2006 年度 公共選択学会『学生の集い』
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育
は
必
要
か
法政大学 黒川ゼミナール
33期公共経済パート
5尾崎 亮太
高橋 翔
星原 喜一郎
10前島 亮介
矢野 翔太郎
目次
序
序
章
章
は
は
じ
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め
め
に
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∼
∼
論
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題
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5 10 15 第一節 日本の義務教育... 6 1-1-1. 現状把握... 6 1-1-2. 義務教育費国庫負担制度の概要... 7 1-1-3. 総額裁量制の概要... 8 1-1-4. 義務教育費国庫負担制度の簡単な一般財源化論... 9 第二節 各国の義務教育制度比較 ... 10 1-2-1. 各国の義務教育における年限等の比較... 10 第三節 日本の新たな試み... 12 1-3-1. 学校選択制の概要... 12 1-3-2. コミュニティースクールの概要... 13 1-3-3. 株式会社による学校経営の例... 13 1-3-4. 6.3 制からの脱却... 13第
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20 第一節 義務教育の意義... 14 2-1-1. 義務教育の基本的必要性... 14 2-1-2. ナショナル・ミニマムと義務教育 ... 15 2-1-3. ナショナル・ミニマムが存在しなかったら-相関関数-... 15第
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25 第一節 日本の学力の低下... 17 3-1-1. PISA ショック ... 17 3-1-2. ゆとり教育の弊害... 18第二節 国庫負担金と地方財政... 19 3-2-1. 地方自治体の財源不足... 19 3-2-2. 地方交付税の不足... 19 3-2-3. 過去の例(一般財源化された教育費用)... 20 5 第三節 義務教育の束縛性... 21 3-3-1. 教育内容の国家規定... 22 3-3-2. 一元化管理... 22
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10 15 20 25 第一節 アメリカ合衆国の学校民営化政策 ... 24 4-1-1. 義務教育課程における民営化の状況... 24 4-1-2. 株式会社導入の背景... 26 4-1-3. 株式会社化を取り巻く議論... 26 第二節 政策提言 日本式チャータースクール(JCS)... 28 4-2-1. 問題点の整理... 28 4-2-2. 日本式チャータースクール(JCS)の仕組みと基準... 29 4-2-3. JCS の特色... 30 4-2-4. JCS 導入における資金の動き... 32 第三節 日本式チャータースクールの検証... 33 4-3-1. モデル都市∼東京∼... 34 4-3-2. 財源移譲による、費用を負担する主体の変化のシミュレーション... 35 4-3-3. 教員制度の変更による費用減少のシミュレーション... 35 4-3-4. 民営化による税収の増加のシミュレーション... 37 4-3-5. 金額には出ない、CS 導入の利点のシミュレーション ... 37 4-3-6. CS 導入による国全体としての利益の整理 ... 37 4-3-7. シミュレーションを終えて∼JCS の有用性∼... 38終
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30序章 はじめに∼論題解釈∼
かねてより日本の義務教育は、レベルの高いものと世界から評価されており、日本人の 勤勉な国民性とあいまって、戦後の驚くべき高度経済成長を支える原動力となった。 5 10 15 20 25 30 35 しかし今日、日本の教育現場では、教育課程の改正に伴う「ゆとり教育」による教育制 度の歪み、学力および学習意欲の低下、教師の質の低下、学級崩壊、不登校など様々な問 題が噴出しており、「教育問題」が大きな問題として広く議論されるようになった。 そこで、この状況を受け、現在三位一体改革の一環として、国単位で様々な教育改革が 検討及び実行されている。また、地域規模においては、学校選択制の拡大、株式会社の参 入、6・3年制の変更、中高一貫校の増加など従来の日本の教育制度を覆す、新しい教育 制度が数多く見受けられるようになった。こういった意味で、日本の教育は激動の時期を 迎えている。 確かに日本では、様々な教育改革がおこなわれているようだが、果たしてそれらの政策 は日本の現状に即したものなのだろうか。今までの日本の義務教育制度が、国民全員に平 等で国際的にも高レベルな教育を提供し、日本の高度経済成長を支えたことは疑いなく、 また、コミュニケーション能力を養う場、社会規範を習得する場としても義務教育自体は 必要であると我々は考える。しかし、50年以上大きな変化がなかった義務教育制度が、 必ずしも今の時代に適応しているとは思わない。 そこで今回の「義務教育は必要か」という論題では,上記の点、及び社会的経済的観点 から見て「義務教育は必要である」ということを前提とし、それを論文の中盤で義務教育 の意義について述べ、詳しいデータ分析を用いて確実性をもたせた上で、少子化・地方分 権化の流れの中で、今後日本はどういった義務教育制度をおこなえば、国全体として発展 していけるのかという部分に焦点をあてて考察を進めていきたい。 論文構成としては、第一章では現在の日本の義務教育制度を見ていくと共に、各地方公 共団体で試されている新しいタイプの義務教育制度や、諸外国で行われている義務教育制 度の特徴などを述べる。そして第二章では、論題となっている義務教育の必要性について 再確認していきたい。第三章では、前章で義務教育が必要ということが分かったが、今の 教育制度が社会の変動にしっかりと対応しているのかということに着目し、今の義務教育 の問題点を挙げていく。そして、これを受けて第四章では、第三章で挙げられた問題点と、 アメリカでのチャータースクール制度導入の例を見ていき、日本での政策の有効性を検証 していく。その上で、公共経済学の中心的要素といえる民営化を軸として、今の日本に適 した教育制度、つまり日本式チャータースクール(JCS)を政策提言とし、その利点などを 述べて論文を締めくくりたい。10
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論題解釈
義務教育は必要であるが、どう時代に適応させていくか
5 15 20義務教育の現状把握
問題点
