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日サ会誌 2014, 34(1) 薬剤性過敏症症候群合併疑いサルコイドーシスの1例 〔症例報告〕サルコイドーシス経過中にHHV-6の再活性化を認め, 薬剤性過敏症症候群の合
併が疑われた1例
粟野暢康1),酒寄雅史1),園田 唯1),近藤圭介1),小野 竜1),守屋敦子2),安藤常浩2),生島壮一郎1),熊坂利夫3), 武村民子3),今門純久4)Nobuyasu Awano1), Masashi Sakayori1), Yui Sonoda1), Keisuke Kondo1), Ryu Ono1), Atsuko Moriya2), Tsunehiro Ando2),
Soichiro Ikushima1), Toshio Kumasaka3), Tamiko Takemura3), Sumihisa Imakado4)
【要旨】
症例は40歳男性.X年6月の気管支鏡検査でサルコイドーシスと診断され,神経サルコイドーシスと考えられる四肢の 痺れに対し,同年7月よりプレガバリンを内服していた.X+1年4月より肝障害と全身の広範な皮疹を認め緊急入院.血清 ACE 28.3 IU/L,sIL2R 4,860 U/mL,リゾチーム 14.1 µg/mLと肝サルコイドーシスの合併を疑ったが,肝生検では肉芽腫 を認めず,胆汁うっ滞とリンパ球浸潤を認めた.また,皮疹は多形性紅斑であり,尿中バルビツール酸系薬物検査が陽性 であったことと,ペア血清でのHHV-6 IgG抗体価の上昇を認めたため,薬剤性過敏症症候群(DIHS)が疑われた.全薬剤 を中止し,ステロイドパルス療法と免疫グロブリン製剤の併用で救命し得た.本例はDIHSを発症する既知の薬剤を使用し ていなかったが,サルコイドーシス経過中にHHV-6の再活性化を認めた稀な例であったため報告する.HHV-6の活性化は DIHSとサルコイドーシスに共通した病態であり,これは制御性T細胞(Treg)が関与している可能性があり両疾患の病 態解明に重要と考えられる. [日サ会誌 2014; 34: 1] キーワード:サルコイドーシス,薬剤性過敏症症候群,制御性T細胞,免疫再構築症候群,HHV-6A Case of Sarcoidosis Suspected of Complicating Drug Induced
Hypersen-sitivity Syndrome, with Reactivating HHV-6
Keywords: sarcoidosis, drug induced hypersensitivity syndrome, regulatory T cell, immune reconstitution syndrome, HHV-6 1)日本赤十字社医療センター 呼吸器内科 2)同 感染症科 3)同 病理部 4)同 皮膚科 著者連絡先:粟野暢康(あわの のぶやす) 〒150-8935 東京都渋谷区広尾4-1-22 日本赤十字社医療センター 呼吸器内科 E-mail:[email protected] Japanese Red Cross Medical Center 1) Department of Respiratory Medicine 2) Department of Infectious Diseases 3) Department of Pathology 4) Department of Dermatology
はじめに
サルコイドーシスは原因不明の炎症性疾患で,Propioni-bacterium acnesによる感染症や自己免疫などが関与して いると考えられている.経過中にアレルギー疾患,膠原 病を合併する症例も多数報告されている. 今回われわれは,サルコイドーシス経過中にHHV-6の 再活性化を認め,薬剤性過敏症症候群(DIHS)の合併が 疑われた稀な1例を経験した.サルコイドーシス,DIHS はともにCD4T細胞,制御性T細胞(Treg)が関与して いると報告されている.これらの病態に関して,示唆に 富む症例と考え報告する.症例呈示
