ」であっ た.(これについては教育学部紀要第37号「現代の音 楽教育−その理論と実践(v)」で報告した.)内容 は,短いストーリーを音と動きだけで表現するとい うもので,台詞がない分,より洗練された表現が必 要となるのであるが,動きが,1)音を出したり変 化させたりするきっかけとなる2)イメージをより

− 9 9 −

(2)

渡 辺 学 ・ 久 枝 隆 子

(図1)

即興ミュージカル(台本や楽譜の介在しないミュージカル)

*5〜8人くらいが適当

題材を決める

大まかな流れ(展開)を全員が把握する

役者と音楽係に分かれる

せりふ,動き,踊り,効果音,歌ウパックミュージック等を作る

<役者> 即 興 で

即 興 的 な や り と り の 一 一 一 → 合 わ せ る − −

蝋…、、│/,

話し合い

互いに要求し合い,

また,確認し合う

く音楽係>

イメージに合った 音やリズムや旋律 等を探る

衣装,大道具,小道具をつくる

照明を工夫する

上 演

具体化する一といった効果を発揮し,意外とスム ースにこどもの即興を促すことができた.その表現 は非常に素朴ではあったが,私達はその一つ一つを 心から認め,それを発展させるための手がかりをこ どもの表現の中から見出だそうとした.そして今回 ここで報告する実践「ダンスとその音楽を作ろう」

は,こどもの非常に断片的な表現を少しずつ音楽ら しく,舞踊らしくと導いていった過程である.

教材「ダンスとその音楽を作ろう」

(1)オスティナート,エコー,カノン等の手法を用 い て

「オルフシュールベルク」の系統において重要な柱と なっているオスティナート,エコー,カノンは,わ が国の学校現場においてもリズム遊び等を通してよ く行なわれている.これらはこども達にも理解でき る基本的な作曲技法であり,ダンスを作る上でも有 効な手段となり得る.

a動きのオスティナート

歩行はもっとも基本的な動きのオスティナートで ある.リズムにのって歩くこと自体音楽的な活動で あり,それを少しずつ変化させることで様々なステ

ツプを作ることができる.そのような活動をねらっ て「ウォーキングダンス」(譜例1)を作曲した.

4小節間の前奏の後Aからは,3〜4m先のコ ンガに向かって音楽に合わせて歩き,4小節目に合 いの手を入れるようにして叩く.これを4回繰り返 した後Bでは,音楽のテンポが速くなったのに応じ て駆け足で進み,2小節ごとにコンガを叩く.Bの 9小節目からは,コンガの前で止まり,音楽がritす るのに合わせて合いの手もritしていく.Cはコー ダで,最後はコンガのトレモロでしめくくった.

ある程度この曲に馴染んだ後,A〜Bの部分を思 い思いのステップで歩くようにしたが,こども達の

作り出したステップは,歩行に少し変化を加えたも の−左右に揺れながら,手拍子を打ちながら,膝 を極端に曲げたり伸ばしたりしながら−から,片 足跳び,両足跳び,′ターン,前転,側転に至るまで

さまざまであった.

b 動 き の エ コ ー

幼稚園や小学校低学年では,まねっこ遊びとして 行われているが,音楽のリズムや拍節を感じながら のそれでありたい.譜例2,3のようなリズムや曲 にのって行い,リーダーになったこどもは後に続く

−100−

(3)

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(4)

4

(譜例2)

1

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(譜例3)

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戸車、〆

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(動き)

(譜例4)「セールスマンからの電話」

千ト卿レアし鳥肌,A師,凧而r7mF馬『 my託 v . 「F ーrFん ? な に ん ? な に

渡 辺 学 ・ 久 枝 隆 子

トゥルルルルトゥルルルルトゥルルルルトウルルルルガチャッもしもしん?なに

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ガ チ ャ ・ も し も し ん ? な に ? な に

−102−

(5)

(譜例5)「蚊」

1

こどもに先行して,瞬時に動きを作っていかなけれ ばならず,これは推敵する時間の殆どない,まさに 即興そのものである.その一人のこどものアイディ アを,遊ぶようにして集団の即興へと発展させるの がエコーの手法である.

c 動 き の カ ノ ン

これまで見てきたオスティナートやエコーの実践 は,既成の曲やリズムにのっての動きであったが,

カノンでは,動きと共に音楽も作るようにした.

