• 検索結果がありません。

凌廷輝編『人生地理学』に関する一考察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "凌廷輝編『人生地理学』に関する一考察"

Copied!
20
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

凌 廷 輝 編 『人生 地 理 学 』 に関 す る0考 察(高 橋)79

凌 廷 輝 編 『 人 生 地 理 学 』 に関 す る一 考 察

高 橋

1.は じ め に

2.凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 出 版 の 背 景 2‑1.「 奥 付 」

2‑2.「 総 論

3.凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 の 内 容 概 観 3‑1.『 最 新 人 生 地 理 学 』 と の 比 較

3‑2.「 漸 江 潮 」 『江 蘇 師 範 講 義 ・地 理 』 との 関 係 4.む す び に

1.は じ め に

2007年10月 多 元 文 化 と世 界 の調 和 」 池 田大 作 思 想 国 際 学 術 シ ン ポジ ウ ム にて 、 アモ イ大 学 の黄 順 力 教 授 が 「『江 蘇 師範 講 義 ・地 理 』 と 『人 生 地 理 学 』 の 比 較 研 究 」 と題 し研 究 発 表 を行 っ た。 この 時 、1909年 人 生 地 理 学 』(凌 廷 輝 編)の 実物 の 存 在 が 再確 認 され た 。

『人 生 地 理 学 』 は1903年 に牧 口常 三 郎 に よ っ て著 され た書 籍 で あ るが、 新 鮮 な書 名 の 故 に、 また1000余 ペ ー一ジ に もわ た る大 著 の故 に、 出版 され るや い なや 大 きな 注 目 を集 めた 。 それ は 日本 人 ば か りで な く、 当時 日本 に留 学 して

(2)

い た 中 国人 学 生 か ら も注 目 を集 め た。 今 日、 中 国 の研 究 者 に よって 、 牧 口著 の 『人 生 地 理 学 』 が 中国 人 留 学 生 に よっ て 中 国語 に翻 訳 され て 、 しか も四 種 類 出版 され て い た こ とが 明 らか に な っ て い る。

一 種 類 目は、1903年 発 刊 の 月 刊 誌 「漸 江 潮 」(第9期)(第10期)で あ る。

これ は 『人 生 地 理 学 』 の 「植 物 」 「海 洋 」 の 部 分 訳 で 印刷 は 日本 で あ る。 中 国 の 多 くの 地 で 販 売 され た。 二種 類 目 は、1906年 出版 の 『江 蘇 師範 講i義 ・地 理 』 で あ る。 牧 口は1904年 か ら1907年 にか けて 、 嘉 納 治 五 郎 が創 設 した 中 国 人 留 学 生 の た め の 弘 文 学 院(1902年 一1909年)で 人 生 地 理 学 を講義 して い た 。 同書 は牧 口 の講義 を受 けた江 蘇 師範 学 生 が 受 講 記 録 を編 集 して 出版 した もの で 、 印 刷 はや は り日本 で あ る。江 蘇 省 の多 くの師 範 学 堂 で教 科 書 と して 使 用 され た 。 三種 類 目は、1907年 出版 の 『最 新 人 生 地 理 学 』 で あ る。 世 界 語 言 文 字 研 究会 編集 部 に よ り翻 訳 され た全 訳 の 学 術 書 で あ る(挿 絵 、 添 付 の地 図 も全 く同 じで あ る)。 印 刷 は 日本 で、 中 国 各 地 の 大 書 房 で 販 売 され た 。 同 書 は大 変 に好 評 を博 し、 出版 同年 に再 版(初 版 は7月 、 再 版 は10月)が 出版

され て い る。

四 種 類 目 は、1909年 出版 の 凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 で あ る。 同書 の 存 在 は、0人 の 中国 人 研 究 者(郭 双林 『西潮 激 蕩 下 的 晩 清 地 理 学 』 北 京 大 学 出版 社2000年)に よっ て確 認 され た が 、 そ の後 しば ら く実 物 の存 在 が不 明 で あ っ

た 。1909年 出 版 の 『人 生 地 理 学 』 は、 その2年 前 に全 訳 本 が 出版 され て い る だ け に、 大 変 に興 味 が もた れ て来 た 。全 訳 本 を基 に、 そ の後 の 留学 生 また研 究 者 が 、 人 生 地 理 学 を どの よ うに と らえ、 どの よ うに発 展 させ て い った の か

を考 察 す るの に、 一 つ の資 料 を与 えて くれ るか らで あ る。

本 稿 にお いて は、 凌 廷 輝 編 『人 生地 理 学 』 の 出版 の背 景 を分 析 し、其 の 他 三種 類 の 中国 語 訳 人 生 地 理 学 」 との 関連 を検 討 しなが ら本 書 の 内容 を概 観 し、 四種 類 の 中国 語 訳 人 生 地 理 学 」 の 中 で の 位 置 づ け につ い て考 察 を試 み る。

(3)

凌廷 輝 編 人 生 地 理 学 』 に 関 す る一 考 察(高 橋)81

2.凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 出版 の 背 景

(1)

2‑1.「 奥 付 」

奥 付 」 に は 次 の よ うな 記 載 が あ る

宣統元年四月初版印行 定価大洋三角半

編集者 帰安凌廷輝 寧波 日昇街 発行者 新学会社 寧波江北岸

印刷所 釣和印刷公司 北京琉璃廠漢 口黄陵街 発行所 新学会社 広東双門底

分発行所 新学会社 上海棋盤街 総発行所 新学会社

宣 統 元 年 とは1909年 の こ とで 、本 書 は1909年4月 に凌 廷 輝 に よ り編 集 さ れ 、 新 学会 社 に よって 発 行 さ れ た こ とが分 か る。

編 者 の凌 廷 輝 につ いて は そ の詳 細 は不 明 で あ るが 、 現 在 判 明 して い るの は 以 下 の 内容 で あ る。漸 江 省 帰 安(旧 名 、現 在 の地 名 は呉 興)出 身 で、 日本 に 留 学 し1903年 に弘 文 学 院 を卒 業 して い る。 留 学 中 に は漸 江 出 身 者 を 中心 と し て 組 織 され た漸 江 同 郷 会 の会 員 と して活 動 した 。 同 会 は1903年1月 よ り月刊 漸 江 潮 」(全 部 で12期 発 刊)を 発 刊 して い る。 同雑 誌 の特 色 は、一・つ は、

帝 国主 義 的侵 略 や それ に起 因 す る重 大 な危 機 につ い て の 文 章 が 多 い とい う こ と、 二 っ 目 は、 民族 主 義 を提 唱 し清 朝 打 倒 を呼 び か けて い る とい う こ と、 三 つ 目 は、 進 歩 的 な科 学 文 化 の学 説 を多 く紹 介 して い る とい う こ とで あ る。 特 筆 す べ き は、 同 雑 誌 に お い て 牧 口常 三 郎 著 『人 生 地 理 学 』(1903年10月)の 部 分 訳 が 掲 載 され た こ とで あ る。 「漸 江 潮 」 第9期(1903年ll月)に 植 物