●症例:40歳,男性 ●主訴:発疹,呼吸困難 ●既往歴:小児喘息,B型肝炎(感染時期不明.無治療) ●家族歴:祖母 肺癌 ●生活歴:喫煙:40本/1日×3年間(17歳から20歳),以 後20本/1日×20年間(入院時まで),飲酒:なし,粉塵 吸入歴:なし,渡航歴,ペット,住居に特記する事項なし, 腹部,背部,四肢に刺青(17歳時に施行) ●職業:無職●内服薬: ・X-2年以前に覚醒剤の使用歴あり.以後使用なし. ・ X年6月から乳酸菌製剤3 g/日,ブロチゾラム0.25 mg/ 日. ・ X年7月からX+1年4月9日までプレガバリン 開始時150 mg/日,2週間後より300 mg/日. ・X+1年4月9日ファモチジン20 mg/日. ・ X+1年4月9日からウルソデオキシコール酸600 mg/日, メトクロプラミド15 mg/日. ・ 抗てんかん薬,抗不整脈薬,サルファ剤,抗生剤,アロ プリノールの使用歴なし ●現病歴:X年6月,呼吸困難を主訴に当科を受診し,気 管支鏡検査でサルコイドーシスと臨床診断された(肉芽 腫は認めず).診断時,神経サルコイドーシスと考えられ る四肢の痺れを認めたため,同年7月よりプレガバリンを 内服していた. X+1年3月より肝障害を認め,肝サルコイドーシスの合 併が疑われた.4月9日に施行した造影CT撮影後に嘔気, 嘔吐を認め,造影剤アレルギーを疑いファモチジン,メ トクロプラミドが処方された.また,肝障害に対しては ウルソデオキシコール酸が処方された. 翌4月10日から掻痒感と発赤を伴う小丘疹が顔面から全 身に徐々に拡大した.4月14日から呼吸困難も出現したた め救急搬送を要請し受診し精査,加療目的で同日入院と なった. ●入院時現症:意識清明,身長171 cm,体重66 kg,体温 38.5℃,血圧126/76 mmHg,脈拍数110回/分 整,呼吸 数27回/分,SpO2 97%(3L 鼻カヌラ),頭頸部では眼球 結膜に黄疸を認めた.結膜充血はなく,角膜,眼瞼結膜 病変も認めなかった.顔面全体は著明な浮腫を伴うびま ん性の紅斑を認めた.下口唇は痂皮化するも水疱やびら んは認めなかった(Figure 1a).頬粘膜に発赤,口腔内 に出血斑を認めた.胸部では心音,呼吸音に異常を認め なかった.腹部はやや膨隆し軟.腹部全体に紅斑を認め, 中央は紫紅色で融合傾向を認めた.水疱やびらんは認め なかった(Figure 1b).体表所見では顔面から体幹,四 肢に至るまで広範な小丘疹,紅斑を認めた.下肢は毛嚢 炎様の丘疹も認めた(Figure 1c).腹部,背部,四肢に 刺青を認めた.体表のリンパ節腫脹は認めなかった.神 経学的所見では四肢末梢に痺れ,感覚鈍麻を認めた. ●サルコイドーシス診断時検査所見,診断根拠(X年6月) 気管支肺胞洗浄液(BALF):総細胞数3.1×105 /mL,リ ンパ球数44.8 %,CD4/CD8比2.3. 経気管支肺生検:肉芽腫を認めなかった. 血液検査:ACE 21.7 IU/L/37℃,可溶性IL-2受容体(sIL-2R) 727 U/mL, リゾチーム6.8 µg/mL,Ca 8.9 mg/dL, T-SPOT 陰性. Gaシンチグラフィ:両側縦隔,肺門部,涙腺に異常集積 を認めた. 胸部単純写真,CT検査:両側肺門,縦隔リンパ節腫脹を 認めたが,肺野には異常を認めなかった. ●入院時検査所見 血液検査(Table 1):白血球11,100 /µL,CRP 5.39 mg/ dLと炎症反応の上昇を認めた.ALT優位の著明な肝逸脱 酵素の上昇を認め,ALP,γ-GTP,ビリルビンなどの胆 道系酵素も著増していた.サルコイドーシスの活動性マー カ ー と し て は,ACE 28.3 IU/L/37℃,sIL-2R 4860 U/ mL,リゾチーム14.1 µg/mLと上昇を認めたが,免疫グロ ブリンは低値であった.肝障害をきたすウイルス検査はB 型肝炎ウイルスが既感染を示したのみであった.また入 院初期に検査したHHV-6 DNA検査(geniQ)は陰性であ り,HHV-6 IgG検査(蛍光抗体法)は20倍と低値であった. 尿中乱用薬物検査(トライエージ®)では,ベンゾジアゼ ピン,バルビツール酸系で陽性反応を認めた. 胸部単純写真(Figure 2):両側肺門リンパ節腫脹を認め た.肺野には明らかな異常を認めず,サルコイドーシス 診断時と比較し著変は認められなかった. 胸腹部CT検査(Figure 3a,3b):両側肺門,縦隔リンパ 節腫脹を認めたが,肺野には異常を認めなかった.これ らの所見はサルコイドーシス診断時と著変を認めなかっ た.新たな所見としては胃体部小弯,肝門部,門脈本幹 周囲,膵頭部背側に多発リンパ節腫脹を認めた.その他 a) b) c) Figure 1. a) 顔面全体は著明な浮腫を伴うびまん性の紅斑を認める.下口唇は痂皮化するも,水疱やびらんは認めない b) 腹部はやや膨隆し軟.腹部全体に紅斑を認め,中央は紫紅色で融合傾向を認める.水疱やびらんは認めない. c) 顔面から体幹,四肢に至る広範な小丘疹,紅斑を認め,下肢は毛嚢炎様の丘疹も認める.