義務教育は必要では
あるが現行の制度に
問題はないのだろうか
政策提言
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義務教育が
存在している
理由はどこにあるのか
必要性
∼日本式チャータースクールの導入∼
-学校の民営化-
海外の例
日本の例
新たな試み
第1章 義務教育の今∼現在のシステム∼
第一節 日本の義務教育 5 10 15 現在、義務教育は憲法によって定められている国民の三大義務の一つとして存在してい る。それは、親が対して子供に「教育を受けさせる義務」という形での記載である。そも そも義務教育というのは離島、へき地等も含めた全ての地域に平等に、かつ無償で与えら れるべきものなのである。現在は、1947 年に定められた教育基準法に記載されている通り、 小学校6 年間、中学校 3 年間の計 9 年間から成っている。 1-1-1. 現状把握 ここでまず、現在の全国の幼稚園、小中学校数及び児童生徒数を載せておく。 下記のように学校、学生数共にその減り方は近年緩やかになってきているが、おおむね 年々減少している。歯止めのかからない少子化や過疎化による子供の減少によって、学校 数も年々減少していると思われる。 【図1-1】 全国の国公私立幼稚園、小中学校の学校数と在学者数 全国の国公私立幼稚園、小中学校の学校数と在学者数 0 5 10 15 20 25 30 平成元年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年15年16年17年18年 (年) 学校数(単位:千) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 学生数(単位:千) 学校数(幼稚園) 学校数(小学校) 学校数(中学校) 在学者数(幼稚園) 在学者数(小学校) 在学者数(中学校) 20 (「文部科学省HP」平成18 年データより作成)1-1-2. 義務教育費国庫負担制度の概要 次に、義務教育を支えるには欠かせない義務教育費国庫負担制度等について見ていく。 この制度は「教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、義務教育費国庫負担法 及び公立養護学校整備特別保護法に基づき、都道府県が負担する公立義務諸学校の教職員 の給与費等について、その3分の1を国が負担する制度」である。以前までは2分の1だ ったが、平成18 年度から3分の1に変更になった。詳細は下記のとおりである。 5 10 15 20 25 30 35 ・ 義務教育は、国民として必要な基礎的資質を培うものであり、憲法の要請に基づく もの。 ・ 地域間の経済的な格差によることなく、全ての国民が全国どこでも一定の内容・水 準の教育を無償で受けられるよう保障することが必要。 ・ 義務教育の内容・水準を全国的に確保するためには、どの地域でも優れた教職員が 一定数確実に配置できるようにすることが必要。 ・ そのためには、地域間の財政力の違いや年々の財政状況の変動に左右されることな く、一定の教職員給与費が継続的・安定的に確保されることが必要。 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法に基づき、公立義務教育諸学校 の教職員の給与費等について、都道府県が負担した経費の3分の1負担。 〇対象学校 ・公立の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに盲学校、聾学校及び養護学校 の小・中学部 〇対象職種 ・校長、教頭、教員、養護教員、学校栄養職員、事務職員(約70万人) 〇対象経費 給料、諸手当、退職手当、児童手当 〇予算額の推移(単位:億円) 年度 11 年度 12 年度 13 年度 14 年度 15 年度 予算額 30,410 30,233 30,153 30,564 27,879 義務教育費国庫負担制度の必要性は、次の、義務教育に対する国の責任、義務教育無償 と完全就学の保障、教職員の人材確保、へき地や離島などでの義務教育格差の是正、教育 水準の確保、地方財政の健全化、という6つである。
この制度が必要な背景として、上記で述べたような国民経済の基礎的部分となる「人」 という資本の形成、という意味でも必要になってくることがあり、この意味でも国が義務 教育に対してある一定程度以上の責任を持つのが当然であり、もしこの制度がなかったら 財政的に厳しい地方は、特に有能な教員の確保が困難になり、地域によって義務教育のレ ベルに大きく差ができてしまう。 5 ここで、地方及び国の教育費実額と、行政費に占める教育費の割合の推移を載せる。 【図1-2】地方及び国の教育費実額と、行政費に占める教育費の割合 地方教育費実額と国の教育費実額 0 2 4 6 8 10 12 14 16 平成 元年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 年 単位:兆円 国が負担した教育費 地方が負担した教育費 10 15 20 (「文部科学省」HPデータより作成) 現状としては上記の【図1-2】のように、教育費実額に関しては国と地方共に山なりにな っている。地方の教育費の割合は減少してきているが、しかし、平成18 年度に教育費の国 の負担が3分の1に減ってから地方は負担を増やさなければならなくなるので、割合とし ては地方の負担はさらに増えていくと予想される。 1-1-3. 総額裁量制の概要 次に平成 16 年から導入された、総額裁量制について見ていく。文部科学省は、平成 16 年度から、義務教育費国庫負担制度について、教職員給与費に必要な財源保障の責任を果 たしつつ、国庫負担金の使いみちについて都道府県の自由度を最大限に高めるため、「総額 裁量制」を導入することとした。これは簡単に表すと【図1-3】のようになる。
【図1-3】 総額裁量性の概要 <改正前> <改正後>
総額裁量制
給与 期末勤勉手当 教職調整額 義務教育等教育特別手当 管理職手当 特殊勤務手当 住居手当・通勤手当等 5 10 15 20 25 30 給与・諸手当の費用毎に国の水準を超 える額は国庫負担の対象外だった。 費用ごとの国庫負担額がなくなり、総 額の中で給与を自主的に決定できる ようになった。 改革の効果 教員増により少人数学級を実施 給与抑制措置により財源を捻出 多様な選択教科を開設 常勤職員1名に代えて非常勤職員 2名を配置 少人数指導や補習授業を充実 常勤教員1名に代えて退職職員2 名を配置 能力・実績に応じて支給される部 分を増額 給与のうち一律支給の部分の抑制 負担金総額の範囲内で次のような工夫が可能 1-1-4. 義務教育費国庫負担制度の簡単な一般財源化論 前項で、義務教育費国庫負担制度について見てきたが、本項ではそれに関する一般財源 化論について見て行きたい。 もしも全額一般財源化を行った場合、これまで義務教育の教職員給与費にあてるとされ ていた財源がどのような経費にあててもよい財源になることから、義務教育の教職員の給 与の保障がなくなることになる。全額一般財源化した場合に、確かに都道府県の自由度は 高まるが、都道府県が膨大な公債を抱えている現在では一般財源化することで公債費を賄 うという結果になり義務教育の水準を下げる方向に向かうだろうという懸念がある。【図1-4】 一般財源化の狙いと実際
