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マンガ表現と展示方法の可能性

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Academic year: 2021

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(1)

キーワード: マンガ、デザイン、教育、展示

Keywords: Manga, Design, Education, Exhibition

Abstract

In the Manga Media Course of the Department of Design, Sojo University, we teach manga media as a means of transmitting information. We are actively practicing production that combines manga and design. Introducing the possibilities of manga media, using works as examples at the request of companies and local governments and graduation works.

. はじめに

崇城大学デザイン学科マンガ表現コース では、マンガ表現(マンガ・イラストレー ション・アニメーション・ゲーム等、エン ターテインメントに用いられる視覚表現)

を制作の目的にするのではなく、情報を発 信する手段として捉えて指導している。ま た、マンガ表現とデザインを組み合わせた 制作を積極的に実践し、表現が多岐にわた る時代に呼応するように、マンガ表現の可 能性を追求している。マンガ表現はつま り、他者へ伝える事ありきの表現である。

さらにマンガの学芸員である筆者は、こ れまで培ってきた展示のノウハウを、マン

ガ表現の展示を考える事を通して、人材育 成に活用できないかと考えた。

本発表では、マンガ表現コース所属学生 が卒業研究で制作した成果物を事例に、マ ンガ表現の可能性について模索した取り組 みを紹介する。さらに、卒業制作展での・

展示方法・効果を実例で示し考察する。

マンガ表現の卒業制作は、ともすれば、

学生の制作モチベーションが絵を描くまで で完結してしまうこともある。しかし、成 果物をいかに見栄え良く見せるか、という 展示方法のアプローチを加えることで、ほ とんどの学生が自身の成果物を多角的に見 つめ直す機会になり、展覧会は他者へ伝

マンガ表現と展示方法の可能性

(崇城大学マンガ表現コース卒業制作展での実践報告)

Possibility of Manga Media & exhibition method.

小川 剛

Tsuyoshi OGAWA

崇城大学芸術学部デザイン学科准教授

Associate Professor, Department of Design, Faculty of Art, Sojo University

(2)

ることは、本人たちが本来やりたい、ス トーリーマンガ・イラストレーション・

キャラクターデザインなど「マンガや絵を 描く仕事」や、ゲーム業界などを俯瞰して 観ることにつながり結果的に「就きたい職 業・将来」に近づけるともいえるのではな いか。

本稿では、まず、マンガ表現コースが取 り組んでいる授業の中から「デザイン×マ ンガ表現」の事例を紹介する。

そして、マンガの学芸員である筆者の経 験から、地域の企業や自治体と連携し、マ ンガ表現を活用した実践的な取り組みを紹 介し、考察する。

さらなる教育的展開として「デザイン×

マンガ表現×展示方法」をキーワードに、

卒業研究・卒業制作展の事例に触れながら 展示方法のノウハウを通した人材育成の可 能性について示し、得られた結果から考察 する。

マンガの学芸員である筆者は、これまで マンガ家の作品やコンテンツを預かり、広 告・ウェブ展開・展示空間・講演会など、

メディアを複合的に組み合わせて作家の魅 力を多角的に発表、発信してきた。これま で培ってきたこれらの知見を教育プログラ ムに応用して、作画、作品指導だけに留ま らず、「見せ方・発信の仕方」のノウハウ も含めた人材育成が実装できないかと考え た。

3. 教育内容・連携事業・受託研究 事例紹介と考察

「デザイン×マンガ表現」教育内容事例①

図1

「映画化想定ポスター(図1)」3年前期

受講生各自が作画や制作で携わった作品 が映画化されるという想定で

B2 サイズポ

スターと

A4 サイズチラシ両面をデザイン

する課題。受講生はそれぞれ、マンガ家、 イラストレーター、アニメーター、キャラ クターデザイナーなどを志しており、それ ぞれの志望にあわせた課題と上記のポス ター・チラシデザインの両方に取り組む。 例えば、マンガ家志望であれば、投稿用の 読み切りマンガを執筆するとともに、その 読み切りが評価され、映画化されるとした らどのようなポスターにしたいかというモ チベーションで制作してもらう。キャラク ターデザイナーを志す受講生には、キャラ クターの設定資料や背景美術カットなどを ポスターと並行して制作してもらう。

ポスターには、メインビジュアルの他、 タイトルロゴ、キャッチコピー、キャス ト、スタッフクレジット、あらすじ、サブ イラストカットなどが必要になる。それら の情報を届けたいターゲットやユーザーを 意識して作成し、素材を作ってレイアウト わったという充実感や達成感が得られる場

となった。

. 問題と目的

崇城大学デザイン学科は 2014 年度より マンガ表現コースを設置。マンガを情報発 信のコミュニケーションツールであると捉 えており、雑誌や単行本等のマンガ・イラ ストレーション・アニメーション・ゲーム 等、エンターテインメントに用いられる視 覚表現を視野に入れ「マンガ表現」と位置 づけている。

また、デザイン領域からの視点では、タ イポグラフィ・ロゴマーク・サインなどの インフォメーショングラフィック、写真・

映像・CG表現などに加えて、マンガ表現 を並列で位置付け、視覚的な表現方法の素 材として横断的な表現や研究を実践してい る。

その背景には、インターネット・スマー トフォンが普及した現在、生活基盤そのも のが大きく揺れ動く中、クリエイティブ業 界の変革も同様であり、発表メディアの多 様化が顕著であること。書籍やマスコミだ けに留まらず、SNS

YouTube

等の動画配 信、オンデマンド印刷の技術向上による表 現方法の変化など横断的な表現は枚挙の暇 がないことが挙げられる。

同じく、マンガ業界の変化も著しい。

2010 年、マンガの単行本・雑誌の市場規 模は 4,000 億円、電子書籍市場は 500 億円 だ っ た の に 対 し て 、2019 年 で は 、単 行 本・雑誌の市場規模 2,500 億円。電子書籍 の市場規模 2,500 億円(1)と全体をちょう ど二分して支えるまでに急成長している。