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日サ会誌 2014, 34(1) 薬剤性過敏症症候群合併疑いサルコイドーシスの1例 〔症例報告〕 には脂肪肝を認めた. [腹部超音波検査]肝腫大と肝縁鈍化を認めた.肝腎コン トラストを認め,脂肪肝が疑われた.肝内に腫瘤を認め ず,その他の臓器に明らかな異常所見を認めなかった. ●入院後経過(Figure 4):入院時の皮膚所見と経過よ り,Stevens-Johnson症候群(SJS)やDIHS,中毒性表皮 壊死症,多刑滲出性紅斑などが鑑別に挙げられた.顔面 の特徴的な皮疹と粘膜疹が乏しかったことより,DIHSの 可能性が高いと考えられ,尿中乱用薬物検査でもバルビ ツール酸系が陽性を示した.しかし,医療機関から同系 統の薬剤処方歴はなく,本人も内服を否認した.また, 詳細な薬剤歴の聴取を行ったが,DIHSを発症しうる薬剤 の内服歴は認めなかった. 重症薬疹と考え,入院時に使用していた全薬剤を中止 し,入院当日よりプレドニゾロン60 mg/dayを開始した. しかし,肝障害や皮疹の悪化を抑えられず,第3病日より ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1,000 mg/ day),免疫グロブリン製剤,ウリナスタチンを投与した. 第2病日に施行した肝生検では毛細胆管,肝細胞内に胆汁 のうっ滞を認め,薬剤性肝障害が疑われた.肉芽腫は認 めず,軽度のリンパ球浸潤を認めたものの線維化は認め られなかったため,肝サルコイドーシスや慢性肝炎は否 定的であった.パルス療法後はプレドニゾロンを65 mg/ dayより開始し漸減した.入院2週間頃より肝障害と皮疹 が改善傾向を認めたため,乳酸菌製剤,ブロチゾラム, ST合剤,アレンドロン酸,ランソプラゾールを開始した が,病状の悪化を認めなかった.プレドニゾロン45 mg/ dayまで漸減し,第37病日退院となった.以後,外来でプ レドニゾロンを10 mg/dayまで漸減しているが,皮疹の 再燃は認めていない.なお,本例は入院中にHHV-6の再 活性化を確認した(Table 2).また,DLSTは入院中と 退院後に施行したが,ウルソデオキシコール酸が弱陽性 を示したのみであった(Table 2). 一方,サルコイドーシスに関して, X年の診断時は両側 Hematology WBC 11,100 /µL Ba 0.5 % Eos 9.0 % Stab 62.5 % Seg 15.5 % Ly 1.0 % Atypical lym 2.0 % RBC 545×104/µL Hb 17.2 g/dL Plt 18.3×104/µL Biochemistory TP 6.6 g/dL Alb 4.1 g/dL AST 338 IU/L ALT 973 IU/L LDH 531 IU/L ALP 1192 IU/L γ-GTP 370 IU/L T-Bil 8.4 mg/dL D-Bil 6.0 mg/dL T-cho 368 mg/dL BUN 17 mg/dL Cre 0.64 mg/dL Na 130 mEq/L K 3.8 mEq/L Cl 95 mEq/L Ca 8.7 mg/dL Serology CRP 5.39 mg/dL sIL2R 4860 U/mL ACE 28.3 IU/L lysozyme 14.1 µg/mL IgG 717 mg/dL IgA 71 mg/dL IgM 34 mg/dL IgE 29 IU/mL ANA 40 倍未満 抗ミトコンドリアM2抗体 40 倍未満 IL-6 36 pg/mL Coagulation PT % 55 % PT-INR 1.35 APTT 34.0 sec FDP 9.9 µg/mL Urine Protein 