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レジオネラ選択分離生培地の比較検討

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Academic year: 2021

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道衛研所報Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health,58,51−54(2008)

レジオネラ選択分離生培地の比較検討

Comparison of Prepared Selective Agars for the Isolation of Lεg oηθ11α

森本  洋 宮坂 次郎*

Yo MoRIMoTo and Jiro MryAsAKA

Key words:五εg加θ〃αspecies(レジオネラ病菌);GVPC agar(GVPC寒天培地);MWY agar      (MWY寒天培地);WYOαagar(WYOα寒天培地)

 公衆浴場及び旅館業におけるレジオネラ症発生防止対策 については,「公衆浴場における衛生等管理要領等につい て」(平成12年12月15日付生衛発第1811号厚生省生活衛生 局長通知)の中に盛り込まれ,初めてレジオネラ誓言の基 準(10CFU/100 mL未満)及び検査法(冷却遠心濃縮法又 はろ過濃縮法のいずれかによること)が示された.この後,

「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」(平 成15年2月14日付難球第02!4004号厚生労働省健康局長通 知)で新たに また,その具体的手順は「新版レジオネラ 症防止指針」の「<付録>1環境水のレジオネラ三訂検査 方法」を参照すること という一文が加えられた.

 本防止指針の中で,現在,市販され普及している3種の 選択培地(MWY, GVPC, WYO)について,純培養菌 の浮遊液を用いてBCYEα培地(非選択培地)と比較した 実験では,発育支持力に大差はなく,検水中に混在する細 菌・真菌叢の抑制にどの選択剤が有用かにかかっており,

特に培地の種類を指定しない1)と記載している.

 そこで,我々は,現在利用されている他の検査マニュア ル25)も参考に培地を検索し,広く普及している市販選択分 離生培地を使用し,実際の浴槽水(温泉水)を試料とした 場合のレジオネラ属菌検出結果について検討を行ったので 報告する.

1.使用選択分離生培地

 現在汎用されている市販選択分離生培地である,5社

(極東製薬工業(株),日研生物医学研究所,Oxoid, Bio−

m6rieux, Merck)のGVPC寒天生培地,栄研化学(株)の wYoα寒天生培地, oxoid社のMwY寒天生培地を使用

した.

2.供試試料

 9カ所の浴槽水(温泉水)各500mLを供試した.

3.検査法

試料を非濃繍料膿腫料(ろ過灘法:直1蚤47㎜,

孔径α2μmのメンブランフィルター使用)に分け,それ ぞれを前処理(未処理,熱処理:50℃20分,酸処理:0.2M HC1・KCI buffer pH2.2を加え室温で4分間放置)し,

各前処理試料100μL(酸処理試料は200μL)を各選択分離 培地に塗布した.それらを37QCで10日間培養(毎日観察)

し,レジオネラ様集落を釣増し,区画したBCYEα寒天平板 培地と血液寒天平板培地に画線培養した.培養後,BCYEα 寒天平板培地にのみ発育したものをレジオネラ属菌と推定 した.レジオネラ属菌の同定は,PCR法臥7),レジオネラ

免疫血清「興研」,レジオネララテックステスト

(oxoid), DDHレジオネラ(極東)によるDNA−DNA ハイブリダイゼーションにより行った.

*熊本県保健環境科学研究所,現熊本県食肉検査所

結果及び考察

 レジオネラ属菌検査結果を表1(ろ過濃縮),表2(非 濃縮)に,レジオネラ属菌以外の細菌の検出結果を表3

(ろ過濃縮)に示した.9試料すべてでレジオネラ属菌は 確認されたが,9試料すべてからレジオネラ属菌を検出で きた培地はなかった.今回最もレジオネラ属菌の検出頻度 が高かった培地はWYOα (栄研)で9試料中8試料,次 いでGVPC (Biom6rieux, Oxoid)が7試料, MWY

(Oxoid), GVPC(Merck,日研)が6試料, GVPC(極 東)が4試料であった.相の供試試料では,WOα

(栄研)にGVPC(Biom6rieux)を組み合わせることによ り,全試料からレジオネラ属菌を検出することができた.

