• 検索結果がありません。

大学院教育の現状と展望ー修了後の進路に注目してー < 図表 1 > 大学院在学者数の推移 ( 人 )

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大学院教育の現状と展望ー修了後の進路に注目してー < 図表 1 > 大学院在学者数の推移 ( 人 )"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2 Kawaijuku Guideline 2011.11  

大学院の教育については、1990年代から大規模

な改革が進行し、近年ではその検証がなされるよ

うになってきた。今年1月には、中央教育審議会

が「グローバル化社会の大学院教育~世界の多様

な分野で大学院修了者が活躍するために~」答申

を発表。同答申では、大学院教育の実質化に向け

た取り組みが着実に進展していると評価している

ものの、大学院としての体系的な教育プログラム

の構築や、キャリアパスを確立し学生に明らかに

することを課題として指摘している。また、朝日

新聞×河合塾共同調査「ひらく 日本の大学」でも、

進路未決定の学生が多いなど、大学院修了後の進

路に関する課題が浮かび上がった。そこで11月号

の特集では、大学院、特に修士課程修了後の進路

に着目して、大学院教育の現状と展望を紹介する。

 概説では、大学院教育のどのような点が課題な

のか、今後どのような方向性を目指す必要がある

のかを、第5期中央教育審議会大学分科会大学院

部会の委員を務めた、国立大学財務・経営センター

研究部長の金子元久教授に伺った。各論では、育

成する人材像、修了後のキャリアパスを明示し、

教育プログラムを整えている研究科の取り組みを

紹介する。

C

ONTENTS

概 説  大学院教育の現状と展望 事例1  東京大学大学院工学系研究科 事例2  大阪大学大学院工学研究科 事例3  中央大学大学院公共政策研究科 ……… p2 ………… p8 ………… p10 …… p12

大学院教育の

現状

展望

-修了後の進路に注目して-

「倍増計画」「大学院重点化」など 1990 年代から活発な大学院改革を推進  大学院の改革が政策的な課題になったのは、1990 年 代に入ってからである。この時期には、経済のグローバ ル化、学術研究・産業の高度化が進行したため、高度な 知識・技術を備えた人材(高度専門職業人)の養成が急 務となっていた。また、大学進学率が急激に上昇したに もかかわらず、大学院進学率は欧米諸国と比較して低い 水準にとどまっており、国際競争力を保つためには大学 院の規模を拡大する必要があると主張されるようになっ た。  そこで、大学審議会は、1991 年5月に「大学院の整備充実に ついて」、同年 11 月に「大学院 の量的整備について」と、相次 いで答申を発表。1991 年から 10 年間で大学院学生数を2倍 に拡大するという数値目標を打 ち出した。  このような状況の中で、それまで大学院が設置されて いなかった私立大で、大学院が次々と新設され、小規模 な大学院が増大した。  さらに、旧帝大を中心として行われた「大学院部局化」、

概説

大学院教育の現状と展望

金子元久教授

(2)

大学院教育の現状と展望

ー修了後の進路に注目してー

<図表 1 >大学院在学者数の推移 あるいは「大学院重点化」と呼ばれる動きも、大学院学 生数の拡充を加速させた。  「大学院重点化の背景には、当時、国立大学に対する 予算措置が頭打ちになっていたことが挙げられます。ま た、同じ国立大学でも、研究を中心とする大学とそうで ない大学とでは必要な予算が大きく異なるのに、同じ基 準で予算が配分されることに不満の声もあがっていまし た。そこで考えられたのが『大学院の部局化』です。そ れまで教員は学部に所属し、大学院は学部に付随する組 織になっていたものを、大学院を部局として、そこに教 員を帰属させる形にした場合に予算を多く配分するよう にしたのです。その結果、研究大学を自認する大学で、 さまざまな課題を抱えながらも(注1) 大学院の部局化が進 行しました。一部の大学では教養部や附属研究所も大学 院の組織としたことなどから、大学院の規模が大幅に拡 大し、大学によっては学部生よりも大学院生の方が多い 状況となりました」と、国立大学財務・経営センター研 究部長の金子元久教授は語る。  国の政策と大学の動きによって、大学院学生数は急速 に増加。1991 年度の 98,650 名(修士課程 68,739 名、博 士課程 29,911 名)から、2000 年度は 205,311 名(修士 課程 142,830 名、博士課程 62,481 名)と、倍増計画は達 成された<図表1>。  それまでの大学院は学術研究者の養成が中心だった が、1990 年代後半からは高度専門職業人の養成に特化 した大学院の検討が進み、さらに多様な大学院が設置さ れるようになった。1999 年には経営管理やファイナン スの分野の実践的な教育を行う大学院修士課程として専 門大学院制度が創設。それを母体として、2003 年には「専 門職学位」という新たな学位を与える大学院として、専 門職大学院が制度化された。2011 年現在、法科大学院(74 専攻)、教職大学院(25 専攻)などを始めとして、131 大学に 186 専攻が置かれている(注 2) 。 2000 年代から大学院教育の検証が進み 課題が明らかに  2000 年代に入ってからは大学院学生数の増加のス ピードが落ち始め、2006 年ごろからはほぼ横ばいの状 況になっている。金子教授によると、その原因として、 以下のような状況が学生に伝わってきたことが考えられ 68,739  76,954   86,891    99,449     109,649     115,902     119,406      123,255       132,118        142,830         150,797         155,267         159,481          162,712          164,551          165,525          165,219       165,422       167,043        173,831 29,911   32,154      35,469         39,303       43,774        48,448         52,141        55,646        59,007        62,481       65,525         68,245        71,363       73,446       74,909        75,365        74,811        74,231        73,565       74,432 15,023 20,159 22,083 23,033 23,381 23,191 645 7,866 ■修士課程段階 ■博士課程段階 ■専門職学位課程 271,454 98,650 205,311 約 2.8 倍 約 2.1 倍 (各年度 5 月 1 日現在) 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 「修士課程段階」:修士課程、区分制博士課程(前期2年課程)及び5年一貫制博士課程(1、2年次)の合計 「博士課程段階」:区分制博士課程(後期3年課程)、医・歯・薬学(4年制)、獣医学の博士課程及び5年一貫制博士課程(3∼5年次)の合計 (人) 出典:学校基本調査 (注1)例えば、大学院を部局化していない大学は研究機能が充実していないと見なされたり、同じ大学の中でも、大学院部局化が遅れる学部が出た場合、     その学部は研究レベルが十分でないと見られてしまうといった懸念が生じた。 (注 2)文部科学省「専門職大学院制度の概要」より 「グローバル化社会の大学院教育〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜」より

(3)