30 mg/dL Glucose 100 mg/dL Bil 1+ Ca(蓄尿) 64 mg/day Infection プロカルシトニン 0.68 ng/mL HBs抗原 0.1 C.O.I. HBs抗体 128.8 mIU/mL HCS(PCR) 未検出 HIV(EIA) 未検出 HAV IgM(EIA) 0.2(−) CMV IgM(EIA) 0.44(−) CMV IgG(EIA) 15.3(+) EBV IgM 10 倍未満 EBV IgG 80 倍 VZV IgM(EIA) 0.1(−) VZV IgG(EIA) 23.1(+) HHV-6(geniQ) (−) HHV-6 IgG(蛍光抗体法) 20 倍 Abused drugs in urine benzodiazepine (+) cocain (−) opioid (−) amphetamine (−) barbiturate (+) tricycric antidepressent (−) Table 1. 入院時検査所見 Figure 2. 胸部単純写真 両側肺門リンパ節腫脹を認める.肺野には明らかな異常 を認めず,サルコイドーシス診断時と比較し著変を認め ない.31
日サ会誌 2014, 34(1) 薬剤性過敏症症候群合併疑いサルコイドーシスの1例 〔症例報告〕考察
本例はサルコイドーシス経過中に重症皮疹をきたし, DIHSの合併が疑われた.DIHSは重症薬疹のひとつで, 限られた原因薬剤使用後に発症し,その発症率は1,000人 から10,000人に一人といわれている1).診断基準(Figure 5)に示すように,抗痙攣薬や抗不整脈薬の使用後2–6週 間後に発症する例が多いが,長期内服後に発症する例も 報告されている.発熱,肝障害,顔面の特徴的な皮疹と HHV-6の再活性化が特徴とされている.本例は主要所見 の2から7を満たした.唯一,既知の原因薬剤の使用歴を 認めなかったが,主要所見の一致と口腔内や角膜,眼瞼 結膜病変をほとんど認めなかったことより,DIHSを発症 していたと考えられた.DIHSと鑑別が必要な疾患として はSJS,中毒性表皮壊死症,多形滲出性紅斑などが挙げ られる.本例は顔面に特徴的な皮疹を認め,粘膜疹が軽 度であったことなどより,いずれも否定的と考えられた. しかし,皮膚生検による病理組織学的検査がなされなかっ たため,完全な鑑別は困難であった.特にSJSとの鑑別は 困難で,HHV-6の再活性化を認めたSJSの症例報告もあ る2–4)ことから,本例もDIHSとSJSを合併していた可能 性も考えられた.なお,HHV-6の再活性化に関して,本 例は経過中に免疫グロブリン製剤を使用したが,血清免 疫グロブリン値の上昇はみられなかった.このため,免 疫グロブリン製剤の補充による影響は否定的であった. また,ステロイドの使用による免疫機能低下は,HHV-6 の再活性化に寄与しないことが示されている5). また,本例は造影CT撮影後に嘔気,嘔吐を認めており, 造影剤アレルギーが強く疑われた.皮疹の出現はその翌 日からであり,造影剤投与後から時間が経過していたも のの,造影剤による皮疹の可能性も考えられた.さらに, 関連性のない2薬剤によるDIHSの症例報告もあることか ら6),造影剤を含めた多数の薬剤が本例の皮疹に関与した 可能性も考えられた. 本例をDIHSと確定診断できない問題としては,尿中乱 用薬物検査(トライエージ®)では,バルビツール酸系で 陽性反応を認めたものの,原因薬物の内服歴がなかった 点である.トライエージ®は金コロイド粒子免疫法を使用 した尿中薬物検査で,ベンゾジアゼピン,コカイン,バ ルビツール酸系など8種類の薬剤を同時に測定できる.各 項目の感度,特異度は明らかでなく,偽陽性や偽陰性も みられる.