• 検索結果がありません。

移動運動と社会的対人行動の初期発達 −乳児の移動運動がもたらす養育的関わりの移行を中心に− [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "移動運動と社会的対人行動の初期発達 −乳児の移動運動がもたらす養育的関わりの移行を中心に− [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)移動運動と社会的対人行動の初期発達 −乳児の移動運動がもたらす養育的関わりの移行を中心に− Key. Word:移動運動発達,養育的関わり,情緒的表出,乳児の対人的注視行動 行動システム専攻 船橋 問題. 篤彦. Campos et al(1992)の研究は横断的調査であり,かつ. 運動発達研究は,1940 年代の成熟論的観点をひとつの. 養育者へのインタビューという方法論的制約から,同. 起源としながら,その後も幾つかの理論的見地から,. 一個人内での変化の様相や養育行動の逐次的変化が捉. 検討がなされてきた。その中でも,移動運動発達研究. えられていない,そこで,②縦断的かつ精緻な観察を. は,その初期から,空間認知や情動といった他の発達. 適用することにより,子どもの変化とそれに伴った養. 現象との連関が積極的に検討されてきた領域であり,. 育者の変化を実際の行動レベルで捉え,乳児が移動運. 研究の展開性が期待された領域の一つであった。しか. 動を開始することにより“どのような”養育的行動が. しながら,現在に至るまで,さほど多くの知見が集め. 出現し,それに伴って,乳児は“どのような”社会的. られたとは言い難い。とりわけ社会的対人行動(社会情. 対人行動を獲得するのか?について検討を試みること. 緒的発達)との関連に関しては,幾つかの有益な示唆を. を目的とする. 与える研究が散見されるものの,相対的に停滞してい. 第1研究. る感が強いと言える。その理由としては「移動運動研. 目的:移動運動を中心に 4 変数の関係を把握する。. 究が運動,それ自体を扱って終わってしまっていた」. 方法:観察対象:5 ヶ月から 9 ヶ月の子どもを持つ母. (Campos,1992)といったことが挙げられる。こうした. 親 187 名(男児 92 名:女児 95 名)。. 中で,例えば Campos et al(1992)は,Gottlieb(1991). 材料:「運動発達」,「対象操作」,「社会的対人行動発. により案出された確率的後成説の考え方を用いながら,. 達」 ,「養育行動・意識性」の 4 カテゴリーからなる,. 移動運動発達と社会的発達を養育行動の変化という観. 45 項目のチェックリスト(筆者作成)を用いた。各項目. 点から検討を行い,移動運動の開始から一定期間を経. の選定は,既存の標準化された発達検査紙,また養育. た乳幼児が,怒りの情動表出やその強度の増加,養育. 行動意識に関しては,複数の先行研究(e.g. Campos et. 者の後追い,興味・関心の増大と言った社会情緒的側. al,1992)を参考にしながら,子どもの行動に関して,. 面に関連した変化が見られ,また養育者の側も危険な. 以前の状態との比較を問うもの(子の変化に対するの. ものへの接近防止や自らの持つ期待,ルールに従うこ. 意識性)と母親自身の養育行動に関する以前の状況と. とを望むことから,より強い情緒的反応(例えば“そっ. の比較(養育行動の変化)を問うものを計 15 項目,設定. ちに行ったらダメ”といった否定的な発語)や身体的な. した。各項目は,4 段階の評定値であり,また,フェ. 抑制を用いるようになり,その一方で, 「抱きしめる」. イスシートには,子どもの出生体重や現在の体重,移. 等の愛情行動が増加することを示した。このようなこ. 動運動が開始されてからの期間を記入してもらうよう. とから,移動運動発達と社会的対人行動発達が何らか. 作成された。これらのことを踏まえたうえで,作成後. の関連を持ちうることが想定される。しかし,そのメ. には, 予備調査として乳幼児を持つ母親 10 名に対し,. カニズムに関しては,直接的な因果性を指摘するもの. 実施し,得られたプロトコル(分かりにくい表現や質問. (Anderson.2001)や養育行動を媒介因として想定して. 内容の困難さ等)から,文章表現等を変更した。. いるもの(Campos et al,1992)とが,混在し,また近年. 分析方法:得られたデータから,先行研究(Kermoian. では,竹下(1999)が,乳児の社会的発達を駆動する要. et al,1988)の指摘を踏まえて移動運動の有無・形態,. 因として,運動発達と密接した対象操作行動を指摘し. 経験量をもとに 3 群(未移動群・腹這い群・四つ這い群). ているなど,必ずしも一致をみていない。そこで本研. に分類しそれぞれの群ごとにパス解析を施すこととし. 究では,①「運動発達」 「社会的対人行動(社会的発達)」. た。. 「養育行動」に「対象操作」を含めた 4 つの変数間の 関係を移動運動の観点から明らかにすること。さらに,.