4 Kawaijuku Guideline 2011.11 るという。  ・理工系以外の分野では、大学院修士課程を修了して も、就職に有利になるケースは少ないこと。  ・伝統的に大学院は研究者を目指す学生が多く進学し てきたが、大学教員はすでに供給過剰になっており、 「オーバードクター/ポストドクター」(博士課程修 了後、定職に就いていない者)の増加が社会問題に なっていること。  ・法科大学院修了者の新司法試験の合格率が低迷する など、専門職大学院が当初の想定ほどには機能して いないこと。  こうした状況を受け、2000 年代には大学院教育の再 検討が進められた。  2005 年には「新時代の大学院教育-国際的に魅力あ る大学院教育の構築に向けて-」が公表された。大学院 の質的向上を目指した答申で、①教員個人の研究テーマ に基づいた教育を行うのではなく、大学院として体系的 な教育プログラムを整備する、②文系の博士課程修了者 を増やす、③大学院間の人的な流動性を確保する、など を提言。この答申を受けて、「大学院教育振興施策要綱」 が策定された。  今年 1 月の答申「グローバル化社会の大学院教育~世 界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために~」は、 これらの施策がどの程度実現されているかを検証するこ とを目的としていた。答申の概要については<図表2> に示す。  答申の作成のための調査の中で、大学院教育を巡るさ まざまな課題が明らかになったが、金子教授はその中で も、優秀な学生が大学院、特に博士課程に進学する意欲 を低下させていることが大きな問題となったと話す。 就職未決定者が修士 16%、博士 30% キャリアパスの確立と明示が重要課題に  大学院への進学意欲が低下している大きな要因は、大 学院修了後の将来像が見えないことだ。今年1月の答申 では、特に人文・社会科学系大学院に対して「多様なキャ リアパスの確立」が課題であると指摘されている。  朝日新聞社 × 河合塾 共同調査「ひらく 日本の大 学」(注 3) でも、進路未決定者が修士課程で 16%、博士課 程で 30%と高いことがわかった。特に私立大では、進 (注 3)朝日新聞社と河合塾による共同調査。詳細はガイドライン 2011 年9月号を参照ください。 <図表 2 >今後の大学院教育の改善の方向性と方策 <改善の方向性> グローバル化や知識基盤社会が進展する中,大学院教育の強化は一刻の猶予も許されない課題 「17 年大学院答申」で掲げた大学院教育の実質化の一層の強化を基本に、 ①産学官が協力し国内外の多様な社会の要請に的確に応える開かれた体系的な教育の展開 ②社会人や外国人学生を含む多様な学生が将来の見通しを持って互いに切磋琢磨する環境の整備 に力点を置き,以下の柱に基づき大学院教育を強化することが必要 1.学位プログラムとしての大学院教育の確立 修得すべき知識・能力が明確な学位プログラムとしての 大学院教育を確立し,学生の質を保証 2.グローバルに活躍する博士の養成 課程を通じ一貫した博士課程教育を確立し, グローバルに活躍する高度な人材を養成 <改善方策> コースワークから研究指導へ有機的に つながる体系的教育の確立 教育情報の公表の推進による大学院教育の「可視化」 学位プログラムとして一貫した博士課程教育の確立 * 体系的なコースワーク等を通じて修得される博士論文作成に必要な基礎的能力の包括的な審査 高度な専門的知識,俯瞰的なものの見方, 専 門応用能力,コミュニケーション能力, 国際 性等を体系的に修得させる学位プログラムと しての大学院教育の確立 大学教育の国際競争力の向上のため,語学力 を含む修得能力目標や学生支援等の情報の積 極的な公表 教育情報を一覧できる仕組みの整備 広範なコースワークや複数専攻制,研究室ローテーショ ンなど研究室等の壁を破る統合的な教育を経て, 独創的 な研究活動を遂行する一貫した学位プログラムを構築 Qualifying Exam*により質を保証する仕組みの導入 標準修業年限や修得単位数の検討など,一貫した博士 課程教育の確立に必要な制度的検討 学生の質を保証する組織的な 教育・研究指導体制の確立 優れた学生が見通しを持って大学院で学ぶ環境の整備 異なる専門分野の複数の教員が研究指導を行 う体制を確保 FDの充実,ピアレビューの実施による教員 の教育・研究指導能力の向上 教員の教育業績・能力の評価の充実。人事等 への反映。評価指標の開発の推進 分野融合型の専攻への再編,専攻,大学間の 連携協力による小規模専攻の教育の質の確保 と入学定員の見直し 奨学金の業績優秀者免除制度の拡大や予約採 用方法の改善,授業料減免枠の拡大 各大学が学生納付金等や経済的支援等に関す る見通しや実績を明示 産業界等との連携の強化と 多様なキャリアパスの確立 学生の進路の把握とキャリア支援の強化 大学と産業界等の協働により,我が国の成長 を支える高度人材養成の好循環を構築するた めの対話の場の設置 成長を牽引する世界的な 大学院教育拠点の形成 産業界等との連携を強化し,一貫した世界に通用する 博士課程教育で世界を牽引するリーダーを養成する 「リーディング大学院」の形成を支援 日本人・外国人学生の垣根を越えた 協働教育の推進 学生の受入・派遣双方向交流プログラムを通じた協働 教育等を進める大学を支援 「グローバル化社会の大学院教育〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜」より

(4)

大学院教育の現状と展望

ー修了後の進路に注目してー

路未決定者が修士課程で 24%、博士課程で 37%を占め る<図表 3 >。ただし、分野ごとに状況は異なり、系 統別に見ると、理系では博士課程で、文系では修士課程 から進路未決定者の割合が高くなっている<図表 4 >。  「ここ数年、文系の大学院の就職状況が厳しいのは、 これまで比較的採用に積極的だったマーケティング、コ ンサルティングなどの情報サービス業が、不況のために 採用を控えたことが影響しています。けれども、長期的 に見れば、拡大する可能性も高いと考えています。せっ かく大学院修了者へのニーズの高い分野があるわけです から、それに応えられる能力を育成するプログラムを開 発するとともに、新たな分野を開拓するための努力が要 求されます。そういった狙いをもったプログラムが大学 院GPの中にいくつか見られますから、それらが成果を 上げ、他にも波及していくことを期待しています」(金 子教授)  また、金子教授は、「大学院の就職は、ゼミ・研究室 が窓口になる慣習があり、大学が組織的に把握してフォ ローする体制になっていない場合がある」ことも問題点 だと指摘する。そのため、「進路未決定」に分類される 学生には、実際には就職しているにもかかわらず、大学 が把握できていない学生も相当数含まれていると考えら れるのだ。そうしたこともあり、今年1月の答申でも「き め細やかなキャリア支援の構築」が求められている。 コースワークの充実により体系的な教育を目指す 到達度試験の導入も検討が始まる  大学院修了者、特に博士課程修了者の採用に積極的な <図表 3 >卒業後の進路状況(設置者別) 全体 国立大 公立大 私立大 全体 国立大 公立大 私立大  73%   76%  75% 68%   11%    12%   9% 8%  16%   12%  16% 24% 68%   70% 69% 60%    2%    2%    1% 3%  30%   28%  30% 37% ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■■就職者  就職者  ■■大学院等進学者  ■進路未決定者大学院等進学者  ■進路未決定者 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育 理 工 農 医 歯 薬 保健 医歯薬保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育 理 工 農 医 歯 薬 保健 医歯薬保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■■就職者  就職者  ■■大学院等進学者  ■進路未決定者大学院等進学者  ■進路未決定者 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)      73% 43%   51%  49%   51%     67%      80%       86%     75%     75%      80%       85%       83%      77%    65% 39%     68%          11%    19%     11%    14%     10%        7%        11%        7%       14%        18%        20%       11%         9%        16%        12% 10%          16%     16%   37%   38%   37%   38%    26%       9%       7%      11%       7%         0%        4%       8%       7%     23% 51%     16%      68% 37%   50% 38%   50%    59%     66%      75%    63%       85%      80%     67%       90%       87%      72% 32%    60%            2%   4%      2%   2%      2%         8%          3%         2%          4%        1%         1%           3%         2%         1%        2% 4%         2%      30%  60%    48%  60%    48%      33%      32%       23%      33%        14%        19%      30%          8%         12%       27% 65%     38% 【修士課程】 【博士課程】 【修士課程】 【博士課程】 <図表 4 >卒業後の進路状況(系統別) 全体 国立大 公立大 私立大 全体 国立大 公立大 私立大  73%   76%  75% 68%   11%    12%   9% 8%  16%   12%  16% 24% 68%   70% 69% 60%    2%    2%    1% 3%  30%   28%  30% 37% ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■■就職者  就職者  ■■大学院等進学者  ■進路未決定者大学院等進学者  ■進路未決定者 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育 理 工 農 医 歯 薬 保健 医歯薬保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 全体 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育 理 工 農 医 歯 薬 保健 医歯薬保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■就職者  ■大学院等進学者  ■進路未決定者 ■■就職者  就職者  ■■大学院等進学者  ■進路未決定者大学院等進学者  ■進路未決定者 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)      73% 43%   51%  49%   51%     67%      80%       86%     75%     75%      80%       85%       83%      77%    65% 39%     68%          11%    19%     11%    14%     10%        7%        11%        7%       14%        18%        20%       11%         9%        16%        12% 10%          16%     16%   37%   38%   37%   38%    26%       9%       7%      11%       7%         0%        4%       8%       7%     23% 51%     16%      68% 37%   50% 38%   50%    59%     66%      75%    63%       85%      80%     67%       90%       87%      72% 32%    60%            2%   4%      2%   2%      2%         8%          3%         2%          4%        1%         1%           3%         2%         1%        2% 4%         2%      30%  60%    48%  60%    48%      33%      32%       23%      33%        14%        19%      30%          8%         12%       27% 65%     38% 【修士課程】 【博士課程】 【修士課程】 【博士課程】 朝日新聞 × 河合塾 共同調査「ひらく 日本の大学」より ※2011 年3月修了者の状況 ※2011 年3月修了者の状況 朝日新聞 × 河合塾 共同調査「ひらく 日本の大学」より