このことからもマンガ家を従来の成功モデ ルである雑誌連載だけの視点で留めること は大きく可能性が狭まってしまう。

さらに、ストーリーマンガ以外にもマン ガ的な表現がゲームやキャラクタービジネ スなど、いわゆるコンテンツ産業へ広がり 続けている。総務省が示しているコンテン ツ産業の市場規模は 12 兆円(2)。コンテン ツ産業とは、映像(映画、アニメ)、音 楽、ゲーム、書籍等の制作・流通を担う産 業の総称であり、主にフィクションの創作 物を扱う産業のことである。マンガを原作 に、アニメ化、ゲーム配信、キャラクター グッズ等へ展開するメディアミックス(ワ ンコンテンツマルチユース)の手法は各年 代に社会現象や一大ブームを作る等これま で大きな産業規模を形成し、国内のみなら ず諸外国を大きく牽引している。

こうした流れの中、教育や人材育成に視 点を変えてみると、マンガ単体で教育プロ グラムを追求するよりも「マンガ×デザイ ン」を組み合わせた方が、より現状にマッ チし、かつ可能性や今後の展開が期待でき る。

言い換えれば、マンガ表現に関心をもっ た学生たちが、次世代を担うクリエイター として活躍するためのアプローチとして、

マンガに一点集中する教育プログラムより も、デザイン領域が持っている普遍的なレ イアウトデザインのスキル、ブランディン グデザイン、デザイン思考、発想法などを ミックスして習得する事で、時代の変化、

ニーズの変化に柔軟に対応することができ る人材が育成できると考えている。

さらに、デザインスキルを一定身につけ

(3)

ることは、本人たちが本来やりたい、ス トーリーマンガ・イラストレーション・

キャラクターデザインなど「マンガや絵を 描く仕事」や、ゲーム業界などを俯瞰して 観ることにつながり結果的に「就きたい職 業・将来」に近づけるともいえるのではな いか。

本稿では、まず、マンガ表現コースが取 り組んでいる授業の中から「デザイン×マ ンガ表現」の事例を紹介する。

そして、マンガの学芸員である筆者の経 験から、地域の企業や自治体と連携し、マ ンガ表現を活用した実践的な取り組みを紹 介し、考察する。

さらなる教育的展開として「デザイン×

マンガ表現×展示方法」をキーワードに、

卒業研究・卒業制作展の事例に触れながら 展示方法のノウハウを通した人材育成の可 能性について示し、得られた結果から考察 する。

マンガの学芸員である筆者は、これまで マンガ家の作品やコンテンツを預かり、広 告・ウェブ展開・展示空間・講演会など、

メディアを複合的に組み合わせて作家の魅 力を多角的に発表、発信してきた。これま で培ってきたこれらの知見を教育プログラ ムに応用して、作画、作品指導だけに留ま らず、「見せ方・発信の仕方」のノウハウ も含めた人材育成が実装できないかと考え た。

3. 教育内容・連携事業・受託研究 事例紹介と考察

「デザイン×マンガ表現」教育内容事例①

図1

「映画化想定ポスター(図1)」3年前期

受講生各自が作画や制作で携わった作品 が映画化されるという想定で

B2 サイズポ

スターと

A4 サイズチラシ両面をデザイン

する課題。受講生はそれぞれ、マンガ家、

イラストレーター、アニメーター、キャラ クターデザイナーなどを志しており、それ ぞれの志望にあわせた課題と上記のポス ター・チラシデザインの両方に取り組む。

例えば、マンガ家志望であれば、投稿用の 読み切りマンガを執筆するとともに、その 読み切りが評価され、映画化されるとした らどのようなポスターにしたいかというモ チベーションで制作してもらう。キャラク ターデザイナーを志す受講生には、キャラ クターの設定資料や背景美術カットなどを ポスターと並行して制作してもらう。

ポスターには、メインビジュアルの他、

タイトルロゴ、キャッチコピー、キャス ト、スタッフクレジット、あらすじ、サブ イラストカットなどが必要になる。それら の情報を届けたいターゲットやユーザーを 意識して作成し、素材を作ってレイアウト わったという充実感や達成感が得られる場

となった。

. 問題と目的

崇城大学デザイン学科は 2014 年度より マンガ表現コースを設置。マンガを情報発 信のコミュニケーションツールであると捉 えており、雑誌や単行本等のマンガ・イラ ストレーション・アニメーション・ゲーム 等、エンターテインメントに用いられる視 覚表現を視野に入れ「マンガ表現」と位置 づけている。

また、デザイン領域からの視点では、タ イポグラフィ・ロゴマーク・サインなどの インフォメーショングラフィック、写真・

映像・CG表現などに加えて、マンガ表現 を並列で位置付け、視覚的な表現方法の素 材として横断的な表現や研究を実践してい る。

その背景には、インターネット・スマー トフォンが普及した現在、生活基盤そのも のが大きく揺れ動く中、クリエイティブ業 界の変革も同様であり、発表メディアの多 様化が顕著であること。書籍やマスコミだ けに留まらず、SNS

YouTube

等の動画配 信、オンデマンド印刷の技術向上による表 現方法の変化など横断的な表現は枚挙の暇 がないことが挙げられる。

同じく、マンガ業界の変化も著しい。

2010 年、マンガの単行本・雑誌の市場規 模は 4,000 億円、電子書籍市場は 500 億円 だ っ た の に 対 し て 、2019 年 で は 、単 行 本・雑誌の市場規模 2,500 億円。電子書籍 の市場規模 2,500 億円(1)と全体をちょう ど二分して支えるまでに急成長している。

このことからもマンガ家を従来の成功モデ ルである雑誌連載だけの視点で留めること は大きく可能性が狭まってしまう。

さらに、ストーリーマンガ以外にもマン ガ的な表現がゲームやキャラクタービジネ スなど、いわゆるコンテンツ産業へ広がり 続けている。総務省が示しているコンテン ツ産業の市場規模は 12 兆円(2)。コンテン ツ産業とは、映像(映画、アニメ)、音 楽、ゲーム、書籍等の制作・流通を担う産 業の総称であり、主にフィクションの創作 物を扱う産業のことである。マンガを原作 に、アニメ化、ゲーム配信、キャラクター グッズ等へ展開するメディアミックス(ワ ンコンテンツマルチユース)の手法は各年 代に社会現象や一大ブームを作る等これま で大きな産業規模を形成し、国内のみなら ず諸外国を大きく牽引している。