(4)

與 人 生 之 関 係 」 と題 し、 「漸 江 潮 」 第10期(1903年12月)に は 「植 物 與 人 生 之 関係 」(続)、 「地 人 学 」 と題 し発 表 され た。 実 は漸 江(紹 興)出 身 の 魯 迅 も、 い くっ か の ペ ンネ ー ム を使 って 、 愛 国 主 義 を鼓 舞 した翻 訳 小説 ス パ ル タ の魂 」(第5期 、 第9期)、 亡 国 の危機 感 や 産 業 救 国 の心 情 に溢 れ た 地 質 論

中 国 地 質 略 論 」(第8期) 、 科 学 へ の興 味 を喚 起 し よ う と した翻 訳 小 説

(2)

底 旅 行 」(第10期)等 、 多 数 の 文 章 を同 雑 誌 上 で 発 表 して い る。 魯 迅 は1902 年 か ら1904年 にか けて 弘文 学 院 に留 学 して い る。

凌 廷輝 が いつ 帰 国 した か は定 か で は な いが 、 資 料 に よ る と1908年7月 か ら は漸 江 官 立 法 政 学 堂(1907年 創 立)で 、 大 清 会 典 、 歴 史 、 地 理 、倫 理 学 を講

(3)

義 して い る。 ま た1910年 の 統 計 に よ る と、 漸 江 両 級 師 範 学 堂(1980年 春 創

(4)

立)で も地 理 学 を講 義 して い る こ とが 分 か る。 実 は魯 迅 も1909年 秋 に帰 国 し、 漸 江 両 級 師範 学 堂 で1910年 夏 まで 生 理衛 生 を講 義 して い る。

発 行 者 の新 学 会 社 は、1903年 に寧 波 で 創 設 され 、 清 末 に寧 波 か ら上 海 に移 り、 山 東 中路 と河 南 中路 の 間 の 交 通 路 に置 か れ た。 創 立 者 は庄 景 仲(1860 年 一1939年)で あ る。 早 い 時 期 に は農 業研 究 に従 事 し、 農 業 書 籍 を編 集 印刷

し、 著 書 に 『農 業 新 書 』、 『娯 虫 防 治 法 』 が あ る。 そ の後 林 業公 司 を余杭 に創 設 し、 山林 事 業 に も取 り組 ん だ 。1908年 同盟 会 に入 り、漸 江 一 帯 で 革 命 活 動 に参 加 した。 辛 亥 革命 後 、杭 州 の軍 政 府 財 政 部 長 を、 その後 漸 江塩 政 局 長 を

(5)

歴 任 した。 新 学 会 社 は上海 で 長 期 間存 続 し、 出版 事 業 に携 わ った 。

な お 本 書 に は、 本 書 を所 蔵 して い た 「河 南 大 學 圖 書 館 」、 また本 書 を使 用 した と思 わ れ る 「河 南 留學 欧 美 預 備 學 校 」 とい う印 が 押 され て い た。

2‑2.「 総 論 」

(g}

本 書 は合 計82頁 に お よん で い る。本 書 編 集 の 目的 につ い て述 べ た 「総 論 」 が 目次 の次 に置 か れ て い るの で 紹 介 す る。

(5)

凌廷輝編 『人生地理 学』 に関す る一考察(高 橋)83

人 生 地 理 学 は、 地 理 と人 生 の関 係 を研 究 す る学 科 で あ る。 古 よ り地 理 を語 る者 は、 た だ幾 つ か の地 名 や 言 葉 を覚 え、 あ るい は古書 を参 考 に し、 そ の歴 史 を考 証 し、 そ の現 状 を推 測 す るだ けで 、 これ は た だ そ の 表 面 の 現 象 を考 証 す るだ けで 、 そ の 中 の真 実 の原 理 が 分 か って い な い。 従 って 、 そ の原 理 を深 く理 解 した い な らば、 地 理 と人 生 の関 係 を必 ず 理 解 しな けれ ば な らず 、 そ の 上 多 少 な り とも発 見 が あ った な ら、 過 去 の観 点 に決 して拘 泥 して は な らず 、 空 論 を交 わ した り、 また 実用 を求 め な い こ とが あ って はな らな い。 人 類 が こ の地 球 上 に生 存 して 、 この よ うに生 存 競 争 を して い るが 、 大 地 と結 局 は如 何 な る関 係 を持 っ て い るの で あ ろ うか 。 私 は た だ大 地 の 一・部 分 を 占 め て い る に す ぎ な く、 閉 関 自守(関 所 を閉 じて外 界 との往 来 を絶 つ こ と)が 出来 な い 以 上 、 そ の他 の所 と必 ず 各 種 の 関 係 を 持 つ べ き で 、 関 係 を持 て ば、 気 候 、 物 産 、 地 勢 、宗 教 、社 会 、 交 通 お よび 国家 興 亡 の 変 遷 の原 則 を比 較 す る こ とが 出来 る。 人 類 発 展 の 緩 慢 現 象 は、 一 つ一 つ の詳 細 な比較 が な けれ ば、 決 して そ の重 要 性 を認 識 で きな い観 点 で あ る。従 って 、 地 理 学 とい う学 科 は、 表 面 か ら見 る とた だ 普 通 の学 科 の 中 の一 つ で あ るが 、 実 際 に は関 係 す る範 囲 は広 く、 多 くの学 科 と密接 な関 係 を持 っ て い る。 今 日の 人 々 の 分 類 法 に従 う と、

地 理 学 は天 文 地 理 、地 文 地 理 、 人 文 地 理 に分 け る こ とが 出 来 、 また人 文 地 理 を政 治 地 理 、経 済 地 理 等 に分 け る こ とが 出来 る。 従 って 、 地 理 学 は た だ0つ の学 科 に属 す る に もか か わ らず 、 も しそ の他 の各 種学 科 の 知 識 を深 く理 解 せ ず 、 そ の上 演 繹 と帰 納 を加 え な けれ ば、 地 理 学 を本 当 に理 解 す る こ とは 出来 な い。 ゆ え に、 も し地 理 学 の 思 想 や 知 識 を拡 充 した い と思 うな らば、 地 理 と 人 生 の相 互 関係 を研 究 す る必 要 が あ り、 ど う して 安 閑 と して いれ よ うか 。