バルビツール酸系の検査はバルビタール,フェ ノバルビタール,エトスクシミド,チアミラール,チオ ペンタールなどの使用で陽性になるが,本例が入院前に 使用していた薬剤のうち,陽性になると報告されている ものはなかった.また,本例が使用していた薬剤のうち, 神経系に作用しうるものとしてプレガバリンが挙げられ るが,同剤使用者のトライエージ®に対する反応は不明で あった.このため,本例はトライエージ®の反応が偽陽性 であったか,あるいは患者が正直に解答せず,処方薬以 外のバルビツール酸系薬物を内服していた可能性は否定 できなかった.病院は捜査機関ではないので,これ以上 の追求はできなかった. また,本例はサルコイドーシス診断時と皮疹出現時と もに呼吸困難を訴えた.サルコイドーシス診断時は検査 上呼吸不全をきたしておらず,呼吸困難の原因は不明で あった.一方,一般的にはDIHSに呼吸器症状は合併し ないが,皮疹出現時は実際に低酸素をきたしていた.聴 診所見は正常で胸部単純写真,胸部CT検査ではともに肺 野に異常を認めなかった.また,血液検査や生理学検査 の結果から,肺血栓塞栓症などの血管病変を疑う所見も みられなかった.このため,皮疹出現時に低酸素をきた した原因は不明であったが,発熱や頻呼吸を認めており, 気道感染を合併していた可能性や,SJSのように呼吸器病 変を合併する病態が隠れていた可能性も考えられた. DIHSは限られた薬剤の使用後に発症し,中でも抗痙攣 薬は重要な原因薬剤である.本例が内服していたプレガ バリンはγアミノ酪酸(GABA)の構造類似化合物で, 本邦では帯状疱疹後神経痛に対して適応のある薬剤であ Table 2. 追加検査所見 sarcoidosis serum marker and HHV-6 IgG Unit Date X年6月13日 X+1年2月21日 4月3日 4月9日 4月16日 5月2日 5月7日 6月12日 8月7日 IgG mg/dL 905 853 717 479 399 ACE IU/L 21.7 19.4 23.7 29 28.3 7.5 8.3 lysozyme µg/mL 6.8 14.1 3.3 sIL2R U/mL 727 1010 4860 376 269 HHV-6 IgG (蛍光抗体法) 20倍 160 倍 薬剤リンパ球刺激試験 X+1年4月16日(ステロイドパルス療法中) X+2年10月15日(プレドニゾロン21 mg内服中) S.I. S.I. ファモチジン 1.4(−) プレガバリン 1.3(−) メトクロプラミド 1.6(±) フェノバルビタール 1.4(−) ウルソデオキシコール酸 2(+) ウルソデオキシコール酸 2.1(+) S. I. : stimulation indexる.抗痙攣薬のガバペンチンと構造的,薬学的に類似し ており,海外では抗てんかん薬としても使用されている. 副作用としての発疹は約1.5%に発症すると報告されてお り,時に重症薬疹をきたすといわれている7).このため, プレガバリンがDIHSの原因となった可能性も考えられた が,検索した限りでは同剤によるDIHSの報告は唯一例の みであり8),大変稀少であった.また,DIHSにおける薬 剤リンパ球刺激試験(DLST)は発症初期よりも回復期 に陽性になりやすく,発症数か月から一年後と長期間陽 性になる場合も多いと報告されている9).本例では発症初 期と一年半後にDLSTを施行しているが,ウルソデオキ シコール酸が弱陽性を示したのみであった.本例はステ ロイド使用中にDLSTを施行しているため,リンパ球機 能が抑制され,原因薬剤が偽陰性を示した可能性がある. DLSTの結果からは原因薬剤の推察,同定は困難であっ た. DIHSは発症後に免疫異常をきたし,1型糖尿病,甲状 腺機能障害,ADH不適合分泌症候群などを合併するこ とが知られている.