こうした流れの中、教育や人材育成に視 点を変えてみると、マンガ単体で教育プロ グラムを追求するよりも「マンガ×デザイ ン」を組み合わせた方が、より現状にマッ チし、かつ可能性や今後の展開が期待でき る。

言い換えれば、マンガ表現に関心をもっ た学生たちが、次世代を担うクリエイター として活躍するためのアプローチとして、

マンガに一点集中する教育プログラムより も、デザイン領域が持っている普遍的なレ イアウトデザインのスキル、ブランディン グデザイン、デザイン思考、発想法などを ミックスして習得する事で、時代の変化、

ニーズの変化に柔軟に対応することができ る人材が育成できると考えている。

さらに、デザインスキルを一定身につけ

(4)

熊本城内の文化施設「城彩苑わくわく 座」より依頼を受け、夏休みの演劇イベン トである「熊本のこわーい話おそろし御 殿」のための妖怪キャラクターデザインと 舞台背景イラストレーションを担当した。

熊本にゆかりのある民話や怪談話を題材に 制作するので、イラストレーション制作を 通じて、熊本の文化や歴史を学ぶ機会にも なった。小泉八雲の「怪談」「根子岳の猫屋 敷」「河童の九千坊」「船場山の狸」「清正公 を助けた双子の狐」、人吉球磨地方「山 童」、阿蘇の「健磐龍命と鬼八」、さらにコ ロナ禍で全国的に知名度が上がった「アマ ビエ」も2018年に先んじて取り上げていた。

連携事業・受託研究事例②

図4

「KKTくまもと県民テレビ 2017 年 ハロ ウィン・フォトウォールイラスト (図4)」

地元民放が新市街商店街にて主催するハ ロウィンイベントのワンブースとして、

フォトウォールイラストの制作を請け負っ た。学部生、大学院生、留学生の混合チー ムで実装。仮装してきた来場者が楽しく記 念撮影できるフォトウォールを目指した。

結果、高さ3m、幅6mの大作になり、描 いたモチーフにはカボチャや魔女等従来の ハロウィンをイメージするものに加えてス イカやおばけの金太、加藤清正など熊本ら しさを各所に散りばめたオリジナリティの ある作品に仕上がった。記念撮影できるス ポットとしての役割に加えて、熊本らしさ を探して楽しめる機能を付加できたことは 大きな成果となった。

また、副次的な効果として、制作中何度 かテレビ取材を受けることになり、学生た ちにとっては映像制作の現場を目の当たり にする経験と制作プロセスから公開記録す ることができた。

連携事業・受託研究事例③

図5

「COCOSA下通 2018 年 LINEスタンプ デザイン(図5)」

2018 年、熊本市内中心部に新しく誕生 した複合商業施設

COCOSA

の認知度向上 と親しみを持ってもらうために

LINE

スタ ンプのデザイン制作を請け負った。卒業生 を含む学内コンペを行い、最終的に 1 案が 採用された。

デザインすることになる。

ともすれば、メインビジュアルのみにこ だわりやモチベーションが偏る傾向がある 受講生もいるが、自分の作品をより広く届 けるための工夫や努力を、あらすじの執筆 やタイトルロゴ等に込めることで、マンガ 表現がデザイン領域の中の 1 つの要素であ ることを実感してもらう工夫をしている。

チラシデータは最終的に、印刷業者に ネット入稿し、プロセス印刷のノウハウも 習得する。トンボの裁ち切り位置、フォン トのアウトライン、配置画像の処理など

DTP

に必要なスキルを再確認する機会に もなっている。印刷されたチラシは世の中 に出回っているチラシと印刷方法もサイズ も同じなので、達成感を得られるとともに ポートフォリオやプレゼン資料としても有 効である。

「デザイン×マンガ表現」教育内容事例②

図2

「ルポルタージュ・フードイラストレー ション(図2)」 3年後期

テーマは「美味しそうを描く」。雑誌の 見開き特集を前提にA3サイズの紙面に食 べ物をテーマにした特集記事を作成。絵柄

のスタイルは問わず、最も普遍的な、美味 しそうを表現するためにそれぞれ模索して もらう。制作はイラストレーションのみな らず、取り上げる食材のテーマ、お店の取 材、タイトルロゴ、解説文まで全ての工程 を一人で担う。レイアウトデザイン、文字 組み、広告業界における購買意欲を刺激さ せる手法「シズル感」の演出など、本課題 の実作を通して再認識し、スキルの定着を 促している。

「地域×デザイン×マンガ表現」連携事 業・受託研究事例

5 年間で 10 以上の受託研究を実施。地元 企業や自治体から依頼を受け、マンガ・イ ラストレーション・イベント等の事業を展 開している。これらの活動はマンガ表現の 可能性を模索したり発見する良い機会であ り、実装していく中で社会からのニーズを 肌で感じる機会にもなっている。

連携事業・受託研究事例①

図3

「熊本城「城彩苑わくわく座」キャラク ターデザイン&舞台背景イラストレーショ ン(図3)」2017~18年

(5)

熊本城内の文化施設「城彩苑わくわく 座」より依頼を受け、夏休みの演劇イベン トである「熊本のこわーい話おそろし御 殿」のための妖怪キャラクターデザインと 舞台背景イラストレーションを担当した。

熊本にゆかりのある民話や怪談話を題材に 制作するので、イラストレーション制作を 通じて、熊本の文化や歴史を学ぶ機会にも なった。小泉八雲の「怪談」「根子岳の猫屋 敷」「河童の九千坊」「船場山の狸」「清正公 を助けた双子の狐」、人吉球磨地方「山 童」、阿蘇の「健磐龍命と鬼八」、さらにコ ロナ禍で全国的に知名度が上がった「アマ ビエ」も2018年に先んじて取り上げていた。