カノンは,もとになる動きにある程度の長さが必 要なので,そこにストーリー性をもたせることによ

って日常的な動きをつなぎ合わせることにした.音 楽はまず声による言葉のコーラスとした.こども達 は自由に題材を選んだ後,動きのパターンを3〜5 程度に整理し,カノンをスムースに進めるためにカ ウントをとったり,オノマトペアをリズミカルに言 ったりして作品を仕上げていった.(譜例4,5)こ

うして出来上がったこどもの作品は,ユーモアに満 ちた内容で,最後にtuttiのおちまでついているもの (譜例4)もあり−これは音楽でいえばコーダで ある−,見ている者の笑いを誘ったりしたが,何 よりもこどもにとって面白かったのが,このカノン というアイディアではなかったかと思う.簡単に出 来て,演ずる方も見る方も楽しめるのだから,こど もにとって魅力的であるのは当然だろう.そのこと は,その後行ったバンプーダンスの創作においても こども達が自主的にカノンを取り入れたことからも わかる.

カノンのもう一つのやり方は,楽器の伴奏にのっ てストーリー性なしに作るというものであったが,

リズミカルな音楽に触発されて動きが生まれたり,

また逆に,動きに合うように自然にリズムが決まっ ていったりと,動きと音楽が相互に作用し合ってこ どもの即興を引き出していた.また,カノンの場合 連続する動きは対照的であるほうが視覚的に変化を もたせることが出来るということを,こども達は直 感的に理解し,ストーリーに縛られない分,そのよ うなことも計算にいれて作っていったようである.

さてこの場合の音楽は殆どがリズムのオスティナー トの合成(譜例6,7)またはそれに簡単な旋律が つくという結果になった.そのことは,音楽が踊り の伴奏として位置付けられていることになり,リズ ムのオスティナートを伴奏とする動きの即興という ことで,一つの典型的なスタイルといえるであろう.

(2)道具,手具を使って

昨年度の講義「教材研究」で,養護科の学生が民 族音楽を題材に模擬授業を行ったことがあった.主 に東南アジアを取り上げ,その中でパンブーダンス による創作を行ったのであるが,2本の竹竿で遊ぶ という行為がリズムと動きを誘い,音楽そしてダン スを作るという行為に直接つながり,人間と音との

−103−

(6)

表−1「パンプーダンスの創作過程」

−104−

一 前 進 し な が ら 飛 ぶ

、 右 足 左 足

渡 辺 学 ・ 久 枝 隆 子

180.回転する.

1 班 2 班 3 班

1回目

●空飛び(紐を使わないで飛ぶ)をし ているうちに,ステップが決まる.

(

一 夕 ‐

JflJljlL

●実際に紐の上 を飛んでみて,

う ま く い く よ うに,紐の動 かし方を工夫 する

●紐の動かし方が決まる.

●2人で向かい合って対照に飛んだ り,途中移動して,入れ替わった りする.

●紐を使ってスロモーションで飛び ながら,ステップと紐の動かし方 が同時進行で決まっていく.

B

(

ダーク一

LjjjjjJJ

●2つのパートに分かれて手拍子を 入れる.

:‑,‑+洲押イーイィ

●紐のリズムと動かし方が決まる.

(JLJlLJ1

●紐の動きに合うように飛ぼうとす るが,複雑すぎてうまくいかない.

●「紐の動きを1小節単位でくり返 しては?」というアドバイスに対 して,「どうしても2小節単位でや りたい、」

●結局,この日ステップはできない.

2.3回目

●人数を2→4→2→4と変化させ て飛ぶ.

●楽器を持ってリズムをきざみなが ら飛ぶ.

( マ ラ カ ス カ ウ ペ ル

●終わり方が決まる.

(

一 = グ ー 色

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●前回とは別のステップを作る(や はり,スローモーションで)

(

‐ − − グ ー 色 達 こ .

J

J JFjJl

●低・中・高3つのトンガトンで伴 奏する.

H二三差岸三二

●ステップができる.

一 言 − 号

()jL1J1LJ

●楽器で伴奏する.

(

111値他に

(a)ボンゴ(b)クラベス(c)カパサ

●3人で飛び,1人だけ逆向きに飛

●途中移動して入れ替わったりする

4.5回目

●馴じみのあるリズムをもとに新し いステップを作り,(a)ボンゴ(b)ク ラベスで伴奏する.

(

jいいく

一つ一 "

JjJjL

●人数を変化させたり,移動したり する.