一般財源化
一般財源化により地方財政上 の自由をさらに高め、地方の裁 量により義務教育水準のさら なる向上をはかる 実際には膨大な地方債をかか えており、一般財源化により公 債費を賄うという方向に向か うという懸念が強い 義務教育水準を下げる方向に向かってし まうという懸念!! 第二節 各国の義務教育制度比較 5 10 1-2-1. 各国の義務教育における年限等の比較 日本の義務教育の年限は 9 年であることは周知の事実であるが、ここでまず初めに、義 務教育の年限を国際的に比較した資料を載せる。 【表1-1】各国の義務教育における年限の比較 国名 年限 日本 9 年(小学校 6 年+中学校 3 年) アメリカ 9 年(小学校 6 年+中学校 3 年+middle school)州により異なる イギリス 11 年(小学校 6 年+中等教育 5 年) フランス 10 年(小学校 5 年+中学校 4 年+α) ドイツ 9 年(基礎学校 4 年+中等学校 5 年) 中国 9 年(小学校 6 年+初等中学 3 年) 韓国 9 年(初等学校 6 年+中学校 3 年) 上記の表を見ると分かる通りおおむね 9 年の年限の国が多い。ただ、イギリスのように 年限が11 年という国もある。次に後期中等教育1への進学率を載せる。 1一般的事項を学ぶ高等普通教育のほかに専門的事項を学ぶ専門教育のこと。【図1-5】後期中等教育への進学率 後期中等教育への進学率 (%) 0.3 0.7 (「文部科学省HP」データより作成) 上記の図を見ると日本、韓国はほぼ全ての生徒が全日制の後期中等教育に進学している。 しかしイギリス等のようにまだまだ進学率が低い国もある。 5 次に義務教育の無償化の開始年を見てみたい。 【表1-2】義務教育の無償化の開始年 アメリカ イギリス フランス ドイツ 日本 1850 年までに ほ ぼ 全 て の 州 で 無 償 化 が 実 現した。義務教 育 の 就 業 義 務 は19 世紀の終 わ り 頃 ま で に 導入された。 初等教育: 1891 年小学校 教育法 中等教育: 1944 年教育法 初等教育: 1881 年 6 月 16 日法 法律は公立小学校の無 償化を定めたもの 中等教育: 1927 年 12 月 27 日 初等中等教育: 1919 年 (ワイマール憲 法) 初等教育: 1900 年 ( 改 正 小 学 校 令) 中学校: 1947 年 (教育基本法) (「文科省HP」データより作成) 上記の表を見ると、やはりアメリカがいち早くほぼ全ての州で義務教育を無償化した。 ついでフランス、イギリス、日本、ドイツである。日本は無償化した年が少し遅めである ことがわかる。 10 15 制度の導入および確立が遅かったわけであるから、義務教育制度の改革が各国に比べ、 相対的に遅れ気味であることも納得できる。 94.4 88.6 72 88 83.8 99.3 14.4 9.3 14.2 3.1 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 国名 日本 アメリカ イギリス フランス ドイツ 韓国 全日制 定時、通信 専修学校
第三節 日本の新たな試み 今日の学力低下及び少子化の進行に伴い、地方単位では新しい教育改革が多々見受け られるようになった。この節ではそういった既存の教育制度を覆すような地方の政策を いくつか取り上げていきたい。 5 10 15 20 1-3-1. 学校選択制の概要 かねてより学校、教師を選ぶという観点から、学区制の廃止が注目されてきた。世界 に目を向けると、イギリスで1988年に教育改革法が制定され、学校選択制が導入さ れているし、アメリカ、ノルウェー、オーストラリアなどでも導入され、学校選択制は 世界的に広まっている。一方、日本では平成 10 年の中教審1答申で初めて政策提言に加 えられた。平成 17 年現在、小学校段階で学校選択性を導入しているのは 227 自治体で、 自由選択性2を導入しているのは 31 自治体である。 しかし大阪府のように「しない させない 越境通学」を掲げて学区外通学を従来通 り原則認めない自治体もあり、地域間格差がみられる。この制度の導入により、質の高 い授業が増え、学校教育に対して保護者の信頼を高め教育の質が向上するという可能性 は十分にあるが、それだけでは義務教育が持つ道徳や公共精神等を養う場としての機能 が危うくなる可能性がある。また、当然ながら地域間格差・学校間格差も広がる恐れが ある。よって住民全体の意思により導入の可否を決めるべきであると考える。 【図 1-6】学校選択性の形態と実施自治体数 学校選択性の形態と実施自治体数
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80
自由 選択 ブロ ック 選択 隣接 校選 択 特認 校形 式 特定 地域 選択 その 他 形態 自治体数実施自治体数
(「文部科学省」HPデータより作成) 1 中央教育審議会の略称 2 当該市町村において全ての学校から選択が可能な制度1-3-2. コミュニティースクールの概要 公立学校教育に対する信頼される学校づくりを進めるため、保護者や地域住民のニー ズが学校運営により一層的確に反映されることが重要である。このため、平成 16 年 6 月、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され、教育委員会の判断によ り、保護者や地域住民が、合議制の機関である学校運営協議会を通じて、一定の権限を 持って学校運営に参画することが可能となった。これは、住民参加型の教育として非常 に注目すべきものであり、全国規模での展開が期待される。 5 10 15 20 25 30 35 1-3-3. 株式会社による学校経営の例 アメリカ等では広く認知されている株式会社が運営する学校が、2004 年に始めて誕生し た。全国初の株式会社立学校である「朝日塾中学校」は構造改革特別区域法により岡山市 御津教育特区の研究開発推進学校に認められ、義務教育の一端を担っているにも拘らず、 収入は生徒納付金のみで運営している。「株式会社立」ということで学校法人立であれば免 除される税金等も一般の株式会社と同じように課税されている。このようなデメリットが ありながら、朝日塾中学校が株式会社という形式で創設されたのには理由がある。学校法 人立で個性的な幼稚園と小学校1を経営している朝日学園法人が私立中学校も始めようと思 った際、岡山県が小学校設立時の負債の残高が多いので認可できないとの回答をしたため、 それなら特区制度を生かして株式会社立での学校を開校しようと考えたためである。株式 会社という経費的ハンディ、入学金80万・年間授業料だけでも70万円以上という高い 授業料、実績のない新設校などのハンディを背負いながらも、公立学校の1.67倍もの 年間授業時間、全国初のディスカッション科や美術・体育・音楽の授業でも英語を使うな ど、新しいカリキュラムを次々と取り入れることにより、倍率は毎年2倍を超え、2年目 にして全国11都府県から入学者を出すなど成功を収めているといえよう。また、学校法 人朝日塾は「朝日塾高等学校」を教育特区による株式会社立高等学校として開校する予定 である。これにより日本の教育制度に株式会社立という一つの新たな選択肢を生んだ。 1-3-4. 6.3 制からの脱却 東京都品川区教育委員会は 2006 年 7 月 13 日までに、すべての公立学校 58 校で 2006 年度から、義務教育を 4-3-3 に分けたカリキュラムを導入している。中学で学習内容が 変わるので、教育委員会は特に小 5−中 1 への指導に力を入れている。最初の 4 年間を 基礎教育期間、次の 3 年間を中学校のように教科担任制を導入、子供たちの個性や能力 に応じた教育を進める予定である。 1 朝日塾小学校は、岡山県岡山市吉宗にある私立小学校。運営は学校法人朝日学園。1993 年に開校した。