(5)

6 Kawaijuku Guideline 2011.11 企業が多くないことも、キャリアパスが不明確になって いる原因の一つである。  「このような状況となった原因は、需給のミスマッチ の問題が大きいと思います。企業が大学院修了者を積極 的に採用しないのは、企業が大学院修了者に求める能力 と、大学院修了者が身に付けている能力にズレがあるた めです。企業は大学院で身につけた力を新しい企画に応 用することを望んでいるのですが、大学院修了者は自身 が研究してきた専門分野以外で力を発揮できない傾向が 強かったのです」(金子教授)  その背景には、大学院教育の仕組みがある。  「大学院教育は、伝統的に、博士課程まで進学する学 生を念頭に置いています。博士課程に進学する際の選考 には修士論文が用いられており、2年間で質の高い論文 を書き上げる必要があるため、学生は修士課程入学直後 から限定された分野に特化した研究を行う必要がありま す。つまり、周辺領域を含めて専門分野を体系的に履修 することは求められてこなかったのです。  また、日本の大学院はゼミ・研究室単位の研究が主体 で、教育においても研究室が重要な役割を持っており、 教員以上に先輩から学ぶことも多くありました。そうし た知識を小集団で共有する形態で、大学院における研究 や教育は成果をあげてきたのです。けれども、このまま では他の分野に接する機会が少なくなり、幅の広い知識 や技術は身に付けられません。大学院として体系的なプ ログラムを整えることが重要なのです<図表 5 >」(金 子教授)  そこで、2005 年の答申では、学修課題を複数の科目 により体系的に履修するコースワーク等を通じて、関連 する分野の基礎的な素養を涵養し、学際的な分野に対応 できるよう専門知識を活用・応用する能力を培う教育に 取り組むことが提言された。今年1月の答申では、大半 の大学院でコースワークが取り組まれていると報告され ているが、先述のような大学院教育の傾向は強く残って おり、今後さらに充実させていくことが求められる。  そこで、大学院生が限定された分野だけでなく、専門 分野に関する幅広い基礎知識・技術を身に付けている かをチェックすることを狙った到達度試験(Qualifying Exam)の導入も議論されている。これはアメリカの大 学院で導入されている Comprehensive Exam を参考に したものだ。しかし、実施時期や位置づけ(博士課程の 入試代わりなのか、博士課程の中間段階で到達度を見る <図表 5 >大学院教育の改善の方向性(博士課程教育について) フィールドワーク 研究プロジェクト 研究指導 全体として,コースワークの充実など大学院教育の実質化に向けた取 組が着実に進展。一方,課程制大学院制度の趣旨に沿った教育を確立し, 質の一層の向上のために取り組むべき課題も残されている

【大学院教育の実質化の進展】

博士号取得者が産学官の中核的人材としてグローバルに活躍できるよ う,大学院教育,とりわけ博士課程教育に重点を置く大学などにおいて, 課程を通じて一貫した学位プログラムを構築し質の保証された博士課 程教育を確立する必要

【今後の改善の方向性】

講座・ 研究室 入試 入試 入試 入試 入試 博士論文 研究指導 博士論文 研究指導 専門基礎教育 卒業論文・ 研究 研究指導 コースワーク コースワーク 体系的に知識・能力 を修得させるコース ワーク等が充実 後期課程の複数教 員指導制,研究機会 が充実 後期課程が個々の 研究室の中での論 文指導中心 卒研・卒論,入試,修 士論文等を経て早期 に研究テーマが特定 大学院教育やキャリアパス の確立に向けた産学対話の 場の形成 独創的に研究を遂行できる 複数分野からなる 研究指導体制 広範なコースワークや統合 的な教育を行い,基礎的 能力を厳格に審査 DC,RA等の推進や, 奨学金の業績優秀者 免除の拡大 学んだ知識の定着と教育 能力の向上に有効な TAの組織的な推進 専門の枠を超え基礎を 問う入試。柔軟に進路変 更可能な仕組みの整備 学位取得プロセスや経済 的支援やキャリアパスの見 通しをもてる情報の公表 制度と 予算で 強力に 推進 研究指導 研究計画書審査 対話の場の形成 国際 機関 研究 機関 大学 企業 行政 機関 研究室ローテーション等 研究室の壁を破る統合的な教育 Qualifying Exam 専攻する専門分野を選択 教養教育・基礎教育の充実 修士論文 修士論文 フィールドワーク 研究プロジェクト フィールドワーク 研究プロジェクト 博士論文 博士論文 修士論文 修士論文 研究室ローテーション等 研究室の壁を破る統合的な教育 Qualifying Exam 専攻する専門分野を選択 博士論文 博士論文 「グローバル化社会の大学院教育〜世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために〜」より

(6)