地 理 と人 生 の 関 係 は、 この よ うに偉 大 な の で 、 それ を研 究 し よ う と思 う と、 ど こか ら研 究 を開始 す れ ば い い の だ ろ うか。 理想 は実 践 の 母 で 、 理 想 の 豊 か な人 は、 必 ず実 践 に助 け を求 め る もので 、 所 謂 実 践 とい うの は、反 復 し た 考 察 と推 測 を必 要 とす るが 、 これ は各 種 の学 問 の共 通 点 で あ るが 、 地 理 学

(6)

は さ らに そ うで あ る。 守 株 待 兎(偏 狭 な経 験 に しが み つ きそれ ぞ れ の状 況 に 応 じて 融通 を きか せ な い)の 人 は、足 跡 を百 里 か ら出 ず 、 古 人 の経 験 に固執

し、誤 った情 報 を用 い る。 某 山、 某 水 、 某都 、 某 村 は、 陳 腐 で 全 然 新 味 が な く、 広 くた くさん の書 を読 ん だ と思 って い て も、 実 際 は間 違 っ た情 報 が伝 播 され て い るの で あ る。0旦 門 を出 て道 を歩 き、 道 に迷 わ な いで 帰 っ て来 て 、 しか る後 初 め て 世 界 の知 識 が 分 か り、 実 地 で の視 察 で な けれ ぼ、 理 解 す る こ とが 出 来 な い。 欧 米 の 探 検 家 は、 よ く一一人 で 万 里 を行 き、 山 を登 り川 を 渡 り、 苦 労 して旅 を し、 死 んで も後 悔 しな い よ うだ が 、 結局 は何 の た め で あ ろ うか 。 目的 は、 地 理 を視 察 し認 識 す るた め で あ る。 また 古 を好 む人 は、 自由 に考 え を巡 らせ て 、 遠 い昔 の前 に有 機 体 はあ った のか 、 人 類 は いつ 出現 した のか 、 社 会 は いつ か ら形 成 され 始 め た の か を探 求 して い る。 魂 は天 国 に あ る 或 い は地 獄 に あ る とい う言 い方 は、 実 に不 可 思議 で あ る。0体 、 何 が 原 因 な ので あ ろ うか 。 これ らは、 地 理 を しっか り学 習 す る必 要 が あ るが 、 地 理 の人 類 に対 す る利 点 は遥 か に これ らに 限定 され て い な い。

地 球 上 の種 族 間 の 競 争 は、 優 勝 劣 汰(優 れ た者 が勝 ち、 劣 っ た者 が淘 汰 さ れ る)、 弱 肉 強 食 で 、今 日世 界 の所 謂 民 族 帝 国 主 義 は、 そ の 目的 は ど こ に あ るの か 。 それ は勢 力 範 囲 の拡 張 にほ か な らな い。 勢 力 範 囲 を拡 充 出来 るか 否 か は、 その鍵 は世 界 観 念 が あ るか な い か で あ る。 世 界 観 念 が あ るか な い か の 鍵 は、豊 か な地 理 知 識 が あ るか な い か で あ る。従 って 、 今 日所 謂 強 国 は、 彼 らの普 通 の 民 は、 豊 富 な地 理 知 識 を必 ず持 って い る。 所 謂 弱 国 は、 彼 らの 普 通 の 民 は、 地 理 知 識 が 欠 乏 して い るはず で あ る。 あ あ、 我 が 中華 の大 地 よ、

山 河 の 美 しさ よ、 天 下 に名 が 聞 こえて い るが 、 ど う して我 が大 地 に お い て 帝 国主 義 者 に ほ しい ま まに させ て お こ うか 。 そ の上 、 我 々 が 依 存 して い る土 地 は、祖 先 が 遺 して くれ た もの で 、 それ を利用 す るの は、 我 々子 孫 が 当然 行 う べ き こ とで あ る。 欧 米 列 強 の狡 猜 な 陰謀 に勝 ち た い と思 うな らぼ、 民衆 の 眠

りを覚 ます こ とだ 。 地 理 を理 解 しな い で 、 何 に頼 るの か 。 我 が 国 国 民 の 国 家

(7)

凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 に関 す る一考 察(高 橋)85

につ いて の思 想 を向上 させ た い と思 うな らば、 もち ろん 我 が 国 国 民 の地 理 知 識 を 向上 させ る必 要 が あ り、 これ は地 理 学 の人 類 に対 す る有 益 な 最 も主 要 な 一 面 で あ る。 も し細 部 か ら述 べ る と、 さ らに計 り難 くな り、 一・人 で居 る と、

容 易 に心 を閉 じ込 め て しま う。従 って 、 気 分 転 換 を しよ う。 我 々 の 美観 を最 も よ く転 換 して くれ る もの は、 山 河 の明 媚 と草 花 が 美 しさ を競 う情 景 で 、 の び の び と心 地 よ くさせ 、 心 を輝 か せ 目 を 楽 し ませ る。 高 き に登 り遠 くを望 む、 まさ に文 人 や 学 士 が 心 を和 ませ て い るの で はな い か 。 古 人 は次 の よ うに 言 っ た。 大 地 は我 が文 章 を書 くの を任 せ たが 、 これ は道 理 で あ る。 これ は地 理 学 は人 生 に有 益 で あ って 、 入 々 の審 美 と興 味 を引 き起 こす こ とが 出来 る と

い う こ とで あ る。 た だ地 理 とい う学 科 で あれ ば、 各 種 の予 測 を検 証 す るに足 り、 古 代 の歴 史 を考 証 す る に足 り、 列 強 の陰 謀 を伺 い 知 る に足 り、 愛 国 精 神 を振 るい起 こす に足 り、 美術 へ の興 味 を強 くす る に足 るの で あ る。 これ 以 外 に、 そ の他 の利 点 は多 くを論 述 しな い。 従 っ て、 地 理 を研 究 す るに は、 即 ち 地 理 と人 生 の 関 係 を研 究 す る こ とが 必 要 で 、 ど う して 安 閑 と して いれ よ う か 。

編 者 は 「総 論 」 の 中で 、"地 理 と人 生 の 関 係 を理 解 す る こ と"を 強 調 して い る。 そ して そ の 目的 と して 二 点 あ げ て い る。 一 つ は、"真 実 の原 理"を るた めで あ る。 この原 理 を理 解 で きれ ば、 生 存 競 争 を繰 り返 して い る人 類 と 大 地 の 関 係 を理 解 す る こ とに繋 が り、 人 類 発 展 の緩 慢現 象 理 解 に も繋 が る。

その た め に は世 界 との例 えば気 候 、 宗 教 、社 会 、 交 通 、 国家 興 亡 等 の比較 研 究 が 必 要 で あ り、 また実 地 で の視 察 も必 要 で あ る。