(2) 結果・考察 第1研究の結果として,Fig.1∼4 を示す(尚,Fig に おける運動は運動発達を,対象は対象操作活動を,養 育は養育行動・意識を,社会は社会的対人行動を示す) 。 Fig,1 は,5 ヶ月∼9 ヶ月の乳児全体(187 名)に対し,パ ス解析を施し,さらに月齢の影響を部分的に取り除く 意味で,見かけ上の相関を取り除いたものである(以下, 統計的有意差は,* P<.05 で統一するものとする)。 これを見ると,乳児の社会的対人行動発達は,運動発達 が進展することに強く関連した対象操作発達を経由し て高められていくことが見てとれる。また乳児の運動 発達は,養育行動・意識に影響を与えるものの,そのよ. Fig.1.. 5∼9 ヶ月児(187 名)のパス解析の結果. Fig.2.. 未移動期群におけるパス解析の結果. Fig.3.. 腹這い期群におけるパス解析の結果. Fig.4.. 四つ這い期群におけるパス解析の結果. うな養育者の変化は乳児の社会的対人行動発達に影響 を及ぼすとは言えないことが分かる。しかし,この結果 は,5∼9 ヶ月という時期を総体的に分析したものであ る。よって,上記の発達的メカニズムが5ヶ月から9ヶ 月の間,一貫したものであるのかを検討する必要があ るだろう。そこで,移動運動発達を中心に発達の諸相を 抽出し,発達的メカニズムの推移を検証する為,上記の 187 名の乳児を,移動運動の有無や形態・経験量の観点 から未移動期群(Fig.2),腹這い期群(Fig.3),四つ這い期 群(Fig.4)の 3 群に分類してパス解析を行ったものであ る。 (尚,移動運動を群分けした為,運動発達の変数は共 変量となることから,運動発達を除いた 3 変数でパス 解析を行うこととした)。これを見ると,移動運動発達 が進展するにつれて(Fig.2→Fig.3→Fig.4),対象操作発 達が養育行動・意識や社会的対人行動発達に及ぼす影 響力が減じてくること,その一方で,養育行動・意識か ら社会的対人行動発達への直接効果が,四つ這い期に 大きな影響を持つようになることが見てとれる。これ らのことから,乳児が未移動期,腹這い期である場合,養 育者は,子どもの運動発達や対象操作発達という目に 見える変化に誘発された形で自らの反応性を変化させ ていき,それに支えられた形で,乳児は社会的対人行動 発達を遂げること,しかしながら,四つ這い期になると, 養育者の養育特性が強く反映された形(子どもの見た 目上の変化に誘発されなくとも養育性を高めていくこ と)で乳児の社会的対人行動発達が促進されることが 想定される。しかし,本第1研究は,養育者により紙面 上で回答されたものが乳児の発達を正確に測り得てい るかという問題や,さらには同時相関的な分析方法で あることから,その解釈を限局的に行うことには問題 が残る。そこで,次の第 2 研究では,実際の母子相互交 渉を縦断的に観察し,本第 1 研究で示された知見を検 証していきたい。.