第2章
義務教育がある意味∼その意義と必要性∼
第一章において義務教育の現状について把握してきた。第二章では、今日において義務 教育は本当に必要なのであろうかということに関して、その意義と必要性について検証し ていきたい。 5 10 15 20 25 30 35 第一節 義務教育の意義 まず始めに、義務教育には二つの側面がある。一つ目は「国家の要請に基づいて国や社 会の構成者たる国民を育成する」というもので、二つ目は「個々の教育を受ける権利を保 障して、その個性や能力を伸ばし、人格を完成させる」というものである。 生きていく上で必要最低限の知識、社会規範が必要になってくるのは当然のことである。 そういった常識等を習得する場として、義務教育というものは大きな意義を持っていると 言える。 2-1-1. 義務教育の基本的必要性 義務教育は必要であるという視点から、上記では義務教育の二つの側面について記載し た。ここではその義務教育が必要であることの理由について見ていきたい。下記に義務教 育の基本的な必要性を記す。 ①社会生活上での必要最低限の知識を身に付ける ②集団行動を通じて社会規範を身に付ける ③集団生活の中でコミュニケーション能力を身に付ける ④義務教育で得た諸知識が日常コミュニケーションにおいて外部経済をもたらす ⑤基礎教育の機会均等を保障する ⑥集団生活により道徳を身に付ける 以上の①∼⑥等のような点において義務教育必要であると言える。いずれ社会に出て生 活する訳であるから、そこには最低限身に付けておくべき知識が存在する。そして同じよ うに、社会にはルールが存在するので、最低限必要な規範というものも存在する。そこに は同時に集団的コミュニケーション能力も要求されてくる。これらの点において義務教育 というのは、やはり学校に通うという事が大切であると考える。 義務教育は、前述したように必要最低限の知識を得るという点でとても大事であるが、 やはり集団生活、コミュニケーションがとても大切である。 これらのことから、義務教育というものは国家が保障し、すべての地域に無償で提供さ れるに値する教育であるといえるであろう。2-1-2. ナショナル・ミニマムと義務教育 まず、ナショナル・ミニマムの定義であるが、これは「国家(政府)によって国民全員 に保障されるべき最低限の公共サービスの水準」と表現することができる。 5 10 15 20 先の定義に立った上で、義務教育におけるナショナル・ミニマムというものについて整 理すると、「市町村立小・中学校の教職員の給与費と旅費について、また市町村立都道府県 立の義務教育諸学校の教職員の給与・諸手当・その他経費について、国が原則3分の1負 担する」と表現することができる。それはつまり、「最小限の教育はすべての国民に等しく 無償で提供しなければならない」という憲法の要請を具体化したものである。 2-1-3. ナショナル・ミニマムが存在しなかったら-相関関数- もしも、ナショナル・ミニマムが存在しないとしたら、最低限に保証されるべきものが なくなるということなので、子供たちは学校に行かなくてもよいという仮定が生まれるこ とになる。そうすると、学校に行かない生徒が増加し、それが学力の低下をひきおこし、 今日の世界における日本の学力低下にさらに拍車をかけることになると危惧される。 そこでわれわれはナショナル・ミニマムを識字率、就学率とみなし、無作為に選び出し た世界80 カ国の就学率と識字率を、回帰分析を用い、必要性を証明することとした。下記 がその結果である。 【図2-1】 識字率と就学率の相関関係のグラフ 識字率と就学率の相関図 y = 0.6731x + 24.747 R2 = 0.6169 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 識字率 就学率
【表2-1】 回帰分析結果
回帰統計
重相関 R 0.78544
重決定 R2 0.616917
補正 R2 0.612068
標準誤差 11.91755
観測数
81
分散分析表
自由度
変動
分散 観測された分散比 有意 F
回帰
1 18069.01 18069.01
127.2214787 0.000
残差
79 11220.21 142.028
合計
80 29289.22
係数 標準誤差
t
P-値
下限 95% 上限 95% 下限 95.0% 上限 95.0%
切片
24.74687 4.296725 5.759472
0.000 16.1945 33.29929 16.1944504 33.29929
識字率
0.673126 0.059678 11.27925
0.000 0.55434 0.791913 0.55433949 0.791913
5 10 15 20 相関関係は0.7854 と、強い相関があるといわれる 0.7 以上の値を示している。 就学率を義務教育制度として捉え、識字率を義務教育の成果と考えた場合、就学率が上 がると、識字率は同じように上昇することがこのグラフからわかる。つまり、学校に行っ ている割合が高ければ高いほど、最低限の学力がついている割合が高くなるということが いえる。 よって、この結果は義務教育が必要だということを示しているデータのひとつといえる。 以上、義務教育の必要性に関して、社会的意義、経済的意義、そしてナショナル・ミニ マムという視点から検証してきた。教育改革というものが多々叫ばれている今日の社会に おいても、義務教育というものは上記の点で必要であると言うことができる。第3章 義務教育制度の問題点∼欠陥を探る∼