も う一 つ は、 世 界 観 念 を国 民 の 中 に構 築 す るた め で あ る。 但 し世界 観 念 が あ るか な いか の 鍵 は、 豊 か な地 理 知 識 が あ るか な い かで あ るの で 、 国 民 の 地 理 知識 向 上 を強 く訴 え て い る。 強 国 の 国 民 に比 べ て 、 弱 国 中 国 の 国 民 の地 理 知 識 欠 乏 の 現 状 に憂 いて い る。 帝 国主 義 の.:.一 に喘 いで い る祖 国 に対 す る憂

(8)

いで あ る。 民 衆 の 眠 りを覚 ます た め に も、 また 民衆 の 国家 に対 す る意 識 を 向 上 させ るた め に も、地 理 を理 解 させ よ う と主 張 して い る。

た だ地 理 学 で あれ ば 、"各 種 の予 測 を検 証 す るに足 り、 歴 史 を考 証 す る に 足 り、 列 強 の 陰謀 を察 知 す る に足 り、 愛 国 精 神 を振 るい起 こす に足 り、 美 術 へ の興 味 を強 くす る に足 るの で あ る"と い う部 分 に は、"人 生 地 理 学"に す る高 い評 価 と、 大 きな 期 待 が 現 れ て い る。"人 生 地 理 学"を 、0種 の 中国

を救 済 す る啓 蒙 の学 問 と捉 えて い るよ うに も思 え る。

3.凌 廷 輝 編 『人 生地 理 学 』 の 内容 概 観

3‑1.『 最 新 人 生 地 理 学 』 との 比 較

人 生 地 理 学 』 の 目次 は以 下 の通 りで あ る。

総論

第1章 日月及星 第2章 地球之成立 第3章 地形

第4章 地面諸帯(本 文中で は地面諸線) 第5章 五帯

第6章 地勢 第7章 五洲 第8章 島懊 第9章 半 島 第10章 地峡 第II章 山嶽 第12章 火 山

(9)

凌廷 輝 編r人 生 地 理 学 』 に 関 す る一 考 察(高 橋)87

第13章 平 原 第14章 高原 第15章 砂 漠 第16章 江 河 第17章 第18章 第19章 第20章 潮 汐 第21章 波 浪 第22章 洋流

第23章 第24章 第25章 気 候 第26章 有 生 物 第27章 無 生 物 第28章 人 口 第29章 人 種 第30章 性 情 第31章 社 会 第32章 言 語 第33章 文 字 第34章 宗 教 第35章 国 家 第36章 交 通

最 新 人 生地 理 学 』 の 目次 は以 下 の通 りで あ る。

(10)

緒論

第1章 地人 関係之概観 第2章 為観察 基点之郷土 第3章 観察周 囲之方法如何 第4章 日月及星

第5章 地 球 第6章 島喚

第7章 半 島及 岬角 第8章 地峡

第9章 山嶽及 難谷 第10章 平原

第ll章 河川 第12章 湖沼 第13章 海洋

第14章 内海及 海峡 第15章 港湾

第16章 海岸 第17章 無生物 第18章 大気 第19章 気候 第20章 植物 第21章 動物 第22章 人類 第23章 社会

第24章 社会 之分業生活地論 第25章 産業地論(上)

(11)

凌 廷 輝 編r人 生 地理 学 』 に関 す る一 考 察(高 橋)89

第26章 産 業地 論(中) 第27章 産 業地論(下) 第28章 国家地論

第29章 都会及村落地論 第30章 生存競 争地 論 第31章 文明地 論

第32章 地理学之研究法 第33章 地理学意義及範 囲 第34章 地理学可得豫期 之効 果

両 者 の 目 次 を 比 較 す る と次 の よ う に 概 観 で き る 。

前 者 は 、 後 者 の 緒 論 」 と第1章 地 人 関 係 之 概 観 」 か ら第3章 観 察 周 囲 之 方 法 如 何 」 を 省 き、 第1章 「日 月 及 星 」 か ら開 始 し、 第2章 地 球 之 成 立 」 か ら第7章 五 洲 」 を 除 く と、 第22章 洋 流 」 ま で は、 目次 の 順 序 は後 者 の そ れ とほ ぼ 同 じで あ る 。 前 者 の 第23章 風 」 以 降 は、 前 者 は 後 者 を 模 範 とす る が 、 第23章 風 」、 第24章 雨 」、 第25章 気 候 」 を 連 続 させ 一・ま とめ に し、 第26章 有 生 物 」、 第27章 無 生 物 」 を 続 け て 一 ま とめ に し、 後 者 の 第22章 人 類 」 を 第28章 人 口」 と第29章 人 種 」 と第30章 性 情 」 と に分 け 、 ま た 後 者 の 第24章 社 会 之 分 業 生 活 地 論 」 を 第31章 社 会 」 と第32章

言 語 」 と第33章 文 字 」 と第34章 宗 教 」 と に 分 け て い る 。 前 者 は ま た 、 後 者 の 第25章 産 業 地 論(上)」 以 降 は 、 「交 通 」 と 「国 家 」 だ け を取 り上 げ

て 、 そ れ 以 外 は 省 い て い る。

次 に 前 者 の 視 点 か ら 、 後 者 の 内 容 と の 比 較 を 試 み る 。

前 者 の 第2章 地 球 之 成 立 」 か ら第7章 五 洲 」 ま で の 内 容 を 詳 細 に 見 て い く と、 前 者 の 第3章 地 形 」 と第4章 地 面 諸 線 」 と第5章 五 帯 」 は 、 後 者 の 第5章 地 球 」 の 第1節 地 球 之 形 状 與 人 生 」 と第2節 地 球 之 面 積

(12)

與 人 生 」 と第3節 地 球 之 運 動 與 人 生 」 を参 照 し要 約 して い る こ とが 分 か る。

第8章 島 懊 」:島 懊 と人 生 の特 殊 な 関 係 につ い て、 後 者 の第6章 嗅 」 を参 照 し要 約 を して い る。 そ の 上 で、 新 た に ア ジ ア、 北 南 米 、 欧 州 、 オ ー ス トラ リア、 ア フ リカ の 島嘆 に分 け て、 そ れ ぞれ 詳 細 に言及 して い る。

ま た新 に 中 国 に関 す る記 述 も見 られ る。 「杭 州 湾 の南 に舟 山群 島が あ り、 瑳

くの

州 海 峡 の 南 に海 南 島が あ る」 と。

第9章 半 島」:文 明 の発 祥 の起 点 は、 半 島 に あ る との視 点 は後 者 の 第 7章 半 島及 岬 角 」 を参 照 して い る。 そ の上 で新 た に、 半 島 の働 き の動 向 に 言 及 して い る。

第10章 地 峡 」:"地 頸"と い う名 称 を用 い、 ス エ ズ運 河 や パ ナ マ 運 河 を 取 り上 げ なが ら、 後 者 の第8章 地 峡 」 を参 照 して い る。