(3) 第 2 研究. とする。. 目的ここでは先行研究の知見を踏まえ,乳児の社会的. 結果・考察第 2 研究の結果として,Fig.5∼6及び. 対人行動の指標として対人注視行動を,養育行動とし. Table.1 に示す。Fig.5 は,乳児の注視行動の出現率と. て,対象物を用いた誘いかけを取り上げ,それらが乳. その性質(応答・自発)を抽出したものであり,Fig.6 は,. 児の移動運動発達と相俟ってどのように変化するのか. 自発的注視行動における情緒的表出の連鎖性について. を検証し,第1研究で示されたパス図の内容性を抽出. 示したものである。Fig.5 から,乳児は四つ這い期に. することを目的とする。方法観察対象:2組の母子の. 到り,大きく自発的注視行動の出現率を高めること,. 協力を得た。2名ともに第一子の女児(6 ヶ月児と 7 ヶ. また Fig.6 から四つ這い期には,情緒的表出を連鎖さ. 月児)であった。協力を得た期間は2ヶ月間であり,観. せた自発的注視行動の出現率が高まることが分かる。. 察頻度は1週間に 1 回であった。そのため1事例につ. つまり乳児は,移動運動が高まるにつれて積極的に養. き観察頻度が 8 回の縦断的観察である。(1 回の観察に. 育者を見るようになり,情緒的表出を連鎖させること. つき 2 項遊び場面(10 分間) 3 項遊び場面(10 分間) 移. で,より社会性の高い対人行動を発動していくことが. 動場面(5 分間)の計 25 分)。. 示唆される。次に Table.1 は母親の対象物を用いた働. 資料の整理分析から得られた資料は,母子の相互作用. きかけにおける目的性と情緒的表出の連鎖性を示した. を扱った先行研究を参考に筆者が作成したコード表. 表である。これを見ると養育者は,乳児の移動運動発. (乳児側 5 分類 17下位項目,母親側 7 分類 22 項目). 達の状況に応じて自らの目的性を操作していること,. を用いた。 2 名の評定者間一致率は κ=.874 であった。. さらに腹這い期では移動誘発,四つ這い期では Mo(自. 分析方法:第 1 研究同様に,乳児の発達を 3 期に分類. 分自身)への定位といった誘いかけの特徴と情緒的表. した上で,以下の 3 つの分析を行う。①母子の生起行. 出の連鎖性に一致が見られることが見てとれる。これ. 動分析→タイムサンプリング法を用いた網羅的な分析。. らのことから,養育者は,乳児の移動運動発達にフィ. ②子どもの対人注視行動の抽出→先行研究では「3 項. ットした関わりを展開させ,さらに乳児の移動が開始. 遊びにおける乳児の人への注意の向き難さ」が指摘さ. される時期(腹這い期)以降は,それらに情緒的表出を. れている。そこで,3 項遊び場面における子どもの母. 連鎖させることで養育的効率性を高めていることが示. 親に対する注視行動を抽出し,その生起率や応答,自. 唆される。以上の知見を踏まえ,次の総合考察では,. 発といった質的側面について未移動期から移動期まで. 第1研究と第 2 研究に架橋を施すものとする。. の変化を観察する。また,出現の際の“情緒的表出”. 自発注視出現率 応答注視出現率. の連鎖性についても検討を行う。注視については母親 の顔に対する 1 秒以上の視線停泊を,情緒的表出の連 鎖については注視行動の生起から 1 秒以内に発声や微 笑等を伴うことを定義とした。③養育者による注意喚 起行動→ここでは,対象物を用いた養育者による注意. 100% 出 現 率. 80%. ︵ %. 40%. ︶. 20%. 喚起行動を抽出する。子の移動運動が進展するにあた. 60%. 0%. って,養育者は,効果的に子の注意を喚起し,相互交 渉を展開していくことが示唆されている。よってここ では,その目的性を以下のように分類し,その生起率を. 未移動期. 腹這い期. 四つ這い期. Fig.5. 乳児の対人注視行動の出現率とその性質. 抽出すること,及びそれらの行動に含まれる養育者の 情緒性の有無について分析する。 「目的性」A.母親への 定位−養育者が自分に注意を向けさせる為に対象を用. 100% 出 現 率. 80%. を手渡す,子の方へ寄せるなど。C.新たな対象の提示. ︵ %. 40%. −子が接しているのとは別の対象物を渡す D.移動誘. ︶. 20%. いる。B.対象(モノ)への再定位−子が接している対象. 発−子が移動を行うよう対象を転がす,音を出す等 E. 移動抑制−子の移動に際して、対象物を手渡す,音を出. 情緒表出非連鎖 情緒表出連鎖. 60%. 0% 未移動期. 腹這い期. 四つ這い期. す等。今回の分析では②乳児の対人注視行動と③養育. Fig.6. 乳児の自発的注視行動における. 者の対象物を用いた関わりを中心的に取り上げること. 情緒的表出との連鎖性.