サルコイドーシスも免疫異常を呈す る疾患であるが,検索した限りサルコイドーシス経過中 にDIHSを発症した報告は一例も認めなかった.DIHS急 性期には原因薬剤による免疫変調により,免疫グロブリ ンやB細胞が減少する10, 11).一方,CD4+CD8+FOXP3+の 制御性T細胞(Treg)が著増し,症状の軽快とともに減 少すると報告されている12).同様に,サルコイドーシス 活動期にはTregが増加することが報告されている13).活 動期にTregが増加するという点でサルコイドーシスと DIHSは共通しているが,その機能には相違がみられる と報告されている.即ち,活動期のサルコイドーシスに おけるTregの増加はサルコイドーシス悪化の原因ではな く,局所の肉芽腫性炎症を抑制できない,機能不全を伴っ たTregの増加と考えられている13).一方,DIHSにおい てはまず,原因薬物の内服後に感作Tリンパ球が増加す る.それとともにTregが増加することにより,感作Tリ ンパ球の活性化が抑制され,DIHSの発症が抑えられる. Tregの増加によっても抑制しきれないほど感作Tリンパ 球が増大したとき,DIHSが発症するといわれている.原 因薬剤を中止することで免疫が復活し,臨床症状の悪化 をもたらす.このように,機能の相違こそあれ,Tregが これらの疾患に大きく関わっていることは大変興味深い 点であった.本例では発疹の発症急性期にサルコイドー シスの血清マーカーが著増しており,発疹の改善ととも に血清マーカーも改善した.発疹の病勢とサルコイドー シスの活動性は,並行して変動したと考えられた.なお, 入院時のCT検査では新たに腹腔内リンパ節腫脹を認めた が,サルコイドーシスによるものか薬疹の随伴症状によ るものかは不明であった. DIHSにおいて,原因薬剤の中止はTregの増加によっ 概念 高熱と臓器障害を伴う薬疹で,薬剤中止後も遷延化する.多くの場合,発症後2–3週間後にHHV-6の再活性化を生じる. 主要所見 1.限られた薬剤投与後に遅発性に生じ,急速に拡大する紅斑.多くの場合紅皮症に移行する. 2.原因薬剤中止後も2週間以上遷延する. 3.38度以上の発熱. 4.肝機能障害. 5.血液学的異常:a,b,cのうち一つ以上. a.白血球増多(1,1000 /mm3以上) b.異型リンパ球の出現(5%以上) c.好酸球増多(1,500 /mm3以上) 6.リンパ浮腫張. 7.HHV-6の再活性化. 典型DIHS:1~7すべて. 非典型DIHS:1~5すべて.ただし4に関しては,その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる. 参考所見 1. 原因薬剤は,抗けいれん剤,ジアフェニルスルフォン,サラゾスルファピリジン,アロプリノール,ミノサイクリン,メキシ レチンであることが多く,発症までの内服期間は2–6週間が多い. 2. 皮疹は,初期には紅斑丘疹型,多形紅斑型で,後に紅皮症に移行することがある.顔面の浮腫,口囲の紅色丘疹,膿疱,小水疱, 鱗屑は特徴的である.粘膜には発赤,点状紫斑,軽度のびらんがみられることがある. 3.臨床症状の再燃がしばしばみられる. 4. HHV-6の再活性化は,①ペア血清でHHV-6IgG抗体価が4倍(2管)以上の上昇,②血清(血漿)中のHHV-6DNAの検出,③ 末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6DNAの増加のいずれかにより判断する.ペア血清は発症後14日以内と28日以 降(21日以降で可能な場合も多い)の2点にすると確実である. 5.HHV-6以外に,サイトメガロウイルス,HHV-7,EBウイルスの再活性化も認められる. 6.多臓器障害として,腎障害,糖尿病,脳炎,肺炎,甲状腺炎,心筋炎も生じうる. Figure 5. 薬剤性過敏症症候群診断基準 文献1より抜粋