女子学生の栄養摂取状況:
日本人の食事摂取基準〔2015年版〕との比較
山 田 加奈子
The nutrition situation of female college students : Comparison with Dietary Reference Intakes for Japanese (2015)
Kanako YAMADA
要約
A meal investigation was performed targeted for 66 female college students who go to a management dietician education school of a N prefecture.
It was indicated to be lacking in nutriment of three, calcium, iron and a dietary fiber in particular by a female college student.
Three nutrients are very important nutrients for young women.
Young women need to have a proper diet, because diet influences children.
It is necessary for human beings to send their diet that they are not deficient in important nutrients.
Therefore, concrete measures are necessary. It is important to keep on with it.
キーワード:女子学生,栄養素摂取量,食事調査,国民健康・栄養調査,痩せ
1.諸言
近年,我々の健康増進の総合的推進を図るための方針として「健康日本21(第2次)」
1)が推進さ れており,「健康寿命の延伸」や「健康格差の縮小」を掲げるなど,国をあげて健康増進運動に取 り組んでいる。しかし『平成27年国民健康・栄養調査の結果の概要』
2)によると,肥満や高血圧,
野菜摂取不足や朝食欠食,若年女性のやせなど,さまざまな健康問題が明らかになっている。この ような健康問題を予防するためには若いうちからの正しい食習慣や生活が重要であり,次世代につ ながるよう健康を確保するためには特に妊娠期の心身の健康づくりが重要とされる
3)。
本研究では女子学生を対象に,栄養素等摂取量の現状とその問題点を明らかにすることを目的に 食事調査を実施した。また日本人の食事摂取基準(2015年版)
4),および平成27年国民健康・栄養 調査結果との比較検討を行った。
2.対象と方法
1)対象
N県内の管理栄養士養成校に通う女子学生66名(20歳代)を対象とした。
2)方法
調査は2015年11月に実施した。アンケートはパソコンによる入力にて行い,食事調査を調査した。
食事調査は食物摂取頻度調査(FFQ)を用いた。最近一ヶ月間の食習慣についての質問に対し FFQソフトを用いパソコンで入力するものである。結果は平均値±標準偏差で示した。
3.結果
表1.女子学生の栄養調査結果とH27年国民健康・栄養調査結果および 食事摂取基準(2015年版)のエネルギーと栄養素等摂取量との比較
※:エネルギー:食事摂取基準については身体活動レベルⅠを用いた
図1-1:女子学生(20代)のエネルギーおよび栄養素等摂取量の充足率
図1-2:H27年国民健康・栄養調査結果(栄養素等摂取量(18-29歳))の エネルギーおよび栄養素等摂取量の充足率
図2:日本人のカルシウム摂取量(20歳代女性)の年次推移
(「健康日本21(第二次)」分析評価事業,カルシウム摂取量(厚生労働省/2014)より作成)6)
1)女子学生のエネルギーおよび栄養素等摂取量について(図1-1)
5)女子学生のエネルギーおよび栄養素摂取量13項目について,日本人の食事摂取基準(2015年版)
をもとに充足率を算出した結果,エネルギーおよびレチノール当量(ビタミンA)とビタミンB
12以外の栄養素摂取量が充足率を満たしていなかった。特にカルシウム,鉄,ナトリウムなどのミネ ラル類や食物繊維の充足率は40〜55%とかなりの低値を示した。PFCバランスについては脂肪エネ ルギー比率が122%と高値を示し,全体のバランスは偏っていた。
2)H27年国民健康・栄養調査結果について(図1-2)
H27年国民健康・栄養調査結果のエネルギーおよび栄養素摂取量13項目について,日本人の食事 摂取基準(2015年版)をもとに充足率を算出した結果,カルシウム,鉄,ビタミンAなどのビタミ ン・ミネラル類や食物繊維の充足率が60〜70%と低値を示した。他の栄養素はそれぞれ70%以上の 充足率であった。PFCバランスについては女子学生の結果と同様に脂肪エネルギー比率が117%と 高値を示し全体のバランスは偏っていた。