しかしながら,この組み合わせでも今回確認された全菌種 を検出することはできなかった.また,レジオネラ属菌数 が最大値となった条件をすべて満たすこともできなかった.

一51一

(2)

表1 汎用されているレジオネラ属菌用選択分離生培地を利用した温泉水からのレジオネラ属菌検査結果    一ろ過濃縮試料からの出現菌種と前処理法ごとの出現画数(CFU/100 mL)一

検体Nα 出現菌種      WYO前処理

     (栄研) MWY

(Oxoid) GVPC    GVPC    GVPC

(Merck) (Biom6rieux) (Oxoid)

GVPC

(日研)

GVPC

(極東)

A五.p. SG1

10 10

BL.プ乙θ1θ

30

C  五.p. SG1,10   ムわ∫r席π9加η榔3融

101>

302)

103)

10D

101) 301》

101)

DL.p.SG6

20 30

40

50 10

50 30

30 10

20 E  五μSG6

40 20

40 20

40 40 20

30 40 10

30 30 20

30 20

30 40 20 F  ゐ.p. SG6

  ム。α肋㎏εη∫な

30の

205〕 105)

105)

1051

Gムρ.SG1,10

403)

403)

101)

401) 403〕

H廉 ゐ.p. SG1,2,5,13,UT    五.剛加 1μcθη3    ゐ.S.

200 330 190

750 420 200

290 740 260

1130 390

520 520 180

820 750 340

1100

1※恢

菌数表示の無いものは10CFU/100 mL>

無:処理無し 熱:50℃,20分間

酸:0.2MHCl・KCl buffer pH2.2を等量加え,室温で4分間

※ 各条件ごとの詳細な検出・同定データなし   発育した細菌数が多すぎてカウントできず

ムρ,:ムPηε〃脚助 1α 1)五.p. SG10

2)ムρ,SG10=10, L.ろ加η勿g肋那θη3 ∫:20 3)五,ρ,SG1

4)L,p, SG6=10,五. oα肋噌θ瀕5:20 5)五.ρ.SG6

表2 汎用されているレジオネラ属菌用選択分離生培地を利用した温泉水からのレジオネラ属菌検査結果    一非濃縮試料からの出現菌種と前処理法ごとの出現菌数(CFU/100 mL)一

検体Nα 出現菌種      WYO前処理

     (栄研) MWY

(Oxoid) GVPC    GVPC

(Merck) (Biom6rieux

GVPC

(Oxoid)

GVPC

(日研)

GVPC

(極東)

A ND

B ND

C ND

D ND

E ND

F ND

G ND

H  五.ρ,SG1,2,13,UT    五.FZめかz麗8η8    ゐ.S .

10001) 20002)

10003)

10004)

20001)

10005)

20006)

1 L.P. UT, L sp.

L.溺ooθα盈εr加∫

L.剛br 1〃。θη∫

五.〃2ゴ。ぬ謡9ノ

10007)

140008)

130009)

2800010)

2400011>

30007)

3000012)

4300013,

27000エ4,

1600015)

10007)

2000016,

6000017)

10004)

2400018)

2100019)

10007)

250007)

180007)

ND:非検出

菌数表示の無いものは1000CFU/100 mL>

無:処理無し 熱:50℃,20分間

酸=0.2MHCl・KCI buffer pH2.2を等量加え,室温で4分間

ム∫フ.:五μθ彿那(〜ρ捌α 1)五,p. SG2

2)L.p. SG2, UT 3)L.μSG1

4)L.醒ろr∫1zぜ。εη∫

5)五.sp.

6)L.ρ,SG13 7)ムp.SGUT

8)五.μSGUT:11000,ムsp.13000 9)ムμSGUT:12000,五sp.:1000

10)L,p. SGUT:22000,五. sp.:300(L五,用αcθαcぬθrη :2000,

 L,加。ぬ4θ∫=1000

11)五,p. SGUT:23000, L.〃2 αわ4ε :1000 12)L.p. SGUT:25000, L. sp.:5000 13)五.ρ.SGUT:30000, L, sp.:13000