連携事業・受託研究事例②

図4

「KKTくまもと県民テレビ 2017 年 ハロ ウィン・フォトウォールイラスト (図4)」

地元民放が新市街商店街にて主催するハ ロウィンイベントのワンブースとして、

フォトウォールイラストの制作を請け負っ た。学部生、大学院生、留学生の混合チー ムで実装。仮装してきた来場者が楽しく記 念撮影できるフォトウォールを目指した。

結果、高さ3m、幅6mの大作になり、描 いたモチーフにはカボチャや魔女等従来の ハロウィンをイメージするものに加えてス イカやおばけの金太、加藤清正など熊本ら しさを各所に散りばめたオリジナリティの ある作品に仕上がった。記念撮影できるス ポットとしての役割に加えて、熊本らしさ を探して楽しめる機能を付加できたことは 大きな成果となった。

また、副次的な効果として、制作中何度 かテレビ取材を受けることになり、学生た ちにとっては映像制作の現場を目の当たり にする経験と制作プロセスから公開記録す ることができた。

連携事業・受託研究事例③

図5

「COCOSA下通 2018 年 LINEスタンプ デザイン(図5)」

2018 年、熊本市内中心部に新しく誕生 した複合商業施設

COCOSA

の認知度向上 と親しみを持ってもらうために

LINE

スタ ンプのデザイン制作を請け負った。卒業生 を含む学内コンペを行い、最終的に 1 案が 採用された。

デザインすることになる。

ともすれば、メインビジュアルのみにこ だわりやモチベーションが偏る傾向がある 受講生もいるが、自分の作品をより広く届 けるための工夫や努力を、あらすじの執筆 やタイトルロゴ等に込めることで、マンガ 表現がデザイン領域の中の 1 つの要素であ ることを実感してもらう工夫をしている。

チラシデータは最終的に、印刷業者に ネット入稿し、プロセス印刷のノウハウも 習得する。トンボの裁ち切り位置、フォン トのアウトライン、配置画像の処理など

DTP

に必要なスキルを再確認する機会に もなっている。印刷されたチラシは世の中 に出回っているチラシと印刷方法もサイズ も同じなので、達成感を得られるとともに ポートフォリオやプレゼン資料としても有 効である。

「デザイン×マンガ表現」教育内容事例②

図2

「ルポルタージュ・フードイラストレー ション(図2)」 3年後期

テーマは「美味しそうを描く」。雑誌の 見開き特集を前提にA3サイズの紙面に食 べ物をテーマにした特集記事を作成。絵柄

のスタイルは問わず、最も普遍的な、美味 しそうを表現するためにそれぞれ模索して もらう。制作はイラストレーションのみな らず、取り上げる食材のテーマ、お店の取 材、タイトルロゴ、解説文まで全ての工程 を一人で担う。レイアウトデザイン、文字 組み、広告業界における購買意欲を刺激さ せる手法「シズル感」の演出など、本課題 の実作を通して再認識し、スキルの定着を 促している。

「地域×デザイン×マンガ表現」連携事 業・受託研究事例

5 年間で 10 以上の受託研究を実施。地元 企業や自治体から依頼を受け、マンガ・イ ラストレーション・イベント等の事業を展 開している。これらの活動はマンガ表現の 可能性を模索したり発見する良い機会であ り、実装していく中で社会からのニーズを 肌で感じる機会にもなっている。

連携事業・受託研究事例①

図3

「熊本城「城彩苑わくわく座」キャラク ターデザイン&舞台背景イラストレーショ ン(図3)」2017~18年

(6)

ディレクション、ロゴマーク、サイン計画 を請け負った。

学生たちには準備段階から関わってもら い、ワークショップへの参加、資料の整 理、模擬的な企画立案と提案などを経験。

また、オープニングスタッフとして着任し た学生もおり、実学的な学びの場にもなっ ている。

施設は当初計画 2 倍の年間 3 万人以上の 来場があり、今では街の 1 つのランドマー クとして定着している。

上記に触れた事例の多くは実践的な事業 であるため、依頼主の意図を汲み取り、利 用者へ届けるところまで意識することにな る。「マンガを描く」以外の仕事や活動に 目を向ける機会になるとともに、マンガを 活用した幅広い事例に触れる機会になって いる。マンガを学んだ学生の「多様な成功 モデル」の提示が彼らの後押しになり、結 果、次世代を担うクリエイターの育成方法 の一つの可能性が「地域×デザイン×マン ガ」にあるのではないだろうか。

4. 教育的展開として卒業研究で制 作した成果物を通じた「デザイ ン×マンガ表現×展示方法」の 可能性について。

2018 年、2019 年度のマンガ表現コース 所属学生 13 名の卒業研究で制作した成果 物を事例に、マンガ表現の可能性について 模索した取り組みを紹介する。さらに、卒 業制作展での・展示方法・効果を実例で示 す。

本学の卒業研究および卒業制作展のスケ

ジュールは、卒業研究締め切りが例年 12 月初旬であり、その時に作品+研究ノート を提出することになっている。そして、2 月末頃、卒業制作展が行われる。学生に とっては12月初旬から2月末までの期間に 展示プランをブラッシュアップすることに なる。

学生たちの立場に言い換えると、マンガ を描く、うまくなりたい。そしてできれ ば、絵で食べていきたい。恥ずかしいけれ ど、人に見せる必要はある。主な発信方法

SNS。もしくは、まだまだ自分は他人に

見せるレベルではないと謙遜する人や、専 門的な企業が地元に少ないことから諦めて いるという人も少なくない。そんな彼らに とって卒業制作展は、ある意味で強制的に 展示発表せざるを得ない状況だと言える が、せっかく発表するのだから、良い経験 として蓄積してほしい。準備が大変な展 示、展覧会だが、自分の作品や鑑賞者の客 観的な視点を意識する機会になり、結果的 に成長につながる。というメッセージを込 めて指導にあたるようにしている。

5. 卒業研究の事例紹介と考察

成果物と展示方法の結果は以下の通り。 本稿ではより展示方法に特徴があった5 つの事例を取り上げる。

連携事業・受託研究事例④ 展覧会

図6

図7

熊本市現代美術館・上通商栄会との共催  2016 年「江口寿史

KING OF POP

展 くま もと上通編(図6,7)」

熊本市現代美術館の企画展示室・長崎書 店 3 階リトルスターホール・上通商店街全 体を舞台に、地域に溶け込んだ形での展覧 会を展開した。アナログのマンガ原稿やカ ラーイラストなど保存と管理を厳重にする 必要があるものは主に美術館の展示室に、