大学院教育の現状と展望

ー修了後の進路に注目してー

 大学院の連携・統合を考えていく上では、定員充 足率も参考となる。朝日新聞 × 河合塾共同調査「ひ らく 日本の大学」によると、修士課程全体では定 員充足率が 98%となっているが、分野ごとに状況 が異なる。定員充足率を系統別に見ると、文・人文 74%、社会・国際 74%、法・政治 56%、経済・経 営 74%と、文系では定員を満たしていないのである。 博士課程では文系・理系ともに定員を満たしていな い大学院が多く、全体の定員充足率は 60%となっ ている。専門職大学院は全体的に定員充足率が低く、 80%程度となっている。

大学院の定員充足率

総合・環境・人間・情報 芸術・スポーツ科学 生活科学 医歯薬保健 保健 薬 歯 医 農 工 理 教育 経済・経営・商 法・政治 社会・国際 文・人文 全体 98% 74% 74% 56% 74% 94% 113% 112% 102% 85% 100%104% 92% 93% 68% 111% 92% 60%59%66% 34% 50% 90% 59% 56% 64% 57% 81% 106% 68% 60% 73% 64% 修士・博士(前期) 博士(後期) 120 100 80 60 40 20 0 (%) (%) 総合・環境・人間・情報 芸術・スポーツ科学 保健 医 工 教育 経済・経営・商 法・政治 社会・国際 文・人文 全体 120 100 80 60 40 20 0 82%88% 90% 73% 90% 95%90% 70%81% 97% 105% <図表 6 >大学院の定員充足率(課程別・系統別) のかなど)に関して難しい問題も多く、現在、中央教育 審議会大学分科会大学院部会で検討中である。 教育情報の公開が 連携・統合を含めた大学院改革を促進  さらに、金子教授は、答申では触れられていないもの の、今後の大学院を考える上で避けて通れない問題があ ると語る。  「現在では全体の8割を超える大学に大学院が設置さ れており、入学者が5名程度の小規模な大学院も多く見 られます。そのような小規模な大学院では先述のような 体系的なカリキュラムを整えることが困難ですから、今 後は連携・統合を含めた検討が必要になると思われます。 今年度から教育情報の公表が義務づけられており、定員 充足率や就職状況が公表されることによって、改革が促 進されるかもしれません」  以上見てきたように、さまざまな課題を抱える大学院 だが、大学選びの際には、大学院も視野に入れておくこ とが大切だと、金子教授は語る。  「近年、高校のキャリア教育が活発化していますが、 私は将来像をそんなに簡単に決めることはできないし、 その必要もないと思っています。入学時点で限定するこ とはなく、入学後にも継続して考えていけばいい。そし て、興味のある分野が見つかったら、大学院の学びまで 視野に入れてほしいのです。さまざまな課題はあります が、今後の大学院は、学術研究者の養成だけでなく、高 度専門職業人の育成など、多機能化が一層図られること は間違いありません。学部卒業後、いったん社会に出て から、必要に応じて大学院に入学し直すなど、学び方も 柔軟になっていくでしょう。自分なりの人生設計を考え る上で、大学院も選択肢の1つにあるということは、ぜ ひ意識しておいてほしいと考えています」 ※2011 年3月修了者の状況 朝日新聞 × 河合塾 共同調査「ひらく 日本の大学」より 【修士課程・博士課程】 【専門職大学院】 ※ 歯の博士(後期)は回答なし

(7)

8 Kawaijuku Guideline 2011.11  科学技術立国の将来を見据え  博士号取得者の増加を目指す  東京大学大学院工学系研究科は、世界的にも高い評価 を受けている。世界中の約 4,000 大学の工学部の中で、 イギリスの Times 紙のランキングで6位に入ったこと をはじめ、常にトップ 10 に数えられている。しかし、 海外の他の大学と異なり、博士課程への進学率が低い。 ここ数年、工学系研究科の修士課程から博士課程に進む 学生は 17%前後で推移。東京大学の工学部から工学系 研究科の修士課程を経て博士課程まで進む学生は6~ 8%程度である。もちろん、他の大学の研究科に進む学 生もいるものの、「これらは世界的には考えられない数 字です」と、工学系研究科長の北森武彦教授は説明する。  「例えばMIT(注1) では、学部を卒業した学生の 50% 以上がMITの博士課程に進み、他の大学への進学も含 めれば 60%くらいになるでしょう。工学でトップ 10 に ランキングされる大学では、同様の状況です。国際社会 では Ph.D(注2) の取得がスタンダードになっており、研 究職はもちろん、営業でも企画でも、ありとあらゆる職 業で Ph.D 取得者が活躍しています。  また、日本はこれまで欧米を手本に『追いつけ追い越 せ』で、より良い製品を安く作るというシェア争いにお いて産業の競争力を高めてきました。しかしこれからは、 自ら新しい技術を作って、自ら新しい市場を開発してい かなければならない。このような時代においては、新技 術と新市場をも開発することのできる優秀な博士号を もった人材をもっと育てていく必要があるのです」  博士課程への進学率が少ない理由の一つは、日本にお いては「博士号をとっても就職先がない」というイメー ジが強く、優秀な学生が二の足を踏むためである。  「確かに、博士課程修了後、すぐに常勤の職に就かな い人(ポストドクター)も一定の割合でいますが、これ は多様な進路があるからです。例えば、日本学術振興会 の特別研究員に代表される任期付きの研究職となり、経 験を積んだ上で常勤職に就く人も多くいます。そのよう な状況もあり、本研究科の博士課程の修了者は、修了後 5年以内に 80%が常勤職に就き、任期が限定されてい る職に就いている人も含めると、95%が就職しています <図表1>。  新聞等では博士課程修了者の就職に関して悲観的な報 道がなされがちですが、決してそんなことはありません。 就職状況が悪く見えるのは、博士課程修了直後の状況の みを見るからです。また、報道されるのは日本の博士課 程全体の数値で、本研究科の実態とは合いません。そう いった偏った情報によるイメージを払拭したいと考えて います」(北森教授) <図表 1 >博士課程修了後の進路 北森武彦教授 (注1)MIT…マサチューセッツ工科大学(アメリカ) (注2)Ph.D…研究系の博士号のこと

実情に即した情報を発信して博士課程への進学を促すとともに

学内外の環境を整え「国際求心力」を高める

 東京大学大学院工学系研究科は、工学の部門において世界でも有数の研究業績を挙げて いるが、海外のトップレベルの大学と比べると、大学院博士課程への進学率は極めて低い。 日本においては「博士課程に進むと就職が厳しくなる」というイメージが強いためである。  しかし、現在は国際的に活躍する人材にとって博士号を持っていることは常識となって おり、優秀な学生に博士課程への進学を促すことは喫緊の課題である。そこで、同研究科 では、実情に即した情報の提供により修士課程の学生に進学を促すとともに、他国からも 優秀な学生を獲得することを目指している。

東京大学大学院工学系研究科

事例

1

※「博士課程白書シリーズ1」より作成 調査は 2007 年 4 〜5月に実施 (%) 0 20 40 60 80 100 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 ■その他 ■任期付  常勤 ■常勤 10 (%) 修了 直後 調査時 修了直後 調査時 直後修了 調査時 修了直後 調査時 修了直後 調査時 2006年度修了 2005年度修了 2004年度修了 2003年度修了 2002年度修了 研究リーダー等の社内の役割や機会が 優先的に割り当てられる 専門性を発揮できる社内の役割や機会が 優先的に割り当てられる 専門家として意見が尊重される 専門家として応対などの待遇がよい 研究活動等を進める上で能力が高い 研究活動を進める上での人脈が豊富である 学会参加、論文活動等、対外活動に関する 社内の理解が得やすい 8% 21% 34% 11% 39% 41% 30%