われわれはこれまで日本内外の教育制度の現状を見てきて、教育制度が大きな岐路に立 たされていることが分かった。しかし、同時に義務教育制度そのものは必要であることも わかった。そこで、本章では現在の義務教育制度そのものの問題点について指摘していき たいと思う。 5 10 15 20 そして、挙がった問題点を解決する手段として、政策提言を考えていく。 第一節 日本の学力の低下 3-1-1. PISA ショック まずPISA ショックという言葉を耳にしたことがあるだろうか?PISA(Programme for International Student Assessment)とは、OECD が 1980 年代 後半から進めてきた国際教育インディケータ事業(INES)の一環として、1990 年代後半 に検討を開始したものであり、2000 年に第1回調査が実施された。各国が必要な教育施策 を講じていくために、生徒の学力に関する客観的で信頼性の高いデータを得ることを目的 としている。15 歳児を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野に ついて、3年毎に実施されている。その結果は関係者の間でPISA ショックといわれ、各国 の教育政策、政策論議に多大の影響を及ぼすこととなった。 【表3-1】 2003 年 PISA 調査結果 数学的活用力 (前回1位) 1位グループ/香港、フィンランド、韓国、オランダ、 リヒテンシュタイン、日本(6位) 読解力 (前回8位) OECD平均と同程度(14位) 科学的活用能力 (前回2位) 1位グループ/フィンランド、日本(2位)、香港、韓国 問題解決能力 (今年度より実施) 1位グループ/韓国、香港、フィンランド、日本(4位) (文部科学省初等中等教育局資料より作成) 25 2003 年度の結果を見てみると、第一回の 2000 年の調査時よりも順位を若干ではあるが 落としているということがわかる。わが国の学力は、全体的には上位だが読解力などは低 下傾向にありトップレベルとは言いがたい。
32 .5 53 .1 0 10 20 30 4 0 5 0 6 0 日本 OECD平均 ( %) 【図3-2】 学校以外での勉強時間(一週間) 6 .5 8 .9 0 2 4 6 8 10 日本 OECD平均 (時間) 5 10 15 20 (文部科学省初等中等教育局資料より作成) 【図3-1】、【図3-2】はわが国の勉強に対する関心を OECD の平均値と比較して表している グラフである。 PISA ショックにより、学力低下が叫ばれた日本であるが、このデータか らもわかるとおり、学ぶということに対しての興味、意欲がOECD 平均値と比べ少ないと いうことがわかる。 3-1-2. ゆとり教育の弊害 また、学力低下にはこの興味・意欲の低下だけでなく1980 年代から行われ続けているゆ とり教育にも問題があるといえよう。前述したとおり日本では 1980 年代以降、「ゆとり教 育」、「学校スリム化」をスローガンにした政策が進められてきた。しかし、その一連の改 革は、近年の IT 化・グローバル化や知識社会といわれる社会の変化への対応という点で、 合理的でも適切なものでもなかったといえるだろう。それゆえ、「ゆとり教育」政策の総決 算、集大成ともいえる完全学校五日制と新指導要綱の実施時期が近づくにつれて、「学力低 下」を危惧する声が強まっているのが事実であった。そこで2003 年には実施されたばかり の新指導要綱に修正が加えられ、いわゆる「歯止め規定」廃止が明記され、発展的学習内 容などが再び奨励されるようになった。この矛盾こそが現在のゆとり教育の問題点である。
【図3-3】 ゆとり教育の現状 完全学校五日制 第二節 国庫負担金と地方財政 5 10 15 20 25 第一章の現状把握で触れたとおり、現在義務教育費国庫負担金の問題が表面化している。 また、国庫負担金を一般財源化する計画が現在三位一体改革の一環として組み込まれてい る。ここではデータを挙げながらより詳しくみていくことにする。 3-2-1. 地方自治体の財源不足 まずは現状の地方自治体の財源に格差があることで、地方のみの財政で賄える自治体と 賄えない自治体がでてくるのが問題である。 義務教育国庫負担金制度を廃止し、総定額を個人住民税フラット効率1により全額財源委 譲したと仮定した場合の都道府県別増減率をみてみると、47都道府県のうち税収の多い 7都道府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪)を除く40都道府県で財源 不足となってしまう。 3-2-2. 地方交付税の不足 前述のとおりほとんどの都道府県で財源不足が問題になるであろう。 その解決のためにあるのが「地方交付税」である。地方交付税というのは、地方公共団体 の運営の自主性を損なうことなくその財源の均衡化を図り、国が必要な財源の確保と交付 基準の設定を行うことにより地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治 の本旨の実現と地方公共団体の独立性を強化することを目的としている税であり、これに より財源不足が賄えるとされるのだが、実際にみていくと地方交付税は近年毎年減少して おり、財政不足を補えないのではないかと懸念されている。 1 住民税所得割の税率は従来3段階の超過累進構造になっていたが、これを所得の大小に関 わらず一律10%の比例税率構造に変えることにした(応益原則の明確化)。
ゆとり教育
「歯止め規定」
の廃止
(発展的学習の
奨励など)
新指導要綱の実施 1980 年【図3-4】 年度別地域交付税総額と地方借入金1の変化 地方交付税 0 5 10 15 20 25 12 13 14 15 16 (年) (兆円) 地方借入金 165 170 175 180 185 190 195 200 205 210 12 13 14 15 16 (年) (兆円) 5 10 15 (日本の統計2006 総務省 より作成) 3-2-3. 過去の例(一般財源化された教育費用) 過去に一般財源化された教材費は、地方の借金の増加に伴い、各県での予算措置は減少。 教職員配置も同様に各県の財政状況に影響されるおそれがある。 昭和60年に旅費、教材費は一般財源化され様々な効果が生まれるとされたが、上記に 記した地方交付税の減少等の影響により現在では地方債残高が上昇し、旅費、教材費にあ てられる財源が少なくなってきている。 1 交付税特会借入金残高(地方負担分)+公営企業債残高(普通会計負担分)+地方債残高
【図3-5】 一般財源化された旅費、教材費と地方債の関係 0 20 40 60 80 100 120 140 60 62 1 3 5 7 9 11 13 15 年度 兆円 0 20 40 60 80 100 120 % 年度末地方 債現在高 (兆円) 教材費予算 措置率(%) 旅費実績率 (%) (「義務教育費国庫負担制度を考える会(有志)」HPより作成) 5 一般財源化されてきたのは教材費、旅費だけではなく、恩給費や退職手当、児童手当な どもあてはまる。これらの費用も旅費、教材費と同じような問題を抱えている。 【表3-2】 一般財源化されている費用 昭和 60 年 旅費、教材費 平成元年 恩給費 平成 5 年 共済費追加費用 平成 15 年 共済費長期給与、公務災害補償 平成 16 年 退職手当、児童手当 (文部科学省HPより参照) 10 15 20 こうして国庫負担金と地方財源の問題点をあげてきた。 上記の問題点から、多くの人によって提唱されている一般財源化が必ずしも良いとはい えないということがわかるだろう。 しかし、国の三位一体改革の中で国庫負担金の一般財源化政策は着々と進められている。 これを賛成とするか反対とするかが、今後の問題となっていくだろう。 第三節 義務教育の束縛性 子供に教育を平等に受けさせるという義務教育の本質。しかし、それを重視してしまっ たために生まれてしまった弊害も少なくは無い。 ここでは「義務教育の束縛性」という題で次の2つの項目について見ていきたい。 ① 教育内容の国家規定 ② 一元的管理 である。