第ll章 山嶽 」:山 の 各 種 の名 称 紹 介 や 、 山嶽 と人生 の 関 係 につ いて は、

後 者 の 第9章 「山嶽 及 難 谷 」 を参 照 して い る。 その 上 で 新 た に、 ア ジ ア、 欧 州 、 ア フ リカ 、 北 南 米 、 オ ー ス トラ リア に分 けて 、 それ ぞれ を詳 細 に言 及 し

て い る。

第12章 火 山 」:火 山 の 名 称 、例 え ば 活 火 山、 休 火 山、 死 火 山 や 、 ま た 火 山 と宗 教 や 迷 信 との 関係 は、後 者 の第9章 山嶽 及 難 谷 」 に は その 記 載 が な い。 後 者 以 外 の資 料 を参 照 した もの と考 え られ る。 な お 火 山 と宗 教 との 関 係 に まで 言 及 して い るの は、 編 者 が 本書 の テ ー マ 「地 理 と人 生 との 関係 」 の 影 響 を受 けて 、 新 た に展 開 した もの と考 え られ る。 なお 迷 信 と して紹 介 して い る内 容 は興 味 深 い。 即 ち、 伊 豆 半 島 の 火 山 の横 穴 は、 仁 明 文 徳 天 皇 の 時、

火 山 の 従 五 等 の 爵 を 以 っ て 封 ぜ られ 、 ま た 進 ん で 正 五 位 に な っ た 、 と言 う も の で あ る。

第13章 平 原 」:平 原 と人 生 の 関 係 に っ い て は 、 後 者 の 第10章 平 原 」 を 参 照 して い る。 そ の 上 で 新 た に 、 中 国 、 欧 州 、 北 南 米 に 言 及 して い る 。

(13)

凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 に関 す る一 考 察(高 橋)91

第14章 高原 」:高 原 の定 義 や 高 原 の 人 民 と平 原 の 人 民 の 関 係 に つ い て は、後 者 の 第10章 第3節 高 原 與 人生 」 を参 照 して い る。 そ の上 で新 た に、

高 原 とは大 河 流 の 源 で あ る とい っ た 視 点 を付 け加 え、 ア ジ ア、 欧 州 、 北 南 米 、 ア フ リカ に も言 及 して い る。

第15章 砂 漠 」:砂 漠 の定 義 や砂 漠 と文 明 発 生 地 との関 係 、 ま た科 学 の 発 明 に よ る砂 漠 の利 用 等 につ い て 、後 者 の第10章 第3節 高 原 與 人 生 」 を参

照 して い る。

な に ゆ え に、 「高 原 」 と 「砂 漠 」 とを単 独 で 言 及 した の か 、 今 後 の 検 討 課 題 で あ る。

第16章 江 河 」:後 者 の 第11章 第1節 概 観 」、 第4節 河 之 方 向 與 人 生 」、 第5節 河 之 部 分 與 人 生 」 一 上 流 、 二 中 流 、 三 下 流 を参 照 して い る。

な お最 後 に、 陸 路 交 通 と河流 交 通 とを比 較 して い るが興 味深 い 。 即 ち 「百 年 来 自動 車 が盛 ん にな り、 陸 路 交 通 時 代 に な っ た。 しか し河 流 交 通 を語 らな い とい うわ けで は な い。 自動 車 に よ る貨 物 輸 送 は迅 速 で便 利 で あ るが、 河 流 に よ る貨 物 輸 送 は、 そ の コス トは三 分 の 一 に も及 ぼ な い。 そ の上 小 さな蒸 気 船 は、貨 物 船 六 っ 七 つ を 引 く。 大 きい もの(蒸 気 船)に な る と、 それ だ け に止 ま らな い。 引 くもの が 多 けれ ば多 い ほ ど、 積 載 も重 くな る。 自動 車 の 長所 は 早 い とい うだ けで あ る。 比較 す る と、 今 日交 通 に果 た す 河流 の役 割 は有 益 で

(s)

あ る」 と。 後 者 にお い て は、 河 流 交 通 や 蒸 気 船 とい った 記 述 は あ る。 当時 、 中 国 にお け る自動 車 の 普 及 状 況 は如 何 な る もの で あ った の か よ くわか らな い が、 編 者 の 時代 考 察 はか な り鋭 敏 で あ る。

第17章 湖 」:後 者 の 第12章 湖 沼 」 の第1節 湖 之特 質 與 人 」、 第2節

湖 沼 之 成 因 及 所 在 與 人 」、 第3節 湖 與 人 之 物 質 的 方面 」、 第4節 湖 沼 與 人 生 之 精 神 的方 面 」 を参 照 して い る。 なお 後 者 には 中 国 の湖 沼 につ い て の記 述 は な い が、 前 者 にお い て は その 紹 介 が あ る。 即 ち 「中 国本 土 の 洞庭 湖 ・鄙 陽 湖 ・洪 澤 湖 ・太 湖 ・昆 明 湖 ・新 彊 の霊 布 泊 ・チ ベ ッ トの 謄 格 里 海 ・青 海 の

(14)

(10)

青 海 は み な 巨大 で あ る」 と。 や は り中 国人 の読 者 を考 慮 した もの で あ る。

第18章 海 」:後 者 の 第13章 海 洋 」 の第3節 開 明 人 與 海 洋 」、 第4節

海 国 與 島 国」 を参 照 して い るが

、 特 に海 上 権 につ い て の 記 述 が 多 く、 また 地 中海 、 欧 州 各 国 の それ に関 す る記 述 が詳 細 で あ る。本 書 は全 般 的 に欧 州 に 関 す る記 述 が 多 い し、 その 上 詳 細 で あ る。

第19章 洋 」:後 者 の 第13章 海 洋 」 の 第5節 海 流 與 人 生 」、 第6節

海 洋 與 気 候 」 を参 照 して い るが

、太 平 洋、 大 西 洋 、 イ ン ド洋 、 北 氷 洋 、 南 氷 洋 を詳細 に解 説 して い る。 や や 教 科 書 的 な側 面 を感 じ る。 な お 「大 西 洋 時 代 か ら南太 平 洋 時代 に進 み 、 も し南 太 平 洋 時 代 か ら北 太 平 洋 時 代 に進 んだ と

(11)