(8)

大学院教育の現状と展望

ー修了後の進路に注目してー

 企業の実情に即した情報を伝え  修士課程の学生の進学を促す  そこで、同研究科では、学生に博士課程の実情を知ら せるためのさまざまな取り組みを行っている。  その一つが、「博士課程白書シリーズ」の発行である。 博士課程修了者や指導教員、保護者などにアンケート調 査を行い、これまでに3冊発行。それぞれテーマが異な り、博士課程修了者に関する情報を発信している。  2007 年発行の「シリーズ1」では、博士課程修了者 の修了直後と調査時の勤務先、勤務形態の変化などを明 らかにした。2008 年の「シリーズ2」では、民間企業 における博士課程修了者の企業における強みや処遇等に ついて紹介<図表2>。2010 年の「シリーズ3」では 博士課程修了者に対する保護者のイメージや不安などに ついて調査を行った。  もう一つの取り組みは「企業と博士」というタイトル で開催しているシンポジウムである。博士の学位を持ち 企業の第一線で活躍する方々の講演を聞きながら、博士 の活躍の場は産業界にも広がっていることを学生に具体 的に把握させている。  「このシンポジウムは、これまで学部の3・4年生と 修士課程の学生を対象にしていましたが、昨年からはま だ専門が決まっていない教養課程の学部1・2年生に対 しても開催しています。また今年からは、在学生の保護 者を対象にした説明会も始めました。保護者へのアン ケート調査では、博士に対するイメージとして『専門分 野以外のことを知らない』『就職に不利』などが上位に 来ていますが、実情は異なるということをきちんと伝え ていかなければならないと思っています」(北森教授)  このような活動に加えて、工学系研究科では、経済的 な支援も行うことに決めている。博士課程の学生には、 これまで文部科学省からグローバルCOE(注3) の枠組の 中で支援を得られていたが、国からのこの支援が終了し た後も、研究科独自で支援を続ける予定だ。  「我々の研究の最先端の現場で成果を出してくれてい るのは博士課程にいる彼らなので、その研究に対する正 当な対価を払うべきだというのが私の考えです。誤解を 恐れずに言えば研究労働対価と言ってもよいかもしれま せん。そして次の段階としては、ヨーロッパの大学のよ うに、博士課程在籍者の授業料を免除することを目指し ています」(北森教授)  海外の学生・教員を引きつける  「国際求心力」を高める  優秀な人材を獲得するため、修士課程の学生の進学を 促すほかに、国際化の取り組みも重視している。  「例えば本学とUCバークレー(注 4) は国際ランキング では同じくらいなのですが、両方に合格した外国人留学 生のほとんどは、UCバークレーに進学します。日本の 大学の場合、言語の壁がネックとなるからです。これは 教員についても同様であり、外国人教員の割合が指標の 一つになっている国際ランキングでは、本研究科は実際 の研究実績に比べて下位に位置づけられることがありま す。そのため、研究は既に英語で進められる環境にあり ますが、さらに教育も英語でできる環境を整え、海外か ら優秀な学生や教員を引き付ける『国際求心力』を高め なければならないと感じています」と北森教授は語る。  工学系研究科では既に学生に配る書類は和文・英文併 記が標準で、4年次から所属する研究室では英語での発 表が課せられているところが多いが、さらに「2020 年 までに大学院の講義の 70%、学部の講義の 30%を英語 で行う」ことを決定している。  さらに、優秀な教員や研究者を集めるには、日本の雇 用体制を変えていくことも重要だと考えている。  「国際社会では若手の優秀な研究者はいろいろな研究 機関を自由に移動しながら、自身の能力を伸ばしていま す。しかし日本社会は終身雇用制度が根強く、そうした 人材が活躍しにくいのが現状です。そこで私たちは、さ まざまな企業現場管理のトップの方々と定期的な会合を もち、部分的でも良いので『人が自由に動ける雇用制度』 を実現する方法を模索しています」(北森教授)  優秀な人材の獲得と育成を狙った同研究科の取り組み は、日本の科学技術の未来を見据えている。 (注3)グローバルCOE…大学院を対象とした文部科学省の研究拠点形成等補助金事業。2002 年度からの 21 世紀COEを継承し、対象校を減らして 1件あたりの補助金を拡充し、2007 年から開始した。 (注4)UCバークレー…カリフォルニア大学バークレー校(アメリカ) <図表2>博士号を取得していることによるメリット(社内) (%) 0 20 40 60 80 100 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 ■その他 ■任期付  常勤 ■常勤 10 (%) 修了 直後 調査時 修了直後 調査時 直後修了 調査時 修了直後 調査時 修了直後 調査時 2006年度修了 2005年度修了 2004年度修了 2003年度修了 2002年度修了 研究リーダー等の社内の役割や機会が 優先的に割り当てられる 専門性を発揮できる社内の役割や機会が 優先的に割り当てられる 専門家として意見が尊重される 専門家として応対などの待遇がよい 研究活動等を進める上で能力が高い 研究活動を進める上での人脈が豊富である 学会参加、論文活動等、対外活動に関する 社内の理解が得やすい 8% 21% 34% 11% 39% 41% 30% ※ 工学系研究科博士課程を修了後に企業で働いている日本人を対象に調査

(9)