【図3-6】義務教育の束縛性
義務教育の束縛性
生徒の自主性一元化管理
教育内容の
柔軟性を妨げる国家規定
3-3-1. 教育内容の国家規定 5 現在の教育の内容は学問、芸術、文化、思想、道徳、習俗の領域であり、法的規制には るが、 10 教育の方法・内容については法律で厳 15 3-2. 一元化管理 校教育法は、公立校と私学の教育内容に一律の基準を課している。これが日本の教育 20 の 別 な 教 育 が し た く て もできない ど こ に い っ て も 同 じ 内容 馴染まないものである。全国的なカリキュラムはもちろん存在していて、有用であるのは 確かだ。しかし、それが法的拘束力を持ちすぎていてそれが問題になっている。 文部科学省指導要領は、もともと法的拘束力がないものとして作られたものであ 東西冷戦を反映して、国家に対する教育内容の規制が強化され、法的拘束力が追加された。 法的拘束力があると、教育の方法、内容について規制されてしまい、柔軟性、生徒の自主 性の成長が阻まれるなどの問題が生じてしまう。 さまざまな教育法が存在することを考慮にいれ、 密には規制せず、自己責任による自立的な選択に任せることが良いとされる。これは、日 本社会の均質性を考えれば、教育内容規制の緩和による混乱は生じにくく、大勢は現在の 教育をより洗練させる方向に行き、一部が多様化していくと予想されるからである。 3-学 画一化の大きな原因となっている。 公立校はなんらかの標準に準拠していること、私 学は教育の自由があるということを長所とされていないので、一元化管理といわれ、どこ にいっても同じ教育しかできないという問題が発生している。【表3-3】 公立校、私立校の学校数と生徒数 学校数 (校) 生徒数(人) 立 私 立 公 立 私 公 立 小学校 22,607 198 7,067,868 73,070 増減7 (-249) (4) (-11,920) (2,120) 中学校 10,190 726 3,320,773 247,348 増減 (-48) (5) (-29,734) (4,842) (平成 18 学校基本 速 少しだけ問題点から離れるが、【表 3-4】を見ると、公立校の学校数、生徒数はともに前 年 5 【表3-4】から、独自の魅力ある政策がとられている私立学校の人気が高まってきている 10 会社立の学校にしても、通うには莫大な費用 15 こで、今回の「義務教育は必要か」という論題をめぐって私たちは、公立学校でも私 立 20 よって、本論文のわれわれの政策提言はチャータースクールの導入とし、チャータース 25 年度 調査 報 文部科学省HPより参照) 度よりも減少しており、逆に私立校の学校数、生徒数は上昇していることがわかる。こ の差はやはり上記の問題を加味しており、私立校で様々な独自の政策がとられていて、多 くの魅力を生み出しているということがわかるであろう。 ことがわかる。それは一元化管理の問題の解決だけには限らず、前述した義務教育の問題 点の解決にもあてはまるといえるだろう。 しかし、私立学校もしくは、前述した株式 がかかり、いくら魅力ある学校があっても、実際に通える人は限られてしまう。 そ 学校を見習い、自由な特色のある制度を整えていけば、これらの問題点を解決できるの ではないかと考えた。そして、何十年も変化のなかった公立学校と私立学校という二者択 一の構図を打破し、チャータースクールという新たな選択肢を生むことは、日本の教育界 にとって大きな前進なのではないかと考えた。 クール制度を日本にあった形に変えて、導入によってどれだけの利点が生まれるのかを詳 しく検証していく。 7 平成 17 年度かとの比較、−は減少を示す
第4章 政策提言―学校の民営化―
して今起きている問題点につ われの考える政策提言、つま 5 る。そうしたなか、公益性や公平性が優 10 アメリカ合衆国の状況を客観的に整理し、それらを参考にし、 15 いく前に第一章での各国の義務教育制度につい の比較のところを見てほしい。ここでは義務教育課程(以下、K-128学年)における株式 会 20 状況 いった場合、それが意味するのはK-12 学 おける公立学校の運営に関する株式会社参入を指していることがほとんどである。 25 チ に後者の方式が増えこれにより株式会社の参入が拡大され 30 第1章から第3章まで現在の義務教育の現状、必要性、そ いて具体的に考察してきた。ここではそれらをふまえ、われ り「学校の民営化」について論じていきたい。 わが国では、近年、PFI に代表されるように様々な公共プロジェクト・サービスに対して、 民間事業者のノウハウを導入することが進んでい 先されてきた教育分野への株式会社参入、すなわち学校を民営化するという議論は、日本 では相対的に遅れ気味であり、第1章で触れたとおり、ようやく構造改革特区内での導入 が認められた状況にある。 この第4章ではこうした日本の状況を考慮しながら、教育分野における株式会社参入を いち早く取り入れてきている 日本の教育の実状に即したCS 制度の導入を検討していく。 第一節 アメリカ合衆国の学校民営化政策 アメリカ合衆国の民営化について考えて て 社の状況につき取り扱っていくことにしたい。したがって、特に断りが無い場合はすべ てK-12 学年を念頭に置いた内容である。 4-1-1. 義務教育課程における民営化の 一般的にアメリカ合衆国において学校の民営化と 年に その株式会社の参入形態には主に二つの方式がある。一つは、事業者が学校区とマネー ジメント契約を結び、既存の学校形態を受諾する方式であり、もう一つは事業者自らが ャーター(Charter9)を取得、あるいは既取得者との間で契約を締結し、チャータースク ールを運営する方式である。 株式会社が参入を開始した当初の90 年代前半は前者が中心であったものの、近年ではチ ャータースクールの増加ととも たと言われている。そして、その両方式により株式会社が運営する学校数は、全米24 州に おいて、47 事業者より、417 の学校が運営されている。5年前の同調査と比べると3倍以 上の増加であることがわかる。(【図4-1】) 8 一般的に米国ではこう記されK学年(Kindergarten)から 12 年生までが義務教育とされる ことが多い。 9 設立許可状【図4-1】 アメリカ合衆国における株式会社の学校数と事業会社数のグラフ 135 230 285 368 417 450 (学校数) 100 (事業会 13 20 21 36 47 0 50 100 150 200 250 300 350 400 1988-1999 1999-2000 2000-2001 2001-2002 2002-2003(年) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 社数) 学校数 事業会社数