す るな らば、 そ れ は この 十余 年 間 の事 で あ ろ う」 と述 べ 、 その 理 由 と して 日 清 戦 争 、 日露 戦 争 で の 日本 の勝 利 や 西 洋 列 強 の北 太 平 洋 に お け る勢 力 拡 大 を 取 り上 げて い るが 、 編 者 の 当 時 の 中 国 をめ ぐ る国 際 関係 へ の懸 念 が十 分 に表 れ て い る。 最 後 の 一 文 が それ を物 語 っ て い る。 即 ち 「北太 平 洋 即 ち 中 国全 土 は、 実 際 は 列 強 の注 視 の 的 とな っ て い る。 変 遷 の速 度 は考 え も及 ば な か っ た 。 今 後 こ の 問 題 は 、 如 何 に解 釈 す れ ば よ い か わ か ら な い 」 と。(12)

第20章 潮 汐 」:後 者 の 第13章 の 第9節 波 浪 及 潮 汐 與 人 生 」 を 参 照 し て い る。 こ こで も まず 潮 汐 」 の 定 義 か ら始 ま る。 これ は 全 般 的 に そ うで 、 や は り教 科 書 的 な ま た 辞 典 的 な 機能 も考 慮 して い た の で は な か ろ う か 。

第21章 波 浪 」:後 者 の 第13章 の 第9節 波 浪 及 潮 汐 與 人 生 」 を 参 照 し て い る。 こ こ で も ま ず 波 浪 」 の 定 義 か ら始 ま る 。

第22章 洋 流 」:後 者 の 第13章 の 第5節 海 流 與 人 生 」 を 参 照 して い る 。 第23章 風 」:後 者 の 第18章 太 気 」 の 第4節 空 気 」、 第19章 気 候 」 の 第3節 気 温 之 分 布 」、 第6節 風 之 種 類 與 人 生 」 を 参 照 して い る。

第24章 雨 」:後 者 の 第19章 気 候 」 の 第7節 湿 気 與 人 生 」、 第8節

雲 與 人 生 」、 第9節 雨 與 人 生 」 を 参 照 して い る が 、 特 に"五 帯"熱 帯 、 南 北 温 帯 、 南 北 寒 帯 に お い て 説 明 が な され て い る点 に特 色 が あ る 。 この こ と は

(15)

凌廷輝編 『人生地理学 』 に関す る一考察(高 橋)93

全 般 的 に な され て い る。

第25章 気候 」:後 者 の 第19章 気 候 」 の第1節 気 候 與 人 生 」、 第2節

気 温 與 人 生 」、 第3節 気 温 之 分 布 」 を参 照 して い るが 、 特 に文 明 と"五 帯"の 関 係 に言 及 した点 に特 色 が あ る。 即 ち 「一 国 の文 明 は、 教 育 や政 治 に 依 存 す る。 しか し教 育 ・政 治 の発 達 は、 温帯 の地 に限 られ て い る。何 ゆ えで あ ろ うか 。 寒 熱 の 二 帯 の 人 民 は、奮 起 の 仕 方 を知 らな い か らで あ る。(略) 寒 熱 の人 の その精 神 ・そ の思 想 ・そ の体 格 は温 帯 に劣 る。温 帯 の 人 は天 然 の

ロ ヨ 

束 縛 を受 け な い」 と。 な お この論 調 は、後 者 の 第30章 生 存 競 争 地 論 」 の第 4節 生 存 競 争 適 度 與 地 」 の影 響 を受 けて い る。 即 ち 「温 帯 地 方 は他 の両 帯 (寒 熱 帯)の 地 方 に比 す れ ば人 体 に対 す る適 度 に お い て優 れ り、 熱帯 地 方 は 生 活 資 料 に於 い て他 の両 帯(寒 温帯)に 卓越 す れ ども人 体 に対 して の適 度 に

(14)

於 い て温 帯 に比 して劣 れ り」 と。

第26章 有 生 物 」:植 物 に 関 して は、 後 者 の 第20章 植 物 」 の 第1節

植 物 対 於 人 生 実 用 上 関 係 」、 第2節 栽 培 植 物 與 人 生 及 地 」、 第3節 森 林 與 人 生 及 地 」、 第7節 陸生 植 物 之 分 布 」 を 参 照 して い る。 な お 後 者 の 第4 海 藻 類 」 に関 す る部 分 の記 述 が な いの は、 興 味 深 い。 海 洋 国 で は な い編 者 に は あ ま り関 心 が なか っ た の で あ ろ う。

動 物 に関 して は、 後 者 の第21章 動 物 」 の 第1節 動 物 與 人 生 」、 第2節

獣 類 與 人生 及 地 」、 第3節 鳥類 與 人 生 」、 第4節 魚類 與 人 生 及 地 」、 第5 節 「軟 体 類 及 棘 皮 類 與 人 生及 地 」 を参 照 して い る。

第27章 無 生 物 」:後 者 の 第17章 無 生 物 」 の 第1節 無 生 物 與 物 質 的 人 生 」、 第2節 無 生 物 與 精 神 的 人 生 」、 第3節 無 生 物 與 文 明 」、 第4節

岩 石 種 類 及 成 因 」、第5節 鉱 物 産 出 状 態 」、 第6節 有 用 鉱 物 之分 布 」 を 参 照 して い るが 、特 に金 銀 銅 鉄 お よび石 炭 や 石 油 の 分布 を世 界 的 に紹 介 して

い る点 に特 色 が あ る。

第28章 人 口」:後 者 の 第22章 人 類 」 の 第6節 人 類 之 数 量 的 分 布 」

(16)

と挿版 の 「世 界 人 口疎 密 」 を参 照 して い るが 、 具 体 的 な数 量 につ い て は何 か 他 の 資 料 を参 考 に して い る。

第29章 人種 」:後 者 の 第22章 人 類 」 の第3節 人 類 及 其 分 布 」、 第5 各 人種 之優 劣與 其 将 来 」 を参 照 して い る。

第30章 性 情 」:後 者 の第22章 人 類 」 の 第4節 人 類 之 階級 與 其 分 布 」 を 参 照 して い る が 、 第6章 「島 撰 」 の 第2節 島 之 種 類 與 人 生 」、 第10章

平 原 」 の第1節 平 原與 人 生 」、 第3節 高 原 與 人 生 」 等 も参 考 に しな が ら 人 民 の性 質 に言及 して い る。

第31章 社 会 」:後 者 の第23章 社 会 」 の 第1節 何 謂 社 会 」 を参 照 し て い るが 、編 者 は"野 蛮 社 会"、"族 制 社 会"、"軍 国社 会"に 分 けて 言 及 して い る。 こ こ にお い て も何 か他 の資 料 を参 考 に して い る と思 わ れ る。

第32章 言 語」:本 章 の 内 容 は、 後 者 の 内容 とあ ま り関 係 が な い。 言 語 を"独 音 類"、"連 音 不 変 類"、"変 音類"に 分 け、 さ ら に言 語 の発 達 と国 勢 の 関係 に まで 言 及 して い る。