14)L.ρ.SGUT:18000, L, sp.:7000, L.αoθαc舵剛 :1000,

 L.厩。ぬ4ε 二1000

15)五.ρ,SGUT:13000, L. sp.:2000,五.,ηocθαc乃θrηガ1000 16)五.ρ,SGUT;13000, L. sp.:6000,乙.醒αcεαc乃θr認:1000 17)L,∫フ,SGUT l 55000, L.sp.:3000, L.加α6θαc舵η2 ∫:1000,

 L.雁。4α鹿 =1000

18)L,p, SGUT:17000,五. sp.=5000, L.,ηαoεαc舵rη∫∫:1000,

 L.η2 oぬ4εf:1000

19)五.μSGUT:18000,五. sp.13000

一52一

(3)

表3 選択分離生培地上に発育したレジオネラ属菌以外の細菌    一ろ過濃縮試料からの前処理法ごとの出現菌数(CFU/100mL)一

検体Nα 前処理 WYO

(栄研) MWY

(Oxoid) GVPC    GVPC    GVPC

(Merck) (Biom6rieux) (Oxoid)

GVPC

(日研)

GVPC

(極東)

A

50 40

十十十 十十

十十 250 300

十十十 620 550

十十十  十  10

十十 820 20

十十十  十

B 十十十

20

30

10

40 20

C

1630 4

140 70

1710

十十 1350 2490

2910 80 40

220 620

十十十 十十十

D 十十

1580 50 60

十十 310 20

1980 210

2160 450

90

十十十 770  20

2330 2400 230

十十十1140 2470

E

310 10 10

710 10 70

120 30

350 530

100

210 20

800

も0

20

F

10 10

20 20

60 10 30

140 10

30 50

70

50 20

G

2250 670 120

十十十1580 410

十十十 1620

530

十十十 十十十 1090

十十十910 250

十十 1070 290

十十十 十十十

H 十十十

10 670

500 10

110

十十 330 2070

560 40

720 10 50

十十十1020  十 菌数表示の無いものは10CFU/100 mL>

無:処理無し 熱:50℃,20分間

酸:0.2MHC1・KCI buffer pH2,2を等量加え,室温で4分間

+ 1カウント不能で培地の3μ程度に発育

++:カウント不能で培地の5/6程度に発育

+++:カウント不能で僅かな隙間のみ,ほぼ培地全面に発育

以上のことから,精度の高い結果を得るためには,複数の 選択分離培地を使用することが必要であると考えられた.

その組み合わせについては最適なものはなく,検査者が,

使用した分離培地上に発育した,レジオネラ属菌と雑菌と の判別がしやすい培地を選ぶことも,重要な要素であると 思われる.

 今回処理方法の異なる3試料(試料E:無処理,H:熱 処理,1:熱と酸処理)で,すべての培地からレジオネラ 属菌が検出された.試料Hと1では,熱や酸処理により他 の細菌の発育が抑制されたこと,またレジオネラ属菌の数 や種類が多かったことが検出に寄与したと思われる.しか しながら,試料Eは他の細菌が混在した無処理からのみ,

すべての選択分離培地で検出された(表1,3).また,

五pηθ〃〃2ρρ観α血清群6のみが検出され,その菌数は20〜

40CFU/100 mLと少なかったが検出された.このことは,

熱や酸処理を行わなくても十分にレジオネラ属菌を検出で きる場合があり,さらには,熱や酸処理をすることがレジ オネラ属菌にも影響し,検出困難になる可能性も否定でき ないと思われた.特に試料A,B, C, Fにおいては,無 処理の重要性を示す結果であったと思われる。例えば,湯 口より上流部の温泉水や清掃消毒後の浴槽水など,比較的 細菌の混在が少ないと思われる試料に対しては,無処理を 併用することが望ましいと思われる.試料中にレジオネラ 属菌が存在していても,すべての前処理(無・熱・酸)条 件から同等にレジオネラ属菌が検出されるわけではない.

このことは,どの選択分離培地に対しても言えることであ る.精度の高い検査を行うためには,無,熱,酸すべての 前処理を行うことが必要と考えられた.