10 Kawaijuku Guideline 2011.11

 企業人からの厳しいコメントを得るなかで  自分が進める研究の意義、本質を考える

 大阪大学大学院工学研究科高度人材育成センターは、 「Internship on Campus」「Education in Company」「キャ

リアデザイン」の3つの柱を設け、産業界と連携しなが ら、学生の幅広い視野の涵養を目指したさまざまな取り 組みを行っている<図表1>。  中でも力を入れているのが、「Internship on Campus」 である。産業界の講師を大学に招き、研究活動を通じて 社会人基礎力を習得させることを狙っており、2007 年 度には経済産業省の「産学連携による社会人基礎力の育 成・評価事業」のモデル事業にも指定された。  大学院生を対象とする「プロジェクト実践講座」<図 表2>は、4回の授業(各3時間)で構成されており、 毎回、学生は研究テーマについて発表し、産業界から招 聘する講師からさまざまなアドバイスを受ける。昨年は 11 の研究室から 70 名の大学院生が参加した。  松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社) で研究者として活躍した後、高度人材育成センターの中 核メンバーを務める瀬恒謙太郎教授は、「産業界から招 聘する講師は、『その研究は実用化できる可能性がある のか、社会の中でどのように役立つのか』という、大学 教員とは異なる観点からコメントをするので、学生の視 野は確実に広がります」と言う。  「例えば、新しいカップリング反応(注1) を見つけるこ とを目指して研究している大学院生に対して、講師から は『反応温度は 300 度?それはエネルギーの無駄遣いで す』『反応時間は1週間?それは費用がかかりすぎます』 といった指摘が出ます。産業界では、量産できるか、採 算を取れるかという点を重視するからです。こういった アドバイスを通じて、学生の頃から社会とのつながりを 意識して研究を進めることは、企業や国際的な研究機関 で活躍する研究者となるために、非常に大切なことだと 考えています」(瀬恒教授)  また、「プロジェクト実践講座」のプレゼンテーショ <図表2>プロジェクト実践講座の概要 <図表 1 >高度人材育成センターによる産業界講師参加講座 瀬恒謙太郎教授 (注1)カップリング反応…2つの化学物質を選択的に結合させる反応のこと。 プログラム 講義・セミナー名 内容 対象 キャリア デザイン JEITA 関西講座 「知価社会論」 総合科目Ⅲ 「キャリアデザイン」 キャリアデザインセミナー 「科学技術と社会」 関西 JEITA 参加企業からの講師が 企業研究開発の現場と期待を語る さまざまな職業分野からの講師が、 社会人として求められる技術者像を語る 科学技術がどのように社会に役立つのかに ついて考える、議論と演習を中心にした講座 修士・博士課程学生 学部2∼4年生 修士・博士課程学生 修士・博士課程学生 基礎セミナー 「何のために技術を学ぶか」 社会に対する科学技術の役割を理解する ため、将来生活シナリオを考える 研究テーマ推進へ企業講師アドバイス 卒論テーマのブラシュアップ 学部1年生 研究力向上 (Internship on Campus) プロジェクト実践講座 総合科目Ⅴ 「学士力概論」 派遣型グループミーティング 中核人材育成 (Education in Company) 修士・博士課程学生 若手教員 学部4年生 修士・博士課程学生 修士・博士課程学生 課題設定力・ 解決力育成合宿 企業を訪問して各自研究トピックスを 発表し、コメント・アドバイスを戴く 企業若手・中堅研究・開発技術者と 共に仮想的な共同研究企画を作成 研究活動のおける大学と企業の違い  ・目標設定成功イメージ計画    が定量化でなく、あまり明確でない。 (学生)自己紹介・研究内容など (講師)社会人基礎力について      研究活動における課題 コーチングによる気づき (学生)課題に対する進捗報告 (講師)修正、アドバイス、指導 最終成果物の報告 第1回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 企業から与えられる課題  ・技術戦略(ロードマップ、技術提案書)の明確化  ・課題一覧表/アプローチ/スケジュールの明確化  ・技術ベンチマークの明確化 1) 実践的基礎力の共有化と向上  ⇒企業と大学(教官、学生)が連携し   共有化して、具体的活動として実践。 2) 研究活動に対する主体性の向上  ⇒研究活動における大きな成果を実現。   (学会発表、論文投稿、テーマ起案など) 3) 成果物 : 各自の研究テーマにおける   ・ロードマップ・技術戦略書   ・実験計画書 ・基礎力管理   ・技術提案書 成果 プログラム 講義・セミナー名 内容 対象 キャリア デザイン JEITA 関西講座 「知価社会論」 総合科目Ⅲ 「キャリアデザイン」 キャリアデザインセミナー 「科学技術と社会」 関西 JEITA 参加企業からの講師が 企業研究開発の現場と期待を語る さまざまな職業分野からの講師が、 社会人として求められる技術者像を語る 科学技術がどのように社会に役立つのかに ついて考える、議論と演習を中心にした講座 修士・博士課程学生 学部2∼4年生 修士・博士課程学生 修士・博士課程学生 基礎セミナー 「何のために技術を学ぶか」 社会に対する科学技術の役割を理解する ため、将来生活シナリオを考える 研究テーマ推進へ企業講師アドバイス 卒論テーマのブラシュアップ 学部1年生 研究力向上 (Internship on Campus) プロジェクト実践講座 総合科目Ⅴ 「学士力概論」 派遣型グループミーティング 中核人材育成 (Education in Company) 修士・博士課程学生 若手教員 学部4年生 修士・博士課程学生 修士・博士課程学生 課題設定力・ 解決力育成合宿 企業を訪問して各自研究トピックスを 発表し、コメント・アドバイスを戴く 企業若手・中堅研究・開発技術者と 共に仮想的な共同研究企画を作成 研究活動のおける大学と企業の違い  ・目標設定成功イメージ計画    が定量化でなく、あまり明確でない。 (学生)自己紹介・研究内容など (講師)社会人基礎力について      研究活動における課題 コーチングによる気づき (学生)課題に対する進捗報告 (講師)修正、アドバイス、指導 最終成果物の報告 第1回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 企業から与えられる課題  ・技術戦略(ロードマップ、技術提案書)の明確化  ・課題一覧表/アプローチ/スケジュールの明確化  ・技術ベンチマークの明確化 1) 実践的基礎力の共有化と向上  ⇒企業と大学(教官、学生)が連携し   共有化して、具体的活動として実践。 2) 研究活動に対する主体性の向上  ⇒研究活動における大きな成果を実現。   (学会発表、論文投稿、テーマ起案など) 3) 成果物 : 各自の研究テーマにおける   ・ロードマップ・技術戦略書   ・実験計画書 ・基礎力管理   ・技術提案書 成果

企業の視点を意識して研究を進めるとともに

企業人に接することでキャリアパスをイメージする

 工学系の大学院修士課程を修了した学生の多くは、企業の技術者として働くことになる が、産業界では近年、ますます高度な専門性を持った人材が求められるようになっている。 大阪大学大学院工学研究科では、そうした状況を受けて、学生や若手教員を、企業の第一 線や国際的な研究機関で通用する人材に育て上げることを目的として、2008 年に「高度人 材育成センター」を設置した。今回は、同センターのさまざまな取り組みの中から、大学 院修士課程の学生を対象とした、企業の視点を取り入れた研究能力の育成と、キャリアデ ザイン支援の取り組みを紹介する。

大阪大学大学院工学研究科 高度人材育成センター

事例

2

(提供:瀬恒教授) (提供:瀬恒教授)

(10)