●2人で対照に動く

●終わり方が決まる.

タ ク 夕 ーー

一一

()

(7)

関わりにおいて音が次第に成長し,音楽となってい く様を見るようで興味深かった.,

また,1987年のオルフ研究所の夏季講習会におい て3),養護学校のこども達が音楽で遊んでいるビデ オを見たが,その中に一人の男子が傘を持って即興 的に踊っている映像があった.彼は傘を扱うという ことで自然に動きの語法(傘を開く,閉じる,回す 等)を得,太鼓の音を聞きながら心のおもむくまま に踊っていた.

この2つの出来事が示唆した,即興表現において 道具を使うことの有効性を,自らの実践によってよ り確かなものにしたいと思い,中学校1年生を対象 としたバンプーダンスの実践を試みた.なお,この 内容が次の「民族音楽」の項とも非常に関わりをも つことは言うまでもない.

対象:音楽教室「原ミュージックセンター」所属 の中学1年生19人(全員女子)

期間:平成元年4月4日,11日,18日,25日,

28日計5回(1回40分)

場所:玉名市文化センター大研修室

内容:3つのグループ(1グループ6または7人)

に分かれて,バンブーダンスとその音楽を作

方法:初日は竹竿の代わりにビニール製の紐を用 いる.

3回目の練習から楽器による伴奏を作る.

楽器はボンゴ,クラベス,トライアングル,

カスタネット,マラカス,鈴,タンブリン,

カパサ,ビブラスラップ,トンガトンの中か ら自由に選ぶ.

この過程をまとめたものが表1である.この結果 を,リズムモチーフ,ステップ,打楽器による音楽,

動きの工夫の順に各班別の違いを考察していく.

a)リズムモチーフ

1.2班はステップ作りが先行してそれに促され たリズムである.1班がシンコペーションを含んだ 軽やかなリズムであるのに対し,2班が躍動感に欠 けるのはスローモーションでステップを作ったせい かもしれない.3班のリズムモチーフは,ステップ とは無関係で,紐を自由に動かしているうちに決ま っていった.また,1班の2作目は馴染みのあるリ ズムから取っている.

b)ステップ

1班は空跳び(紐や竹竿を使わないで)をしてい るうちに,2班は紐の動きと相互に対応させながら スローモーションで,3班は紐の動きを固定してそ

れに合うように作られた.

c)打楽器による音楽

どの班も竹の刻む強烈なリズムを聞きながら,活 発な動きを目の前にして,好きな楽器を好きなよう

に(即興的に)叩き,そのうちに気に入ったリズム を選んでオスティナートにした.その演奏は,動き に合わせながら尚且つその楽器独自の語り方によっ て,周囲のリズムとは違う個性を出そうとする気持 ちが自然に働いている.

d)動きの工夫

音楽が1つのパターンを繰り返しているのに対し て,動きは人数,方向,空間の使い方等が次々に変 化している.たとえば,両足跳び,跳びながらの移 動,2人で対称に跳ぶこと,半回転跳びによる方向 転換,その他様々なアイディアが生まれ,こども達 は互いに影響し合って,気に入ったものはどんどん 取り入れていた.

なお,このようにして作られたこどもの作品を,

フィリピンの伝統的なパンブーダンス「シンキル4)」

(図2)

(図3)

(譜例8)

−105−

(8)

とドッキングさせることによって,さらにダイナミ ックなステージの構成(序一A−B−A)を試みたの で,付け加えておきたい.

<序>時間差で3組の竹竿の乱打が始まる.その 中を2人のこどもが側転をしながら渡ってい

く.隊形は図2.

<A>rそ−れ」の掛け声を合図に,竹竿によるリ ズムのオスティナート(譜例8)が強烈に始ま り,「シンキル」の音楽(譜例9)が木琴によ って演奏される。それに合わせて,全員が列を 作って跳びはねながら渡うていく.Bの隊形

(図3)に向かって1.2班が移動する間は,

3班の竹竿だけがリズムを刻み続ける.

<B>隊形が変わってこども達の作ったダンスが

、1,2,3班の順に踊られる.班と班のつなぎ は,ボンゴそしてトンガトンの乱打とした.

<A>そのままの隊形でふたたび「シンキル」の音 楽が始まり,各班同時に独自のステップで跳 ぶ.