第33章 文 字 」:本 章 の 内 容 は、 後 者 の 内 容 とあ ま り関 係 が な い。 文 字 の起 こ りか ら始 ま り、 中 国文 字 、 イ ン ド文 字 、 ラテ ン文 字 へ の発 展 過 程 お よ び文 字 の 難 易 さ と人 民 の進 化 に まで言 及 して い る。

第34章 宗 教 」:後 者 の 第24章 社 会 之 分 業 生 活 地 論 」 の 第3節 宗 教 及 其 他 」、第5節 道 徳 教 育及 其 他 」 を参 照 して い るが 、 編 者 は 「教 育 の 目 的 は道 徳 を重 視 す る ところ に あ り、 また宗 教 の 目的 も道 徳 の重 視 で 、 理 に お いて は 同 じで あ る」 と述 べ 、6頁(15) 半 に わ た っ て仏 教 、バ ラモ ン教 、 回 教 、 ユ ダヤ 経 、 キ リス ト経 を詳 細 に言及 して お り、 極 め て重 視 して い る こ とが 分 か

る。

第35章 国 家 」:後 者 の 第28章 国 家 地 論 」 の 第3節 国 家 之 種 類 」 を 参 照 して い るが 、本 章 の 内容 の大 半 は、他 の 資 料 を参 考 に して い る と思 わ れ る。 編 者 は、 国 家 の領 土 や 主権 に関 して、 国 際 法 との 関係 に言 及 して い る。

(17)

凌廷輝 編 『人生地理学 』 に関す る一 考察(高 橋)95

本 章 も4頁 にわ た って お り、 重 要 視 の程 度 が 分 か る。

第36章 交 通 」:後 者 の 第27章 産 業 地 論 下 」 の 第1節 商 業 地 理 及 其 原 則 如 何 」、 第2節 交 通 機 関 之種 類 及 要 素 」、 第3節 交 通機 関 之 発 達 及 其 各 種 之長 短 」 を参 照 して い るが 、 鉄 道 輸 送 網 、 船 舶 輸 送 網 につ い て は、 中 国 を 中 心 と して か な り詳 細 に紹 介 して い る。本 章 も7頁 に わ た って お り、 そ の 重 要 度 が 分 か る。

本 書 の 「総 論 」 に も記 述 され て い た よ うに、 国 民 に対 す る地 理 の知 識 向上 に配 慮 が な され て い る。 各 章 の項 目 につ い て、 まず 言 葉 の定 義 を し、 そ の 上 で 極 力"五 帯"、"五 洲"に お け る現 状 を紹 介 して い る。 西 洋 列 強 の圧 力 を受 けて い る 中国 につ い て も、 言 及 した箇 所 が 少 な くな い。 また 欧 州 の地 理 歴 史 に関 す る記 述 が豊 富 な の で 、 「河 南 留 學 欧 美 預 備 學 校 」 で使 用 され た とい う こ とが 想 像 で き る。

3‑2.「 漸 江 潮 」 『江 蘇 師 範 講 義 ・地 理 』 との 関 係

漸 江 潮 」 との 関 係

本 書 の第18章 海 」 の 中の"ベ ネ チ アの通 商 は欧 州 商 業者 の祖 とな っ た"、

"ア テ ネ は全 ギ リシ ャの 中で 最 強 とな り

、 また 海 の 故 に ギ リシ ャの 栄 光 時 代

(16)

の 覇 者 に も な っ た"は 、 「漸 江 潮 」 の 地 人 学 」 の"ベ ネ チ ア は 海 に 頼 り、

そ の 通 商 貿 易 は 地 中 海 を 巻 き込 ん だ"、"ア テ ネ は 海 の 故 に 、 小 国 で は あ る が

(17)

ギ リシ ャ文 化 を牛 耳 っ た"に 類 似 して い る。 この よ うな話 題 は、 『最 新 人 生 地 理 学 』 に は記 述 が な い。

本 書 の 第26章 有 生 物 」 の 中 の"地 球 の初 め は空 気 の圧 力 が 甚 だ 大 き く、

樹 木 は そ の圧 力 に遭 遇 し、次 第 に地 底 に埋 没 し、 長 い年 月 の 後 に石 質(石 炭)と な っ た"、"人 々 が 言 う所 の 石 炭 と鉄 の二 種 類 は、 文 明競 争 の利 器 で あ

(18)

る"は 、 「漸 江 潮 」 の 「植 物 与 人 生 之 関係 」(続)の"太 古 の森 林 は大 気 の圧

(18)

力 に逢 い 、 年 久 し く して 、 地 底 深 く埋 没 し石 炭 の 原 形 とな る"、"人 々 が 誇 る

十 九 世 紀 の 文 明 の 利 器 は鉄 と石 炭 で あ る' も 『最 新 人 生 地 理 学 』 に は記 述 が な い。

に類 似 して い る。 この よ うな話 題

② 『江 蘇 師 範 講 義 ・地 理 』 との 関 係

本 書 の総 論 の 中 に、 「古 よ り地 理 を語 る者 は、 た だ 幾 つ か の地 名 や 言 葉 を 覚 え、 あ る い は古 書 を参 考 に し、 その歴 史 を考 証 し、 そ の現 状 を推 測 す るだ けで、 これ はた だ そ の表 面 の現 象 を考 証 す るだ けで 、 そ の 中 の真 実 の原 理 が 分 か っ て い な い 。従 って 、 そ の原 理 を深 く理 解 した い な らば、 地 理 と人 生 の 関 係 を必 ず 理 解 しな けれ ば な らず 、 そ の上 多少 な り とも発 見 が あ っ た な ら、

過 去 の観 点 に決 して拘 泥 して は な らず 、 空 論 を交 わ した り、 実用 を求 め な い

(20>

こ とが あ っ て は な ら な い」 とい う部 分 が あ るが 、 この部 分 は、 『江 蘇 師範 講 義 ・地 理 』 の緒 論 の 中 の次 の 部分 に極 めて 類 似 す る。

即 ち 「地 理 学 を研 究 す る者 が 、 た だ 古籍 を調 べ 、 地 名 の沿 革 を少 し知 るに す ぎ な い。(略)そ の論 述 が0切 で あ っ て 、 採用 す る こ とが 出 来 る所 は 少 し は あ っ た と して も、 しか し地 と人 の相 関 の 理 が 発 見 され て い な い の は、 考 証 の た めの地 理 学 で あ る。 それ は今 口の所 謂 地 理 学 者 とは異 な る。 今 日の所 謂

(21)

地 理 学 は、実 用 の一 種 の 科 学 で あ る」 と。

また本 書 の 総論 の 中 の 「今 日世 界 の所 謂 民族 帝 国 主 義 は、 そ の 目的 は ど こ に あ るの か 。 それ は勢 力 範 囲 の拡 張 に ほ か な らな い。 勢 力 範 囲 を拡 充 出来 る か 否 か は、 そ の鍵 は世 界 観 念 が あ るか な い か で あ る。 世 界 観 念 が あ るか な い