大学院教育の現状と展望

ー修了後の進路に注目してー

ンは、企業における発表を念頭に置いたものとしている。 例えば、「研究内容を 15 分でまとめる」という指示を出 しておき、発表日に突然「やっぱり5分で話してくださ い」と制限時間を変えたり、「エレベーターに同乗した 社長に1分間で自分の提案を伝え、採用してもらう」と いった状況を仮定し、発表に挑戦させる。  最初はうまくいかない学生が多いが、「構想」「研究に よって産み出されるもの」「スペック」「スケジュール」 などを整理するワークシートなども用いながら、自身の 研究の本質を捉え、与えられた時間に応じて肉付けでき るように情報を整理していくことで、企業で求められる 説得的なプレゼンテーションを行う力を磨いていく。  なお、産業界の講師には厳しいコメントを出すように 依頼しているが、厳しい指摘に慣れていない学生もいる ため、講座には常に産業カウンセラーを配置し、状況に 応じて適切にフォローしている。  企業の協力を得て融合研究を体験する   企 業 に 学 生 を 派 遣 し て 教 育 を 行 う「Education in Company」としては、「派遣型グループミーティング」 と「課題設定力・解決力育成合宿」を提供している。  「派遣型グループミーティング」では同一専攻の大学 院生と若手の教員が企業を訪れ、一期前の学会で発表し た研究テーマについて発表する。訪問企業からは毎回 10 名程度の研究開発技術者が参加。発表に対する反応 も多く、多角的なコメントを得られるため、刺激的な場 となっている。2010 年度に応用化学専攻で組んだプロ グラムには修士・博士課程の学生 21 名と若手教員7名 が参加し、最先端の化学技術に取り組む6社を訪問した。  「課題設定力・解決力育成合宿」は1泊2日の合宿で、 複数の専攻から修士・博士課程の学生が企業に赴き、研 究テーマが似た人同士でグループを作り、企業のコメン テーターも交えてグループディスカッションを行う。 2010 年度は修士・博士課程の学生 15 名と企業の若手・ 中堅研究者6名が参加した。  「現在の社会で最も効率的な成果が出る研究は、異な る分野を組み合わせた融合研究なのですが、大学自身が、 隣の研究室が何をしているか把握していない場合があり ます。それではまずいということで立ち上げたプログラ ムです。昨秋は『グリーンケミストリー(注2) 』をテーマ にディスカッションを行い、アイデアを集約しました。 ここで出たアイデアは既に実現されているものも含まれ るのですが、それを自分で着想できるというのはとても 大切なことなのです」(瀬恒教授)  キャリアデザイン講座で学生の視野を広げる  キャリアパスをデザインするためのプログラムも、産 業界と連携し、学部時代から継続的に受講できるように している<図表1>。大学院生は、これらの機会を通じ て、「大学院での高度専門知識と研究能力の涵養」の意 味や職業への活かし方を考えるとともに、自身のキャリ アをデザインしていく。  「キャリアデザインセミナー」は、学部2年生から博 士課程の学生までを対象としている。内容は、研究開発 の第一線で活躍している技術者による、学生時代の研究 と仕事のつながり、研究での苦労、企業の求める技術者 像などについての講演である。   「現在は雇用が不安定なこともあり、学生の間では終 身雇用制への期待が高まっているようなのですが、企業 から招いた講師の4割は、転職を経験しています。そう した話をしてもらうことで、研究開発を志す者のキャリ アパスは多様だということを学生に伝えたいと思ってい ます」(瀬恒教授)  「知価社会論」は修士課程・博士課程の学生が対象で、 JEITA(電子情報産業協会)関西支部の協力を得て開 講している。「キャリアデザインセミナー」と異なる点は、 毎回の講義の運営を学生自身が担当していることで、講 師が所属する企業と講師の紹介、最後の質疑応答は学生 が司会を務める。さらに 14 回の講義の終了後は、グルー プごとに企業を訪問し、研究開発の現場で活躍する人へ のインタビューを行っている。今年度は電気電子専攻と ビジネスエンジニアリング専攻を中心に、約 100 名の修 士課程の学生が受講。就職先を決める前の具体的な情報 収集の機会になっている。  「学生は知名度の高い企業に目が向きがちなので、あ まり知られていない優秀な中堅企業からも講師を招き、 学生の視野を広げるようにしています」(瀬恒教授)  高度人材育成センターのプログラムに関するアンケー トを見ると、学生の満足度は高く、瀬恒教授も取り組み に対する手ごたえを感じているという。今後は、より多 くの学生がプログラムに参加できるように体制を整え、 さらに取り組みを充実させていくことを目指している。 (注2)グリーンケミストリー…有害物質は使わない、また出さない、省資源、省エネルギー型の生産方式とするなど環境に与える影響を少なくするよう な化学のこと。

(11)

12 Kawaijuku Guideline 2011.11 新しい公共哲学 リサーチプログラム テーマ設定 グループ編成 中間発表会 4 月∼ 6 月末 【年間スケジュール】 毎月の報告会 調査のまとめ 報告書作成 調査開始 フィールド ワーク 最終報告会 政策コンペ 1 月下旬 10 月∼ 1 月中旬 10 月初旬 7 月∼ 9 月末 課題設定 政策実行 政策評価 調査分析 企画・立案 ●データ収集 ●制度分析 ●多様な情報回路 ●目的と手段の対応 ●シミュレーションデザイン ●政策マーケティング ●コミュニケーション ●プレゼンテーション ●ヒューマンネットワーク ●交渉・調整 ●ITによる分析手法 ●論理的実証的政策分析 政策プロフェッショナル 基礎科目 展開科目 共存・共生 多様性  政策ワークショップを通して  プロに必要なさまざまな力を習得  中央大学大学院公共政策研究科の設置の趣旨を、研究 科委員長の植野妙実子教授は、次のように説明する。  「これまでの大学院の役割は研究者養成が主でしたが、 本研究科は、高度な職業教育を行う大学院としてスター トしました。公務員を目指す学生の専門職教育を行うと ともに、近年NGOやNPOなど、公共的な役割を果た す人が増えていることを受け、広く『政策プロフェッショ ナル』の育成を目指しています<図表1>」  公共政策を学ぶ大学院は社会人学生の比率が高い傾向 があるが、同研究科の学生の9割は学部卒業直後に進学 した学生である。職務経験のない学生に現場ですぐに役 立つ能力を身につけさせることに力を注いでいる点が、 特徴の一つである。  同研究科のカリキュラムは、公共政策についての基礎 的な素養を培う「基礎科目」、公務に携わる上での専門 知識を修得する「専門科目」、それらの知識を実際の問 題に当てはめて考察する「リサーチプログラム」の3つ のカテゴリーから構成されている。学生は、こうした環 境で学ぶ中で、法的な観点から政策提言できる能力や、 政策の中身をコスト、効率、公平の点からも吟味できる 公共マネジメント能力を身につけていく。  さまざまな教育プログラムの中で最も力を入れている のが、「リサーチプログラム」に含まれる「政策ワーク ショップ」である。5~6人のグループごとに政策課題 を見つけて、調査や分析を行い、1年間の最後には「政 策コンペ」において、政策提言を行い、優れた発表を行っ たグループには学会や研究会で発表させる機会を設け る。グループワークを通じてコミュニケーション能力や プレゼンテーション能力を高めつつ、発想力 や文書作成能力など政策提言の現場で役立つ スキルも磨くことができる内容である<図表 2>。  「例えば今年は、原発に頼らない社会作りを するためにも石油の調達について見直す必要 があるという観点から、海賊対策に取り組ん でいるグループがあります。『そもそもなぜ海 賊が発生するのか』という調査から始まり、 現在では国際協力の在り方にまで調査研究が 発展しています。他にも、近年は“街づくり” を課題にするグループが増えており、例えば

実際の政策課題に即した教育を展開し

政策のプロフェッショナルを育成する

<図表2>「政策ワークショップ」の年間スケジュール  中央大学大学院公共政策研究科は、中央大学では初めての特定の学部をもたない研究科 として 2005 年に開設された、修士課程の大学院である。「政策プロフェッショナルの養成」 を目標とし、多様な実務家教員の採用により、実際の政策問題に即した教育を展開。修士 課程修了後、政策の分野で即戦力として活躍できる人材を育成している。当初は多摩キャ ンパスと後楽園キャンパスを拠点にしていたが、今春から都心の市ヶ谷田町の新キャンパ スのみで学ぶ体制を構築。官庁や企業との連携がさらに強化されることが期待される。