デジタルイラストやグッズなど複製物につ いては万一の破損等があっても対応できる ので、できるだけ多くの人の目に触れられ

るように商店街の各店舗の壁面に展示し た。また、のぼり旗を数十本作成し、街全 体を江口寿史作品でジャックするような仕 掛けも行った。マンガが持っている一点物 としての芸術性と複製芸術のエンターテイ ンメント性を両面活用して展開した。ま た、期間中江口氏本人によるライブドロー イングイベントを行い、現在活躍している 作家の制作プロセスをライブで配信するこ とも実現した。

教育的意義としては、展覧会の鑑賞に加 えて展示準備も協力してもらい、自分たち でイベントを作ることの面白さや苦労など を経験してもらう良い事例になった。

連携事業・受託研究事例⑤

図8

「合志マンガミュージアム(図8)」

2017年~

熊本市に隣接する人口 6 万人の街、合志 市。市町村合併で統合された郷土資料館跡 にマンガミュージアムを作りたいとのオー ダー。自治体から監修を依頼され、準備段 階から関わった。施設の内装、外装は、崇 城大学建築学科の西郷先生が担当された。

筆者は展示空間や資料の選定、企画立案や 施設の運営方針などに加えて、デザイン

(7)

ディレクション、ロゴマーク、サイン計画 を請け負った。

学生たちには準備段階から関わってもら い、ワークショップへの参加、資料の整 理、模擬的な企画立案と提案などを経験。

また、オープニングスタッフとして着任し た学生もおり、実学的な学びの場にもなっ ている。

施設は当初計画 2 倍の年間 3 万人以上の 来場があり、今では街の 1 つのランドマー クとして定着している。

上記に触れた事例の多くは実践的な事業 であるため、依頼主の意図を汲み取り、利 用者へ届けるところまで意識することにな る。「マンガを描く」以外の仕事や活動に 目を向ける機会になるとともに、マンガを 活用した幅広い事例に触れる機会になって いる。マンガを学んだ学生の「多様な成功 モデル」の提示が彼らの後押しになり、結 果、次世代を担うクリエイターの育成方法 の一つの可能性が「地域×デザイン×マン ガ」にあるのではないだろうか。

4. 教育的展開として卒業研究で制 作した成果物を通じた「デザイ ン×マンガ表現×展示方法」の 可能性について。

2018 年、2019 年度のマンガ表現コース 所属学生 13 名の卒業研究で制作した成果 物を事例に、マンガ表現の可能性について 模索した取り組みを紹介する。さらに、卒 業制作展での・展示方法・効果を実例で示 す。

本学の卒業研究および卒業制作展のスケ

ジュールは、卒業研究締め切りが例年 12 月初旬であり、その時に作品+研究ノート を提出することになっている。そして、2 月末頃、卒業制作展が行われる。学生に とっては12月初旬から2月末までの期間に 展示プランをブラッシュアップすることに なる。

学生たちの立場に言い換えると、マンガ を描く、うまくなりたい。そしてできれ ば、絵で食べていきたい。恥ずかしいけれ ど、人に見せる必要はある。主な発信方法

SNS。もしくは、まだまだ自分は他人に

見せるレベルではないと謙遜する人や、専 門的な企業が地元に少ないことから諦めて いるという人も少なくない。そんな彼らに とって卒業制作展は、ある意味で強制的に 展示発表せざるを得ない状況だと言える が、せっかく発表するのだから、良い経験 として蓄積してほしい。準備が大変な展 示、展覧会だが、自分の作品や鑑賞者の客 観的な視点を意識する機会になり、結果的 に成長につながる。というメッセージを込 めて指導にあたるようにしている。

5. 卒業研究の事例紹介と考察

成果物と展示方法の結果は以下の通り。

本稿ではより展示方法に特徴があった5 つの事例を取り上げる。

連携事業・受託研究事例④ 展覧会

図6

図7

熊本市現代美術館・上通商栄会との共催  2016 年「江口寿史

KING OF POP

展 くま もと上通編(図6,7)」

熊本市現代美術館の企画展示室・長崎書 店 3 階リトルスターホール・上通商店街全 体を舞台に、地域に溶け込んだ形での展覧 会を展開した。アナログのマンガ原稿やカ ラーイラストなど保存と管理を厳重にする 必要があるものは主に美術館の展示室に、

デジタルイラストやグッズなど複製物につ いては万一の破損等があっても対応できる ので、できるだけ多くの人の目に触れられ

るように商店街の各店舗の壁面に展示し た。また、のぼり旗を数十本作成し、街全 体を江口寿史作品でジャックするような仕 掛けも行った。マンガが持っている一点物 としての芸術性と複製芸術のエンターテイ ンメント性を両面活用して展開した。ま た、期間中江口氏本人によるライブドロー イングイベントを行い、現在活躍している 作家の制作プロセスをライブで配信するこ とも実現した。

教育的意義としては、展覧会の鑑賞に加 えて展示準備も協力してもらい、自分たち でイベントを作ることの面白さや苦労など を経験してもらう良い事例になった。

連携事業・受託研究事例⑤

図8

「合志マンガミュージアム(図8)」

2017年~

熊本市に隣接する人口 6 万人の街、合志 市。市町村合併で統合された郷土資料館跡 にマンガミュージアムを作りたいとのオー ダー。自治体から監修を依頼され、準備段 階から関わった。施設の内装、外装は、崇 城大学建築学科の西郷先生が担当された。

筆者は展示空間や資料の選定、企画立案や 施設の運営方針などに加えて、デザイン

(8)

卒業研究事例③イラストレーション・

キャラクターデザイン

11

・「東京オリンピックの新競技を題材にし た動物のキャラクターデザイン(図11)」

成果物:5 競技×各 5 点 計 25 点のイラス トレーション。

2020 東京オリンピックから、野球・ソフ トボール、スケートボード、スポーツクラ イミング、サーフィンの5競技にそれぞれ 5枚ずつイラストを作成。それぞれの競技 ごとにテーマカラーやモチーフにする動物 の関係を決め表現した。