 試料1の結果(表2)を見ると,すべての選択分離培地 からレジオネラ属菌は検出されているが,検出菌種に大き な違いが認められた.本試料からは5種類のレジオネラ属 菌が検出されているが,それらすべてを検出できた培地は GVPC(日研)だけであった.次いで4種類検出されたの が㎜(Oxoid)とGVPC(Biom6rieux, Oxoid)であり た.WYOα(栄研)とGVPC(Merck)は2種類, GVPC

(極東)では1種類しか検出することができなかった.検 出菌種から見ると,五pηε㍑〃π励ぬ血清群UTはすべての 培地から検出され,五.sp.もGVPC(極東)を除く6種類 の培地で検出された.しかしながら,ム〃2αoθαo雁競と 五.砺c面4ε は4種類(MWY:Oxoid, GVPC:Biom6rieux,

Oxoid,日研), L. rμわr勧o召π3については1種類(GVPC:

日研)でしか検出されなかった.これらのことから,菌種 によっては使用選択分離培地さらには各前処理との組み合 わせによる条件の違いが,その検出に大きな影響を与えて いる可能性が示唆された.また,これら条件の違いによっ て,培地上に発育する他の細菌の数や種類の違いもレジオ ネラ属菌の検出に影響を与えているものと思われる.

 試料Hの非濃縮試料の結果(表2)を見ると,

1000〜2000CFU/100 mLのレジオネラ属菌が存在している と思われた.しかしながら,濃縮試料の結果(表1)を見

一53一

(4)

ると1000CFU/100 mL以上のレジオネラ属菌が確認された のは,GVPC(Biom6rieux,極東)の熱処理条件だけであっ た.特に濃縮試料における酸処理条件だけで見ると,どの 培地においても他の前処理条件より菌数が少なく,

180〜390CFU/100 mしであった.しかしながら,非濃縮試 料では酸処理条件でレジオネラ属菌が最も多く確認されて いる(WYOα:栄研, MWY:Oxoid, GVPC:Merck,

日研).これらのことから,試料を濃縮することが,レジ オネラ属菌の検出に対し,何らかの弊害を与えている可能 性が示唆された.今回の実験では,試料A〜Gのように,

レジオネラ属菌数が101CFU/ユ00 mLレベルであれば,試 料を濃縮することが効果的であると考えられる.しかしな がら,試料Hのように濃縮をすることによって結果に大 きな違いが出る場合もあった.試料中の菌数を事前に予測 することは困難な場合が多く,精度の高い検査を行うため には,非濃縮試料を用いた検査も重要と思われる.

 今回5社のGVPC寒天生培地を使用したが,各社でレ ジオネラ属菌の陽性数,検出菌数検出菌種に違いが認め られた.同じ培地として通常考えるが,各社で特徴がある か今後検討が必要と思われる.

 今回の実験では,試料の濃縮,非濃縮,前処理,使用選 択分離培地,またそれらの組み合わせによる条件の違いに より,レジオネラ属菌の検出数,種類に違いが認められ,

検査結果に大きな影響を与えていることが示唆された.こ れらのことから,浴槽水の衛生管理上,レジオネラ属菌の 基準を定める上では,可能な限り統一した検査方法を示す

ことが望ましいと思われる.

 終わりに臨み,本研究は平成19年度厚生労働科学研究補 助金(地域健康危機管理研究事業)「迅速・簡便な検査に よるレジオネラ対策に係る公衆浴場等の衛生管理手法に関 する研究」の一環として実施されたことを付記する.

1)厚生省生活衛生局企画課監修:新版レジオネラ症防止指針,

 財団法人ビル管理教育センター,東京,1999,pp.85−86 2)改訂・レジオネラ属菌防除指針一温泉利用入浴施設用一,

 (財)全国環境衛生営業指導センター 全国旅館環境衛生同  業組合連合会,東京,1999,pp.15−27

3)社団法人日本水道協会編:上水試験方法2001年版,社団法  人日本水道協会,東京,2001,pp.654−658

4)社団法人日本水道協会編:上水試験方法解説編2001年版,

 社団法人日本水道協会,東京,2001,pp.886−888 5)日本薬学会編:衛生試験法・注解2005,金原出版,東京,

 2005,pp.103−105

6)山本啓之:臨床と微生物,25(ユ),35−39(1998)

7)舘田一博:臨床と微生物,26(増刊号),603−606(1999)

一54一

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