このようにして10分余りの集団的パフォーマンス

が組み立てられたのであるが,2本の竹竿への働き

か け − そ れ も 十 分 な 遊 び 心 を 伴 っ た − が , こ のような作品へと成長していく過程において,こど もに内在する創造性を十分に引き.出すことが出来た のではないかと思う.

道具を使ってのダンスは他にもボール,縄等によ って試みたが,道具によって動きのパターンが自然 と決まってくるし,一種の機械的反復に少しづつ変 化を加える場合が多いので,そのことはこどもにと

(譜例9).「シンキル」

拳毒;講震簿雲霞呉勲』 』'

2.民族音楽

こどもの基礎的音楽とは何かを考える場合,すべ ての音楽の基盤としてある各民族の基層をなす音楽

「民族音楽」が私達に示唆するところは大きい.前項 で述べたバンブーダンスが,「即興的創作」や「動き̲I の学習に実に有効な素材をもたらしたように,発生 の上で自然そのものであり,歴史のふるいにかけら れ十分に洗練されたその方法論は.、私達の目指す音 楽教育のあり方にそのまま当てはめられる場面も多 いのである.また,「民族音楽」が大衆のものであ り,そこには極端な専門性が必要とされないし,演 奏と鑑賞などに分離していないことも,学校教育に おける音楽科が顧みるべきところであろう.

ここでは,フィリピンの民族楽器トンガトンそし てサッゲイポを用いて,こどもにも大人にも容易に 行うことの出来る即興演奏の方法と,この二つの楽 器に手作りの木琴を加えて,ミニマル・ミュージッ クの手法で書いた教材としての作品を示したいと思

(1)トンガトンとサッゲイポによる即興演奏 近年のマスメディアにおける民族芸能紹介の一般 化に伴い,容易に見聞きするようになったフィリピ ンの民族楽器トンガトンは,一方の節を残してぶつ 切りにしただけの竹筒である.長短によって音が変 わり,それらをいくつか数人でタイムをずらして床 に落とすことによってやや旋律らしく聞こえたりも するが,それに,さらに細い(直径2cm弱の)竹の ぶつ切りに息を吹き込む笛サッゲイポを加えて変化 をもたせることもできる.何といっても手軽に作れ,

大人でもこどもでも容易に合わせられ,相手を構わ ず気軽に楽しめるアンサンブルである.我々は,こ 木 琴

って即興しやすい要因となっているようだった。

以上,教材rダンスとその音楽を作ろう」の実践 報告を行ったが,今回は,動きを,音楽を作り出す ための手段としてではなく,動きそれ自体を音楽の 大切な一要素として考えたつもりである.すなわち,

動くということがこどもにとっていかにストレート な表現手段であるかということであり,音楽に合わ せての動きはもちろんのこと,たとえそこに音楽が 存在しなかったとしても,自己を表現するという意 味で音楽科の精神に基づいていると言えよう.

渡 辺 学 。 久 枝 隆 子

窪騨α唖ずぶ罫醗嘩

− 1 0 6 −

(9)

こ2〜3年あまり次のような対象による実践例をも っている.

●熊大放送公開講座でのスクーリングでの一般視 聴者

●音楽教室の中学生とその保護者(原ミュージッ

クセンター)

●熊大教育学部公開講座 ミュージカル制作 の小学生から大人まで

●熊大教養部での「音楽史」および「音と人間」

を聴講する学生

(譜例10)

(譜例11)

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107

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(10)

ト ン ガ ト ン

●熊大教育学部での「音楽科教材研究」「音楽科教 育法」「小学音楽」を聴講する学生

●公立中学校生徒

●小学生対象の動きとリズムの講習会(八代オル フの会)

この即興演奏は譜例10のような図形楽譜をスコア としてアンサンブルするが,その演奏方法を即興例 (譜例11)と照らし合わせながら解説する.

連続した小円は伴奏のオスティナートであり,機 械的にタイムをとるペースメーカーの役割を果たす.

これはクラベス(拍子木)で演奏される(①).そし て帯に表したのがトンガトンで,一つ一つの模様が 異なるのはそれぞれが異なるリズムのオステイナー トを演奏することを示している.これらが少しずつ 時間をずらして加わり,最後のトンガトン(⑥)が 十分に馴染んだ後,今度は,点入り帯(⑤)から順 番に白帯のリズムを模倣し(7小節目から),ついに 全員のリズムが一致したところで呼吸をそろえて一 旦終わる(11小節目).中間部はあらゆるノイズをめ いめいが好き勝手に創造し,奏者相互間の対応・誘 発も即興的に行うことになる.ここでサッゲイポも 適宜入る.なお,クラペスは最初から最後まで終始

テンポをキープし,最後まで残る.無秩序なこの部

(譜例12)

分の即興に疲れてきた頃,再び黒帯のトンガトンの リズムが始まり,最初と同じように加わっていくが,

全員が出揃ったらそのままフェイドアウトしていく

(6小節目).