(Profiles of For-Profit Education Management Companies 2002-2003 より作成)
次に 5 ャータースクール(以下CS)とは直訳で「特別許可により設立された学校」のこと の義務教育課程を改革する過 チャータースクールについて少し詳しく見ていく。 チ を指し、そもそもは荒廃し、質の低下が問われていた米国で 程で考え出された学校である。 【図4-2】 チャータースクールの数の推移 CSの学校数 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 (年) (学校数) 10
(Center for Educational Reform より作成) 【図 4-2】を見るとわかるとおり、1991 年にチャータースクール法が誕生して以来、現在 までに全米41 州が法律を制定し、2003 年で 15 設立されており現在でもアメリカではCS が増え続けていることがわかる。 てはならな は2695 校もの CS が設立、運営されている。 そしてこのグラフに載せることはできなかったが、2006 年現在では 3600 校を超える CS が CSは運営が公費によってまかなわれているれっきとした公立学校である。公立学校と の違いは比較的自由な運営が許されている反面、結果に対して責任をもたなく いということである。
は、それほど古いものではなく米国で大きな議論を引 き起こしているのも、各事業者が比較的積極的に参入を開始した90 年代半ば以降のことで 5 背景を大きく4つに分類する。 特別教育における民間委託 10 られているが、もともと特別教 業者と契約を結び独自のサービスを提供しているケース タビリティ 15 育成果に対する説明責任の高まりを受け、学校区は説明責任並びに結果責任を果たすべ 討するようになった。 校を自由に選ぶことのできるようにすべきであるという、いわゆる「学校選択」の議論 20 してマグネットスクール11やバウチャーシステ ャータースクール(以下CS)の増加に伴い、学校区だけではなく、個々のCS もまた事 25 例が増えている。 たといえるであろう。 30 時間の増加などをはじめとした様々な民間手法の 策が展開され多くのメリットも出ているが、学校の民営化に対する問題点も多く生じて 株式会社による学校運営への参入 ある。そもそもは民間企業が有する効率性追求あるいは創意工夫のノウハウが学校運営に 活用されることを期待され、脚光を浴びることになってきたものであるがその背景をより 詳細に見ていきたい。 ここでは株式会社導入の ① 民間事業者の教育への参入は比較的新しい事象として捉え 育の分野10に限っては学校区が事 は珍しくなかった。 ② 高まるアカウン 教 く、様々な外部事業者の活用を検 ③ 教育における「選択」ニーズの高まり 学 は40 年ほど前からなされておりその結果と ム12などが発案されたのもここ20 年の話である。 ④ チャータースクールの増加 チ 業者と契約を結び運営を委託する こうして4つにまとめてみたが、結局のところは義務教育の質の低下が重要な問題であ り、それを解決する手段として株式会社化が導入され 4-1-3. 株式会社化を取り巻く議論 さて、民間のノウハウが活用され授業 政 いるのが現状だ。ここではそれを詳しく見ていくことにする。 10 身体障害者向け教育など 11 特別の教育方法で生徒をひきつけるという内容から名づけられた。 12学費として利用できるバウチャーを親に配賦し、学校選択権を与える制度。
① 教育成果 チャータースクール(以下CS)では独自のプログラムで事業を展開していくことと同 成績に関する説明責任を負わされている。 5 データもないことからそれら を 10 間事業者に効率かつ有効的な学校運営を見るもうひとつの主要な要点として学校運営 があげられよう。どんなに生徒のパフォーマンスがあがったとして も 15 による授業料などでまかなう。受託料収益は基本的に生徒数×生徒一人当たり の 20 民間事業者経営の学校は利益を追求するあまり教育の質が二の次になる。 25 ・ が一番の関心の対象になる。 、それによ 現 2 過程の学校運営がうまくいっているとは言いがたい 30 状13である。しかし、その一方で受託数を増やしてきた株式会社もあるということを忘れ て 35 時に生徒の学業 しかし、その説明レポートはCS独自で製作したものであり客観的に見ると、データ非 公開であるので真実性に欠け、一般的な学校との比較可能の CSの評価にしていいのかという議論がなされている。 結局のところ、まだまだ民間事業者における学校運営(生徒の学力向上)パフォーマン スについては十分な評価が得られていないのが現状だ。 ② 脆弱な収益構造 民 を行う主体の財務状況 それが多大なコストをかけたものであれば結果として非合理な結果となってしまうから である。 CSの主な収益は学校区や州などの公益な受託料益であり、そのほかはサマースクール などの開校 授業料で定められており、一人当たりの授業料水準は公立学校と原則同額とされている。 しかし、米国にあるCSは多くのところが実際は赤字であるといわれている。それはなぜ か。それは、学校運営には規模の経済が働かないためであり、多くのCSのもつビジネス モデルには限界があるといわれている。また、売り上げに占めるコストはほとんどが教職 員の人件費である。したがって規模の経済が働かないというのはある程度正しいだろう。 また上記の他にも次のような問題点が挙げられる。 ・ (本来の顧客であるはずの)学生より、会社の株主 ・ 規模の利益を追求するあまり、個々の学校区の実情を無視した標準化を図り り学校の質が下がってしまう。 在のところ、株式会社によるK-1 現 はならない。前述のようなデメリットや批判を受けながらも数を増やしてきた事実はそ れだけニーズがあることを示しており、既存の公立学校に変わる選択肢を人々が求めた結 果とも考えられる。 13実際はどんどんCSが増えており、公立学校より少ない委託料が払われており、大幅なコス トカットがなされているのにもかかわらず、受託料が少なく一様に苦しい状況にあった。