展示方法:大小織り交ぜたパネルを3m以 上の高さと前後複数のレイヤーに分けて展 示。

効果:前後上下に大きく展開することで躍 動感と迫力の演出。

卒業研究事例④ゲーム

12

・「ファンタジーの変遷を遊んで知れる カードゲーム(図12)」

成果物:30 項目 90 点のイラストレーショ ン、カード、スマートフォン用アプリケー ション。

展示方法:カードとフィールドを実物展 示。アプリケーションは大型モニタで実 装。

効果:カードで遊べる工夫とインタラク ティブ(双方向型)な情報ツールとしての 提案。

卒業研究事例①ストーリーマンガ

図9

・「江戸時代を舞台にしたストーリーマン ガ(図9)」

成果物:短編4作、計 78 ページB5サイ ズの冊子。

展示方法:冊子(閲覧可)+デジタル複製 原画+解説パネル展示。

演出:あらすじのパネルと共に各話の名 シーンをコマ単位で抜粋。臨場感を演出 パネルと壁に数㌢の空間を持たせ前後に展 示することで奥行きと動きのある壁面に。

解説パネルは和紙と和柄の模様(千鳥や青 海波)を用いて、江戸らしさを演出。

効果:作品の世界観を具体化すると共に解 説パネルで江戸時代の風俗や風習を追体験 できる。

卒業研究事例②アニメーション・モー

ショングラフィック

10

・「『とりかへばや物語』を題材にしたモー ショングラフィックス(図10)」

成果物:全8章、計30分の映像作品。

平安時代の宮中を舞台に、生まれてきた男 女の二人の子どもの性別を入れ替えて育て る「とりかへばや物語」の内容をキャラク ターイラストとテキストを素材にモーショ ングラフィックスとして表現した。

展示方法:御帳台を模した半暗室を設置し 室内で上映。

効果:モニタ展示では表現しきれない平安 時代の宮中を追体験できる演出として。

(9)

卒業研究事例③イラストレーション・

キャラクターデザイン

11

・「東京オリンピックの新競技を題材にし た動物のキャラクターデザイン(図11)」

成果物:5 競技×各 5 点 計 25 点のイラス トレーション。

2020 東京オリンピックから、野球・ソフ トボール、スケートボード、スポーツクラ イミング、サーフィンの5競技にそれぞれ 5枚ずつイラストを作成。それぞれの競技 ごとにテーマカラーやモチーフにする動物 の関係を決め表現した。

展示方法:大小織り交ぜたパネルを3m以 上の高さと前後複数のレイヤーに分けて展 示。

効果:前後上下に大きく展開することで躍 動感と迫力の演出。

卒業研究事例④ゲーム

12

・「ファンタジーの変遷を遊んで知れる カードゲーム(図12)」

成果物:30 項目 90 点のイラストレーショ ン、カード、スマートフォン用アプリケー ション。

展示方法:カードとフィールドを実物展 示。アプリケーションは大型モニタで実 装。

効果:カードで遊べる工夫とインタラク ティブ(双方向型)な情報ツールとしての 提案。

卒業研究事例①ストーリーマンガ

図9

・「江戸時代を舞台にしたストーリーマン ガ(図9)」

成果物:短編4作、計 78 ページB5サイ ズの冊子。

展示方法:冊子(閲覧可)+デジタル複製 原画+解説パネル展示。

演出:あらすじのパネルと共に各話の名 シーンをコマ単位で抜粋。臨場感を演出 パネルと壁に数㌢の空間を持たせ前後に展 示することで奥行きと動きのある壁面に。

解説パネルは和紙と和柄の模様(千鳥や青 海波)を用いて、江戸らしさを演出。

効果:作品の世界観を具体化すると共に解 説パネルで江戸時代の風俗や風習を追体験 できる。

卒業研究事例②アニメーション・モー

ショングラフィック

10

・「『とりかへばや物語』を題材にしたモー ショングラフィックス(図10)」

成果物:全8章、計30分の映像作品。

平安時代の宮中を舞台に、生まれてきた男 女の二人の子どもの性別を入れ替えて育て る「とりかへばや物語」の内容をキャラク ターイラストとテキストを素材にモーショ ングラフィックスとして表現した。

展示方法:御帳台を模した半暗室を設置し 室内で上映。

効果:モニタ展示では表現しきれない平安 時代の宮中を追体験できる演出として。

(10)

15

鑑賞しやすい角度と展示方法(図14、15)

天井からワイヤー(左)傾く△ 壁直接

(右)垂直◎

・順路と動線への配慮

順路右から左の場合縦書きのルールに習う 順路左から右の場合横書きのルールに習う

・その他、条件 限られた予算、時間

・展示経験の少ない学生でも確実に安全な 方法で・女子学生率 70%(高所や重い荷 物への配慮)・限られた展示時間と予算

・展示壁面環境、展示成果物

展示壁面環境:壁

:

石膏ボード

/

コンパネ

/

コンクリ

使用機材:ピクチャーレールからワイヤー

/

虫ピン

/

押しピン程度の穴

/

※釘&ネジ不

/

ネリゴム

/

ひっつき虫

/

※両面テープ不

展示成果物:

ピタパネ5㍉7㍉/クロス紙

/

額装/

モニター/タブレット

/

冊子

/

グッズ等

・展示工具(図 16)、電動ドリル タッ カー メジャー マスキングテープ 金づ ち ダルマピン長・短 虫ピン ペンチ

16

脚立 2.1 m脚立 1.2 m台形脚立 75㌢台形脚 立50㌢レーザー水平器(図17)

17

展示作業を簡略化する機材「L字型 木パ ネル」の開発

展示作業の経験が少ない学生にもかんたん に扱え、見栄え良く、かつスピーディな展 示を行うことができる機材を開発した。 3種類 幅100×100 幅200×100 幅200