このような一定のテンポにのってするオステイナ ートの合成は,トンガトンの伝統的な演奏様式であ り,非常な気安さを以て集団での即興を楽しむこと が出来る.また,高橋悠治氏のことば(日本音楽教 育学会第17回大会での講演)を借りれば,たとえ誰 かが間違づても,間違いはそれなりに面白いのであ って,すでにマンネリ化した合唱や合奏の指導によ く見られる,こどものミスを探して得意になってい る従来の音楽科指導を抜けきれない教師と,それに おびえながら早くその時間が終わるのを待っている こどもの姿とは対照的といってもよかろう.また,

気軽であるとともに,極めて基礎的な教材であるこ とは,奏法が平易なだけ,楽器の音色への心配りが いきとどき,周りのリズムを把握しながら(アンサ ンブルをしながら)即興に集中することが出来ると いうことからもわかる.そしてこの基礎的な教材を 指導するにあたっては,教師の音楽性に負う面が少 なくない−つまり簡単なものほど難しい.すなわ ち,単純な手作り楽器による即興であれ,豊かな音

ク ラ ベ ス ト ン ガ ト ン

−1

サ ッ ゲ イ ポ

−108−

ク ラ ベ ス

ト ン ガ ト ン

サ ッ ゲ イ ポ

渡 辺 学 ・ ・ 久 枝 隆 子

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(11)

サ ッ ゲ イ ポ ク ラ ベ ス ト ン ガ ト ン

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サ ッ ゲ イ ポ

トンガトン

曲の手法においても民族音楽をモデルに(またはそ れをもとにした現代音楽をモデルに)作られている.

3部構成の作品であるが,ここでは,トンガトンと サッゲイポによる基本的なアンサンブルである第i 部と,2台の木琴の即興的競奏ともいえる第2部に ついてそれぞれ部分的に取り出して述べたい.

<第1部>(譜例12)

Aの旋律は,3人の奏者が異なるピッチ(g,f,es)

のサッゲイポを一本ずつ持って,譜例13のように演 奏する.Bからのトンガトンも同様である.はじめ から一人一人のリズムを正確にすることをねらうよ ク ラ ベ ス

ト ン ガ ト ン

サ ッ ゲ イ ポ

(譜例13)

−109−

サ ッ ゲ イ ポ

| 」 1 1

ザ ッ ゲ イ ポ

es

楽性に基づく計算的な表現が必要なのであって,遊 びでありながらよいタイミング,テンポ,デイナミ ークーにおける創造性が要求されるのである.

(2)「竹の音楽」

昭和63年度の卒業生5)が,卒業論文の一環として 竹製の木琴を製作した.竹製の音板の下に共鳴管と しての竹筒が並び,その音色は竹独特の乾いた,そ れでいてまるやかな光沢をもち,音階はgahcdefg のミクソリディア旋法である.教材「竹の音楽」は,

トンガトン,サッゲイポ,クラベス,そして手作り の木琴によるアンサンブルで,楽器だけでなく,作

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(12)

江墓二重雪二E雪

頭の3拍子に感じ直さなくてはならない.その作業 を終えた瞬間から,クラベスは頭打ちから裏打ちに 聞こえだし,身体のノリは4ビートから8ビートに 変わるであろう.このような中で,再びAのサッゲ イポの旋律,そしてB,Cのカノンと続いていくため には,それぞれのセクション,そして全員のアンサ ンブルをさらに極めなければならないことになる.

<第2部>(譜例14)

現代音楽の一手法であるミニマル・ミュージック は,もともと西アフリカや,東南アジアの民族音楽 にヒントを得たものと言われている.一言で言えば,

限られた素材を用い,その限られた変形の技術を駆 り,むしろ,3人が互いに聞き合い,1つの旋律を

作ろうとすることで,必然的に正しいリズムが身に 付くことを期待したい.