3)女子学生のエネルギーおよび栄養素等摂取量とH27年国民健康・栄養調査結果との比較 女子学生の栄養調査結果をみると,H27年国民健康・栄養調査結果と同様にカルシウム,鉄,総 食物繊維の充足率が低値であることが一致していたが,女子学生の充足率がより低値を示していた。
またPFCパターンにおいては両結果ともに脂肪エネルギー比率が120%前後と高値を示し,PFCバ ランスは偏っていた。
図3:年齢階級別 鉄摂取量(女性)
資料:H27年国民健康・栄養調査結果より作成
図4:年齢階級別 食物繊維摂取量(女性)
資料:H27年国民健康・栄養調査結果より作成
4.考察
調査の結果,女子学生では特にカルシウム,鉄,食物繊維の3つの栄養素が不足しており,H27 年国民健康・栄養調査の同年代の結果とほぼ一致していた。
日本人のカルシウム不足や骨粗鬆症などの健康問題は以前から注目されており
7)8),「健康日本21
(第2次)」においても1日の目標摂取量を650mgと推奨している。しかし10年前から平均摂取量は 明らかに減少しており,ここ数年では400mg前後に留まるなど目標量のわずか60%程度に満たない 推移状況である(図2)。国が策定した「食生活指針」において,この慢性的なカルシウム摂取不 足の予防策として乳製品や海藻,小魚などカルシウムを豊富に含む食品の摂取を推奨しているが
9), その具体的改善策は明確化されていないように思う。現在,骨粗鬆症患者は1000万人以上といわれ ており
10),特に発症率が高いとされる女性にとってカルシウム摂取不足は軽視できない問題である。
今回,鉄の摂取不足も大幅に推奨量を下回っていた。鉄の不足は将来妊娠・出産を控えた女性に とって,また鉄欠乏性貧血などを予防するためにも重要な栄養素である
11)。鉄の年齢階級別摂取量 をみると20〜40歳代で低値を表していることが分かる(図3)。その原因として,偏った食生活,
欠食,無理な食事制限などがあげられており,鉄不足の改善策としては食生活を改め,鉄が多く含 まれる食品を摂ることが最も重要である。しかし,鉄が多く含まれる食品で,かつ吸収率が良い食 品はある程度種類が決まっており,特に鉄分を多く含むレバーなどの好き嫌いが分かれがちな食材 などをいくら推奨しても,不足の改善には繋がらないように思われる。
今回の調査結果で充足率が低かった食物繊維の摂取量は9gと目標量のわずか1/2しか摂取で きていない状況であった。食物繊維の年齢階級別摂取量(図3)をみると,20歳代が最も低く,全 体でも目標値には達していない。食物繊維は動脈硬化を予防する栄養素として注目されており、排 便回数をあげる健康指標として重要とされる
12)。これら食物繊維の摂取量が低い理由のひとつとし て「食の欧米化」があげられており,米中心から肉中心の食生活に変化することで穀類からの食物 繊維の摂取量が減り,野菜や豆を使った煮物などのおかずが減ってきたことで摂取量が減少したと いわれている。また最近は野菜の摂取量も減少しており、その理由として「食べきれない」「外食 が多い」「調理が手間」「野菜が高い」等が挙げられている
13)。
今回不足していた栄養素不足の主な原因として全体のエネルギー摂取量の低下が考えられたが,
鉄やカルシウムなどの顕著な不足原因はそれだけではないという報告もなされており,その原因に ついてより詳しく調査する必要がある。
今回調査を行った女子学生は栄養系の学科に所属しており,栄養に関する知識や意識は同年代の 者よりも高く,現在の日本人に不足しがちな栄養素についての知識もあると考えられる。しかし今 回の調査では,栄養に関する知識がバランスのよい食生活に直結するとは考えにくい結果であった。
若年女性の偏った食習慣は本人のみならず,次世代の生活習慣病のリスクを高める可能性もあるた め,日々の適切な食生活の確保が将来の日本の子どもたちの健康にとって重要である。
わが国における総合的な健康増進対策は1978年に始まり,その後、地域保健法,健康増進法や食
育基本法が施行され,以前に比べ食を取り巻く環境は安全かつ豊かになった。しかし社会構造の変
化,医療の進歩によって,日本人の健康課題が次第に変化し、健康問題の背景や原因が分かっても
明確な良策が得られていない状況にあり,従来型の啓発活動だけでは状況は改善しないのではない
かと危惧される。現在の深刻な健康課題を予防・改善していくためには,公衆栄養活動を継続する
と同時に,消費者が自ら進んで不足しがちな栄養素を摂れる商品や仕組みや支援など,目に見える
環境づくりの強化が必要ではないかと考える。
参考文献