× 200 設置する額やパネルの重量に合わせ て使い分ける(図18)。

卒業研究事例⑤編集(エディトリアルデ

ザイン)・製本

13

・「本を支える「人」を取材した特集誌の 制作(図13)」

成果物:44ページA4サイズ冊子。

紙業メーカー、印刷会社、書店、編集者

を取材した内容を冊子にまとめた。

展示方法:製本した冊子と取材時の写真、

紙見本など関連資料。

効果:取材を通して手に入れた印刷に関す る資料を棚に展示し、手に取れるように。

壁にラックを取り付けた成果物の冊子と 共に、取材先で集めてきた紙、小物、小冊 子など含めて、手に取れる形で展示。

6.展示方法と展示機材の開発

・鑑賞しやすい展示の高さ

見栄えがよい展示、見やすい展示の基本 的な考え方には共通点がある。まず鑑賞者 の視線の高さ(アイレベル)に合わせて、

壁面の高さには優先順位がある。一般的に 最も見やすい高さは 1.5 m前後だとされて いる。これは、人間の目の高さに基づく。

鑑賞する年齢等によって調節や考慮が必要 だが、1.5 mのアイレベルがもっともスト レスなく鑑賞することができ、アイレベル から離れれば離れるほど鑑賞しづらくな る。アイレベルよりも高いものよりも低い ものの方が見づらくなる。例えば、1.5 m から 50

cm

ずつ離れた2mの高さよりも1 m以下の方が見づらくなる。3m以上の高 さでも見上げれば鑑賞できるのに対して、

70

cm

以下になるとしゃがむなど姿勢を変 えない限り鑑賞することは困難になる。

よって展示台などで陳列する必要になる。

14

(11)

15

鑑賞しやすい角度と展示方法(図14、15)

天井からワイヤー(左)傾く△ 壁直接

(右)垂直◎

・順路と動線への配慮

順路右から左の場合縦書きのルールに習う 順路左から右の場合横書きのルールに習う

・その他、条件 限られた予算、時間

・展示経験の少ない学生でも確実に安全な 方法で・女子学生率 70%(高所や重い荷 物への配慮)・限られた展示時間と予算

・展示壁面環境、展示成果物

展示壁面環境:壁

:

石膏ボード

/

コンパネ

/

コンクリ

使用機材:ピクチャーレールからワイヤー

/

虫ピン

/

押しピン程度の穴

/

※釘&ネジ不

/

ネリゴム

/

ひっつき虫

/

※両面テープ不

展示成果物:

ピタパネ5㍉7㍉/クロス紙

/

額装

/

モニター/タブレット

/

冊子

/

グッズ等

・展示工具(図 16)、電動ドリル タッ カー メジャー マスキングテープ 金づ ち ダルマピン長・短 虫ピン ペンチ

16

脚立 2.1 m脚立 1.2 m台形脚立 75㌢台形脚 立50㌢レーザー水平器(図17)

17

展示作業を簡略化する機材「L字型 木パ ネル」の開発

展示作業の経験が少ない学生にもかんたん に扱え、見栄え良く、かつスピーディな展 示を行うことができる機材を開発した。

3種類 幅100×100 幅200×100 幅200

× 200 設置する額やパネルの重量に合わせ て使い分ける(図18)。

卒業研究事例⑤編集(エディトリアルデ

ザイン)・製本

13

・「本を支える「人」を取材した特集誌の 制作(図13)」

成果物:44ページA4サイズ冊子。

紙業メーカー、印刷会社、書店、編集者

を取材した内容を冊子にまとめた。

展示方法:製本した冊子と取材時の写真、

紙見本など関連資料。

効果:取材を通して手に入れた印刷に関す る資料を棚に展示し、手に取れるように。

壁にラックを取り付けた成果物の冊子と 共に、取材先で集めてきた紙、小物、小冊 子など含めて、手に取れる形で展示。

6.展示方法と展示機材の開発

・鑑賞しやすい展示の高さ

見栄えがよい展示、見やすい展示の基本 的な考え方には共通点がある。まず鑑賞者 の視線の高さ(アイレベル)に合わせて、

壁面の高さには優先順位がある。一般的に 最も見やすい高さは 1.5 m前後だとされて いる。これは、人間の目の高さに基づく。

鑑賞する年齢等によって調節や考慮が必要 だが、1.5 mのアイレベルがもっともスト レスなく鑑賞することができ、アイレベル から離れれば離れるほど鑑賞しづらくな る。アイレベルよりも高いものよりも低い ものの方が見づらくなる。例えば、1.5 m から 50

cm

ずつ離れた2mの高さよりも1 m以下の方が見づらくなる。3m以上の高 さでも見上げれば鑑賞できるのに対して、

70

cm

以下になるとしゃがむなど姿勢を変 えない限り鑑賞することは困難になる。

よって展示台などで陳列する必要になる。

14

(12)

22

額装展示への応用

23

24

木材の厚みを調整することで額展示にも対 応(図 23)。本来両端をピクチャーワイ ヤー等で吊り展示しなければならないが、

本機材を活用すると壁に額だけが浮いたよ うに展示できるため、作品鑑賞に集中でき る効果がある(図24)。

7.まとめ

学生たちにとってマンガを活用した実践 的な連携事業や受託研究は「マンガを描 く」以外の仕事や活動に目を向ける機会に なった。

卒業制作は、ともすれば、学生の制作モ チベーションが絵を描くまでで完結してし まうこともある。しかし、成果物をいかに 見栄え良く見せるか、という展示方法のア プローチは、学生が自身の成果物を多角的 に見つめ直す機会になり、展覧会は他者へ 伝わったという充実感や達成感が得られる 場となった。

いずれにせよ、マンガ表現がエンターテ インメントとしての側面を持っている事、 他者へ伝える事の重要性と伝わった時の充 実感を得ることができ、意識向上に一定の 効果があったのではないだろうか。

一方、マンガ家志望の1名の学生からは 展示方法を考える時間よりもマンガ原稿を 制作する時間に当てたかったという意見も あった。今後は学生が取り組む内容を考慮 し、展示方法を検討する時間の割合を柔軟 に対応するなどの対策が必要である。