(4) Table.1.養育者の関わり特徴と情緒的表出の連鎖性 養育者の関わり特徴 情緒的表出が連鎖しやすい関わり 未移動期 モノへの再定位が多い 新たな対象提示 腹這い期 移動誘発が多い 移動誘発 四つ這い期 Moへの定位が多い Moへの定位. 探索活動を通じて,社会化を遂げる。特に,対人的注視 行動においては自発的に養育者を見て,また情緒性を 連鎖させることも飛躍的に増加する。養育者は,もはや 乳児の外見上の運動的変化に左右されなくとも,自ら の養育性を積極的に変化させる,特にこの時期には,対. 総合考察. 象物を用いた移動抑制や自分自身(養育者)への定位と. 本研究で得られた知見から以下のことが示唆される。 。. いう関わりが多く,情緒的表出を質的・量的に増加させ. (1)未移動期の乳児と養育者の関わり. ることが,結果的に乳児の注視を含めた社会的対人的. この時期の乳児は,運動発達と密接に連関した対象操. 行動発達を支えていく。. 作行動の獲得や姿勢動作の獲得に伴った養育者の関わ. おわりに. り行動の変化によって,社会的対人行動が進展するこ. 今後も方法論を含めたさらなる検討が必要であるもの. とが示唆された。その内容性に関しては以下のように. と考えられる。とりわけ,母子間関係性の機微に迫る為. なる。. には,「行為のやりとりを支える当該二者の情緒性」が,. 観察例:座位や腹臥位という姿勢運動を獲得した乳児. どのように変化するのかについて,より微視的な観察. は,手にした対象物を口もとに運び舐める等の対象操. が必要であることは疑い得ない。この点を踏まえて,. 作を行う。このことに発声等が同期することにより,. 移動運動発達と母子間関係性という観点から研究を行. 情緒的表出を緩やかに高めていくが,この時期は明確. うことにより,「生後9ヶ月の奇跡」と称される現象の. に他者に向けられた情緒的表出ではない。養育者は時. 発生的メカニズムに迫ることが可能かもしれない。. 折,発せられる乳児の発声等に合わせて,情緒的な言葉 かけ等を行うが,それ以外はモノとの 2 項関係を支援. 引用文献. するかのように傍らで静観的に見守ることやモノに定. Anderson,D.I.(2001).The Experimental Manipul−. 位させるという関わりを用いる。つまり乳児の発動性. −ation of Locomotor experience: Basic and Clinical. の高まりが社会的対人行動であるかのように扱われる. considerations. 日本発達心理学会第 12 回大会発表論. ことにより社会的対人行動が高まっていく。. 文集 S53. (2)腹這い期の乳児と養育者の関わり この時期の乳児は,未移動期の様相を残しながらも,運. Campos,J.J.,Kermoian,R.,&Zumbahlen,M.R.(1992).. 動発達の進展,とりわけ原初的な移動運動を獲得する. Socioemotional transformations in the family. ことに伴い,対象操作行動が養育者との結びつきを強. system following infant crawling onset,In. めるものとなることが示唆された。. N.Eisenberg&R.A.Fables(Eds.),Emotion and its. 観察例:移動を開始し始めた乳児はそれと相俟って対. regulation in early development. New directions for. 象操作行動での左右手の分化が生じる。このことによ. child development.San Francisco:Jossey-Bass. り玩具を振る等の行動や玩具を持ったまま養育者を見 る行動が増えてくる。こういった動作に対して,発声だ. Gottlieb,G.(1991).Experimental canalization of. けでなく微笑を伴うことも増え,未移動期よりも情緒. behavioral development:Theory Psychology,27,4-13. 性が豊かになる。この時期に養育者は対象物を用いて 移動を誘発するような関わりを多く行うようになり,. Kermoian,R.,&Campos,J.J.(1988).Locomotor. またそこに微笑や発声などの情緒性を連鎖させること. experience:A facilitator of Spatial cognitive. で乳児の注意を効果的に引きつける。この注意喚起に. development.Child Development,59,908-917. 呼応する形でこの時期の乳児は社会的対人行動の発現 を高めていく。. 中野茂(1996). 遊び研究の潮流−遊びの行動主義から. (3)四つ這い期の乳児と養育者の関わり. 「遊び心」へ. 高橋たまき・中沢和子・森上史朗(編). この時期の乳児は,養育者側の特性的な変化(乳児の運. 遊びの発達学(基礎編)培風館 pp21-60. 動的変化や対象操作の変化に影響を受けない)により 社会的対人行動を進展させていくことが示唆された。. 竹下秀子(1999)心とことばの初期発達−霊長類の比較. 観察例:移動を熟達化させた乳児は,自らの移動体験や. 行動発達学−,東京大学出版会..

(5)

参照

関連したドキュメント

方法 理論的妥当性および先行研究の結果に基づいて,日常生活動作を構成する7動作領域より

70年代の初頭,日系三世を中心にリドレス運動が始まる。リドレス運動とは,第二次世界大戦

  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

自動運転ユニット リーダー:菅沼 直樹  准教授 市 街 地での自動 運 転が可 能な,高度な運転知能を持 つ自動 運 転自動 車を開 発

・「下→上(能動)」とは、荷の位置を現在位置から上方へ移動する動作。

・HSE 活動を推進するには、ステークホルダーへの説明責任を果たすため、造船所で働く全 ての者及び来訪者を HSE 活動の対象とし、HSE

私たちは、行政や企業だけではできない新しい価値観にもとづいた行動や新しい社会的取り

この P 1 P 2 を抵抗板の動きにより測定し、その動きをマグネットを通して指針の動きにし、流