B,Cは,サッゲイポとトンガトンによる2拍遅れの カノンである.少ないピッチで似たような音型が続 くため,お互いにつられやすい.はじめは,相手の パートをなるべく聞かないようにしてそれぞれの団 結を強めようとするが,そのうちに,相手の動きを すっきりとしたポリフエニーの構造図の中でとらえ

るようになる.

Dでは,ちょっとした頭の切り替えが必要である.

それまで,asを小節の頭として感じてきたのを,cが

(譜例14)

1

ク ラ ベ ス

考壬雲圭達三圭雪圭雲室

竹 琴

蛙壱三毒=三毒=琴

1

碁三雲三雲毒呈冒圭=室卦=室言室

I

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渡 辺 学 ・ 久 枝 隆 子

(譜例15)

1

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(13)

(譜例16)

使するというやり方であり,ここでは,主にgahcd の5音と,譜例15のリズムを素材として,様々な変 形を試みようとした.

譜例14からわかるように,木琴IIの左手の接は同 じ音型をしつように繰り返し,右手によって少しず つ音高の幅を広げながら,一定のリズムの中で変形 されていく.Bから木琴Iが独自のリズムで加わる こ と に よ っ て , 今 ま で の リ ズ ム パ タ ー ン が 一 瞬 の う ちに譜例16のような16分音符の連続に変わる.もち ろんそのように聞こえるためには,一人一人のリズ ムの正確さの裏付け無しには考えられないのである が,第1部のところでも述べたように,そこに生ま れようとしている新しいリズムに全身全霊を注ぎ,

次第に一つ一つの音が泡立つように,そして,秩序 をもって聞こえ始める.この後再び木琴ⅡはABを 繰り返し,Iはその3度上にぴたりと重なる.この 時も,それぞれのリズムの,正確さよりも,むしろ,

いかにお互いのリズムの癖をつかむかということが 重要になってくる.

そうして,いよいよ即興を中心とする中間部に入 る.構成は,Ⅱのオスティナート(譜例14の1小節 目)伴奏によるIの即興−1のオスティナート伴 奏によるIIの即興−1とIIの同時に行う即興と なっている.ここでの即興は演奏者が前もって考え た自分なりのルールによる.たとえば,一つのモチ ーフを音高またはリズムによって少しずつ変化させ たり,一つのモチーフを繰り返しながら漸次的にテ ンポを変化させたり(位相ずれのプロセス),伴奏の リズムとの合成による効果をねらったり,他にも 様々なルールが生まれることを期待した61とIIが 同時に即興する場面においては,2人の主張がぶつ かり合うだけでなく,偶然に生まれた副次的なリズ ムや音型をお互いの理解のもとで繰り返すようなこ

とも実際にあった回

この「竹の音楽」は,教育学部の音楽科の学生と,

音楽教室の中学生が,それぞれ別の機会に演奏して いるが,かなり高度な技術と音楽性を必要とする教 材で,一般の小。中学校にはそのままの形では使え ないだろう。しかし,そこに用いた楽器や,音楽の 作り方,アンサンブルの仕方は,非常に基礎的であ るから,教材作りの一つのアイディアとして提示し

一 眼 韓 母

鰯蟹

たいと思う.

以上,「民族音楽」をヒントに開発した2つの教材 (バンプーダンスも含めれば3つ)について述べてき た.民族音楽の学習が単なる鑑賞として終わるので はなく,その大衆的な楽しさを心から感じるような 生の体験をさせるべきであるし,またそのことが,

基礎的力を除々に養いつつ音楽の発生し成長する過 程を創造的に辿っていくようでありたい.

要 、 約

「ダンスとその音楽を作る」という方向に理論およ び実践を進めてきたが,「音」を導きだすための「動 き」だけでなく「動き」そのものを音楽科の重要な 内容とし,その方法として,オステイナート,エコ ー,カノンという手法をもって即興するための具体 的な教材「ウォーキングダンス」,「動きによるエコ ー」,「動きのカノン」等であるが,それらの教材に おける新しさは, 既成の曲"にのってする動きやダ ンスのみでなく,動きと共に「音」あるいは「リズ ム」をも作ることである。

それを容易にするための手だてとして,動きにス トーリー性をもたすこと,つまり音楽の基底にドラ マを置くことによって,本来,抽象的である音とこ どもとの隔たりを除くことである.もちろんストー リーなしにリズムに即応した動きが起り,それらは 相互作用的に誘発し合う場合をも含めて,創造,あ

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参照

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