{22)

か の鍵 は、 豊 か な地 理 知 識 が あ るか な いか で あ る」 との 発 想 は、 『江 蘇 師 範 講義 ・地 理 』 の緒 論 の 中の 「個 人 と世 界 の 関係 は、 か くの 如 く重 要 な の で、

(23)

世 界 に対 す る 自己 の位 置 を注 意 しな けれ ば な らな い」 に起 因 す る よ うに思 わ れ る。

以 上 の よ うに本 書 の総 論 の 中 に は 『江 蘇 師 範 講 義 ・地 理 』 の緒 論 の痕 跡 を

(19)

凌廷輝編 『人生地理学』 に関す る0考 察(高 橋)97

見 出 す こ とが で き る。

4.む す び に

本 稿 の考 察 を通 して 、 以下 の 三 点 を提 示 して む す び と した い 。

ま ず第 一 点 で あ るが 、編 者 の凌 廷 輝 は本 書 出 版 に 当 り、 「漸 江 潮 」、 『江 蘇 師範 講義 ・地 理 』、 『最 新 人生 地 理 学 』 を参 照 して い た と言 う こ とで あ る。 漸 江 同 郷 会 の 会 員 と して 活 動 して い た こ とか ら、 同 同郷 会 が 発 刊 した 「漸 江 潮 」 を読 む機 会 は十 分 あ った と思 われ る し、 また 弘 文学 院 出身 者 で あ る こ と か ら、 同学 院 出 身者 で か っ 隣 の省 出身 で あ る江 蘇 師範 生 の 編 集 した 『江 蘇 師 範 講 義 ・地 理 』 出版 の 情 報 入 手 お よび実 際 の書 籍 入 手 も比 較 的容 易 で あ っ た と思 わ れ る。 『最 新 人 生 地 理 学 』 に関 して は、 発 行 所 が 上 海 の 「群 益 書 房 」 で あ る こ とか ら、 比 較 的 入 手 が 容 易 で あ っ た こ とが想 像 で き る。 凌 廷 輝 は 1903年 以来 、 「人 生 地 理 学 」 に対 し注 目 し続 けて い た の で はな か ろ うか 。

第 二 点 目 は、編 者 の 凌 廷 輝 は 自身 の 問 題 意 識 に基 づ い て、 「人 生地 理 学 」 を再 度構 築 した と言 う こ とで あ る。 本 書 の 「総 論 」 に は執 筆 の 目的 が幾 つ か 記 述 され て い るが 、 中 国 を強 国 に す るた めの 国 民 に対 す る"啓 蒙書"と い う 趣 旨が 強 く表 れ て い る。 そ の 重 要 な基 礎 を提 供 した の は 『最 新 人 生 地 理 学 』 で あ る と言 って も過 言 で は な い と思 わ れ る。

第 三 点 目 は、 当 時 の 留 学 生 や 知 識 人 が、 牧 口著 『人 生 地 理 学 』 の 全 訳 本

『最 新 人 生 地 理 学 』 に対 して 、 どの よ うな態 度 で 接 して い た のか の 一 つ の例 を示 した と言 う こ とで あ る。 本 書 で は前述 の 如 く"中 国 を強 国 にす るた めの 国 民 に 対 す る 「啓 蒙 書 」"と い っ た 態 度 が 見 られ る。 そ の後 中 国 で は、 多 く の 「人 生 地 理 学 」 書 が 出版 され た こ とが分 か って い る。 これ ら と 『最 新 人 生 地 理 学 』 との 関 係 を考 察 す る際 に、本 書 は貴 重 な"橋 渡 し"の 役 割 を果 た す もの と も思 われ る。 本 書 は 『最 新 人 生 地理 学 』 を基 礎 と して執 筆 され た 第1

(20)

号 の"人 生 地 理 学"書 と して重 要 で あ る。 以後 出版 され る"人 生 地 理 学"書 へ の影 響 が興 味 深 い ところで あ る。

(注)

(1)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 新 学 会 社 、1909年

(2)張 杉 『従 漸 江 看 中 国 教 育 近 代 化 』 広 東 教 育 出 版 社 、1996年 、167‑169頁 。 呂 順 力 『清 末 漸 江 与 日 本 』 上 海 古 籍 出 版 社 、2001年 、133‑136頁 。

(3)呂 順 力 『清 末 漸 江 与 日 本 』 前 掲 、Il8頁 。

(4)張 杉 『従 漸 江 看 中 国 教 育 近 代 化 』 前 掲 、177頁 。

(5)郷 振 環 『晩 清 西 方 地 理 学 在 中 国 』 上 海 古 籍 出 版 社 、2000年 、190‑191頁 。 (6)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、1‑3頁 。

(7)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、18頁 。 (8)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、29頁 。 (9)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、35頁 。 (10)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、36頁 。 (ll)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、41頁 。 (12)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、42頁 。 (13)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、48頁 。

(14)世 界 語 言 文 字 研 究 会 編 集 部 『 最 新 人 生 地 理 学 』 游 藝 社 、1907年 、168頁 (15)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、67頁 。

(16)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、38頁 。

(17)壮 夫 「 地 人 学 」 「 漸 江 潮 」 第10期 、 漸 江 同 郷 会 雑 誌 部 、1903年12月8日 、22頁 。 (18)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、50頁 。

(19)黄 孫 「 植 物 與 人 性 之 関 係 」 「 漸 江 潮 」 第10期 、 前 掲 、12頁 。 (20)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、1頁 。

(21)江 蘇 師 範 生 『江 蘇 師 範 講 義 ・地 理 』 江 蘇 寧 属 学 務 処 江 蘇 蘇 属 学 務 処 、1906 年 、1頁 。

(22)凌 廷 輝 編 『人 生 地 理 学 』 前 掲 、2‑3頁 。

(23)江 蘇 師 範 生 『江 蘇 師 範 講 義 ・地 理 』 前 掲 、3頁 。

参照

関連したドキュメント

[r]

留学生 して人間形成されていると感じて 歴史都市・金沢にある大学ならで 積極的に関わろうとする姿に感

 また,2012年には大学敷 地内 に,日本人学生と外国人留学生が ともに生活し,交流する学生留学 生宿舎「先 さき 魁

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を

[r]

((.; ders, Meinungsverschiedenheiten zwischen minderjähriger Mutter und Vormund, JAmt

Zeuner, Wolf-Rainer, Die Höhe des Schadensersatzes bei schuldhafter Nichtverzinsung der vom Mieter gezahlten Kaution, ZMR, 1((0,

[r]