両者の意見を踏まえつつ、これからも試 行錯誤を続けていく必要がある。

メディアや表現方法が多様化し、広がり 続けるマンガ表現の可能性を、今後も様々 な事業や展示方法を実践し、さらに考察を 深めていきたい。

18

・設置方法と利点

マスキングテープで高さ・左右の位置を 決める。

水平器をパネルの上部において、水平を 測る。(図19)

19

③ 金づちで押しピンをたたいて止める。

(利点)2 つ目の押しピンを打ち付ける 時にはパネルが固定されている。

押しピンを木材のどの位置で止めても対 応可(壁にコンクリや鉄柵が走っていて も逃げられる)。

失敗してもペンチで容易に抜くことがで きる(図20)。

20

木パネルの上辺に滑り止めゴムを敷く。

口の字に木材をボンドで付けておいた作 品を掛ければ完成。利点(上下は固定さ れるが左右の微調整はこのままスライド してできる。)(図21)

21

その他の機材:スタイロフォーム、発泡ス チロールの応用(図22)

(13)

22

額装展示への応用

23

24

木材の厚みを調整することで額展示にも対 応(図 23)。本来両端をピクチャーワイ ヤー等で吊り展示しなければならないが、

本機材を活用すると壁に額だけが浮いたよ うに展示できるため、作品鑑賞に集中でき る効果がある(図24)。

7.まとめ

学生たちにとってマンガを活用した実践 的な連携事業や受託研究は「マンガを描 く」以外の仕事や活動に目を向ける機会に なった。

卒業制作は、ともすれば、学生の制作モ チベーションが絵を描くまでで完結してし まうこともある。しかし、成果物をいかに 見栄え良く見せるか、という展示方法のア プローチは、学生が自身の成果物を多角的 に見つめ直す機会になり、展覧会は他者へ 伝わったという充実感や達成感が得られる 場となった。

いずれにせよ、マンガ表現がエンターテ インメントとしての側面を持っている事、

他者へ伝える事の重要性と伝わった時の充 実感を得ることができ、意識向上に一定の 効果があったのではないだろうか。

一方、マンガ家志望の1名の学生からは 展示方法を考える時間よりもマンガ原稿を 制作する時間に当てたかったという意見も あった。今後は学生が取り組む内容を考慮 し、展示方法を検討する時間の割合を柔軟 に対応するなどの対策が必要である。

両者の意見を踏まえつつ、これからも試 行錯誤を続けていく必要がある。

メディアや表現方法が多様化し、広がり 続けるマンガ表現の可能性を、今後も様々 な事業や展示方法を実践し、さらに考察を 深めていきたい。

18

・設置方法と利点

マスキングテープで高さ・左右の位置を 決める。

水平器をパネルの上部において、水平を 測る。(図19)

19

③ 金づちで押しピンをたたいて止める。

(利点)2 つ目の押しピンを打ち付ける 時にはパネルが固定されている。

押しピンを木材のどの位置で止めても対 応可(壁にコンクリや鉄柵が走っていて も逃げられる)。

失敗してもペンチで容易に抜くことがで きる(図20)。

20

木パネルの上辺に滑り止めゴムを敷く。

口の字に木材をボンドで付けておいた作 品を掛ければ完成。利点(上下は固定さ れるが左右の微調整はこのままスライド してできる。)(図21)

21

その他の機材:スタイロフォーム、発泡ス チロールの応用(図22)

(14)

自治体、企業の方々、そして卒業研究で関 わった学生ひとりひとりに感謝の意を表す る。

註 参考文献      

⑴  出版科学研究所 2019・インターネットメ ディア総合研究所2012

⑵  総務省

   https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/

whitepaper/ja/h30/html/nd251810.html

図 15 鑑賞しやすい角度と展示方法(図14、15) 天井からワイヤー(左)傾く△ 壁直接 (右)垂直◎ ・順路と動線への配慮 順路右から左の場合縦書きのルールに習う 順路左から右の場合横書きのルールに習う ・その他、条件 限られた予算、時間 ・展示経験の少ない学生でも確実に安全な 方法で・女子学生率 70%(高所や重い荷 物への配慮)・限られた展示時間と予算 ・展示壁面環境、展示成果物 展示壁面環境:壁 : 石膏ボード / コンパネ / コンクリ 使用機材:ピクチャーレールからワイヤー / 虫ピン / 押
図 15 鑑賞しやすい角度と展示方法(図14、15) 天井からワイヤー(左)傾く△ 壁直接 (右)垂直◎ ・順路と動線への配慮 順路右から左の場合縦書きのルールに習う 順路左から右の場合横書きのルールに習う ・その他、条件 限られた予算、時間 ・展示経験の少ない学生でも確実に安全な 方法で・女子学生率 70%(高所や重い荷 物への配慮)・限られた展示時間と予算 ・展示壁面環境、展示成果物 展示壁面環境:壁 : 石膏ボード / コンパネ / コンクリ 使用機材:ピクチャーレールからワイヤー / 虫ピン / 押
図 22 額装展示への応用 図 23 図 24 木材の厚みを調整することで額展示にも対 応(図 23)。本来両端をピクチャーワイ ヤー等で吊り展示しなければならないが、 本機材を活用すると壁に額だけが浮いたように展示できるため、作品鑑賞に集中できる効果がある(図24)。7.まとめ学生たちにとってマンガを活用した実践的な連携事業や受託研究は「マンガを描く」以外の仕事や活動に目を向ける機会になった。卒業制作は、ともすれば、学生の制作モチベーションが絵を描くまでで完結してしまうこともある。しかし、成果物をいかに見
図 22 額装展示への応用 図 23 図 24 木材の厚みを調整することで額展示にも対 応(図 23)。本来両端をピクチャーワイ ヤー等で吊り展示しなければならないが、 本機材を活用すると壁に額だけが浮いたように展示できるため、作品鑑賞に集中できる効果がある(図24)。7.まとめ学生たちにとってマンガを活用した実践的な連携事業や受託研究は「マンガを描く」以外の仕事や活動に目を向ける機会になった。卒業制作は、ともすれば、学生の制作モチベーションが絵を描くまでで完結してしまうこともある。しかし、成果物をいかに見

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