中央大学大学院 公共政策研究科

事例

3

植野妙実子教授 新しい公共哲学 リサーチプログラム テーマ設定 グループ編成 中間発表会 4 月∼ 6 月末 【年間スケジュール】 毎月の報告会 調査のまとめ 報告書作成 調査開始 フィールド ワーク 最終報告会 政策コンペ 1 月下旬 10 月∼ 1 月中旬 10 月初旬 7 月∼ 9 月末 政策課題発見 課題設定 政策実行 政策評価 調査分析 企画・立案 ●地球温暖化 ●国際紛争 ●少子高齢化 ●年金問題 ●男女共同参画 ●失業対策 ●規制緩和 ●感染症対策 ●医療費 ●ゴミ問題 , etc… ●仮説設定 ●優先順位づけ ●相互関連分析 ●社会想像力 ●データ収集 ●制度分析 ●多様な情報回路 ●目的と手段の対応 ●シミュレーションデザイン ●政策マーケティング ●コミュニケーション ●プレゼンテーション ●ヒューマンネットワーク ●交渉・調整 ●ITによる分析手法 ●論理的実証的政策分析 政策プロフェッショナル 基礎科目 展開科目 共存・共生 多様性 <図表 1 >「政策プロフェッショナル」概念図 (提供:植野教授) (提供:植野教授)

(12)

大学院教育の現状と展望

ー修了後の進路に注目してー

高齢化社会における公共交通機関の在り方や、文化を核 とする町おこしに関する提言などがなされています。担 当教員は必要なところではアドバイスを行ったり、軌道 修正をしたりはしますが、基本的には学生の自主性に任 せています」(植野教授)  実務家教員や社会人学生と接する中で  政策提言の視点を身につける  実務家教員による授業が数多く行われている点も同研 究科の特徴である。「リサーチプログラム」の「政策演習」 では、国会議員や官僚、シンクタンクの研究員、新聞社 の編集委員など、政策形成の第一線で活躍する実務家教 員を招き、時宜にかなった政策問題について学ぶ。さま ざまな立場の講師から、現場で生じる問題や解決方法を 具体的にかつ多角的に聞くことができるため、非常に好 評を博している。  修士論文やリサーチペーパーを書く際には、数回にわ たって発表会を行い、指導教員以外の教員も参加してア ドバイスを行う「複数指導体制」をとっている。複数の 分野の教員からアドバイスを受けることで、幅広い発想 ができるようになる上に、報告会での発表を重ねること で説得力のある発表の仕方も身につくそうだ。   また、現職の議員や公務員として勤めながら学んでい る社会人学生も毎年一定数いるため、グループワークな どにおいても政策の現場の視点に接することができ、学 生にとっては大きな刺激になっているという。  公務員になるために、必ずしも大学院に進学する必要 はないが、近年は国家公務員Ⅰ種採用者の約 25%が大 学院を卒業している。現場で即戦力となる力を事前に育 んでおく公共政策系の大学院は官庁からも注目されてお り、連携が年々強化されているという。  「官庁から『新しい法律ができたので講義をさせてほ しい』という提案をいただくこともしばしばあります。 例えば先日は、消えた年金問題(注1) をきっかけに作成さ れた公文書法について、具体的にどのような場面で活用 されるかという説明をしたいという申し出を受けて講義 を設定しました。また、1つの政策に対して単一的な見 方をしないためにも、官僚と議員など立場の違う方々の さまざまな意見を聞けるように配慮しています。政策の プロになるという目的意識をもって勉強する学生にとっ ては、とても良い環境だと思います」(植野教授)  公務員など公共の職に就く修了生が多く  対人折衝能力の高さが民間企業からも評価される  修了後は公務員をはじめ、政治家を目指したり、公的 活動を行う企業に就職する学生が多い。修了生の進路の 内訳は、約 30 ~ 40%が国および地方自治体の公務員と なり、約 50%が民間企業(独立行政法人などの団体職 員が8%程度)に就職、残りが進学となっている。大多 数の学生が修了後に政策に関する職に就くことを希望 し、それに合致した目標を明確にした教育プログラムを 提供していることや、学生と教職員の距離が近いことか ら、ほとんどの学生の修了後の進路が把握できている。  就職が好調な理由の一つは、公共的な政策課題の解決 を通して培われた能力が、民間企業からも高い評価を受 けているためである。企業の社会的責任(CSR)が問わ れる現代社会では公共哲学に関する基本的な概念を理解 している人材が求められていることに加えて、公共政策 研究科の修了者には、社会での基本となる対人関係能力 も自然に身につくのである。  「少人数で専門的な事柄を学んでいるので知識の深さ も評価につながっていると思いますが、『政策ワーク ショップ』などを通して身につけるプレゼンテーション 能力やコミュニケーション能力も高く評価されていま す。相手の意見を聞きながら主張すべきところは主張し、 引くべきところは引くという、人間関係上の間合いの取 り方も上手くなるようです」(植野教授)  また、優秀な成績を収めれば1年で修了できる制度や、 中央大学の4年生が対象の早期履修制度も設けている。 これらの制度を活用しながら計画的に単位取得を進め、 修士課程1年目で公務員試験の合格を果たすなど進路が 決まって、1年で修了する学生も実際にいる。  さらに近年は、公務員を目指す学部生に対する意識喚 起にも注力している。  「2008 年からは、学部における FLP(注2) の1つとして 『地域・公共マネジメントプログラム』が開講されてい ます。学部横断型のプログラムですので、法学部や経済 学部だけでなく、さまざまな学部からの学生で構成され ています。そういった FLP 出身の学生や、都心にキャ ンパスが移転したことで、他大学の卒業生も含め、さら に多様な学生が公共政策研究科に入学してくることを期 待しています」(植野教授) (注 1)消えた年金問題…2007 年に指摘された、社会保険庁のデータ(年金記録)に、納付者が確定できておらず基礎年金番号に統合されていない過去の 年金記録があり、年金の支給漏れの疑いがあるとされた問題。 (注 2)FLP…Faculty-Linkage Program の略。環境、ジャーナリズム、国際協力、スポーツ ・ 健康科学、地域・公共マネジメントの5つのプログラムから

参照

関連したドキュメント

鈴木 則宏 慶應義塾大学医学部内科(神経) 教授 祖父江 元 名古屋大学大学院神経内科学 教授 高橋 良輔 京都大学大学院臨床神経学 教授 辻 省次 東京大学大学院神経内科学

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

清水 悦郎 国立大学法人東京海洋大学 学術研究院海洋電子機械工学部門 教授 鶴指 眞志 長崎県立大学 地域創造学部実践経済学科 講師 クロサカタツヤ 株式会社企 代表取締役.

学識経験者 品川 明 (しながわ あきら) 学習院女子大学 環境教育センター 教授 学識経験者 柳井 重人 (やない しげと) 千葉大学大学院

東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 教授 赤司泰義 委員 早稲田大学 政治経済学術院 教授 有村俊秀 委員.. 公益財団法人

 昭和大学病院(東京都品川区籏の台一丁目)の入院棟17

話題提供者: 河﨑佳子 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 話題提供者: 酒井邦嘉# 東京大学大学院 総合文化研究科 話題提供者: 武居渡 金沢大学

 大学図書館では、教育・研究・学習をサポートする図書・資料の提供に加えて、この数年にわ