ことは、また別の意味において注目に値する14事実である。アメリカでは日本より早くに 5 チャータースクール(Japanese harter School)を新たな義務教育制度の試みとして提言する。 10 の現在の義務教育の問題点を大きく分けると次の4点が挙げら る。 15 政の逼迫:国の負担を減らすために地方への財源移譲が進んでいるが、地方にお がある。 て 20 リカのCS の事例においても問題点を 4 点ほど述べてきた。 25 まっており、赤字主体が多い。 30 る 株式会社化が進んでいるにも関わらず、そして学力低下問題をきっかけにして、CSとい う制度ができたのにも関わらず、CSは賞賛すべき点ももちろん大いに存在するが、まだ これが教育の諸問題を解決する最良の方法とはいえないだろうとわれわれは考える。 第二節 政策提言 日本式チャータースクール(JCS) 上記してきたこれらの点からわれわれは独自に日本式 C 4-2-1. 問題点の整理 これまで述べてきた日本 れ 1.学力低下:ゆとり教育の弊害などもあり、日本の学力水準の低下が表面化 2.財 いても負債は山のようにあり、割り当てられた教育費を他の経費に転用する恐れ 3.カリキュラムの普遍性:統一された指導要領により、画一的一方的な授業が行われ いる。 4.学校・学級閉鎖:少子化・過疎化・学校選択性により学校・生徒数が減少している。 また、アメ 1.評価制度の不整備:評価制度が確立されておらず、学力部分のみの評価となってし まい、学力最上主義が罷り通ってしまう。 2.効率化の停滞:民間の手法を用いた効率化をはかっているが、実際のところ以前の 公立学校時の運営費より額が大きくなってし 3.利益の追求:民会会社であることから、最大の目的が利潤の最大化となってしまい、 出資者を第一に考えてしまい生徒・親・地域がなおざりになってしまう。 4.規模の利益が通用しない:教育という公共財の性格上、いくら姉妹校を開校しよう とも、スケールメリットが生じないことがアメリカでは定説化15している。 これらの問題点を解決するであろう、「日本式チャータースクール)」を次の節から詳し く述べていく。
14アメリカでのCSの支持率は「NAGB(national assessment governing board)」によると
3万ドル以下の低所得者で83%、全体でも80%弱という高い支持を得ている。
15しかし、実際のデータを見てみると、アメリカではCS導入前と導入後で、3,6%∼26.7%(平
均して約 22%)もの経費の差が出ており、平均して一生徒につき 1800 ドル、学校単位では 50 万ドルがコストカットされている。
4-較簡略図 5 在の公立の学校の仕組みを比較してみた図である。説明すると、 人 10 2-2. 日本式チャータースクール(JCS)の仕組みと基準 【図4-3】 現行の公立学校と JCS の比 (2年公共パート作成) 【図4-3】をみてほしい。われわれの考える日本式チャータースクール(以下JCS)と現 まず柱として独立行政法 JCSA(:Japanese Charter School Association 以下JCSA)という組織を作る。この 組織は民間でもなく、国が運営するのでもなく、あくまでも独立行政法人16という立場をと る。こうすることにより、民営化のメリットが生み出され、そして義務教育という国の制 度をひきついでいけるのに適切であると考えるからだ。 16 独立行政法人:国が自ら主体となって直接実施する必要のないもののうち、民間の主体 にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わ せることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として設立される法 人
国、文部科学省
文部科学省
教育予算・法規制 地方公共団体JCSA
学校設立・運営学校
事業者
予算
納税
誘 引
要請
要求
学校
独立行政法人委託
現行の公立学校 日
本式チャー
タースクール(
JCS)
JCSA はすべての JCS を取り仕切る機関であり、事業者側が学校を受託する年数や、お おまかな授業時間の基準など学校運営の規律を制定する。また、事業者側がきちんと学校 運 5 在しており、やは り にする。 10 そ 15 20 -2-3. JCS の特色 JCS の特色についてみていこうと思う。 25 営をしているかという調査も一定時期ごとにやっていく方針である。 こう論じていくと生じるのが現存の教育委員会の存在であるが、教育委員会は現状維持 し、今までどおり運営していく考えだ。CS 以外の公立学校もまだ多く存 ひとつの独立行政法人にすべてを任すというのは危険性が高いからだ。具体的にかかわ るのではなく、裏から支えるような位置付けになるであろうとわれわれは考える。 JCS 設立の段階としては、学校側から JCSA に他の事業者に学校運営をしてもらうとい う意思を伝えるという場合と、JCSA が逆に学校に誘引する場合とに考えられるよう してそれを受けたJCSA 側は CS を設立しようとしている事業者側に公開入札制度を利用 し委託をして、その学校を事業者が自由な政策で運営していくようにしていく。さらに JCSA は義務教育の一環であるので、国から予算をうけとり、また独立行政法人という一面 ももっているので、国に税を納めるという義務ももつ。これがCS 制度の大まかな流れであ る。(【図4-4】) 【図4-4】 JCSA の仕組み (
財政難
2 年公共パート作成) 4 次にわれわれの考える荒廃
学校公開入札
公開入札要請
公募
赤字補填準備金制度
事業者
JCSA
審査・任命
インセンティブ
① 多様なカリキュラム チャーターし、運営していく方式はアメリカと同じであるが、 見てわかるとおり、公立の学校とわれわれの考えるJCS には大きな違いがあることがわか 5 る 10 験や芸術を重視した学校、障害のある子ど も 15 も規定がないためそれをうまく利用することで学力低下にも歯止め が 20 JCS は設立者がいくつか制限もあるが基本的自由につく ことのできる学校であり、上から強く押し付けられたものでなく、民間事業者で運営し 25 30 35 事業者が既存の公立学校を であろう。いまの公立学校や私立学校は同一年齢で区切り、その年齢で学ぶべき学習内 容を定めた学習指導要領に完全に準拠した授業を行なっているが、JCS の場合は JCSA 設立 時に遵守すべき最低限の要綱を規定し、その要綱を前提とし、各々の学校が独自の学校プ ランで教育を行うことができるようになる。 また、CS が一般化し成果が証明されれば、学年枠を無くして子どもたち個々人の興味と 関心による個別プログラムを用意する学校、体 たちを積極的に受け入れる学校、その他の多様なニーズを持つ子に合わせたカリキュラ ムで運営する学校など、もっと多様な学校が作られ、前節であげた問題点を解決すること ができると考える。 これにより、前章で論じた一元化管理や、教育内容の国家規定の問題などが解決され、 さらに授業時間などに かかり17、生徒たちの自主性、柔軟性を育むことができる結果となるであろう。 ② フレキシブルな学校体制 【図4-3】からもわかるとおり、 る ていくので、問題の原因となっている要因を取り除いた望ましい学校をつくることができ る。どのような学校をつくるかを任せられている代わりに、設立者にも選択する保護者に も責任が問われるであろう。その中で不登校の問題や、学級崩壊の問題をみてみると、わ れわれは現在の公立学校に比べればその件数は減るのではないかと考えている。それは、 やはり前節でも触れたとおり子供の学校選択の幅が広がり、生徒のニーズにあった学校が 誕生していくからだと考える。JCS はアメリカの CS 制度と違い株式会社化してないので、 利益を追求することを一番には考えない。よって生徒や保護者を第一に考えるため、その ような問題が発生しにくいと考えることもできるであろう。 17 2005 年アメリカのデータではCSが導入された学校のうち76%の学校で、元の学校より 高いスコアを記録している。